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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1232348
審判番号 不服2009-17599  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-18 
確定日 2011-02-17 
事件の表示 特願2004-93008「床仕上材」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開,特開2005-281970〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は,平成16年3月26日の出願であって,平成21年6月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月18日に審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成22年9月29日付けで拒絶の理由を通知したところ,同年11月23日付けで意見書が提出されるとともに,同日に手続補正がなされた。

第2.本願発明
本願発明は,平成22年11月23日付け手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
熱可塑性樹脂層に,厚さが0.6mm?2.0mm,密度が125?145Kg/m^(3)であり,平滑で通気性を有する天然繊維または合繊繊維からなる不織布を直接積層一体化し,前記不織布を最下層とし,最下層が平滑であって,接着施工後のフクレを防止することを特徴とするフクレ防止性の熱可塑性樹脂製床仕上材」(以下,「本願発明」という。)
なお,請求項1の記載中に,「合繊繊維」とあるのは,「合成繊維」の誤記と認められる。

第3.引用刊行物
刊行物1:実願昭59-184840号(実開昭61-98027号)
のマイクロフィルム
刊行物2:特開2001-182306号公報
刊行物3:特開平8-114023号公報
刊行物4:特開2003-90121号公報

1.刊行物1
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に日本国内において頒布された上記刊行物1には,「床材の裏打材」の従来の技術として,次の事項が記載されている。
(1a)「(産業上の利用分野)
・・・床面に接着剤を使用して貼り付けられる床材の裏打材に関する。
(従来の技術)
周知のように,上記種類の床材は,第2図に例示したように,軟質PVCなどの合成樹脂よりなる表層シート1の裏面に裏打材2を貼り付けてなる。
従来,上記裏打材2には不織布のような荒目の繊維層が単独で使用されていた。この種の裏打材2は優れた通気性を備えているので床材を床面に貼り付けても気泡の噛み込みによる所謂膨れを生じにくい。・・・」(1頁11行?末行)
(1b)第2図には,上記(1a)の記載事項からみて,床材において,通気性を有する不織布のような荒目の繊維層が,最下層となっていることが,記載されている。

そして,「繊維層」は,上記(1a)の「・・・床材を床面に貼り付けて・・・」という,平面である床面への貼り付けについての記載,及び,第2図からみて,「平滑」であることは自明であって,繊維層であるところの「最下層」が,「平滑である」ことも自明であるから,
以上の記載事項及び当業者の技術常識からみて,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。

「軟質PVCなどの合成樹脂よりなる表層シートに,平滑で通気性を有する不織布のような荒目の繊維層を貼り付け,前記繊維層を最下層とし,最下層が平滑であって,床面に貼り付けても気泡の噛み込みによる膨れを生じにくい床材」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

2.刊行物2
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に日本国内において頒布された上記刊行物2には,「床仕上げ材」について,次の記載事項がある。
(2a)「【0021】・・・発泡層10の裏面積層される繊維層11としては,織布あるいは不織布層であり,特に不織布層であることが好ましく,その厚みも0.1?1.0mm程度のものであれば良い。」

3.刊行物3
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に日本国内において頒布された上記刊行物3には,「衝撃音吸収性床材」について,次の記載事項がある。
(3a)「【0021】合成樹脂表面層の下部に位置する不織布は,例えばポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,アクリル,ポリエステルなどの繊維から構成される不織布であり,・・・不織布は,・・・密度が0.10?0.18g/cm^(3) のものが好ましい。・・・」

4.刊行物4
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に日本国内において頒布された上記刊行物4には,「木質床材,木質床材構造体及びその施工方法」について,次の記載事項がある。
(4a)「【0010】・・・「床板」は,フローリング用の床材であればよく,その材質や形状等を問わない。・・・不織布を面ファスナの一面として使用する場合は,0.05?0.5g/cm^(3)程度の密度の短繊維状不織布を例示することができる。・・・」
(4b)「【0017】・・・不織布層122は,厚さが約1mm,密度が約0.1g/cm^(3)のフェルト状合成繊維からなる不織布からなる。・・・」

