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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1232356
審判番号 不服2009-20239  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-21 
確定日 2011-02-17 
事件の表示 特願2009- 3366「半導体デバイス用部材、並びに半導体デバイス用部材形成液及び半導体デバイス用部材の製造方法、並びに、それを用いた半導体発光デバイス、半導体デバイス用部材形成液、及び蛍光体組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月14日出願公開、特開2009-105432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年8月22日(優先権主張 平成18年8月22日)に出願した特願2007-216452号(以下「原出願」という。)の一部を平成21年1月9日に新たな特許出願としたものであって、平成21年4月13日に手続補正がなされたが、同年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成21年10月21日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であり、
メタロキサン骨格を有し、ケイ素含有率が10重量%以上、47重量%以下である
ことを特徴とする半導体発光デバイス封止用部材。
加熱重量減測定方法(I)
前記半導体発光デバイス封止用部材の破砕片10mgを用いて、熱重量・示差熱測定装置により、空気200ml/分流通下、昇温速度10℃/分で35℃から500℃まで加熱し、重量減の測定を行う。
密着性評価方法(II)
(1)直径9mm、凹部の深さ1mmの銀メッキ表面銅製カップに半導体発光デバイス封止用部材形成液を滴下し、所定の硬化条件にて硬化させて半導体発光デバイス封止用部材を得る。
(2)得られた半導体発光デバイス封止用部材を温度85℃、湿度85%の雰囲気下で20時間吸湿させる。
(3)吸湿後の半導体発光デバイス封止用部材を室温より260℃まで50秒で昇温後、260℃で10秒間保持する。
(4)昇温後の半導体発光デバイス封止用部材を室温まで冷却し、目視及び顕微鏡観察により半導体発光デバイス封止用部材の前記銅製カップからの剥離の有無を観察する。
(5)前記半導体発光デバイス封止用部材10個につき、それぞれ、前記(2)、(3)及び(4)の操作を実施し、前記半導体発光デバイス封止用部材の剥離率を求める。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の(1)及び(2)のとおりである。

(1)本願発明は、下記アないしエの刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ア 特開2004-040031号公報
イ 国際公開第2006/080338号
ウ 特開2005-159276号公報
エ 特開2003-179270号公報

(2)本願発明は明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第第6項に規定する要件を満たしていない。

