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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1230941
審判番号 不服2008-5739  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2011-01-24 
事件の表示 特願2003- 41544「文書処理方法及び文書処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-252665〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年2月19日の出願であって、平成19年9月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月19日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年4月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的の適否について
上記手続補正の目的が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。

(1-1)特許請求の範囲に係る補正内容について
上記手続補正により、特許請求の範囲に関してなされた補正は、請求項の記載を、
「【請求項1】
章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
を備えることを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】
前記登録手段により登録されているテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編
集手段を更に備えことを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項3】
前記文書は、ページを葉とする木構造を有し、各部分木ごとに前記文書とは独立した印刷設定情報を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記登録設定情報と前記登録指示を入力するための指示部とを備えた登録画面を表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項5】
前記文書を編集する文書編集手段を更に備え、該文書編集手段により印刷設定を変更可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項6】
前記印刷設定情報には、印刷方法、用紙方向、綴じ代及び綴じ方向、ページレイアウト、拡大縮小、ウオータマーク、ヘッダ及びフッタ、排紙方法、製本設定、表紙及び裏表紙、インデックス紙、合紙、章区切りの、少なくともいずれかが含まれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項7】
章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な、文書設定手段と、章設定手段と、ページ設定手段と、選択手段と、生成手段と、表示制御手段と、登録手段と、読込み手段とを備えた文書処理装置により遂行される文書処理方法であって、
前記文書設定手段が、前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定工程と、
前記章設定手段が、前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定工程と、
前記ページ設定手段が、前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定工程と、
前記選択手段が、前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択工程と、
前記生成手段が、前記選択工程により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択工程により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印
刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択工程により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成工程と、
前記表示制御手段が、前記生成工程によって生成された登録設定情報を表示する表示制御工程と、
前記登録手段が、前記表示制御工程によって前記登録設定情報が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録工程と、
前記読込み手段が、前記登録工程により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み工程と
を備えることを特徴とする文書処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
してコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体。」
から、
「【請求項1】
章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
を備えることを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】
前記文書は、ページを葉とする木構造を有し、各部分木ごとに前記文書とは独立した印刷設定情報を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記登録設定情報と前記登録指示を入力するための指示部とを備えた登録画面を表示することを特徴とする請求項1または2に記載の文書処理装置。
【請求項4】
前記文書を編集する文書編集手段を更に備え、該文書編集手段により印刷設定を変更可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項5】
前記印刷設定情報には、印刷方法、用紙方向、綴じ代及び綴じ方向、ページレイアウト、拡大縮小、ウオータマーク、ヘッダ及びフッタ、排紙方法、製本設定、表紙及び裏表紙、インデックス紙、合紙、章区切りの、少なくともいずれかが含まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項6】
章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な、文書設定手段と、章設定手段と、ページ設定手段と、選択手段と、生成手段と、表示制御手段と、登録手段と、読込み手段とを備えた文書処理装置により遂行される文書処理方法であって、
前記文書設定手段が、前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定工程と、
前記章設定手段が、前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定工程と、
前記ページ設定手段が、前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定工程と、
前記選択手段が、前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択工程と、
前記生成手段が、前記選択工程により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択工程により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択工程により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成工程と、
前記表示制御手段が、前記生成工程によって生成された登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面表示する表示制御工程と、
前記登録手段が、前記表示制御工程によって前記登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録工程と、
前記テンプレート編集手段が、前記登録工程による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録工程により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集工程と、
前記読込み手段が、前記登録工程により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み工程と
を備えることを特徴とする文書処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
してコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体。」
に補正するものである。
以下、補正前の請求項を「旧請求項」と呼び、補正後の請求項を「新請求項」と呼ぶ。

(1-2)特許法第17条の2第4項第1号について
新請求項1,6,7は、旧請求項2,7,8の内容を補正することにより生じた新たな請求項であり、他の請求項を削除した残りの請求項ではない。
よって、上記補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除には該当しない。

