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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1232326 |
審判番号 | 不服2008-28312 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-11-06 |
確定日 | 2011-02-17 |
事件の表示 | 特願2003- 54242「基板処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-266075〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年2月28日に特許出願したものであって、平成20年6月3日付けの拒絶理由通知に対して、同年8月4日付けで手続補正がされたが、同年10月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで、特許請求の範囲についての補正前の請求項1を削除することを目的とすること、及び、前記請求項の削除に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とした補正を含む手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1-3に係る発明は、平成20年11月6日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「シリコン基板表面を、不活性ガスと水素の混合ガスの第1プラズマに曝露する第1の工程と、 前記第1の工程の後、前記シリコン基板表面を、前記第1の工程とは異なるガスの第2プラズマにより処理し、酸化処理、窒化処理および酸窒化処理のいずれかを行う第2の工程と、を有し、 前記第1および第2の工程は、同一のプラズマ処理装置内において連続して実行され、 前記第1および第2のプラズマが、マイクロ波アンテナから放射されるマイクロ波により励起され、 前記第1および第2のプラズマは、ラジアルラインスロットアンテナから放射されるマイクロ波により励起されることを特徴とする基板処理方法。」 3.引用例 拒絶の理由で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開昭56-121632号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開2003-37105号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 引用例1(特開昭56-121632号公報) (1a)「本発明はさらにこのクリーニング・エッチさせた表面を大気中にふれさせることなく、その次の工程として雰囲気を変えることにより変えられた雰囲気により決められた被膜を制御された状態で形成することを目的としている。」(第2頁左上欄第13-17行) (1b)「本発明は基板表面の10?30Åの厚さのきわめてうすい酸化物例えばナチュラル・オキサイド、また表面を十分水流をした後に残存する汚物、ハイドロ・カーボン、水酸化物、さらにまたはこれらの局部性による表面張力物理吸着力やバラツキを除去せんとしたもので、スパッタ・エッチ等が荒けずりであれば、最後けずりに相当するものである。」(第2頁左下欄第10-16行) (1c)「以下にその実施例に従って本発明を示す。 実施例1 この実施例は半導体表面をプラズマ・クリーニングするものである。・・・半導体としては、珪素、・・・であってもよい。」(第2頁右下欄第8-19行) (1d)「誘導エネルギ発生源(1)は0.1?100MHzの高周波エネルギであっても、また、1?10GHzのマイクロ波を用いてもよく、またそのエネルギは10?1000Wで十分であった。・・・その後アルゴンを(3)より100?1000cc/分導入した。・・・さらにアルゴンに比べて0.5?50流量%の濃度に水素を混入させ混合気体を作ってもよい。・・・さらに誘導エネルギを加えた後、15?50分例えば10?30分かかるプラズマ中に基板を放置した。・・・さらにこのアルゴン中に水素を0.5?50%例えば5?20%混入されると(23)の如く少ない時間で多くの膜厚がクリーン・エッチされるが、そのエッチ速度は時間に対して大きくはなかった。」(第3頁右上欄第7行-同頁左下欄第18行) (1e)「かくの如くしてエッチされた表面の基板が珪素にあっては最初親水性であったが、このプラズマ・クリーニング・エッチ(PCEという)の後は排水性になり、・・・きわめて最後しあげのクリーニングとして表面に損傷を与えることなく、すぐれたものであることが判明した。」(第3頁右下欄第10-19行) (1f)「実施例2 この実施例は第3図にその本発明方法を使用した装置の一例が示されている。図面において(1)?(13)は第1図のそれと同じである。さらにこの第3図においてはアンモニアガスの導入口(32)および流量計(33)・・・が設けられている。この実施例においてはPCEの後同一反応炉により固相-気相反応、・・・を行わせることを目的としている。固相-気相反応とはかかるPCEの後その基板表面を窒化、酸化または炭化を気体の反応物を(32)より導入した。特にこの反応性気体がアンモニア、窒素においては、活性窒素が(31)の誘導エネルギ源にて活性化して設けられる。この活性窒素は実施例1と同様にして実施されたクリーンな表面反応をし、基板が珪素にあってはプラズマ窒化がなされる。」