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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  IPCコード:なし
管理番号 1231222
審判番号 無効2009-800122  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-05 
確定日 2011-01-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第4210779号発明「食品の包み込み成形方法及びその装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4210779号は、平成13年8月17日に出願した特願2001-248204号の一部を平成20年8月6日に新たな特許出願としたものであって、平成20年11月7日に特許権の設定の登録がなされ、請求人より平成21年6月5日に、上記特許の特許請求の範囲の請求項1、2に係る特許に対して本件特許無効審判が請求されたところ、同年8月24日付けで被請求人より答弁書が提出され、平成21年9月16日付けで請求人より上申書が提出された。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)。
「【請求項1】
受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し、シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し、押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持し、押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し、外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し、支持部材を下降させて成形品を搬送することを特徴とする食品の包み込み成形方法。
【請求項2】
中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、受け部材の上方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタと、シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整するとともにシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と、外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と、受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。」

第3 請求人の主張
本件特許発明1及び2は構成要件ごとに分説して示すと次のとおりのものである。
「【請求項1】
A:受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し、
B:シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整し、
C:押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、
D:押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持し、
E:押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し、
F:外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し、
G:支持部材を下降させて成形品を搬送すること
H:を特徴とする食品の包み込み成形方法。
【請求項2】
I:中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、
J:受け部材の上方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタと、
K:シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整するとともにシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、
L:押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と、
M:外皮材形成手段に設けられるとともに押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と、
N:受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段と
O:を備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。」

請求人は、甲第1号証から甲第8号証を提出し、本件特許発明1及び2は、甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明、並びに周知の技術に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨、主張している。
そして、本件特許を無効とすべき無効理由の内容は、概略以下のとおりである。

本件特許発明1は、甲第1号証に記載の発明(引用発明1-1)と対比すると、甲第1号証に記載の発明が、本件特許発明1の構成要件A、F、H、を有し、構成要件Cの下降させる押し込み部材以外の構成要件C‘、構成要件Dの外皮材を椀状に形成する押し込み部材以外の構成要件D‘、構成要件Eの内材供給手段の構成要件E‘を有する点で一致し、構成要件C、D、Eの一部の押し込み部材でない部分が相違し、構成要件B、構成要件Gがない点で相違する。
しかし、構成要件Bは、甲第1号証の感知手段、甲第2号証及び甲第3号証のシャッタの開口面積縮小による位置調整についての周知技術、甲第4号証に記載の発明(引用発明2-1)のシャッタの絞り込む包み込み前行程、甲第5号証及び甲第6号証のシャッタ片の2段階操作についての周知技術に基づいて、構成要件C、D、Eの押し込み部材に関わる相違点は、甲第7号証に記載の発明(引用発明3-1)の適用、または、引用発明3-1及び押し込み部材についての周知技術(甲第7号証、甲第8号証)に基づいて、構成要件Gは甲第7号証(引用発明3-1)または支持部材の下降についての周知技術(甲第7号証、甲第8号証)に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本件特許発明1は、甲第1号証、甲第4号証、甲第7号証に記載の発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものではない。
したがって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、本件特許発明2は、甲第1号証に記載の発明(引用発明1-2)と対比すると、甲第1号証に記載の発明が、本件特許発明2の構成要件I、J、M、Oを有し、構成要件Kのシャッタの位置調整以外の構成要件K‘、構成要件Lの外皮材を椀状に形成し内材を供給する押し込み部材以外の構成要件L‘を有する点で一致し、構成要件Kの一部のシャッタの位置調整がない点、Lの一部の椀状に形成し内材を供給する押し込み部材がない点が相違し、構成要件Nがない点で相違する。
しかし、構成要件Kのシャッタの位置調整についての相違点は、甲第1号証の感知手段、甲第2号証及び甲第3号証のシャッタの開口面積縮小による位置調整についての周知技術に基づいて、甲第4号証に記載の発明(引用発明2-2)のシャッタの絞り込む包み込み前行程、甲第5号証及び甲第6号証のシャッタ片の2段階操作についての周知技術に基づいて、構成要件Lの押し込み部材に関わる相違点は、甲第7号証に記載の発明(引用発明3-2)の適用、または、押し込み部材についての周知技術(甲第7号証、甲第8号証)に基づいて、構成要件Nは、甲第7号証に記載の発明(引用発明3-2)または支持部材についての周知技術(甲第7号証、甲第8号証)に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本件特許発明2は、甲第1号証、甲第4号証、甲第7号証に記載の発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものではない。
したがって、本件特許発明2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

請求人が提出した証拠方法
(1)甲第1号証 :特開平11-137231号公報
(2)甲第2号証 :特開平9-187215号公報
(3)甲第3号証 :特開2000-4766号公報
(4)甲第4号証 :特開2000-50854号公報
(5)甲第5号証 :特開平6-178679号公報
(6)甲第6号証 :特開平6-217675号公報
(7)甲第7号証 :特開昭62-239970号公報
(8)甲第8号証 :特開昭62-262978号公報

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件特許発明1及び2は、甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明、並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件特許発明1及び2に係る特許は無効とされるべきものではない旨、主張している。

第5 各証拠方法の記載事項
甲第1号証から甲第8号証には以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審が付与したものである。)
1.甲第1号証
ア.「【発明の属する技術分野】この発明は、パン生地,饅頭生地などの生地材を成形して餡などの内材を包んで成形する、食品の生地成形方法および生地成形機に関するものである。
【従来の技術】従来、実開平6-70577号公報に示すように円形状の生地片をカップ上に支持し、生地片上に餡などの球状の内材を載せ、押し込み棒によって内材と生地材とをカップ内に押し込むことで成形し、開いていたゲート(シャッタ)を閉じることで、生地片に内材を包み込む包餡装置があった。
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の包餡装置およびこの装置による食品の生地片の成形方法では、内材がペースト状(クリーム,ジャム)あるいは不定形状の材料(料理したキンピラごぼう,野沢菜などの漬物)である場合は押し込みによって成形するには、潰れたり、破れたりして極めて不都合な結果となり、きれいな形状に内材を包み込めないという問題点があった。この発明は、前述した問題点を解決して、平らな生地材の外周縁部を保持した状態で、前記生地材の上面側からの空気の吹込みおよび空気の吸引の少なくとも一方により、内材を入れるのに適した形状に前記生地材を成形し、きれいな形状に生地材によって内材が包み込めるようにした、食品の生地成形方法および生地成形機の提供を目的としている。」(段落【0001】?【0003】)

イ.「【発明の実施の形態】この発明の第1実施形態に係る食品の生地成形機は、図1,図2に示すように、支持板1上に固定した基台2に筒状の室壁3を気密に固定し、基台2と室壁3とによって上部開口4cがある空気室4を支持板1上に設けて生地成形装置8を構成している。
空気室4内には成形型5を収容し、基台2と成形型5との間にコイルばね6を介在させて、成形型5の上端面を室壁3の上部内周面に形成した段3aに押し付け、空気室4を成形型5によって上部室4aと下部室4bとに分割し、成形型5およびコイルばね6を空気室4の軸線に一致させて同心に配置し、成形型5の上端部以外のほぼ全体と基台2および室壁3との間に下部室4bを形成し、室壁3の上端部の内径と成形型5の上端の内径とを等しくし、成形型5の上部に上部開口4cがある上部室4aを形成している。前記成形型5は、下部を半球弧状とし、上部に短い円筒状部を連続させた椀状とし、上部室4aと下部室4bとを連通させる多孔のプラスチックの成形品である。
前記基台2には、下部室4bの下部に内端が開口する吸気孔2aを形成し、吸気孔2aの外端部に少なくとも一部が可撓性にしてあるパイプ7の先端部を接続し、パイプ7の末端部を切換え弁(図示省略)を介して空気の吸引による減圧および空気の吹込みによる加圧手段(図示省略)に接続してある。この場合、空気の吹込みによる加圧手段は、図4の(4)で見られる包合が完了して最終成形品を取り出す際に、生地材11が成形型5に付着して取出し難い場合がある為に、加圧手段によってパイプ7を経由して下部室4bに空気を送り込んで製品が成形型5から離脱するのを助ける為に設けられている。
前記のように構成した生地成形装置8は、空気室4の上方の所望個所に固定され、かつ室壁3上方に食品生地がセットされた状態を感知する感知手段(センサー)9と、図示しない昇降用シリンダのピストンロッド18に連結されて昇降する環状の生地抑え手段としての生地抑え部材10とを設けて、食品の生地成形機を構成してある。」(段落【0014】?【0017】)

ウ.「前記第1実施形態の生地成形機を用いて、食品の生地成形を行うには、厚さが15mm程度の平らな円板状にしたパン生地,饅頭生地のような生地材11を成形装置8の室壁3上に供給し、生地材11によって空気室4の上部室4aに形成した上部開口4cを覆うと共に、生地材11の外周縁部11aを室壁3の上端面に支持させる(図4の(1)生地材セット参照)。この状態で、前記成形装置8と感知手段9との少なくとも一方を移動させて適所に停止させ、この状態で、成形装置8の室壁3上に生地材11が支持されているか否かを感知し、必要に応じて室壁3上の生地材11が所定位置からずれているか否かも感知する。
前記室壁3上の所定位置に生地材11が支持してある状態で、必要に応じて成形装置8と環状の生地抑え部材10との少なくとも一方を移動させて、生地材11の外周縁部11a上に生地抑え部材10を載置する(図4の(2)成形参照)。
そして、成形装置8のパイプ7に設けた弁を開き、パイプ7および吸気孔2aによって空気室4の下部室4b内空気を吸引することで、下部室4bと上部室4aとを仕切る多孔の成形型5が、下部室4b内と上部室4a内とを連通させているので、上部室4a内の空気を下部室4b側に吸引し、上部室4a内を減圧して生地材11の外周縁部11aより中心側の部分を成形型5内面に吸着させて、中心側の部分を椀状に成形する。
その後、ほぼ球状の餡12を内材とし、生地材11の成形した部分内に、生地抑え部材10で生地材11の外周縁部11aを抑えた状態で、内材である餡12を適宜の手段で供給する(図4の(3)餡入れ参照)。そして、餡12を生地材11の成形した部分内に入れた状態で、生地抑え部材10を生地材11の外周縁部11a上から外し、シャッター13を開位置から閉位置まで移動させることで、餡12を包合して成形する(図4の(4)包合参照)。
なお、前記生地材11の外周縁部11a上の生地抑え部材10が取り除かれた状態では、生地材11が慣性により若干収縮がおこり内材の外周側に密接した状態となりシャッター13の閉動作とともに生地材11内面の空気を押し出しながらの包合が可能となる。また、第1実施形態において、外した生地抑え部材10は所定位置に戻し、閉じたシャッター13は開位置に戻し、前述した成形,包合を繰り返す。」(段落【0021】?【0025】)

エ.「…、成形型内より内材を包み込んで成形した成形品を取り出す場合は、空気室内に空気の吹込みによる加圧手段により成形型の内面側に通気小孔を介して空気を吹き出すことで成形型より成形品の取り出しおよび通気小孔の目詰り防止等を容易に行うことができる。」(段落【0044】)

また、成形型5内面に吸着されて椀状に成形された生地材が、成形型5内面で支持されていること、及び、シャッターを駆動するシャッター駆動手段を有することは明らかである。

