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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1231881
審判番号 不服2009-8242  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-16 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2006-201700「プローブカード」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日出願公開、特開2008- 26248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年7月25日の出願であって、特許請求の範囲及び明細書について、平成20年11月14日付けで手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成21年2月23日付け(発送日:同年3月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、特許請求の範囲及び明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審において平成22年5月18日付け審尋書により審尋をしたところ、請求人より同年7月26日付けで回答書の提出があった。


2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]独立特許要件違反
(1)補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし2に、
「【請求項1】
プローブ本体とスプリングとガイド管とを有するプローブと、
第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部と、
第2のガイド板対向面にガイド管が当接する接続パッドが設けられた基板とを具備しており、
前記プローブ本体は、導電性を有する円柱体であって、一端部側の外周面にフランジ部が設けられており、
前記スプリングは、前記プローブ本体が挿入されたコイルスプリングであって、一端が前記フランジ部に当接しており、
前記ガイド管は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する円筒体であって、スプリングの他端に当接しており、
前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、
第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、
前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致しており、
前記プローブ本体のフランジ部から他端部までの長さ寸法は、自然長状態にある前記スプリングの長さ寸法と前記ガイド管の長さ寸法との和よりも小さく且つ第1のガイド板と第2のガイド板との間の寸法よりも大きくなっており、
前記ガイド管は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され、
前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され、フランジ部が前記第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接する
ことを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
第1のガイド板と第2のガイド板とを積層すると共に、第1のガイド板の第1の開口を第1の開口よりも径が大きい第2のガイド板の第2の開口に鉛直方向で一致させ、
その後、一端部側の外周面にフランジ部が設けられた導電性を有する円柱体であって、
予めスプリングに挿入され且つ当該スプリングが前記フランジに当接した状態のプローブ本体の一端部を、前記第2のガイド板の第2の開口及び前記第1のガイド板の第1の開口に順次挿入すると共に、当該プローブ本体のフランジ部を第2のガイド板の第2の開口に挿入し、第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接させ、
その後、第1のガイド板と第2のガイド板とを平行状態を維持したまま、両ガイド板を離間させ、
この状態で、第1のガイド板と第2のガイド板との間にスペーサを介在させ、当該第1のガイド板、第2のガイド板及びスペーサを相互に固定し、
その後、ガイド管に前記プローブ本体の他端部が挿入されるよう、当該ガイド管を第2のガイド板の第2の開口に挿入し、
その後、基板の面上の接続パッドをガイド管に当接させ、
この状態で、基板を第2のガイド板に取り付ける
ことを特徴とするプローブカードの製造方法。」
とあったものを、
「【請求項1】
プローブ本体とスプリングとガイド管とを有するプローブと、
第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部と、
第2のガイド板対向面にガイド管が当接する接続パッドが設けられた基板とを具備しており、
前記プローブ本体は、導電性を有する円柱体であって、一端部側の外周面にフランジ部が設けられており、
前記スプリングは、前記プローブ本体が挿入されたコイルスプリングであって、一端が前記フランジ部に当接しており、
前記ガイド管は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する円筒体であって、スプリングの他端に当接しており、
前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、
第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、
前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致しているとともに、前記プローブ支持部には前記スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成されており、
前記プローブ本体のフランジ部から他端部までの長さ寸法は、自然長状態にある前記スプリングの長さ寸法と前記ガイド管の長さ寸法との和よりも小さく且つ第1のガイド板と第2のガイド板との間の寸法よりも大きくなっており、
前記ガイド管は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され、
前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され、フランジ部が前記第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接しており、しかも前記フランジ部及びスプリングは前記開放された空間内に配置されている
ことを特徴とするプローブカード。」に補正するものである。
(注:下線は補正箇所を明示するために請求人が付したものである。)

してみると、この補正は、本件補正前の請求項2を削除するとともに、本件補正前の請求項1に係る発明特定事項である「プローブ支持部」に対して「スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成され」との限定を付加し、さらに「フランジ部及びスプリング」に対して「前記開放された空間内に配置されている」との限定を付加するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号及び第2号に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、以下に検討する。

(2)引用文献記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2004-152495号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。

(a)「【0019】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
最初に、図1、2を用いて狭ピッチICパッケージ用ICソケットの概略を説明する。図1は、ピッチ変換基板に取り付けられている狭ピッチICパッケージ用ICソケットを示し、(a)は、その平面図、(b)は、側面図である。図2は、図1のA-A線に沿うICソケットの拡大概略断面図である。
【0020】
本発明に係る狭ピッチICパッケージ用ICソケット10は、概略、ソケット基板20、カバー部材30、複数のコンタクトピン40及び絶縁基板50を備えており、ソケット基板20に設けられている複数の固定ネジ5を介して、外部回路であるプリント配線板としてのピッチ変換基板70に取り付けられている。」

(b)「【0026】
コンタクトピン40各々は、後述するようにICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部としての第1プランジャ41が垂直方向に上下動可能なように構成されており、絶縁基板50に形成された貫通孔51内に配置される。そして、装着されるICパッケージ1の外部接点2と同じか又はそれ以上の多数のコンタクトピン40が、該外部接点2のマトリックス状の配列パターンに対応して配列される。
【0027】
絶縁基板50は、多数の貫通孔51が形成され、コンタクトピン40が対応するICパッケージ1の外部接点2に接触し得るように、該貫通孔51内にコンタクトピン40を収容している。また、該絶縁基板50は、ソケット基板20の設けられている固定ネジ5を介して、ソケット基板20の凹室22内に固定される。該絶縁基板50は、この時、図1(a)に示されるように、コンタクトピン40の第1プランジャ41がソケット基板20の開孔21に臨むように凹室22内に固定される。
【0028】
ICソケット10は、外部回路としてのピッチ変換基板70に形成されているプリント配線パターンのランド71にコンタクトピン40の第2端子部としての第2プランジャ46と弾性接触するように固定ネジ5を介して該ピッチ変換基板70に取り付けられる。ピッチ変換基板70は、さらに、ピッチ変換コネクタ72を介してテストボード等に電気的に接続される。」