第4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明を対比すると,
刊行物1記載の発明の「軟質PVCなどの合成樹脂よりなる表層シート」が本願発明の「熱可塑性樹脂層」に相当し,以下同様に,「不織布のような荒目の繊維層」が「不織布」に,「(表層シートに・・・繊維層を)貼り付け」が「(熱可塑性樹脂層に・・・不織布を)直接積層一体化し」に,「床面に貼り付けても気泡の噛み込みによる膨れを生じにくい」が「接着施工後のフクレを防止する」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「床材」は,軟質PVCなどの合成樹脂よりなる表層シートからなり,かつ,床面に貼り付けても気泡の噛み込みによる膨れを生じにくいものであるから,本願発明の「フクレ防止性の熱可塑性樹脂製床仕上材」に相当する。

そうすると,両者は,
「熱可塑性樹脂層に,平滑で通気性を有する不織布を直接積層一体化し,前記不織布を最下層とし,最下層が平滑であって,接着施工後のフクレを防止するフクレ防止性の熱可塑性樹脂製床仕上材」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点)
不織布が,本願発明では,「天然繊維または合繊繊維からなる」ものであって,「厚さが0.6mm?2.0mm,密度が125?145Kg/m^(3)」であるのに対して,刊行物1記載の発明では,その材質,厚さ及び密度を特に規定していない点。

第5.判断
上記相違点について検討する。
床仕上材に用いられる不織布の材質,厚さ及び密度について検討すると,
刊行物3及び4には,材質について,「ポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,アクリル,ポリエステルなどの繊維から構成される」及び「合成繊維からなる」と記載され(上記(3a)及び(4b)の記載事項を参照。),
刊行物2及び4には,厚さについて,「0.1?1.0mm程度」及び「約1mm」と記載され(上記(2a)及び(4b)の記載事項を参照。),
また,刊行物3及び4には,密度について,「0.10?0.18g/cm^(3) のものが好ましい」,「0.05?0.5g/cm^(3)程度」及び「約0.1g/cm^(3)」と記載されており(上記(3a),(4a)及び(4b)の記載事項を参照。),
相違点に係る本願発明の,材質が「天然繊維または合繊繊維」であり,厚さが「0.6mm?2.0mm」であり,密度が「125?145Kg/m^(3)」であることは,床仕上材の不織布において普通に用いられているものである。
そして,本願発明の不織布の材質,厚さ及び密度について検討しても,不織布の通気性,耐動荷重性及び施工性は,その材質,厚さ及び密度によって決定されるものと推測されるところ(例えば,各種天然繊維及び各種合成繊維は,それぞれ材質としての密度が異なるので,不織布全体としての密度を決定しても,繊維の細さ,つまりは空隙率が異なるはずであるし,同様に,耐動荷重性,施工性も異なるはずである。),本願発明の厚さ及び密度は,数ある天然繊維及び合成繊維の中から,材質を特定しないまま設定されたものであって,その数値範囲に臨界的な意義を見出せないものである。
そうすると,刊行物1記載の発明の不織布について,フクレ防止の他,耐動荷重性及び施工性の向上をなし得るように,不織布の材質の選択と,その材質にあわせた厚さ及び密度の最適化をすることは,当業者が当然に行うべき設計的事項であり,この選択及び最適化に際して,上記普通に用いられている材質,厚さ及び密度を選択し,上記相違点に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明が奏する効果は,刊行物1?4記載の発明から予測できる範囲内のものである。

したがって,本願発明は,刊行物1?4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-14 
結審通知日 2010-12-16 
審決日 2011-01-06 
出願番号 特願2004-93008(P2004-93008)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
山本 忠博
発明の名称 床仕上材  

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