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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1230575 |
審判番号 | 不服2009-19177 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-07 |
確定日 | 2011-01-13 |
事件の表示 | 特願2004- 81354「画像形成用トナー及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開、特開2005-266557〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年3月19日の出願であって、平成21年7月10日付で拒絶査定がなされたものであり、これに対し、同年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 さらに、平成22年1月13日付で審尋がなされたところ、審判請求人から同年3月18日付で回答書が提出されたものである。 2.平成21年10月7日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年10月7日付の手続補正を却下する。 [理由] 2-1.補正内容 本件補正は、平成20年2月4日付手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の (1)「 【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナー母体粒子に無機微粒子を外添させてなる画像形成用トナーであって、 前記トナー母体粒子に、粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下の無機微粒子Aを、前記トナー母体粒子表面の極性とは異なる極性の界面活性剤の存在下、水系媒体中にトナー母体粒子及び無機微粒子Aを分散させて行う湿式処理により付着してなる ことを特徴とする画像形成用トナー。」 を、 (2)「 【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナー母体粒子に無機微粒子を外添させてなる画像形成用トナーであって、 前記トナー母体粒子に、粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下であり、かつ体積平均粒径が50?500nmである無機微粒子Aを、前記トナー母体粒子表面の極性とは逆極性の界面活性剤の存在下、水系媒体中にトナー母体粒子及び無機微粒子Aを分散させて行う湿式処理により付着してなる ことを特徴とする画像形成用トナー。」 と補正しようとする補正事項が含まれている。(以下、この補正を「本件補正」という。なお、下線は補正箇所。) 本件補正は、 補正前の請求項1記載の「粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下の無機微粒子A」を、「粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下であり、かつ体積平均粒径が50?500nmである無機微粒子A」に限定補正するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-2.引用例 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平4-16860号公報(原査定の引用文献1。以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。) (1a)「【特許請求の範囲】(1) 合成樹脂を主成分とし所定の粒子径を成す静電潜像現像用トナー粒子本体と、この静電潜像現像用トナー粒子本体表面に被着し被覆する外添剤とを具備し、 前記外添剤が静電潜像現像用トナー粒子本体およびこのトナー粒子本体よりも小さな粒子径を有する外添剤を含む混合分散液中で、分散液の温度をトナー粒子本体を構成する合成樹脂のガラス転移点温度より高い温度に保ちつつ撹拌・被覆して形成されたことを特徴とする静電潜像現像用トナー。」 (1b)「ところで、前記(a)-(b)の場合、つまり乾式現像用のトナーは、一般に次のようにして製造されている。第1の手段は混練粉砕式あるいは溶融混線式と呼ばれる方法である。すなわち、熱可塑性樹脂を母体とし、さらに着色剤と必要により磁性材粉末、摩擦帯電制御剤、離型剤などを加えて加熱溶融混練した後、冷却化して粉砕分級し、一般的には8?20μmの平均粒子径のトナー粒子を得、さらに流動性や帯電性の改善を行うために疎水性シリカ微粒子や酸化チタン微粒子などの、いわゆる外添剤あるいは表面処理剤を添加混合して、表面を外添剤などで被覆することにより所望の静電潜像現像用トナーを得る方法である。」(2頁左上欄20行?右上欄12行) (1c)「(作用) 本発明に係る静電潜像現像用トナーは、合成樹脂を主成分して成るトナー粒子本体と、このトナー粒子本体表面を被覆する外添剤層とを有し、かつ前記外添剤層がトナー粒子本体表面に熱融管した形で被着し一体化した構成を成している。すなわち、本発明によれば、合成樹脂を主成分して成るトナー粒子本体および疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナなどの金属酸化物、ポリフッ化エチレンなどのフッ素樹脂など流動性や凝集性の改良あるいは帯電性の改良などを目的とした外添剤を水などの分散液中に界面活性剤を用いたりした適切な条件下で分散し、その分散系を前記トナー粒子本体を成す樹脂のガラス転移点以上に加熱し、適度の撹拌を行うことを骨子としている。