(c)「【0033】
以上、本発明に係るICソケット1の全体構造について説明してきたが、ここからは、本発明の特徴点であるコンタクトピン40についてその詳細を述べることとする。なお、以下の説明においては、特にことわりのない限り、外部端子である半田ボールのピッチpが0.4mmであるICパッケージを搭載するICソケットについて述べることとする。
【0034】
図3?6は、本発明に係るコンタクトピンの第1実施例を示している。図3は、コンタクトピンの分解図及び組立図であり、(a)は、第1プランジャの正面図と側面図、(b)は、コイルバネの側面図、(c)は、第2プランジャの上面図と正面図、(d)は、(a)?(c)の各要素を組み立てることにより形成されるコンタクトピンの斜視図である。図4は、コンタクトピンが組み込まれる絶縁基板の一部拡大断面図である。図5は、絶縁部材に組み込まれたコンタクトピンの一部断面図であって、ICパッケージが装着されていない状態を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。図6は、絶縁部材に組み込まれたコンタクトピンの一部断面図であって、ICソケットにICパッケージが装着された状態を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図で、(c)はコンタクトピンの変形状態を示す図である。
【0035】
コンタクトピン40は、図3(a)、(b)、(c)にそれぞれ示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45及び第2プランジャ46から形成される。 」

(d)「【0036】
第1プランジャ41は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部として機能するものであり、図3(a)に示されるように、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する端子部42、第1プランジャ41が絶縁基板50の貫通孔51から飛び出すことを防止するための上段部43a及びコイルバネ45を係止させるための下段部43bを有する幅広部43、コイルバネ45及び第2プランジャ46内を上下動自在に挿入される心棒部44を含んでいる。なお、同図において、L1、L2及びL3は、それぞれ、第1プランジャ41の端子部42、幅広部43及び心棒部44の長さを表わし、W1、W2、W3は、それぞれ、第1プランジャ41の端子部42、幅広部43及び心棒部44の幅を表わしている。
【0037】
第1プランジャ41は、厚さ約0.1mmの金属薄板からプレス加工により所定の形状に打抜かれ、表面をNi-Auメッキされる。形成された第1プランジャ41の幅は、端子部42(W1)で約0.15mm、幅広部43(W2)で約0.25mm、心棒部44(W3)で約0.12mmである。また、端子部42の先端は、ICパッケージ1の半田ボール2との接触を良好とするため、約90度の角度をなす三角溝状に形成されている。なお、本実施例では、上記のようにプレス加工で金属薄板を打ち抜いて形成しているが、図9に示されるように直径約0.1mmの丸棒をプレス加工で端子部42の先端及び幅広部43を潰ぶして形成することも可能である。」

(e)「【0039】
第2プランジャ46は、ピッチ変換基板70の形成されているプリント配線パターンのランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する。本実施例では、第2プランジャ46は、図3(c)に示されるように、プレス加工により所定の形状(本実施例では長方形)に打ち抜かれた金属薄板(厚さ約0.05mm)を、さらにプレス加工により断面略U字形に折り曲げられ、形成される。すなわち、図3(c)において、第2プランジャ46の右側は、壁が無く開放している。第2プランジャ46の幅(W4)及び奥行(W5)は、いずれも第1プランジャ41の幅広部43の幅(W3)と略同じであることが好ましい。また、第2プランジャ46も、第1プランジャ41と同様に表面をNi-Auメッキされている。なお、L5は、第2プランジャ46の長さを表わしている。 」

(f)「【0040】
コンタクトピン40は、図3(d)の示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46を、コイルバネ45上端が第1プランジャ41の幅広部43の下段部43bと係合し、コイルバネ45下端が第2プランジャ46上端に係合するようにして組み立てられることにより形成される。この時、コイルバネ45は無負荷状態であり、したがって、コンタクトピンの長さは、L1+L2+L4+L5である。
【0041】
図4には、上記したコンタクトピン40が収容される貫通孔51が形成された絶縁基板50が示されている。該貫通孔51は、第1プランジャ41の端子部42が上下動し得るように収容される径小部51aと端子部42以外の第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46が収容される径大部51cとを備え、径小部51aと径大部51cとの間には段差部51bが形成されている。該段差部51bは、第1プランジャ41の幅広部43の上段部43aと係合し、第1プランジャ41が貫通孔51から上方に抜け出ることを妨げる。なお、貫通孔51の孔形状は、円形であってもよいし矩形状であってもよい。貫通孔51の孔形状が矩形状であると、第1プランジャ41(コンタクトピン40)の方向を一定に保つことが可能である。さらに、絶縁基板50は、複数段(本実施例では、3段)に分けて形成されてもよい。このようにすると、貫通孔51の形成が容易になる。
【0042】
貫通孔51の径小部51aの長さL6は、第1プランジャ41の端子部42の長さL1より短く形成され、径大部51cの長さL7は、図3(d)に示されるコンタクトピン40において、端子部42を除く長さ(L2+L4+L5)より短く形成されている。したがって、コンタクトピン40が貫通孔51内に組み込まれ、完全に収容さた場合、コイルバネ45は、{(L2+L4+L5)-L7}分だけ圧縮された状態となる。それにより、第1プランジャ41の端子部42の先端は、上方に付勢された状態で該貫通孔51より突出する。第2プランジャ46も、コイルバネ45により下方に付勢される。 」


