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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1229812
審判番号 不服2007-34510  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-21 
確定日 2011-01-06 
事件の表示 特願2000- 49078「乳化型皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月28日出願公開、特開2001-233754〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月25日の出願であって、平成19年11月20日付けで拒絶査定され、該拒絶査定の謄本は、平成19年11月27日に出願人に発送され、これに対し、平成19年12月21日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願の願書に最初に添付された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

(本願発明)
「セラミド、リン脂質、ステロール複合物と液状油とヘキシレングリコールを含有する事を特徴とする乳化型皮膚外用剤。」

3.刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-199462号公報(以下「刊行物1」という。)には、「スフィンゴ脂質-界面活性剤複合体」に関し、以下の事項が記載されている。

(a)「【発明が解決しようとする課題】 本発明は、水や油脂に分散しやすく安定な乳化または可溶化組成物を得ることができるスフィンゴ脂質と界面活性剤の複合体、もしくはスフィンゴ脂質とステロールと界面活性剤の複合体を提供することを目的とする。」(段落【0007】)

(b)「【課題を解決するための手段】 こうした実状において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、スフィンゴ脂質と界面活性剤またはスフィンゴ脂質とステロールと界面活性剤が有機溶媒中に均一に溶解している有機溶媒液から有機溶媒を除去してスフィンゴ脂質と界面活性剤またはスフィンゴ脂質とステロールと界面活性剤を同時に析出せしめるとスフィンゴ脂質-界面活性剤複合体またはスフィンゴ脂質-ステロール-界面活性剤複合体が形成され、この複合体は水分散性に優れ、容易に乳化または可溶化できることを見いだした。」(段落【0008】)

(c)「さらに、この複合体を配合すれば保湿作用に優れ、かつ使用感の良好な化粧料が得られることを見いだした。」(段落【0009】)

(d)「本発明は、スフィンゴ脂質-界面活性剤複合体およびスフィンゴ脂質-ステロール-界面活性剤複合体、および当該複合体を含有する化粧料を提供するものである。」(段落【0015】)

(e)「また、本発明化粧料には、水、アルコール類、油成分、界面活性剤、リン脂質、美白成分、紫外線吸収剤、高分子物質、防腐剤、香料、色素などを配合することができる。また、角質細胞間脂質、多価アルコール類、ヒアルロン酸、乳酸菌培養液等の他の保湿成分を配合することもできる。」(段落【0049】)

(f)「 製造例1
・・・このようにして得られた本発明セラミド-レシチン複合体は、均質な白色粉末であった。
・・・
製造例2
・・・このようにして得られた本発明セラミド-レシチン複合体は、均質な白色粉末であった。
・・・
製造例3
・・・このようにして得られた本発明セラミド-ショ糖脂肪酸エステル複合体は、均質な白色粉末であった。
・・・
製造例4
・・・このようにして得られた本発明セラミド-塩化ジステアリルジメチルアンモニウム複合体は、均質な白色粉末であった。
製造例5
N-ステアロイルフィトスフィンゴシン90%以上を含むセラミド(日光ケミカルズ(株)製)2g、コレステロール(日本精化(株)製)4gとホスファチジルコリン30%、ホスファチジルエタノールアミン25%及びホスファチジルイノシトール20%を含有する水添大豆レシチン(ツルーレシチン工業(株)製)4gとをクロロホルム200mLに溶解させた後、噴霧乾燥装置(東京理化機械(株)製、スプレードライヤーSD-1型)で噴霧乾燥した。噴霧空気圧力は1.5kg/cm2、送液速度は5g/分、チャンバー入口温度は65℃、出口温度は40℃とした。このようにして得られた本発明セラミド-コレステロール-レシチン複合体は、均質な白色粉末であった。
製造例6
・・・このようにして得られた本発明セラミド-コレステロール-ショ糖脂肪酸エステル複合体は、均質な白色粉末であった。
製造例7
・・・このようにして得られた本発明セラミド-コレステロール-塩化ジステアリルジメチルアンモニウム複合体は、均質な白色粉末であった。」(段落【0052】?【0063】)

(g)「実施例2 モイスチャークリームの調製
成 分 比率(重量%)
油相成分:
ビタミンEアセテート 0.2
ショートニングオイル 5.0
ミツロウ 1.0
スクアラン 5.6
オリーブ油 10.0
製造例4のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体 5.0
水相成分:
グリセリン 5.0
メチルパラベン 0.1
エチルパラベン 0.1
香料 適量
精製水 全体を100とする量
上記処方中の油相成分を加熱・撹拌し均一として70℃に保つ。これに精製水、グリセリンを加熱・撹拌し、70℃で均一としたものを徐々に加え、乳化機にて乳化する。乳化物を熱交換機にて30℃まで冷却してモイスチャークリームを調製した。」(段落【0072】?【0073】)

