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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする A61K |
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管理番号 | 1230901 |
審判番号 | 不服2008-16808 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-02 |
確定日 | 2011-02-07 |
事件の表示 | 特願2003-319717「水性整髪料」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 82576、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年9月11日の出願であって、平成19年10月12日付けで拒絶理由が通知され、平成19年12月13日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、平成20年2月27日付けで、いわゆる最後の拒絶理由が通知され、平成20年4月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、この手続補正書による補正について、平成20年5月16日付けで補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年7月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年7月28日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。 2.原審の平成20年5月16日付けの補正の却下の決定の適否 請求理由における「以上、本願発明は本件補正の却下の決定に示された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではないので、本件補正の却下の決定でのご判断は当たらず、本件補正の却下は取消されるべきであると考えます。」によれば、審判請求人は、上記補正の却下の決定に対して不服を申し立てているものと認められる。そこで、まず、上記補正の却下の決定の適否について判断する。 [結論] 原審の平成20年5月16日付けの補正の却下の決定を取り消す。 [理由] 1)平成20年4月23日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 全重量に対して0.8?1.0重量%のヘアセット性のあるアクリレーツコポリマーAMP、該アクリレーツコポリマーAMP1に対して5.5?6.5(重量比)のグリセリン、および全重量に対して2.0?2.5重量%のポリウレタン-14を含有したことを特徴とする水性整髪料。」(以下、「本願発明」ともいう。) 2)原審の補正の却下の決定の理由 原審の補正の却下の決定は、平成20年4月23日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲、又は、図面についての補正を却下するものであり、その理由は、以下のとおりである。 「請求項1についての補正は限定的減縮を目的としている。 しかし、下記の理由により、当該補正後の請求項1に係る発明は、独立して特許を受けることができない。 よって、この補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。 請求項:1 適用条文:特許法第29条第2項 引用文献等:4、7、11 特許査定できない理由: 引例4には、(a)整髪用高分子化合物および(b)ショ糖脂肪酸エステルを含有する整髪料組成物が記載されており、整髪用高分子化合物としては1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、例としてアクリル酸アルキルエステル等のアクリル酸系高分子化合物が挙げられている。また、トリエタノールアミン等のアルカリ剤で中和して用いることができることも記載されている(【0006】-【0015】)。そして、引例4実施例には、さらにグリセリンを含有するスタイリングジェルが、グリセリンを含有しない物に比べて整髪力や整髪後のごわつきのなさ等の点でより優れたものであることが開示されている(実施例1、2)。 一方、引例7には、特定のポリウレタン(ポリウレタン-14を包含するものと認める。実施例参照)を含有する、良好な固定及び柔軟性等を有する毛髪固定組成物が記載されている。また、当該毛髪固定ポリウレタンは、アクリル系高分子化合物等の公知の他の毛髪固定ポリマーと共に用いることができることも記載されている(【0037】)。また、毛髪固定組成物中にグリセリンを添加しても良い旨も記載されている(【0040】)。 また、引例11にも、ポリウレタン-14を含むDynamXが、ごわつきやもろさのない毛髪固定ポリマーとして使用できる旨が記載されている。 してみれば、引例4の記載から、アクリル系高分子化合物として周知のアクリレーツコポリマーAMPとグリセリンを含有する整髪料を製造し、その配合量を最適化することは、当業者が容易に想到し得たことと認められるし、さらにその効果を高めるためにポリウレタン-14を併用することも、当業者が適宜なし得たことと認められる。 そして、そのことによる効果も、各引例の記載から予測されるところを超えて優れたものとは認められない。 引用文献等一覧 4.特開平11-171739号公報 7.特開平11-310520号公報 11.Gary Martino et al, Cosmetics & Toiletries, Jan 2003, 118, 1, p.49-56」 3)当審の判断 3-1)引用文献の記載事項 引用文献4には、以下の記載がある。 「【0034】 【実施例】 実施例1?4 スタイリングジェル状の実施例1?2および比較例1?2を表1に、ヘアクリーム状の実施例3?4および比較例3を表2に示す。 常法により各実施例および比較例を調製し、官能評価を行なった。 【0035】 <官能評価方法> 20名の女性パネラーに、各実施例並びに各比較例を実際の日常生活で使用してもらい、その使いごこちを次の基準で評価し、その主なものを評価とした。 <評価基準> (1)整髪力 ◎:非常に良好 ○:良好 △:やや弱い ×:弱い (2)整髪後の髪のごわつきのなさ ◎:非常になめらか ○:なめらか △:ややごわつく ×:ごわつく (3)整髪後の毛髪の感触 ◎:非常に良好 ○:良好 △:やや悪い ×:悪い (4)再整髪性 ◎:非常に良好 ○:良好 △:やや悪い ×:悪い その結果を表1および表2に示す。 【0036】 【表1】 」 3-2)判断 上記引用文献4の【表1】の実施例1、2の記載によれば、実施例1は、実施例2にグリセリンを追加したものということができ、整髪力、整髪後の髪のごわつきのなさ、整髪後の毛髪の感触、再整髪性という4項目の評価において、実施例2より優れているものといえる。しかしながら、比較例1、2に目を転じると、これらは、実施例1同様、グリセリンを配合し、ただし、ヤシ油脂肪酸蔗糖エステルを含まないものということができるが、これらの例においては、グリセリンを用いているにもかかわらず、上記4項目の評価において、グリセリンを用いていない実施例2より優れているものとはいえない。してみると、実施例1、2の記載から、アクリル樹脂アルカノールアミンにヤシ油脂肪酸蔗糖エステルを併用した場合にさらにグリセリンを併用すると上記4項目の評価が向上するとはいい得ても、【表1】の記載全体を見れば、アクリル樹脂アルカノールアミンにグリセリンを組み合わせることにより整髪力や整髪後のごわつきのなさ等の点でより優れたものが得られる旨の教示がなされているものとすることはできない。また、引用文献7及び11は、ポリウレタンについての開示があるにとどまり、アクリル系高分子化合物とグリセリンを含有する整髪料については記載も示唆もされていない。 これに対し、本願発明は、特定のアクリル系高分子の特定量と特定の重量比のグリセリンと、さらに、特定のポリウレタンの特定量とを併用することにより、優れたセット力および優れたフレーキング防止性という効果を両立させ得たものとされているから、引用文献4、7及び11によっては、その進歩性を否定されるものではない。 したがって、原審の補正の却下の決定の理由は妥当なものではなく、その理由によって、本願発明が独立して特許を受けることができないものとすることはできない。 よって、平成20年5月16日付けの補正の却下の決定を取り消す。 3.本願発明について 平成20年4月23日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり適法なものと認められるので、本願に係る発明は、該手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2011-01-14 |
出願番号 | 特願2003-319717(P2003-319717) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WYA
(A61K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松浦 安紀子 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
森井 隆信 内藤 伸一 |
発明の名称 | 水性整髪料 |
代理人 | 川島 利和 |