しかして、前記ガラス転移点以上の温度での適度の撹拌により、軟化したトナー粒子本体表面に微小径の外添剤粒子が容易に被着して、均一で強固な被覆がなされる。したがって、本発明に係る静電潜像現像用トナーは、耐久性、定着性、保存性および画質などにすぐれた性能を常に発揮する。また製造も、液中分散懸濁形でなされるため、静電潜像現像用トナー粒子本体および被覆する外添剤を、均一にしかも長時間分散維持することができ、温度の制御も容易で均一にかつ、高精度で行える結果、所望のトナー表面処理が可能となる。」(4頁右上欄8行?左下欄13行) (1d)「 また、本発明においては、分散、重合時に単量体組成物、あるいは後述する外添剤の分散を促進するために界面活性剤を用いることが好ましい。 このような界面活性剤として、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、アリル-アルキル-ポリエーテルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルンウム、3,3-ジスルホンジフェニル尿素-4,4-ジアゾ-ビス-アミノ-8-ナフトール-6-スルホン酸ナトリウム、オルト-カルボキシベンゼン-アゾ-ジメチルアニリン、2.2.5.5-テトラメチル-トリフェニルメタ、シー4.4-ジアゾービスーβ-ナフトール-ジスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。」(5頁左下欄19行?右上欄16行) (1e)「 実施例1 第1図は本実施例における静電潜像現像用トナーの製造工程を示めすフローチャートであり、先ずスチレンモノマー85部、アクリル酸ブチル15部およびアクリル酸3部からなる重合性単量体混合物を、水100部、ノニオン乳化剤(エマルゲン950)1部、アニオン乳化剤(ネオゲンR)1.5部、過硫酸カリウム0,5部からなる水性分散液中に添加し、撹拌しながら70℃で8時間重合Aを行い、エマルジョンを得た。 次に、上記で得たエマルジョン100部に、マグネタイト1.5部、カーボンブラック(リーガル330R)5部を、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部を含む水Bを加え、ジエチルアミンを添加してpHを5.5に調整し懸濁重合用反応分散液を得た。その後、前記懸濁重合用反応分散液を予備撹拌してからナノマイザで分散させ、さらにこの反応分散液を撹拌しながら60℃に加熱し、過酸化水素を添加し6時間重合Cを行った。 なお、前記重合段階Cで重合性単量体の油滴を少しずつ滴下して重合と造粒を並行して進める方法も知られているが、本実施例では、この時点での重合生成した樹脂粒子の粒径は約0.5?1μm程度であった。この反応分散系Cをさらに80?90℃に除々に昇温し、30分ないし4時間程度保持することにより、造粒Dされる樹脂微粒子の粒子径は2?20μmの範囲で変化させることができる(造粒工程)。本実施例では3時間(90℃)維持することにより約11μmの樹脂粒子(トナー粒子本体)を作った。 上記で得た造粒粒子(トナー粒子本体)の一部を取出して水洗し、45℃で減圧乾燥を10時間行って得たトナー粒子本体を、示差走査熱量計(DSC50島津製作所)によりガラス転移点を測定したところ62℃であった。 一方、前記造粒の終わったトナー粒子本体を水洗し、浮遊成分を除去した後、水600部の中に分散し、次いで粒径が15?20μm(ミリミクロン)の疎水性シリカ微粉(R972)6部をメタノール50部に予め高速撹拌機(ナノマイザ)により分散湿潤した後に前記粒子分散液に加えた。なお、重合造粒の終わった段階で水洗せずにそのまま疎水性シリカ微粉を分散してもよく、工程の簡略化になる利点があるが反応残留物が多い場合には簡単なすすぎ洗いをするのが好ましい。粒子を完全に洗浄した場合には再度重合工程で用いた界面活性剤を0.05?0.1部加えて樹脂粒子と外添剤の分散を図ることが好ましい。 次に、上記分散液を2?4℃/分程度の速度で昇温しながら80℃にまで昇温した後、30?70分保持しながらプロペラ式撹拌機(ホモジナイザー)により比較的激しい乱流を起こす程度の撹拌処理Eを行い、前記樹脂粒子の表面に外添剤層を被着形成した。しかる後、ろ紙を用いて水を除き、蒸溜水により洗浄Fを行い、45℃で減圧乾燥Gを10時間行い表面処理(外添剤被覆)された乾燥トナー粒子を得、このトナー粒子を分級機にかけ粗大粒子を除去Hした。この分級工程Hは粗大粒子が発生しなければ不要であり、本発明では必須の工程ではない。 次いで、上記で得たトナー粒子について、コールタ-カウンターで粒径の分布を測定したところ、50%平均粒子径は12.5μmであった。このトナー粒子1kg当り、電子写真用フェライトキャリアー(FSL1020B)を40gの割合で混合して二成分現像剤を作成し。」(6頁左上欄14行?右下欄20行) (1f)「 また、この二成分現像剤(トナー)の帯電量を、市販のブローオフ帯電量測定機で測定したところ、マイナス34μc/g(マイクロクーロン/グラム)であった。さらに、トナーの保存性テストのため、ポリエチレン容器の中に入れて50℃の水槽の中に20時間放置した後も、凝集や固化は全く認められなかった。さらにまた、トナーの流動性について、定量的評価は省略したが、透明容器を振ることによる既存のトナーとの官能比較テストでも、より高い流動性を持つことが容易にわかった。 このトナーを用いて市販の電子写真複写機(BD5110東芝製)で複写画像を撮ったところ、画像濃度および白地部地汚れ、鮮鋭度あるいは定着性などいずれもテスト複写機の正規の現像剤と同等以上の初期特性が得られた。さらに、この現像剤の耐久性をテストするため、上記と同一の条件でトナーを多量に作り 5万枚に及ぶ複写を行ったが、感光体へのトナー成分のフィルミングが殆ど認められず、また画質の変化も正規現像剤に比べて格段に少なく、耐刷性の向上が確認された。 