(1-3)特許法第17条の2第4項第2号について
(1-3-1)新請求項1に記載された発明が、旧請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものであるか否かについて
新請求項1に記載された発明に含まれる事項のうち、「登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する」こと、及び「前記登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集する」ことは、それぞれ、旧請求項2に記載された発明に含まれる事項のうちの「登録設定情報を表示する」こと、及び「前記登録手段により登録されているテンプレート情報の内容を編集する」ことを補正したものである。
上記補正によって新たに含まれることとなった「登録画面」、「設定画面」、及び「操作画面」という構成要件のうち、「登録画面」は、旧請求項2に「登録設定情報を表示する」との記載があることから、実質的に旧請求項2に存在していた構成要件であると解されるものの、「設定画面」及び「操作画面」は、旧請求項2に記載された発明を特定するために必要ないずれの事項を限定したものとも認められない。
よって、新請求項1に記載された発明は、旧請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものではない。
また、新請求項1に記載された発明が、旧請求項2以外の旧請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものでないことは、明らかである。

(1-3-2)新請求項6に記載された発明が、旧請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものであるか否かについて
新請求項6に記載された発明に含まれる事項のうち、「登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面表示する」ことは、旧請求項7に記載された発明に含まれる事項のうちの「登録設定情報を表示する」ことを補正したものである。
上記補正によって新たに含まれることとなった「設定画面」及び「操作画面」は、上記(1-3-1)で検討したのと同様に、旧請求項7に記載された発明を特定するために必要ないずれの事項を限定したものとも認められない。
また、新請求項6に記載された発明に含まれる事項のうち、「前記テンプレート編集手段が、前記登録工程による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録工程により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集工程」は、旧請求項7に記載された発明には存在しない新たな工程であり、旧請求項7に記載された発明に含まれるいずれの工程を限定したものとも認められない。
よって、新請求項6に記載された発明は、旧請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものではない。
また、新請求項6に記載された発明が、旧請求項7以外の旧請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものでないことは、明らかである。

(1-3-3)新請求項7に記載された発明が、旧請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものであるか否かについて
新請求項7に記載された発明に含まれる事項のうち、「登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する」ことは、旧請求項8に記載された発明に含まれる事項のうちの「登録設定情報を表示する」ことを補正したものである。
上記補正によって新たに含まれることとなった「設定画面」及び「操作画面」は、上記(1-3-1)で検討したのと同様に、旧請求項8に記載された発明を特定するために必要ないずれの事項を限定したものとも認められない。
また、新請求項7に記載された発明に含まれる事項のうち、「前記登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段」は、旧請求項8に記載された発明には存在しない新たな手段であり、旧請求項8に記載された発明に含まれるいずれの手段を限定したものとも認められない。
よって、新請求項7に記載された発明は、旧請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものではない。
また、新請求項7に記載された発明が、旧請求項8以外の旧請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものでないことは、明らかである。

以上のとおり、新請求項1,6,7に記載された発明は、旧請求項のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものとも認められず、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するものとは認められない。

(1-4)特許法第17条の2第4項第3号及び第4号について
上記補正が、特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正、及び第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものとは認められない。

上記(1-2)?(1-4)に示したとおり、本件手続補正の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(2)独立特許要件について
仮に、新請求項1に記載された発明が、旧請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものであるとした場合に、新請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(2-1)新請求項1に記載された発明
新請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記(1-1)に記載したとおりの次のものである。
「章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の前記指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
を備えることを特徴とする文書処理装置。」