なお、請求人は、構成要件Aに関連して、「餡12を生地材11の成形した部分内に入れた状態で、生地抑え部材10を生地材11の外周縁部11a上から外し、シャッター13を開位置から閉位置まで移動させることで、餡12を包合して成形する(図4の(4)包合参照)」(段落【0024】)という記載及び図4の(4)包合の図から、シャッタが受け部材の上方に位置して配置されていること、及び、「また、第1実施形態において、外した生地抑え部材10は所定位置に戻し、閉じたシャッター13は開位置に戻し、前述した成形,包合を繰り返す。」(段落【0025】)の記載から、シャッタを開ロさせた状態で外皮材が供給されることが甲第1号証から認定できると主張する(審判請求書10頁1?7行)。
しかしながら、甲第1号証の、室壁3上に生地材11を供給した状態を示す図1、及び生地材11が成形型5内で成形された状態を示す図2のいずれにもシャッタは示されていない。また、第1、2実施形態に係る食品の生地成形方法を行う動作を示す第4図、第6図の(4)包合のときにシャッタが記載されているのみで、各図の(1)?(3)のときシャッタがどのような状態でどこに存在するのか明らかでない。このほか、甲第1号証のどこにも、「受け部材の上方に配置しシャッタを開ロさせた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給」することを示す記載はない。

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲第1号証発明1」及び「甲第1号証発明2」という。)が記載されているものと認められる。

甲第1号証発明1
「室壁3の上端面上に平らな円板状にしたパン生地,饅頭生地のような生地材11を供給し、感知手段9により、室壁3の上端面上の生地材が所定位置からずれているか否かを感知し、生地抑え部材10を下降させて生地抑え部材10で生地材の外周縁部11aを抑えて生地材を室壁3の上端面上に保持し、生地材の外周縁部11aより中心側の部分を成形型5内面に吸着させて、中心側の部分を椀状に成形し、適宜の手段で内材12を供給して生地材に内材を入れ、生地材を成形型5内面で支持した状態で室壁3の上端面の上方に配置した複数のシャッター片を備えたシャッター13を開位置から閉位置まで移動させることにより生地材の外周縁部を内材を包むように集めて封着し、最終成形品を取り出す際に空気を送り込んで成形型から離脱させることを特徴とする内材を包み込む食品の生地成形方法。」

甲第1号証発明2
「中央部分に開口4cが形成されるとともに平らな円板状にしたパン生地,饅頭生地のような生地材11が載置される室壁3の上端面と、室壁3の上端面の上方に配設されるとともに複数のシャッター片を備えたシャッター13と、室壁3の上端面上の生地材が所定位置からずれているか否かを感知する感知手段9及びシャッター片を開位置から閉位置まで移動させることにより生地材の外周縁部11aを内材12を包むように集めて封着するシャッター駆動手段と、生地材の外周縁部11aより中心側の部分を成形型5内面に吸着させて、中心側の部分を椀状に成形する手段及び、内材12を供給する適宜の手段と、生地抑え部材10で生地材の外周縁部11aを抑えて生地材を室壁3の上端面上に保持する保持手段と、最終成形品を取り出す際に空気を送り込んで成形型から離脱させる手段とを備えていることを特徴とする内材を包み込む食品の生地成形機。」

2.甲第2号証
ア.「【請求項1】 生地をベルトコンベヤ体で移動する工程と、移動される生地の前方を制止用補正枠体にて受け止める工程と、受け止めと同時にベルトコンベヤ体の移動を停止する工程と、生地が停止した状態で修正用補正枠にて修正する工程と、修正が終わった後に生地から制止用補正枠体を開放する工程と、開放した後生地をベルトコンベヤ体で移動する工程とを有する生地形状の修正方法。
【請求項2】 生地が停止した状態で修正用補正枠体にて修正する工程において、分割した一対の修正補正枠体を使い生地の側面から押圧して修正を行うことを特徴とする請求項1記載の生地形状の修正方法。
【請求項3】 分割した一つの修正補正枠体を横移動させながら且つ同時に回動運動をさせることを特徴とする請求項2記載の生地形状の修正方法。
【請求項4】 生地を載せて移動するベルトコンベヤ体と、該ベルトコンベヤ体上に配置され且つ上下移動可能な制止用補正枠体と、生地を側面から押圧して修正を行なう修正用補正枠体と、よりなることを特徴とする生地形状の修正装置。
【請求項5】 修正用補正枠体が、生地を両側面から押圧して修正する分割した1対の修正用補正枠体であることを特徴とする請求項4記載の生地形状の修正装置。
【請求項6】 修正用補正枠体に、横移動させながらかつ同時に回動運動を行なうための駆動手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の生地形状の修正装置。
【請求項7】 修正用補正枠体と制止用補正枠体との距離が調整可能となっていることを特徴とする請求項4記載の生地形状の修正装置。」(特許請求の範囲)

イ.「通常、このような方法により生地は偏平化されるが、形成された生地は必ずしも左右均等な形になっていない。その理由は、例えば、生地が偏平化される過程を想定すると、ある一定の形をした生地が2つの押圧ローラ間に供給されると、先端の方から圧縮を受けながら伸展されていくが、いまだ、ローラ間に供給されていない生地の後端の部分は一方方向に倒れる傾向があるためである。このような場合ローラ間を通過して偏平化された生地は一方に偏りのある異形のもの、例えばそらまめ形になる。
偏平化された生地が左右対称でないと、その後生地の上にフイーリィング材を乗せて包み込む場合、全面で包皮されない。更に、偏平化する装置は、通常ラインの一部に組み込まれて使用されるので、個々に連続して順次流れる生地の形状が一致せず、バラバラだと、製品の形も同様に個々に不揃いのものとなり品質が一定しない。従って、扁平化された生地は、ライン上で移動される際に、各々が一定の形を保持することが重要である。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の背景のもとで従来の問題点の解決を図ったものである。即ち、本発明の目的は、生地の形状を一定のものに整えることができる生地形状の修正方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】しかして、本発明者等はこのような課題に対して、鋭意研究を重ねた結果、流れてくる生地を一旦停止させた状態で、補正枠体を使って生地の周囲から押さえてやることにより、形状が修正できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたのものである。」(段落【0004】?【0007】)

ウ.「II〔実施の形態(生地形状の修正装置)〕
次に本発明の生地形状の修正装置を説明する。以下、実施の形態を挙げ図面に基づいて本発明を説明する。図2は本発明の生地玉の成形装置を側面から見た図であり、図3はその要部を拡大した図である。この装置は、主として、生地Dを搬入するベルトコンベヤ体C、及び移動する生地Dを受け止める制止用補正枠体A、及び生地Dを積極的に修正する修正用補正枠体Bとよりなる。
制止用補正枠体Aは、ベルトコンベヤ体Cの上に配置されるもので略半円状をしており、生地Dを受け止める部分である曲面部を有している。(図3参照)制止用補正枠体Aは、中央部で支持杆A1を介して上下移動シリンダ10に連結されている。従って、制止用補正枠体Aは上下移動シリンダ10の駆動により上昇又は下降を行うことができ、ベルトコンベヤ体C上に接する位置で生地Dを受け止めたり、上方に離脱して生地Dを開放したりすることができる。」(段落【0019】?【0020】)

エ.「いま、生地Dがベルトコンベヤ体Cにより搬送されてきてこの修正用補正枠体B1、B1の間を通過し、制止用補正枠体Aに当接して制止されると、次にロータリーアクチュエータRAを逆方向に回転させて一対の修正用補正枠体B1、B1を同時に中心に向けて回動し、生地Dの側面に押圧させる。これによって、例えば偏った形の偏平生地を所定の整った形状に修正成形することができる。ところで生地Dは、制止用補正枠体Aと修正用補正枠体Bの間に位置決めされ、修正用補正枠体Bで生地Dの側面を押圧することによりその形が修正されることから、この修正用補正枠体Bと制止用補正枠体Aとの距離(間隔)は、形成される生地Dの形を規定する上で極めて重要である。」(段落【0028】)

オ.「以上、本発明を説明してきたが、本発明は実施例にのみ限定されるものではなく、その本質から逸脱しない範囲で、他の種々の変形例が可能であることはいうまでもない。例えば、本実施の形態では、修正補正枠体は、分割した一対のものを使用したが、更に多数分割して配置することも十分可能である。その場合も生地Dの側面を押圧して形を修正できるように作動されることが条件となる。また、修正補正枠体及び制止用補正枠体Aの形状も実施の形態のものに限定される必要はない。」(段落【0033】)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第2号証には、次の事項が記載されているものと認められる。

「生地Dをベルトコンベヤ体で移動する際に、生地の前方を制止用補正枠体Aで受け止め、回動可能な複数の修正用補正枠体Bで生地Dの側面を押圧し、各枠体A、Bで囲まれる面積を縮小することで、生地Dの形状を一定のものとする生地形状の修正方法及び装置。」

3.甲第3号証
ア.「【発明の属する技術分野】本発明は、食品工場等で食品を処理体に載置して処理する際、処理体に載置された食品の載置位置を修正する食品の載置位置修正方法及び食品の載置位置修正装置に関する。」(段落【0001】)

イ.「そのため、焼成後の製品形状を整える必要がある場合は、人間の手により位置を修正せざるを得ないのが現状であり、この作業は煩雑で、それだけ、作業時間やコストが嵩み、製造効率が悪くなっているという問題があった。また、この載置位置の修正の際には、生地Kは柔らかいので、単に、人間の手により基準位置Sに押圧して修正すると生地Kがへこんでしまい、生地Kの形状を変形させたり損傷させてしまうことになって、かえって製品に悪影響を及ぼすことから、慎重に取り扱うことが必要になり、この点でも作業が煩雑で製造効率が悪いという問題があった。更に、この作業は、製品の搬送・移載速度が速いときには人手が追いつかなかったり、載置位置の修正が不正確となりがちであった。本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、食品に変形等の悪影響を与えることを抑制しながら食品の載置位置を容易に修正できる食品の載置位置修正方法及び食品の載置位置修正装置を提供することを目的とする。」(段落【0004】)

ウ.「実施の形態に係る載置位置修正装置Dは、図1に示すように、展板1がコンベアで搬送される搬送行程において、展板1のモールド部2の列に対応して、機枠9に互いに干渉しない位置に4台設けられている。そして、モールド部2の行間隔毎(行の軸線P間隔毎)に、展板1がコンベア8で移動させられて、モールド部2の上記軸線Pと装置Dの軸がほぼ一致する点で停止させられ、この停止中に、展板1に載置された生地Kを展板1の基準位置Sに位置させるようにその載置位置を修正するものである。実施の形態に係る載置位置修正装置Dにおいて、図1乃至図8に示すように、10は押送体であり、生地Kに対峙する対峙位置A(図3,図8(b))と対峙位置Aから生地Kに向けて回転しながら進出し生地Kを押圧して基準位置Sに位置決めする位置修正位置B(図4,図8(c))との2位置に移動可能なものである。この押送体10は、図3及び図4に示すように、複数(実施の形態では4つ)設けられ、矩形の薄い樹脂板を基準位置Sの上記軸線Pを中心とした略円弧面に湾曲成形して構成されており、基準位置Sの上記軸線Pを中心とした略円周上に配置されている。各押送体10の先端部10aは隣接する押送体10の基端部10bの内側に位置してリング状に配置されており、全体がその対峙位置Aにおいて拡径し、位置修正位置Bにおいて縮径する。縮径したときの内径は、生地Kのモールド部2における適性直径に対応させられている。押送体10の内面には、生地Kに当接するフェルト等で形成されたクッション部材11が貼着されている。」(段落【0012】)

