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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A43B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A43B
管理番号 1231275
審判番号 不服2008-16499  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-30 
確定日 2011-01-31 
事件の表示 特願2004-500617号「靴のための緩衝エレメント」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月13日国際公開、WO03/92423、平成17年11月 4日国内公表、特表2005-532845号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成15年4月15日(パリ条約による優先権主張 2002年5月1日 独国)を国際出願日とする出願であって、平成19年9月5日付けの拒絶理由に対して、平成20年1月28日付けで明細書の特許請求の範囲について手続補正がされ、平成20年3月27日付けで拒絶査定がされ、この査定を不服として、同年6月30日に審判請求がされるとともに、同日付けで明細書の特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。

II.平成20年6月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年6月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「【請求項1】
靴、特にスポーツ靴のための緩衝エレメント(1)であって、当該緩衝エレメント(1)が、少なくとも1つの第1のエレメント(2)を有しており、該第1のエレメント(2)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(H)にわたって延びていて、中空体として形成されて、受容室(3)を規定しており、該受容室(3)内に、横断面で見て第1のエレメント(2)よりも小さい寸法の所属の第2のエレメント(4)が、少なくとも部分的に侵入することができるようになっており、第2のエレメント(4)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(h)にわたって延びていて、第1のエレメント(2)に対して同軸的に配置されている形式のものにおいて、
第2のエレメント(4)も、中空体として形成されており、互いに対応配置された両エレメント(2,4)が、弾性的な結合区分(5)を介して互いに結合されており、該結合区分(5)が、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)との間だけに延びており、
両エレメント(2,4)がガス密な室を形成しており、
多数の第1および/または第2のエレメント(2,4)が、互いに結合されており、その際、
前記第1のエレメント(2)がその側方の領域で互いに結合されており、かつ
第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とが、負荷方向(R)に対して垂直な1つの断面で見て、互いに対応する形状、つまり多角形の形状を有していることを特徴とする、靴のための緩衝エレメント。」
(なお、下線は、補正箇所を明示するために付したものである。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、発明を特定するために必要な事項である「第1のエレメント」及び「第2のエレメント」について、その形状を「第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とが、負荷方向(R)に対して垂直な1つの断面で見て、互いに対応する形状、つまり多角形の形状を有して」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平1-150669号(実開平3-87404号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

a.「(産業上の利用分野)
インジェクション、プレス等により成型される靴、その他の靴、それ以外の履物の履物底に関する。」(第2頁第3?6行)

b.「(11)は履物底である靴底、(12)は中敷である。(13)は底面である。底面(13)は、底本体(13)aと独立底(13)aとは別体に形成され底本体(13) aに貼着される底本体より硬度の高い樹脂からなる独立底(13)bとからなる。底本体(13)aは、射出成形あるいはプレス成形される。射出成型材料としては、・・・常用されるエラストマー、熱可塑性ゴム等が使用可能である。」(第5頁第9行?第6頁第2行)

c.「(14)は凸部である。凸部(14)は、中空形状からなり底面(13)よりも突設させて成形される。(15)は溝部である。溝部(15)は、凸部(14)の基部と底面(13)側の間に設けられる。(16)は、連結部である。連結部(16)は、溝部(15)よりも履物上部側に設けられ凸部(14)の基部と底面(13)側を連結する。(17)は空隙部である。空隙部(17)は、凸部(14)の基部および連結部(16)の履物底上部側に設けられる。さらに、連結部(16)の空隙部(17)側は空隙部(17)側に突設されている。」(第6頁第7?18行)

d.「凸部(14)に伝えられる衝撃は、凸部(14)および連結部(16)の履物底上部側に空隙部(17)が設けられているため凸部(14)の変形自由度が大きく、又凸部(14)自体も中空形状からなるためそれ自体変形の自由度はあり、凸部(14)あるいは連結部(16)が水平方向あるいは垂直方向に変形することで垂直方向、水平方向のクッション性、防滑性を向上させる。」(第6頁第19行?第7頁第7行)

e.「この実施例では連結部(16)の空隙部(17)側は空隙部(17)側に突設させた形状としており、第3図に示すように連結部(16)は全体としてリング状となって、この部分によって変形を促しているため、連結部(16)の変形の自由度が更に高まり、クッション性、防滑性に更に優れる。」(第7頁第13?19行)

