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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1231935
審判番号 不服2010-4748  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-04 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 平成11年特許願第279903号「吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月10日出願公開、特開2001- 95839〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年9月30日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成22年3月4日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は以下のとおりである(以下、これによって特定される発明を「本願発明」という。)。
「使い捨ておむつ等に用いる吸収性物品であって、
上記吸収性物品は、バックシートとトップシートとの間に吸収体コアが収納されて成り、
上記吸収性物品の両側に、内側縁部が吸収性物品の上面両側を覆う立ち上がり帯材が設けられ、
上記立ち上がり帯材の内側部分は、断面Z字状に折り曲げられて、この断面Z字状の底辺部が吸収性物品のトップシートに接合され、
上記立ち上がり帯材の内側部分の前部と後部の傾斜辺部と上辺部とが吸収性物品のトップシートに対して接合され、
上記立ち上がり帯材の前部と後部との間の接合されない中間部の上辺部全体が吸収体コアの上方にあり、上辺部に弾性帯又は複数本の弾性糸が取付けられて、傾斜辺部とともに上辺部がフラットな面状で立ち上がるようになっていることを特徴とする吸収性物品。」

なお、上記平成22年3月4日付けの補正は、審判請求時になされたものであるが、補正前の請求項1を削除し、請求項2以降を順次繰り上げるものであるから、請求項の削除を目的とするものである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特表平7-504094号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「改良された側方バリヤー効果を有するおむつの如き使い捨て可能な吸収性衛生物品」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「本発明は使い捨て可能な吸収性衛生物品、特におむつに関するもので、この衛生物品は、液体不浸透性の外方支持シート、液体浸透性内方カバーシート、これら2枚のシート間に配置した吸収性パッド、吸収性パッドの二つの長手方向縁の外側で伸張状態で前記支持シートへ取り付けた長手方向弾性部材、衛生物品の長手方向縁に沿ってカバーシートへ取り付けた2枚の弾性化された側部フラップ、及び衛生物品を使用者の腰の回りで閉じる取り付け手段から成る型のものである。」(第2頁右下欄第4?12行)

(イ)「第1の解決策は解剖学上の形又は砂時計の形の衛生物品の場合、フラップの基端縁が狭い股部の吸収性パッドの上方に配置されるとき、両対向フラップの末端縁相互に接近し過ぎる限り、問題を生じ、このことは吸収性パッドがこの股部でも狭い衛生物品の場合耐漏洩性及び尿と便を包み込む作用を制限する。」(第3頁左上第25行?同頁右上欄第4行)

(ウ)「衛生物品は、実質的に衛生物品の長手方向縁に沿ってカバーシートの内面に配置された横方向に離間した2枚の側部フラップを含み、各フラップは基端縁がカバーシートへ接続され末端縁は伸張された長手方向弾性部材を含む。」(第3頁左下欄第5?9行)

(エ)「本発明によれば、各側部フラップは衛生物品の全長にわたり基端縁に沿ってカバーシートへ取り付けられ、前記基端縁が股部を含めて衛生物品の全長にわたり吸収性パッドの上方に位置する。このフラップはその全長にわたり折り返され、その弾性化された末端縁がフラップの全長にわたり実質的にその基端縁の上方にある。このように、各側部フラップの基端縁は吸収性パッドの上方に配置された結果、使用者の肌に可及的に近くに位置する。」(第3頁左下欄第14?22行)

(オ)「第1図は本発明によるおむつの平に置いた状態の図である。
第2図はおむつの端部における第1図のII-IIに沿う拡大部分断面図である。
第3図はおむつの股部における第1図のIII-IIIに沿う拡大部分断面図である。
…(中略)…
第8図と第9図は本発明のおむつの他の実施例の、第2図と第3図に対応する部分断面図である。」(第3頁右下欄第12?23行)

(カ)「第8図、第9図の実施例によれば、先の実施例ではおむつの全幅にわたり延びて吸収性パッド6全体を覆っていた内方シート5の代わりに、パッド6が股部3に於いて持つ幅よりも僅かに大きい一定幅のテープ29が設けられる。…(中略)…二つのフラップ6の各々はここでは単一の片から作られ…(中略)…テープ30はテープの側縁に沿って長手方向線又はストリップ19に沿ってテープ29へ取り付けられ、この線19を側方に越えて延びてフラップ16を形成する。第8図、第9図によれば、テープ30は次いでフラップ16の基端縁18を画成する第1折り目線に沿って外方へ折り返され、次いで折り目20に沿って内方へ折り返さ、テープ30の自由縁はテープ30へ取り付けた弾性部材22上へ折り返されてフラップ16の弾性化された末端縁21を形成する。最後に、第8図に示す如く、フラップ16は横線又はストリップ23、24によりおむつの後部1(及び前部2)に於いて折り返された状態で平に取り付けられ、また第9図によれば、フラップ16は自由であり、故に持ち上げられて股部3の袋25を形成でき、これにも拘らずその末端縁21は実質的にその基端縁18の上方に位置した状態に留まる。」(第5頁左上欄第17行?同右上欄第17行)