(ア)前記記載事項(c)における「コンタクトピン40は、図3(a)、(b)、(c)にそれぞれ示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45及び第2プランジャ46から形成される。」との記載から、「第1プランジャ41とコイルバネ45と第2プランジャ46とを有するコンタクトピン40」との技術的事項が読み取れる。

(イ)前記記載事項(f)の「さらに、絶縁基板50は、複数段(本実施例では、3段)に分けて形成されてもよい。このようにすると、貫通孔51の形成が容易になる。」との記載、図2のICソケットの拡大概略断面図における絶縁基板50の記載から、「上段の基板と下段の基板と中段の基板とを有する絶縁基板50」との技術的事項が読み取れる。

(ウ)前記記載事項(b)における「ICソケット10は、外部回路としてのピッチ変換基板70に形成されているプリント配線パターンのランド71にコンタクトピン40の第2端子部としての第2プランジャ46と弾性接触するように固定ネジ5を介して該ピッチ変換基板70に取り付けられる。」との記載と、図2、図5及び図6の各断面図の記載とから、「下段の基板取付面に第2プランジャ46が弾性接触するランド71が形成されたピッチ変換基板70」との技術的事項が読み取れる。

(エ)前記記載事項(d)における「第1プランジャ41は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部として機能するものであり」との記載と、「図9に示されるように直径約0.1mmの丸棒をプレス加工で端子部42の先端及び幅広部43を潰ぶして形成することも可能である。」との記載から、「第1プランジャ41は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部として機能する丸棒であって、一端部側に幅広部43が形成されている」との技術的事項が読み取れる。

(オ)前記記載事項(d)における「第1プランジャ41は、・・・上段部43a及びコイルバネ45を係止させるための下段部43bを有する幅広部43、コイルバネ45及び第2プランジャ46内を上下動自在に挿入される心棒部44を含んでいる。」との記載と、前記記載事項(f)における「コンタクトピン40は、図3(d)の示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46を、コイルバネ45上端が第1プランジャ41の幅広部43の下段部43bと係合し、コイルバネ45下端が第2プランジャ46上端に係合するようにして組み立てられることにより形成される。」との記載とから、「コイルバネ45は、第1プランジャ41が挿入され、上端が幅広部43に係合する」との技術的事項が読み取れる。

(カ)前記記載事項(d)における「第1プランジャ41は、・・・上段部43a及びコイルバネ45を係止させるための下段部43bを有する幅広部43、コイルバネ45及び第2プランジャ46内を上下動自在に挿入される心棒部44を含んでいる。」との記載と、前記記載事項(f)における「コンタクトピン40は、図3(d)の示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46を、コイルバネ45上端が第1プランジャ41の幅広部43の下段部43bと係合し、コイルバネ45下端が第2プランジャ46上端に係合するようにして組み立てられることにより形成される。」との記載から「第2プランジャ46は、第1プランジャ41の他端部が挿入され、コイルバネ45の下端に係合する」との技術的事項が読み取れる。
さらに、前記記載事項(e)における「第2プランジャ46は、ピッチ変換基板70の形成されているプリント配線パターンのランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する。本実施例では、第2プランジャ46は、図3(c)に示されるように、プレス加工により所定の形状(本実施例では長方形)に打ち抜かれた金属薄板(厚さ約0.05mm)を、さらにプレス加工により断面略U字形に折り曲げられ、形成される。」との記載から、「第2プランジャ46は、ランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する断面略U字形」との技術的事項が読み取れる。
そして、これらの技術的事項を勘案すると、「第2プランジャ46は、第1プランジャ41の他端部が挿入され、ランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する断面略U字形であって、コイルバネ45の下端に係合する」との技術的事項が読み取れる。

(キ)前記記載事項(f)における「図4には、上記したコンタクトピン40が収容される貫通孔51が形成された絶縁基板50が示されている。該貫通孔51は、第1プランジャ41の端子部42が上下動し得るように収容される径小部51aと端子部42以外の第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46が収容される径大部51cとを備え、径小部51aと径大部51cとの間には段差部51bが形成されている。該段差部51bは、第1プランジャ41の幅広部43の上段部43aと係合し、第1プランジャ41が貫通孔51から上方に抜け出ることを妨げる。」及び「さらに、絶縁基板50は、複数段(本実施例では、3段)に分けて形成されてもよい。」との記載と、図2、図4ないし図6の各断面図の記載とから、「上段の基板には径小部51aが形成されており、下段の基板には径小部51aよりも径が大きい径大部51cが形成されており、中段の基板は、上段の基板と下段の基板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより径小部51aと径大部51cとが上下方向に一致している」との技術的事項が読み取れる。

