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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1231424 |
審判番号 | 不服2009-1391 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-15 |
確定日 | 2011-02-04 |
事件の表示 | 特願2006-135669「リチウムイオン電池」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-305546〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、平成18年5月15日の出願であって、平成20年4月22日付けの拒絶理由通知書が送付され、同年6月16日付けで手続補正(以下、「手続補正1」という。)がされ、同年8月8日付けの拒絶理由通知書(最後)が送付され、同年10月14日付けで手続補正(以下、「手続補正2」という。)され、同年12月9日付け補正の却下の決定により、手続補正2を却下するとともに、拒絶査定がされたところ、この査定を不服として、平成21年1月15日に審判請求がされるとともに、同年2月16日付けで手続補正(以下、「手続補正3」という。)がされたものであり、当審において平成22年8月11日付けで前置審査報告書に基づく審尋をしたところ、同年10月18日付けで回答書が提出されたものである。 第2 手続補正3についての補正の却下の決定 【補正の却下の決定の結論】 手続補正3を却下する。 【決定の理由】 I.補正の内容 手続補正3は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)から(B)とする補正事項を含む。 (A) 「【請求項1】 正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体上に設けられた正極と、負極と、電解液とを備え、 上記正極集電体の片面に設けられた上記正極活物質層の厚みが、70μm以上130μm以下であり、 上記正極活物質層が中位径50nm以下であるセラミックのナノ粒子を含有する リチウムイオン電池。 【請求項2】 充電状態において、上記正極活物質が上記セラミックのナノ粒子を含む被膜で被覆されている 請求項1に記載のリチウムイオン電池。 【請求項3】 上記セラミックの中位径が、12nm以下である 請求項2に記載のリチウムイオン電池。 【請求項4】 上記セラミックの含有量が、正極活物質100重量部に対して0.1重量部以上1.0重量部以下である 請求項3に記載のリチウムイオン電池。 【請求項5】 上記セラミックは、Al_(2)O_(3)、SiO_(2)、ZrO_(2)、MgO、Na_(2)OおよびTiO_(2)からなる群より選択された少なくとも1種である 請求項4に記載のリチウムイオン電池。 【請求項6】 上記セラミックは、Al_(2)O_(3)である 請求項5に記載のリチウムイオン電池。」 (B) 「【請求項1】 正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体上に設けられた正極と、負極と、電解液とを備え、 上記正極集電体の片面に設けられた上記正極活物質層の厚みが、70μm以上130μm以下であり、 上記正極活物質層が中位径50nm以下であるセラミックのナノ粒子を含有し、 上記負極は、X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d_(002)が0.338nm未満であり、かつ、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて1570cm^(-1)以上1630cm^(-1)以下の領域に存在するピーク強度をIGとし、1350cm^(-1)以上1370cm^(-1)以下の領域に存在するピーク強度をIDとしたときのピーク強度比(ID/IG)が0.01超2.0以下であり、真密度が2.10g/cm^(3)以上、嵩密度が1.2g/cm^(3)以上であり、かつ破壊強度が50MPa以上である黒鉛を含む リチウムイオン電池。 【請求項2】 上記セラミックの中位径が、12nm以下である 請求項2に記載のリチウムイオン電池。 【請求項3】 上記セラミックの含有量が、正極活物質100重量部に対して0.1重量部以上1.0重量部以下である 請求項3に記載のリチウムイオン電池。 【請求項4】 上記セラミックは、Al_(2)O_(3)、SiO_(2)、ZrO_(2)、MgO、Na_(2)OおよびTiO_(2)からなる群より選択された少なくとも1種である 請求項4に記載のリチウムイオン電池。 【請求項5】 上記セラミックは、Al_(2)O_(3)である 請求項5に記載のリチウムイオン電池。」 II.補正の内容についての検討 (1) 補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された「負極」について、「X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d_(002)が0.338nm未満であり、かつ、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて1570cm^(-1)以上1630cm^(-1)以下の領域に存在するピーク強度をIGとし、1350cm^(-1)以上1370cm^(-1)以下の領域に存在するピーク強度をIDとしたときのピーク強度比(ID/IG)が0.01超2.0以下であり、真密度が2.10g/cm^(3)以上、嵩密度が1.2g/cm^(3)以上であり、かつ破壊強度が50MPa以上である黒鉛を含む」との事項を付加するものである。 しかしながら、補正前の請求項1に係る発明は、「負極」がいかなる材料を含むものか何ら特定するものではない。 