(キ)第8図及び第9図には、側部フラップ16を形成するテープ30の内側部分が断面Z字状に折り曲げられ、その断面Z字状の底部となる部分が(長手方向線又はストリップ19に沿って)テープ29に接合され、その内側部分が吸収性衛生物品の上面両側を覆う態様が、第1図II-IIに沿う部分断面図すなわちおむつ後部の断面図である第8図には、テープ30の内側部分がZ字状に折り曲げられた状態で、Z字状の底部、第1折り目線(基端縁)18から第2折り目線20までの傾斜部及び第2折目線20から末端縁21までの上部がテープ29に対して接合された態様が、また、第1図III-IIIに沿う部分断面図すなわち股下部の断面図である第9図には、テープ30が、上記傾斜部と上部が基端縁18から立ち上がっている態様がそれぞれ記載されている。

以上の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「使い捨て可能な吸収性衛生物品であって、
上記吸収性衛生物品は、液体不浸透性の外方支持シートと液体浸透性内方カバーシートとの間に吸収性パッドが配置されてな成り、
上記吸収性衛生物品の長手方向縁に沿って内方カバーシートの内面に配置された横方向に離間した2枚のテープ30で形成された側部フラップ16が設けられ、その内側部分が上記吸収性衛生物品の上面両側を覆い、
上記テープ30の内側部分は、断面Z字状に折り曲げられ、この断面Z字状の底部が吸収性衛生物品の内方カバーシートとしてのテープ29に接合され、
上記側部フラップ16を形成するテープ30の内側部分は、その前部及び後部において、Z字状に折り曲げられた第1折り目線18から第2折り目線20までの傾斜部及び第2折目線20から末端縁21までの上部が吸収性衛生物品の内方カバーシートとしてのテープ29に対して接合され、
上記テープ30の内側部分の末端縁21に弾性部材22が取り付けられて、上記前部と後部との間の接合されていない上部が傾斜部とともに上方に立ち上がるようになっている吸収性衛生物品。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「使い捨て可能な吸収性衛生物品」、「外方支持シート」、「内方カバーシート」及び「テープ29」、「吸収性パッド」、「側部フラップ16を形成するテープ30」、「Z字状の底部」、「第1折り目線18から第2折り目線20までの傾斜部」並びに「第2折目線20から末端縁21までの上部」は、それぞれ本願発明の「使い捨ておむつ等に用いる吸収性物品」、「バックシート」、「トップシート」、「吸収体コア」、「立ち上がり帯材」、「底辺部」、「傾斜辺部」並びに「上辺部」に相当し、
また、引用発明の「弾性部材22」と本願発明の「弾性帯又は複数本の弾性糸」とは、いずれも「弾性部材」である限りにおいて一致している。
してみれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

[一致点]
「使い捨ておむつ等に用いる吸収性物品であって、
上記吸収性物品は、バックシートとトップシートとの間に吸収体コアが収納されて成り、
上記吸収性物品の両側に、内側縁部が吸収性物品の上面両側を覆う立ち上がり帯材が設けられ、
上記立ち上がり帯材の内側部分は、断面Z字状に折り曲げられて、この断面Z字状の底辺部が吸収性物品のトップシートに接合され、
上記立ち上がり帯材の内側部分の前部と後部の傾斜辺部と上辺部とが吸収性物品のトップシートに対して接合され、
上記立ち上がり帯材の前部と後部との間の接合されない中間部の上辺部に弾性部材が取付けられて、傾斜辺部とともに上辺部が立ち上がるようになっていることを特徴とする吸収性物品。」

[相違点1]
本願発明では、立ち上がり帯材の前部と後部との間の接合されない中間部の上辺部全体が吸収体コアの上方にあるのに対し、引用発明では、そのような規定はされていない点。

[相違点2]
本願発明では、上辺部に取付ける弾性部材を、弾性帯又は複数本の弾性糸と特定し、また、傾斜辺部とともに上辺部がフラットな面状で立ち上がるとされているのに対し、引用発明では、弾性部材はそのように特定されていなく、また、立ち上がった際の上部の形状は特定されていない点。