4 当審の判断
(1)特許法第36条第6項に規定する要件について
ア 本願明細書の記載
本願明細書には、以下の記載がある。

(ア)「【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、特に発光ダイオード(light emitting diode:以下適宜「LED」と略する。)や半導体レーザー等の半導体発光デバイスにおいては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体デバイス用部材)によって封止したものが一般的である。
【0003】
この半導体デバイス用部材としては、例えばエポキシ樹脂が用いられている。また、この封止樹脂中に蛍光体などの顔料を含有させることによって、半導体発光素子からの発光波長を変換するものなどが知られている。
【0004】
しかし、エポキシ樹脂は吸湿性が高いので、半導体デバイスを長時間使用した際に生ずる半導体発光素子からの熱によってクラックが生じたり、また水分の浸入により蛍光体や発光素子が劣化するなどの課題があった。
【0005】
また近年、発光波長の短波長化に伴いエポキシ樹脂が劣化して着色するために、長時間の点灯及び高出力での使用においては半導体デバイスの輝度が著しく低下するという課題もあった。
【0006】
これらの課題に対して、エポキシ樹脂の代替品として耐熱性、紫外耐光性に優れるシリコーン樹脂が使用されるようになった。しかし、シリコーン樹脂は、密着性、透明性、耐候性はいまだ不十分であった。これに対し、耐熱性、紫外耐光性に優れた材料として、無機系封止材やこれを用いた半導体デバイスが提案されている(例えば特許文献1?6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3275308号公報
【特許文献2】特開2003-197976号公報
【特許文献3】特開2004-231947号公報
【特許文献4】特開2002-33517号公報
【特許文献5】特開2002-203989号公報
【特許文献6】特願2006-047274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、溶融ガラス等の無機材料は、取り扱い温度が350℃以上と高く、発光素子にダメージを与えるため、これを無機系封止材に用いることは工業的に実現されていなかった。
また、ゾルゲル法により製造されるガラスでは、半導体デバイス用部材として成形する際の硬化収縮によるクラックの発生及び剥離といった成膜性の課題があり、長期に亘り厚膜状態で安定したものは未だ得られていなかった。
【0009】
また、ゾルゲル法による製造方法は反応性が高すぎるため濃縮が困難であり、溶剤を多用することが多かった。溶剤を多用した場合にはゾル中の固形分量が少なくなるため、半導体デバイス上にゾルを塗布して半導体デバイス用部材を形成する際には、所定の厚みとなるまで繰り返し塗布することになり、生産効率が悪い。また、溶剤揮発を伴いつつ硬化するので、硬化した半導体デバイス用部材に内部応力が発生しやすくクラックや剥離が起きやすいほか、環境負荷の面でも好ましくない。
【0010】
さらに、これらの無機系封止剤は非常に硬くもろいため、成膜性が不十分であり、半導体デバイスに用いられる熱膨張係数の異なる各部材の熱膨張・熱収縮に追随できず、使用中に剥離やクラック、断線を多発する課題があり、耐リフロー性や耐温度サイクル性に優れるものも未だ得られていなかった。なお、ここでリフローとは、はんだペーストを基板に印刷し、その上に部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法のことをいう。そして、耐リフロー性とは、最高温度260℃、10秒間の熱衝撃に耐え得る性質のことを指す。
【0011】
例えば、特許文献1や特許文献2には、4官能のアルコキシシランを用いてガラス材料を形成する技術が記載されている。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術により得られる無機材料に関していえば、4官能のアルコキシシランの加水分解液を半導体発光デバイスに塗布し、半導体発光デバイスの性能を損なわない150℃程度のマイルドな硬化温度で数時間程度硬化していた。この場合、得られるガラス材料は、通常十数重量%以上のシラノールを含有する不完全なガラス体となっていた。したがって、特許文献1や特許文献2に記載の技術からは、溶融法ガラスのように真にシロキサン結合のみからなるガラス体を得ることはできなかった。
【0012】
これは、一般の有機樹脂と異なり、特許文献1や特許文献2で用いた無機材料は架橋点が非常に多いために、構造の束縛が大きく、反応性末端が孤立して縮合することが出来ないためと推察される。このようなガラス体は緻密ではなく、また、その表面はシリカゲル同様に非常に親水性が高い状態となるため、十分な封止能力を持たない。
【0013】
また、一般に、250℃以上の加熱により、このような反応しにくいシラノールはごく僅かに減少をはじめ、通常350℃以上、好ましくは400℃以上の高温で焼成すればシラノールの量を積極的に減少させることが出来る。しかし、これを利用して特許文献1や特許文献2に記載の無機材料からシラノールを除去しようとしたとしても、半導体デバイスの耐熱温度は通常260℃以下であるため、実現は困難である。
【0014】
さらに、4官能のアルコキシシランは、脱水・脱アルコール縮合時に脱離する成分量が多いため、本質的に硬化時の収縮率が大きい。しかも、4官能のアルコキシシランは反応性が高いために、乾燥工程にて、希釈溶媒の一部が蒸発した表面部分から硬化が始まり、溶媒を包含した硬いゲル体を形成してから内部の溶媒を放出する傾向があるので、溶媒蒸発に伴う硬化時及び硬化後の収縮量も大きくなる。このため、特許文献1や特許文献2に記載の無機材料では、結果的に収縮による大きな内部応力が発生しクラックが多発する。したがって、4官能アルコキシシランのみを原料として半導体デバイス用部材として有用な大きなバルク体や厚膜を得ることは困難であった。
【0015】
また、例えば、特許文献3には、有機基を含有するシラン化合物を原料とし、ゾルゲル法により3次元状の蛍光体層を寸法精度良く作製する技術が記載されている。しかしながら、特許文献3には架橋度に対する詳細な記載は無く、また、特許文献3記載の無機材料を得るためには高濃度の蛍光体粒子を必須とし、実質的にはこれが骨材として働き3次元の形状を保つために、無機材料中に蛍光体を含まない場合、透明でクラックの無い厚膜状のガラス状塗布物を得ることは出来なかった。
【0016】
さらに、特許文献3記載の技術では、触媒として酢酸が使用されているが、得られる無機材料から酢酸が除去されていないために、酢酸が半導体発光素子に悪影響を及ぼす。また、特許文献3記載の無機材料を形成する場合には、硬化に400℃の高温を要するため、半導体デバイスと共に加熱することは実質的に不可能で、かつ高温における無理な縮合によりその構造に歪みがたまり、クラック発生が抑止されていなかった。
【0017】
また、例えば、特許文献4には、シリカ又はシロキサンを骨格とする無機物ゾルに無機光散乱剤を混合して得た無機コーティング剤を塗布して半導体デバイス用部材を得る技術が記載されている。しかしながら、特許文献4記載の無機材料には無機光散乱剤が必須であり、さらに、特許文献4には原料及び製造方法の詳細な記載が無く、正確に技術を再現することは不可能である。
【0018】
さらに、例えば、特許文献5には、ゾルゲル法ガラスを塗布して半導体デバイス用部材を得る技術が記載されている。しかしながら、特許文献3と同様、特許文献5記載の無機材料を得るには蛍光体が必須である。また、この蛍光体が骨材として働き、得られる無機材料は厚膜となっているが、膜厚100μmを超えるものではない。さらに、特許文献5には原料や製法が記載されておらず、一般的なアルコキシシランを使用して安定に技術を再現することは困難である。
【0019】
また、本発明者らは、特許文献6で、上記課題を解決しうる、特定のケイ素含有半導体デバイス用部材を開示した。しかしながら、放熱が大きい半導体パワーデバイスに用いる場合は、耐光性、成膜性、密着性を維持しつつ、耐熱安定性のレベルをさらに上げることが望ましかった。また、半導体デバイス用部材の製造工程における低沸不純物の揮発を抑え、硬化物重量歩留まりを向上させることも望まれていた。
【0020】
以上の背景から、耐熱性、耐光性、成膜性、密着性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる半導体デバイス用部材が求められていた。
【0021】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、耐熱性、耐光性、成膜性、密着性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる、新規な半導体デバイス用部材、並びに、半導体デバイス用部材形成液及び半導体デバイス用部材の製造方法、並びに、それを用いた半導体発光デバイス、半導体デバイス用部材形成液、及び蛍光体組成物を提供することにある。」