(ク)前記記載事項(f)における「コンタクトピン40は、図3(d)の示されるように、第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46を、コイルバネ45上端が第1プランジャ41の幅広部43の下段部43bと係合し、コイルバネ45下端が第2プランジャ46上端に係合するようにして組み立てられることにより形成される。この時、コイルバネ45は無負荷状態であり、したがって、コンタクトピンの長さは、L1+L2+L4+L5である。」との記載と、図5及び図6におけるコンタクトピン40における第1フランジ41の幅広部43、心棒44及び第2フランジ46の記載と、図2のICソケットの拡大概略断面図の記載とから、「第1プランジャ41の幅広部43から他端部までの長さは、無負荷状態におけるコイルバネ45の長さL4と第2プランジャ46の長さL5との和よりも小さく且つ上段の基板と下段の基板との間の寸法よりも大きい」との技術的事項が見て取れる。

(ケ)前記記載事項(f)における「図4には、上記したコンタクトピン40が収容される貫通孔51が形成された絶縁基板50が示されている。該貫通孔51は、第1プランジャ41の端子部42が上下動し得るように収容される径小部51aと端子部42以外の第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46が収容される径大部51cとを備え、径小部51aと径大部51cとの間には段差部51bが形成されている。・・・。さらに、絶縁基板50は、複数段(本実施例では、3段)に分けて形成されてもよい。このようにすると、貫通孔51の形成が容易になる。」との記載と、図2、図5及び図6における絶縁基板50及びコンタクトピン40の記載とから、「第2プランジャ46は、第1プランジャ41の他端部と共に下段の基板の径大部51cに収容される」との技術的事項が読み取れる。

(コ)前記記載事項(f)における「図4には、上記したコンタクトピン40が収容される貫通孔51が形成された絶縁基板50が示されている。該貫通孔51は、第1プランジャ41の端子部42が上下動し得るように収容される径小部51aと端子部42以外の第1プランジャ41、コイルバネ45、第2プランジャ46が収容される径大部51cとを備え、径小部51aと径大部51cとの間には段差部51bが形成されている。該段差部51bは、第1プランジャ41の幅広部43の上段部43aと係合し、第1プランジャ41が貫通孔51から上方に抜け出ることを妨げる。」との記載から、「第1プランジャ41は、一端部が上段の基板の径小部51aに収容され、幅広部43が上段の基板の径小部51aと径大部51cとの間の段差部51bに係合する」との技術的事項が読み取れる。

(サ)前記記載事項(a)における「図1は、ピッチ変換基板に取り付けられている狭ピッチICパッケージ用ICソケットを示し、(a)は、その平面図、(b)は、側面図である。」との記載と、前記記載事項(b)における「ピッチ変換基板70は、さらに、ピッチ変換コネクタ72を介してテストボード等に電気的に接続される。」との記載から、「テストボード等に電気的に接続されるピッチ変換基板70及び狭ピッチICパッケージ用ICソケット10」との技術的事項が読み取れる。

したがって、前記技術的事項(ア)ないし(サ)を総合勘案すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「第1プランジャ41とコイルバネ45と第2プランジャ46とを有するコンタクトピン40と、
上段の基板と下段の基板と中段の基板とを有する絶縁基板50と、
下段の基板取付面に第2プランジャ46が弾性接触するランド71が形成されたピッチ変換基板70とを具備しており、
前記第1プランジャ41は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部として機能する丸棒であって、一端部側に幅広部43が形成されており、
前記コイルバネ45は、第1プランジャ41が挿入され、上端が前記幅広部43に係合しており、
前記第2プランジャ46は、第1プランジャ41の他端部が挿入され、ランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する断面略U字形であって、コイルバネ45の下端に係合しており、
前記上段の基板には径小部51aが形成されており、
下段の基板には径小部51aよりも径が大きい径大部51cが形成されており、
前記中段の基板は、前記上段の基板と前記下段の基板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記径小部51aと前記径大部51cとが上下方向に一致しており、
前記第1プランジャ41の幅広部43から他端部までの長さは、無負荷状態における前記コイルバネ45の長さL4と前記第2プランジャ46の長さL5との和よりも小さく且つ上段の基板と下段の基板との間の寸法よりも大きくなっており、
前記第2プランジャ46は、前記第1プランジャ41の他端部と共に下段の基板の径大部51cに収容され、
前記第1プランジャ41は、一端部が上段の基板の径小部51aに収容され、幅広部43が前記上段の基板の径小部51aと径大部51cとの間の段差部51bに係合している
テストボード等に電気的に接続されるピッチ変換基板70及び狭ピッチICパッケージ用ICソケット10。」


(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(a)まず、引用発明1における 「第1プランジャ41」、「コイルバネ45」、「コンタクトピン40」、「弾性接触する」、「ランド71」、「ピッチ変換基板70」、「丸棒」、「上下方向」、「径小部51a」及び「径大部51c」は、本願補正発明における「プローブ本体」、「スプリング」、「プローブ」、「当接する」、「接続パッド」、「基板」、「円柱体」、「鉛直方向」、「第1の開口」及び「第2の開口」にそれぞれ相当する。

上記相当関係(a)を踏まえると、以下(b)?(l)が言える。
(b)引用発明1における「第2プランジャ46」は、第1プランジャ41の他端部が挿入され、他端部と共に径大部51cに収容されてランド71に弾性接触し、本願補正発明における「ガイド管」は、プローブ本体の他端部が挿入され、プローブ本体の他端部と共に第2の開口に挿入されて接続パッドに当接するので、機能において共通し、ガイド部と言えることから、引用発明1における「第2プランジャ46」と、本願補正発明における「ガイド管」とは、「ガイド部」である点で共通する。
よって、引用発明1における「第1プランジャ41とコイルバネ45と第2プランジャ46とを有するコンタクトピン40」と、本願補正発明における「プローブ本体とスプリングとガイド管とを有するプローブ」とは、「プローブ本体とスプリングとガイド部とを有するプローブ」である点で共通する。