エ.「従って、この実施の形態に係る載置位置修正装置Dによれば、以下のように作動する。今、1つの載置位置修正装置Dに着目し、図8(a)(b)(c)に示す作動の工程図を用いて説明する。載置位置修正装置Dの作動前は、支持部材20が退出位置Yに位置させられ押送体10は上昇位置にあり、開いた状態で待機している。展板1のモールド部2にその基準位置Sを目標として生地Kが載置されると、展板1がコンベア8で搬送され、モールド部2の基準位置Sの上記軸線Pと載置位置修正装置Dの軸とが大体合致したところで停止させられる。この状態で、進退動機構21のロッド23が進出させられ、支持部材20が退出位置Yから進出位置Xへ位置させられ、押送体10が対峙位置Aに位置させられる(図8(a))。次に、移動機構12が作動させられ移動体15及びフィンガ16を介して押送体10が対峙位置Aから位置修正位置Bに移動させられる。また、押送体10の対峙位置Aから位置修正位置Bへの移動過程においては、回転機構30によってロッド23を正転させて押送体10を生地Kの周囲の少なくとも一部範囲を回転させる(図8(b))。
これにより、押送体10の集合全体が縮径していくので、生地Kが基準位置Sからずれていると、生地Kに押送体10が当接し、生地Kを押圧する。そのため、押送体10が位置修正位置Bへ至ると、生地Kが基準位置Sに押圧されて位置決めされ、生地Kの中心軸Qが基準位置Sの上記軸線Pとほぼ合致させられる(図8(c))。この場合、押送体10は生地Kの周囲の少なくとも一部範囲を回転しながら押圧するので、生地Kに回転方向の力が加わり、そのため、この回転力によって、展板1から生地Kが引き剥されながら押圧されることになるので、その移動が円滑に行なわれる。即ち、生地Kは、粘着力があり、単に押圧したのでは、粘着力によって展板1にくっついて止まろうとするので、生地Kが移動させられても押圧によって生地Kが変形してしまったり、損傷してしまったり、また、移動が行なわれずに変形だけしてしまうような支障が生じるが、回転力によって、展板1から生地Kが引き剥されながら押圧されることになるので、生地Kへの悪影響が抑制されるのである。また、押送体10の内面には、生地Kに当接するクッション部材11が貼設されているので、生地Kを傷つける等の悪影響が抑制される。更にまた、押送体10が複数あるので、押圧箇所を多くすることができ、安定させて生地Kの押圧が行なわれる。更にまた、回転しながら押送体10の範囲が狭まっていくので、生地Kの一部に無理な力がかかることなく徐々に中心に収束させられ易くなり、より安定させて押圧が行なわれる。また、押送体10は基準位置Sの軸心を中心とした略円弧面に形成されているので、生地Kを包囲するように押圧でき、そのため、より一層安定させて押圧が行なわれる。」(段落【0016】?【0017】)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第3号証には、次の事項が記載されているものと認められる。

「複数の押送体10を基準位置の軸心を中心とした略円周上に配置した集合体を、回転させながら縮径して生地K等の食品を基準位置に位置させるように載置位置を修正する食品の載置位置修正方法及び装置。」

4.甲第4号証
ア.「【発明の属する技術分野】この発明は、饅頭生地、パン生地などの可塑性食品生地からなる外包材によって餡などの内材を包み込んで成形する方法およびその装置に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「以上のように構成した第2の実施形態の可塑性食品生地による内材包み込み成形装置を用いて所定量に分割した可塑性食品生地を雌型の内壁面形状に沿って、所定の厚さに外包材を成形し、この外包材内に所定量の内材を供給し、外包材によって内材を包み込むには以下のような工程による。
すなわち、予め所定量に分割したパンなどの発酵性の可塑性食品生地からなる外包材49をローラなどによってほぼ扁平円形状にかつ雌型90の開口より大きい表面積に成形して図8の(a)に示すように、搬入用コンベア17上に載せておき、このコンベア17の駆動により、扁平状の外包材49を雌型90の近くまで移動させ、雌型90の開口部を塞ぐようにして、上抑え板60の上段面61に載置する(図8の(b)参照)。
次に、前記外包材49の上面に昇降シリンダ機構のストローク調整によって生地抑え代を決定して加工させた生地抑え48を載せて、外包材49の外周縁部49aを、前記上抑え板60の上段面61上に保持する(8の(c)参照)。この状態では、前記外包材49によって下空気室7の上方開口部が塞がれることで下空気室7内を密閉状態となる。そして、下空気室7と連通する減圧機構の減圧動作を行うにより下空気室7を減圧すると共に、外包材の固定手段として、雌型90の外周側から吸気し雌型90内面を減圧し、外包材49を雌型90の内壁面形状に沿って、椀状に成形し、外包材49を雌型90の内面に密着保持した状態とする(図8の(c))。
前記外包材を前記固定手段による減圧引きによる密着保持した状態で、内材供給機構26を動作させ、図8の(d)に示すように、所定量の餡などを球状に成した内材46を椀状の外包材49内に上方から落下させる工程を行う。次に、外包材49の外周縁部49aの上面に載置した前記生地抑え48を昇降用エアシリンダによって上昇移動させて取り除き、シャッター10を上抑え板60の下段面63に絞り片15を開放した状態で配置すると共に、プラグ昇降機構28を動作させて、プラグ37を前記シャッター10の上蓋12の開口部12aの内周面に嵌合する位置に降下させる(図8の(e)参照)。
この状態で、図1に示すようなシャッター開閉機構27の係合用エアシリンダー機構30を動作させて、シャッター10の絞り片を15を閉動作させる。絞り片15の閉動作によって、外包材49の上部の開口外周縁部49aを雌型90の軸心側に徐々に絞り込んで内材を包み込み、絞り片15が全閉するまでの間に、外包材49と内材46との間の空気を外包材49上端開口部からプラグ37に設けた通気小孔37aを経て大気に排出し、外包材49と内材46とを密着させる(図8の(f)参照)。
また、絞り片15の閉動作によって、外包材49の上部の開口外周縁部49aが絞られるが、外包材49の上端がプラグ37により上方への突出が阻止され、外包材49の上部が絞り片15の上方にはみ出すことがないことは、第1実施形態の構成と同様である。
尚、生地抑え48を取り除いた後で、外包材49の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程を行い、その後でシャッター10による包み込み工程を行うのも効果的である。」(段落【0041】?【0047】)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下「甲第4号証発明1」及び「甲第4号証発明2」という。)が記載されているものと認められる。

甲第4号証発明1
「内材46を椀状の外包材49内に上方から落下させ、生地抑え48を取り除いた後で、外包材49の外周縁部49aを円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程を行い、その後でシャッター10を閉動作することにより外包材の外周縁部を内材46を包む込み封着する、食品の包み込み成形方法。」

甲第4号証発明2
「内材46を椀状の外包材49内に上方から落下させ、生地抑え48を取り除いた後で、上抑え板60上の外包材49の外周縁部49aを円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程を行い、その後でシャッター10を閉動作することにより外包材の外周縁部を内材46を包む込み封着するシャッター開閉機構27を備えた、食品の包み込み成形装置。」

5.甲第5号証
ア.「【解決すべき技術的課題】本発明は、連続的に押出しされる棒状食品材料を所要形状に成形・切断し、多様な形状の食品を連続的に製造する方法、およびそれに用いる装置を提供することを技術的課題とするものである。」(段落【0006】)

イ.「まず、この成形切断領域2を説明する。この成形切断領域2は、図2に示すように、仮想正方形の各頂点に枢支されるように相称配置された4枚の同形シャッター片1・1・1・1により囲まれることによって形成される。…(中略)…全体としてシャッター片1内側にカッター辺1bによる成形切断領域2が形成されるのである。」(段落【0013】)

ウ.「次に、本実施例装置が、成形切断領域2内で、棒状食品Fを連続的に成形・切断していく工程を図3?図9を参照しつつ具体的に説明する。
まず、2種類の食品材料(芯材f1 、外皮材f2 )から成る有芯棒状食品Fがシャッター片1により囲まれた成形切断領域2内へ連続的に押出されてくる(図3参照)。そして、この棒状食品Fが所定位置まで押出されてきた時に、シャッター片1がある角度回転し、成形切断領域2が所定量だけ閉じ、棒状食品Fをある程度押し潰す(図4参照)。短時間後に、今度はシャッター片1がある角度だけ逆回転し、成形切断領域2が開く。こうして棒状食品Fに括れ部が形成されるのである(図5参照)。次いで、棒状食品Fが更にある程度押出されるのを待ってから、今度はシャッター片1が成形切断領域2が完全閉塞するまで回転し棒状食品Fが切断される。こうして、中央部からやや上方にくびれ部を有するダルマ型食品が、製造されるのである(図6、図7参照)。」(段落【0018】?【0019】)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第5号証には、次の事項が記載されているものと認められる。

「芯材f1及び外皮材f2から成る有芯棒状食品を所要形状に形成するシャッター片1において、連続的に押出されてくる棒状食品を、シャッター片を所定量だけ閉じた後に開くことにより括れ部を形成し、その後完全閉塞することにより切断する、シャッター片及びその操作方法。」

6.甲第6号証
ア.「【解決すべき技術的課題】本発明は、連続的に押出しされる棒状食品材料を所要形状に成形・切断し、多様な形状の食品を連続的に製造する方法、及びそのための装置を提供することを技術的課題とするものである。」(段落【0006】)

イ.「この成形切断領域2は、図2に示すように正四角形状のシャッター枠3c内に相称配置された4枚の同形シャッター体1・1・1・1で囲まれ形成される。…(中略)…全体としてシャッター体1・1・1・1の内側にカッター辺1aによる成形切断領域2が形成される。」(段落【0012】)

ウ.「(製造工程)本施例装置が、成形切断領域2内にて、棒状食品Fを連続的に成形・切断していく製造工程を図3?図9を参照しつつ具体的に説明する。
まず、2種類の食品材料(芯材f1、外皮材f2)から成る有芯棒状食品Fがシャッター体1により囲まれた成形切断領域2内へ連続的に押出されてくる(図3参照)。そして、この棒状食品Fが所定位置まで押出されてきた時に、シャッター体1が適当量スライド運動することにより成形切断領域2がその分閉じ、棒状食品Fをある程度押し潰す(図4参照)。次いで押し潰した直後に、今度は制御モータが逆回転してシャッター体1が逆方向にスライド運動し成形切断領域2が開く。この段階で棒状食品Fには、一つの括れ部が形成される(図5参照)。そして、また棒状食品Fがある程度押出されるのを待ってから、今度はシャッター体1が、成形切断領域2が完全閉塞するまでスライド運動し、棒状食品Fが切断される。このようにして、中央部に括れ部を有するダルマ型食品が成形・切断されるのである(図6、図7参照)。」(段落【0017】?【0018】)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第6号証には、次の事項が記載されているものと認められる。

「芯材f1及び外皮材f2から成る有芯棒状食品を所要形状に形成するシャッター体1において、連続的に押出されてくる棒状食品を、シャッター体を適当量スライド運動することにより閉じた後に開くことにより括れ部を形成し、その後完全閉塞することにより切断する、シャッター体及びその操作方法。」

7.甲第7号証
ア.「この発明は、肉まんじゅうの製造方法および装置に関するもので、食品製造機械の分野で利用される。」(1頁右欄17?19行)

