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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25D |
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管理番号 | 1231051 |
審判番号 | 不服2007-28690 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-22 |
確定日 | 2011-01-26 |
事件の表示 | 特願2002-569305「内部熱スプレッダめっき方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月12日国際公開、WO02/70144、平成16年 7月 2日国内公表、特表2004-519558〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年2月21日(パリ条約による優先権主張2001年3月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1から12に係る発明は、平成21年12月21日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1から12に記載されたとおりのものであって、請求項1に記載された発明は次のとおりのものであると認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 連続めっきシステムであって、 垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置されており、めっき区画を画定する第1および第2のアノードと、 めっき区画に位置して細長い上方チャネルを画定しており、前記垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置された第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向された第1および第2の上方シールドと、 めっき区画に位置して細長い下方チャネルを画定しており、前記垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置された第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向された第1および第2の下方シールドとを備えており、該第1および第2の下方シールドは、第1の上方シールドおよび第1の下方シールド間のギャップと第2の上方シールドおよび第2の下方シールド間のギャップとを画定するように、第1および第2の上方シールドに対して位置決めされており、 前記連続めっきシステムがさらに、 1つまたは複数の部品をめっき区画を通して移動させるように構成されており、また、めっきされる部品の上部が上方チャネルに位置し、該部品の下部が下方チャネルに位置し、前記ギャップの高さ寸法が1つまたは複数の部品の高さ寸法よりも小さくなるように、めっき区画に対して配置された、部品クランプと、 めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液水平スパージャとを備えており、前記一連の入口が、該入口を通って流れるめっき溶液を、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの一方の中に、かつ、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの他方の方へ向かわせるように、方向付けられている、前記めっきシステム。」 2.引用文献の記載事項 (1)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、実願昭57-121327号(実開昭59-24767号)の マイクロフィルム(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 a:「被メッキ材としての金属帯を断面縦向きで走行させるメッキ槽内の上記金属帯下端部の両側に、メッキ電流調節用の各遮蔽板を遮蔽板下端ほど金属帯から遠ざけるように傾斜させて設け、これら遮蔽板の下側にメッキ液攪拌用噴出管を設けたことを特徴とする金属帯のメッキ装置。」(実用新案登録請求の範囲) b:「通常、メッキ槽内の底部に孔あき噴出管を設け、該噴出管よりメッキ液または空気を噴射し、この噴射流によってメッキ液を攪拌させる...」(明細書2頁4-7行) c:「第1図において、1はメッキ槽である。2は被メッキ材としての金属帯であり、断面縦向きでメッキ槽1内に走行される。3,3は銅母材としての陽極である。41,41は金属帯上端の両側に設けたメッキ電流調節用遮蔽板であり、電界調整により金属帯上端での電界集中を防止してメッキ電流密度の均一化を図るものである。42,42は金属帯下端の両側に設けたメッキ電流調節用の遮蔽板であり、下端ほど金属帯2(「1」は「2」の誤記と認める。)に遠ざけるように傾斜されている。5,5はメッキ液噴出管であり、上記の下部遮蔽板42,42の下方に設けられている。 上記においてメッキ液噴出管に代え第2図Aに示すように空気噴出管50を用いることもできる」(明細書3頁2?16行) d:「噴出管からの噴出流は傾斜遮蔽板のために金属帯によく向って流され、金属板表面でのメッキ液の撹拌効果を充分に保障できる。」(明細書4頁7?10行) e:第1図には、陽極3,3が、メッキ槽の中に垂直方向に配向され、間隔を置いて配置され、メッキ区画を確定しており、断面縦向きの金属帯2の上端部両側に遮蔽板41,41が、陽極3,3に対してほぼ平行に設けられ、細長い上方チャネルを画定しており、金属帯2の下端部両側に遮蔽板42,42が、下端ほど金属帯2から遠ざかるように傾斜して設けられ、細長い下方チャネルを画定しており、遮蔽板42,42の下側(メッキ槽1の底部)にはメッキ液攪拌用噴出管5,5が設けられ、メッキ液攪拌用噴出管5,5から噴出されたメッキ液は、金属帯と上部及び下部遮蔽板との間を上昇し、金属帯の両側でメッキ液を攪拌することが図示されており、遮蔽板41,41及び遮蔽板42,42の間にはギャップが設けられていることも図示されている。 