さらに、このトナーを電子顕微鏡で観察したところ、形状は熱溶融によりほぼ完全な球形を呈しており、その表面は極めて均一かつ緻密に疎水性シリカで被覆されていた。しかも、この外観は寿命テストを行った後もほとんど変化が認められなかった。これは、前記製造の過程で樹脂粒子本体が軟化温度あるいはガラス転移点より高い温度下に置かれ、粘性を持った状態でシリカ粒子と接触するため、完全に粘着あるいは融着するために強い力で被覆されていることによると判断される。 しかも、前記被覆された外添剤は、トナー粒子本体の内部に全体的に埋没せずに、表面に露出した状態で付着(被着)しており、これが本発明トナーの最も大きな特徴となるもので、これにより、従来の添加方法では実現できなかった高い流動性や保存性(耐ブロッキング性)あるいは高耐久性を呈する原因と判断される。また、キャリアーへのシリカの付着が殆ど認められないのは、万一付着しているだけかあるいは浮遊しているだけのシリカが存在していても、被覆処理後の洗浄により除去されてしまい、最終的には存在しないことも寄与しているためと判断される。」(7頁左上欄1行?左下欄2行) これら記載によれば、引用例1には(特に、前記(1e)(1a)参照)、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。 「スチレンモノマー85部、アクリル酸ブチル15部およびアクリル酸3部からなる重合性単量体混合物を、水100部、ノニオン乳化剤(エマルゲン950)1部、アニオン乳化剤(ネオゲンR)1.5部、過硫酸カリウム0,5部からなる水性分散液中に添加し、撹拌しながら70℃で8時間重合Aを行い、エマルジョンを製造し、 次に、上記で得たエマルジョン100部に、カーボンブラック(リーガル330R)5部を、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部を含む水Bを加え、ジエチルアミンを添加してpHを5.5に調整し懸濁重合用反応分散液を製造し、 過酸化水素を添加し6時間重合Cを行い、 この反応分散系Cをさらに3時間(90℃)維持することにより約11μmの造粒粒子(トナー粒子本体)を作り、 一方、前記造粒の終わったトナー粒子本体を完全に洗浄し、浮遊成分を除去した後、水600部の中に分散し、次いで粒径が15?20ミリミクロンの疎水性シリカ微粉(R972)6部をメタノール50部に予め高速撹拌機(ナノマイザ)により分散湿潤した後に造粒粒子分散液に加え、重合工程で用いた界面活性剤を0.05?0.1部加えて造粒粒子と外添剤の分散を図り、 次に、上記分散液を撹拌処理Eを行い、造粒粒子の表面に外添剤層を被着形成することにより、製造された、 静電潜像現像用トナー。」 (2)引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平3-267945号公報(原査定の引用文献2。以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2a)「 【特許請求の範囲】1. 粒子形状が球状であり、平均粒子径が0.05?1.0μmの範囲にあり、粒子径の変動係数が0?30%である無機酸化物系微粒子を含有してなることを特徴とする電子写真用現像剤。」 (2b)「 また、従来静電潜像を現像する現像剤の構成材料として、流動性付与、凝集性防止などの目的で、疎水化した又は疎水化していないシリカ、アルミナ、チタニア等の無機酸化物、硫化物、窒化物の微粉末を外添して、トナー粒子の表面に付着させることは公知である。そしてこれらの微粉末は、一般に0.5μm以下、殊に0.1μm以下の微粒子として用いられている(特公昭45-16219号、特開昭56-128956号、同59-123849号、同61-14845号公報参照)。 例えば、負帯電現像剤においては、二酸化ケイ素微粉末が用いられ、又、正帯電用現像剤においては、例えば、特開昭61-148454号公報に記載されているイミノシラン化合物で処理したシリカ、特開昭59-123849号公報に記載されている特殊なアンモニウム塩を分子構造に含むシランカップリング剤処理を施したシリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物微粉末を用いることが知られている。 一方、特開昭60-122958号公報には、ロール定着におけるトナー表面のつぶれを防止する目的で、粒径0.1?20μmの炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウムの微粒子を単独又は混合して含有するトナーが開示されている。」(2頁右上欄13行?左下欄17行) (2c)「〔課題を解決するための手段] 本発明者等は、鋭意研究の結果、上記電子写真用現像剤に粒子形状が球形であり、平均粒径が005?1.0μmの範囲にあり、粒子径の変動係数が0?30%である無機酸化物系微粒子を含有すると現像剤の現像性及び摩擦帯電量の低下が改善されることを発見して、本発明を完成した。」(3頁左上欄14行?20行) (2d)「 上述した好ましい製法例によれば、球状で、粒子径の変動係数が15%以下の非常に粒度分布のシャープな微粒子が得られる。 本発明に用いる無機酸化物系微粒子の平均粒子径は0.05?1.0μmの範囲にあるのが好まい。0.05μmより小さいと単分散することが困難となりトナーの各粒子に均一に混合されないことがあり、1.0μmより大きいと、トナー粒子表面に不均一な付着がおこり、好ましくない。 さらに、平均粒子径が0.05?1.0μmの範囲であっても、粒子径の変動係数が30%を超えると、すなわち、粒度分布が広くなると、分散性およびトナー粒子表面への付着性に問題がおこるためか好ましくない場合がある。」(4頁左下欄18行?