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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1230805
審判番号 不服2009-10940  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-11 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 特願2003-370412「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日出願公開、特開2005-134030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月30日の出願であって、平成21年4月21日付けで拒絶査定がなされ(発送:平成21年4月28日)、これに対し、同年6月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、拒絶査定不服審判の請求と同日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

2.平成21年6月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年6月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成21年6月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、
「圧縮機と、凝縮器と、減圧機構と、蒸発器とを順次接続してなる冷凍サイクルに可燃性冷媒を封入し、前記蒸発器を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、前記蒸発器の下方に配した除霜ヒータであり、前記除霜ヒータは、ガラス管と、前記ガラス管内部に設置した金属抵抗体からなるヒータ線と、リード線挿入孔が形成され前記ガラス管の両端開口部を覆う封止部材と、前記リード線挿入孔を通り前記ヒータ線の端部に接続されるリード線とを備え、前記封止部材の少なくとも1つは、前記ガラス管の開口部より下部に前記ガラス管内部にたまった水を落差により下部に導く孔と外部へ流出させる逆止弁を設け、前記逆止弁の弁は前記孔に筒を介して封止部材に取り付けられ、ゴム製のリベット形状とし前記筒の固定穴に保持したことを特徴とする冷蔵庫。」と補正することを含むものである。

(2)補正の適否
ここで、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するかについて、以下検討する。

ア 補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体(・・・)を外部に流出させる」との事項を欠くものとなっている。
したがって、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
イ また、上記補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示された事項についてするものでないため、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとはいえず、誤記の訂正を目的とするものともいえない。さらに、請求項の削除を目的とするものでもない。
ウ このように、上記補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定するいずれを目的とするものともいえない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は、却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年2月10日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりである。

「圧縮機と、凝縮器と、減圧機構と、蒸発器とを順次接続してなる冷凍サイクルに可燃性冷媒を封入し、前記蒸発器を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、前記蒸発器の下方に配した除霜ヒータであり、前記除霜ヒータは、ガラス管と、前記ガラス管内部に設置した金属抵抗体からなるヒータ線と、リード線挿入孔が形成され前記ガラス管の両端開口部を覆う封止部材と、前記リード線挿入孔を通り前記ヒータ線の端部に接続されるリード線とを備え、前記封止部材の少なくとも1つは、前記ガラス管の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体及び前記ガラス管内部にたまった水を外部へ流出させる逆止弁を設けたことを特徴とする冷蔵庫。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-90672号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
a「【請求項10】ガラス管両端開口部を覆う栓に成形されたリード線挿入穴と、その挿入穴を通るリード線外径との差により形成されるすきま部分の任意位置での断面積を7.1ミリ平方メートル以下とした除霜ヒーター。
・・・
【請求項13】抵抗線をコイル状に形成したヒーター線部分は、ガラス管端面より少なくとも20mm以上離し、ヒータ線とリード線の接続部が移動するのを防止する位置決め板を少なくとも、20メッシュ以上の金網構造としたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の除霜ヒーター。」(【特許請求の範囲】【請求項10】、【請求項13】)

b「【発明の属する技術分野】本発明は冷蔵庫等の、可燃性冷媒を封入した冷凍サイクルの冷却器に付着・堆積した霜を除霜する除霜ヒーター及びこのヒーターを用いた冷蔵庫に関するものである。」(段落【0001】)

c「本発明は上記課題に鑑み、可燃性冷媒が除霜ヒーターの設置雰囲気に漏洩した環境下で除霜が行われた場合においても安全性の高い除霜ヒーターを提供することを目的とする。」(段落【0008】)

d「次に請求項13に記載の発明は、請求項10又は請求項11に記載の発明において、抵抗線をコイル状に形成したヒーター線部分は、ガラス管端面より少なくとも20mm以上離し、ヒーター線とリード線の接続部が移動するのを防止する位置決め板を少なくとも、20メッシュ以上の金網構造としたものであるから、可燃性冷媒がヒーター線によって発火しても、火炎がその金網構造により阻止され、火炎伝播しない。また、ガラス管内に侵入した水分が蒸気となって排気される際の排気抵抗は通気孔を設ける場合よりも小さく、効率よく排気できる。」(段落【0021】)

e「図1、図2において、51は蒸発器10に付着した霜を加温により融解し除去する除霜ヒーターであり、52は抵抗線をコイル状に形成したヒーター線であり、ヒーター線52の両端近傍はコイル状ではなくヒーター線を所定の長さで折り返して撚った状態の接続端52aを有する。53はヒーター線52を覆う第1のガラス管であり、外径10.5mm、内径8.5mmの円筒形状を成し、両端を開口している。
・・・(中略)・・・
55はヒーター線52に接続されるリード線であり、56はヒーター線52とリード線55を連結する導電性の連結管である。」(段落【0037】?【0039】)