イ.「(実施例)以下この発明の実施例を図面を参照して説明する。
装置は第1図乃至第3図に示したように、成形部1を有する本体2の一側に皮供給部3を連設すると共に、本体2には具の供給部4を付設して構成し、皮供給部3のホッパー5に皮生地をセットすると共に、具の供給部4のホッパー6に具をセットすると、所定量の具を包んでなる肉まんじゅうが排出コンベア7を介して排出されるようになっている。
前記成形部1は、第1図および第12図に示したように、水平に架設された抜盤8の上側に無端ベルト9が案内されている。抜盤8には透孔10が形成してあり、かつ透孔縁内側下部には環状突条11が形成してある。一方、前記無端ベルト9には長手方向に所定の間隔で、多数の透孔12、12が形成してあり、無端ベルト9を所定の距離宛間欠的に循環させた場合、透孔12と抜盤8側の透孔10が合致するようになっている。
無端ベルト9の上側には、前記抜盤8の透孔10と対向する透孔13を中央部に形成した押え板14が昇降自在に設置してあり、押え板14を降下させた際には、無端ベルト9を介して導いた帯状の皮15を、無端ベルト9と共に、抜盤8と押え板14により挟持できるようにしてある。
前記押え板14の上側には成形ノズル16が縦設してある。成形ノズル16は、中空の筒体で構成されており、上端部が本体2に設置した昇降杆17の上端部と水平の連結部材18で連結されて、昇降杆17の動作によって昇降するようになっている。又、昇降杆17の中空部には押出杆19が昇降自在に嵌装してある。押出杆19も本体2に設置した別の昇降杆20と上端部間が連結部材21で連結されて、昇降杆20の動作によって昇降するようになっている。
前記成形ノズル16の中間部-側壁には開口部22が設けてあり、該開口部22と、前記具の供給部4の押出しポンプ23間が供給パイプ24で連結してある。然して具は押出しポンプ23より供給パイプ24、成形ノズル16の中空部へと送られるようになっている。
又、成形ノズル16の下端部外側には筒状のカッター25が昇降可能に嵌装してある。このカッター25は、前記抜盤8の透孔10の孔縁と共同して帯状の皮15を所定の大きさで打抜くものであり、かつ下端面25aは、前記環状突条11と対向するようにしてあり、該対向部で打抜いた皮26の周縁部を挟持できるようにしてある。尚、前記押え板14はカッター25の外側に設けた環状鍔27に嵌装した杆体28の下端に連結されており、かつ押え板14と環状鍔27間にスプリング29が設けてある。従って押え板14はカッター25の昇降と共に動作する。
前記抜盤8の下側には絞り機構30が連設され、該絞り機構30の下側には受台31が連設されている。
絞り機構30は、抜盤8の透孔10と対向する間口部32を上下に形成した筺体33内に多数の絞り羽根34、34を設けて構成されている。」(2頁左下欄17行?3頁右上欄16行)

ウ.「受台31は、受筒44の上方開口部に弾性材製(ゴム)の受皿45を配して構成されており、受皿45はフラットな状態、と中央部がくぼんだ状態の間で変形できるようになっている。」(3頁左下欄12?15行)

エ.「次に以上のように構成した成形部1で肉まんじゅうが成形される様子を第7図乃至第12図を参照して説明する。
第7図は無端ベルト9によって帯状の皮15が抜盤8上に案内された状態である。この状態で初めに第8図のように押え板14、成形ノズル16およびカッター25を降下させ、先ず押え板14で帯状の皮15の側縁部を軽く押えつつ、成形ノズル16で帯状の皮15の中央部をやや凹入成形する。次に第9図のように押え板14の押える力を増しつつ(カッター25を徐々に降下させる。)成形ノズル16を更に降下させて、前記凹入成形部分を更に成形する。帯状の皮15は側縁部が押え板4で押えられている為、有底筒状に凹入成形された皮の側壁部が延ばされて薄くなる。尚、前記成形ノズル16の降下に合せて受台31は徐々に上昇している。
成形ノズル16、カッター25の降下を続行すると共に、受台31の上昇も続行すると、カッター25が抜盤8の透孔10内に進入して、前記凹入成形した皮を帯状の皮15より打抜く。この状態が第10図である。打抜いた皮26の周縁部はカッター25の下端面25aと、前記透孔10内の環状突条11で挟持される為、成形ノズル16の降下中、皮は延ばされて更に薄くなる。
成形ノズル16が下死点に達する頃、カッター25を上昇に転じさせて、打抜いた皮26を解放する。これが第11図に示した状態であり、この時受台31は上死点に達している。
上記の動作中、押出杆19も動作しており、具の供給部4側から送られて来る具54を1個分宛、成形ノズル16の中空部を通して先端部まで押出している。
次に第12図のように成形ノズル16を上昇させて、具54を打抜いた皮26の凹入部内側に残すと共に、やや遅れて押出杆19も上昇させる。この時、成形ノズル16および押出杆19の退避に同調させて、前記絞り機構30も動作させると、打抜いた皮26の縁部が、多数の絞り羽根34、34で襞付に絞られて、いわゆる“花形”の肉まんじゅう55が受台31の上に完成する(第13図)。前記絞り羽根34は一側に湾曲させてあるので、襞付の部分はひねったような形状で絞られる。
上記の絞り動作の完了後、受台31は下降に転じ、受台31が下死点に達すると、肉まんじゅう55がプッシャー53で排出コンベアー側に押出される。以下同一動作を繰り返すことにより肉まんじゅう55が連続して生産される。」(3頁右下欄19行?4頁左下欄7行)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第7号証には、次の発明(以下「甲第7号証発明1」及び「甲第7号証発明2」という。)が記載されているものと認められる。

甲第7号証発明1
「抜盤8の下側に連設した多数の絞り羽根34からなる絞り機構30を開口させた状態で抜盤8上に帯状の皮15を供給し、成形ノズル16とともにカッター25及び押え板14を降下させて押え板14を帯状の皮15の側縁部に押し付けて皮15を抜盤8上に保持し、成形ノズル16を降下させることにより抜盤8の透孔10に進入させて皮の中央部分を透孔10に押し込み皮15を有底筒状に凹入成形し、さらに成形ノズル16及びカッター25を降下させて皮15を打抜き、打抜いた皮26の周縁部をカッター25の下端面25aと抜盤8の透孔縁内側下部の環状突条11で狭持し凹入成形するとともに皮26を受台31で支持し、成形ノズル16を通して具54を供給して皮26に具を配置し、皮26を受台31で支持した状態で絞り機構の絞り羽根34を絞り動作させることにより皮26の縁部を具を包むように集めて封着し、受台31を下降させて成形された肉まんじゅうを搬送することを特徴とする肉まんじゅうの製造方法。」

甲第7号証発明2
「中央部分に透孔10が形成されるとともに帯状の皮15が載置される抜盤8と、抜盤8の下側に連設されるとともに多数の絞り羽根34を設け、絞り羽根34の絞り動作により皮26の縁部を具を包むように集めて封着する絞り機構30と、成形ノズル16を降下させることにより抜盤8の透孔10に進入させて皮の中央部分を透孔10に押し込み皮15、26を有底筒状に凹入成形するとともに成形ノズル16を通して皮内に具54を供給する成形部1と、成形部1に設けられるとともに押え板14を帯状の皮15の側縁部に押し付けて皮15を抜盤8上に保持し、カッター25で打抜いた皮26の周縁部をカッター25の下端面25aと抜盤8の透孔縁内側下部の環状突条11で狭持し皮26を抜盤上に保持する保持手段と、抜盤8の下側に連設されるとともに受台31を上昇させて有底筒状に凹入成形された皮26を支持し受台31を下降させて成形された肉まんじゅうを搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする肉まんじゅうの製造装置。」

8.甲第8号証
ア.「中央部に貫通孔を有する包子用皮体支持台、この包子用皮体支持台の下側に設けられた包子受け台、前記包子用皮体支持台上の包子用皮体の中央部を前記貫通孔から前記包子受け台上に突き降ろしてカップ形に成形すると共にその中に具を充填(当審注:填は原文では旧字体)する昇降可能な具充填手段、及び前記包子受け台上のカップ形包子用皮体の開口周辺部を絞って閉じる絞り手段を備えた包子の製造装置であって、更に前記絞り手段と前記包子用皮体支持台との間に、前記具充填手段によって突き降ろされる包子用皮体の周辺部を歯車状に襞付けする歯車形貫通孔を有する回転体と当該回転体を回転させる駆動手段とを備えた襞捩じり手段を設けて成る包子の製造装置。」(特許請求の範囲請求項1(当審注:原文は○内に数字1))

イ.「本発明は、焼売や肉饅、或いは餡饅等、各種の包み食品、即ち麺皮等の食用皮体によって具を包み込んだ包子(パオズ)の製造装置に関するものである。」(1頁右欄9?12行)

ウ.「第1図に示すように図外の麺帯製造装置から供給される帯状の麺帯9は駆動チェン2によって移動経路3上を間歇的に移動する麺皮支持台1上に載せられて一体に移動している。そして押圧用ローラー11の下側を通過するときに当該ローラー11によって麺皮支持台1上の麺皮抜き型10に押しつけられ、当該麺皮抜き型10の抜き刃10aによって円形の麺皮に切り抜かれる。第9図に仮想線で示すように切り抜かれた円形の麺皮60はリング状抜き刃10aの内側で麺皮支持台1上に支持され、麺皮60が切り抜かれた残りの麺帯部分9aはリング状抜き刃10aの外側で麺皮支持台1上に支持されて搬送される。
麺皮60を支持した2つの麺皮支持台1が夫々具充填手段4A,4Bの真下所定位置に到達して停止したならば、第9図に示すように具充填手段4A,4Bの昇降シリンダー51を具充填ピストン52と共に下降させる。勿論、この昇降シリンダー51内には、具ホッパー8内の具が第8図に示すフィーダーの具押し出し通路8aから具受け入れ口56を経由して具充填ピストン52の下側位置に所定量だけ供給されている。
昇降シリンダー51の下降により麺皮支持台1上の麺皮60は、第9図に示すように麺皮中央部が昇降シリンダー51によって麺皮支持台1の歯車形貫通孔12、及び襞捩り手段17A,17Bに於ける回転体19の歯車形貫通孔22を経由して、絞り手段5A,5Bの可動片15a?15dに囲まれた絞り孔14内に押し込まれる。」(4頁左上欄2行?右上欄11行)

エ.「即ち、昇降シリンダー51によって押し下げられる麺皮60は、第11図に示すような略円筒状カップ形に成形される。」(4頁左下欄17?20行)

オ「上記のように襞捩じり手段17A、17Bによって麺皮60を略円筒状カップ形に成形したならば、更に昇降シリンダー51を下降限位置まで下降させ、この昇降シリンダー51の下端部に被さった状態の麺皮60を、第12図に示すように上限位置で待機している包子受け6A,6Bに於ける六角形の包子成形凹部35内に挿入する。このとき麺皮60の円筒状周辺部は絞り手段5A,5Bに於ける絞り孔14内に位置している。昇降シリンダー51が下降限位置に到達したならば当該昇降シリンダー51は直ちに上昇移動させるが、内部の具充填ピストン52は更に下降を継続させることにより、昇降シリンダー51内の具61が具充填ピストン52によって昇降シリンダー51内から押し出され、包子受け6A,6B内に挿入され且つ昇降シリンダー51が上昇脱出した後の略円筒状カップ形の麺皮60内に充填される。下降限位置まで下降した具充填ピストン52は直ちに上昇移動させる。」(4頁右下欄8行?5頁左上欄6行)