右下欄11行) (2e)「 本発明において、トナーとの混合に際して用いる混合手段としては、当業界において周知の手段が使用できる。例えばヘンシェルミキサー、ナウターミキサ-、ボールミル、V型混合機、タープラミキサ-、ペイントリェイカー等が使用できる。本発明においては、高速撹拌羽根を内部にもち、剪断力によって粒子の分散を行う型の混合機、例えばヘンシェルミキサー等が好適である。又、容器が単純に回転する型の混合機、例えば、V型混合機であってもスチールボールやガラスピーズ等を封入し、それらによる解砕力を利用すれば有利に使用することができる。」(5頁左下欄20行?右下欄11行) (2f)「 本発明の電子写真用現像剤は、上記トナーに上記無機酸化物系微粒子及び必要に応じてその他の外添剤を添加し、上記した混合手段を用いて混合することによって製造することができ、それによって無機酸化物系微粒子及び必要に応じて添加された外添剤がトナー粒子表面に付着した状態になる。なお、得られた電子写真用現像剤に熱風をあてて、無機酸化物系微粒子その他の外添剤を粒子表面に固着させてもよい。」(6頁左下欄2行?10行) (2g)「 (粒子形状) 1万倍の走査型電子顕微鏡観察により判定した。 (平均粒子径、変動係数) 1万倍の走査型電子顕微鏡像の任意の粒子100個の粒子径を実測して、下記の式より求めた。 平均粒子径(X) = Σ Xi/n 変動係数(CV) = 100σn/X」(6頁右下欄6行?12行) (2h)「 すなわち200℃に加熱された上記真空瞬間蒸発装置の長管の一端に定量ポンプで上記濃縮懸濁液を15 kg/hrの流量で供給し、他端より50Torrに保たれたバッグフィルターを備えた粉体捕集室に導き、シリカ球状微粒子粉体を得た。得られた粉体を微粒子(A)とする。 微粒子(A)は、走査型電子顕微鏡観察より平均粒子径0.50μmの真球状微粒子であり、X線回折測定より非晶質であることが確認された。微粒子(A)の諸物性を表-2に示す。」(7頁左上欄7行?16行) (2i)「表2 」(8頁左下欄) 表2には、合成例1?10の無機酸化物系微粒子(合成例1?10の微粒子(A)?(J))の平均粒子径が、0.20?0.50(μm)であり、粒子径の変動係数が、4?7(%)であることが、が示されている。 (2j)「比較例2 微粒子(A)の代わりに平均粒径0.016μmのシリカ微粉末(商品名:R972、日本アエロジル社製)0.5部を外添した他は実施例1と同様にして、現像剤を得、コピーテストを行なった。地かぶり、トナーの飛びちりはおこらなかったが、35℃/85%RHの環境下においては、地かぶり、トナーの飛びちりがおこり、15℃/l0%RHの環境下においては、画像濃度の低下が著しかった。」(12頁左下欄1行?10行) (3)引用例3 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2004-54139号公報(原査定の引用文献3。以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (3a)「【請求項6】 少なくとも樹脂、着色剤からなるトナー組成物を重合性単量体に溶解または分散し、該溶解物または分散物を水系媒体中で界面活性剤の存在する水系媒体中で乳化分散し、得られた乳化分散液を重合して得られるトナーの製造方法において、該界面活性剤と逆極性の界面活性剤及び帯電制御剤を乳化分散工程後に添加することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項7】 少なくとも樹脂、着色剤からなるトナー組成物を水系媒体中で分散し、該分散物を水系媒体中で界面活性剤の存在する水系媒体中で凝集させ、該凝集物を加熱融着させて得られるトナーの製造方法において、該界面活性剤と逆極性の界面活性剤及び帯電制御剤を加熱融着工程後に添加することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項8】 少なくとも樹脂、着色剤からなるトナー組成物を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を水系媒体中で界面活性剤の存在する水系媒体中で乳化分散し、得られた乳化分散液の有機溶剤を除去して得られるトナーの製造方法において、該界面活性剤と逆極性の界面活性剤及び帯電制御剤を乳化分散工程後に添加することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項9】 少なくとも樹脂、着色剤からなるトナー組成物を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を水系媒体中で界面活性剤の存在する水系媒体中で乳化分散し、該溶解物または分散物を重付加反応させ、得られた乳化分散液の有機溶剤を除去して得られるトナーの製造方法において、該界面活性剤と逆極性の界面活性剤及び帯電制御剤を乳化分散工程後に添加することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。」 (3b)「【請求項11】 請求項1?10のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法において、界面活性剤と逆極性の界面活性剤がフッ素系の界面活性剤であることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項12】 請求項11に記載の電子写真用トナーの製造方法において、界面活性剤と逆極性の界面活性剤がフッ素系の界面活性剤としてパーフルオロアルキル基を有すカチオン活性剤であることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【請求項13】 請求項11または12に記載の電子写真用トナーの製造方法において、界面活性剤と逆極性の界面活性剤が下記(1)式で示される化合物であることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。 