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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1231895
審判番号 不服2009-15973  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-31 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2004-160132「団地等建物再生法及び団地等建物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-336932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年5月28日の出願であって、平成21年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成22年4月22日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったが、何ら応答がなかったものである。

第2 平成21年8月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1、6を、次のとおりとする補正を含むものである(補正箇所に下線付与)。
「【請求項1】間隔をあけて建てられてなる建築基準法上の日影規制により上方及び/又は側方への増築が不可能な複数棟の既存建物を、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材からなる新たな住戸又は店舗により水平方向に接合して1棟の建物とすることを特徴とする団地等建物再生法。」
「【請求項6】間隔をあけて建てられてなる建築基準法上の日影規制により上方及び/又は側方への増築が不可能な複数棟の既存建物が、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材からなる新たな住戸又は店舗により水平方向に接合されて1棟の建物とされてなることを特徴とする団地等建物。」

2 補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1、6に係る発明の「既存建物」を、「建築基準法上の日影規制により上方及び/又は側方への増築が不可能な」ものに限定し、「接合」を「新たな住戸又は店舗」によるものに限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

3 独立特許要件の判断(特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された特開平6-323001号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次のことが記載されている。
(1a)「【請求項1】既存建物の建設されていない隣接空間に、新設される建物のコア部分を構築し、該コア部分から前記既存建物の頂部よりも上方部に、新設される建物の人工地盤を構築し、その後この人工地盤上に新設される建物を順次構築していき、しかる後に既存建物の改修を行う建物の増改築方法。」
(1b)「【0003】・・・都市空間の有効利用という点からは、できるだけ敷地の利用効率を上げるべく建物の高層化が進んでいるが前記建築物の大半は、容積率の制定のなされる以前のものであり、現在ではこれらの建築物の建設されている場所には、より高さの高い建物が建設できるようになっている。従って、前記建築物を保存し、
かつ敷地の有効利用を計る試みがなされている。」
(1c)「【0006】
【作用】本発明の増改築方法によると、既存建物の頂部よりも上方部に人工地盤を設け、その上に増築部分を構築し、その部分に既存建物から執務者の移動を行った後既存建物の改修を行うので、既存建物の使用を継続しながら増改築が可能になる。」
(1d)「【0008】本発明によると先ず、前記中庭2より新設される建物の基礎を構築する。(図示せず。)前記基礎の構造としては、コア部4からの荷重を集中的に受けるので、これに耐えるべく大きな耐力を有する構造を持つ事が望ましい。・・・
【0009】基礎の構築終了後、図2に示すように新設建物3のコア部4を構築していく。・・・コア部4は、上層階6の大きな荷重、応力を基礎に伝達するので、これに応じた設計をする必要がある。・・・
【0010】コア部4の構築が、既存建物1の高さよりも所定の高さだけ高くなった階段で、図3に示すように人工地盤5の構築を行う。人工地盤5は、構造的にはこの上部に建設される新設建物3の上層階6の、荷重を受ける巨大梁を持ちコア部4に強固に接合される。該巨大梁の構造は、フィーレンデール梁、トラス梁、プレストレス梁などの大きな応力に耐える構造形式が望ましい。・・・
【0011】人工地盤5の構築終了後、図4に示すようにコア部4を含む新設建物3の上層階6を構築していく。・・・
【0012】その後、図5に示すように既存建物1の内外部の改修を行い、必要に応じて上層階6と既存建物1との一体化工事を行い既存建物の増、改築工事は完了する。」

上記記載によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「間隔をあけて建てられてなる複数棟の既存建物の間に、コア部分を構築し、該コア部分から前記既存建物の頂部よりも上方部に、プレストレス梁などの巨大梁を有する、新設される建物の人工地盤を構築し、その後この人工地盤上に建物を順次構築し、
前記複数棟の既存建物と新設される上層階建物とを一体化する建物の増改築方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)対比・判断
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明においてプレストレス梁などの巨大梁を有する「人工地盤」が、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材から構成されていること、上層階も鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材から構成されていることは、明らかである。
また、複数棟の既存建物は、新設される上層階建物を介して、他の既存建物と水平方向に接合されていることは明らかである。
また、補正発明の「住戸又は店舗」と刊行物1記載の発明の「建物」とは、「建物」である点で共通し、補正発明の「団地等建物再生法」と、刊行物1記載の発明の「建物の増改築方法」とは、「建物再生法」で共通する。
したがって、両者は、次の点で一致する。
「間隔をあけて建てられてなる複数棟の既存建物を、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材からなる新たな建物により水平方向に接合して1棟の建物とする建物再生法。」
また、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
補正発明は、既存建物が「団地」の棟であり、新たな建物が「住戸又は店舗」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、既存建物、新たな建物がこのような建物に限定されていない点。
[相違点2]
既存建物が、補正発明では、「建築基準法上の日影規制により上方及び/又は側方への増築が不可能」なものであるのに対し、
刊行物1記載の発明は、このような建物に限定されていない点。

上記相違点1について検討すると、団地は敷地内にほぼ同型の建物が複数棟設けられており、刊行物1記載の発明を、既存の団地に適用し、新たな建物を住戸又は店舗とすることは当業者が容易になしうることである。
上記相違点2について検討すると、建築基準法上の日影規制は、1棟の建物に対して、敷地境界線を越える地域における日照時間を考慮して、建物の高さを制限しているものであるから、複数棟の既存建物を一体化し、1棟の建物とすれば、敷地境界線の位置が変わり、上方及び/又は側方への増築が可能となる場合があることは、容易に想到しうることである。
そうすると、複数棟の建物が並列する団地において、刊行物1記載の発明を適用して、複数棟の既存建物を一体化し、上方へ増築することは、当業者が容易になしうることである。
よって、補正発明は、刊行物1記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年8月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1及び請求項5に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 間隔をあけて建てられてなる複数棟の既存建物を、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材により水平方向に接合して1棟の建物とすることを特徴とする団地等建物再生法。」
「【請求項5】 前記複数棟の既存建物を、既存階よりも上方部分で接合することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の団地等建物再生法。」

これらの特定事項によれば、請求項1を引用する請求項5に係る発明は、次のように特定される。
「間隔をあけて建てられてなる複数棟の既存建物を、鉄骨や鉄筋コンクリート等の構造材により水平方向に接合して1棟の建物とする団地等建物再生法であって、
前記複数棟の既存建物を、既存階よりも上方部分で接合することを特徴とする団地等建物再生法。」

2 刊行物の記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物1及びその記載内容は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
前記「第2 3(2)」の対比をふまえて、本願の請求項5に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明は、複数棟の既存建物を、既存階よりも上方部分で接合するものであるから、両者は、次の点でのみ相違する。
[相違点A]
請求項5に係る発明は、既存建物が「団地」の棟であるのに対し、刊行物1記載の発明は、既存建物がこのような建物に限定されていない点。
上記相違点Aについては、前記「第2 3(2)」で相違点1について検討したとおり、刊行物1記載の発明を、既存の団地に適用して、当業者が容易になしうることであり、その効果も予測できることである。
したがって、請求項5に係る発明は、刊行物1記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項5に係る発明は、刊行物1記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2010-12-01 
審決日 2010-12-16 
出願番号 特願2004-160132(P2004-160132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04G)
P 1 8・ 575- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
山本 忠博
発明の名称 団地等建物再生法及び団地等建物  
代理人 清原 義博  
代理人 清原 義博  

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