カ.「具61の充填が完了し、上昇する昇降シリンダー51及び具充填ピストン52が絞り手段5A,5Bの絞り孔14内から上方に脱出したならば、絞り手段5A,5Bの回転リング16を回転させて各可動片15a?15dを絞り孔縮小方向に連動移動させることにより、第13図に示すように、この絞り孔14内に位置している麺皮60の開口周辺部が可動片15a?15dの側辺によって絞り込まれ、麺皮60自体が有する接着性によって絞られた部分が一体化して閉じられる。」(5頁左上欄19行?右上欄8行)

キ.「前記捻り作用が終了した後に絞り手段5A,5Bの回転リング16が逆転せしめられ、可動片15a?15dが後退移動して絞り孔14が開かれる。この後、包子受け6A,6Bを駆動手段25(第2図)によって下降させる。」(5頁右下欄2?7行)

ク.「第15図に示すように前記円弧状プッシャー50により受け台24上の包子63を案内板58上を経由させて成形包子送り出し用ベルトコンベヤ57上へ押し出すことが出来る。」(6頁右上欄8?11行)

そこで、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第8号証には、次の発明(以下「甲第8号証発明1」及び「甲第8号証発明2」という。)が記載されているものと認められる。

甲第8号証発明1
「昇降シリンダー51を下降させることにより麺皮支持台1の貫通孔12に進入させて麺皮60の中央部分を貫通孔12に押し込み麺皮60を略円筒状カップ形に成形するとともに麺皮60を包子受け6A、6Bで支持し、昇降シリンダー51を通して具61を供給して麺皮60内に具61を充填し、麺皮60を包子受け6A、6Bで支持した状態で複数の可動片15a?15dからなる絞り手段5A、5Bを閉じることにより麺皮60の開口周辺部を具61を包むように集めて一体化して閉じられ、包子受け6A、6Bを下降させて成形包子を搬送することを特徴とする包子の製造方法。」

甲第8号証発明2
「複数の可動片15a?15dからなる絞り手段5A、5Bを閉じることにより麺皮60の開口周辺部を具61を包むように集めて一体化して閉じる絞り手段5A、5Bを回転させる回転リング16と、昇降シリンダー51を下降させることにより麺皮支持台1の貫通孔12に進入させて麺皮60の中央部分を貫通孔12に押し込み麺皮60を略円筒状カップ形に成形するとともに昇降シリンダー51を通して麺皮60内に具61を供給する具充填手段4A、4Bと、麺皮支持台1の下側に設けられるとともに包子受け6A、6Bを上昇させて略円筒状カップ形に成形された麺皮60を支持し包子受け6A、6Bを下降させて成形包子を搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする包子の製造装置。」

第6 当審の判断
1.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第1号証発明1とを比較する。
甲第1号証発明1の「室壁3の上端面」、「複数のシャッター片を備えたシャッター13」、「平らな円板状にしたパン生地,饅頭生地のような生地材11」、「生地抑え部材10」、「内材12」、「開位置から閉位置まで移動させる」、「生地材の外周縁部11a」、「抑えて」及び「内材を包み込む食品の生地成形方法」は、
本件特許発明1の「受け部材」、「複数のシャッタ片を備えたシャッタ」、「シート状の外皮材」、「押え部材」、「内材」、「閉じ動作させる」、「外皮材の周縁部」、「押し付けて」及び「食品の包み込み成形方法」にそれぞれ相当する。
また、甲第1号証発明1の「成形型5」は、生地材を椀状に形成する手段であるが、生地材を支持しているので、本件特許発明1の「支持部材」にも相当する。
してみると両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「受け部材上にシート状の外皮材を供給し、押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持し、内材を供給して外皮材に内材を配置し、外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着することを特徴とする食品の包み込み成形方法。」

〔相違点ア〕
本件特許発明1では、「受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開ロさせた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給」するのに対し、甲第1号証発明1では、受け部材上にシート状の外皮材を供給するときに複数のシャッタ片からなるシャッタがどこに存在するのか不明であり、シャッタが「受け部材の上方に配設」され、かつその位置において「開口させた状態で」、受け部材上にシート状の外皮材を供給しているのか不明である点

〔相違点イ〕
本件特許発明1に係るシャッタは、「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」するのに対し、甲第1号証発明1に係るシャッタは、このような外皮材の位置調整はしない点。
(請求人の主張する相違点1に対応する。)

〔相違点ウ〕
本件特許発明1では、押し込み部材を備えており、押え部材とともに下降し、外皮材を椀状に形成するために押し込み部材をさらに下降させて受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み、また、内材を供給するために押し込み部材を通して供給しているのに対し、甲第1号証発明1では、押し込み部材を備えておらず、外皮材を椀状に形成するのに吸着作用を利用しており、また、内材の供給手段を特定していない点。
(請求人の主張する相違点2に対応する。)

〔相違点エ〕
本件特許発明1に係る支持部材は、「支持部材を下降させて成形品を搬送する」ものであるのに対し、甲第1号証発明1に係る支持部材は、椀状に形成するための固定された成形型が兼ねているものであり、支持部材を下降することもなく、成形品の搬送は不明である点。
(請求人の主張する相違点3に対応する。)

(2)判断
(2-1)相違点アについて
シャッターを固定された同じ位置で開閉したり、途中で移動したりすることは、例えば、甲第4号証の第1の実施形態及び第2の実施形態として記載されているように、当業者が適宜選択する設計的事項である。
したがって、甲第1号証発明1において、シャッタを受け部材の上方に取り付けて固定することにより、受け部材の上方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開ロさせた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給するようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2-2)相違点イについて
請求人は、相違点イに関して、
(a)「引用発明1-1(甲第1号証)には受け部材上の外皮材が所定位置からずれているかを感知することが示されており、外皮材が所定位置からずれている場合、これを修正しようとすることは当業者がきわめて自然に着想するところである。」、
(b)また、甲第2号証、甲第3号証から「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することは、本件特許の出願前において周知の技術であった。」、
(c)さらに、「本件発明1(本件特許発明1)と同一技術分野に属する引用発明2-1(甲第4号証)には、外皮材の周縁部を封着するシャッタに外皮材の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程、すなわち、本件発明1のシャッタによる位置調整と同じく、シャッタによる外皮材の封着の前に該シャッタを用いた準備工程を行うことが示されている。」、
(d)また、甲第5号証、甲第6号証から「芯材及び外皮材からなる食品を所定形状に成形し切断するための一連の動作において、シャッター片を第1段階及び第2段階の2度にわたって操作するようにすることは、本件特許出願の出願前において周知であったものである。」、
(e)「したがって、上記引用発明2-1及び周知の技術を勘案すれば、引用発明1-1における外皮材の位置ずれの感知に代えて、本件発明1の相違点1の構成、すなわち、シヤッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することは、当業者が容易に想到できたものである。」、
旨主張する(審判請求書36頁22行?37頁15行)。

そこで、これらの主張について検討する。
(a)の主張について
甲第1号証に記載された感知手段は、外皮材が所定位置からずれているか否かを感知するものであるが、甲第1号証には、外皮材が所定位置からずれていると感知した場合、これを修正しようとすることは記載されていないし、また、感知した後どうするのかの示唆もなく、例えば、外皮材の不存在や位置ずれの警報を行うだけとも考えられるから、甲第1号証に記載されたものは、外皮材の位置の修正を行うものであるとは必ずしもいえない。
たとえ、甲第1号証発明1が位置ずれを感知したことで外皮材の位置を修正するようにするとしても、その修正方法として、甲第1号証発明1から、本件特許発明1のように、シャッタに更に「シヤッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材を所定位置に収まるように位置調整」する位置調整機能を持たせることを想到することはできない。

(b)の主張について
請求人は、甲第2号証に記載された発明について、段落【0028】の「生地Dは、制止用補正枠体Aと修正用補正枠体Bの間に位置決めされ」との記載から、甲第2号証に記載された発明は生地の位置決め機能も奏することが理解できると主張する(審判請求書14頁3?7行)。しかしながら、甲第2号証の段落【0028】にいう「位置決め」は、本件特許発明1における「位置調整」とは関係がなく、これを同視する請求人主張は誤りである。
即ち、請求人が摘示した甲第2号証の段落【0028】の記載「生地Dは、制止用補正枠体Aと修正用補正枠体Bの間に位置決めされ、修正用補正枠体Bで生地Dの側面を押圧することによりその形が修正される」は、「偏った形の偏平生地を所定の整った形状に修正成形する」(甲第2号証6欄25?26行)ことを目的とするものであって、本件特許発明1でいう「外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することとは無関係である。
本件特許発明1でいう「外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することとは、後の工程である内材の供給や、シヤッターによる封着の工程を確実に行うため、開口部を有する受け部材上の「所定位置」に調整することをいうのである。これに対して、甲第2号証の段落【0028】にいう「位置決め」とは、内材供給の前の工程である生地形状の修正を行うための「位置決め」であって、生地形状の修正後、生地はベルトコンベヤによってさらに搬送されるのであるから、内材の供給や、シヤッターによる封着のための位置決めとは関係がない。段落【0028】の記載によれば、生地Dが制止用補正枠体Aに当接して制止されると、その位置で一対の修正用補正枠体B1、B1を同時に中心に向けて回動して生地Dの側面を押圧し、生地Dを所定の整った形状に修正成形するというのである。その場合、生地Dが制止される位置は、ベルトコンベヤ体Cによる搬送の途中位置であればどこでもよく、生地Dに包み込み成形などを行う成形位置とは何ら関係がなく、本件特許発明1でいう「所定位置」に位置決めするものではない。
また、請求人の「修正用補正枠体」の構造が本件特許発明1の「シャッタ片」と同様の構造であるとの主張は、以下の理由からみて誤りである。
即ち、本件特許発明1の「複数のシャッタ片」は「その開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」する機能に加え「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着する」機能を備えたものであって、その点は、本件特許発明1の重要な特徴である。
しかしながら、制止用補正枠体Aなしでは生地の周囲を囲むことすらできないが(即ち、修正用補正枠体B1だけで外皮材を囲うことはできない)、仮に、制止用補正枠体Aを加えても、制止用補正枠体Aと修正用補正枠体B1、B1では、生地Dの形状修正機能しか得られず、「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着する」機能は得られない。
以上のとおり、甲第2号証の「制止用補正枠体A及び修正用補正枠体B」をどのように解しても本件特許発明1のシャッタを構成する「シャッタ片」とみることはできない。

