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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1232841
審判番号 不服2008-16802  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-02 
確定日 2011-03-22 
事件の表示 特願2002-318895「立体画像表示装置、立体画像符号化装置、立体画像復号装置、立体画像記録方法及び立体画像伝送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-165708、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 【第1】経緯
(1)手続
本願は、平成14年10月31日の出願であり、手続きの概要は以下のとおりである。

補正書提出 :平成17年 5月25日
拒絶理由の通知 :平成19年12月 5日(起案日)
意見書提出 :平成20年 2月 7日
補正書提出 :平成20年 2月 7日
拒絶理由の通知(最後):平成20年 3月 3日(起案日)
意見書提出 :平成20年 5月12日
補正書提出 :平成20年 5月12日
補正却下の決定 :平成20年 5月28日(起案日)
拒絶査定 :平成20年 5月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成20年 7月 2日
補正書提出 :平成20年 7月 2日
前置報告 :平成20年 9月19日
審尋 :平成22年 4月 7日(起案日)
回答書提出 :平成22年 5月26日

(2)拒絶査定
原査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
理由A
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1,3,4では、「立体画像」と「立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」とをまとめて、符号化したり、記録したり、伝送したりしている。また請求項2の復号装置は、請求項1の符号化装置を前提とした発明で
ある。
しかし本願明細書を参酌すると、上記「立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」とは立体画像の表示を制限するための情報である。してみると、「立体画像」を符号化、記録、あるいは伝送するものは、同時に立体画像の表示を制限するための情報を符号化、記録、あるいは伝送しており、符号化、記録、伝送した「立体画像」を表示させたいのか、あるいは制限に引っかかるものは符号化、記録、伝送した「立体画像」であっても制限をした表示したくないのか、その技術的意味が不明である。

理由B:
本願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国にお
いて、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由C:
本願の請求項1?4までに係る発明は、下記の刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平9-275578号公報
刊行物2:特開平11-355808号公報

(3)平成20年7月2日付け補正
この補正は、補正前請求項1?4を、下記請求項1,2の記載に変更するものものである。
記(特許請求の範囲:平成20年7月2日付け補正)
【請求項1】
複数の画像から成る立体画像を符号化する立体画像符号化装置において、立体画像を符号化する符号化手段と、立体画像の表示を制御するための制御情報を生成する生成手段と
、前記符号化手段により得られる符号化データと前記生成手段により得られる制御情報を多重化する多重化手段を備え、
前記制御情報は、符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報、又は、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値の少なくともいずれかを含むことを特徴とする立体画像符号化装置。
【請求項2】
請求項1に記載された立体画像符号化装置により符号化され送出された複数の画像から成る立体画像を復号する立体画像復号装置において、入力データから立体画像の符号化データと立体画像の表示を制御するための制御情報を分離する逆多重化手段と、前記符号化データを復号する復号手段と、前記制御情報を解析する解析手段を備え、立体画像を表示する立体画像表示装置において、前記累積強度と前記しきい値の比較結果に基づいて立体画像から平面画像への切替えを促すことを特徴とする立体画像復号装置。

(4)前置報告
前置報告は、概略、下記のとおりである。
記(前置報告)
平成20年7月2日付け補正は限定的減縮を目的としているが、当該補正後の請求項1、2に係る発明は、下記の理由で独立して特許を受けることができない。
記(独立して特許を受けることができない理由)
理由A’(特許法第36条第4項違反)
「立体画像」を符号化する者は、同時に立体画像の表示を制限するため
の情報を符号化していることとなり、符号化した「立体画像」を表示させたいのか、あるいは制限に引っかかるものは符号化した「立体画像」であっても制限をした表示したくないのか、その技術的意味が依然として不明である。
理由C’(特許法第29条第2項)
本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

【第2】補正の適否判断 (当審)

【結論】
平成20年7月2日付けの手続補正を認める。

【理由】
平成20年7月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、
平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第3項及び第4項、並びに同条第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。詳細は、以下のとおりである。

[1]補正の内容
平成20年7月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、補正前請求項1?4(平成20年2月7日付け補正書によるもの)についてする以下の補正を含む。
(i)補正前請求項3,4を削除する補正。
(ii)補正前請求項1の「立体画像の立体強度を示す情報と、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値の少なくともいずれか」を、
「符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報、又は、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値の少なくともいずれか」とする補正。
(iii)補正前請求項2の「複数の画像から成る立体画像を復号する立体画像復号装置において」を、
「請求項1に記載された立体画像符号化装置により符号化され送出された複数の画像から成る立体画像を復号する立体画像復号装置において」とするとともに、
補正前請求項2の「解析手段を備え、前記制御情報は、立体画像の立体強度を示す情報と、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値の少なくともいずれかを含むこと」を、
「解析手段を備え、立体画像を表示する立体画像表示装置において、前記累積強度と前記しきい値の比較結果に基づいて立体画像から平面画像への切替えを促すこと」とする補正。

[2]補正の範囲、目的の適合性について
上記補正事項(i)は、平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第4項第1号に規定する「請求項の削除」に該当する。
また、上記補正事項(ii)は、補正前請求項1に記載されていた「立体画像の立体強度を示す情報」を限定するものであり、
上記補正事項(iii)は、補正前請求項2に記載されていた、復号対象である「複数の画像から成る立体画像」を限定するものであり、
いずれも、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
また、上記(ii)及び(iii)の、付加される下線部の特定事項は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0190】?【0193】、【0198】、【0199】、【0200】?【0203】に記載されている事項であると認められる。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正であるから、特許法17条の2第3項の規定に適合する。

[2]独立特許要件について
以下、補正後請求項1、2記載の発明を、それぞれ、補正後発明1、補正後発明2といい、合わせて「補正後各発明」ともいう。

〈前置報告が独立特許要件違反とする上記理由A’、C’について〉

(1)理由A’(特許法第36条第4項違反)について
例えば、明細書の
「【0020】
また、前記立体画像フォーマットデータによれば、立体画像フォーマットデータを伝送する場合、視差が大きく負担のかかるデータである場合とそうでない場合などに応じて、視差を変更することなく観察者が立体画像を鑑賞できる時間や、立体として連続的に鑑賞できる時間を表す情報を、伝送側で予め記録して伝送することができるので、観察者の眼に大きな負担がかからないよう長時間連続鑑賞できないようなデータを提供することが出来る。」とあることから、補正後発明1,2の技術的意味が、
「立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報、又は、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」を、伝送側で予め記録して伝送することができるので、観察者の眼に大きな負担がかからないよう長時間連続鑑賞できないようなデータを提供することが出来る、ことにあることは、当業者に明らかである。
したがって、「符号化した『立体画像』を表示させたいのか、あるいは制限に引っかかるものは符号化した『立体画像』であっても制限をした表示したくないのか、その技術的意味が依然として不明である」から発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定に違反する、とはいえない。
そして、補正後請求項1,2の構成についても、発明の詳細な説明(特に、第4の実施形態(段落【0175】?【0209】)には、当業者が実施ができる程度に明確且つ十分に記載されているといえることから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定に違反する、とはいえない。

(2)理由C’(特許法第29条第2項)について

(2-1)主要構成
前置報告で引用された刊行物1,2(査定で引用された刊行物に同じ)のいずれにも、補正後各発明が備える下記の主要構成は記載されていないし、 刊行物1,2のいずれにも、上記主要構成に至るに足りる動機付けも見いだすことができない。

記(補正後各発明の主要構成)
複数の画像から成る立体画像を符号化する立体画像符号化装置において、
「立体画像を符号化する符号化手段により得られる符号化データ」と、
「立体画像の表示を制御するための制御情報」であって、「符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報、又は、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値の少なくともいずれかを含む」制御情報を、
「多重化する多重化手段」を備えること

すなわち、
複数の画像から成る立体画像を符号化する立体画像符号化装置において、 (a1)「立体画像の立体強度を示す情報」、又は、
(a2)「立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」
の「少なくともいずれかを含む」制御情報であって、
(b)「立体画像の表示を制御するための制御情報」であり、
(c)「符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報」である制御情報と、
(d)「立体画像を符号化する符号化手段により得られる符号化データ」とを、「多重化する多重化手段」により多重化すること