(イ)「【0038】
[1-1]加熱重量減
加熱重量減は、本発明の半導体デバイス用部材の高度な耐熱性を評価する指標であり、後述する加熱重量減測定方法(I)により測定される。
本発明の半導体デバイス用部材の加熱重量減は、50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。また、下限に制限は無いが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上である(特性(1))。加熱重量減が大きすぎると、半導体デバイスの長期間の使用により収縮が起こり、初期の特性を維持できなくなる可能性がある。加熱重量減が大きくなる要因は、例えば、半導体デバイス用部材に含まれる揮発性低分子量成分が多いこと、半導体デバイス用部材を形成する主鎖成分が加熱により分解切断しやすいことなどが考えられる。また、加熱重量減が小さいと半導体デバイス用部材は熱安定性に優れるものとなるが、このような半導体デバイス用部材は一般に多官能のSi成分を多く含んでおり、硬い膜となることが多い。そのため、加熱重量減が小さすぎる半導体デバイス用部材は、耐ヒートサイクル性、耐リフロー性などに劣り、半導体デバイス用部材として好ましくない。」、
「【0041】
[1-2]密着性
密着性評価剥離率は、本発明の半導体デバイス用部材の密着性を評価する指標であり、後述する密着性評価方法(II)により測定される。
本発明の半導体デバイス用部材の剥離率は、通常30%以下、好ましくは20%以下、
更に好ましくは10%以下である(特性(2))。中でも、0%であることが最も好ましい。剥離率が大きすぎると、基板や枠材等に対する半導体デバイス用部材の密着性及び化学的安定性が劣り、温度衝撃や熱・光・電気化学的反応により封止剤が変性・収縮しやすくなる可能性がある。そのため、半導体デバイス用部材が基板や枠材等から剥離し、半導体デバイスの断線等を生じることがある。また、特に半導体発光デバイスにおいては電極部分やリフレクタ表面には銀素材が使用されることがあるが、密着性が低下すると、この表面から半導体デバイス用部材が剥離し、半導体発光デバイスの断線や不点灯・輝度低下を誘起することがある。」