また、甲第3号証の発明は、「いずれの方法でも、完全に展板1のモールド部2の基準位置Sに載置することが困難であり、人間の手により載置位置を修正せざるを得ないのが現状である。生地Kがモールド部2の基準位置Sにない場合は、発酵及び焼成工程において、図10(b)に示すように、ふくらみ方向が不安定となり、大きく整ったきれいな形状にならない。」(段落【0003】)、「この載置位置の修正の際には、生地Kは柔らかいので、単に、人間の手により基準位置Sに押圧して修正すると生地Kがへこんでしまい、生地Kの形状を変形させたり損傷させてしまうことになって、かえって製品に悪影響を及ぼすことから、慎重に取り扱うことが必要になり、この点でも作業が煩雑で製造効率が悪いという問題があった。」(段落【0004】)等の課題に対して、「食品に変形等の悪影響を与えることを抑制しながら食品の載置位置を容易に修正できる食品の載置位置修正方法及び食品の載置位置修正装置を提供することを目的とする」(段落【0004】)発明である。甲第3号証の発明によって載置位置が修正される対象は、発酵または焼成の準備ができたもの、すなわち成形が完了した成形品である。
さらに、本件特許発明1の「複数のシャッタ片」は、「その開口面積を縮小して外皮材が所定の位置に収まるように位置調整」すると共に「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着する」機能を有する。
甲第3号証の押送体は、全体がその対峙位置において拡径し、位置修正位置において縮径するものであるとしても、それは、生地Kの発酵、焼成を行うための展板1上において、生地Kの中心軸を展板1に設けたモールド部2の基準位置Sに位置修正するための動作であり、生地Kは既に成形されたもの(内材を包み込む成形品の場合は、成形・封着されたもの)である。しかも、上記押送体の「縮径したときの内径は、生地Kのモールド部2における適性直径に対応させられている」(甲第3号証6欄12?13行)のであるから、上記押送体は、当然のことながら「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着する」ことはできないし、その必要もないものである。
以上のように、上記押送体10を本件特許発明1のシャッタ片に相当するとみることはできない。

したがって、甲第2号証及び甲第3号証に記載されたものは、開口面積を縮小して外皮材の形や食品の位置を調整するために専用の装置を設けたものであって、外皮材を封着するシャッタとは全く別のものであり、その目的も外皮材が所定位置に収まるように位置調整するものではない以上、シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することが、本件特許の出願前において周知の技術であったとすることはできない。

(c)の主張について
請求人のこの主張は、甲第4号証の段落【0047】の「外包材49の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程を行い、その後でシャッター10による包み込み工程を行うのも効果的である。」の記載に基づくものである(審判請求書21頁1?12行)。
しかしながら、段落【0047】の「外皮材の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程」は、「生地抑えを取り除いた後」の工程であり(甲第4号証12欄1行)、ここで、「生地抑えを取り除いた後」は、同号証の段落【0044】の記載から明らかなように、所定量の内材46を外包材49内に落下させた後のことである。また、内材の絞り込みと包み込みは、同号証の例えば「絞り片15の閉動作によって、外包材49の上部の開口外周縁部49aを雌型90の軸心側に徐々に絞り込んで内材を包み込み・・・」(同号証 段落【0045】)の記載からみて、封着のための一連の動作(操作)である。以上から、段落【0047】の「包み込み前工程」とは、外包材49の封着のための一連の動作を便宜上前後に分けたときの前の動作であり、要するに、封着動作の一部に過ぎない。したがって、請求人のいう「準備工程」は、本件特許発明1の「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することとは何らの関係もなく、その主張は失当である。

(d)の主張について
甲第5号証に記載の事項「芯材f1及び外皮材f2から成る有芯棒状食品を所要形状に形成するシャッター片1において、連続的に押出されてくる棒状食品を、シャッター片を所定量だけ閉じた後に開くことにより括れ部を形成し、その後完全閉塞することにより切断する、シャッター片及びその操作方法。」、及び、甲第6号証に記載の事項「芯材f1及び外皮材f2から成る有芯棒状食品を所要形状に形成するシャッター体1において、連続的に押出されてくる棒状食品を、シャッター体を適当量スライド運動することにより閉じた後に開くことにより括れ部を形成し、その後完全閉塞することにより切断する、シャッター体及びその操作方法。」によれば、「芯材及び外皮材からなる食品を所要形状に成形し切断するための一連の動作において、シャッター片を所定量だけ閉じる段階、その後完全閉鎖する段階の2段階にわたって操作する」ことはこの出願前周知といえる。
しかし、甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項は、本件特許発明1の成形方式とは系統が異なる「切断成形方式」即ち、内材を棒伏にしてその外側に外皮材を筒状にしたものを連続的に形成し、シャッタにより切断して成形する成形方式に関するものであり、甲第5号証及び甲第6号証における「芯材及び外皮材からなる食品を所要形状に成形し切断するための一連の動作」は同方式独特の動作である。
これに対し、本件特許発明1における複数のシャッタ片の動作は、「シート状の外皮材が所定位置に収まるように位置調整」する動作と、「シート状の外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着」(但し、封着は切断ではない)する動作であって、その動作は、甲第5号証及び甲第6号証に記載された棒状食品Fに括れ部を形成することと、同食品Fを切断することと何ら関係がない。また、本件特許発明1における複数のシャッタ片はシート状の外皮材の形状のばらつきを修正はするが、そのことは外皮材の成形(椀状に形成すること)とは無関係であるから、「芯材及び外皮材からなる食品を所要形状に成形し切断するための一連の動作において、シャッタ一片を第1段階及び第2段階の2度にわたって操作する」ものでもない。
したがって、甲第5号証及び甲第6号証のように「芯材及び外皮材からなる食品を所要形状に成形し切断するための一連の動作において、シャッター片を所定量だけ閉じる段階、その後完全閉鎖する段階の2段階の操作させる」事項が、たとえ周知であったとしても、それは、括れを有するダルマ型等の所定形状に成形し切断するための一連の動作であって、本件特許発明1のように、外皮材の位置調整と外皮材の封着を行わせるための動作とは、全く目的が異なるものであるから、この周知技術を甲第1号証発明1のシャッタに適用することは、当業者といえども容易に想到することはできない。

(e)の主張について
本件特許発明1は、相違点イの「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することにより、受け部材の上方に配置された複数のシャッタ片に、「外皮材が所定位置に収まるように位置調整」することと、「外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着」することの相異なる二つの機能を持たせることで、装置構成の簡素化を図ることができ、しかも外皮材の位置調整から成形品の搬送までの一連の工程を、受け部材の周辺スペースの一箇所で行うことができるため、生産効率を高めることができるものである。
そして、相違点イに係る構成のように、外皮材を封着するシャッタに、外皮材の位置調整も行わせることは、甲第1号証から甲第8号証のいずれにも記載されていないし、示唆もない。
したがって、前述の主張(a)?(d)についての説示も考え合わせれば、甲第2号証から甲第8号証に記載された事項を勘案しても、甲第1号証発明1において外皮材の位置ずれの感知に代えて上記相違点イに係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たとすることはできない。

よって、請求人の主張(a)?(c)及び(e)は採用できない。

(2-3)相違点ウについて
本件特許発明1と甲第7号証発明1とを比較する。
甲第7号証発明1の「抜盤8」、「下側に連設した」「多数の絞り羽根34」、「絞り機構30」、「帯状の皮15」、「帯状の皮15の側縁部」、「成形ノズル16」、「カッター25」と「押え板14」、「抜盤8の透孔10」、「具」、「有底筒状に凹入成形」、「打抜いた皮26の周縁部」と「皮26の縁部」、「受台31」、「絞り機構の絞り羽根34を絞り動作させる」及び「肉まんじゅうの製造方法」は、
本件特許発明1の「受け部材」、「下方に配設した」、「複数のシャッタ片」、「シャッタ」、「シート状の外皮材」、「外皮材の縁部」、「押し込み部材」、「押え部材」、「受け部材の開口部」、「内材」、「椀状に形成」、「外皮材の周縁部」、「支持部材」、「シャッタを閉じ動作させる」及び「食品の包み込み成形方法」にそれぞれ相当する。
なお、甲第7号証発明1の「押え板14」と「カッター25」はともに押え部材の機能を有しており、「第1押え部材」と「第2押え部材」といえる。また、「抜盤8の透孔縁内側下部の環状突条11」は「抜盤」の一部である。
してみると、甲第7号証発明1は、
「受け部材の下方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し、押し込み部材とともに第1押え部材を下降させて該第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み、外皮材を椀状に形成するとともに、その後、第2押え部材で打ち抜き、該第2押え部材を打ち抜かれた外皮材の周縁部に押し付けて受け部材の一部に保持し、外皮材を支持部材で支持し、押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し、外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し、支持部材を下降させて成形品を搬送することを特徴とする食品の包み込み成形方法。」といえる。

請求人は、引用発明3-1(甲第7号証)は、相違点2(相違点ウ)に係る本件特許発明1の構成要件を備えていること、また、本件特許発明1の構成要件D、E及びFは周知の技術であること、そして、引用発明1-1(甲第1号証)、引用発明3-1は、いずれも、食品の包み込み成形という同一の技術分野に属するものであることから、「相違点2に係る本件発明1の構成要件は、引用発明1-1に引用発明3-1を適用して、または、引用発明1一1に引用発明3-1及び周知の技術を適用して、当業者が容易に想到できたものである。」と主張する(審判請求書37頁18行?38頁5行)。
しかしながら、甲第1号証に記載された、多孔の成形型5の上部室4a内を減圧して生地材11を成形型5の内面に吸着させて椀状形成する生地の成形手段に代えて、これとは成形方式が全く相違する甲第7、8号証に記載された事項、或いは請求人のいう周知の技術に敢えて置換すべき理由、つまり動機付けはどこにもない。
また、それだけではなく、本件特許発明1の「シャッタ」に相当する甲第7号証発明1の「絞り羽根34」は、同「受け部材」に相当する「抜盤8」の下方にあるから、甲第7号証発明1の構成を甲第1号証発明1に置換しても、本件特許発明1の「受け部材の上方にある」シャッタの構成を得ることはできない。
また、甲第8号証でも、本件特許発明1の「シャッタ」に相当する甲第8号証発明1の「絞り手段5A、5B」は、同「受け部材」に相当する「麺皮支持台1」の下方にあるから、甲第8号証発明1の構成を甲第1号証発明1に置換しても、本件特許発明1の「受け部材の上方にある」シャッタの構成を得ることはできない。
このように甲第1号証発明1と、甲第7号証発明1及び甲第8号証発明1とでは、シャッタと受け部材の上下の位置関係が全く逆であるから、甲第1号証発明1に、甲第7号証発明1及び甲第8号証発明1を置換することは容易なこととはいえない。
また、甲第7号証発明1は上記のように押え部材が2つあり、外皮材の椀状形成を最初は第1押さえ部材の押え板14で押えて行い、途中で第2押え部材カッター25で外皮材を切断し、成形品として使用される周縁部を引き続き押えて行うものである。
してみれば、甲第7号証発明1は、外皮材の調整は椀状形成開始後に外皮材を切断することで行っているというべきであり、甲第7号証発明1において、その後切断されてしまうものをあえて事前に位置調整することは全く無意味なことであるから、本件特許発明1のように載置された外皮材をシャッタの縮径により位置調整を行うことはあり得ない。
また、甲第8号証に記載されたものは、そもそも押え部材に相当するものがなく、外皮材の調整は、「麺皮抜き型10の抜き刃10aによって円形の麺皮に切り抜かれる」ことで行うものであり、本件特許発明1のように載置された外皮材をシャッタの縮径により位置調整を行うことはあり得ない。
以上のように、甲第1号証発明1に甲第7号証に記載の発明及び甲第8号証に記載の事項を適用することは、その動機付けはなく、当業者が容易に想到し得ることではない。
したがって、相違点ウの構成が当業者に容易に想到できたとの請求人の主張は失当である。

