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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1229824
審判番号 不服2008-24280  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2011-01-06 
事件の表示 特願2003-304975「樹脂封止型半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月24日出願公開、特開2005- 79179〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成15年8月28日の出願であって、平成20年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成22年8月17日付けで当審による拒絶理由通知がなされ、同年10月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

[2]本願発明
本願請求項1-5に係る発明は、平成22年10月13日付け手続補正書
により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「ダイパッドと、前記ダイパッドを保持する複数本の吊りリードと、前記ダイパッドの上面に搭載され、接着材により固着された前記ダイパッドよりも大きい半導体素子と、前記ダイパッドの周縁に配列され、前記半導体素子の電極パッドと電気的に接続された複数本のインナーリードと、前記複数本のインナーリードにそれぞれ対応して外部との電気接続のために設けられたアウターリードと、前記アウターリードを露出させて他の要素を封止した封止樹脂とを備えた樹脂封止型半導体装置において、
前記ダイパッドは、中央部に配置されたダイパッド本体の周縁部に、前記半導体素子の四隅に対応する四箇所に配置された前記ダイパッド本体よりも小さな円形の小ダイパッドを重ね合わせた形状を有し、前記小ダイパッド各々の部分で前記吊りリードに接続され、
前記ダイパッド本体の下面と前記封止樹脂とが密着し、前記小ダイパッドの下面と前記封止樹脂とが剥離しており、
前記ダイパッド下面の前記封止樹脂との間の密着領域と剥離領域の境界は、前記ダイパッド本体と前記小ダイパッドの境界近傍に位置し、
前記接着剤のダイパッドからのはみ出し量は、ダイパッドの厚みよりも小さいことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」(以下、「本願発明1」という。)

[3]引用刊行物の記載事項
当審による拒絶理由通知において引用された、本出願前に頒布された刊行物1(特開平6-216303号公報)には、図面とともに以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】所定の大きさを有する半導体チップを搭載するためのチップ搭載部と、前記チップ搭載部を支持する吊りリード部と、前記チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置され、かつ搭載されるべき半導体チップの大きさに応じて切断可能な領域を有し、この領域にメッキ層が形成されたインナーリード部および前記インナーリード部に接続され、かつ前記インナーリード部から外方に向かって延在するアウターリード部からなる複数のリードとを備え、前記チップ搭載部の外形寸法は、前記搭載されるべき半導体チップの外形寸法よりも小さいことを特徴とするリードフレーム。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「【0047】さらに、図15に示すように、ダイパッド3の周囲に吊りリード4よりも幾分幅の広い小パッド(あるいは接着剤塗布部ともいう)20を形成し、ダイパッド3およびこの小パッド20のそれぞれの主面上に接着剤15を塗布するようにしてもよい。このようにすると、充分な接着強度が得られるので、
……
【0048】上記小パッド20は、図16に示すように、それぞれの吊りリード4の途中、例えばダイパッド3と中途部Sとの間に形成してもよい。この場合も前記同様の効果を得ることができる。
……
【0053】…ダイパッド3上に半導体チップ2を位置決めしたリードフレーム1をヒートステージ24上で加熱して接着剤15を硬化させる。
……
【0054】…ダイパッド3上に搭載された半導体チップ2のボンディングパッド25とリード5との間をAuのワイヤ26でボンディングし、電気的に接続する。
……
【0058】次に、上記リードフレーム1をモールド金型の装着し、図29に示すように、半導体チップ2、ダイパッド4(「3」の誤記)、インナーリード部5aおよびワイヤ26をエポキシ樹脂などでモールドすることによりパッケージ本体29を成形した…」(第7頁第11欄第1行-同頁第12欄第41行)

(1c)図15には、ダイパッド3と、前記ダイパッドを保持する4本の吊りリード4と、前記ダイパッド3の周縁に配列された複数本のインナーリードからなるインナーリード部5aと、前記複数本のインナーリードにそれぞれ対応して設けられたアウターリードからなるアウターリード部5bとを備え、前記ダイパッド3の外形寸法が、搭載される半導体チップ2の外形寸法よりも小さく、前記ダイパッド3の周縁部には、前記半導体チップの四隅に対応する四箇所に前記ダイパッド本体よりも小さな小パッド20が重ね合わせられるように配置され、前記小パッド20の各々の部分で前記吊りリード4に接続しているリードフレーム1が示されており、図16には、図15のリードフレーム1における小パッド20の位置をそれぞれの吊りパッド4の途中に変更した例が示されており、該小パッド20の形状は円形となっているのが看取できる。

