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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1230668
審判番号 不服2008-32101  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-18 
確定日 2011-01-19 
事件の表示 特願2004-192082「エレクトロルミネセンス表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月21日出願公開、特開2005-196115〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

平成16年 6月29日 特許出願(パリ条約による優先権主張2003年12月30日、大韓民国)
平成20年 3月 3日 拒絶理由通知(同年3月11日発送)
平成20年 6月 3日 意見書・手続補正書
平成20年 9月24日 拒絶査定(同年9月30日送達)
平成20年12月18日 本件審判請求・手続補正書
平成21年12月25日 審尋(平成22年1月5日発送)
平成22年 4月 1日 回答書

2 平成20年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年12月18日付け手続補正を却下する。

[理由]独立特許要件違反

平成20年12月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の請求項1は、
「【請求項1】
デジタルデータの入力を受けるタイミングコントローラーと、
前記デジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するように前記デジタルデータを変換するデータ変換器と、
前記データ変換器からのデジタルデータをアナログデータに変換して画素セルを駆動するためのデータ駆動回路と
を具備し、
前記データ変換器は、入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換し、
前記データ駆動回路は、前記Mビットに対応する互いに異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部を含む
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。」から
「【請求項1】
デジタルデータの入力を受けるタイミングコントローラーと、
前記デジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するように前記デジタルデータを変換するデータ変換器と、
前記データ変換器からのデジタルデータをアナログデータに変換して画素セルを駆動するためのデータ駆動回路と
を具備し、
前記データ変換器は、入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するようにデータ変換するためのルックアップテーブルをRGB各色毎に有し、RGB各色毎に、入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換し、
前記データ駆動回路は、単一の電圧源と基底電圧源との間に直列接続された複数の抵抗からなり、前記Mビットに対応する互いに異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部を有し、RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。」
に補正された。 (下線は、補正箇所を明示するために請求人が付した。)

そして、この補正は、データ変換器に関して、「入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するようにデータ変換するためのルックアップテーブルをRGB各色毎に有」することを限定し、かつ、「入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換」する動作が「RGB各色毎に」行われることを明示し、データ駆動回路に関して、データ駆動回路内の「単一のガンマ電圧発生部」が「単一の電圧源と基底電圧源との間に直列接続された複数の抵抗から」なることを限定し、その動作として「RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する」ことを限定するものである。

したがって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本件補正後の本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その請求項1に記載された以下のものと認める。
「デジタルデータの入力を受けるタイミングコントローラーと、
前記デジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するように前記デジタルデータを変換するデータ変換器と、
前記データ変換器からのデジタルデータをアナログデータに変換して画素セルを駆動するためのデータ駆動回路と
を具備し、
前記データ変換器は、入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するようにデータ変換するためのルックアップテーブルをRGB各色毎に有し、RGB各色毎に、入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換し、
前記データ駆動回路は、単一の電圧源と基底電圧源との間に直列接続された複数の抵抗からなり、前記Mビットに対応する互いに異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部を有し、RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。」

(2)引用発明
(2-1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の2003年10月31日に頒布された刊行物である特開2003-308042号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「有機EL表示パネル」の発明に関して、以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0002】
【従来の技術】以下に図15を用いて、従来の技術に関して説明する。近年、有機EL(別名OLED, Organic Light Emitting Diode)素子を用いた、所謂有機ELディスプレイの研究が精力的に進められている。しかしながらこれをフルカラー化し、階調発光させようとした場合、RGBそれぞれの発光に対応した各有機EL素子の光学的発光特性が異なるため、所定の輝度を所定の色度で得るためには、各色の各有機EL素子には理想的にはそれぞれ独立した階調駆動電流が必要になる。従って従来からある液晶ディスプレイの駆動回路のように、RGBの各画素をそのまま一つの駆動回路で駆動した場合、所望の色彩が得られなかったり、階調制御が困難になる等の問題が生じていた。図15はこのような問題を回避するために提案された、単純マトリクス型有機ELディスプレイの構造図である。基板201上には複数のデータ配線203に接続された各有機EL素子202がマトリクス状に設けられており、各データ配線203にはRGBの内、それぞれ異なる表示色の有機EL素子202が表示色毎に接続されている。各データ配線203の一端は基板201の端部で取り出し電極204に接続されている。この取り出し電極204には、RGBの各色に対応した有機EL駆動回路206が配線再配置手段205を介して接続されている。ここで配線再配置手段205は、樹脂多層ビルドアップ基板を用いて構成された多層配線板であり、RGBの各色に対応する取り出し電極204を、RGBの各色に対応した有機EL駆動回路206に接続する役割を有している。以下、本従来例の動作に関して簡単に述べる。図面では省略しているが、所定の行走査回路によって、発光する有機EL素子202行が選択されると、これに対応する表示信号が有機EL駆動回路206からデータ配線203を介して有機EL素子202群に入力される。これによって被選択行の有機EL素子202は、表示信号に応じた発光表示を行う。このようにして各行の走査と表示信号入力を繰り返すことにより、本有機ELディスプレイは画像を表示する。本従来例では、配線再配置手段205の導入により、RGBの各有機EL素子202は、それぞれRGBの各色に対応した有機EL駆動回路206により独立に駆動することができ、前述の問題を回避することができる。このような従来例に関しては、例えば公開特許公報「特開2000-56732号」に詳細に記載されている。」