(c)引用発明1における「絶縁基板50」は、ICパッケージ1の外部接点2及びピッチ変換基板70に形成されているランド71に接触するコンタクトピン40を、絶縁基板50の上段の基板と下段の基板にそれぞれ形成されている径小部51a及び径大部51cに収容するものであるので、上段の基板と下段の基板はコンタクトピン40を支持しガイドする機能を有すると言えるから、引用発明1における「上段の基板」、「下段の基板」及び「絶縁基板50」は、本願補正発明における「第1のガイド板」、[第2のガイド板」及び「プローブ支持部」にそれぞれ相当する。
また、 引用発明1における絶縁基板50の「中段の基板」は、上段の基板と下段の基板とを間隔を空けて連結しているから、本願補正発明の「スペーサ」に相当する。
よって、引用発明1における「上段の基板と下段の基板と中段の基板とを有する絶縁基板50」は、 本願補正発明の「第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部」に相当する。

(d)引用発明1における「下段の基板取付面に第2プランジャ46が弾性接触するランド71が形成されたピッチ変換基板70」と、本願補正発明における「第2のガイド板対向面にガイド管が当接する接続パッドが設けられた基板」とは、「第2のガイド板対向面にガイド部が当接する接続パッドが設けられた基板」である点で共通する。

(e)引用発明1における「第1プランジャ41」は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触するものであるから、「導電性を有する」ことは明らかである。
また、引用発明1における「幅広部43」は、コイルバネ45に係合するものであり、コンタクトピン40の外周面から外側の方向(幅広)に形成されたものと言えるから、本願補正発明における「フランジ部」に相当する。
よって、引用発明1における「前記第1プランジャ41は、ICパッケージ1の半田ボール2と電気的に接触する第1端子部として機能する丸棒であって、一端部側に幅広部43が形成されており」は、本願補正発明における「前記プローブ本体は、導電性を有する円柱体であって、一端部側の外周面にフランジ部が設けられており」に相当する。

(f)引用発明1における「コイルバネ45」は、本願補正発明の「スプリングは、・・・コイルスプリング」に相当するから、引用発明1における「前記コイルバネ45は、第1プランジャ41が挿入され、上端が前記幅広部43に係合しており」は、本願補正発明における「前記スプリングは、前記プローブ本体が挿入されたコイルスプリングであって、一端が前記フランジ部に当接しており」に相当する。

(g)引用発明1における「第2プランジャ46」は、ランド71と電気的に接触するものであり、「導電性を有する」ことは明らかである。
また、引用発明1における「断面略U字形」は心棒部44の外周の一部を囲む形状であり、本願補正発明における「円筒体」はプローブ本体の他端部の外周全体を囲む形状と言えることから、引用発明1における「第1プランジャ41の他端部が挿入され・・・断面略U字形であって」と、本願補正発明における「プローブ本体の他端部が挿入された・・・円筒体であって」とは、「プローブ本体の他端部が挿入された・・・前記他端部の外周の少なくとも一部を囲む形状である」点で共通する。
よって、引用発明1における「第2プランジャ46は、第1プランジャ41の他端部が挿入され、ランド71と電気的に接触する第2端子部として機能する断面略U字形であって、コイルバネ45の下端に係合しており」と、本願補正発明における「前記ガイド管は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する円筒体であって、スプリングの他端に当接しており」とは、「前記ガイド部は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する前記他端部の周囲の少なくとも一部を囲む形状であって、スプリングの他端に当接している」点で共通する。

(h)引用発明1における「前記上段の基板には径小部51aが形成されており、前記下段の基板には径小部51aよりも径が大きい径大部51cが形成されており、前記中段の基板は、前記上段の基板と前記下段の基板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより径小部51aと径大部51cとが上下方向に一致しており」と、
本願補正発明における「前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、 第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致しているとともに、前記プローブ支持部には前記スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成されており」とは、
「前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致している」点で共通する。

(i)引用発明1における「第1プランジャ41の幅広部43から他端部までの長さは、無負荷状態におけるコイルバネ45の長さL4と第2プランジャ46の長さL5との和よりも小さく且つ絶縁基板50の上段の基板と下段の基板との間の寸法よりも大きくなっており」は、本願補正発明における「前記プローブ本体のフランジ部から他端部までの長さ寸法は、自然長状態にある前記スプリングの長さ寸法と前記ガイド管の長さ寸法との和よりも小さく且つ第1のガイド板と第2のガイド板との間の寸法よりも大きくなっており」に相当する。

(j)引用発明1における「前記第2プランジャ46は、前記第1プランジャ41の他端部と共に下段の基板の径大部51cに収容され」と、本願補正発明における「前記ガイド管は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され」とは、「前記ガイド部は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され」る点で共通する。

(k)引用発明1における「段差部51b」は径小部51aの外周縁部分に位置するので、本願補正発明における「外周縁部」に相当する。
よって、引用発明1における「前記第1プランジャ41は、一端部が上段の基板の径小部51aに収容され、幅広部43が前記上段の基板の径小部51aと径大部51cとの間の段差部51bと係合している」は、本願補正発明における「前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され、フランジ部が前記第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接しており」に相当する。

(l)引用発明1における「テストボード等に電気的に接続されるピッチ変換基板70及び狭ピッチICパッケージ用ICソケット10」は、ICのテストに用いるものであり、多数のコンタクトピン40を備えた基板からなるものと言えるから、本願補正発明における「プローブカード」に相当する。

