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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45C
管理番号 1232715
審判番号 不服2008-4687  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-27 
確定日 2011-02-21 
事件の表示 特願2002-253710号「人体取付け式の容器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 89386号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成14年8月30日の出願であって、平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたが、該手続補正は当審において平成22年6月21日付けで補正却下されるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成22年6月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたが、当審において平成22年9月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し、平成22年9月15日付けで意見書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年6月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
容器本体の一方側面にはベルトの装身具に取付ける取付部を、その他方側面に設けた開口部には枢着部を介して開閉自在の蓋を設け、またこの他方側面に操作部を設けた人体取付け式の容器であって、
前記蓋には、係止部を設け、この係止部に係止される被係止部を、鉤片に設け、この鉤片を、前記容器本体に枢着し、この係止部と被係止部の係脱を前記操作部で行う構成であり、
前記蓋の上側の係止部と、前記鉤片の被係止部との係脱を介して、蓋の下側に設けた枢着部を、支点として、この蓋が開閉する構成とした人体取付け式の容器であって、
前記容器本体は、その底部を開放箇所とし、この開放箇所に、底板を、取付け、取外し自在に設ける構成とした人体取付け式の容器。」

2.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-182230号(実開昭61-95321号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「本考案は小物入れに係り、特にハイキング等の小旅行時に、腰部に配したベルトに取付けて歩行するのに便利な小物入れに関する。」(2頁6行?8行)
(イ)「底面1aの中央部には、第1図及び第2図に示すように腰部等に配したベルト3に容器本体1を着脱可能に取付けるための取付部材4が設けられている。」(4頁12行?15行)
(ウ)「第4図ないし第6図は本考案の第2実施例を示すもので、以下これについて説明する。図において11は前記容器本体1と同一構造の容器本体であり、周縁にリブ12が設けられた容器本体11の底面11aの中央部には、第4図および第5図に示すように上下端がビス15により底面11aに固定された断面ハット状の取付部材14が設けられ、ベルト13を取付部材14に通すことにより容器本体11をベルト13に固定できるようになっている。・・・(中略)・・・一方、前記容器本体11の開口部には、第4図ないし、第6図に示すように容器本体11の開口縁を外側から覆う蓋体16が配設されており、この蓋体16の図中下端部は、ヒンジ17を介して容器本体11の開口縁に枢着され、このヒンジ17を支点として開閉可能となっている。またこの蓋体16の自由端およびこれに対接する容器本体11の開口縁には第6図に示すようにスナップ係合により蓋体16を閉じた状態で仮固定する係合部18a、18bがそれぞれ設けられている。」(9頁3行?10頁11行)
(エ)摘記事項(ウ)の「第4図および第5図に示すように上下端がビス15により底面11aに固定された断面ハット状の取付部材14が設けられ、ベルト13を取付部材14に通すことにより容器本体11をベルト13に固定できるようになっている。」という記載からみて、容器本体11には、ベルト13に取付ける取付部材14を設けているといえる。
(オ)第4図?第6図からみて、開口部は底面11aと対向する面に設けられているといえる。
(カ)蓋体16を閉じるときには、係合部18aと係合部18bとを係合している。蓋体16を開けるときには、係合部18aと係合部18bとの係合を外していることは明らかである。したがって、係合部18aと係合部18bとは係脱を行う構成であり、係脱を介して、蓋体16が開閉可能となっているといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。)
「容器本体11の底面11aにはベルト13に取付ける取付部材14を、底面11aと対向する面に設けた開口部にはヒンジ17を介して開閉可能の蓋体16を設けた腰部等に配したベルトに取付ける容器であって、
前記蓋体16には、係合部18aを設け、この係合部18aに係合される係合部18bを、容器本体11の開口縁に設け、この係合部18aと係合部18bの係脱を行う構成であり、
前記蓋体16の自由端の係合部18aと、前記開口縁の係合部18bとの係脱を介して、蓋体16の下端部に設けたヒンジ17を、支点として、この蓋体16が開閉可能となっている、
腰部等に配したベルトに取付ける容器。」