(h)「試験例1
実施例2、3及び4;並びに比較例7、8及び9の乳化物の安定性をみるために、40℃での安定性を調べた。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例2、3及び4の乳化物の安定性は比較例7、8及び9の乳化物に較べて良好であった。なお、表1の評価の欄において、
”○”:乳化物調製後、10日後も安定であった。
”△”:乳化物調製後、1?9日後に析出物を生じた。
”×”:乳化物調製後、1日以内に析出物を生じた。
【表1】

」(段落【0081】?段落【0085】)

(i)「試験例2
女性パネラー10名に、実施例2、3及び比較例7、8で調製した化粧料を実際に使用させ、実用評価を行った。評価は(1)塗布時ののび、(2)肌へのなじみ、(3)塗布後のしっとり感、(4)べたつき感、(5)塗布後3時間後の肌のしっとり感、(6)全体評価の6項目について、次の評価基準で行った。結果は表2に示した。なお、表2中:
”◎”:10名中8名以上が良好と回答した。
”○”:10名中6名以上が良好と回答した。
”△”:10名中4名以上が良好と回答した。
”×”:10名中4名未満が良好と回答した。
【表2】

表2より、本発明の化粧料は、使用感に非常に優れていることがわかる。」(段落【0086】?【0091】)

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、蔵多 淑子 他4名、化粧品原料辞典、日光ケミカルズ株式会社 他2社、1991年11月29日、392-393頁、「ヘキシレングリコール」の項(以下「刊行物2」という。)には、「ヘキシレングリコール」に関し、以下の事項が記載されている。

(j)「ヘキシレングリコール・・・
収載公定書類:粧原基、JCID、既存化学物質(2-240)、TSCA、EINECS(2034890)、CTFA」
CAS.No.107-41-5
ジアセトンアルコールを還元して得られる。・・・
構造
OH OH
| |
CH3-C-CH2-C-CH3
| |
CH3 H
用途 保湿剤、化粧品基剤として化粧品全般に使用される。」