したがって、両者は、
[一致点]
「プローブ本体とスプリングとガイド部とを有するプローブと、
第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部と、
第2のガイド板対向面にガイド部が当接する接続パッドが設けられた基板とを具備しており、
前記プローブ本体は、導電性を有する円柱体であって、一端部側の外周面にフランジ部が設けられており、
前記スプリングは、前記プローブ本体が挿入されたコイルスプリングであって、一端が前記フランジ部に当接しており、
前記ガイド部は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する前記他端部の外周の少なくとも一部を囲む形状であって、スプリングの他端に当接しており、
前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、
第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、
前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致しており、
前記プローブ本体のフランジ部から他端部までの長さ寸法は、自然長状態にある前記スプリングの長さ寸法と前記ガイド管の長さ寸法との和よりも小さく且つ第1のガイド板と第2のガイド板との間の寸法よりも大きくなっており、
前記ガイド部は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され、
前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され、フランジ部が前記第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接している
ことを特徴とするプローブカード。」
で一致し、以下の相違点1、2で相違している。

[相違点1] ガイド部に関して
本願補正発明では、ガイド部が「円筒体のガイド管」であるのに対し、引用発明1では、「断面略U字形の第2プランジャ46」である点。

[相違点2] 開放された空間に関して
本願補正発明では、プローブ支持部には、スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成されており、該空間内にフランジ部及びスプリングが配置されているのに対し、引用発明1では、絶縁基板50には、前記開放された空間が形成されておらず、該空間内に幅広部43及びコイルバネ45が配置されていない点。


(4)判断
前記相違点について検討する。

[相違点1]について
この種のプローブにおいて、円柱体を挿入するガイド部の形状として円筒体のガイド管を採用することは周知技術である(例えば、原審で引用された特開2005-221309号公報(以下、「引用文献2」という。)の特に図1、2、4、7の記載、同特表2004-503783号公報(以下、「引用文献3」という。)の特に図9、図10の記載、特開2002-246131号公報の特に図1?図5、【0020】の「筒体19は、円筒形状」との記載、また、登録実用新案第3070294号公報の特に出願当初明細書【0024】、【0025】の「シリンダ状に形成され検査用探針200の上端部分に挿入されその下端部分が前記弾性バネ205の上端部と接触することにより弾性的に支持される検査接触用スリーブ210とで構成される。検査用探針200は円形バー状に形成・・・。」及び【0027】の「スリーブ210は、内部の空いているシリンダ状」との記載を参照のこと。以下、「周知技術1」という。)。
引用発明1のコンタクトピン40における第1プランジャ41も丸棒(「円柱体」に相当)であるから、第1プランジャ41を挿入する第2プランジャ46の形状に周知技術1を採用し、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
一般に、ICのテストをするためのプローブを支持するため、プローブ支持部をスペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間部が形成されている構成とし、プローブのフランジ部及びスプリングは前記開放された空間内に配置されている構成とすることは周知技術である(例えば、前置審査で引用された特開2003-240801号公報(以下、「引用文献4」という。)の特に図7、図8の記載、同特開平11-317270号公報(以下、「引用文献5」という。)の特に図1の記載、また、前記登録実用新案第3070294号公報の特に出願当初明細書に添付された図4ないし図6の記載を参照のこと。以下、「周知技術2」という。)。
引用発明1は、ICのテストに用いるものであり、また、コンタクトピン40を収容する絶縁基板50は複数の基板で形成されているから、絶縁基板50及びコンタクトピン40に周知技術2を採用し、前記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明1及び周知技術1、2から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。


(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成22年7月26日付け回答書において以下のように主張しているので検討する。
(a)審判請求人は、
「引用発明1は、絶縁基板50に貫通孔51が開設されています。この貫通孔51に貫通孔51にはコンタクトピン40の端子部42の先端部以外の部分が収容保持されていますので、絶縁基板50の厚みはコンタクトピン40の端子部42の先端部以外の部分の長さ寸法(コイルバネ45が圧縮状態である。)と略同じである必要あります。このような厚み寸法を有する絶縁基板50に貫通孔51を狭ピッチ間隔で開設することは非常に困難であります。
なお、本願の拒絶査定及び前置報告書において、審査官殿は、絶縁基板50を上側の板状部材、下側の板状部材及び中央の板状部材の3つの部材に分割して認定され、絶縁基板50の貫通孔51の径小部51aが本願発明の第1のガイド板の第1の開口に、同貫通孔51の径大部51cが本願発明の第2のガイド板の第2の開口に相当すると認定されています。しかし、絶縁基板50はあくまで一つの基板であり、貫通孔51も絶縁基板50を貫通する一つの孔であって、径小部51a及び径大部51cで構成されているだけでありますので、審査官殿の前述の認定は、本願発明を知った後の後付けによる知識によるこじつけであり、不当であります。」と主張している。
しかしながら、引用文献1においても、例えば「絶縁基板50は、複数段(本実施例では、3段)に分けて形成されてもよい。このようにすると、貫通孔51の形成が容易になる。」(【0041】)との記載から、一つの基板に貫通孔を形成するのではなく、複数段の基板に貫通孔を形成することで該貫通孔の形成を容易なものとし、狭ピッチとすることは意図されていると言えるから、前記主張は採用することができない。