イ 本願発明の技術上の意義
(ア)上記ア(ア)によれば、本願発明の背景技術に関する状況は次のようなものとされていることが認められる。
すなわち、半導体発光デバイスにおいては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体デバイス用部材)によって封止したものが一般的であり、例えばエポキシ樹脂が用いられているが、熱によってクラックが生じたり、また水分の浸入により蛍光体や発光素子が劣化する、また近年、発光波長の短波長化に伴いエポキシ樹脂が劣化して着色するなどの課題があり、これらの課題に対して、エポキシ樹脂の代替品として耐熱性、紫外耐光性に優れるシリコーン樹脂が使用されるようになったが、密着性、透明性、耐候性はいまだ不十分であった。また、耐熱性、紫外耐光性に優れた材料として、無機系封止材が提案されていたが、半導体デバイス用部材として成形する際の硬化収縮によるクラックの発生及び剥離といった成膜性の課題や、半導体デバイスに用いられる熱膨張係数の異なる各部材の熱膨張・熱収縮に追随できず、使用中に剥離やクラック、断線を多発する課題があり、耐熱性、耐光性、成膜性、密着性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる半導体デバイス用部材が求められていた。
本願発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性、耐光性、成膜性、密着性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる、新規な半導体デバイス用部材等を提供することを目的とするものである。

(イ)また、上記ア(イ)によれば、加熱重量減は、加熱重量減測定方法(I)により測定される、半導体デバイス用部材の高度な耐熱性を評価する指標であって、加熱重量減が大きすぎると、半導体デバイスの長期間の使用により収縮が起こり、初期の特性を維持できなくなる可能性があり、本願発明の半導体デバイス用部材の加熱重量減は、50重量%以下であるとされること、密着性評価剥離率は、密着性評価方法(II)により測定される、半導体デバイス用部材の密着性を評価する指標であって、剥離率が大きすぎると、基板や枠材等に対する半導体デバイス用部材の密着性及び化学的安定性が劣り、温度衝撃や熱・光・電気化学的反応により封止剤が変性・収縮しやすくなる可能性があり、本願発明の半導体デバイス用部材の剥離率は、通常30%以下であるとされることが認められる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、本願明細書においては、耐熱性、耐光性、成膜性、密着性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる半導体デバイス用部材が求められていたとの課題があったところ、加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であれば、上記課題に示されるような、半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価されているものと解される。
すなわち、本願発明における、「下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であり」との特定は、半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価できる加熱重量減ないし剥離率の範囲について、特定の測定方法ないし評価方法に基づく数値として定めたものと解される。

ウ 技術的思想としての本願発明
(ア)前記第2のとおり、本願発明は、「半導体発光デバイス封止用部材」という物に係る発明であって、上記イ(ウ)のとおり、本願発明において特定される範囲の加熱重量減ないし剥離率であれば半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価できるとされるところである。
そして、上記イ(ア)のように、半導体デバイス用部材としては種々のものがあったが、本願発明が、耐熱性その他の特性に優れた新規な半導体デバイス用部材を提供するものであることに照らせば、同(ウ)のような、耐熱性その他の特性に優れた半導体デバイス用部材が求められていたとの課題を解決し、本願発明において特定される範囲の加熱重量減ないし剥離率である半導体発光デバイス封止用部材を提供するための手段、すなわち課題解決手段は、かかる加熱重量減ないし剥離率をもたらすに至る材料、構造など、従来のものにみられない半導体発光デバイス封止用部材自体について施された創意、工夫をいうものと解され、本願発明にあっては、発明、すなわち技術的思想が明確であるというためには、課題解決手段がどのようなものであるのかが理解できなければならないものと考えられる。

(イ)しかるに、上記イ(ウ)のとおり、本願発明における、「下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であり」との特定は、半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価できる加熱重量減ないし剥離率の範囲について、特定の測定方法ないし評価方法に基づく数値として定めたものであって、この特定自体、半導体発光デバイス封止用部材の材料、構造など、半導体発光デバイス封止用部材自体について施された創意、工夫を特定するものということはできない。
そして、本願発明において、半導体発光デバイス封止用部材自体については、「メタロキサン骨格を有し、ケイ素含有率が10重量%以上、47重量%以下である」と特定されるにとどまるところ、前記ア(ア)(【0008】?【0019】を参照。)によれば、かかる特定によって従来の技術と区別できるものとは認められず、請求項1の記載によっては、上記加熱重量減ないし剥離率をもたらすに至る材料、構造など、上記(ア)の課題解決手段が何であるのか全く不明であって、技術的思想として本願発明がどのようなものであるのか不明といわざるを得ない。