(2-2)結論
したがって、補正後各発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2-3)理由の詳細
-引用刊行物の記載、補正後各発明との比較等について-

ア 刊行物1:特開平9-275578号公報
刊行物1には、以下の発明(引用発明1)が記載されている。

〈引用発明1〉
多視点画像の符号化において動き補償及び視差補償予測を用いることにより高効率の符号化を実現しながら、視差ベクトルを2段階に分けることにより視差ベクトルの符号化効率を向上させるとともに、視差ベクトルを求める際の計算量を低減させ、2段階に分けた視差ベクトルを利用して立体部品画像の編集を簡単に行うことができる視差補償符号化及び復号装置(段落【0008】)であって、
多視点立体画像を少なくとも1つの視差のある部品画像と、少なくとも1つの視差のない背景画像に分けて入力する入力手段と、部品画像のフレームあるいはフィールド間の動き量を用いて動き補償予測を行う動き補償手段と、部品画像のフレームあるいはフィールド間の視差量を用いて視差補償予測を行う視差補償手段と、視差ベクトル分割手段とを各部品画像毎に備える多視点符号化装置であって、前記視差ベクトル分割手段は、前記視差補償手段で求められた視差ベクトルのうちの1つをグローバル視差ベクトルとし、残りの視差ベクトルからグローバル視差ベクトルを引いたものをローカル視差ベクトルとして出力することを特徴とする多視点画像符号化装置(請求項1)。

〈補正後各発明との比較〉
引用発明1の上記「グローバル視差ベクトル」と、
補正後各発明の制御情報に含まれる「立体画像の立体強度を示す情報」、
すなわち、「立体画像の表示を制御するための制御情報であって、符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報」
とを比較する。

後者(補正後各発明の「立体画像の立体強度を示す情報」)は、上記(a1)(b)?(d)を要件として要求するものであるところ、
前者(「グローバル視差ベクトル」)は、視差のない背景画像とは別の視差のある部品画像の、フレームあるいはフィールド間の視差量を用いて視差補償予測を行う際の、視差ベクトルを、グローバル視差ベクトルと各ローカル視差ベクトルとの加算で表した際のグローバル視差ベクトルであるから、
その量についてみるに、
復号した際、部品画像の立体強度を決定づける情報であるから、「立体画像の表示を制御するための制御情報」とはいえず、また、「視差のない背景画像とは別の視差のある部品画像の立体強度を示す情報」であって、「立体画像全体の立体強度を示す情報」ともいえないから、上記(a1)(b)を満たすものでなない。
また、そもそも、「グローバル視差ベクトル」(の量)は、多視点画像の符号化データの一部として符号化される情報であるから、上記(d)も満たさないものである。
さらに、上記(c)も満たさないことは明らかである。
〈相違点〉
すなわち、引用発明1の上記「グローバル視差ベクトル」は、上記(a1)(b)(c)(d)のいずれをも満たさず、補正後各発明の「立体画像の立体強度を示す情報」とは全く異なるものである。
〈相違点克服の容易想到性〉
この相違点について検討するに、刊行物2には、後記(イ-2)するように「立体画像の立体強度を示す情報」といい得る「立体映像信号の視差量(立体度)」が認められるが、このものは、再生側で、左右の3次元映像信号から検出した視差に基づくものであって、
そもそも、復号に必須とされる符号化されるデータである引用発明1の「グローバル視差ベクトル」とは、その技術的意義において全く異なるものであるから、引用発明1の「グローバル視差ベクトル」に代替できるものではない。
また、他に、上記(b)(c)(d)を満たす「立体画像の立体強度を示す情報」の存在または示唆も見いだせない。
したがって、上記相違点の克服は困難であり、刊行物1,2に基づいて上記補正後発明の主要構成が容易になし得るもの、とすることはできない。また、刊行物1,2のいずれにも、上記主要構成に至るに足りる動機付けも見いだすことができない。