(b)また、審判請求人は、
「引用発明1は、第2プランジャ46が略コ字状でありますので、第2プランジャ46が脱落することなく、第2プランジャ46に第1プランジャ41の他端部が挿入され、該第2プランジャ46の両端がコイルバネ45の他端とピッチ変換基板70のランド71とに当接した状態を維持するためには、第2プランジャ46全体が絶縁基板50の貫通孔51に収容されている必要があります。より具体的には、第1プランジャ41の上記往復移動時にはコイルバネ45が伸縮する際に幅方向に撓むと、第2プランジャ46が幅方向に振れることがあるため、略コ字状の第2プランジャ46が脱落しないように絶縁基板50の貫通孔51に収容されている必要があります。このような理由から引用発明1は、コンタクトピン40の略全体が絶縁基板50の貫通孔51に収容される構成が前提となっていると言えます。引用発明1が、コンタクトピン40の略全体が絶縁基板50の貫通孔51に収容される構成が前提となるのであれば、引用文献1の一つの絶縁基板50を引用文献4、5の第1、第2のガイド板及びスペーサの3つの部材に置換することすらできないはずであります。」、
「引用文献2、3にも、引用文献1の一つの絶縁基板50を引用文献4、5の第1、第2のガイド板及びスペーサの3つの部材に置換するための示唆及び円筒状のガイド管がプローブ本体の他端部と共に、第2のガイド板の第2の開口に挿入される事項が何ら記載されていませんので、引用文献2、3を参照して引用発明1の第2プランジャ46を円筒状としたとしても、当業者が、引用文献1の一つの絶縁基板50を引用文献4、5の第1、第2のガイド板及びスペーサの3つの部材に置換し、引用発明1のコンタクトピン40の第1プランジャ41の端子部42を引用文献4、5の第1のガイド板の開口に挿入すると共に、第2プランジャ46を第1プランジャ41の他端部と共に、引用文献4、5の第2のガイド板の開口に挿入するように構成することはできません。」、及び、
「引用文献4、5に、円筒状のガイド管がプローブ本体の他端部と共に、第2のガイド板の第2の開口に挿入される事項が何ら記載されていない以上、如何に当業者と謂えども、引用文献1の一つの絶縁基板50を引用文献4、5の第1、第2のガイド板及びスペーサの3つの部材に置換し、その上、引用発明1のコンタクトピン40の第1プランジャ41の端子部42を引用文献4、5の第1のガイド板の開口に挿入すると共に、第2プランジャ46を第1プランジャ41の他端部と共に、引用文献4、5の第2のガイド板の開口に挿入するように構成することはできません。」と主張している。
しかしながら、引用文献1では、「ICパッケージ1が搭載され、カバー部材30により開孔21内へ押し込まれるにつれて、ICパッケージ1の半田ボール2と第1プランジャ41の端子部42が当接し、第1プランジャ41は、図6(a)、(b)に示されるように、さらに所定位置まで押し下げられる。これにより、コイルバネ45は、さらに圧縮され、その反発力で、端子部42と半田ボール2及び第2プランジャ46とランド71は、所定の圧力の下で押圧接触させられる。この時、コイルバネ45は、図6(c)に強調して示されるように、貫通孔51内で若干歪む。このコイルバネ45の歪により第1プランジャ41は、わずかではあるが傾斜し得る。」(【0046】)との記載にあるように、その傾斜はわずかであり、仮に第2プランジャ46全体が貫通孔内に収容されていないものとしても前記脱落が発生する程度に傾くとは読み取れない。
また、第2プランジャ46が前記脱落する程度に傾くおそれが仮にあったとしても、「本実施例では、第2プランジャ46は断面U字形である(図3(c)参照)ことから、第2プランジャ46は開放部分すなわち内壁が存在しない部分がある。したがって、第1プランジャ41の心棒部44先端が該開放部分に向かう方向に、第1プランジャ41が傾かないように、例えば、コイルバネとプランジャとの係合態様を変えておくことが好ましい。」(【0046】)との記載にあるように、前記傾きを防ぐための構成(前記係合態様)をコンタクトピン40側に設けることが開示されていることから、貫通孔内に第2プランジャ46全体を収容することが前記傾きを防ぐものではなく、むしろコンタクトピン40自体で前記傾きを防いでいるものと理解できる。
さらに、審判請求人が主張するように「略コ字状の第2プランジャ46が脱落しないように絶縁基板50の貫通孔51に収容されている必要」があるとすれば、第2プランジャ46が、少なくとも前記脱落しない程度に絶縁基板50の(下段の基板に形成された)貫通孔51に収容されていればよいものと理解できるから、「コンタクトピン40の略全体が絶縁基板50の貫通孔51に収容される構成が前提」であるとは言えない。
そうすると、貫通孔51内にコンタクトピン40全体が収容されている必要性はなく、必ずしも前記傾きを防ぐための前提であるとは言えないから、前記前提である旨の主張は採用することができない。
また、引用文献1に記載の絶縁基板50や前記引用文献4(特開2003-240801号公報)の図3及び図4に図示されるプローブ支持部材のように閉じた空間を形成するものと、図7及び図8で図示されるような開放された空間を形成するものとの置き換えが困難であるとも認められない。