f「58は第1のガラス管53と第2のガラス管54の開口端を覆う、シリコンゴム製の栓である。栓58にはリード線55が挿入されるリード線挿入孔58aが設けられており、リード線55の栓58への挿入はリード線55の端部が連結管56でかしめられる以前に行われている方が作業性はよい。58bは位置決め板55と栓58とで形成される隙間である。」(段落【0042】)

g「図3は本発明の実施の形態による除霜ヒーターを用いた冷蔵庫の冷凍システムの略図であり、図3において、60は圧縮機、61は凝縮器、62は減圧機構であり、圧縮機60と凝縮器61と減圧機構62と蒸発器10を機能的に接続された冷凍サイクルの内部には可燃性冷媒が封入されている。」(段落【0049】)

h「このとき、第1のガラス管53の内部空間は温度上昇により気体が膨張し、位置決め板57の通気孔57aを経て、リード線55と栓58のリード線挿入孔58aとの隙間から外部へ流出する。」(段落【0052】)

i「(実施の形態2)図8は、本発明の実施の形態2による除霜ヒーターの要部断面図である。なお、実施の形態1と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。・・・
103は円筒状突起102を長手方向に貫き、栓本体101を抜ける通路である。104は第1のガラス管53と第2のガラス管54と栓100とで形成される空間である。」(段落【0071】?【0073】)

j「このとき、第1のガラス管53と第2のガラス管54と栓100とで形成された空間104では、温度上昇により気体が膨張し通路103から外部へ流出する。
そして、この状態でヒーター線52への通電を停止し再び冷却を開始すると、空間104は温度低下により減圧され、水分を含んだ外気が通路103から空間104内へ流入する。
ここで再びヒーター線52に通電しヒーター線52を発熱させると、空間104内は温度上昇により水分が蒸発し水蒸気により空間104内の圧力が上昇し始める。しかしながら、水蒸気の一部は通路103から外部へ流出するので、空間104内の圧力上昇は緩和される。」(段落【0076】?【0078】)

k「(実施の形態3)図14は、本発明の実施の形態3による除霜ヒーターの要部断面図であり、図15は、同実施の形態の除霜ヒーターの要部斜視図である。なお、実施の形態2と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図14、図15において、700は実施の形態2の栓100と同じ機能を果たす栓であり、栓本体701と栓本体701に設けられた円筒状突起702から成る。
703は円筒状突起702を長手方向に貫き、栓本体701を抜ける通路である。104は第1のガラス管53と第2のガラス管54と栓700とで形成される空間である。
705は第2のガラス管54の鉛直上方に位置し、栓700の栓本体701に保持された傘であり、蒸発器から落下してくる水滴が第2のガラス管54の表面に直接当らないようにしている。」(【0097】?【0100】)

上記事項及び図面の記載から、引用例1の実施の形態2に着目して、本願発明に倣って整理すると、引用例1には、
「圧縮機60と、凝縮器61と、減圧機構62と、蒸発器10とを順次接続してなる冷凍サイクルに可燃性冷媒を封入し、前記蒸発器10を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、前記蒸発器10の下方に配した除霜ヒーター51であり、前記除霜ヒーター51は、ガラス管53、54と、前記ガラス管53、54内部に設置した抵抗線からなるヒーター線52と、リード線挿入孔が形成され前記ガラス管53、54の両端開口部を覆う栓100と、前記リード線挿入孔を通り前記ヒーター線52の端部に接続されるリード線55とを備え、前記栓100の少なくとも1つは、前記ガラス管53の開口部の通気孔から、温度上昇により膨張したガラス管53の内部空間の気体を外部に流出させるとともに、ガラス管54内に侵入した水分を水蒸気として外部へ流出させる通路103を開口部より下部に設けたことを特徴とする冷蔵庫。」(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-200929号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

a「【産業上の利用分野】本発明は、冷蔵庫及び冷凍庫等の冷却器の除霜装置に関するものである。」(段落【0001】)