<記載事項2>
「【0004】さてここで有機ELディスプレイにおいても、このような多結晶Si-TFTを用いたアナログ信号駆動回路を、画素と同一のガラス基板上に一体形成することができれば、同様に低コスト化や、ディスプレイの耐震信頼性の向上等が図れる筈である。しかしながら先に【従来の技術】の項で述べたように、有機ELディスプレイにおいては、各色の各有機EL素子には理想的にはそれぞれ独立した階調駆動電流が必要になる。従って上記の液晶ディスプレイのように、アナログ信号駆動回路をガラス基板上の構成しようとすると、RGBでそれぞれ独立したアナログ信号駆動回路が必要になってしまう。この結果、前述の配線再配置手段を用いてもアナログ信号駆動回路の面積は液晶ディスプレイのそれの3倍になってしまい、有機ELディスプレイの実装面積を考えると表示装置を小型化する上での障害になるであろうことが判る。
【0005】なお上記の議論ではアナログ信号駆動回路は、多結晶Si-TFTを用いて画素と同一のガラス基板上に一体形成することを仮定したが、もしもアナログ信号駆動回路を単結晶LSI上に設けたとしても、3種類の駆動回路LSIをディスプレイに実装することは実装面積上は明らかに不利であり、同様な課題があることが判る。」

<記載事項3>
「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の問題点は、以下の各手段によって解決することができる。
【0007】異なる主波長の発光手段を有する2種類以上の画素群により構成された表示部と、デジタル表示データを入力として、画素群に入力するためのアナログ表示信号を生成するためのアナログ表示信号生成手段と、アナログ表示信号を画素群に入力するための表示信号入力手段と、入力されたアナログ表示信号に従って、発光手段を駆動するための発光駆動手段を各画素内に有する画像表示装置において、アナログ表示信号生成手段の入力部に、その出力ビット数が入力ビット数よりも多く、かつ同一のデジタル表示データに対して、異なる主波長の発光手段を有する画素に対応させて、それぞれ同一でない出力デジタル表示データに変換可能であるデジタル表示データ変換手段を設けること。異なる主波長の発光手段を有する2種類以上の画素群により構成された表示部と、デジタル表示データを入力として、画素群に入力するためのアナログ表示信号を生成するためのアナログ表示信号生成手段と、アナログ表示信号を該画素群に入力するための表示信号入力手段と、入力されたアナログ表示信号に従って、発光手段を駆動するための発光駆動手段を各画素内に有する画像表示装置において、アナログ表示信号生成手段を、同一のデジタル表示データに対して、異なる主波長の発光手段を有する画素に対応させて、それぞれ同一でないアナログ表示信号を出力可能であるようにすること。異なる主波長の発光手段を有する2種類以上の画素群により構成された表示部と、デジタル表示データを入力として、画素群に入力するためのアナログ表示信号を生成するためのアナログ表示信号生成手段と、アナログ表示信号を該画素群に入力するための表示信号入力手段と、入力されたアナログ表示信号に従って、発光手段を駆動するための発光駆動手段を各画素内に有する画像表示装置において、発光駆動手段を、同一のアナログ表示信号に対して、異なる主波長の発光手段を有する画素に対応させて、それぞれ同一でない駆動電流で上記発光手段を駆動可能であるようにすること。」

<記載事項4>
「【0010】
【発明の実施の形態】(第一の実施例)以下図1?図4を用いて、本発明の第一の実施例に関して説明する。始めに図1を用いて、本実施例の全体構成に関して述べる。
【0011】図1は本実施例である有機EL表示パネルの構成図である。画素発光体としてそれぞれRGBの3色の有機EL素子を有する画素2が表示部にマトリクス状に配置され、画素2はゲート線7、信号線3、電源線9等を介して相互に接続されている。行方向に延在するゲート線7はシフトレジスタ8に、列方向に延在する信号線3はアナログ信号駆動回路6に接続され、画素2、シフトレジスタ8、アナログ信号駆動回路6はガラス基板1上に多結晶Si TFTを用いて形成されている。デジタル信号入力端子16はデジタル表示データ変換回路15に入力しており、デジタル表示データ変換回路15の出力は前述のアナログ信号駆動回路6に入力する。アナログ信号駆動回路6内ではデジタル表示データはデジタル信号線14に入力され、シフトレジスタ10の走査に従ってラッチ回路11にラッチされる。ラッチ回路11の出力はDA変換回路12に入力し、DA変換回路12の出力は信号線3に出力される。なおDA変換回路12に対しては階調電圧生成抵抗13が256階調のアナログ階調電圧を供給する。」