(1d)図29、図30には、引用刊行物1のリードフレームを用いたQFP(表面実装型半導体装置)30の平面図、断面図が示されている。

さらに、上記記載事項(1b)、(1c)において、ダイパッド3と小パッド20とを合わせ、これを一つのダイパッドと見なすと、「中央部に配置されたダイパッド本体の周縁部に、前記半導体チップの四隅に対応する四箇所に配置された前記ダイパッド本体よりも小さな小ダイパッドを重ね合わせた形状を有する」ダイパッドが記載されているともいえる。

したがって、上記記載事項(1a)-(1c)によれば、引用刊行物1には、
「ダイパッドと、前記ダイパッドを保持する4本の吊りリードと、前記ダイパッドの上面に搭載され、接着剤により固着された前記ダイパッドよりも大きい半導体チップと、前記ダイパッドの周縁に配列され、前記半導体チップのボンディングパッドと電気的に接続された複数本のインナーリードと、前記複数本のインナーリードにそれぞれ対応して外部との電気接続のために設けられたアウターリードと、前記アウターリードを露出させて他の要素を封止した封止樹脂とを備えた樹脂封止型半導体パッケージにおいて、
前記ダイパッドは、中央部に配置されたダイパッド本体の周縁部に、前記半導体チップの四隅に対応する四箇所に配置された前記ダイパッド本体よりも小さな小ダイパッドを重ね合わせた形状を有し、前記小ダイパッド各々の部分で前記吊りリードに接続されている樹脂封止型半導体パッケージ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、同じく当審による拒絶理由通知において引用された、本出願前に頒布された特開平7-7124号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)「図4は、トップダウン平面図で、そのようなミニフラグ42を有するリードフレーム40の一部を示している。ミニフラグ42はミリフラグ(「ミニフラグ」の誤記)とプラスチック封止材料(図示せず)の間の合計の境界面積を伝統的な装置のものより小さく保つために半導体ダイ(ライン44として点線で示されている)よりも面積が小さく保たれている。」(第6頁第10欄第7-13行)

(2b)「従来の半導体装置においては、ダイ取付け用接着剤のフィレットは半導体ダイの周囲の部分に形成される。本発明では、フィレットはダイ支持部材の周囲を囲む。本発明にしたがって使用されるダイ取付け用接着剤に対する適切なフィレットは…図5に示されている。
【0026】……半導体ダイはダイ周辺に沿って完全に支持されていないから、ワイヤボンディングの間に周辺のダイの支持を提供することが有利であるかもしれない。」(第7頁第11欄第40-50行)

(2c)図4には、ミニフラグ42上面に、該ミニフラグ42よりも面積の大きい半導体ダイ44が取り付けられるリードフレームの様子が示され、図5には、前記リードフレームを使用し、接着剤によりミニフラグ上面に半導体ダイが取り付けられた半導体装置において、該接着剤がミニフラグ周辺からはみ出し、フィレットを形成している様子が示されている。

[4]対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「4本の」、「接着剤」、「半導体チップ」、「ボンディングパッド」及び「半導体パッケージ」は、それぞれ、本願発明1における「複数の」、「接着材」、「半導体素子」、「電極パッド」及び「半導体装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明とは、
「ダイパッドと、前記ダイパッドを保持する複数本の吊りリードと、前記ダイパッドの上面に搭載され、接着材により固着された前記ダイパッドよりも大きい半導体素子と、前記ダイパッドの周縁に配列され、前記半導体素子の電極パッドと電気的に接続された複数本のインナーリードと、前記複数本のインナーリードにそれぞれ対応して外部との電気接続のために設けられたアウターリードと、前記アウターリードを露出させて他の要素を封止した封止樹脂とを備えた樹脂封止型半導体装置において、
前記ダイパッドは、中央部に配置されたダイパッド本体の周縁部に、前記半導体素子の四隅に対応する四箇所に配置された前記ダイパッド本体よりも小さな小ダイパッドを重ね合わせた形状を有し、前記小ダイパッド各々の部分で前記吊りリードに接続されている樹脂封止型半導体装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
前記ダイパッドにおける小ダイパッドの形状が、本願発明1では「円形」であるのに対し、引用発明では、それが明らかではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記ダイパッド本体の下面と前記封止樹脂とが密着し、前記小ダイパッドの下面と前記封止樹脂とが剥離しており、前記ダイパッド下面の前記封止樹脂との間の密着領域と剥離領域の境界は、前記ダイパッド本体と前記小ダイパッドの境界近傍に位置し」ているのに対し、引用発明では、それが明らかではない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記接着剤のダイパッドからのはみ出し量は、ダイパッドの厚みよりも小さい」のに対し、引用発明では、それが明らかではない点。