f.「中敷(12)と凸部(14)とによって、空隙部(17)が密閉ないしは密閉に近い状態がえられると空隙部(17)内の空気によりエアクッション効果も得られる。」(第8頁第2?6行)

g.連結部(16)の履物底上部側に設けられている空隙部(17)は、第1図の靴底中央断面図及び記載事項fの「中敷(12)と凸部(14)とによって、空隙部(17)が密閉」なる記載によれば、中空の筒状部材により、その水平方向が取り囲まれた空間であることが、また、この筒状部材は、連結部(16)の上端から中敷(12)の下端に至る所定の高さにわたって、上下方向に延びていることが読み取れる。同様に、第1図の靴底中央断面図より、凸部(14)も上下方向に、所定の高さにわたって延びていることも読み取れる。

h.記載事項d、記載事項eによれば、連結部(16)は、凸部(14)に衝撃が加わると垂直方向に変形するものであり、この変形により、連結部(16)の変形箇所が上方へ移動することに伴い、連結部(16)の下側に接続された凸部(14)の基部も上方の空隙部(17)内へと移動するものであるから、空隙部(17)は、凸部(14)の基部を受け入れ可能な空間であるといえる。 また、空隙部(17)は、凸部(14)の基部を受け入れ可能であることから、凸部(14)は、横断面で見ると、空隙部(17)の周囲を取り囲む筒状部材よりも小さな寸法であることもわかる。

i.第1図の靴底中央断面図には、上記の筒状部材は、底本体(13)aの水平部分から上方へ突出するように設けられており、各筒状部材は、底本体(13)aの水平部分により結合されていることが、図示されている。

j.記載事項eの「第3図に示すように連結部(16)は全体としてリング状となって、この部分によって変形を促しているため、連結部(16)の変形の自由度が更に高まり」の記載及び第3図に示されたほぼ真円形状の連結部(16)からみて、各図面に示された靴底は、変形前の状態、即ち、無負荷状態の靴底であることがわかる。

k.第1図には、上下方向に配置された筒状部材の下端部と凸部(14)の基部との間だけに、連結部が設けられていることが、図示されている。

l.事項f及び第1図を参照すれば、中敷き(12)、筒状部材、連結部(16)、凸部(14)の各部材により、空隙部(17)を含む密閉空間が形成されているとが読み取れる。

よって、これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「靴のクッション性に優れる履物底(11)であって、当該クッション性に優れる履物底(11)が、少なくとも1つの筒状部材を有しており、該筒状部材が、当該履物底(11)の無負荷状態で、上下方向に、所定の高さにわたって延びていて、中空の筒状部材として形成されて、空隙部(17)を規定しており、該空隙部(17)内に、横断面で見て筒所部材よりも小さい寸法の凸部(14)の少なくとも基部を受け入れ可能となっており、凸部(14)が、当該筒状部材の無負荷状態で、上下方向に、所定の高さにわたって延びている形式のものにおいて、
凸部(14)も、中空形状からなり、上下に配置された筒状部材及び凸部(14)が、エラストマー、熱可塑性ゴム等の連結部(16)により連結されており、該連結部(16)が、筒状部材の下端部と第2のエレメント(4)の基部との間だけに設けられており、
筒状部材と凸部(14)と連結部(16)と中敷(17)とが、密閉空間を形成しており、
各筒状部材の下端部が、底本体(13)aの水平部分により互いに結合されている靴のクッション性に優れる履物底(11)。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平2-9034号(実開平3-27603号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

m.「弾性的に圧縮可能な材料より成るハニカム構造体から構成された少なくとも1つの挿入部材を有する靴底を備えた靴であって、ガスの充填されたハニカムセルの中心線が靴底平面に対して少なくとも直角に延びている形式のもの」(第1頁第5?10行)

n.「一方では靴底の緩衝作用、他方では負荷解除後における靴底の復元力、ひいてはエネルギ回復が著しく高められる」(第12頁第8?11行)

o.「ハニカムセルが上下で気密に又はほぼ気密に閉じられることによって、ハニカムセル全体に亙って高い復元力を有する良好なばね特性が得られる。」(第13頁第16?19行)

p.「ハニカムセル2,2’の形状は、一般的に公知な及び図示の6角形のハニカム状に限定されるものではない。むしろ多くの変化実施例、例えば3角形のハニカム形状又は6角形以上のハニカムセルや、円形又は楕円形のハニカムセルを使用することができる。」(第29頁第2?7行)