4.判断
そこで上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
吸収性物品の側部フラップは、その本来の目的のために所定の幅を必要とする一方で、引用文献1に、砂時計の形の衛生物品の場合、フラップの基端縁が狭い股部の吸収性パッドの上方に配置されるとき、両対向フラップの末端縁相互に接近し過ぎる限り、問題を生じることが記載(記載事項(イ)参照)されているように、特に股部において、フラップ末端縁が接近しすぎないように配慮する必要があることは技術常識である。よって、引用発明は、側部フラップをZ字状に折り曲げることによって立ち上がり時の高さを確保するとともに、吸収性パッドによる吸収を妨げないように、一対の側部フラップの末端縁相互の間隔は確保されていることは明らかであるが、その場合、折り曲げられた側部フラップの上部がどの程度吸収性パッドの上方に位置するかは、吸収性パッド、側部フラップ及び外方支持シートそれぞれの形状、幅寸法等によって異なるものと認められる。たとえば、吸収性パッドの特に股部における幅が側部フラップの幅に対して充分に広い場合には折り曲げられた側部フラップの上部全体が吸収性パッドの上方にあっても問題はないが、吸収性パッドの上記幅が狭い場合には、吸収性を確保するために側部フラップの上部を側方にずらしてその末端部相互の間隔を確保する必要がある。
すなわち、折り曲げられた側部フラップの上部の股部も含む全体が吸収性パッドの上方に配置されるか、引用文献1に示されたもののように股部では上記上辺部の一部または全体が吸収性パッドの外方に配置されるかは、吸収性物品を構成する吸収性パッド、側部フラップ及び外方支持シートそれぞれの形状、幅寸法等を考慮して、当業者が適宜決定しうる設計的事項であると認められる。
また、本願発明が、立ち上がり帯材の前部と後部との間の接合されない中間部の上辺部全体が吸収体コアの上方にあるとされている事項について検討すると、上記事項については、出願当初の明細書には何ら記載されておらず、添付された【図5】の(a)及び(b)の何れにおいても上辺部9dが吸収体コア4cの上方に位置するように描かれていることに基づくものとされているが、本願明細書では、「【図5】(a)は、【図1】のA-A線及びC-C線に相当する拡大断面図、(b)は、図1のB-B線に相当する拡大断面図である。」とされており、【図1】において、A-A線、B-B線及びC-C線の位置で吸収性物品4の幅方向の寸法は大きく異なっているので、Z字状に折り曲げられた立ち上がり帯材9と吸収体物品4を構成するバックシート4a、トップシート4b及び吸収体コア4cの外側縁からの距離はそれぞれの位置で異なるものと認められるにもかかわらず、【図5】の(a)及び(b)においては、Z字状に折り曲げられた立ち上がり帯材9と吸収体物品4を構成するバックシート4a、トップシート4b及び吸収体コア4cの側端部との幅方向の相対位置は同じであり、この点から、【図5】の(a)及び(b)はZ字状に折り曲げられた立ち上がり帯材9と吸収体コア4cの関係を正確に記載したものということはできず、各位置での立ち上がり帯材の状態を模式的に示すものと解するのが相当であり、【図5】(b)のように股部に相当する中間部で上辺部が吸収体コア4cの上方にあることに格別の技術的意義があることを示すものではない。
よって、引用発明において、上記相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2]について
吸収性物品において、本願発明の立ち上がり帯材の上辺部に相当するフラップの自由縁部に弾性帯又は複数本の弾性糸を取付けてフラットな部分を形成することは、例えば原審で提示した特開平3-90149号公報及び特開昭64-68503号公報等に示されているように本願出願前周知の技術であり、また、引用発明の「弾性部材」として上記弾性帯又は複数本の弾性糸採用した場合に、立ち上がり縁部にフラットな部分が形成されることも当業者が容易に想定しうる事項である。
よって、引用発明において、上記周知の技術を採用し、上記相違点2の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

なお、請求人は、平成22年9月24日付け回答書において、本願発明が、「立ち上がり帯材の中間部の上辺部全体が吸収体コアの上方にある」ことにより、立ち上がり帯材の上辺部のフラットな面状が維持されやすくなり、着用者の肌へのフィット性が良好になって、尿等の横漏れを確実に防止できるようになる点で、顕著な効果を有する旨を主張しているが、本願明細書の段落【0028】には、「上辺部がフラットな面状で立ち上がる」ことに関して、「立ち上がり帯材9の内側部分9aを断面Z字状に折り曲げて、その底辺部9cの全体を吸収性物品4のトップシート4bに接着し、上辺部9dと傾斜辺部9eの前部と後部の各領域F,Gをトップシート4bに対して接着すると共に、上辺部9dの端部9fに弾性帯11a又は弾性糸11aを接着することにより、図5(b)に示すように、使用時には、傾斜辺部9eとともに上辺部9dがフラットな面状で立ち上がるようになる。」と「フラットな面」が、「弾性帯又は複数本の弾性糸」によってもたらされることのみが記載されており、上辺部の位置の規定とフラットな面との関連については、本願明細書に何ら記載されておらず、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、本願出願前周知の技術を勘案すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
上記のように、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-02 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-21 
出願番号 特願平11-279903
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直中尾 奈穂子  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 千馬 隆之
谷治 和文
発明の名称 吸収性物品  
代理人 菅河 忠志  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  

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