(2-4)相違点エについて
請求人は、相違点3(相違点エ)に係る本件特許発明1の構成要件G「支持部材を下降させて成形品を搬送すること」は、引用発明3-1が備え、また周知の技術でもあり、そして、引用発明1-1、引用発明3-1は、いずれも、食品の包み込み成形という同一の技術分野に属するとの理由で、「相違点3に係る本件発明1の構成要件Gは、引用発明1-1に引用発明3-1及び周知の技術を適用して、当業者が容易に想到できたものである。」と主張する(審判請求書38頁7?14行)。
「第4 各証拠方法の記載事項」の「7.甲第7号証」及び「8.甲第8号証」に記載の事項からみて、「支持部材を下降させて成形品を搬送すること」が甲第7号証及び甲第8号証には記載されており、また、周知の技術といえる。
しかしながら、この周知の技術は、甲第1号証発明1と外皮材の成型方法が全く異なるものにおける周知技術であり、しかも甲第1号証発明1の支持部材は、甲第7号証及び甲第8号証のような外皮材を椀状に形成する部材と別個の独立した支持部材ではなく、固定されて移動不能な、外皮材を椀状に形成する成形型が兼用するものであるから、甲第7号証に記載された発明(引用発明3-1)や上記周知技術を甲第1号証発明1に適用して下降させることはできないというべきである。
また、成形型5に甲第7号証に記載された発明(引用発明3-1)及び甲第8号証に記載の事項を無理に適用しようとしても、成形型5の下方には空気圧を加減圧するための下部室4b等が形成されているから、甲第7号証の受台31や甲第8号証の受け台24を成形型5に適用することは不可能である。
また、仮に、成形型5を下降させる構成が得られたとしても、成形型5が椀状であるため、成形品は成形型5内に止まり、甲第7号証のプッシャー53や甲第8号証の円弧状プッシャー50を適用することはできないからそのままでは搬送できない。
以上のように、構成要件Gが周知であっても、甲第1号証発明1において、甲第7号証記載の発明又は周知技術を適用して相違点エに係る構成とすることには阻害要因がある。
したがって、甲第1号証発明1に甲第7号証記載の発明又は周知技術を適用して相違点エに係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ることではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は相違点イ、相違点ウ及び相違点エにおいて、当業者といえども甲第1号証発明1、甲第4号証発明1、甲第7号証発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2と甲第1号証発明2とを比較する。
甲第1号証発明2の「開口4c」、「平らな円板状にしたパン生地,饅頭生地のような生地材11」、「室壁3の上端面」、「複数のシャッター片を備えたシャッター13」、「開位置から閉位置まで移動させる」、「生地材の外周縁部11a」、「シャッター駆動手段」、「内材12」、「内材12を供給する適宜の手段」、「生地抑え部材10」、「抑えて」及び「内材を包み込む食品の生地成形機」は、
本件特許発明2の「開口部」、「シート状の外皮材」、「受け部材」、「複数のシャッタ片を備えたシャッタ」、「閉じ動作させる」、「外皮材の周縁部」、「シャッタ駆動手段」、「内材」、「内材供給手段」、「押え部材」、「押し付けて」及び「食品の包み込み成形装置」にそれぞれ相当する。
また、甲第1号証発明2の「生地材の外周縁部11aより中心側の部分を成形型5内面に吸着させて、中心側の部分を椀状に成形する手段」は本件特許発明2の「押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成する」「外皮材形成手段」と「外皮材を椀状に形成する外皮材形成手段」の点で共通している。
また、甲第1号証発明2の「成形型5」は、生地材を椀状に形成する手段であるが、生地材を支持しているので、本件特許発明2の「支持部材」にも相当する。
してみると両者の一致点、及び、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、受け部材の上方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタと、シャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、外皮材を椀状に形成する外皮材形成手段と、押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と、受け部材の下方に配設されるとともに椀状形成された外皮材を支持する支持手段とを備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。」

〔相違点オ〕
シャッタ駆動手段が、本件特許発明2では、「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整する」のに対し、甲第1号証発明2では、このような外皮材の位置調整はしない点。
(請求人の主張する相違点4に対応する。)

〔相違点カ〕
本件特許発明2では、外皮材形成手段として押し込み部材を備えており、外皮材を椀状に形成するために、「押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み」、また、外皮材内に内材を供給するために「押し込み部材を通して供給する」のに対し、
甲第1号証発明2では、外皮形成手段として押し込み部材を備えておらず、外皮材を椀状に形成するために吸着作用を用いており、また、内材の供給手段を特定していない点。
(請求人の主張する相違点5に対応する。)

〔相違点キ〕
本件特許発明2では、保持手段が「外皮材形成手段に設けられる」ものであるのに対し、甲第1号証発明2では、保持手段が「外皮材形成手段に設けられる」ものではない点。

〔相違点ク〕 本件特許発明2では、「受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段」を備えているのに対し、甲第1号証発明2では、支持手段は、椀状に形成するための固定された外皮材形成手段(成形型)が兼ねているものであり、上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送するものではない点。
(請求人の主張する相違点6に対応する。)

(2)判断
(2-1)相違点オについて
請求人は、相違点オに関して、
(a)「引用発明1-2(甲第1号証)には受け部材上の外皮材が所定位置からずれているかを感知することが示されており、外皮材が所定位置からずれている場合、これを修正しようとすることは当業者がきわめて自然に着想するところである。」、
(b)また、甲第2号証、甲第3号証から「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することは、本件特許の出願前において周知の技術であった。」、
(c)さらに、「本件発明2(本件特許発明2)と同一技術分野に属する引用発明2-2(甲第4号証)には、外皮材の周縁部を封着するシャッタに外皮材の外周縁部を円周方向より中心方向に絞り込む包み込み前工程、すなわち、本件発明2(本件特許発明2)のシャッタによる位置調整と同じく、シャッタによる外皮材の封着の前に該シャッタを用いた準備工程を行うことが示されている。」、
(d)また、甲第5号証、甲第6号証から「芯材及び外皮材からなる食品を所定形状に成形し切断するための一連の動作において、シャッター片を第1段階及び第2段階の2度にわたって操作するようにすることは、本件特許出願の出願前において周知であったものである。」、
(e)「したがって、上記引用発明2-2及び周知の技術を勘案すれば、引用発明1-2における外皮材の位置ずれの感知に代えて、本件発明2(本件特許発明2)の相違点1の構成、すなわち、シヤッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整することは、当業者が容易に想到できたものである。」、
旨主張する(審判請求書40頁11行?41頁7行)。
しかし、これらの(a)?(e)の主張は、「1.本件特許発明1について (2)判断 「(2-2)相違点イについて」の(a)?(e)の主張と同様であり、本件特許発明1の相違点イについて述べたと同様の理由により(なお、「相違点イ」は「相違点オ」、「本件特許発明1」は「本件特許発明2」、「甲第1号証発明1」は「甲第1号証発明2」と読み替える。)、主張(a)?(c)及び(e)は採用できない。

(2-2)相違点カについて
本件特許発明2と甲第7号証発明2とを比較する。
甲第7号証発明2の「透孔10」、「帯状の皮15」、「抜盤8」、「下側に連設した」「多数の絞り羽根34」、「絞り機構30」、「絞り機構の絞り羽根34を絞り動作させる」、「打抜いた皮26の周縁部」と「皮26の縁部」、「具」、「成形ノズル16」、「有底筒状に凹入成形」、「成形部1」、「帯状の皮15の側縁部」、「カッター25」と「押え板14」、「受台31」、「肉まんじゅう」及び「肉まんじゅうの製造装置」は、
本件特許発明2の「開口部」、「シート状の外皮材」、「受け部材」、「下方に配設した」、「複数のシャッタ片」、「シャッタ」と「シャッタ駆動手段」、「シャッタを閉じ動作させる」、「外皮材の周縁部」、「内材」、「押し込み部材」、「椀状に形成」、「外皮材形成手段」、「外皮材の縁部」、「押え部材」、「支持部材」、「成形品」及び「食品の包み込み成形装置」にそれぞれ相当する。
なお、甲第7号証発明2の「押え板14」と「カッター25」はともに押え部材の機能を有しており、「第1押え部材」と「第2押え部材」といえる。また、「抜盤8の透孔縁内側下部の環状突条11」は「抜盤」の一部である。
してみると、甲第7号証発明2は、
「中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、受け部材の下方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタと、シャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、押し込み部材を降下させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と、外皮材形成手段に設けられるとともに第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、その後、第2押え部材で打ち抜き、該第2押え部材を打ち抜かれた外皮材の周縁部に押し付けて外皮材を受け部材の一部に保持する保持手段と、受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状に形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形された成形品を搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。」といえる。

請求人は、引用発明3-2(甲第7号証)は、相違点5(相違点カ)に係る本件特許発明2の構成要件を備えていること、また、本件特許発明2の外皮材形成手段は周知の技術であること、そして、引用発明1-2(甲第1号証)、引用発明3-2は、いずれも、食品の包み込み成形という同一の技術分野に属するものであることから、「相違点5に係る本件発明2の外皮材形成手段は、引用発明1-2に引用発明3-2または周知の技術を適用して、当業者が容易に想到できたものである。」と主張する(審判請求書41頁9?20行)。
しかしながら、甲第1号証に記載された、多孔の成形型5の上部室4a内を減圧して生地材11を成形型5の内面に吸着させて椀状形成する生地の成形手段に代えて、これとは成形方式が全く相違する甲第7、8号証に記載された事項、或いは請求人のいう周知の技術に敢えて置換すべき理由、つまり動機付けはどこにもない。
また、それだけではなく、本件特許発明2の「シャッタ」に相当する甲第7号証の「絞り羽根34」は、同「受け部材」に相当する「抜盤8」の下方にあるから、甲第7号証の構成を甲第2号証発明2に置換しても、本件特許発明2の「受け部材の上方にある」シャッタの構成を得ることはできない。
また、甲第8号証でも、本件特許発明2の「シャッタ」に相当する甲第8号証の「絞り手段5A、5B」は、同「受け部材」に相当する「麺皮支持台1」の下方にあるから、甲第8号証の構成を甲第1号証発明2に置換しても、本件特許発明2の「受け部材の上方にある」シャッタの構成を得ることはできない。
このように甲第1号証発明2と、甲第7号証発明2及び甲第8号証発明2とでは、シャッタと受け部材の上下の位置関係が全く逆であるから、甲第1号証発明2に、甲第7号証発明2及び甲第8号証発明2を置換することは容易なこととはいえない。
しかも、相違点カは、「カップ成形方式」の甲第1号証発明2と「成形ノズルを用いた方式」の甲第7号証発明のそれぞれの方式の根幹に係る構成であるから、甲第1号証発明2に甲第7号証に記載された発明を適用しようとすれば、単に相違点カに係る外皮材成形手段の部分のみの置換だけでは足りず、各部材の配置も含めその他の構成も一緒に置換しなければ、外皮材成形装置として機能しない。
また、甲第7号証発明2は上記のように押え部材が2つあり、外皮材の椀状形成を最初は第1押さえ部材の押え板14で押えて行い、途中で第2押え部材カッター25で外皮材を切断し、成形品として使用される周縁部を引き続き押えて行うものである。
してみれば、甲第7号証発明2は、外皮材の調整は椀状形成開始後に外皮材を切断することで行っているというべきであり、甲第7号証発明1において、その後切断されてしまうものをあえて事前に位置調整することは全く無意味なことであるから、本件特許発明2のように載置された外皮材をシャッタの縮径により位置調整を行うことはあり得ない。
また、甲第8号証に記載されたものは、そもそも押え部材に相当するものがなく、外皮材の調整は、「麺皮抜き型10の抜き刃10aによって円形の麺皮に切り抜かれる」ことで行うものであり、本件特許発明2のように載置された外皮材をシャッタの縮径により位置調整を行うことはあり得ない。
以上のように、甲第1号証発明2に甲第7号証に記載の発明及び甲第8号証に記載の事項を適用することは、その動機付けはなく、当業者が容易に想到し得ることではない。
したがって、相違点カの構成が当業者に容易に想到できたとの請求人の主張は失当である。