<記載事項5>
「【0013】デジタル信号入力端子16に入力されたRGB各6bitのデジタル表示データは、デジタル表示データ変換回路15によってRGB各8bitのデジタル表示データに変換され、ガラス基板上に設けられたアナログ信号駆動回路6に入力される。書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは、アナログ信号駆動回路6内においてはデジタル信号線14に入力され、シフトレジスタ10の走査に従って各画素の8bitデータ毎にラッチ回路11にラッチされる。このシフトレジスタ10の走査は各水平走査期間毎に一巡するタイミングで行われており、ラッチ回路11への書き込みが一通り完了すると、続く水平帰線期間のタイミングで、書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは一斉にDA変換回路12に入力される。DA変換回路12は、RGB各8bitのデジタル表示データに対応させて、階調電圧生成抵抗13から出力される256階調のアナログ階調電圧から一つを選択し、選択されたアナログ階調電圧を信号線3に書込む機能を有する。このときにシフトレジスタ8は所定のタイミングで書込みデータに対応するゲート線7を選択的に走査し、走査された行の画素2に対して、対応する列の信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧が書込まれる。」

<記載事項6>
「【0015】図2は画素2の構造図である。有機EL素子23の一端は共通接地電圧に落とされており、他端は有機EL素子駆動TFT22のドレインに接続されている。有機EL素子駆動TFT22のゲートは更に画素入力スイッチ21の一端に接続され、画素入力スイッチ21の他端は前述の信号線3に接続されている。また画素入力スイッチ21のゲートはゲート線7に接続される。なお有機EL素子駆動TFT22のソースは電源線9に接続されているが、この電源線9は図1に既に示したように各画素間で共通接続されている。なお有機EL素子駆動TFT22及び画素入力スイッチ21は多結晶Si TFTで構成されている。
【0016】以下に画素2の動作を述べる。シフトレジスタ8によって対応するゲート線7が選択されると、画素2の画素入力スイッチ21はオン状態になり、信号線3に書込まれていた信号電圧ことアナログ階調電圧が有機EL素子駆動TFT22のゲートに入力される。このアナログ階調電圧は画素入力スイッチ21がオフ状態になった後も有機EL素子駆動TFT22のゲート容量に記憶され、次のフレームの走査で再びこの画素2の画素入力スイッチ21がシフトレジスタ8によって選択されるまで保持される。ここで有機EL素子駆動TFT22は、ゲートに印加されたアナログ階調電圧に従って対応するアナログ信号電流を有機EL素子23に与え、有機EL素子23はこの信号電流に従って所定の色度で発光表示する。これによって信号電圧こと、前述のアナログ階調電圧に対応する階調表示が可能となっている。」

<記載事項7>
【0018】本実施例においては、デジタル信号入力端子16に入力されたデジタル表示データは、RGB各6bitの情報量を有している。しかしながらデジタル表示データ変換回路15を経てアナログ信号駆動回路6に入力されるデジタル表示データはRGB各8bitであり、アナログ信号駆動回路6は8bitに相当する256階調のアナログ階調電圧を出力可能である。これは有機EL素子駆動TFT22に入力される信号電圧に対して、有機EL素子23の発光特性がRBGそれぞれで異なる特性を有することに対する補正機能を、デジタル表示データ変換回路15に与えているためである。
【0019】図3は入力される信号電圧に対するRBGそれぞれの有機EL素子23の発光特性を、説明のために模式的に示したものである。ここで信号電圧は3bitのデジタル値で、発光階調は2bitでプロットしてあるが、特性自体は連続する曲線で示してある。図に示したようにRGBそれぞれの有機EL素子23は異なる信号電圧で発光を開始し、また信号電圧に対してはそれぞれ異なる傾きで発光輝度が上昇する。例えばBは信号電圧階調(001)で、G, Rは信号電圧階調(011)で発光が開始され、輝度上昇特性の傾きはGが急峻でありRがこれに次ぎ、Bは最もなだらかである。このときに黒色から白色に到る無色のグレイスケールを表示させようとして、信号電圧階調としてR, G, Bの画素に同一の信号電圧を印加してしまうと、低輝度(001)ではBのみが発光する純青色を呈し、高輝度(111)ではGが協調(当審注:「強調」の誤記と認める。)された緑白色を呈してしまうことになる。
【0020】これに対して本実施例では、デジタル表示データ変換回路15は、図4の変換表に模式的に示したようにデジタル表示データの補正を行う。例えばデジタル表示データ変換回路15への入力デジタル表示データがBで(00)、Gで(00)、Rで(00)のときに、それぞれBで(001)、Gで(011)、Rで(011)のデジタル表示データを変換出力、Bで(11)、Gで(11)、Rで(11)のときに、それぞれBで(111)、Gで(110)、Rで(111)のデジタル表示データを変換出力する。これによってデジタル表示データ変換回路15へ入力する入力デジタル表示データの値にかかわらず、本実施例では一定した色温度で、所望する色彩の表示を可能とすることができた。
【0021】また本実施例では更に、上記デジタル表示データ変換回路15のデータ変換テーブルを書きかえること、或いは異なる変換データテーブルを参照することにより、表示色温度をリアルタイムで変更することが可能である。この機能は例えばディスプレイの環境光に合わせた適応型の表示を行う際や、或いは有機EL素子23の劣化に合わせて色温度を調整する際などに使用することができる。或いは表示画面におけるテキスト文章表示領域と、自然画像表示領域とで、任意に色温度設定を変換することも可能である。この場合一般には、テキスト文章表示領域の色温度を自然画像表示領域より高温設定にしておく方が、表示画面の読みやすさを向上させるためには好ましい。」