イ 刊行物2:特開平11-355808号公報

イ-1「累積輻輳許容限界値b」
補正後各発明の「立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」に関連して、刊行物2には、図1?5の実施形態の発明(引用発明2)(特に図4,図5,段落【0013】?【0017】)が記載されている。

〈引用発明2〉
図1,図5に示される再生側の映像システムであって、
ステップS1:左右の3次元映像信号から視差pの検出が行われる。
ステップS2:検出された視差pに基づいて疲労度、影響度を表す関数f(p)の計算が行われる。
ステップS3:影響度の値f(p)を、立体映像として認識できる輻輳(融像)許容限界値a(例えば、図3における黒点実線値)と比較する。 この輻輳許容限界値aは疲労許容限界値とみなすことができる。
ステップS4:視差に基づく関数計算で求められた影響度の値f(p)が輻輳許容限界値aより大きい場合は、2次元映像を切り替え表示する。
ステップS5:影響度の値f(p)が輻輳許容限界値aより小さい場合は、影響度の値f(p)の時間累積計算を行う。
ステップS6:次いで、視差に基づく関数計算で求めた影響度の値f(p)の累積計算値が累積輻輳許容限界値bと比較される。
この累積輻輳許容限界値bは、累積疲労許容限界値とみなすことができるものであり、機器メーカが予め設定しておくか、ユーザが個別に調節して設定するか、更には実際の使用時にユーザが疲労度に応じて設定してやるようにすることもできる。
ステップS7:累積輻輳許容限界値bを超えた場合には、2次元映像を切り替え表示する。
ステップS8:累積輻輳許容限界値bより小さい場合には、そのまま3次元(立体)映像を表示する。
以上の動作を繰り返し実行する、
映像システム。

〈補正後各発明との比較〉
引用発明2の「累積輻輳許容限界値b」と、
補正後各発明の制御情報に含まれる上記「しきい値」、
すなわち、「立体画像の表示を制御するための制御情報であって、符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体表示時間と共に増加する累積値に関するしきい値」
とを比較する。

後者(補正後各発明の「しきい値」)は、上記(a2)(b)(c)(d)を要件として要求するものであるところ、
前者(「累積輻輳許容限界値b」)も、上記(a2)(b)(c)を満たすものであるとはいい得るものの、
前者(累積輻輳許容限界値b)は、左右の3次元映像信号から検出した視差pに基づく関数計算で求められた影響度の値f(p)の累積計算値と比較する限界値であって、「機器メーカが予め設定しておくか、ユーザが個別に調節して設定するか、更には実際の使用時にユーザが疲労度に応じて設定してやるようにする」ものであるから、上記(d)を満たさず、この点で相違するものである。
〈相違点〉
すなわち、引用発明2の上記「累積輻輳許容限界値b」は、上記(d)を満たさず、この点、補正後各発明の上記「しきい値」とは異なるものである。
〈相違点克服の容易想到性〉
この相違点について検討するに、刊行物1、刊行物2の他の記載に、補正後各発明の上記要件(a2)(b)(c)(d)を満たす「しきい値」を含む「情報」の存在または示唆を見いだすことはできない。
したがって、上記相違点の克服は困難であり、刊行物1,2に基づいて上記補正後発明の主要構成が容易になし得るもの、とすることはできない。また、刊行物1,2のいずれにも、上記主要構成に至るに足りる動機付けも見いだすことができない。

イ-2「立体映像信号の視差量(立体度)」
補正後各発明の「立体画像の立体強度を示す情報」に関連して、刊行物2には、図6?図8の第2の実施形態の発明(引用発明2’)(段落【0018】?【0021】)が記載されている。

〈引用発明2’〉
図6に示される再生側の映像システムであって、
図5に示した第1の実施の形態と同様の構成の疲労度評価部3の視差に対応する関数値f(p)と輻輳許容限界値aとを比較する第1の比較部からの出力信号(視差抑制信号)、及び視差に対応する関数値f(p)の累積計算値と累積輻輳許容限界値bとを比較する第2の比較部からの出力信号(視差抑制信号)に基づいて、立体映像信号の視差量(立体度)を抑制視差量、すなわち例えば継続して観察しても疲労しない、累積疲労許容値に対応する目標視差量(抑制立体度)に変換し、抑制立体映像信号を出力するように構成した映像システム。