(2-2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-200814号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平6-119327号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0030】<システム構成及び動作>図44は、本実施形態の文書処理システムのソフトウエア構成を示す図である。文書処理システムはデジタルコンピュータ1010によって実現されている。一般アプリケーション1010は、ワードプロセシングやスプレッドシート、フォトレタッチ、ドローあるいはペイント、プレゼンテーション、テキスト編集などの機能を提供するアプリケーションプログラムであり、印刷機能を有している。これらアプリケーションは、作成された文書データや画像データなどのアプリケーションデータを印刷するにあたって、オペレーティングシステム(OS)により提供される所定のインターフェースを利用する。すなわち、アプリケーション1010は、作成したデータを印刷するために、前記インターフェースを提供するOSの出力モジュールに対して、あらかじめ定められる、OSに依存する形式の出力コマンドを送信する。出力コマンドを受けた出力モジュールは、プリンタ等の出力デバイスが処理可能な形式にそのコマンドを変換し、それを出力する。出力デバイスが処理可能な形式はデバイスの種類やメーカ、機種などによって異なるために、デバイスごとにデバイスドライバが提供されており、OSではそのデバイスドライバを利用してコマンドの変換を行う。OSとしてマイクロソフト社のウインドウズを利用する場合には、前述した出力モジュールとしてはGDIと呼ばれるモジュールが相当する。
・・・(中略)・・・
【0033】製本アプリケーション1040は電子原稿ファイルあるいはブックファイル1030を読み込み、それを編集するための機能を利用者に提供する。ただし製本アプリケーション1040は、各ページの内容を編集する機能は提供しておらず、ページを最小単位として構成される、後述する章やブックの構造を編集するための機能を提供している。
【0034】製本アプリケーション1040によって編集されたブックファイル1030を印刷する際には、製本アプリケーション1040によって電子原稿デスプーラ1050が起動される。電子原稿デスプーラ1050は、指定されたブックファイルをハードディスクから読み出し、ブックファイルに記述された形式で各ページを印刷するために、前述したOSの出力モジュールに適合する出力コマンドを生成し、不図示の出力モジュールに出力する。その際に、出力デバイスとして使用されるプリンタ1070のドライバ1060がデバイスドライバとして指定される。出力モジュールは、指定されたプリンタ1070のデバイスドライバ1060を用いて受信した出力コマンドを、プリンタ1070で解釈実行可能なデバイスコマンドに変換する。そしてデバイスコマンドはプリンタ1070に送信され、プリンタ1070によってコマンドに応じた画像が印刷される。
・・・(中略)・・・
【0036】<電子原稿データの形式>編集アプリケーション1040の詳細に言及する前に、ブックファイルのデータ形式を説明する。ブックファイルは紙媒体の書物を模した3層の層構造を有する。上位層は「ブック」と呼ばれ、1冊の本を模しており、その本全般に係る属性が定義されている。その下の中間層は、本でいう章に相当し、やはり「章」と呼ばれる。各章についても、章ごとの属性が定義できる。下位層は「ページ」であり、アプリケーションプログラムで定義された各ページに相当する。各ページついてもページごとの属性が定義できる。ひとつのブックは複数の章を含んでいてよく、また、ひとつの章は複数のページを含むことができる。
【0037】図46(A)は、ブックファイルの形式の一例を模式的に示す図である。この例のブックファイルは、ブック,章,ページは、それぞれに相当するノードにより示されている。ひとつのブックファイルはひとつのブックを含む。ブック,章は、ブックとしての構造を定義するための概念であるから、定義された属性値と下位層へのリンクとをその実体として含む。ページは、アプリケーションプログラムによって出力されたページごとのデータを実体として有する。そのため、ページは、その属性値のほか、原稿ページの実体(原稿ページデータ)と各原稿ページデータへのリンクを含む。なお、紙媒体等に出力する際の印刷ページは複数の原稿ページを含む場合がある。この構造に関してはリンクによって表示されず、ブック、章、ページ各階層における属性として表示される。
【0038】図46において、ブック3010には、ブック属性が定義されるているとともに、2つの章3020A,3020Bがリンクされている。このリンクにより、章3020A,3020Bがブック3010に包含されていることが表示される。章3020Aには、ページ3030A,3030Bがリンクされ、これらページが含まれることが示されている。各ページ3030A,3030Bにはそれぞれ属性値が定義され、その実体である原稿ページデータ(1)、(2)へのリンクが含まれる。これらリンクは、図46(B)に示す原稿ページデータ3040のデータ(1),(2)を指し示し、ページ3030A、3030Bの実体が、原稿ページデータ(1)、(2)であることを表示する。
【0039】図47は、ブック属性のリストである。下位層と重複して定義可能な項目に関しては、下位層の属性値が優先採用される。そのため、ブック属性にのみ含まれる項目に関しては、ブック属性に定義された値はブック全体を通して有効な値となる。しかし、下位層と重複する項目については、下位層において定義されていない場合における既定値としての意味を有する。なお、図示された各項目は具体的に1項目に対応するのではなく、関連する複数の項目を含むものもある。
【0040】図48は章属性の、図49はページ属性のリストである。章属性とページ属性との関係もブック属性と下位層の属性との関係と同様である。
【0041】ブック属性に固有の項目は、印刷方法、製本詳細、表紙/裏表紙、インデックス紙、合紙、章区切りの6項目である。これらは、ブックを通して定義される項目である。印刷方法属性としては、片面印刷、両面印刷、製本印刷の3つの値を指定できる。製本印刷とは、別途指定する枚数の用紙を束にして2つ折りにし、その束をつづり合わせることで製本が可能となる形式で印刷する方法である。製本詳細属性としては、製本印刷が指定されている場合に、見開き方向や、束になる枚数等が指定できる。
【0042】表紙/裏表紙属性は、ブックとしてまとめられる電子原稿ファイルを印刷する際に、表紙および裏表紙となる用紙を付加することの指定、及び付加した用紙への印刷内容の指定を含む。インデックス紙属性は、章の区切りとして、印刷装置に別途用意される耳付きのインデックス紙の挿入の指定およびインデックス(耳)部分への印刷内容の指定を含む。この属性は、印刷用紙とは別に用意された用紙を所望の位置に挿入するインサート機能を持ったインサータが使用する印刷装置に備えられている場合か、あるいは、複数の給紙カセットを使用可能である場合に有効となる。これは合紙属性についても同様である。
【0043】合紙属性は、章の区切りとして、インサータからあるいは給紙カセットから供給される用紙の挿入の指定、および、合紙を挿入する場合には、給紙元の指定などを含む。
【0044】章区切り属性は、章の区切り目において、新たな用紙を使用するか、新たな印刷ページを使用するか、特に何もしないか等の指定を含む。片面印刷時には新たな用紙の使用と新たな印刷ページの使用とは同じ意味を持つ。両面印刷時には、「新たな用紙の使用」を指定すれば連続する章が1枚の用紙に印刷されることは無いが、「新たな印刷ページの使用」を指定すれば、連続する章が1枚の用紙の表裏に印刷されることがあり得る。
【0045】章属性に関しては、章に固有の項目はなく、すべてブック属性と重複する。したがって、章属性における定義とブック属性における定義とが異なれば、章属性で定義された値が優先する。ブック属性と章属性とにのみ共通する項目は、用紙サイズ、用紙方向、N-up印刷指定、拡大縮小、排紙方法の5項目である。このうち、N-up印刷指定属性は、1印刷ページに含まれる原稿ページ数を指定するための項目である。指定可能な配置としては、1×1や1×2、2×2、3×3、4×4などがある。排紙方法属性は、排出した用紙にステイプル処理を施すか否かを指定するための項目であり、この属性の有効性は使用する印刷装置がステイプル機能を有するか否かに依存する。
【0046】ページ属性に固有の項目には、ページ回転属性、ズーム、配置指定、アノテーション、ページ分割などがある。ページ回転属性は、原稿ページを印刷ページに配置する際の回転角度を指定するための項目である。ズーム属性は、原稿ページの変倍率を指定するための項目である。変倍率は、仮想論理ページ領域のサイズを100%として指定される。仮想論理ページ領域とは、原稿ページを、Nup等の指定に応じて配置した場合に、1原稿ページが占める領域である。例えば1×1であれば、仮想論理ページ領域は1印刷ページに相当する領域となり、1×2であれば、1印刷ページの各辺を約70パーセントに縮小した領域となる。
【0047】ブック、章、ページについて共通な属性として、ウオーターマーク属性およびヘッダ・フッタ属性がある。ウオータマークとは、アプリケーションで作成されたデータに重ねて印刷される、別途指定される画像や文字列などである。ヘッダ・フッタは、それぞれ各ページの上余白および下余白に印刷されるウオータマークである。ただし、ヘッダ・フッタには、ページ番号や日時など、変数により指定可能な項目が用意されている。なお、ウオーターマーク属性およびヘッダ・フッタ属性において指定可能な内容は、章とページとは共通であるが、ブックはそれらと異なっている。ブックにおいてはウオータマークやヘッダフッタの内容を設定できるし、また、ブック全体を通してどのようにウオータマークやヘッダフッタを印刷するかを指定することができる。一方、章やページでは、その章やページにおいて、ブックで設定されたウオータマークやヘッダ・フッタを印刷するか否かを指定できる。」