b「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような構成では、除霜時に、ガラス管ヒータ1の発熱によりガラス管3内の圧力は上昇し、ガラス管3の内外の圧力が均衡するように、リード線4と絶縁材製のキャップ5との隙間から、ガラス管3内の空気の一部がガラス管3の外に出ていき、除霜が終了すると、ヒータ線2への通電は停止されガラス管3内温度の低下とともにガラス管3内圧力が低下し、それに伴い除霜時にリード線4と絶縁キャップ5の隙間に付着した除霜水の一部がガラス管3の内側と外側の圧力差でガラス管3内に侵入し、ヒータ線2を腐食、断線させる恐れがあった。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、除霜終了時に除霜水がガラス管内へ侵入してヒータ線を腐食、断線するのを防ぐことを目的とする。」(段落【0009】、【0010】)
c「また、ガラス管と、このガラス管内に配置されたヒータ線と、前記ガラス管の両端部に装着された絶縁材製のキャップと、このキャップ内に挿入されて前記ヒータ線の端部に接続されたリード線と、前記キャップと前記リード線との隙間を封止する封止ゴムとからなり、前記キャップの下部に前記キャップの内外の空間を連通する排出口を設け、この排出口を開閉自在に前記排出口の外側に設けられ前記排出口を閉じる方向に付勢力を与えられるへら状の薄肉ゴム弾性体からなる排出弁を形成したのである。」(段落【0012】)

d「図において、20はガラス管ヒータであり、放射熱及び対流伝熱を発生する鉄クロム等のヒータ線11と、ヒータ線11を管内に保持絶縁するガラス管12と、ヒータ線11の端部に接続されたリード線13と、ガラス管12の両端部に装着されガラス管12とリード線13とを保持固定する絶縁材製のキャップ21よりなる。
キャップ21の下部にキャップ21の内外の空間を連通する排出口22を設け、この排出口22を開閉自在に排出口22の外側に設けられ排出口22を閉じる方向に付勢力を与えられるへら状の薄肉ゴム弾性体からなる排出弁21aを形成している。
またキャップ21の下部にはリード線13の貫通口21bがあり、貫通口21bのリード線13出口部には凹部21cを設け凹部21cにはシリコンゴム21dを充填させリード線13との隙間を完全封止する。」(段落【0031】?【0033】)

e「以上のように構成された冷却器の除霜装置について、以下にその動作を説明する。・・・
除霜時、ガラス管ヒータ20はヒータ線11の発熱により放射熱及び対流伝熱を発生し冷却器15の除霜を行う。
この時、ガラス管ヒータ20の発熱によりガラス管12内の圧力が上昇し、キャップ21の下部の排出弁21aは付勢力に抗して開いて開状態となりヒータ線11の発熱により膨張したガラス管12内の空気を排出し、ガラス管12内の内圧を調整する。
除霜終了時キャップ21の下部の排出弁21aはガラス管12内の圧力低下に伴い閉状態となり、キャップ21表面に付着した除霜水のガラス管12内への侵入を防ぐ。またキャップ21下面部のリード線13との隙間についてはシリコンゴム21dによる完全封止により除霜時のキャップ21及びリード線13に付着した除霜水はガラス管12内に侵入することはない。」(段落【0034】?【0037】)

f「また、キャップ21の下部に排出口22を設け、この排出口22を開閉自在に排出口22の外側に排出弁21aを形成したので、万一ガラス管12又はキャップ21内に除霜水が侵入しても、除霜時のガラス管12内の圧力上昇による排出弁21aの開動作で排出口22から暖められた空気とともに除霜水が排出される。
以上のように、本実施例の冷却器の除霜装置は、キャップ21とリード線13との隙間をシリコンゴム21dで封止するとともに、キャップ21の下部にキャップ21の内外の空間を連通する排出口22を設け、この排出口22を開閉自在に排出口22の外側に設けられ排出口22を閉じる方向に付勢力を与えられるへら状の薄肉ゴム弾性体からなる排出弁21aを形成したので、除霜時は、排出弁21aが開いてガラス管12内部の圧力上昇を緩和し、除霜終了後は排出弁21aが閉じて排出弁21aからの除霜水の侵入を防止でき、また、キャップ21とリード線13との隙間をシリコンゴム21dで封止して、除霜終了時にキャップ21又はリード線13に付着した除霜水がキャップ21とリード線13の隙間から侵入するのを防止できる。また、キャップ21の下部に排出口22を設け、この排出口22を開閉自在に排出口22の外側に排出弁21aを形成したので、万一ガラス管12又はキャップ21内に除霜水が侵入しても、除霜時のガラス管12内の圧力上昇による排出弁21aの開動作で排出口22から暖められた空気とともに除霜水が排出される。」(段落【0038】?【0039】)

g そして、上記摘記事項f及び図5から、キャップ21の下部に設けた排出口22は、開口部より上部にあるとはいえず、開口部の下部に設けたものといえる。

上記事項及び図面の記載からみて、引用例2には、
「冷却器を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、ガラス管ヒータ20であり、前記ガラス管ヒータ20は、ガラス管12と、前記ガラス管12内部に設置した金属抵抗体からなるヒータ線11と、リード線13の貫通口21bが形成され前記ガラス管12の両端開口部を覆うキャップ21と、前記リード線13の貫通口21bを通り前記ヒータ線11の端部に接続されるリード線13とを備え、前記キャップ21の少なくとも1つは、前記ガラス管12の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管12の内部空間の気体及び前記ガラス管12内部にたまった水(除霜水)を外部へ排出させる排出弁21aを設けた冷蔵庫。」(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1における「抵抗線」は、その機能に照らし、本願発明における「金属抵抗体」に、同様に、「除霜ヒーター51」は「除霜ヒータ」に、「栓100」は「封止部材」に、それぞれ相当する。