(3)そして、上記記載事項(g)によれば、そこに記載のモイスチャークリームには、「製造例4のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」なるものが配合されている、とされているが、上記記載事項(f)によれば、その製造例4は、セラミド-塩化ジステアリルジメチルアンモニウム複合体を製造した例とされており、一方、セラミド-コレステロール-レシチン複合体を製造した例は製造例5のみである。してみると、上記「製造例4のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」は、「製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」の誤記であるとするのが相当である。してみると、刊行物1には、以下のとおりのモイスチャークリームの発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「実施例2 モイスチャークリームの調製
成 分 比率(重量%)
油相成分:
ビタミンEアセテート 0.2
ショートニングオイル 5.0
ミツロウ 1.0
スクアラン 5.6
オリーブ油 10.0
製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体 5.0
水相成分:
グリセリン 5.0
メチルパラベン 0.1
エチルパラベン 0.1
香料 適量
精製水 全体を100とする量
上記処方中の油相成分を加熱・撹拌し均一として70℃に保つ。これに精製水、グリセリンを加熱・撹拌し、70℃で均一としたものを徐々に加え、乳化機にて乳化する。乳化物を熱交換機にて30℃まで冷却してモイスチャークリームを調製した。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」についてみると、上記記載事項(f)の「製造例5」の記載によれば、セラミド、コレステロール、及び、水添大豆レシチンをクロロホルムに溶解させた後、噴霧乾燥して得たものである。一方、本願発明にいう「セラミド、リン脂質、ステロール複合物」は、本願明細書段落【0009】の「本発明に用いられるリン脂質は・・・大豆、卵黄等由来の水素添加レシチンを用いることが出来」なる記載、及び、同じく段落【0010】の「本発明に用いられるステロールは・・・コレステロール・・・等が挙げられる。」なる記載からみて、セラミド、コレステロール、及び、大豆由来の水素添加レシチンからなるものである場合を含むものといえる。してみると、引用発明の「製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」と本願発明にいう「セラミド、リン脂質、ステロール複合物」は、原料の三成分において一致するものである。また、本願発明にいう「セラミド、リン脂質、ステロール複合物」の製造方法は、本願明細書段落【0004】の「そこで、セラミドをリン脂質、ステロールとともに有機溶剤に一度溶解し、溶剤を減圧下で除去する事により得られる複合体(以下、セラミド、リン脂質、ステロール複合物という)を造る技術が生み出され、」なる記載からみて、原料の三成分を有機溶剤に一度溶解し、溶剤を減圧下で除去するという方法であるとされているところ、上記クロロホルムは有機溶媒に属するものであり、また、上記原料の三成分をクロロホルムに溶解させた後、噴霧乾燥すればクロロホルムが除去されるものといえる。してみると、引用発明の「製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」と本願発明にいう「セラミド、リン脂質、ステロール複合物」は、製造方法においても、上記原料の三成分をクロロホルムに溶解させた後、該クロロホルムを除去する点で軌を一にするものである。これらのことからみて、引用発明の「製造例5のセラミド-コレステロール-レシチンの複合体」は本願発明にいう「セラミド、リン脂質、ステロール複合物」に相当するものといえる。
次に、引用発明の「油相成分」のうち、「ショートニングオイル」は、「オイル」なる文言が「油」を意味し、「油」なる文言が「水にまじらない可燃性の液体の総称」(新村出編、広辞苑第五版、岩波書店より)を意味することからみて、本願発明にいう「液状油」に相当するものといえるし、引用発明の「油相成分」のうち、「スクアラン」、「オリーブ油」は、本願明細書段落【0012】において本願発明にいう「液状油」の例として挙げられているものである。
また、引用発明の「モイスチャークリーム」は、上記記載事項(g)によれば、乳化機にて乳化して得た乳化物を冷却して得たものとされ、また、上記記載事項(i)によれば、パネラーに使用させ、塗布時ののびや肌へのなじみなどを評価したものとされていることから、本願発明にいう「乳化型皮膚外用剤」に相当するものといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「セラミド、リン脂質、ステロール複合物と液状油を含有する乳化型皮膚外用剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
1)本願発明は、さらにヘキシレングリコールを含有するのに対し、引用発明は、さらにグリセリンなどを含有するものの、ヘキシレングリコールは含有しない点(以下「相違点」という。)。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
上記記載事項(e)によれば、刊行物1には、刊行物1記載の化粧料について、さらに、多価アルコール類を配合することもできる旨の記載があり、引用発明が含有するグリセリンは、水酸基を3つ有する化学構造からみて、多価アルコールといえるものであるから、刊行物1記載の化粧料の実施例といえる引用発明は、多価アルコール類を配合することもできる旨の上記記載事項(e)にのっとり、実際に、多価アルコール類であるグリセリンを含有せしめたもの、と、刊行物1の記載に接した当業者ならば理解するものといえる。一方、ヘキシレングリコールは、刊行物2によれば、水酸基を2つ有する化学構造をもつ化合物であるから、多価アルコールといえるものであり、また、化粧品基剤として化粧品全般に使用されるものとされているから、化粧品の成分として当業者には慣用の多価アルコールといえるものである。そうすると、刊行物1の記載に接した当業者ならば、引用発明において、多価アルコールであるグリセリンに代えて、化粧品の成分として当業者には慣用の多価アルコールといえるヘキシレングリコールを用いてみることに、格別の創意を要したものとはいえない。
続いて、本願発明の効果について検討する。
上記記載事項(a)?(d)によれば、刊行物1に記載の「スフィンゴ脂質-ステロール-界面活性剤複合体」は、水分散性に優れ、容易に乳化または可溶化でき、この複合体を化粧料に配合すれば、保湿作用に優れ、かつ使用感の良好な化粧料が得られる、とされている。そして、上記記載事項(h)の実施例2に関する記載によれば、引用発明のモイスチャークリームは、乳化物調製後、40℃で10日経過後も、析出物を生じることなく安定であったものとされている。また、上記記載事項(i)の実施例2に関する記載によれば、引用発明のモイスチャークリームは、(1)塗布時ののび、(2)肌へのなじみ、(3)塗布後のしっとり感、(4)べたつき感、(5)塗布後3時間後の肌のしっとり感、(6)全体評価の6項目について、女性パネラー10名中8名以上が良好と回答したとされている。
一方、本願発明の効果は、本願明細書段落【0035】の「以上の如く、本発明が、保存安定性、官能特性に優れた乳化型皮膚外用剤を提供することは明らかである。」などの記載によれば、保存安定性と官能特性に優れた乳化型皮膚外用剤を提供し得たことにあるとされているから、定性的には、引用発明の効果と軌を一にするものである。
そこで進んで、本願発明の効果について定量的な検討を行うに、本願明細書では、【実施例】として、本願発明の実施例1?11の乳化型皮膚外用剤について、
「官能試験
成人女性20名が顔面に実施例及び比較例の試料を塗布し、べたつき、ぬるつきを感じなかった人数で評価した。
保存安定性試験
実施例及び比較例の各試料100mlをガラスビンに入れ、室温で2日間放置し、析出・クリーミング・油膜などが観察されないものを○、観察されたものを×とした。」(本願明細書段落【0017】)
なる試験を実施し、その試験結果を示した【表1】、【表2】によれば、本願発明の実施例1?11の乳化型皮膚外用剤は、いずれも、保存安定性試験において○と評価され、官能試験において成人女性20名中15?20名が、べたつき、ぬるつきを感じなかったと評価したとされている。
しかしながら、まず、保存安定性については、引用発明のモイスチャークリームは、乳化物調製後、40℃で10日経過後も、析出物を生じることなく安定であったものとされているのに対し、本願発明の実施例1?11の乳化型皮膚外用剤は、各試料100mlをガラスビンに入れ、室温で2日間放置し、析出・クリーミング・油膜などが観察されない、とされているのであり、引用発明のモイスチャークリームが置かれた環境の方が、本願発明の実施例1?11の乳化型皮膚外用剤が置かれた環境より,温度及び日数の点でより厳しいものであるから、保存安定性の点では、定量的にも、本願発明の効果が引用発明の効果を上回るものであるとすることはできない。
次に、官能特性について検討するに、引用発明のモイスチャークリームは、(1)塗布時ののび、(2)肌へのなじみ、(3)塗布後のしっとり感、(4)べたつき感、(5)塗布後3時間後の肌のしっとり感、(6)全体評価の6項目について、女性パネラー10名中8名以上が良好と回答したとされている一方、本願発明の実施例1?11の乳化型皮膚外用剤は、成人女性20名中15?20名が、べたつき、ぬるつきを感じなかったと評価したとされている。そうすると、引用発明のモイスチャークリームは、ぬるつきのなさの評価を受けておらず、また、両発明の官能特性の程度の量的な差異は必ずしも明確ではない。
しかしながら、引用発明のモイスチャークリームは、全体評価において女性パネラー10名中8名以上が良好と回答したとされているから、ぬるつきのなさの点でも問題なかったものと推認されるし、官能特性の程度においても、本願発明と引用発明の間に格別の量的な差異があるものと認めるに足りない、とするのが相当である。
また、審判請求人は、平成20年2月12日に提出された手続補正書により補正された審判請求書において、以下に示す(参考試験)を提示し、この結果から、多価アルコールとしてヘキシレングリコールという特定の化合物を用いた場合に本願発明の優れた効果が奏されることが明確に示されている旨、主張する。
「(参考試験)
本願実施例1において、ヘキシレングリコールに代えて、各種の多価アルコールに使用した参考比較例1?4に関し、本願明細書0017段落に記載した方法により、保存安定性試験を実施した。
・結果
下表の結果に示されるように、本願発明に係る優れた保存安定性は、ヘキシレングリコールという特定の化合物を使用した場合にのみ見られ、それ以外の多価アルコールでは見られない。