B.「【0048】<ブックファイルの生成手順>ブックファイルは上述したような構造および内容を有している。次に、製本アプリケーション1040および電子原稿ライタ1020によってブックファイルを作成する手順を説明する。ブックファイルの作成は、製本アプリケーション1040によるブックファイルの編集操作の一環として実現される。図50は、製本アプリケーション1040によりブックファイルを開く際の手順である。
【0049】まず、開こうとするブックファイルが、新規作成すべきものであるか、それとも既存のものであるか判定する(ステップS7010)。新規作成の場合には、章を含まないブックファイルを新規に作成する(ステップS7020)。新規に作成されるブックファイルは、図46の例で示せば、ブックノード3010のみ有し、章のノードに対するリンクが存在しないブックのノードとなる。ブック属性は、新規作成用としてあらかじめ用意された属性のセットが適用される。そして、新規ブックファイルを編集するためのユーザインターフェース(UI)画面を表示する(ステップS7040)。図54は、新規にブックファイルが作成された際のUI画面の一例である。この場合には、ブックファイルは実質的な内容を持たないために、UI画面11000には何も表示されない。
【0050】一方、既存のブックファイルがあれば、指定されたブックファイルを開き(ステップS7030)、そのブックファイルの構造、属性、内容に従ってユーザインターフェース(UI)画面を表示する。図53は、このUI画面の一例である。UI画面11000は、ブックの構造を示すツリー部11010と、印刷された状態を表示するプレビュー部11020とを含む。ツリー部11010には、ブックに含まれる章、各章に含まれるページが、図46(A)のような木構造で表示される。ツリー部11010に表示されるページは原稿ページである。プレビュー部11020には、印刷ページの内容が縮小されて表示される。その表示順序は、ブックの構造を反映したものとなっている。
【0051】さて、開かれたブックファイルには、電子原稿ライタによって電子原稿ファイルに変換されたアプリケーションデータを、新たな章として追加することができる。この機能を電子原稿インポート機能と呼ぶ。図50の手順によって新規に作成されたブックファイルに電子原稿インポートすることで、そのブックファイルには実体が与えられる。この機能は、図53の画面にアプリケーションデータをドラッグアンドドロップ操作することで起動される。図51に電子原稿インポートの手順を示す。
【0052】まず、指定されたアプリケーションデータを生成したアプリケーションプログラムを起動し、デバイスドライバとして電子原稿ライタ1020を指定してアプリケーションデータを印刷出力させることで、電子原稿データに変換する(ステップS8010)。変換を終えたなら、変換されたデータが画像データであるか否かを判定する(ステップS8020)。この判定は、ウインドウズOSの下であれば、アプリケーションデータのファイル拡張子に基づいて行える。例えば、拡張子が「bmp」であればウインドウズビットマップデータであり、「jpg」であればjpeg圧縮された画像データ、「tiff」であればtiff形式の画像データであると判定できる。
【0053】画像データでなかった場合には、ステップS8010で生成された電子原稿ファイルを、現在開かれているブックファイルのブックに、新たな章として追加する(ステップS8030)。章属性としては、ブック属性と共通するものについてはブック属性の値がコピーされ、そうでないものについては、あらかじめ用意された規定値に設定される。
【0054】画像データである場合には、原則として新たな章は追加されず、指定されている章に、ステップS8010で生成された電子原稿ファイルに含まれる各原稿ページが追加される(ステップS8040)。ただし、ブックファイルが新規作成されたファイルであれば、新たな章が作成されて、その章に属するページとして電子原稿ファイルの各ページが追加される。ページ属性は、上位層の属性と共通のものについてはその属性値が与えられ、アプリケーションデータにおいて定義された属性を電子原稿ファイルに引き継いでいるもにについてはその値が与えられる。例えば、Nup指定などがアプリケーションデータにおいてされていた場合には、その属性値が引き継がれる。このようにして、新規なブックファイルが作成され、あるいは、新規な章が追加される。
【0055】図52は、図51のステップS8010において、電子原稿ライタ1020により電子原稿ファイルを生成させる手順のフローチャートである。まず、新たな電子原稿ファイルを作成してそれを開く(ステップS9010)。指定したアプリケーションデータに対応するアプリケーションを起動し、電子原稿ライタをデバイスドライバとして、OSの出力モジュールに対して出力コマンドを送信させる。出力モジュールは、受信した出力コマンドを電子原稿ライタによって電子原稿形式のデータに変換し、出力する(ステップS9020)。出力先はステップS9010で開いた電子原稿ファイルである。指定されたデータすべてについて変換が終了したか判定し(ステップS9030)、終了していれば電子原稿ファイルを閉じる(ステップS9040)。電子原稿ライタ1020によって生成される電子原稿ファイルは、図46(B)に示した、原稿ページデータの実体を含むファイルである。」