エ 小括
以上の検討によれば、本願の特許請求の範囲の記載では、特許を受けようとする発明が明確であるといえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第29条第2項の規定について
上記のとおり、本願の特許請求の範囲の記載では、特許を受けようとする発明が明確であるといえないが、上記(1)イ(ウ)のとおり、本願発明における、「下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であり」との特定は、半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価できる加熱重量減ないし剥離率の範囲について、特定の測定方法ないし評価方法に基づく数値として定めたものと解することができ、本願発明はかかる技術上の意義を有するものと解することも可能であるので、念のため、この見地に立って特許法第29条第2項の規定についての検討を以下に行う。

ア 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用した、原出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2006/080338号(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

(ア)「[0006] 六弗化硫黄ガス以外の物質によって半導体装置の高絶縁性を保つために、半導体素子を絶縁性材料によって厚く覆うことが知られている。優れた絶縁性を有する従来の材料としては、シリコンゴムやエポキシ樹脂が知られている(非特許文献2を参照)。シリコンゴムは、シロキサン結合(Si-O-Si結合)の線状構造を有するポリメチルフェニルシロキサンを含む合成高分子化合物である。これらの合成高分子化合物の被覆体によって半導体素子(半導体チップ)全体を覆うと、温度が150℃以下においては、高い絶縁性を保ち、且つ、耐電圧を高くすることができる。
[0007] 上記のポリメチルフェニルシロキサンは、耐熱性がそれほど高くないが、Siパワー半導体素子のように、接合温度が150℃以下の範囲で使用する半導体装置の場合には、高耐電圧を実現できる。しかし、ワイドギャップ半導体材料のSiCを用いる半導体素子のように、200℃以上の高温で使用する場合には、耐熱性が十分とは言えない。ポリメチルフェニルシロキサンの被覆体は、使用中にSiC半導体素子の温度が200℃以上になると、柔軟性が乏しくなり、また、空気中で230℃以上になると、ガラス化して完全に堅くなってしまう。そのため、SiC半導体素子の温度が室温に戻ると、ポリメチルフェニルシロキサンの被覆体の内部に多数のクラックが発生する。また、ポリメチルフェニルシロキサンによって被覆された素子を、高温で長時間、六弗化硫黄ガスなどの不活性ガス中で動作させると、重量の減少が生じて、素子表面近傍においてボイドやクラックが発生する。これは、ポリメチルフェニルシロキサンの側鎖のメチル基やフェニル基が分解して蒸発するためと、推察される。ボイドやクラックが発生すると、素子の表面保護が不完全となり、リーク電流が増大する。更に、クラック発生時に、素子のパッシベーション膜を損傷することがあり、その結果として、リーク電流が大幅に増大して、半導体素子の破壊に至る場合もある。以上のように、ポリメチルフェニルシロキサンは、耐熱性が低く、また、高温では高電界に耐えることができず、耐電圧性が良くない、という欠点がある。
[0008] エポキシ樹脂も、同様であり、高温では柔軟性が乏しくなり、200℃以上になるとガラス化して堅くなってしまう。そのため、SiC半導体素子の温度が通電時の高温状態からオフ時の室温状態に戻ると、エポキシ樹脂の内部に多数のクラックが発生し、高電界には耐えることができず、耐電圧性は良くない。
[0009] また、シリコンゴムやエポキシ樹脂は熱伝導率が低いので、これらによって半導体素子を被覆しても、半導体素子から発生する熱を十分に放散できない。熱は、もっぱら、支持体93のみを経由して放散されるので、半導体素子は、高温になると、場合によっては、熱破壊してしまう。特に、半導体素子の接合部と支持体93との距離が、樹脂やゴムに接触している素子表面と接合部との距離よりも、かなり大きい場合には、半導体素子から発生する熱の放散が悪化し、素子の温度が著しく上昇する。支持体の熱伝導率や熱容量が小さい場合には、支持体を介する熱放散も悪化するので、特に深刻になる。
[0010] 本発明は、半導体素子などを覆うのに適した高耐熱合成高分子化合物を、提供すること、及び、高耐熱・高耐電圧の半導体装置を提供すること、を目的としている。」