【化1】 (式中、 X:-SO2-又は-CO-、 R1、R2、R3、R4:水素原子、炭素数1?10の低級アルキル基又はアリール基、 Y:I又はBr、 r、s:1?20の整数を表わす。)」 (3c)「【0037】 【発明の実施の形態】 以下、本発明をさらに詳細に説明する。 本発明においては、重合性単量体や有機溶剤を用いているために、特に水系媒体中に存在させた界面活性剤が重合性単量体や有機溶剤と親和性が高い場合に粒子表面に残存し易い。また、乳化重合凝集法においては凝集後融着させる際に内部に界面活性剤が残存し易い。従って用いた界面活性剤と逆極性の界面活性剤を粒子形成後に作用させ、優先的に吸着させることによってその影響を排除できる。」 (3d)「【0040】 また、逆極性の界面活性剤を粒子形成後に作用させる際に帯電制御剤を同時に表面に付着させることによりさらに帯電レベルを上げ、維持することができる。その方法としてトナーのサイズよりもずっと小さな(1μm以下が好ましい)帯電制御剤の水性媒体分散体を作成し、逆極性の界面活性剤を粒子形成後に作用させることによって逆極性の界面活性剤の吸着と帯電制御剤の微粒子をトナー表面に均一に付着することができる。この時の帯電制御剤の水性媒体分散体の水中での荷電は乳化後の粒子と同一荷電であることが均一に付着させるためには望ましい。 【0041】 また、帯電制御剤としては樹脂微粒子も好ましい。特に乳化重合体であれば細かく安定に分散しているためにそのまま使用することができる。特にフッ素化合物が配合、共重合されていたり、モノマーとしてスチレンとメタクリル酸を用いたものが特に帯電性に対し優れている。」 (3e)「【0050】 トナー粒子は、水系媒体中で例えばイソシアネート基を有するプレポリマーとその他のトナー組成物からなる揮発性有機溶剤中の分散体を、アミン類と反応させて形成しても良い。水系媒体中でプレポリマーとトナー組成物からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にプレポリマーからなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。」 (3f)「【0064】 得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。 具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。」 (3g)「【0065】 (表面処理方法) これらいずれのトナー製造法に共通して、液中で帯電制御付与の表面処理を施すことができる。トナー粒子が水中で形成され、用いた界面活性剤等を洗浄によって除去した後に、本工程を行なうのが好ましい。水中に存在している余剰の界面活性剤をろ過、遠心分離などの固液分離操作をして除去し、得られたケーキ、スラリーを水系媒体中に再分散する。 その後逆極性の界面活性剤水溶液を攪拌下徐々に添加する。逆極性の界面活性剤はトナー粒子固形分に対し0.01?1重量%使用することができる。」 (3h)「【0066】 また、帯電性を補強する目的で再分散したスラリー中に帯電制御剤微粒子分散体を存在させておくこともできる。帯電制御剤は通常粉体の形態であるが、水系媒体中で粒子を製造した時に用いた界面活性剤や帯電付与の目的で添加する逆極性の界面活性剤を用いて別途水系媒体中で分散することによって微粒子分散体を得ることができる。逆極性の界面活性剤の添加によって帯電制御剤微粒子分散体の水中での荷電が中和され、トナー粒子表面に凝集付着させることができる。 帯電制御剤は0.01?1μmの粒子径の分散体であることが好ましく、トナー粒子固形分に対し0.01?5重量%使用することができる。」 (3i)「【0067】 またさらに、帯電性を補強する目的で再分散したスラリー中に樹脂微粒子分散体を存在させておくこともできる。樹脂微粒子分散体は乳化重合によって得られたものが好ましい。逆極性の界面活性剤の添加によって樹脂微粒子分散体の水中での荷電が中和され、トナー粒子表面に凝集付着させることができる。この樹脂微粒子はトナー粒子固形分に対し0.01?5重量%使用することができる。」 (3j)「【0068】 これらトナー表面に付着させた帯電制御剤微粒子や樹脂微粒子は、その後スラリーを加熱することによりトナー表面に固定化し、脱離を防止することができる。その際トナーを構成する樹脂のTgよりも高い温度にて加熱することあのぞましい。乾燥後加熱処理を行なっても良い。」 (3k)「【0071】 (界面活性剤) アニオン性の界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。」 (3m)「【0130】 (外添剤) 本発明で得られた着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ?2μmであることが好ましく、特に5mμ?500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20?500m2/gであることが好ましい。 【0131】 この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01?5重量%であることが好ましく、特に0.01?2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。 【0132】 この他高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。 