C.「【0056】<ブックファイルの編集>以上のようにして、アプリケーションデータからブックファイルを作成することができる。生成されたブックファイルについては、章及びページに対して次のような編集操作が可能である。
(1)新規追加
(2)削除
(3)コピー
(4)切り取り
(5)貼り付け
(6)移動
(7)章名称変更
(8)ページ番号名称振り直し
(9)表紙挿入
(10)合紙挿入
(11)インデックス紙挿入
(12)各原稿ページに対するページレイアウト。
【0057】このほか、いったん行った編集操作を取り消す操作や、さらに取り消した操作をやり直す操作が可能である。これら編集機能により、例えば複数のブックファイルの統合、ブックファイル内で章やページの再配置、ブックファイル内で章やページの削除、原稿ページのレイアウト変更、合紙やインデックス紙の挿入などといった編集操作が可能となる。これらの操作を行うと、図47乃至5に示す属性に捜査結果が反映されたり、あるいはブックファイルの構造に反映される。たとえば、ブランクページの新規追加操作を行えば、指定された箇所にブランクページが挿入される。このブランクページは原稿ページとして扱われる。また、原稿ページに対するレイアウトを変更すれば、その変更内容は、印刷方法やN-up印刷、表紙/裏表紙、インデックス紙、合紙、章区切りといった属性に反映される。」