(刊行物2)
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭56-159662号(実開昭58-64207号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。

(キ)「蝶番によって蓋体を容器に開閉自在に結合し、蓋体を閉じた時に蓋体側に設けられた突片と容器側に設けられた突片とが係合し、これによって蓋体が容器に対して閉止位置を占める合成樹脂製コンパクト容器の開閉機構の改良に関するものである。」(2頁14行?19行)
(ク)「図中1は合成樹脂から成形された容器であり、該容器1はその後端縁において蝶番2によって合成樹脂製の蓋体3と開閉自在に連結されている。蓋体3の前端縁中央部には該蓋体3と一体的に形成された爪片4が下方へ突出し、その外壁面は外側から内側に向かって下方に傾斜したテーパー部4aとなっており、また内壁面下端にはフック状の第2突片5が該爪片4と一体的に形成されている。一方、容器1の前端縁には、該爪片4と対応する位置に凹所6が形成されており、蓋体3を閉じた状態では該爪片4がこの凹所6内に進入するようになっている。
容器1の凹所6の内部には、該容器1とは別体に形成された断面形状が略U字形の合成樹脂製作動部片7が配設され、該作動部片7はその左端7aが垂直方向に延長する自由端となっており、また該左端7aと対向する右端7bにはフック状の第1突片8が該左端方向へ向かって一体的に突出形成されている。このU字形の作動部片7の底部7cの外側には溝9が該作動部片7の両側壁間に渡って設けられ、凹所6の両側壁間に架設された支持棒10と嵌合するようになっている。溝9は内部が拡大された形状となっており、作動部片7を凹所6に当てがい支持棒10を溝9に圧入することによって、作動部片7は凹所6に枢着され該枢着部を支点として揺動可能となる。そして、該作動部片7を枢着して蓋体3を閉じると、作動部片7の右端7bに形成された第1突片8が蓋体3の爪片4に設けられた第2突片5と「パチン」というクリック音とともに係合して閉止位置を占め、・・・(中略)・・・作動部片7の自由端7aを内方、即ち凹所6の奥面6aの方へ向けて押し込むと、該自由端7aは第4図に示すように作動部片7の底部枢着部を支点として内方へ揺動し、蓋体3の爪片4のテーパー部4aに沿って摺動することによって蓋体3を上方へ押し上げようとする。一方、この時該作動部片7の右端7bも底部枢着部を支点として凹所6の奥面6aに当接するまで僅かに内方へ揺動するため、該右端7bの第1突片8と爪片4の第2突片5との係合が浅くなり、これと上記のような蓋体3を上方へ押し上げようとする力とが加わって該第1突片8と第2突片5との係合が解かれ、蓋体3が一部開くこととなる。」(4頁10行?7頁7行)

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「第1突片8を断面形状が略U字形の作動部片7に形成し、この作動部片7を容器1に枢着し、蓋体3を閉じると第1突片8が第2突片5と係合して閉止位置を占め、作動部片7の自由端7aを内方へ押し込んで、第2突片5と第1突片8との係合を解く容器1。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能又は構造等からみて、引用発明の「容器本体11」は本願発明の「容器本体」に相当する。以下同様に、「底面11a」は「一方側面」に、「ベルト13」は「ベルトの装身具」に、「取付部材14」は「取付部」に、「底面11aと対向する面」は「他方側面」に、「ヒンジ17」は「枢着部」に、「開閉可能」は「開閉自在」に、「蓋体16」は「蓋」に、「係合部18a」は「係止部」に、「係合」は「係止」に、「係合部18b」は「被係止部」に、「下端部」は「下側」に、「開閉可能となっている」は「開閉する構成とした」に、それぞれ相当する。
引用発明の「腰部等に配したベルトに取付ける容器」は、腰部等に配したベルトに取付けることで、容器が人体に取付けられるから、本願発明の「人体取付け式の容器」に相当する。
引用発明の「自由端」は、刊行物1の第4図?第6図からみて、蓋体16の上側であるから、本願発明の「上側」に相当する。