【0133】 このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。」 (3n)「【0149】 (実施例2) 密閉されたポット内に前記のポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液200部、カルナウバワックス5部、銅フタロシアニンブルー顔料4部を仕込み5mmφのジルコニアビーズを用いて24時間ボールミル分散を行なった。その後イソシアネート含有プレポリマーを固形分換算で20部加え攪拌混合し、トナー組成物を得た。ビーカー内にイオン交換水600部、リン酸三カルシウム60部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部を入れ均一に溶解分散した。ついで20℃にビーカー内温を保ち、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)で12000rpmに攪拌しながら、上記トナー組成物にケチミン化合物を1部乳化直前に混合した油相を調製後投入し3分間攪拌乳化した。ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のフラスコに移し、30℃、50mmHgの減圧下で8時間溶剤を除去した。ガスクロマトグラフィーにより分散液中の酢酸エチルは100ppm以下になっていることを確認した。その後分散液を室温まで冷却し、35%濃塩酸を120部加え、リン酸三カルシウムを溶解した。その後1時間室温下で攪拌をした後に、濾別、得られたケーキを蒸留水に再分散してろ過する操作を3回繰り返し洗浄した。得られたケーキをさらに蒸留水に固形分10重量%になる様に再分散した。そこへ攪拌下、ステアリルアミン酢酸塩の1重量%水溶液をトナー固形分に対しステアリルアミン酢酸塩純分が0.3重量%となるように徐々に添加した。その後1時間室温下攪拌をした後に、ろ過分離し、得られたケーキを40℃24時間減圧乾燥しトナー母体粒子を得た。ついで、このトナー母体粒子100部に疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合して、本発明のトナーを得た。」 (3p)「【0152】 (実施例4) 実施例2のステアリルアミン酢酸塩の1重量%水溶液の代わりに(1)式の化合物であるN,N,N,-トリメチル-[3-(4-ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム、ヨージド製品名フタージェント310(ネオス社製)1重量%水溶液を同量加えた他は同様に操作し、本発明のトナーを得た。」 (3q)「【0153】 (帯電制御剤分散液1の作成) 密閉されたポット内にジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛塩10部と蒸留水100部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を入れ、5mmφのジルコニアビーズを用いて24時間ボールミル分散を行ない帯電制御剤分散液1を得た。ジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛塩はすべて1μm以下に分散されていた。」 (3r)「【0154】 (実施例5) 密閉されたポット内に前記のポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液200部、カルナウバワックス5部、銅フタロシアニンブルー顔料4部を仕込み5mmφのジルコニアビーズを用いて24時間ボールミル分散を行なった。その後イソシアネート含有プレポリマーを固形分換算で20部加え攪拌混合し、トナー組成物を得た。ビーカー内にイオン交換水600部、リン酸三カルシウム60部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部を入れ均一に溶解分散した。ついで20℃にビーカー内温を保ち、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)で12000rpmに攪拌しながら、上記トナー組成物にケチミン化合物を1部乳化直前に混合した油相を調製後投入し3分間攪拌乳化した。ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のフラスコに移し、30℃、50mmHgの減圧下で8時間溶剤を除去した。ガスクロマトグラフィーにより分散液中の酢酸エチルは100ppm以下になっていることを確認した。その後分散液を室温まで冷却し、35%濃塩酸を120部加え、リン酸三カルシウムを溶解した。その後1時間室温下で攪拌をした後に、濾別、得られたケーキを蒸留水に再分散してろ過する操作を3回繰り返し洗浄した。得られたケーキをさらに蒸留水に固形分10重量%になる様に再分散した。そこへ攪拌下、前記の帯電制御剤分散液1をトナー固形分に対しジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛塩の純分が1重量%となるように徐々に添加した。さらにフタージェント310(ネオス社製)1重量%水溶液をトナー固形分に対しFT310純分が0.3重量%となるように徐々に添加した。その後1時間液温60℃で攪拌をした後に、室温まで冷却、ろ過分離し、得られたケーキを40℃24時間減圧乾燥しトナー母体粒子を得た。ついで、このトナー母体粒子100部に疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合して、本発明のトナーを得た。」 (3s)「【0165】 【表10】 」 表10には、逆極性の界面活性剤で処理することにより、優れた帯電特性を付与することができることが示されている。 2-3.対比 本願補正発明と引用例発明とを対比する。 引用例発明の「造粒粒子」は、重合性単量体混合物の合成樹脂とカーボンブラックとを含有するものであり、本願補正発明の「少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナー母体粒子」に相当する。 引用例発明の「疎水性シリカ微粉(R972)」は外添剤であるから、本願補正発明の「無機微粒子A」に相当し、 引用例発明の「造粒粒子の表面に外添剤層を被着形成することにより、製造された、静電潜像現像用トナー」は、本願補正発明の「トナー母体粒子に無機微粒子を外添させてなる画像形成用トナー」に相当し、 さらに、引用例発明の「(造粒粒子と疎水性シリカ微粉(R972)と界面活性剤との)(水中)分散液を撹拌処理Eを行い、造粒粒子の表面に外添剤層を被着形成する」ことは、本願補正発明の「無機微粒子Aを、界面活性剤の存在下、水系媒体中にトナー母体粒子及び無機微粒子Aを分散させて行う湿式処理により付着してなる」ことに相当する。 そうすると、両者は 「 少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナー母体粒子に無機微粒子を外添させてなる画像形成用トナーであって、 前記トナー母体粒子に、無機微粒子Aを、界面活性剤の存在下、水系媒体中にトナー母体粒子及び無機微粒子Aを分散させて行う湿式処理により付着してなる 画像形成用トナー。」 で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明では、「無機微粒子A」について、「粒度分布における体積分布の変動係数」が50%以下であり、かつ、「体積平均粒径」が50?500nmであるのに対し、 引用例発明では、「疎水性シリカ微粉(R972)」について、「粒度分布における体積分布の変動係数」について言及がなく、粒径が15?20ミリミクロンである点。 [相違点2] 本願補正発明では、湿式処理により付着することを「トナー母体粒子表面の極性とは逆極性の界面活性剤の存在下で行う」のに対し、引用例発明では、造粒粒子の表面に外添剤層を被着形成することを「重合工程で用いた界面活性剤の存在下で行う」ものである点。 2-4.判断 これらの相違点について、以下検討する。 (1) 相違点1について 引用例1には、「疎水性シリカ微粉(R972)」は、流動性や帯電性の改善を行うための、「いわゆる外添剤あるいは表面処理剤」であることが記載されているが(前記(1b)参照)、その「粒度分布における体積分布の変動係数」について言及がない。 そして、引用例発明において「疎水性シリカ微粉(R972)」の粒径が、15?20ミリミクロンであることは、その粒径が1500?2000nmであるということであり、その「体積平均粒径」は、50?500nmの範囲に含まれるものではない。 そこで、引用例2の記載を見ると、引用例2には、 従来静電潜像を現像する現像剤の構成材料として、流動性付与、凝集性防止などの目的で、トナー粒子の表面に外添させる無機酸化物系微粒子であって、疎水化した又は疎水化していないシリカ、アルミナ、チタニア等の無機酸化物、硫化物、窒化物のトナー粒子の表面に外添させる無機酸化物系微粒子は、粒子形状が球形であり、一般に0.5μm以下、殊に0.1μm以下で平均粒径が0.05?1.0μmの範囲にあり、粒子径の変動係数が0?30%である無機酸化物系微粒子を使用することにより、現像剤の現像性及び摩擦帯電量の低下が改善されることが、記載されている(前記(2b)参照)(前記(2c)参照)(前記(2d)参照)。 さらに、引用例2には、無機酸化物系微粒子の平均粒子径は0.05?1.0μmの範囲にあるのが好ましく、0.05μmより小さいと単分散することが困難となりトナーの各粒子に均一に混合されないことがあり、1.0μmより大きいと、トナー粒子表面に不均一な付着がおこり、好ましくないこと、が記載されている(前記(2d)参照)。また、引用例2には、粒子径の変動係数が30%を超えると、すなわち、粒度分布が広くなると、分散性およびトナー粒子表面への付着性に問題がおこるためか好ましくないこと、が記載されている(前記(2d)参照)。 そして、具体例として、平均粒子径が0.20?0.50(μm)であり、粒子径の変動係数が4?7(%)である合成例1?10の無機酸化物系微粒子に対して、平均粒子径0.016μm比較例2のシリカ微粉末(商品名:R972、日本アエロジル社製)は、35℃/85%RHの環境下においては地かぶりやトナーの飛びちりがおこり、15℃/l0%RHの環境下においては、画像濃度の低下が著しかったことが記載されている(前記(2j)参照)。 これらのことから、引用例2には、外添剤としての無機酸化物系微粒子は、均一な外添をさせる点から、平均粒子径が、0.016μmすなわち16nm程度である従来の疎水性シリカ微粉(R972)よりも大きく、0.20?0.50μmすなわち200?500nmであり、かつ、粒子径の変動係数が4?7(%)である、という技術的事項が記載されているといえる。なお、引用例2において記載されている平均粒子径は、体積平均粒子径でなく個数平均粒子径である(前記(2g)参照)が、桁が違うほど数値が大きく異なることはない。 そうすると、引用例発明における外添剤としての無機酸化物系微粒子について、粒径が15?20ミリミクロンの「疎水性シリカ微粉(R972)」に換えて、上記引用例2に記載の技術的事項を適用して、本願補正発明のように「粒度分布における体積分布の変動係数」が50%以下であり、「体積平均粒径」が50?500nmの範囲に設定することは、当業者が容易に想到しうることである。 (2) 相違点2について 引用例発明において、重合A工程で用いた界面活性剤は「ノニオン乳化剤(エマルゲン950)、アニオン乳化剤(ネオゲンR)」であり、重合C工程で用いた界面活性剤は「ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム」であるから、引用例発明において「重合工程で用いた界面活性剤」は、いずれにしても界面活性剤の極性は、アニオン性である。 引用例発明において、「造粒粒子」の極性は明示されていないが、アクリル酸基を有していること、重合工程でアニオン界面活性剤が使用されていることなどからみて、引用例発明の「造粒粒子」の極性は、アニオン性であるということができる。 これらのことから、引用例発明においては、外添剤層の被着形成が「造粒粒子」の極性と同極性の界面活性剤の存在下で行われるものであり、逆極性の界面活性剤の存在下で行われるものでない。 なお、引用例1において、外添剤の分散を促進するための界面活性剤は、アニオン界面活性剤に限定されているものではない(前記(1d)参照)。 しかしながら、引用例3には、懸濁重合法や乳化重合凝集法において、トナー表面に界面活性剤が残存し、用いた界面活性剤と逆極性の界面活性剤を粒子形成後に作用させることにより、優先的に吸着させることによってその影響を排除できることが、記載されている(前記(3c)参照)。 また、引用例3には、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子をトナー表面に固定化することが、記載されている(前記(3f)参照)。 また、引用例3には、液中で帯電制御付与の表面処理を施すことができ、その際、用いた界面活性剤と逆極性の界面活性剤を使用することが、記載されている(前記(3g)参照)。 また、引用例3には、着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができることが、記載されている(前記(3m)参照)。 上記引用記載事項のよれば、引用例3には、帯電性を補助するための外添剤をトナー表面に固定化する表面処理を液中で行う際に、使用した界面活性剤と逆極性の界面活性剤の存在下で行うという技術的事項が、記載されているということができる。 そうすると、引用例発明における、造粒粒子の表面に外添剤層を被着形成することを「重合工程で用いた界面活性剤の存在下で行う」ことに換えて、上記引用例3に記載の技術的事項を適用して、重合工程で用いた界面活性剤と極性の異なる界面活性剤の存在下で行うことは、当業者が容易に想到しうることである。 (3)作用効果 本願明細書には、粒子特性が規定された無機微粒子をトナー粒子表面に付着させることで、より均一な帯電性、現像性、経時での帯電安定性を示すという効果が記載されている(明細書【0025】参照)。 しかしながら、粒子特性が規定された無機微粒子が帯電性、現像性において優れることは、前記(1)相違点1についての検討、において説示したように、引用例2にすでに開示されている技術事項である。そうすると、本願明細書に記載のこの効果は、格別の効果ということができない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例発明、及び、引用例2?引用例3に記載の技術事項、に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2-5.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3-1.本願の請求項1に係る発明 平成21年10月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?27に係る発明は、平成20年2月4日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「2-1.(1)」のとおりである。 3-2.引用例の記載事項 引用例には、前記「2-2」に記載したとおりの事項が記載されている。 3-3.対比 本願発明は、 本願補正発明(上記「2-1(2)」参照)の 「粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下であり、かつ体積平均粒径が50?500nmである無機微粒子A」について、「体積平均粒径が50?500nmである」という限定補正を、省いたものに相当する。 本願発明と引用例発明を対比すると、両者は、上記「2-3」で示した前記相違点1の「粒度分布における体積分布の変動係数が50%以下」である点で相違し(相違点1A)、前記相違点1の「体積平均粒径が50?500nmである」点(相違点1B)では相違するものではないことになる。 そして、両者は、相違点1A及び上記「2-3」で示した相違点2において、相違するものである。 3-4.判断 前記相違点1A及び前記相違点2について検討すると、前記「2-4」で検討したとおり、引用例発明において、前記相違点1A及び前記相違点2の構成に関して、本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到しうることである。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例発明、及び、引用例2?引用例3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび よって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-04 |
結審通知日 | 2010-11-09 |
審決日 | 2010-12-02 |
出願番号 | 特願2004-81354(P2004-81354) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 雅雄 |
特許庁審判長 |
柏崎 康司 |
特許庁審判官 |
黒瀬 雅一 磯貝 香苗 |
発明の名称 | 画像形成用トナー及びその製造方法 |
代理人 | 奥山 雄毅 |