したがって、上記両者は、
「圧縮機と、凝縮器と、減圧機構と、蒸発器とを順次接続してなる冷凍サイクルに可燃性冷媒を封入し、前記蒸発器を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、前記蒸発器の下方に配した除霜ヒータであり、前記除霜ヒータは、ガラス管と、前記ガラス管内部に設置した金属抵抗体からなるヒータ線と、リード線挿入孔が形成され前記ガラス管の両端開口部を覆う封止部材と、前記リード線挿入孔を通り前記ヒータ線の端部に接続されるリード線とを備え、前記封止部材の少なくとも1つは、温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体を外部へ流出させる冷蔵庫。」
である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]
本願発明では、封止部材の少なくとも1つは、前記ガラス管の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体及び前記ガラス管内部にたまった水を外部へ流出させる逆止弁を設けたのに対し、引用文献1に記載された発明では、当該構成を具備しない点。

(4)判断
そこで、上記[相違点]について以下検討する。
引用発明2における「冷却器」は、本願発明における「蒸発器」に、「ガラス管ヒータ20」は「除霜ヒータ」に、「リード線13の貫通口21b」は「リード線挿入孔」に、「キャップ21」は「封止部材」に、それぞれ相当する。また、引用発明2の「排出」は、その対象として気体と水を含むものであるから、本願発明の「流出」に相当する。

また、引用発明2おける「排出弁21a」は、除霜時、ガラス管ヒータ20の発熱によりガラス管12内の圧力が上昇し、自体の付勢力に抗して開いて開状態となりガラス管12内の空気を排出すると共に、除霜終了時にはガラス管12内の圧力低下に伴い閉状態となり除霜水のガラス管12内への侵入を防ぐ弁であるから、該「排出弁21a」は、「逆止弁」である。

したがって、引用発明2は、「蒸発器を除霜する除霜手段を有する冷蔵庫において、前記除霜手段は、除霜ヒータであり、前記除霜ヒータは、ガラス管と、前記ガラス管内部に設置した金属抵抗体からなるヒータ線と、リード線挿入孔が形成され前記ガラス管の両端開口部を覆う封止部材と、前記リード線挿入孔を通り前記ヒータ線の端部に接続されるリード線とを備え、前記封止部材の少なくとも1つは、前記ガラス管の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体及び前記ガラス管内部にたまった水を外部へ流出させる逆止弁を設けた冷蔵庫。」といえる。

即ち、引用発明2は、「冷蔵庫の除霜ヒータにおいて、封止部材の少なくとも1つは、ガラス管の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体及び前記ガラス管内部にたまった水を外部へ流出させる逆止弁を設けた」ものである。

そして、冷蔵庫の除霜ヒータにおいて、該ヒータの発熱によりガラス管内の空気が膨張して圧力が上昇し、除霜ヒータが破損する等の障害を受けるのを防止するために該空気を排気することも、またガラス管内に水(除霜水)が侵入しヒータ線の断線等の障害が発生するような場合、これを防止するために水を排水するようにすることも、従来良く知られた事項(例えば、特開平11-51548号公報、特開2000-304416号公報参照。)である。

また、水をガラス管から排出するに際して、開口部より下部に導くようにする程度のことは、当業者であれば、容易に想到することである。

さらに、引用発明1においても、侵入した水分を流出させること自体は構成として具備するものである。

そうすると、引用発明1において、ガラス管内に侵入した水分を水蒸気として排出するものに代えて、ガラス管内にたまった水(液体)とし、これを排出するようにした点に格別の困難性は、認められず、引用発明1において、本願発明のように、封止部材の少なくとも1つは、前記ガラス管の開口部より下部に温度上昇により膨張した前記ガラス管の内部空間の気体及び前記ガラス管内部にたまった水を外部へ流出させる逆止弁を設けた点は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者であれば、容易に想到しえたことである。

そして、本願発明が奏する作用、効果は、引用発明1及び2、周知技術から当業者が予測することができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-11-22 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-07 
出願番号 特願2003-370412(P2003-370412)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳幸 憲子田々井 正吾  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
中川 真一
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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