上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と
を備える文書処理装置。」

(引用例2)
D.「【特許請求の範囲】
【請求項1】文書に関する文書データと文書の書式に関する書式データとを含む文書の印刷イメージを表示手段に表示すると共に、操作者からの編集操作指示に応じて当該文書を編集する文書処理装置において、
1つ以上の書式データを記憶する書式データ記憶手段と、
特定の書式データを一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記書式データ記憶手段に保持されている書式データの一覧表示処理を行う書式データ一覧表示処理手段と、
前記書式データ一覧表示処理手段により前記表示手段に表示された書式データを示すリスト中から特定の書式データを選択する書式データ選択手段と、
前記書式データ選択手段により選択された書式データを前記書式データ記憶手段から取り出して前記一時記憶手段に書き込む書式データ取出処理手段と、
前記一時記憶手段から書式データを読み込み、該書式データを前記文書データに適用するレイアウト手段とを具えたことを特徴とする文書処理装置。」

E.「【0055】最初に、書式データフォルダーから任意の書式データを取り出して、文書に適用する場合の処理について、図8乃至図10を参照しながら説明する。
【0056】図8は表示部40の表示状態を示したものであり、810は書式データフォルダーに対応する書式データフォルダーウィンドウであり、820は「段数が1」の値を含んでいる書式を有している文書である。
【0057】ユーザが、書式データフォルダーウィンドウ810に一覧表示されている複数の書式データ中から、例えば符号830で示される書式データを選択し、更にキーボードに設けられているコピーキーを押下することにより「取り出し」指示を行うと、書式データフォルダー部30では、書式データ記憶部12から、選択された書式データ830を読み出して、一時記憶部13に書き込む処理を行う。
【0058】図8の表示状態から、次にユーザが、図9に示すように、文書820上の任意の位置を指定し、更にキーボードに設けられているペーストキーを押下することにより「読み込み」指示を行うと、文書エディタ部20では、一時記憶部13から、書式データフォルダー部30によって書き込まれた書式データ830を読み込み、この書式データ830を文書820の文書データに適用してレイアウト処理を行う。なおこの実施例では、例えば符号900で示される段落上の任意の位置が指定され、「読み込み」指示があると、その段落900は「読み込み」指示があった旨の表示(あった例えば反転表示など)に変更される。なおこれは、段落900のみが書式変更されるのではなく、文書820全体に対して選択された書式データが適用されることを、ユーザに提示していることを意味している。
【0059】このようにしてレイアウト処理が行われた後の表示部40の表示状態は、図9に示す表示内容から図10に示す表示内容に変更される。図10において、1000は文書820のレイアウトが変更された文書を示している。この文書1000においては、文書820では例えば1段組であったものが、書式データ830に含まれている「段数の値“3段”」に基づいて3段組に変更されていることが示されている。」