そこで、本願発明と引用発明は、本願発明の用語を用いて表現すると、下記の一致点及び相違点を有する。(括弧内は対応する引用発明の用語を示す。)

(一致点)
「容器本体の一方側面にはベルトの装身具に取付ける取付部を、その他方側面に設けた開口部には枢着部を介して開閉自在の蓋を設けた人体取付け式の容器であって、
前記蓋には、係止部を設け、この係止部に係止される被係止部を設け、この係止部と被係止部の係脱を行う構成であり、
前記蓋の上側の係止部と、前記被係止部との係脱を介して、蓋の下側に設けた枢着部を、支点として、この蓋が開閉する構成とした人体取付け式の容器。」
(相違点1)
本願発明では、他方側面に操作部を設け、被係止部を鉤片に設け、この鉤片を容器本体に枢着し、係止部と被係止部の係脱を前記操作部で行う構成であるのに対し、引用発明では、被係止部(係合部18b)を、容器本体(容器本体11)の開口縁に設け、係止部(係合部18a)と被係止部(係合部18b)との係脱を行う構成である点。
(相違点2)
本願発明では、容器本体は、その底部を開放箇所とし、この開放箇所に、底板を、取付け、取外し自在に設ける構成としたのに対し、引用発明では、容器本体は、その底部に相当する部分を開放箇所としておらず、底板に相当する部分を、取付け、取外し自在ともしていない点。

以下、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
上記したように引用発明2は、第1突片8(「被係止部」に相当)を作動部材7(「鉤片」に相当)に形成し、この作動部片7を容器1(「容器本体」に相当)に枢着し、第1突片8と第2突片5(「係止部」に相当)との係脱を行う構成を備えている。
そして、引用発明と引用発明2とは、係止部と被係止部との係脱による容器の蓋の開閉機構を備えた点で共通しているものであるから、引用発明の開閉機構に替えて引用発明2の開閉機構を適用する点に格別の困難性は見いだせない。
ここで引用発明2においては、蓋体3を閉じると第1突片8が第2突片5と係合して閉止位置を占め、作動部片7の自由端7aを内方へ押し込んで、第2突片5と第1突片8との係合を解くものであるから、この開閉機構を引用発明に適用した場合、その操作部は係合する場合は蓋体側すなわち他方側面となるが、係合を解く場合は操作部は上面側にあることとなる。しかしながら、引用発明2においても蓋体の弾力性を考慮すれば蓋体の自由端側を撓ませることによって係合を解くこともできると考えられ、その場合は係脱共操作部が他方側面にあることになるし、そもそも操作部をどの面に設けるかは容器の使用時の姿勢等により、適宜定める事項であり、それに応じて操作部の構成を変更することも適宜なしうる設計的事項といえるから、操作部を他方側面とすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
以上から、引用発明に引用発明2を適用して相違点1に係る本願発明のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。

(相違点2について)
容器において、容器の底の部分を開放した構成とし、底となる部材を取付け、取外し自在に設けることは、例えば実願昭59-150719号(実開昭61-66523号)のマイクロフィルム、実願平5-56431号(実開平7-26331号)のCD-ROM、実願昭59-102879号(実開昭61-18017号)のマイクロフィルムなどにみられるように本願出願前に周知の技術である。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、相違点2に係る本願発明のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用発明2及び周知技術から当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-24 
結審通知日 2010-12-27 
審決日 2011-01-11 
出願番号 特願2002-253710(P2002-253710)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦櫻井 康平  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 増沢 誠一
寺澤 忠司
発明の名称 人体取付け式の容器  
代理人 竹中 一宣  

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