(第4頁右上欄第15行-同頁左下欄第12行) (1g)「本実施例はプラズマ窒化を実施した結果酸化物の混入していないまた局部的に膜厚が異なったりさらに汚物等の存在による基板の窒化が異なることによるピンホールの発生等を完全に除くことができたことを示している。」(第4頁右下欄第10-13行) 引用例2(特開2003-37105号公報) (2a)「【請求項1】 被処理体が配置される処理容器と、 この処理容器内にマイクロ波励起によりプラズマを生成するプラズマ生成手段と、 前記処理容器内に前記被処理体が搬入されていない状態でプラズマを生成し前記処理容器の内部に絶縁膜を堆積させ、前記処理容器内に前記被処理体を搬入しプラズマを生成し前記被処理体を処理し、前記処理容器から前記被処理体を搬出し前記処理容器の内部に堆積した絶縁膜を除去するクリーニングを行うプロセスの制御を行うプロセス制御手段とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。 【請求項2】 請求項1記載のプラズマ処理装置において、 前記プラズマ生成手段は、前記処理容器内にマイクロ波を供給するラジアルラインアンテナを有することを特徴とするプラズマ処理装置。 【請求項3】 請求項2記載のプラズマ処理装置において、 前記ラジアルラインアンテナは、互いに離間しかつ直交する方向の2つのスロットの対を複数有することを特徴とするプラズマ処理装置。」(【特許請求の範囲】) (2b)「【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマ処理装置及び方法に関し、プラズマを用いて被処理体に対する処理を行うプラズマ処理装置及び方法に関する。 【従来の技術】従来、半導体素子のゲート絶縁膜は、熱酸化法により形成されていた。しかし、この方法では膜厚制御が難しく、また、次世代トランジスタで要求される1nm台の薄いゲート絶縁膜を形成することは困難であった。そこで、膜厚制御が容易で、かつ、上記の膜厚を実現可能なプラズマCVD法が、ゲート絶縁膜の形成に利用され始めている。 プラズマCVD法は、処理容器内にプラズマを生成し、このプラズマを用いて処理容器内のガスを活性化させ、その反応性を利用して薄膜を形成する方法である。このプラズマCVD法による成膜装置の一つに、平行平板電極の間に放電を起こしてプラズマを生成する平行平板形のプラズマ処理装置がある。この平行平板形のプラズマ処理装置に関し、処理容器から離脱した汚染物質が被処理体であるウェーハの表面に付着することを防止するため、ウェーハ処理を行う前に処理容器の内表面に絶縁膜を堆積しコーティングする技術が提案されている。この技術をプリ・デポジションと呼ぶ。 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、平行平板形のプラズマ処理装置では、プラズマの電子温度が高いため、プリ・デポジションで緻密かつ均一な絶縁膜を形成することができない。このため、処理容器の内表面に形成された絶縁膜は密着性が悪く、剥離しやすいという問題があった。また、平行平板形のプラズマ処理装置では、プラズマのイオンエネルギーが低いため、プリ・デポジションで絶縁膜を堆積するのに長時間を要するという問題があった。本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、プリ・デポジションで処理容器内に剥離しにくい絶縁膜を形成することにある。また、他の目的は、プリ・デポジションに要する時間を短縮することにある。 【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、被処理体が配置される処理容器と、この処理容器内にマイクロ波励起によりプラズマを生成するプラズマ生成手段と、処理容器内に被処理体が搬入されていない状態でプラズマを生成し処理容器の内部に絶縁膜を堆積させ,処理容器内に被処理体を搬入しプラズマを生成し被処理体を処理し,処理容器から被処理体を搬出し処理容器の内部に堆積した絶縁膜を除去するクリーニングを行うプロセスの制御を行うプロセス制御手段とを備えたことを特徴とする。」(【0001】-【0005】) (2c)「ここで、プラズマ生成手段は、処理容器内にマイクロ波を供給するラジアルラインアンテナを有していてもよい。また、ラジアルラインアンテナは、互いに離間しかつ直交する方向の2つのスロットの対を複数有していてもよい。このようなラジアルラインアンテナを用いることにより、プラズマの電子温度をより一層の低下させることができる。」(【0006】) (2d)「以上では、処理条件等について具体例を示したが、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。また、本発明のプラズマ処理装置が成膜装置に適用される例を示したが、エッチング装置やアッシング装置等にも適用可能である。」(【0062】) 4.対比 上記の引用例1の記載事項(1a)?(1g)を総合勘案すると、引用例1には、実施例2として、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「珪素である半導体表面を、アルゴン中に水素を0.5?50%例えば5?20%混入した混合気体で、プラズマ・クリーニングする工程と、 前記プラズマ・クリーニングする工程の後、前記珪素である半導体表面を、アンモニアガスでプラズマ窒化する工程と、を有し、 前記プラズマ・クリーニングする工程およびプラズマ窒化する工程は、同一反応炉により、クリーニング・エッチさせた表面を大気中にふれさせることなく、その次の工程として雰囲気を変えることにより変えられた雰囲気により決められた被膜を制御された状態で形成され、 前記プラズマ・クリーニングおよび前記プラズマ窒化は、マイクロ波を用いてもよい、 基板処理方法。」 