(イ)「[0011] (1)本発明の高耐熱合成高分子化合物は、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合(Si-O-Si結合)によって連結してなる第3有機珪素ポリマーを、付加反応により生成される共有結合によって、複数連結して、構成されており、三次元の立体構造を有している。そして、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、2万?80万の分子量を有している。」

(ウ)「[0031] シロキサン結合による橋かけ構造を有する第1有機珪素ポリマーは、耐熱性に優れているが、粘度が大きく、硬化後の柔軟性も非常に乏しいので、厚塗りが困難であり、耐電圧性が乏しい。しかし、本発明では、第1有機珪素ポリマーと、シロキサン結合による線状連結構造を有する第2有機珪素ポリマーとを、交互に線状に連結しているので、第2有機珪素ポリマーが備えている柔軟性を失うことなく、第1有機珪素ポリマーの優れた耐熱性を保持しながら、高耐熱且つ高耐電圧という2つの特性を両立した合成高分子化合物を得ることができる。耐熱性をより高くするためには、第1有機珪素ポリマーの分子量を大きくすれば良いが、その場合には、粘度が高くなり、硬化後の柔軟性も低くなる。また、柔軟性を高くするためには、第2有機ポリマーの分子量を大きくすれば良いが、その場合には、耐熱性が低くなる。第1有機珪素ポリマーの分子量は、好ましくは200?20万であり、より好ましくは200?7万である。第2有機珪素ポリマーの分子量は、好ましくは5千?20万である。第1有機珪素ポリマーの分子量は、第2有機珪素ポリマーの分子量よりも小さいのが、好ましい。
・・・
[0033] 本発明の合成高分子化合物は、結合のほとんどがシロキサン結合を有しているので、前述したように、高い絶縁性すなわち高耐電圧性能を有している。また、合成高分子化合物は、ワイドギャップ半導体素子のパッシベーション膜として使用される二酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機物膜との親和性が極めてよく、パッシベーション膜の表面に強固に付着する。更に、合成高分子化合物は、SiCやGaNなどのワイドギャップ半導体そのものとも親和性が極めてよく、半導体素子の表面に強固に付着するという優れた接着性を有することが見出されている。」

(エ)「第3実施例
[0066] 本発明の第3実施例の半導体装置である光結合ワイドギャップパワー半導体装置を、図4の断面図を参照して説明する。本実施例では、発光機能を有するパワー半導体素子として、耐電圧3kV・電流容量200AのGaN(ガリウムナイトライド)-npnバイポーラトランジスタ51を用いている。受光素子としては、SiC-ホトダイオード52を用いている。SiCホトダイオード52は、GaN-npnバイポーラトランジスタ51に対向するように、同一パッケージ内に設けられている。
[0067] 図4に示すGaN-npnバイポーラトランジスタ51において、厚さ約300μmの高不純物濃度のn型のGaNコレクタ領域53の上面には、厚さ約1.7μmのp型のGaNベース領域54が形成されており、その上には、厚さ約3μmの高不純物濃度のn型のエミッタ領域55が形成されている。GaNコレクタ領域53の下面には、コレクタ電極66が設けられている。GaNベース領域54の周辺のコレクタ領域53内には、n型の電界緩和領域56が形成されている。GaNベース領域54の右端部には、金属のベース電極58が設けられている。n型エミッタ領域55の上には、発光窓60を有する金属のエミッタ電極59が設けられている。GaNコレクタ領域53及び電界緩和領域56の上には、窒化シリコン層と二酸化シリコン層とからなる2層構造の表面保護膜57とが形成されている。
[0068] ベース電極58は、金のリード線61によって、ベース端子62に接続されている。エミッタ電極59は、2本の金のリード線63、64によって、エミッタ端子65に接続されている。コレクタ電極66は、コレクタ端子68を有する金属の支持体67に取り付けられている。
[0069] SiCホトダイオード52は、その受光部80がGaN-npnバイポーラトランジスタ51の発光窓60に対向して光50を受光するように、キャップ70の内側面に、窒化アルミニウムなどの絶縁板71を介して、接着されている。SiCホトダイオード52のアノード電極72は、金のリード線73によって、金属のアノード端子74に接続されている。カソード電極75は、金のリード線76によって、カソード端子77に接続されている。アノード端子74及びカソード端子77は、それぞれの外部配線に接続されている。アノード端子74及びカソード端子77は、キャップ70の貫通孔に、高融点絶縁ガラス78、79を介して、固着されている。
[0070] GaN-npnバイポーラトランジスタ51、SiCホトダイオード52、リード線61、63、64、73、76、ベース端子62の端部、及びエミッタ端子65の端部、を覆うように、合成高分子化合物の被覆体81が設けられている。合成高分子化合物は、第1有機珪素ポリマーとしてポリエチルシルセスキオキサンを含有し、第2有機珪素ポリマーとしてポリジメチルシロキサンを含有している。リード線61、63、64、73、76、エミッタ端子65、ベース端子62、コレクタ端子68、アノード端子74、及びカソード端子77は、電気的接続部である。リード線61、63、64、73、76は、それぞれを流れる電流値に応じて、それぞれ、複数の線を並列に接続したものを用いてもよい。」