よって、これらの記載事項m?p及び図面の図示内容を総合すれば、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「ハニカム構造を有することにより、緩衝作用が高められた靴底であって、気密に閉じられたハニカムセルを3角形又は6角形以上の形状とする靴底」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「クッション性に優れる履物底(11)」は、文言の意味、形状又は機能等からみて本願補正発明の「緩衝エレメント」に相当し、以下同様に、「筒状部材」は「第1のエレメント(2)」に、「無負荷状態」は「付加されていない状態」に、「中空の筒状部材」は「中空体」に、「凸部(14)」は「第2のエレメント(4)」に、「中空形状からなり」は「中空体として形成されており」に、「連結部(16)」は「結合区部(5)」に、「密閉空間」は「ガス密な室」に、それぞれ相当する。

引用発明1の空隙部(17)は、凸部(14)の基部を受け入れ可能な空間であるから、本願発明の「受容室(3)」に相当すると共に、引用発明1の「空隙部(17)内に、横断面で見て筒所部材よりも小さい寸法の凸部(14)の少なくとも基部を受け入れ可能となっており」は、本願補正発明の「受容室(3)内に、横断面で見て第1のエレメント(2)よりも小さい寸法の所属の第2のエレメント(4)が、少なくとも部分的に侵入することができるようになっており」に相当する。

引用発明1の「靴のクッション性に優れる履物底(11)」と本願補正発明の「靴、特にスポーツ靴のための緩衝エレメント(1)」とは、“靴のための緩衝エレメント(1)”である点で共通している。

靴底に作用する負荷として、重力方向、即ち上下方向の負荷が含まれることは自明であることから、引用発明1の「筒状部材が、当該履物底(11)の無負荷状態で、上下方向に、所定の高さにわたって延びていて」、「凸部(14)が、当該筒状部材の無負荷状態で、上下方向に、所定の高さにわたって延びている」は、本願補正発明の「第1のエレメント(2)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(H)にわたって延びていて」、「第2のエレメント(4)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(h)にわたって延びていて」にそれぞれ相当する。

引用発明1の「連結部(16)が、筒状部材の下端部と第2のエレメント(4)の基部との間だけに設けられており」と本願補正発明の「結合区分(5)が、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)との間だけに延びており」とは、“結合区分(5)が、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)との間だけに延びており”である点で共通している。

エラストマー、熱可塑性ゴム等とは、一般に弾性を有する素材であることから、引用発明1の「上下に配置された筒状部材及び凸部(14)が、エラストマー、熱可塑性ゴム等の連結部(16)により連結されており」と本願補正発明の「互いに対応配置された両エレメント(2,4)が、弾性的な結合区分(5)を介して互いに結合されており」とは、“互いに対応配置された両エレメント(2,4)が、弾性的な結合区分(5)を介して互いに結合されており”である点で共通している。

引用発明1の「筒状部材と凸部(14)と連結部(16)と中敷(17)とが、密閉空間を形成しており」と本願補正発明の「両エレメント(2,4)がガス密な室を形成しており」とは、少なくとも第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とによりガス密な室を形成する点、即ち、“両エレメント(2,4)がガス密な室を形成しており”である点で共通している。

引用発明1の「各筒状部材の下端部が、底本体(13)aの水平部分により互いに結合されている」と本願補正発明の「多数の第1および/または第2のエレメント(2,4)が、互いに結合されており」とは、“多数の第1のエレメント(2)が、互いに結合されており”である点で共通している。

