• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1232378
審判番号 不服2009-23529  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-02-17 
事件の表示 特願2000-141357「機器装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-325025〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成12年5月15日の特許出願であって、同21年6月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月7日に手続補正がなされ、同年8月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年11月30日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同22年7月29日付けで審尋がされ、同年10月4日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲、及び対応する発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「原点位置を基準として位置決め制御される複数の可動体を備え、動作開始時に前記可動体を原点位置に復帰させる機器装置において、動作開始時に前記複数の可動体のうちどの可動体を原点復帰させるかを選択する選択手段を備え、動作開始時に前記選択手段により選択された可動体が自動的に原点位置に復帰するように構成されたことを特徴とする機器装置。」

(2)補正後
「原点位置を基準として位置決め制御される複数の可動体を備え、動作開始時に前記可動体を原点位置に復帰させる機器装置において、動作開始時に前記複数の可動体のうちどの可動体を原点復帰させるかを選択する選択手段を備え、動作開始時に前記選択手段により選択された可動体が原点復帰しているか否かを調べ、原点復帰していない場合には、自動的に原点位置に復帰するように構成されたことを特徴とする機器装置。」

2.補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、「自動的に原点位置に復帰」について、「原点復帰しているか否かを調べ、原点復帰していない場合には」なる事項を付加するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開平8-66093号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.段落0009
「【0009】本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、可動体がリードスクリューに対してロックしないように原点位置の設定を行い得るとともに、コスト低減を図り、原点位置調整作業を容易に行うことができるステッピングモータの制御方法および制御装置を提供することを目的としている。」

イ.段落0017
「【0017】さらに、本発明に係るステッピングモータの制御装置によれば、電源投入時あるいは位置ずれ発生時等の原点位置設定時に、リセット手段が作動させられて、基準位置に配される基準面に可動体が当接させられ、ステッピングモータの原点位置データがリセットされる。リセット手段においては、起動手段が操作されることによりリセット起動信号が発信され、このリセット起動信号に基づいてトルク設定手段が作動させられステッピングモータの駆動トルクが、通常運転状態よりも小さい値に設定されることになる。」

ウ.段落0021?0023
「【0021】
【実施例】以下、本発明に係るステッピングモータの制御方法および制御装置の一実施例について図1から図5を参照して説明する。図5に、本実施例に係る制御装置10によって駆動されるステッピングモータ11の一例を示す。このステッピングモータ11は、例えば、2相励磁式のPM形ステッピングモータであって、シャフト12にリードスクリュー13が形成されている。このシャフト12には、前記リードスクリュー13に螺合する雌ネジ14が内面に形成された有底円筒状のピン15(可動体)が取り付けられている。
【0022】このピン15は、ステッピングモータ11を固定している板状のフレーム16(基準面)に形成された貫通孔17に貫通状態に配されている。ピン15には、鍔状のフランジ部18が設けられ、このフランジ部18に設けた案内孔18aには、前記フレーム16に固定されたガイドロッド16aが貫通状態に配されている。これにより、ピン15は、周方向の回転を係止され、シャフト12の回転によってその軸線方向に直線移動させられるようになっている。
【0023】このように構成されたステッピングモータ11を制御する本実施例の制御装置10は、図1に示すように、例えば、外部からの位置指令S_(1)に基づいて、ステッピングモータ11の動作指令信号S_(2)を発信する動作指令手段19と、動作指令信号S_(2)に基づいてステッピングモータ11への入力パルス信号S_(3)を発生するパルス発生手段20と、原点位置データ喪失時に作動させられるリセット手段21とを具備している。前記動作指令手段19には、ステッピングモータ11の原点位置データを保持するデータ記憶手段22が設けられており、保持されている原点位置データを基に動作指令信号S_(2)を生成することにより、ピン15の位置を精度よくコントロールすることができるようになっている。」