イ 引用発明
(ア)上記ア(イ)によれば、引用刊行物には、「少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合(Si-O-Si結合)によって連結してなる第3有機珪素ポリマーを、付加反応により生成される共有結合によって、複数連結して、構成されており、三次元の立体構造を有し、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、2万?80万の分子量を有している高耐熱合成高分子化合物。」の発明が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(エ)によれば、上記(ア)の「高耐熱合成高分子化合物」は、発光機能を有するパワー半導体素子であるGaN-npnバイポーラトランジスタ51を覆うように設けられる被覆体81として用いられ得るものと認められる。

(ウ)以上によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。

「少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合(Si-O-Si結合)によって連結してなる第3有機珪素ポリマーを、付加反応により生成される共有結合によって、複数連結して、構成されており、三次元の立体構造を有して、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、2万?80万の分子量を有し、発光機能を有するパワー半導体素子であるGaN-npnバイポーラトランジスタを覆うように設けられる被覆体として用いられ得る高耐熱合成高分子化合物。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明は、「『シロキサン結合による橋かけ構造』を有する『少なくとも1種の第1有機珪素ポリマー』と、『シロキサン結合による線状連結構造』を有する『少なくとも1種の第2有機珪素ポリマー』とを『シロキサン結合(Si-O-Si結合)によって連結してなる第3有機珪素ポリマー』を、『付加反応により生成される共有結合によって、複数連結して、構成』されており、『三次元の立体構造』を有する『発光機能を有するパワー半導体素子であるGaN-npnバイポーラトランジスタを覆うように設けられる被覆体として用いられ得る高耐熱合成高分子化合物』」であるから、両者は、
「メタロキサン骨格を有し、ケイ素を含有する半導体発光デバイス封止用部材」
である点で一致し、以下の(ア)及び(イ)の点で相違するものと認められる。

(ア)本願発明は、ケイ素含有率が10重量%以上、47重量%以下であるのに対して、引用発明は、ケイ素含有率が不明である点(以下「相違点1」という。)。

(イ)本願発明は、下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であるのに対して、引用発明は、加熱重量減ないし剥離率を特定するものではない点(以下「相違点2」という。)。
加熱重量減測定方法(I)及び密着性評価方法(II)は、次のとおりである。
加熱重量減測定方法(I)
前記半導体発光デバイス封止用部材の破砕片10mgを用いて、熱重量・示差熱測定装置により、空気200ml/分流通下、昇温速度10℃/分で35℃から500℃まで加熱し、重量減の測定を行う。
密着性評価方法(II)
(1)直径9mm、凹部の深さ1mmの銀メッキ表面銅製カップに半導体発光デバイス封止用部材形成液を滴下し、所定の硬化条件にて硬化させて半導体発光デバイス封止用部材を得る。
(2)得られた半導体発光デバイス封止用部材を温度85℃、湿度85%の雰囲気下で20時間吸湿させる。
(3)吸湿後の半導体発光デバイス封止用部材を室温より260℃まで50秒で昇温後、260℃で10秒間保持する。
(4)昇温後の半導体発光デバイス封止用部材を室温まで冷却し、目視及び顕微鏡観察により半導体発光デバイス封止用部材の前記銅製カップからの剥離の有無を観察する。
(5)前記半導体発光デバイス封止用部材10個につき、それぞれ、前記(2)、(3)及び(4)の操作を実施し、前記半導体発光デバイス封止用部材の剥離率を求める。」