してみると、本願補正発明と引用発明1とは、本願補正発明の用語を用いて表現すると、
「靴のための緩衝エレメント(1)であって、当該緩衝エレメント(1)が、少なくとも1つの第1のエレメント(2)を有しており、該第1のエレメント(2)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(H)にわたって延びていて、中空体として形成されて、受容室(3)を規定しており、該受容室(3)内に、横断面で見て第1のエレメント(2)よりも小さい寸法の所属の第2のエレメント(4)が、少なくとも部分的に侵入することができるようになっており、第2のエレメント(4)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(h)にわたって延びている形式のものにおいて、
第2のエレメント(4)も、中空体として形成されており、互いに対応配置された両エレメント(2,4)が、弾性的な結合区分(5)を介して互いに結合されており、該結合区分(5)が、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)との間だけに延びており、
両エレメント(2,4)がガス密な室を形成しており、
多数の第1のエレメント(2)が、互いに結合されている靴のための緩衝エレメント。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、「第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とが、負荷方向(R)に対して垂直な1つの断面で見て、互いに対応する形状、つまり多角形の形状を有している」と共に、「同軸的に配置されている」のに対し、引用発明では、第1のエレメント(2)の断面形状が明らかでなく、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とが、互いに対応する断面形状を備えているのか否か、また、両者が同軸的に配置されているのか否かも不明な点。

(相違点2)
本願補正発明では、第1のエレメント(2)がその側方の領域で互いに結合されているのに対し、引用発明では、第1のエレメント(2)がその下端部で互いに結合されている点。

3-3.相違点の判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
(相違点1について)
引用発明1と引用発明2とは、気密空間を有する靴底という共通の技術分野に属し、クッション性を高めるという課題で共通するものであることから、引用発明1における筒状部材及び凸部(14)の水平断面形状として、引用発明2の「3角形又は6角形以上の形状」を適用して「多角形の形状」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。また、この適用に当たり、各エレメントの形状を互いに対応する形状とすること、また、各エレメントの中心線を同軸的に配置することは、靴底に負荷が作用した際のバランスや安定性等を踏まえて適宜に採用し得る設計的事項にすぎない。

(相違点2について)
引用発明1において、上下一対の筒状部材及び凸部(14)を靴底に幾つ配置するか、また、どの程度の密度で配置するかは、必要とされるクッション性能に応じて適宜に変更しうるところである。
そして、引用発明2における「ハニカム構造」とは、各ハニカムセルがその側方の領域で互いに結合されている構造であることから、引用発明1において、クッション性の向上のために、筒状部材をより高密度に配置するに当たり、引用発明2の構造を採用して、相違点2における本願補正発明の特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成20年1月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
靴、特にスポーツ靴のための緩衝エレメント(1)であって、当該緩衝エレメント(1)が、少なくとも1つの第1のエレメント(2)を有しており、該第1のエレメント(2)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(H)にわたって延びていて、中空体として形成されて、受容室(3)を規定しており、該受容室(3)内に、横断面で見て第1のエレメント(2)よりも小さい寸法の所属の第2のエレメント(4)が、少なくとも部分的に侵入することができるようになっており、第2のエレメント(4)が、当該緩衝エレメント(1)の負荷されていない状態で、ほぼ負荷方向(R)に、予め規定された高さ(h)にわたって延びていて、第1のエレメント(2)に対して同軸的に配置されている形式のものにおいて、
第2のエレメント(4)も、中空体として形成されており、互いに対応配置された両エレメント(2,4)が、弾性的な結合区分(5)を介して互いに結合されており、該結合区分(5)が、第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)との間だけに延びており、
両エレメント(2,4)がガス密な室を形成しており、
多数の第1および/または第2のエレメント(2,4)が、互いに結合されており、その際、
前記第1のエレメント(2)がその側方の領域で互いに結合されていることを特徴とする、靴のための緩衝エレメント。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である「おり、かつ第1のエレメント(2)と第2のエレメント(4)とが、負荷方向(R)に対して垂直な1つの断面で見て、互いに対応する形状、つまり多角形の形状を有して」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-2、3-3に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2010-09-02 
結審通知日 2010-09-03 
審決日 2010-09-16 
出願番号 特願2004-500617(P2004-500617)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A43B)
P 1 8・ 575- Z (A43B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 康平村山 睦  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 関谷 一夫
岩田 洋一
発明の名称 靴のための緩衝エレメント  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 山崎 利臣  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 杉本 博司  

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