F.「【0060】次に、文書から書式データを取り出して書式データフォルダーに追加する場合の処理について、図11及び図12を参照しながら説明する。
【0061】図11は表示部40の表示状態を示したものであり、1110は書式データフォルダーに対応する書式データフォルダーウィンドウであり、1120は「段数が3」の値を含んでいる書式を有している文書であり、1130は文書1120の作成時に設定した書式データを有している文書スタイルウィンドウである。
【0062】最初にユーザが、書式データフォルダーウィンドウ1110及び文書1120を表示させた後、文書スタイルウィンドウ1130を表示させ、更に文書スタイルウィンドウ1130内の「スタイルフォルダーへ登録」の項目1140を選択すると、文書エディタ部20では、現在表示されている文書1120の書式データを取り出して一時記憶部13に書き込む処理を行う。
【0063】次にユーザが、書式データフォルダウィンドウ1110上の任意の位置を指定し、更にキーボードに設けられているペーストキーを押下することにより「読み込み」指示を行うと、書式データフォルダ部30では、一時記憶部13から文書エディタ部20によって書き込まれた書式データを読み込んで、書式データ記憶部12に書き込む処理を行う。この結果として書式データフォルダーウィンドウ1110には、書式データ記憶部12に追加された書式データが、書式データのリストに追加されて表示される。この表示状態を図12に示す。図12において、符号1200で示される書式データが新たに追加された書式データであり、文書1120の書式データでもある。」

上記D?Fの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。)
「ユーザの「取り出し」指示により、書式データ記憶部に登録されている書式データを取り出して一時記憶部に書き込み、さらにユーザが「読み込み」指示を行うことにより、該書式データを適用して表示中の文書のレイアウト処理を行うようにするとともに、
ユーザが現在表示されている文書の書式データを有している文書スタイルウィンドウを表示させ、更に該文書スタイルウィンドウ内の「スタイルフォルダーへ登録」の項目を選択することにより、該書式データを取り出して一時記憶部に書き込み、次にユーザが「読み込み」指示を行うことにより、該書式データが書式データ記憶部に追加して登録されるようにした文書処理装置。」

(2-3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と
を備える文書処理装置。」
である点。

(相違点)
本願補正発明は、「文書の編集中に、文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、文書、ページ、章の中から選択する選択手段」、「選択手段により文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用してテンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、前記選択手段により章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、前記選択手段によりページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段」、「生成手段によって生成された登録設定情報を含む登録画面、および、既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面を表示するための指示部を備えた操作画面を表示する表示制御手段」、「表示制御手段によって登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段」、「登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段」、及び「登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段」を備えるものであるのに対し、引用例1記載の発明は、上記各手段を備えるものではない点。

(2-4)判断
(2-4-1)上記相違点について
以下の事項を勘案すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(ア)引用例2のものにおいて、「文書」の印刷は、「書式データ」に基づいて行われると解されるから、引用例2記載の発明における「書式データ」は、引用例1記載の発明における「印刷設定情報」と共通する情報であるということができ、当業者は、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明を適用することを容易に想到し得るものである。そして、引用例2のものにおいて、「書式データ記憶部」に登録される「書式データ」は、「テンプレート情報」と呼び得るものである。

(イ)引用例1のものにおいて、「文書」、「章」、「ページ」それぞれの印刷設定情報は、まず、「文書」全体の印刷設定情報を設定し、その中で「章」独自の印刷設定情報、さらには「ページ」独自の印刷設定情報を設定できるようにしたものである。そして、「文書」と「章」あるいは「ページ」とに共通する印刷設定情報の設定において、相反する設定があった場合には、「章」あるいは「ページ」の印刷設定情報の設定が優先されるようになっている。
してみれば、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明を適用して処理中の文書の印刷設定情報を登録する際に、「文書」全体の印刷設定情報を登録しようとする場合には登録対象として「文書」を選択し、「章」独自に設定されている印刷設定情報を優先させて登録しようとする場合には登録対象として「章」を選択し、「ページ」独自に設定されている印刷設定情報を優先させて登録しようとする場合には登録対象として「ページ」を選択するようにするための「選択手段」を設けて文書全体に適用される所望の印刷設定情報を設定するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その場合に、テンプレート情報として登録すべき登録設定情報は、選択手段により「文書」を選択した場合には、「文書」の印刷設定情報を使用して生成し、選択手段により「章」を選択した場合には、「文書」と「章」とにおいて重複する設定項目は「章」の印刷設定情報を使用するとともに重複しない設定項目は「文書」の印刷設定情報を使用して生成し、選択手段により「ページ」を選択した場合には、「文書」と「ページ」とにおいて重複する設定項目は「ページ」の印刷設定情報を使用するとともに重複しない設定項目は「文書」の印刷設定情報を使用して生成するようにすれば、文書全体に適用される所望の印刷設定情報をテンプレート情報として登録設定することができるということは、当業者にとって明らかなことである。