また、メッキ液噴出管は、メッキ槽の下方に位置し、メッキ液を噴射する孔が設けられているのであるから、メッキ区画の下方に位置する一連の入口を具備するものであるといえる。 上記の各記載及び図面の記載を参照すると、引用例1には、 メッキ装置であって、 垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置されており、メッキ区画を画定する2つの陽極3,3と、 メッキ区画に位置して細長い上方チャネルを画定しており、垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置された2つの陽極3,3に対してほぼ平行である、垂直方向に配向された遮蔽板41,41と、 メッキ区画に位置して細長い下方チャネルを画定している遮蔽板42,42とを備えており、該遮蔽板42,42は、一方の遮蔽板41および一方の遮蔽板42間のギャップと他方の遮蔽板41および他方の遮蔽板42間のギャップとを画定するように、遮蔽板41,41に対して位置決めされており、 前記メッキ装置がさらに、 金属帯2をメッキ区画を通して移動させるように構成されており、また、メッキされる金属帯2の上部が遮蔽板41,41の間に位置し、該金属帯2の下部が遮蔽板42,42の間に位置し、前記ギャップの高さ寸法がメッキされる金属帯2の高さ寸法よりも小さくなるように、メッキ区画に対して配置され、 メッキ区画の下方に位置する一連の入口を具備するメッキ液攪拌用噴出管5,5を備えている、前記メッキ装置、 が記載されている。(以下、「引用発明」という。) (2)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開平8-296086号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 f:「【特許請求の範囲】【請求項1】断面を縦方向にしてメッキ槽内を走行する金属条体の上部と下部との両側に、メッキ電流を調節する電流遮蔽板をそれぞれ設け、さらに下部両側の電流遮蔽板の間から流体を噴出してメッキ液を流動する流体ノズルを設けた電気メッキ装置において、上部両側の電流遮蔽板に所定の傾斜を設けてその下端部をくさび状にしたことを特徴とする電気メッキ装置。」 g:「【0013】【実施例】図1に本発明の実施例を示す。この実施例は、上部の両側の電流遮蔽板4に所定の傾斜を設けてその下端部4aをくさび状にしたものである。傾斜方向は、金属条体3側が尖がるように、陽極2側上方から金属条体3側下方に向かっており、両方の電流遮蔽板下端部4a、4aで、ちょうど逆ハの字形を作る格好となる。 【0014】このように上部の電流遮蔽板4の下端部4aをくさび状にすると、電流遮蔽板4、5により電流遮蔽効果と流体ノズル7による流動効果が加味されても、金属条体3の上部でのメッキ液6の流動は十分に行われ、電流が過度に遮蔽されるということもなくなり、一次電流が均一化される。このため、金属条体上端部3aのメッキ厚が薄くなるという問題がなくなり、メッキ厚分布の均一化が図れる。」 h:図1及び図7には、メッキ槽内に配置された陽極2,2に対してほぼ平行に下部電流遮蔽板5,5が配置されていることが記載されている。 3.対比 引用発明の「メッキ装置」は連続的にめっきをするものであると認められるから、本願発明の「連続めっきシステム」に相当し、引用発明の「陽極3,3」は本願発明の「第1及び第2のアノード」に相当し、引用発明の金属帯上端の両側に設けたメッキ電流調節用「遮蔽板41,41」は本願発明における「第1及び第2の上方シールド」に相当し、引用発明の金属帯下端の両側に設けたメッキ電流調節用の「遮蔽板42,42」は本願発明の「第1及び第2の下方シールド」に相当する。 また、引用発明の「金属帯2」は被メッキ材であるから、本願発明の「1つまたは複数の部品」に相当し、引用発明の「メッキ液攪拌用噴出管5」と本願発明の「めっき溶液水平スパージャ」とはいずれもめっき溶液を噴出する機能を有するから、両者は「メッキ溶液スパージャ」である点で一致する。 これらの点を考慮して、本願発明と引用発明とを対比すると、 両者は、「連続めっきシステムであって、 垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置されており、めっき区画を画定する第1および第2のアノードと、 めっき区画に位置して細長い上方チャネルを画定しており、前記垂直方向に配向されると共に間隔を置いて配置された第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向された第1および第2の上方シールドと、 めっき区画に位置して細長い下方チャネルを画定している、第1および第2の下方シールドとを備えており、該第1および第2の下方シールドは、第1の上方シールドおよび第1の下方シールド間のギャップと第2の上方シールドおよび第2の下方シールド間のギャップとを画定するように、第1および第2の上方シールドに対して位置決めされており、 前記連続めっきシステムがさらに、 1つまたは複数の部品をめっき区画を通して移動させるように構成されており、また、めっきされる部品の上部が上方チャネルに位置し、該部品の下部が下方チャネルに位置し、前記ギャップの高さ寸法が1つまたは複数の部品の高さ寸法よりも小さくなるように、めっき区画に対して配置され、、 めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液スパージャとを備えている、前記めっきシステム。」