そこで、上記相違点について検討する。
・(相違点1)について
上記のとおり、引用刊行物1の図16には、図15に示されるリードフレームにおける小パッドの位置を、ダイパッドの周縁部から、それぞれの吊りリードの途中に変更した例が示され、その小パッドは円形であることが看取できる。とすれば、引用発明における小ダイパッドの形状も同様に円形であるといえるし、あるいは、小ダイパッドの形状を円形とすることは単なる設計的事項にすぎない。

・(相違点2)について
本願明細書の記載(【0011】、【0012】、【0014】、【0016】、【0037】)によると、ダイパッドと、前記ダイパッドを保持する複数本の吊りリードと、前記ダイパッドの上面に搭載され、接着材により固着された前記ダイパッドよりも大きい半導体素子と、前記ダイパッドの周縁に配列され、前記半導体素子の電極パッドと電気的に接続された複数本のインナーリードと、前記複数本のインナーリードにそれぞれ対応して外部との電気接続のために設けられたアウターリードと、前記アウターリードを露出させて他の要素を封止した封止樹脂とを備えた樹脂封止型半導体装置において、前記ダイパッドを「中央部に配置されたダイパッド本体の周縁部に、前記半導体素子の四隅に対応する四箇所に配置された前記ダイパッド本体よりも小さな小ダイパッド(好ましくは円形)を重ね合わせた形状」とすることにより、樹脂封止後の熱ストレスによる膨張と収縮に起因する応力を緩和できるから、ダイパッドの剥離を抑制し、また剥離が発生しても剥離領域を抑制できる(すなわち、「前記ダイパッド本体の下面と前記封止樹脂とが密着し、前記小ダイパッドの下面と前記封止樹脂とが剥離しており、前記ダイパッド下面の前記封止樹脂との間の密着領域と剥離領域の境界は、前記ダイパッド本体と前記小ダイパッドの境界近傍に位置し」ている)ものと認められ、明細書全体の記載を見ても、それ以外の要件が、前記の作用・効果に関与しているものとは認められない。
とすれば、ダイパッドの形状が本願発明1と相違しない引用発明においても、あるいは、引用発明における小ダイパッドの形状を円形とした場合においても、ダイパッド-封止樹脂間の密着、剥離状態については、本願発明1と同様の状態になっている蓋然性が高いことから、この点において実質的に相違しているとはいえない。

・(相違点3)について
上記記載事項(2a)-(2c)によれば、引用刊行物2には、ミニフラグ(「ダイパッド」に相当)上面に、該ミニフラグよりも面積の大きい半導体ダイ(「半導体チップ」あるいは「半導体素子」に相当)が接着剤により取り付けられた半導体装置において、該接着剤の適切な状態として、該接着剤がはみ出した状態のものが示されており、また、前記ミニフラグよりも半導体ダイの面積が大きい半導体装置では、ダイ周辺部は完全に支持されていないから、ワイヤボンディングの間に何らかの支持をすると好ましい旨の示唆もある。
とすれば、同様に、ダイパッド上面に、該ダイパッドよりも外形寸法の大きい(面積の大きい)半導体チップを接着剤により取り付ける引用発明において、接着剤がはみ出した状態として取り付けることは当業者が容易になしえたことであり、その際、はみ出し量をどの程度とするかは、ダイパッド及びダイの大きさ、あるいはダイ周辺部の補強効果等も勘案し適宜決定すべき設計的事項にすぎない。

そして、本願発明1が、引用刊行物1、2に記載された事項からは予想し得ない効果を奏するものとも認められない。
よって、本願発明1は、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]むすび
上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2-5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-05 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2003-304975(P2003-304975)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越本 秀幸今井 淳一  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 川端 修
鈴木 正紀
発明の名称 樹脂封止型半導体装置  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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