これに対し、補正後の請求項1に係る発明は、「負極」に「黒鉛」が含まれるものであって、さらに、「黒鉛」の性状を特定するものであるから、当該補正事項は、新たな発明特定事項を付加するものであって、補正前の発明特定事項をさらに限定したもの、つまり、いわゆる「限定的減縮」にあたるということはできない。 (2) なお、請求人は審判請求理由において、当該補正事項は、負極に含まれる材料を明確にしたものである旨主張している。 しかしながら、拒絶理由通知、拒絶査定のいずれにおいても、「負極」に含まれる材料について、明りょうでない旨の指摘はなされていない。 してみると、当該補正事項は、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものにも該当しない。 さらに、当該補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正のいずれかを目的とするものでもないことは明らかである。 III.まとめ したがって、当該補正事項を含む手続補正3は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件発明について I.本件発明 本件の手続補正3は、上記のとおり、却下されることとなった。 したがって、本件の請求項1-6に係る発明は、手続補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体上に設けられた正極と、負極と、電解液とを備え、 上記正極集電体の片面に設けられた上記正極活物質層の厚みが、70μm以上130μm以下であり、 上記正極活物質層が中位径50nm以下であるセラミックのナノ粒子を含有する リチウムイオン電池。」 II.原査定の理由の概要 原審の拒絶査定の理由は、平成20年8月8日付け拒絶理由通知書に記載された概略以下のとおりである。 「本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、あるいは、 その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2004-006301号公報 刊行物2:・・・(略)・・・ 刊行物3:・・・(略)・・・ 刊行物4:・・・(略)・・・」 III.刊行物の記載事項 原審において引用した刊行物1には、以下の記載がある。 [1a] 「【請求項1】 LiCoO_(2)、LiNiO_(2)及びLiMn_(2)O_(4)からなる群から選択される少なくとも1種のリチウム含有複合酸化物の粒子間に、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、酸化ニッケル、酸化銅及び酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物が分散されていることを特徴とする非水電解液2次電池用の正極。 【請求項2】?【請求項6】(略) 【請求項7】 請求項1から3の何れかに記載の正極と、負極と、非プロトン性有機溶媒と支持塩とからなる電解液とを備えた非水電解液2次電池。」 [1b] 「【0018】 本発明に用いる金属酸化物としては、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄が挙げられ、これらは1種単独でも、2種以上の併用であってもよい。該金属酸化物は非常に微細な粒子であるのが好ましく、その粒径は10nm?1μmであり、好ましくは20nm?60nmである。粒径が10nm未満の粒子は工業的には合成が困難であり、1μmを超えると単位体積当りに含まれる正極活物質の量が減少して、単位体積当りのエネルギー量が減少するため好ましくない。 【0019】 本発明では、リチウム含有複合酸化物の粒子間に、金属酸化物を分散させているので、リチウム含有複合酸化物粒子間に隙間が生じる。該隙間には電解液が効率よく浸入できるため、電解液とリチウム含有複合酸化物との接触面積が増大し、その結果としてリチウム含有複合酸化物の利用率が上がり、充放電容量が向上する。」 [1c] 「【0031】 本発明の非水電解液2次電池の負極は、例えば、リチウム又はリチウムイオン等を吸蔵・放出可能である。従って、その材料としては、例えば、リチウム又はリチウムイオン等を吸蔵・放出可能であれば特に制限はなく、公知の負極材料から適宜選択して使用できる。例えば、リチウムを含む材料、具体的には、リチウム金属自体、リチウムと、アルミニウム、インジウム、鉛又は亜鉛等との合金、リチウムをドープした黒鉛等の炭素材料等が好適に挙げられ、これらの中でも安全性がより高い点で黒鉛等の炭素材料が好ましい。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」 [1d] 「【0111】 (実施例1) 非水電解液2次電池用正極を、下記の方法で作製した。 エタノール 10mL中に、チタンイソプロポキシド(Ti[OCH(CH_(3))_(2)]_(4))(アルドリッチ製)0.07g(0.25mmol)を加え、大気下、30分間撹拌して溶解させた。次に、生成したエタノール溶液に、撹拌しながら、LiCoO_(2)(日本化学工業社製)1gを添加し分散させた。 次に、該分散液を氷冷しながら、これに水 0.5mL(27mmol)を添加し、これによりチタンイソプロポキシドを水酸化チタン(Ti(OH)_(4))にした。 次に、生成した水酸化チタンを含有する混合液を、80℃で加熱乾燥し、更に、300℃で1時間乾燥することにより水酸化チタンを酸化チタンにし、該酸化チタンがLiCoO_(2)粒子間に分散された粉末を得た。このようにして得られた粉末をガラスチューブのオーブンに仕込み、100℃で1時間脱水して、正極用粉末にした。正極用粉末中の酸化チタンの質量は、LiCoO_(2)の質量に対し2%であった。 