エ.段落0027?0028
「【0027】前記リセット動作指令手段25は、リセット起動信号S_(4)に基づいて、ステッピングモータ11に所定のリセット動作を実施させる動作指令S_(5)を発信するとともに、リセット動作終了時には、リセット終了信号S_(6)・S_(8)を発信するようになっている。このリセット動作は、例えば、ステッピングモータ11のリードスクリュー13に螺合しているピン15のフランジ部18をフレーム16に当接させるものであり、ピン15の通常運転状態における動作範囲L_(0)を超える距離L_(1)だけピン15を移動させるようになっている。これにより、リセット動作開始時におけるピン15が動作範囲L_(0)内のどの位置にあっても、リセット動作によってそのフランジ部18が確実にフレーム16に当接させられるようになっている。
【0028】ここで、ピン15がフレーム16に当接させられた場合においても、そのことを検知するセンサが設けられていないので、ステッピングモータ11には、ピン15をフレーム16に向けてさらに移動させようとする指令信号S_(5)が送信され続ける。そして、フランジ部18がフレーム16に圧接させられて、その摩擦力がステッピングモータ11の駆動トルクを超えた場合には、ステッピングモータ11は脱調させられる。これにより、ピン15がフレーム16に圧接状態に係止されたまま、ステッピングモータ11は見掛け上指令信号S_(5)の通りに回転させられたことになり、リセット動作が終了するようになっている。」

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「フレーム16に当接する位置である原点位置を基準として位置決め制御される可動体であるピン15を備え、電源投入時あるいは位置ずれ発生時等の原点位置設定時に前記ピン15をフレーム16に当接させるステッピングモータの制御装置。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「可動体であるピン15」は補正発明の「可動体」に相当し、同様に「電源投入時あるいは位置ずれ発生時等の原点位置設定時」は「動作開始時」に、「フレーム16に当接させる」は「原点位置に復帰させる」に、「ステッピングモータの制御装置」は「機器装置」に、それぞれ相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「原点位置を基準として位置決め制御される可動体を備え、動作開始時に前記可動体を原点位置に復帰させる機器装置。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:補正発明は、可動体が「複数」であり、「動作開始時に前記複数の可動体のうちどの可動体を原点復帰させるかを選択する選択手段を備え」るが、刊行物1発明は、複数でない点。
相違点2:補正発明は、「動作開始時に前記選択手段により選択された可動体が原点復帰しているか否かを調べ、原点復帰していない場合には、自動的に原点位置に復帰するように構成され」ているが、刊行物1発明は明らかではない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
「原点復帰させる可動体を複数有し、選択した可動体を原点復帰させる」ことは、拒絶査定で引用した特開平3-213207号公報の第2ページ左下欄第1?9行、同じく特開平1-118905号公報の第4ページ左下欄第8?10行にみられるごとく周知である。
したがって、刊行物1発明において、可動体が複数必要な場合に、かかる周知技術を適用し、相違点1に係るものとすることは、設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
原点位置に「自動的」に復帰する点について、刊行物1を確認すると、「原点位置設定時に、リセット手段が作動させられて、基準位置に配される基準面に可動体が当接させられ、ステッピングモータの原点位置データがリセットされる」との記載(上記2.(2)イ.参照)があり、「人」が介在する旨の記載はないことから、刊行物1発明は、原点位置に「自動的」に復帰するものと解される。
「可動体が原点復帰しているか否かを調べ、原点復帰していない場合には、自動的に原点位置に復帰する」ことは、審尋で引用した特開平10-247273号公報の段落0017、図10、同じく特開平9-190222号公報の段落0024、図3にみられるごとく周知である。
したがって、刊行物1発明において、原点復帰をより確実なものとすべく、かかる周知技術を適用することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
その際、相違点1を踏まえると、「可動体」が「動作開始時に前記選択手段により選択された可動体」であることは明らかである。
よって、相違点2について、困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。

請求人は、回答書で、「周知技術であります引用文献3?6には本願発明1の特徴であります「動作開始時に選択手段により選択された可動体が原点復帰しているか否かを調べる点」については何ら記載も示唆もされていなく、更に、「選択手段により選択された可動体が原点復帰しているか否かを調べた結果、原点復帰していない場合には、自動的に原点位置に復帰するように構成された点」については、何ら記載も示唆もされておらず」と、主張する。
しかし、「原点復帰していない場合には、自動的に原点位置に復帰する」ことについては、上記のとおり、刊行物1に記載されていると解されることに加え、審尋で引用した刊行物に記載されているごとく周知技術でもあるから、請求人の主張は根拠がない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成21年8月7日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-08 
結審通知日 2010-12-17 
審決日 2011-01-06 
出願番号 特願2000-141357(P2000-141357)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
P 1 8・ 575- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 拓  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 千葉 成就
遠藤 秀明
発明の名称 機器装置  
代理人 相澤 清隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