(2-2)引用刊行物に記載された発明
(2-2-1)
上記記載事項4には、「【0011】図1は本実施例である有機EL表示パネルの構成図である。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物には、「有機EL表示パネル」の発明が記載されている。

(2-2-2)
上記記載事項5には、「【0013】デジタル信号入力端子16に入力されたRGB各6bitのデジタル表示データ・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物に記載された「有機EL表示パネル」は、「デジタル表示データが入力されるデジタル信号入力端子16」を有している。

(2-2-3)
上記記載事項5には、「【0013】デジタル信号入力端子16に入力されたRGB各6bitのデジタル表示データは、デジタル表示データ変換回路15によってRGB各8bitのデジタル表示データに変換され、・・・」と、上記記載事項7には、「【0018】本実施例においては、デジタル信号入力端子16に入力されたデジタル表示データは、RGB各6bitの情報量を有している。しかしながらデジタル表示データ変換回路15を経てアナログ信号駆動回路6に入力されるデジタル表示データはRGB各8bitであり、アナログ信号駆動回路6は8bitに相当する256階調のアナログ階調電圧を出力可能である。これは有機EL素子駆動TFT22に入力される信号電圧に対して、有機EL素子23の発光特性がRBGそれぞれで異なる特性を有することに対する補正機能を、デジタル表示データ変換回路15に与えているためである。」と記載されている。
これらの記載によれば、引用刊行物に記載された「有機EL表示パネル」は、「有機EL素子23の発光特性がRGBそれぞれで異なる特性を有することに対する補正を行うために、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するデジタル表示データ変換回路15」を有している。

(2-2-4)
上記記載事項5には、「【0013】・・・デジタル表示データ変換回路15によってRGB各8bitのデジタル表示データに変換され、ガラス基板上に設けられたアナログ信号駆動回路6に入力される。書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは、アナログ信号駆動回路6内においては・・・DA変換回路12は、RGB各8bitのデジタル表示データに対応させて、階調電圧生成抵抗13から出力される256階調のアナログ階調電圧から一つを選択し、選択されたアナログ階調電圧を信号線3に書込む機能を有する。・・・走査された行の画素2に対して、対応する列の信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧が書込まれる。」と、上記記載事項6には、「【0015】・・・画素2の画素入力スイッチ21はオン状態になり、信号線3に書込まれていた信号電圧ことアナログ階調電圧が有機EL素子駆動TFT22のゲートに入力される。・・・」と記載されている。
これらの記載によれば、引用刊行物に記載された「有機EL表示パネル」は、「デジタル表示データ変換回路15によって変換されたRGB各8bitのデジタル表示データをアナログ階調電圧に変換して信号線3に書込むことにより、信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧を画素2に入力するアナログ信号駆動回路6」を有している。

(2-2-5)
上記記載事項7には、「【0020】・・・デジタル表示データ変換回路15は、図4の変換表に模式的に示したようにデジタル表示データの補正を行う。例えばデジタル表示データ変換回路15への入力デジタル表示データがBで(00)、Gで(00)、Rで(00)のときに、それぞれBで(001)、Gで(011)、Rで(011)のデジタル表示データを変換出力、Bで(11)、Gで(11)、Rで(11)のときに、それぞれBで(111)、Gで(110)、Rで(111)のデジタル表示データを変換出力する。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物に記載された「有機EL表示パネル」が有する「デジタル表示データ変換回路15」は、「変換表を有し、模式的に示すと、入力デジタル表示データがBで(00)、Gで(00)、Rで(00)のときに、それぞれBで(001)、Gで(011)、Rで(011)のデジタル表示データを変換出力、Bで(11)、Gで(11)、Rで(11)のときに、それぞれBで(111)、Gで(110)、Rで(111)のデジタル表示データを変換出力する」ものである。

(2-2-6)
上記記載事項5には、「【0013】・・・書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは、アナログ信号駆動回路6内においては・・・DA変換回路12は、RGB各8bitのデジタル表示データに対応させて、階調電圧生成抵抗13から出力される256階調のアナログ階調電圧から一つを選択し、選択されたアナログ階調電圧を信号線3に書込む機能を有する。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物に記載された「有機EL表示パネル」が有する「アナログ信号駆動回路6」は、「RGB各8bitのデジタル表示データに対応させた256階調のアナログ階調電圧を出力する階調電圧生成抵抗13」を有している。