そこで検討すると、まず第一に、ヘキシレングリコールに代えて1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、又は、70%ソルビトール水溶液を配合した参考比較例2?4に比較して実施例1が優れているとしても、これらの多価アルコールは引用発明で使用されているものではないから、引用発明に対する本願発明の進歩性を肯定する理由とすることはできない。続いて、ヘキシレングリコールに代えてグリセリンを配合した参考比較例1について検討する。上記参考試験は、本願明細書段落【0017】に記載した方法、すなわち、各試料100mlをガラスビンに入れ、室温で2日間放置し、析出・クリーミング・油膜などが観察されないものを○、観察されたものを×としたものである。そして、上記参考試験において、本願発明の実施例1の乳化型皮膚外用剤の保存安定性が○の評価を得ている一方、本願発明の実施例1の乳化型皮膚外用剤においてヘキシレングリコールに代えて濃グリセリンを配合した参考比較例1の保存安定性が×の評価を得ている。
しかしながら、上述のように、引用発明のモイスチャークリームは、上記参考試験より厳しい条件のもとで行われた刊行物1記載の試験例1において安定であった旨の評価を受けており、該モイスチャークリームとは組成の異なる参考比較例1の試験結果によって、引用発明の保存安定性の効果が否定されるものではない。
そして、該モイスチャークリームは、本願発明にいうセラミド、リン脂質、ステロール複合物と液状油を含有する乳化型皮膚外用剤に、さらにグリセリンを含有せしめたものに相当するものといえるから、セラミド、リン脂質、ステロール複合物と液状油を含有する乳化型皮膚外用剤にさらにグリセリンを含有せしめたものが、上記参考比較例1以外の組成においても、上記参考比較例1と同様に保存安定性が低いものとすることはできない。
そうすると、上記参考試験の試験結果によっても、本願発明の乳化型皮膚外用剤が実施例1以外の組成を採用する場合には、依然として、審判請求人のいう本願発明に係る優れた保存安定性が、ヘキシレングリコールを使用した場合にのみ見られ、グリセリンでは見られないものとすることはできず、本願発明が引用発明に比較して優れた効果を奏し得たものとはいえない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-01 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2000-49078(P2000-49078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 隆興  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 内藤 伸一
上條 のぶよ
発明の名称 乳化型皮膚外用剤  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 村田 正樹  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 伊藤 健  
代理人 有賀 三幸  
代理人 山本 博人  
代理人 高野 登志雄  

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