エ 判断
(ア)相違点1について
本願発明において特定される、「10重量%以上、47重量%以下」とのケイ素含有率は、シロキサン結合によって連結される高分子化合物における一般的な珪素含有率を含むものであり、引用発明もそのようなケイ素含有率であって、相違点1は実質的な相違ではないと考えられるところであり、少なくとも引用発明をかかるケイ素含有率のものとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことというべきである。

(イ)相違点2について
a 前記アによれば、引用刊行物には、シロキサン結合(Si-O-Si結合)の線状構造を有するポリメチルフェニルシロキサンを含む合成高分子化合物であるシリコンゴムによって被覆された素子を、高温で長時間、六弗化硫黄ガスなどの不活性ガス中で動作させると、重量の減少が生じて、素子表面近傍においてボイドやクラックが発生する(ア(ア)を参照。)が、引用発明では、第2有機珪素ポリマーが備えている柔軟性を失うことなく、第1有機珪素ポリマーの優れた耐熱性を保持しながら、高耐熱且つ高耐電圧という2つの特性を両立した合成高分子化合物を得ることができること、優れた接着性を有すること(ア(ウ)を参照。)などが記載されているものと認められる。

b 上記aによれば、引用発明は、高温で長時間使用しても重量の減少が生じてボイドやクラックが発生しにくい優れた耐熱性を保持することや、優れた接着性を有することを目指したものといえ、具体的にどのような条件や指標に基づいてどの程度の重量の減少を許容するか、あるいはどの程度の接着性をもたせるかは、当業者が設計上の必要に応じて適宜定めるべき事項である。

c そして、本願明細書の記載を見ても、本願発明において特定される加熱重量減ないし剥離率の範囲内と範囲外とで当業者が予測困難なほどの作用、効果の差異が生じるものと認めることはできず、相違点2のように加熱重量減ないし剥離率の範囲が特定された点に格別の臨界的な意義があるものとは認められない。
前記(1)イ(ウ)で検討したとおり、本願発明における、「下記加熱重量減測定方法(I)により測定された加熱重量減が50重量%以下であり、且つ、下記密着性評価方法(II)により測定された剥離率が30%以下であり」との特定は、半導体デバイス用部材に求められる要件を満たすと評価できる加熱重量減ないし剥離率の範囲について、特定の測定方法ないし評価方法に基づく数値として定めたものと解されるのであって、設計的事項の域を超えるものということはできない。

d 請求人は、審判請求の理由において、
「本願発明に規定する加熱重量減は、本願明細書段落[0038]に記載しているように、本発明の半導体デバイス封止用部材の高度な耐熱性を評価する指標であり、昇温時の温度である500℃は、当業者の技術常識や、引用文献1及び2等の記載からすれば、極端に高い温度であるといえます。本願発明者らは、このように極端に高い温度である500℃まで加熱して重量減を測定した場合に、重量減が50重量%以下となる光半導体発光デバイス封止用部材が、優れた耐熱性を示すことを見出し、本願に至ったのであります。」
と主張するが、上記bのとおり、具体的にどのような条件や指標に基づいてどの程度の重量の減少を許容するかは、当業者が設計上の必要に応じて適宜定めるべき事項であるし、厳しい条件における要件を満たせば得られる特性がより優れたものになることも当業者にとって予測可能であることは明らかであるから、本願発明の奏する効果が格別顕著なものということはできない。

(ウ)小括
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおりであって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-16 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2009-3366(P2009-3366)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橿本 英吾道祖土 新吾岡田 吉美  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 稲積 義登
杉山 輝和
発明の名称 半導体デバイス用部材、並びに半導体デバイス用部材形成液及び半導体デバイス用部材の製造方法、並びに、それを用いた半導体発光デバイス、半導体デバイス用部材形成液、及び蛍光体組成物  
代理人 真田 有  

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