(2-2-7)
(2-2-1)?(2-2-6)によれば、引用刊行物には、以下の引用発明が記載されている。
「デジタル表示データが入力されるデジタル信号入力端子16と、
有機EL素子23の発光特性がRGBそれぞれで異なる特性を有することに対する補正を行うために、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するデジタル表示データ変換回路15と、
デジタル表示データ変換回路15によって変換されたRGB各8bitのデジタル表示データをアナログ階調電圧に変換して信号線3に書込むことにより、信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧を画素2に入力するアナログ信号駆動回路6と
を有し、
前記デジタル表示データ変換回路15は、変換表を有し、模式的に示すと、入力デジタル表示データがBで(00)、Gで(00)、Rで(00)のときに、それぞれBで(001)、Gで(011)、Rで(011)のデジタル表示データを変換出力、Bで(11)、Gで(11)、Rで(11)のときに、それぞれBで(111)、Gで(110)、Rで(111)のデジタル表示データを変換出力し、
前記アナログ信号駆動回路6は、RGB各8bitのデジタル表示データに対応させた256階調のアナログ階調電圧を出力する階調電圧生成抵抗13を有する
有機EL表示パネル。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。

(3-1)
引用発明の「デジタル表示データ」は、本願補正発明の「デジタルデータ」に相当し、以下同様に、「アナログ階調電圧」の値は「アナログデータ」に、「画素2」は「画素セル」に、「有し」は「具備し」に、「RGB各6bitのデジタル表示データ」は「RGB各色毎に、入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータ」のN=6の場合に、「RGB各8bitのデジタル表示データ」は「RGB各色毎に、変換されるMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータ」のM=8の場合に、「有機EL表示パネル」は「エレクトロルミネセンス表示装置」に相当する。
そして、引用発明の「デジタル表示データが入力されるデジタル信号入力端子16」と本願補正発明の「デジタルデータの入力を受けるタイミングコントローラー」とは共に、「デジタルデータの入力を受ける回路」である点で共通する。

(3-2)
本願補正発明の「階調数」なる記載の意味するところを考察する。
本願の発明の詳細な説明の段落【0051】には、「これによって、ルックアップテーブル142は、表1に示すように、3ビットR、G、Bデジタルデータ信号Rdata、Gdata、Bdataのそれぞれを5ビットのR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataに変換するようになる。この時、3ビットR、G、Bデジタルデータ信号Rdata、Gdata、Bdataのそれぞれが皆最大輝度を有する111_(2)の場合に、ルックアップテーブル142により出力される5ビットのR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataはR、G、Bセルのそれぞれの発光効率を考慮して、Rデジタルデータ信号Rdataは11111_(2)に変換され、Gデジタルデータ信号Gdataは01111_(2)に変換されると共に、Bデジタルデータ信号Bdataは01100_(2)に変換される。換言すれば、ルックアップテーブル142は、3ビットR、G、Bデジタルデータ信号Rdata、Gdata、Bdataのそれぞれの階調数を異なるようにして5ビットR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataに変換するようになる。」と、段落【0053】、【0054】には、「これにより、Rルックアップテーブル144は、表1に示すように、3ビットのRデジタルデータ信号Rdataを0乃至31の間の階調(Gray)を有する5ビットRデジタルデータ信号MRdataに変換するようになる。尚、Gルックアップテーブル146は、表1に示すように、3ビットのGデジタルデータ信号Gdataを0乃至15の間の階調を有する5ビットGデジタルデータ信号MGdataに変換するようになる。また、Bルックアップテーブル148は、表1に示すように、3ビットのBデジタルデータ信号Bdataを0乃至12の間の階調を5ビットBデジタルデータ信号MBdataに変換するようになる。このように、ルックアップテーブル142は、3ビットから5ビットに変換されるR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataのそれぞれの階調数を異なるようにすることで互いに異なる発光効率を有するR、G、Bセルのホワイトバランスを合わせることができるようになる。」と記載されている。
すなわち、本願の発明の詳細な説明において、「階調数」なる記載の意味するところは、変換後の5ビットR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataの「11111_(2)」、「01111_(2)」や「01100_(2)」などの個々の「階調値」自体であるか、もしくは、変換後の5ビットR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataの「0乃至31」、「0乃至15」や「0乃至12」などの階調値の取り得る幅であるかのいずれかであり、変換後の5ビットR、G、Bデジタルデータ信号MRdata、MGdata、MBdataのいずれか1セットが取り得る階調値の個数を意味するものではない。(本願の発明の詳細な説明において、段落【0052】の表1に示されるように、1つの入力に対して1つの出力を有するルックアップテーブルを使用して、3ビットのデジタルデータから5ビットのデジタルデータへの変換が行われるのであるから、変換後の5ビットのデジタルデータの階調値の個数は、3ビットで表現される「8」であって、RGB各色間で同一である。)
よって、本願補正発明の「階調数」は、「階調値」自体を意味するものか、「階調値の取り得る幅」を意味するものかのいずれかであると認める。