そこで、本願発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「珪素である半導体表面」、「アルゴン中に水素を0.5?50%例えば5?20%混入した混合気体」、「プラズマ・クリーニングする工程」、「アンモニアガス」、「プラズマ窒化」、「反応炉」は、それぞれ順に、本願発明1の「シリコン基板表面」、「不活性ガスと水素の混合ガス」、「第1プラズマに曝露する第1の工程」、「前記第1の工程とは異なるガス」、「窒化処理」、「プラズマ処理装置」に相当するといえる。 そうすると、本願発明1と引用例1発明は、 「シリコン基板表面を、不活性ガスと水素の混合ガスの第1プラズマに曝露する第1の工程と、 前記第1の工程の後、前記シリコン基板表面を、前記第1の工程とは異なるガスの第2プラズマにより処理し、酸化処理、窒化処理および酸窒化処理のいずれかを行う第2の工程と、を有し、 前記第1および第2の工程は、同一のプラズマ処理装置内において連続して実行され、 前記第1および第2のプラズマが、マイクロ波により励起される基板処理方法。」 の点で一致し、次の点で相違するといえる。 相違点1:本願発明1のマイクロ波が「ラジアルラインスロットアンテナ」から放射されるのに対して、引用例1には「ラジアルラインスロットアンテナ」について記載されていない点。 5.判断 ・相違点1について 上記の引用例2の記載事項(2a)-(2d)を総合勘案すると、引用例2には、 半導体素子のゲート絶縁膜を、処理容器内にプラズマを生成し、このプラズマを用いて処理容器内のガスを活性化させ、その反応性を利用して薄膜を形成する方法であるプラズマCVD法で形成する技術分野において、 被処理体が配置される処理容器と、この処理容器内にマイクロ波励起によりプラズマを生成するプラズマ生成手段と、処理容器内に被処理体が搬入されていない状態でプラズマを生成し処理容器の内部に絶縁膜を堆積させ,処理容器内に被処理体を搬入しプラズマを生成し被処理体を処理し,処理容器から被処理体を搬出し処理容器の内部に堆積した絶縁膜を除去するクリーニングを行うプロセスの制御を行うプロセス制御手段とを備えたプラズマ処理装置の、前記プラズマ生成手段として、前記処理容器内にマイクロ波を供給する互いに離間しかつ直交する方向の2つのスロットの対を複数有するラジアルラインアンテナが用いられており、 このような、互いに離間しかつ直交する方向の2つのスロットの対を複数有するラジアルラインアンテナを用いることにより、プラズマの電子温度をより一層の低下させることができること、及び、 上記成膜装置に適用される例が示されているプラズマ処理装置が、エッチング装置やアッシング装置等にも適用可能であることが、 記載されているものと認められる。 そうすると、引用例1発明と、引用例2に記載された発明は、いずれも、半導体素子の製造に用いられる、マイクロ波によって励起されるプラズマを用いた基板処理方法に属する発明である点で、技術分野を共通とするものであり、また、引用例2の「互いに離間しかつ直交する方向の2つのスロットの対を複数有するラジアルラインアンテナ」は、本願発明1の「ラジアルラインスロットアンテナ」に相当するものと認められるところ、上記摘記(2d)の記載には、プラズマ生成手段として、処理容器内にマイクロ波を供給するラジアルラインアンテナを用いるプラズマ処理装置は、成膜装置の他にエッチング装置にも適用可能であることが示されているのであるから、引用例1には、マイクロ波を放射するアンテナとして、「ラジアルラインスロットアンテナ」を使用することは記載されていないとしても、共通する技術分野の属する発明が記載された引用例2において、マイクロ波を放射するアンテナとして、「ラジアルラインスロットアンテナ」を使用することが記載されており、また、引用例2には、該「ラジアルラインスロットアンテナ」から放射されたマイクロ波によって励起されたプラズマによって、成膜とエッチングを行うことが示されているのであるから、引用例1発明において、マイクロ波を放射する手段として、「ラジアルラインスロットアンテナ」を用いることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。 そして、引用例1発明に「ラジアルラインスロットアンテナ」を組み合わせることを妨げる格別の理由は認められず、また、両者を組み合わせたことによる効果は当業者が予測する程度のものと認められる。 したがって、引用例1発明において、相違点1について本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-13 |
結審通知日 | 2010-12-14 |
審決日 | 2010-12-28 |
出願番号 | 特願2003-54242(P2003-54242) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 越本 秀幸、今井 淳一 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
田中 永一 加藤 浩一 |
発明の名称 | 基板処理方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |