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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1232658 |
審判番号 | 不服2010-7309 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-07 |
確定日 | 2011-02-25 |
事件の表示 | 特願2000- 96462「ヒンジキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月10日出願公開、特開2001-278310〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成12年3月31日の出願であって,平成22年1月5日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書を対象とする手続補正がなされたものである。 第2.原査定 原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。 「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1;特開平08-034462号公報 2;特開平11-049211号公報」 上記刊行物のうち特開平08-034462号公報を,以下「引用例」という。 第3.平成22年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成22年4月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1.本件補正の概要 本件補正は,平成21年7月29日付けで補正された明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲については,補正前に 「【請求項1】容器口部に嵌合被着される中蓋と,この中蓋と係合してその開口を閉止する外蓋と,前記中蓋と外蓋とを連結するヒンジ部とを備えたヒンジキャップにおいて,前記中蓋の周壁が,周壁の外面側を切り欠いて形成した切り欠き部と,この切り欠き部を外面側に有する薄肉部と,この薄肉部の下部に曲折部を介して一端が連設され,かつ他端が前記ヒンジ部に連設される把手部と,この把手部を前記薄肉部の外面に沿わせて保持するための保持手段とを有し,前記保持手段が,前記切り欠き部の左右両端部に形成され,かつ,周壁の外周部の内側に形成された係止溝であるとともに,前記把手部の左右両端部に,把手部が薄肉部の外面に沿った状態のときに前記係止溝に嵌め込ませて係止させることができる係止部が形成され,把手部の左右両端部の係止部をそれぞれ係止溝に係止させると,把手部は,その外面が周壁の外面とほぼ面一となるように保持された状態となるように構成されていることを特徴とするヒンジキャップ。 【請求項2】前記把手部と周壁とにわたって剥離可能なシールを貼り付けてある請求項1に記載のヒンジキャップ。」 とあるのを,次のとおりに補正するものである。 「【請求項1】容器口部に嵌合被着される中蓋と,この中蓋と係合してその開口を閉止する外蓋と,前記中蓋と外蓋とを連結するヒンジ部とを備えたヒンジキャップにおいて,前記中蓋の周壁が,周壁の外面側を切り欠いて形成した切り欠き部と,この切り欠き部を外面側に有する薄肉部と,この薄肉部の下部に曲折部を介して一端が連設され,かつ他端が前記ヒンジ部に連設される把手部と,この把手部を前記薄肉部の外面に沿わせて保持するための保持手段とを有し,前記保持手段が,前記周壁の上端から下端まで延びる前記切り欠き部の左右両端部に形成され,かつ,周壁の外周部の内側に形成された係止溝であるとともに,前記把手部の左右両端部に,把手部が薄肉部の外面に沿った状態のときに前記係止溝に嵌め込ませて係止させることができる係止部が形成され,把手部の左右両端部の係止部をそれぞれ係止溝に係止させると,把手部は,その外面が周壁の外面とほぼ面一となるように保持された状態となるように構成されていることを特徴とするヒンジキャップ。 【請求項2】前記把手部と周壁とにわたって剥離可能なシールを貼り付けてある請求項1に記載のヒンジキャップ。」 請求項1の補正は,周壁の外面側を切り欠いて形成した切り欠き部について,「周壁の上端から下端まで延びる」との限定を付したものである。請求項2については,記載自体に変更はないが,請求項1を引用するものであるから,請求項1と同じ内容の補正がなされたといえる。そして,本件補正が産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である引用例には,図面とともに,次の事項が記載されている。 a)「【産業上の利用分野】本発明は,容器との分別廃棄が可能なキャップに関し,より詳細には使用後に容器から容易に取外すことができ,また打栓操作に適していると共に打栓操作による損傷が防止された打栓式キャップに関する。」(段落【0001】) b)「また,キャップ本体の弱化部が設けられた部分を,他のスカート部の厚みよりも薄肉に設け,側壁をその薄肉部分に対応するように形成することにより,側壁をキャップ本体に凹凸なく係合させることが可能となって,打栓操作におけるキャップの供給がスムーズに行われるというメリットもある。」(段落【0011】) c)「図1において全体を1で表わす本発明のキャップは,容器口部(図示せず)に嵌合されるキャップ本体2と,ヒンジ3で連結された上蓋4から成っている。キャップ本体2は,頂板部5及びスカート部6から成り,」(段落【0012】) d)「ヒンジ3の下方に位置するスカート部6には,下端12から延び,キャップ本体2と一体に成形された側壁13が設けられている。側壁13は,下端12で折り曲げられた状態となってスカート部6に密着するよう,係止部14で保持されている。側壁13はヒンジ3を介して上蓋4に連結している。上蓋4は,頂板部15及びスカート部16から成り,頂板部内面にはキャップ本体の注出筒10と当接してキャップの密封性を保持する密封部17が設けられている。上蓋4のスカート部下端及びキャップ本体2のスカート部上端には係止用突起18及び19が設けられ,これにより上蓋4がキャップ本体2に係止されている。」(段落【0013】) e)「図1に示す本発明のキャップにおいて,側壁13を係止部14から外した状態を図2に示す。図2において,(A)は側断面図,(B)は(A)をキャップ下面から見た平面図である。側壁13は,図2(A)からわかるように,キャップ本体のスカート部6の下端12から折り返し部21を介して連続的に形成されている。側壁13の折り返し部21に対向する他端はヒンジ3を介して上蓋4に連結されている。キャップ本体スカート部6の側壁13が設けられている部分6bは,その両側辺にスコア22a,22bが設けられている。スコア22a,22bで挟まれる部分6bは他のスカート部6aに比して薄肉に設けられ,他のスカート部6aよりもへこんだ状態となって,凹部23を形成している。側壁13がこの凹部23に嵌合し,係止部14により係止されて,スカート部6を凹凸なく形成することができるのである。これにより打栓操作の際の,キャップの把持が容易になる。」(段落【0014】) f)「図3及び図4は,本発明のキャップの破壊方法を説明するための図である。キャップを破壊するには,まず上蓋4を開け,側壁13の係止を解除して,図3に示す状態とする。次いで,図3の矢印Pの方向に側壁部13を引き上げる。側壁13を引き上げるにしたがってスカート部6bの両側辺に設けられたスコア22a,22bが破断されて,スカート部6bは,上端でのみキャップ本体と連結しているだけとなる。これにより,キャップ本体を容易に変形させることができ,容器口部からキャップを取り外すことができるのである。」(段落【0016】) g)図1及び図2を参照すると,係止部14は凹部23の左右両端近傍において符号14a及び14bで示される部分からなること,係止部14はスカート部6の上端近傍から下端まで延びていること,係止部14は他のスカート部6aの外周面よりもわずかに外径側に突出していること,係止部14の内側には側壁13の左右端部が係止する溝が形成されていることが看取できる。 上記記載事項a?g及び図面の記載によれば,引用例には,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。 「容器口部に嵌合されるキャップ本体2とこれに係止される上蓋4からなり,使用後に容器から容易に取外すことができる打栓式キャップであって,上蓋4の頂板部内面にキャップ本体2の注出筒10と当接する密封部17が設けられ,キャップ本体2のスカート部6の下端から折り返し部21を介して側壁13が連続的に形成されるとともに,側壁13の折り返し部21に対向する他端はヒンジ3を介して上蓋4に連結され,スカート部6の側壁13が設けられる部分6bは他のスカート部6aに比べて薄肉とされて凹部23が形成されており,スカート部6の上端近傍から下端まで延び,かつ,スカート部6aの外周面よりもわずかに外径側に突出する係止部14が凹部23の左右両端に設けられ,スカート部6の側壁13が設けられる部分6bの両側辺にはスコア22a,22bが設けられるものであり,側壁13を凹部23に嵌合し,側壁13の左右端部を係止部14の内側に形成される溝に係止することにより,側壁13をキャップ本体2に凹凸なく係合させる打栓式キャップ。」 3.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「キャップ本体2」,「上蓋4」,「ヒンジ3」,「打栓式キャップ」,「スカート部6」,「凹部23」,「スカート部6の側壁13が設けられる部分6b」,「折り返し部21」,「側壁13」は,それぞれ本願補正発明の「中蓋」,「外蓋」,「ヒンジ部」,「ヒンジキャップ」,「周壁」,「切り欠き部」,「薄肉部」,「曲折部」,「把手部」に相当する。 引用発明は,スカート部6aの外周面よりもわずかに外径側に突出する係止部14が凹部23の左右両端に設けられ,該係止部14の内側に形成される溝に側壁13の左右端部が係止されるものであるから,引用発明の「係止部14の内側に形成される溝」は,本願補正発明の「保持手段」ないし「係止溝」に相当するとともに,引用発明の「側壁13の左右端部」は,本願補正発明の「係止部」に相当し,さらに,引用発明は,本願発明における「保持手段が」「切り欠き部の左右両端部に形成され,かつ,周壁の外周部の内側に形成された係止溝である」との要件を備えているといえる。 したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば, 「容器口部に嵌合被着される中蓋と,この中蓋と係合してその開口を閉止する外蓋と,前記中蓋と外蓋とを連結するヒンジ部とを備えたヒンジキャップにおいて,前記中蓋の周壁が,周壁の外面側を切り欠いて形成した切り欠き部と,この切り欠き部を外面側に有する薄肉部と,この薄肉部の下部に曲折部を介して一端が連設され,かつ他端が前記ヒンジ部に連設される把手部と,この把手部を前記薄肉部の外面に沿わせて保持するための保持手段とを有し,前記保持手段が,前記切り欠き部の左右両端部に形成され,かつ,周壁の外周部の内側に形成された係止溝であるとともに,前記把手部の左右両端部に,把手部が薄肉部の外面に沿った状態のときに前記係止溝に嵌め込ませて係止させることができる係止部が形成されたヒンジキャップ。」の点で一致し,次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明の係止溝は,周壁の上端から下端まで延びるのに対して,引用発明の係止部14の内側に形成される溝は,スカート部6の上端近傍から下端まで延びる点。 [相違点2] 本願補正発明は,把手部の左右両端部の係止部をそれぞれ係止溝に係止させると,把手部はその外面が周壁の外面とほぼ面一となるように保持された状態となるのに対して,引用発明は,スカート部6aの外周面よりもわずかに外径側に突出する係止部14が存在するため,側壁13の左右端部をそれぞれ係止部14の内側に形成される溝に係止させたとき,側壁13の外面はスカート部6aの外面と滑らかに連続せず,面一とならない点。 相違点1について検討する。引用発明は,係止部14の上端がスカート部6の上端までは達していないが,スカート部6の上端まで達するように延長しても特に不都合は生じない。相違点1は,当業者が適宜なし得た設計事項に過ぎない。 相違点2について検討する。引用発明は,側壁13をキャップ本体2に凹凸なく係合させて,打栓操作の際にキャップの把持を容易にしようとするものである(記載事項b及びe参照)。引用発明において,係止部14をスカート部6aの外周面から外径側に突出させなくても,側壁13の左右端部を係止するための溝を係止部14の内側に形成することが可能であることは明らかである。したがって,側壁13の外面がスカート部6aの外面と面一になるように係止部14を形成すること,すなわち相違点2は,当業者が容易に想到し得たことである。 請求人は,平成22年10月27日付け回答書において,「係止部14から外れた状態の側壁13を係止部14に係止させるには,二つの係止部14を左右に広げるように変形させなければならないことは図1(C),図2(B)から明らかであり,このとき,凹部23の左右部分までもが左右に広げられると,スコア22a,22bの破断が生じ兼ねません。そのため,第2の指摘事項のように,『係止部14をスカート部の外周面に沿ってスカート部外周径の内側方向に移動させる』ようにした場合,係止部14がスコア22a,22bに近づくことになり,側壁13を係止部14に係止させる際に,スコア22a,22bが非常に破断し易くなってしまいます。・・・引用文献1に記載された発明において,周壁が面一になるように係止部14を設けるようにすることに想到するための動機付けは引用文献1からは決して得られないばかりでなく,その想到を妨げる事項も存在する」と主張する。しかし,引用例の第2図(B)に示されるようにスカート部6aの外周面から外径側にわずかに突出する係止部14(14a及び14b)を,スカート部6aの外周面と面一となるように変更したところで,側壁13を係止部14に係止させる際に格別の不都合が生じるとは考えられない。側壁13を係止部14に係止させる際には,係止部14の撓みや側壁13の撓みを利用することもできるから,「側壁13を係止部14に係止させるには,二つの係止部14を左右に広げるように変形させなければならない」との主張も妥当でない。 以上のことから,本願補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第4.本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成21年7月29日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。) 第5.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。 第6.対比・判断 本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。 してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-15 |
結審通知日 | 2010-12-21 |
審決日 | 2011-01-05 |
出願番号 | 特願2000-96462(P2000-96462) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳本 幸雄 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
谷治 和文 熊倉 強 |
発明の名称 | ヒンジキャップ |
代理人 | 藤本 英夫 |