一方、引用発明は、有機EL素子23の発光特性がRBGそれぞれで異なる特性を有することに対する補正を行うために、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するに際し、その変換特性を模式的に示すと、入力デジタル表示データがBで(00)、Gで(00)、Rで(00)のときに、それぞれBで(001)、Gで(011)、Rで(011)のデジタル表示データを変換出力、Bで(11)、Gで(11)、Rで(11)のときに、それぞれBで(111)、Gで(110)、Rで(111)のデジタル表示データを変換出力するようになっている。このことは、RGB各6bitのデジタル表示データからRGB各8bitのデジタル表示データへの変換特性が、引用刊行物の図3の有機EL素子の発光特性模式図上の各特性曲線に合致するようにデジタル表示データ変換を行うこと、いいかえれば、RGBの各色の変換前の同一のデジタル表示データに対して、デジタル表示データ変換後もRGB毎に同一の発光階調を与えるように、図3において同一の高さに位置し、RGBの各色の発光特性曲線に応じた信号電圧階調を選択することにより、デジタル表示データ変換を行うことを意味している。そして、図3において、RGBの各特性曲線は重なっておらず、同じ入力データ値に対して(図3の所定の高さにおいて)、信号電圧階調値(水平方向の位置)は異なっており、変換後のデジタル表示データ値は異なるものとなっている。
すなわち、引用発明においても、デジタル表示データ変換回路15において、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するに際し、同一の6bitデータ(同一の入力データ)に対して変換後のRGB各8bitのデジタル表示データは、異なる階調値を有している。また、引用刊行物の図3、図4を見て明らかなように、変換後のRGB各8bitのデジタル表示データである信号電圧階調値の取り得る幅は、RGB毎に異なっている。

したがって、本願補正発明の「階調数」が「階調値」自体、「階調値の取り得る幅」のいずれを意味するものであったとしても、引用発明の、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するに際し、同一の6bitデータに対して変換後のRGB各8bitのデジタル表示データが異なる階調値を有するように、また、変換後のRGB各8bitのデジタル表示データである信号電圧階調値の取り得る幅が異なるように変換する、「デジタル表示データ変換回路15」は、本願補正発明の、デジタルデータの色に応じて異なる階調値、または、異なる階調値の幅を有するように前記デジタルデータを変換する「データ変換器」に相当する。

また、引用発明の、RGB各6bitのデジタル表示データのそれぞれに対して、8bitのデジタル表示データに変換するものであって、その変換特性として、上述したように、同一の6bitデータに対して変換後のRGB各8bitのデジタル表示データが異なる階調値を有するように、また、変換後のRGB各8bitのデジタル表示データである信号電圧階調値の取り得る幅が異なるように変換する、「デジタル表示データ変換回路15」内の「変換表」は、本願補正発明の、RGB各色毎に、入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換し、入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調値、または、異なる階調値の幅を有するようにデータ変換する、「データ変換器」内の「ルックアップテーブル」に相当する。そして、引用発明の「変換表」は、RGB毎に異なる値を出力しており、RGB各色毎に設けられているものと認められる。

(3-3)
(3-2)の相当関係によれば、引用発明の「デジタル表示データ変換回路15」は、本願補正発明の「データ変換器」に相当するから、引用発明の「デジタル表示データ変換回路15によって変換されたRGB各8bitのデジタル表示データ」は、本願補正発明の「データ変換器からのデジタルデータ」に相当する。
また、(3-1)の相当関係によれば、引用発明の「アナログ階調電圧」の値は、本願補正発明の「アナログデータ」に相当し、引用発明の「画素2」は、本願補正発明の「画素セル」に相当するから、引用発明の「アナログ階調電圧に変換して信号線3に書込むことにより、信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧を画素2に入力する」ことは、本願補正発明の「アナログデータに変換して画素セルを駆動する」ことに相当する。
よって、引用発明の、デジタル表示データ変換回路15によって変換されたRGB各8bitのデジタル表示データをアナログ階調電圧に変換して信号線3に書込むことにより、信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧を画素2に入力する、「アナログ信号駆動回路6」は、本願補正発明の、前記データ変換器からのデジタルデータをアナログデータに変換して画素セルを駆動するための「データ駆動回路」に相当する。

(3-4)
(3-2)で述べたことから、引用発明は、有機EL素子23の発光特性がRGBそれぞれで異なる特性を有することに対する補正を行うために、RGB各6bitのデジタル表示データをRGB各8bitのデジタル表示データに変換するに際し、RGBの各色の変換前の同一のデジタル表示データに対して、デジタル表示データ変換後もRGB毎に同一の発光階調を与えるように、図3において同一の高さに位置し、RGBの各色の発光特性曲線に応じた信号電圧階調を選択することにより、デジタル表示データ変換を行っている。また、引用発明の「アナログ信号駆動回路6」はその中で、RGB各8bitのデジタル表示データに対応して、アナログ階調電圧を選択することによりその変換を行っている。
ここで、引用発明の「発光階調」は、本願補正発明の「輝度」に相当するから、引用発明の「発光階調」に適合した「信号電圧階調」である「デジタル表示データ」により選択される「アナログ階調電圧」は、本願補正発明の「ガンマ電圧」に相当する。また、引用刊行物の図1から明らかなように、引用発明の「アナログ信号駆動回路6」内に、「階調電圧生成抵抗13」は、1つ備わっている。
よって、引用発明の「RGB各8bitのデジタル表示データに対応させた256階調のアナログ階調電圧を出力する階調電圧生成抵抗13」と、本願補正発明の「前記Mビットに対応する互いに異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部」とは共に、「変換後のMビットのデジタルデータに対応する異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部」である点で共通する。
また、引用発明の「アナログ信号駆動回路6」で「RGBの異なる色の同一の入力データに対して、同一の発光階調が与えられるように、異なる信号電圧階調が選択される」ことは、本願補正発明の「データ駆動回路」が「RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する」ことに相当する。

(3-5)
したがって、本願補正発明と引用発明の両者は、
「デジタルデータの入力を受ける回路と、
デジタルデータの色に応じて異なる階調値、または、異なる階調値の幅を有するように前記デジタルデータを変換するデータ変換器と、
前記データ変換器からのデジタルデータをアナログデータに変換して画素セルを駆動するためのデータ駆動回路と
を具備し、
前記データ変換器は、入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調値、または、異なる階調値の幅を有するようにデータ変換するルックアップテーブルをRGB各色毎に有し、RGB各色毎に、入力されるNビット(但し、N=6)デジタルデータをMビット(但し、M=8)デジタルデータに変換し、
前記データ駆動回路は、変換後のMビットのデジタルデータに対応する異なる複数のガンマ電圧を発生する単一のガンマ電圧発生部を有し、RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する
エレクトロルミネセンス表示装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
デジタルデータの入力を受ける回路に関し、本願補正発明では「タイミングコントローラー」がデジタルデータの入力を受けるのに対し、引用発明では「デジタル信号入力端子16」がデジタルデータの入力を受ける点。

[相違点2]
ガンマ電圧発生部に関し、本願補正発明では「単一の電圧源と基底電圧源との間に直列接続された複数の抵抗からなる」のに対し、引用発明ではそのような発明特定事項が限定されていない点。

(4)当審の判断
相違点1について
引用発明を説明する引用刊行物の上記記載事項5には、「【0013】・・・書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは、アナログ信号駆動回路6内においてはデジタル信号線14に入力され、シフトレジスタ10の走査に従って各画素の8bitデータ毎にラッチ回路11にラッチされる。このシフトレジスタ10の走査は各水平走査期間毎に一巡するタイミングで行われており、ラッチ回路11への書き込みが一通り完了すると、続く水平帰線期間のタイミングで、書込まれたRGB各8bitのデジタル表示データは一斉にDA変換回路12に入力される。・・・このときにシフトレジスタ8は所定のタイミングで書込みデータに対応するゲート線7を選択的に走査し、走査された行の画素2に対して、対応する列の信号線3に書込まれていたアナログ階調電圧が書込まれる。」と記載されている。したがって、引用発明においては、シフトレジスタ8,10に与えるスタートパルスやクロックなどのタイミング信号によって、水平走査、垂直走査を実現しており、明示はされていないが、引用発明は、かかる水平走査、垂直走査を実現させるためのタイミング信号を生成する回路を有するものと認められる。
また、「有機EL表示装置」の技術分野において、水平走査タイミング、垂直走査タイミングを制御する信号を生成するコントローラにおいて、デジタル映像信号を外部から供給されるようにすることは、例えば、特開2002-341828号公報の段落【0011】、図1に記載されているように、周知・慣用の技術である。
よって、引用発明において、水平走査、垂直走査を実現させるためのタイミング信号を生成する回路を有し、かつ、本願補正発明の「デジタルデータ」に相当する「デジタル表示データ」が入力される「デジタル信号入力端子16」を有しているところ、周知・慣用の技術を適用して、タイミング信号を生成する回路にデジタルデータの受信機能を持たせることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が引用発明及び周知・慣用の技術に基づいて容易に想到し得たことである。

相違点2について
「有機EL表示装置」の技術分野において、所定電位の電圧源と、所定電位よりも低い電位の電圧源の間に直列接続された複数の抵抗からなる階調電圧発生回路を設けることは、例えば、特開2002-341828号公報の段落【0016】、図5、例えば、特開2003-255900号公報の段落【0022】、【0023】、図2に記載されているように、周知の技術である。
よって、引用発明において、本願補正発明の「ガンマ電圧発生部」に相当する「階調電圧生成抵抗13の具体的構成として、周知の技術を適用し、所定電位の電圧源たる単一の電圧源と、所定電位よりも低い電位の電圧源たる基底電圧源の間に直列接続された複数の抵抗からなる構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が引用発明及び周知の技術に基づいて容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、周知・慣用の技術及び周知の技術から想定することができない格別のものと認めることもできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、周知・慣用の技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、請求人は、審判請求書、回答書において、「上記引用文献1(当審注:引用刊行物である特開2003-308042号公報。)は、・・・従来、互いに異なる発光効率を有するR、G、B蛍光体のそれぞれのホワイトバランスを合わせるために、RGBガンマ電圧生成部のそれぞれを具備していたのに対し、単一のガンマ電圧生成部を用いても正確なカラー表現を可能にするという技術思想については、何ら開示または示唆がない。」と主張している。
しかしながら、引用発明を説明する上記記載事項7には、「図に示したようにRGBそれぞれの有機EL素子23は異なる信号電圧で発光を開始し、また信号電圧に対してはそれぞれ異なる傾きで発光輝度が上昇する。例えばBは信号電圧階調(001)で、G, Rは信号電圧階調(011)で発光が開始され、輝度上昇特性の傾きはGが急峻でありRがこれに次ぎ、Bは最もなだらかである。このときに黒色から白色に到る無色のグレイスケールを表示させようとして、信号電圧階調としてR, G, Bの画素に同一の信号電圧を印加してしまうと、低輝度(001)ではBのみが発光する純青色を呈し、高輝度(111)ではGが協調(当審注:「強調」の誤記と認める。)された緑白色を呈してしまうことになる。」と記載されている。ここで、有機EL素子における発光効率とは、(発光輝度)/(電流密度)であり、TFT駆動される有機EL素子においては、電流密度は駆動TFTに印加される電圧である、信号電圧とほぼ同様な振る舞いをするものであるから、(発光輝度)/(信号電圧)とも表現される。そして、上記記載には、「RGBそれぞれの有機EL素子23は・・・信号電圧に対してはそれぞれ異なる傾きで発光輝度が上昇する。」と記載されており、RGBの各有機EL素子で信号電圧に対する発光輝度の傾きが異なること、すなわち、RGBの各有機EL素子で発光効率が異なることが記載されている。また、上記記載における「黒色から白色に到る無色のグレイスケールを表示」なる記載は、ホワイトバランスを保つように、最低階調から最高階調まで信号を変化させることを意味する。
よって、「互いに異なる発光効率を有するR、G、B蛍光体のそれぞれのホワイトバランスを合わせる」との技術思想は、引用刊行物に開示されているに等しい事項である。
また、引用発明を説明する上記記載事項2には、「【0004】・・・有機ELディスプレイにおいては、各色の各有機EL素子には理想的にはそれぞれ独立した階調駆動電流が必要になる。従って上記の液晶ディスプレイのように、アナログ信号駆動回路をガラス基板上の構成しようとすると、RGBでそれぞれ独立したアナログ信号駆動回路が必要になってしまう。この結果、前述の配線再配置手段を用いてもアナログ信号駆動回路の面積は液晶ディスプレイのそれの3倍になってしまい、有機ELディスプレイの実装面積を考えると表示装置を小型化する上での障害になるであろうことが判る。」と記載されているように、発光特性の異なるRGBの有機EL素子に対して別々のアナログ信号駆動回路を備えていたことが小型化の障害となっていたことを「発明の解決しようとする課題」としている。
そして、(3-4)で述べたように、引用発明の「アナログ信号駆動回路6」内で「階調電圧生成抵抗13」は1つのみであり、引用刊行物において、「RGBガンマ電圧生成部のそれぞれを具備していたのに対し、単一のガンマ電圧生成部を用いても正確なカラー表現を可能にする」という技術思想は、開示されているに等しい事項である。
したがって、請求人の上記主張は、失当である。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について

平成20年12月18日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年6月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載されたとおりのものと認める。(前記「2」の項参照。)

4 引用刊行物

引用刊行物に記載された引用発明は、前記「2 (2-2-7)」に記載されたとおりである。

5 対比・判断

本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、データ変換器に関して、「入力されるデジタルデータの色に応じて異なる階調数を有するようにデータ変換するためのルックアップテーブルをRGB各色毎に有」するとの限定事項と、「入力されるNビット(但し、Nは自然数)デジタルデータをMビット(但し、MはNより大きい自然数)デジタルデータに変換」する動作が「RGB各色毎に」行われるとの限定事項を省き、データ駆動回路に関して、データ駆動回路内の「単一のガンマ電圧発生部」が「単一の電圧源と基底電圧源との間に直列接続された複数の抵抗から」なるとの限定事項と、その動作として「RGBの画素セル別に同一輝度に対し互いに異なるガンマ電圧を供給する」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを比較すると、両者は検討済みの相違点1において相違し、その余の点で一致する。
したがって、本願発明は、前記「2 (4)当審の判断」の「相違点1について」において示した理由により、引用発明及び周知・慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知・慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2010-08-18 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-07 
出願番号 特願2004-192082(P2004-192082)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奈良田 新一長井 真一濱本 禎広  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森 雅之
後藤 亮治
発明の名称 エレクトロルミネセンス表示装置及びその駆動方法  
代理人 曾我 道治  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  
代理人 上田 俊一  

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