(ウ)引用例2のものは、図11の「文書スタイルウィンドウ1130」に見られるように、これから登録しようとする書式モードを表示画面上で確認できるようなものである。
「生成手段によって生成された登録設定情報」も、これから登録しようとする情報であるから、上記引用例2のものを参酌すれば、該「登録設定情報」を含む「登録画面」を表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、一般に、登録されている情報の内容を編集するための画面を表示させるようにすることは、ごく普通に行われていることにすぎないから、「既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面」を表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、一般に、所望の画面を表示させるための「指示部」を備えた「操作画面」を表示するようにすることも、ごく普通に行われていることにすぎないから、そのような「操作画面」を表示するようにすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)上記(ウ)で検討したように、「生成手段によって生成された登録設定情報を含む登録画面」および「既に登録されているテンプレート情報の内容を編集するための設定画面」を表示するための「指示部」を備えた「操作画面」を表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、そのような表示を行うための「表示制御手段」を設けるようにすることも、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、表示される上記各種画面を用いて「登録」動作や「テンプレート編集」動作を行うようにすることは、ごく普通に考えられることにすぎないから、「表示制御手段によって登録設定情報を含む登録画面が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段」や「登録手段による登録処理に従って表示された操作画面の指示部が指示されることに従い表示された当該設定画面を用いて、前記登録手段により登録されたテンプレート情報の内容を編集するテンプレート編集手段」を設けるようにすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

(オ)引用例2記載の発明は、ユーザが、登録されている書式データの「読み込み」指示を行うことにより、該書式データを適用して表示中の文書のレイアウト処理を行うようにするものであるから、このような技術を引用例1記載の発明に対して適用することにより、「登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段」を設けるようにすることは、当業者が適宜になし得ることである。

(2-4-2)本願補正発明の作用効果について
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

(3)むすび
上記(1)、(2)で検討したとおり、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定あるいは第5項において準用する同法第126条第5項の規定のいずれかに違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成20年4月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年11月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「章とページとを備えた文書を印刷する際の印刷設定情報を変更可能な文書処理装置であって、
前記文書に対する印刷設定情報を設定する文書設定手段と、
前記章に対する印刷設定情報を設定する章設定手段と、
前記ページに対する印刷設定情報を設定するページ設定手段と、
前記文書の編集中に、前記文書全体に適用される印刷設定情報を含むテンプレート情報の登録のために使用される印刷設定情報を、前記文書、ページ、章の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により前記文書が選択された場合、前記文書の印刷設定情報を使用して前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記章が選択された場合、前記文書と前記章とにおいて重複する設定項目は前記章の印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成し、
前記選択手段により前記ページが選択された場合、前記文書と前記ページとにおいて重複する設定項目は前記ページの印刷設定情報を使用し、かつ、前記重複しない設定項目は前記文書の印刷設定情報を使用して、前記テンプレート情報として登録すべき登録設定情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された登録設定情報を表示する表示制御手段と、
前記表示制御手段によって前記登録設定情報が表示された後、ユーザによる登録指示に従って当該登録設定情報を前記文書全体に適用されるテンプレート情報として登録する登録手段と、
前記登録手段により登録されたテンプレート情報を、編集中の文書または新規な文書の印刷設定として読み込む読込み手段と
を備えることを特徴とする文書処理装置。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及びその記載事項は、上記2.(2)(2-2)に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明は、上記2.(2)で検討した本願補正発明において設けられている「登録画面」、「設定画面」、「操作画面」、「テンプレート編集手段」等の構成要件を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(2)(2-4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の構成要件を付加していない本願発明は、同様に、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-26 
結審通知日 2010-11-29 
審決日 2010-12-13 
出願番号 特願2003-41544(P2003-41544)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 剛  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
池田 聡史
発明の名称 文書処理方法及び文書処理装置  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  

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