〈補正後各発明との比較〉
引用発明2’の「立体映像信号の視差量(立体度)」と、
補正後各発明の制御情報に含まれる「立体画像の立体強度を示す情報」、
すなわち、「立体画像の表示を制御するための制御情報であって、符号化され送出された立体画像表示装置において表示させる立体画像を平面画像へ切替えるための情報であって、立体画像の立体強度を示す情報」
とを比較する。

後者(補正後各発明の「立体画像の立体強度を示す情報」)は、前記のとおり、上記(a1)(b)(c)(d)を要件として要求するものであるところ、
前者(「立体映像信号の視差量(立体度)」)は、上記(a1)(b)を満たし、上記(c)についても、類似するものであるものの、
再生側で、左右の3次元映像信号から検出した視差に基づく量であるから、上記(d)を満たさず、この点で明確に相違するものである。
〈相違点〉
すなわち、引用発明2’の上記「立体映像信号の視差量(立体度)」は、補正後各発明の上記「立体画像の立体強度を示す情報」とは異なるものである。
〈相違点克服の容易想到性〉
この相違点について検討するに、刊行物1の「グローバル視差ベクトル」は、前記のとおり、多視点画像の、視差のない背景画像とは別の視差のある部品画像についての視差量を用いて視差補償予測を行う際の、視差ベクトルであって、復号に必須とされる符号化データの一部として符号化される情報であるから、
そもそも、再生側で、左右の3次元映像信号から検出した視差に基づくものであって復号に必須でもない引用発明2’の「立体映像信号の視差量(立体度)」とは、その技術的意義において全く異なるものであり、
刊行物1の「グローバル視差ベクトル」があるからといって、復号に必須でもない引用発明2’の「立体映像信号の視差量(立体度)」を、符号化側から符号化データに多重するという上記(d)の技術思想に容易に至るとはいえない。
また、他に、上記(b)(c)(d)を満たす「立体画像の立体強度を示す情報」の存在または示唆も見いだせない。
したがって、上記相違点の克服は困難であり、刊行物1,2に基づいて上記補正後発明の主要構成が容易になし得るもの、とすることはできない。また、刊行物1,2のいずれにも、上記主要構成に至るに足りる動機付けも見いだすことができない。

(2-4)まとめ(刊行物1,2)
以上によれば、補正後各発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

(3)まとめ(独立特許要件)
また、他に、補正後各発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
以上、補正後各発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、第17条の2第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。

【3】本願各発明
上記のとおり、平成20年7月2日付けの手続補正を認めることから、
本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、平成20年7月2日付け手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載した事項により特定されるとおりのものである(上記補正後各発明と同じ、以下「本願各発明」という。)。

【4】拒絶査定の検討
本願各発明は、補正後各発明の独立特許要件についてした上記判断での理由と同じ理由により、
発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定に違反する、とはいえず、上記理由Aによる拒絶査定を維持することはできないし、
刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、上記理由Cによる拒絶査定を維持することはできない。
また、本願各発明が刊行物1に記載された発明であるといえないことも、上記判断で示したことから明らかであり、上記理由Bによる拒絶査定を維持することはできない。

【5】むすび
以上のとおりであるから、
本願の請求項1及び請求項2までに係る発明は、上記刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、
または、本願の請求項1及び請求項2までに係る発明は、上記刊行物1に記載された発明である、
という原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定に違反する、という原査定の理由によっても本願を拒絶することはできない。

また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-03-09 
出願番号 特願2002-318895(P2002-318895)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 531- WY (H04N)
P 1 8・ 113- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 佐藤 直樹
小池 正彦
発明の名称 立体画像表示装置、立体画像符号化装置、立体画像復号装置、立体画像記録方法及び立体画像伝送方法  
代理人 今村 健一  
代理人 平木 祐輔  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 関谷 三男  
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