(c)さらに、審判請求人は、
「他方、本願発明は、出願当初の明細書の段落「0013」に記載したように、プローブの狭ピッチ配置への対応やスプリングの歪みの解消等を技術課題としています。
この点、引用文献4のプローブ100Bは、接触部120Bが連設された下端端子部130Bと、上側接触子150Bが連設された上端端子部110Bと、下端端子部130Bと上端端子部110Bとを電気的、機械的に接続する複数の屈曲部141Bを有しています。この屈曲部141Bは板バネであり、接触部120Bが往復運動する際に、伸縮し幅方向に撓む可能性がありますので、隣り合うプローブ100Bの屈曲部141B同士が接触しないように配慮する必要があります。すなわち、引用文献4は、プローブ100Bの狭ピッチ配置に不向きであります。
また、引用文献5のコンタクトピン30、40も、コイルスプリング33、43の中間部内に、接触部材31、41及び基板導通部材32、42が存在していませんので、接触部材31、41が往復運動する際に、コイルスプリング33、43が伸縮し幅方向に撓み隣同士が接触する可能性があります。よって、引用文献5もコンタクトピン30、40の狭ピッチ配置には不向きであります。
上述しましたように引用発明1も、絶縁基板50が使用されていることから、狭ピッチ配置には不向きなものであります。したがって、当業者が、本願発明の上述の技術課題を抱えた上で、引用発明1及び引用文献4、5の組み合わせを採用することはできないはずであります。」と主張している。
しかしながら、例えば前記引用文献4の図10に図示されるように、プローブ支持部材に開放された空間が形成されていても、屈曲部811を有するプローブの狭ピッチ配置に対応していることから(【0002】の「このプローブ810を屈曲部811の上下両側で支持する2枚の支持部材821、822を有するプローブ支持部材820」、【0003】の「高密度に配置されたプローブ810」との記載を参照。)、より屈曲部分が小さい前記プローブ100Bや引用文献1に記載のコンタクトピン40の支持であっても狭ピッチ配置に対応できないとする理由はない。また、前記(b)で説示したように引用文献1のコンタクトピン40自体の傾きはわずかなものであり、コンタクトピン40同士が接触するおそれがあるとは読み取れないから、狭ピッチ配置とする際に前記開放された空間が形成されたものとすることを妨げるとは認めらない。よって、前記主張は採用することができない。

(d)審判請求人は、本願補正発明の作用効果について、
「要するに、本願発明は、本来不採用となる技術内容を結合し、シンプルな構成で、プローブの狭ピッチ配置を可能にし、且つ、プローブ本体の往復移動時の引っ掛かり及びスプリングの磨滅を防止するという新たな解決策を提案するものであります。」
と主張している。
しかしながら、本願補正発明である本件補正後の請求項1に記載した「第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部と、・・・、前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、・・・、前記ガイド管は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され、前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され」、「前記プローブ支持部には前記スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成されており、・・・、しかも前記フランジ部及びスプリングは前記開放された空間内に配置されている」こと、つまり「プローブ支持部」と「フランジ部及びスプリング」の配置による前記作用効果については、出願当初明細書又は図面には何ら記載されておらず、また、狭ピッチ配置、スプリングが歪んだりしない等の作用効果は、プローブ自体の構成によるものであって(出願当初明細書の例えば【0013】における「狭ピッチ配置に対応することができ、しかもスプリングが歪んだりすることなく、確実な測定が可能で、かつ破損したプローブの部品交換が容易なプローブ」との記載を参照。)、いわば、後付けの主張に過ぎない。また、たとえ前記作用効果が自明であったとしても、引用発明1及び周知技術1、2から当業者が予測できる範囲のものであるから、前記主張は採用することができない。


(6)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「プローブ本体とスプリングとガイド管とを有するプローブと、
第1のガイド板と第2のガイド板とスペーサとを有するプローブ支持部と、
第2のガイド板対向面にガイド管が当接する接続パッドが設けられた基板とを具備しており、
前記プローブ本体は、導電性を有する円柱体であって、一端部側の外周面にフランジ部が設けられており、
前記スプリングは、前記プローブ本体が挿入されたコイルスプリングであって、一端が前記フランジ部に当接しており、
前記ガイド管は、プローブ本体の他端部が挿入された導電性を有する円筒体であって、スプリングの他端に当接しており、
前記第1のガイド板には第1の開口が開設されており、
第2のガイド板には第1の開口よりも径が大きい第2の開口が開設されており、
前記スペーサは、前記第1のガイド板と前記第2のガイド板とを間隔を空けて平行に連結し、これにより前記第1の開口と前記第2の開口とが鉛直方向に一致しており、
前記プローブ本体のフランジ部から他端部までの長さ寸法は、自然長状態にある前記スプリングの長さ寸法と前記ガイド管の長さ寸法との和よりも小さく且つ第1のガイド板と第2のガイド板との間の寸法よりも大きくなっており、
前記ガイド管は、前記プローブ本体の他端部と共に第2のガイド板の第2の開口に挿入され、
前記プローブ本体は、一端部が第1のガイド板の第1の開口に挿入され、フランジ部が前記第1のガイド板の第1の開口の外周縁部に当接する
ことを特徴とするプローブカード。」(以下、「本願発明」という。)


4.引用文献記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献記載の事項及び引用発明は、前記2.(2)に記載したとおりである。


5.対比・判断
本願発明は、前記2.(1)で検討したように、本願補正発明において、「プローブ支持部」及び「フランジ部及びスプリング」について、それぞれ、「スペーサと第1、第2のガイド板で囲まれた開放された空間が形成されて」いるとの発明特定事項及び「開放された空間内に配置されている」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、かつ他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-01 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-20 
出願番号 特願2006-201700(P2006-201700)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽飼 知佳  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
越川 康弘
発明の名称 プローブカード  
代理人 大西 正夫  

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