である点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:本願発明は、第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向された第1および第2の下方シールドとを備えているのに対し、引用発明では、第1及び第2の下方シールドは第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向されたものではない点。 相違点2:本願発明では、1つまたは複数の部品をめっき区画を通して移動させるように構成されており、また、めっきされる部品の上部が上方チャネルに位置し、該部品の下部が下方チャネルに位置し、前記ギャップの高さ寸法が1つまたは複数の部品の高さ寸法よりも小さくなるように、めっき区画に対して配置された、部品クランプを有しているのに対し、引用発明では、1つまたは複数の部品をめっき区画を通して移動させるように構成されており、また、めっきされる部品の上部が上方チャネルに位置し、該部品の下部が下方チャネルに位置し、前記ギャップの高さ寸法が1つまたは複数の部品の高さ寸法よりも小さくなるように、めっき区画に対して配置されてはいるが、部品クランプを有しているか否かの記載がない点。 相違点3:本願発明では、めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液水平スパージャとを備えており、前記一連の入口が、該入口を通って流れるめっき溶液を、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの一方の中に、かつ、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの他方の方へ向かわせるように、方向付けられているのに対し、引用発明では、めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液スパージャとを備えているが、水平スパージャではなく、また、メッキ液の流れについて詳細な記載はない点。 4.当審の判断 (1)相違点1について 本願発明は、第1および第2のアノードに対してほぼ平行である、垂直方向に配向された第1および第2の下方シールドとを備えているが、電気メッキ装置の下部電流遮蔽板、すなわち本願発明における下方シールドに相当する部材を陽極(アノード)に対してほぼ平行である、垂直方向に配向させることは引用例2の図1あるいは図7に記載されているように公知の事項であるから、本願発明の相違点1に係るような構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。 (2)相違点2について 本願発明では、めっきされる部品を部品クランプにより特定の位置に位置するようにされている。 引用発明においても、めっきされる部品は本願発明と同様の位置にあり、めっきされる部品を特定箇所に位置させるに際し、部品クランプを用いることは周知の事項であるから(例えば、特開平10-168600号公報参照)、本願発明の相違点2に係るような構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることにすぎない。 (3)相違点3について 本願発明では、めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液水平スパージャとを備えており、前記一連の入口が、該入口を通って流れるめっき溶液を、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの一方の中に、かつ、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの他方の方へ向かわせるように、方向付けられている。 引用発明におけるメッキ液スパージャは管状のものであるのに対し、本願発明のものは水平スパージャであり、水平スパージャにおける「水平」がどのような技術的意義を持つものであるかは明らかではないが、いずれも、めっき区画の下方に位置する一連の入口を具備するめっき溶液を噴出させるスパージャであることでは同様のものであり、「水平」という語の有無に格別の技術的意義があるものとは認められない。 そして、引用例1の記載事項dには、噴出管からの噴出流は傾斜遮蔽板のために金属帯によく向って流され、金属板表面でのメッキ液の撹拌効果を充分に保障できる、との記載があるように、引用発明においても、めっき液をめっきされる部品の方向に向って流すものであり、第1図を参照すれば、メッキ液の流れは本願発明と同様に、上方チャネルおよび下方チャネルの一方の中に、かつ、前記上方チャネルおよび前記下方チャネルの他方の方へ向かわせるように、方向付けられているものである。 よって、引用発明においてもめっき液の流れを第1図に記載されているように具体的に限定して記載することに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることにすぎない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1から2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-26 |
結審通知日 | 2010-08-31 |
審決日 | 2010-09-13 |
出願番号 | 特願2002-569305(P2002-569305) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀧口 博史 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
筑波 茂樹 藤原 敬士 |
発明の名称 | 内部熱スプレッダめっき方法および装置 |
代理人 | 渡邉 千尋 |
代理人 | 大崎 勝真 |
代理人 | 川口 義雄 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 坪倉 道明 |