【0112】 上記正極用粉末100質量部に対して、アセチレンブラックを10質量部、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10質量部添加し、有機溶媒(酢酸エチルとエタノールとの50/50体積%混合溶媒)で混練した後、ロール圧延により厚さ100μm、幅40mmの薄層状の正極シートを作製した。その後、得られた正極シート2枚を用いて、表面に導電性接着剤を塗布した、厚さ25μmのアルミニウム箔(集電体)を挟み込み、これに厚さ25μmのセパレーター(微孔性フィルム:ポリプロピレン製)を介在させ、厚さ150μmのリチウム金属箔を重ね合わせて巻き上げ、円筒型電極を作製した。該円筒型電極の正極長さは約260mmであった。 【0113】 電解液は、ジエチルカーボネート 50体積%とエチレンカーボネート 50体積%との混合溶液に、LiBF_(4)(支持塩)を0.75mol/kgの濃度で溶解させることにより調製した。該電解液を前記円筒型電極に注入して封口し、単三型リチウム電池を作製した。」 IV.当審の判断 1.刊行物1に記載された発明 摘示[1a]の請求項7には、引用する請求項1の記載を組み入れると、「LiCoO_(2)、LiNiO_(2)及びLiMn_(2)O_(4)からなる群から選択される少なくとも1種のリチウム含有複合酸化物の粒子間に、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、酸化ニッケル、酸化銅及び酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物が分散されている正極と、負極と、非プロトン性有機溶媒と支持塩とからなる電解液とを備えた非水電解液2次電池。」と記載されているといえる。 そして、摘示[1d]には、その実施例として、正極用粉末として「LiCoO_(2)」に、「酸化チタン」を分散したものを用いて、「厚さ100μm、幅40mmの薄層状の正極シートを作製し」、「正極シート2枚を用いて、表面に導電性接着剤を塗布した、厚さ25μmのアルミニウム箔(集電体)を挟み込み、これに厚さ25μmのセパレーター(微孔性フィルム:ポリプロピレン製)を介在させ、厚さ150μmのリチウム金属箔を重ね合わせて巻き上げ、円筒型電極を作製」し、さらに「電解液を前記円筒型電極に注入して封口し、単三型リチウム電池を作製した」こと、が記載されている。 そこで、上記の記載及び認定事項を本件発明の記載ぶりに則して整理して記載すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。 『LiCoO_(2)の粒子間に酸化チタンが分散されている厚さ100μmの2枚の正極シートで集電体を挟む込んだ正極と、負極と、非プロトン性有機溶媒と支持塩とからなる電解液とを備える非水電解液2次電池。』 2.対比・判断 本件発明(前者)と刊行物1発明(後者)と対比すると、後者の『LiCoO_(2)』、『酸化チタン』、『正極シート』は、前者の「正極活物質」、「セラミック」、「正極活物質層」に相当する。 また、後者の『非水電解液2次電池』は、摘示[1c]の負極活物質の記載、電解液溶媒及び溶質の種類から見て、前者の「リチウムイオン電池」に相当することは明らかである。 してみると、両者は、 「正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体上に設けられた正極と、負極と、電解液とを備え、 上記正極集電体の片面に設けられた上記正極活物質層の厚みが、100μmであり、 上記正極活物質層がセラミックを含有する リチウムイオン電池。」 との点で一致するものの、次の点で相違している。 相違点:本件発明においては、セラミックが「中位径50nm以下である・・・ナノ粒子」であるのに対して、刊行物1発明においては、酸化チタンの中位径が不明である点。 上記相違点について検討する。 摘示[1b]には、酸化チタンなどの金属酸化物の粒径に関し、「好ましくは20nm?60nmである」と記載されている。してみれば、刊行物1発明の酸化チタンの粒径は、好ましい粒径範囲である「20nm?60nm」であり、本件発明の粒径条件を満たしている蓋然性が高い。 また、刊行物1発明の酸化チタンの粒径が、本件発明の粒径条件を満たしていないとしても、摘示[1b]には、金属酸化物は非常に微細な粒子であるのが好ましいことが記載されているから、摘示[1b]の「その粒径は10nm?1μmであり、好ましくは20nm?60nmである」との粒径範囲において、より微細な粒子を選択し、本件発明の粒径条件を満たすものとすることに、何ら困難性を伴うものではない。 3.小括 したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものである。 VI.まとめ 以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、 あるいは、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の発明について検討するまでもなく、本件は原査定の理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-01 |
結審通知日 | 2010-12-07 |
審決日 | 2010-12-20 |
出願番号 | 特願2006-135669(P2006-135669) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01M)
P 1 8・ 121- Z (H01M) P 1 8・ 572- Z (H01M) P 1 8・ 574- Z (H01M) P 1 8・ 571- Z (H01M) P 1 8・ 573- Z (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨士 美香 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 植前 充司 |
発明の名称 | リチウムイオン電池 |
代理人 | 杉浦 正知 |