(2-3)相違点キについて
請求人は、相違点キに係る保持手段が「外皮材形成手段に設けられる」構成を含む構成要件Mは一致点であると主張しているが、甲第1号証発明2の「保持手段」である生地抑え部材10は、「外皮材形成手段」である成形型5及びその周辺の吸引装置など「に設けられ」てはいない。
したがって、甲第1号証には相違点キに係る保持手段が「外皮材形成手段に設けられる」構成は開示されておらず、構成要件Mが一致点であるという主張は失当である。
そして、甲第7号証発明2は保持手段が「外皮材形成手段に設けられる」ものであるが、相違点カでも述べたように、甲第1号証発明2にこれと成形方式が全く異なる甲第7号証発明2を適用して相違点キに係る構成とすることは、その部分だけでなく全体構成を根本的に変更することになるものであり、当業者が容易に想到することはできない。

(2-4)相違点クについて
請求人は、相違点6(相違点ク)に係る本件特許発明2の構成要件N「受け部材の下方に配置されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段と」は、引用発明3-2(甲第7号証)が備えており、かつ、相違点6(相違点ク)に係る本件特許発明2の外皮材形成手段(当審注:構成要件Nの支持手段の誤記と認める。)は周知の技術であり、そして、引用発明1-1、引用発明3-1は、いずれも、食品の包み込み成形という同一の技術分野に属するとの理由で、「相違点6(相違点ク)に係る本件発明2の構成要件Nは、引用発明1-2に引用発明3-2または周知技術を適用して、当業者が容易に想到できたものである。」と主張する(審判請求書41頁21行?42頁5行)。
「第4 各証拠方法の記載事項」の「7.甲第7号証」及び「8.甲第8号証」に記載の事項からみて、「受け部材の下方に配置されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段と」が甲第7号証及び甲第8号証には記載されており、また、周知の技術といえる。
しかしながら、この周知の技術は、甲第1号証発明2と外皮材の成型方法が全く異なるものにおける周知技術であり、しかも甲第1号証の支持部材は、甲第7号証及び甲第8号証のような外皮材を椀状に形成する部材と別個の独立した支持部材ではなく、固定されて移動不能な、外皮材を椀状に形成する成形型が兼用するものであるから、甲第7号証に記載された発明(引用発明3-2)や上記周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用して上昇あるいは下降させることはできないというべきである。
また、成形型5に甲第7号証に記載された発明(引用発明3-2)及び甲第8号証に記載の事項を無理に適用しようとしても、成形型5の下方には空気圧を加減圧するための下部室4b等が形成されているから、甲第7号証の受台31や甲第8号証の受け台24を成形型5に適用することは不可能である。
また、成形型5を下降させる構成が仮に得られたとしても、成形型5が椀状であるため、成形品は成形型5内に止まり、甲第7号証のプッシャー53や甲第8号証の円弧状プッシャー50を適用することはできないからそのままでは搬送できない。
そして、甲第7号証発明2は保持手段が「受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段」ものであるが、相違点カ、キでも述べたように、甲第1号証発明2にこれと成形方式が全く異なる甲第7号証発明2を適用することは、その部分だけでなく全体構成を根本的に変更することになるものであり、当業者が容易に想到することはできない。
以上のように、構成要件Nが周知であっても、甲第1号証発明2において、甲第7号証記載の発明又は周知技術を適用して相違点クに係る構成とすることには阻害要因がある。
したがって、甲第1号証発明2に甲第7号証記載の発明又は周知技術を適用して相違点クに係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ることではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は相違点オ、相違点カ、相違点キ及び相違点クにおいて、当業者といえども甲第1号証発明2、甲第4号証発明2、甲第7号証発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第7 甲第7号証記載の発明に基づく予備的検討
次に、甲第7号証に記載の発明を本件特許発明1及び2と比較すると、甲第1号証を主引用例としたときよりも共通点がより多いと思われるので、甲第7号証に記載の発明を主引用例とした場合の進歩性の有無についても、以下に念のために検討する。

1.甲第7号証に記載の発明
甲第7号証に記載の発明、「甲第7号証発明1」及び「甲第7号証発明2」は、前記「第4 各証拠方法の記載事項 7.甲第7号証」に記載したとおりのものである。

2.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第7号証発明1との対比は、「第6 当審の判断 1.本件特許発明1について (2)判断 (2-3)相違点ウについて」に述べたとおりであり、甲第7号証発明1は、
「受け部材の下方に配設した複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し、押し込み部材とともに第1押え部材を下降させて該第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み、外皮材を椀状に形成するとともに、第2押え部材で打ち抜き、該第2押え部材を打ち抜かれた外皮材の周縁部に押し付けて受け部材の一部に保持し、外皮材を支持部材で支持し、押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し、外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し、支持部材を下降させて成形品を搬送することを特徴とする食品の包み込み成形方法。」といえ、一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
複数のシャッタ片からなるシャッタを開口させた状態で受け部材上にシート状の外皮材を供給し、押し込み部材とともに1つ又は2つの押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、押し込み部材をさらに下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに外皮材を支持部材で支持し、押し込み部材を通して内材を供給して外皮材に内材を配置し、外皮材を支持部材で支持した状態でシャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着し、支持部材を下降させて成形品を搬送することを特徴とする食品の包み込み成形方法。

〔相違点ケ〕
本件特許発明1に係るシャッタは、「受け部材の上方に配設し」「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整」するのに対し、
甲第7号証発明1に係るシャッタは、「受け部材の下方に配設し」このような外皮材の位置調整はしない点。
〔相違点コ〕
本件特許発明1は、押え部材が1つであり、受け部材に押し付ける外皮材の縁部は変わらないのに対し、甲第7号証発明1では、押え部材が第1押え部材(押え板14)及び第2押え部材(カッター25)の2つであり、第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材に保持して外皮材を椀状に形成する途中で、第2押え部材で打ち抜き、該第2押え部材を打ち抜かれた外皮材の縁部に押し付けて受け部材の一部に保持する点。

(2)判断
(2-1)相違点ケについて
本件特許発明1の重要な特徴点である、受け部材上の外皮材の位置調整をシャッタで行うためには、シャッタは受け部材の上になければならない。
しかし、甲第7号証発明1は、シャッタは受け部材の下にあるため、その構造上、受け部材上の外皮材の位置調整をシャッタで行うことは不可能である。
そして、甲第1?8号証のうち、受け部材の上にシャッタを設けることあるいは設けることが可能なものが記載されているのは甲第1号証及び甲第4号証だけである。
しかし、甲第1号証及び甲第4号証のものは外皮材の位置調整をするものではないし、外皮材の成型方法が甲第7号証発明1とは全く異なるものであるから、甲第1号証及び甲第4号証に記載の事項を適用して、受け部材の上にシャッタを設けるようにする理由、即ち、動議付けはない。
したがって、甲第7号証発明1に甲第1号証及び甲第4号証に記載された事項を適用して相違点ケに係る構成とすることは当業者といえども容易に想到し得ることではない。

(2-2)相違点コについて
甲第7号証発明1は上記のように押え部材が2つあり、外皮材の椀状形成を最初は第1押さえ部材の押え板14で押えて行い、途中で第2押え部材カッター25で外皮材を切断し、成形品として使用される周縁部を引き続き押えて行うものである。
してみれば、甲第7号証発明1は、外皮材の調整は椀状形成開始後に外皮材を切断することで行っているというべきであり、甲第7号証発明1において、その後切断されてしまうものをあえて事前に位置調整することは全く無意味なことであるから、本件特許発明1のように載置された外皮材をシャッタの縮径により位置調整を行うことはあり得ない。
したがって、甲第7号証発明1に甲第1号証及び甲第4号証に記載の事項を適用して相違点コに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、仮に甲第7号証発明1を主引用例としたとしても、上記相違点ケ及び相違点コにおいて、当業者といえども甲第7号証発明1及び甲号各証に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2と甲第7号証発明2との対比は、「第6 当審の判断 2.本件特許発明2について (2)判断 (2-2)相違点カについて」に述べたとおりであり、甲第7号証発明2は、
「中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、受け部材の下方に配設されるとともに複数のシャッタ片を備えたシャッタと、シャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、押し込み部材を降下させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と、外皮材形成手段に設けられるとともに第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し、その後、第2押え部材で打ち抜き、第2押え部材で打ち抜かれた外皮材の周縁部に押し付けて外皮材を受け部材の一部に保持する保持手段と、受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状に形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形された成形品を搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。」といえ、一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
中央部分に開口部が形成されるとともにシート状の外皮材が載置される受け部材と、複数のシャッタ片を備えたシャッタと、シャッタを閉じ動作させることにより外皮材の周縁部を内材を包むように集めて封着するシャッタ駆動手段と、押し込み部材を下降させることにより受け部材の開口部に進入させて外皮材の中央部分を開口部に押し込み外皮材を椀状に形成するとともに押し込み部材を通して外皮材内に内材を供給する外皮材形成手段と、外皮材形成手段に設けられるとともに1つ又は2つの押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持する保持手段と、受け部材の下方に配設されるとともに支持部材を上昇させて椀状形成された外皮材を支持し支持部材を下降させて成形品を搬送する支持手段とを備えていることを特徴とする食品の包み込み成形装置。

〔相違点サ〕
本件特許発明2に係るシャッタは、「受け部材の上方に配設され」「シャッタ片を閉じる方向に動作させてその開口面積を縮小して外皮材が所定位置に収まるように位置調整する」のに対し、
甲第7号証発明2に係るシャッタは、「受け部材の下方に配設され」このような外皮材の位置調整はしない点。
〔相違点シ〕
本件特許発明2は、押え部材が1つであり、受け部材に押し付ける外皮材の縁部は変わらないのに対し、甲第7号証発明2では、押え部材が第1押え部材(押え板14)及び第2押え部材(カッター25)の2つであり、第1押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材に保持して外皮材を椀状に形成する途中で、第2押え部材で打ち抜き、該第2押え部材を打ち抜かれた外皮材の縁部に押し付けて受け部材の一部に保持する点。

(2)判断
(2-1)相違点サについて
甲第7号証発明2に甲第1号証及び甲第4号証に記載された事項を適用して相違点サに係る構成とすることは当業者といえども容易に想到し得ることではないことは、前記「相違点ケについて」で説示したと同様である。

(2-2)相違点シについて
甲第7号証発明2に甲第1号証及び甲第4号証に記載の事項を適用して相違点シに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではないことは前記「相違点コについて」で説示したと同様である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、仮に甲第7号証発明2を主引用例としたとしても、上記相違点サ及び相違点シにおいて、当業者といえども甲第7号証発明2及び甲号各証に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1、2に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。
したがって、本件特許の請求項1、2に係る発明の特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものとすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-10 
結審通知日 2009-12-16 
審決日 2010-01-08 
出願番号 特願2008-203640(P2008-203640)
審決分類 P 1 113・ 121- Y ()
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 豊博  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
登録日 2008-11-07 
登録番号 特許第4210779号(P4210779)
発明の名称 食品の包み込み成形方法及びその装置  
代理人 根本 恵司  
代理人 木村 耕太郎  
代理人 清永 利亮  
代理人 櫻井 義宏  
代理人 川崎 好昭  
代理人 豊岡 静男  
代理人 竹田 稔  

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