• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1233096
審判番号 不服2009-570  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-07 
確定日 2011-03-04 
事件の表示 特願2006-288057号「多心同軸ケーブル及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-108476号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年10月23日の出願であって、平成20年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年1月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成21年2月4日に手続補正がなされたものである。

第2.平成21年2月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年2月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
補正前の「多心同軸ケーブルの製造方法」に係る発明である特許請求の範囲の請求項5が、本件補正により特許請求の範囲の請求項2となって、
「【請求項2】複数本の同軸ケーブルの外被を取り除いて、外部導体、絶縁体及び中心導体を段状に所定長さで順次露出させ、両端縁部に係止爪部を有して断面コ字形状に形成されるグランドバーの隣接する前記係止爪部の間の溝に前記同軸ケーブルを係入して少なくとも前記外部導体を係止して前記グランドバーの上方より平板の押さえ部材を前記係止部材に被せて前記押さえ部材と前記外部導体と前記グランドバーとを半田で固着することを特徴とする多心同軸ケーブルの製造方法。」と補正された。
(なお、「前記係止部材」は、係止部材が前記されていないことから「前記係止爪部」の誤記と認める。)

上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「押さえ部材」について、「平板」であること、及び「係止部材(係止爪部)に」被せることを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項5に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号において規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。

そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物:特開2006-49261号公報

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物には、「コネクタ」に関して以下の記載がある。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと接続するコネクタにおいて、前記コネクタは、前記ケーブルを整列保持する保持部材を備え、前記保持部材は、第1の保持部材と、第2の保持部材とを有し、前記第1の保持部材は、前記第2の保持部材を保持固定する複数の固定部を有し、前記第1の保持部材と、前記第2の保持部材とにより、前記ケーブルを挟持したことを特徴とするコネクタ。」

イ.「【0080】
図23及び図24を参照すると、細線同軸ケーブル50の一端は外部導体53が露出するように、外皮部54が除かれた状態であって、絶縁部52及び中心導体51は露出していないが、ケーブル整列部材15´とした後に、取り付けられ挟み込まれた細線同軸ケーブル50よりもさらに先端部の外部導体53及び絶縁部52を順次除去して、先の図13に示すように、中心導体51を露出させることも可能である。
【0081】
図22、図23及び図24に示されるように、上側金属プレート13は、天井部7aとの両側に長さ方向に渡って設けられた溝7bを備え、この溝7b形成によって裏側には、突出部8を備えた断面形状が台形の金属板から構成されている。
【0082】
また、図21、図23及び図24に示されるように、下側金属プレート12は、中央に長さ方向に沿って設けられた突条部5を備え、その両側には、逆L字形状でその先端部が互いに対向した押さえ爪6を夫々長さ方向に等ピッチで並んだ櫛歯形状をなして複数備えている。また、押さえ爪6間に切欠き部6aを突条部5の両側に備えている。さらに、両側にコネクタに収容されるための支持片37を備え、この支持片37は、コネクタへの装着によってシェルと電気接続される構成となっている。
【0083】
次に、本発明の第5の実施の形態によるケーブル整列部材15´の作用について説明する。
【0084】
図23及び図24を参照して、細線同軸ケーブル50は、中心導体51とその周りの絶縁部52と、更にその周囲に外部導体53、及びその周囲を覆う外皮部54を備えている。その細線同軸ケーブル50の一端付近は、夫々下側金属プレート12の押さえ爪3(「押さえ爪6」の誤記と認める。)の間に夫々の外部導体53が挟み込まれて、これらの外部導体が若干潰される状態で、固定部をなす押さえ爪6をくぐらせながら、上方から上側金属プレート13が装着される。その際に、押さえ爪6の先端は、開放した状態であるが、上側金属プレート13によって下方に押し込まれると、互いにケーブルの長さ方向に対向する押さえ爪6の先端が互いに近接してその距離が狭まった状態、即ち、閉成した状態となり、上側金属プレート13が両側上面に形成された溝7b内に係合した状態で,上側金属プレートが長さ方向に摺動移動して、図24に示した状態で保持され、外部導体53は、突条部5及び突起部8とによって挟み込まれて接触し、機械的に且つ上下金属プレート12,13と細線同軸ケーブル50の外部導体53と電気的に接続され、図24に最も良く示されるように、上側金属プレート13の凸部8及びその間の凹部と、下側金属プレート12の突条部5とによって、蛇行状に保持固定された状態のケーブル整列部材15´が形成される。」(下線部当審にて加入)

ウ.「【0090】
しかしながら、本発明の第5の実施の形態による本コネクタは、所定のピッチ形状に配列された複数本の同軸ケーブルの外皮部が切除された外部導体露出部が、ケーブル整列保持部を持った第1の保持部材12で整列され、第2の保持部材13でケーブルを挟持し、一括グランド接続することができる。」

さらに、【図23】?【図24】からは、第1の保持部材(下側金属プレート)12が、その両端縁部に押さえ爪6を備えることにより断面コ字形状をなしていること、及び押さえ爪6の先端に上側金属プレート13が係合していることが看取できる。また、上記イ.段落【0080】の記載において引用された【図13】の記載から、同軸ケーブルに関して、外皮部54を取り除いて、外部導体53、絶縁部52及び中心導体51を段状に所定長さで順次露出させていることが看取できる。

以上の記載(ア.?ウ.)及び図面の記載を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数本の同軸ケーブルの外皮部54を取り除いて、外部導体53、絶縁部52及び中心導体51を段状に所定長さで順次露出させ、両端縁部に押さえ爪6を有して断面コ字形状に形成される下側金属プレート12の押さえ爪6の間に同軸ケーブル50の一端付近の外部導体53が挟み込まれて、下側金属プレート12の上方から上側金属プレート13を、押さえ爪6の先端に係合するように装着することにより、上側金属プレート13と外部導体53と下側金属プレート12とを保持固定する多心同軸ケーブルの製造方法。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「外皮部54」は本願補正発明の「外被」に、以下同様に、「外部導体53」は「外部導体」に、「絶縁部52」は「絶縁体」に、「中心導体51」は「中心導体」に、「押さえ爪6」は「係止爪部」に、「下側金属プレート12」は一括グランド接続を行うためのものであるから「グランドバー」に、「上側金属プレート13」は「押さえ部材」に、「押さえ爪6の間に同軸ケーブル50の一端付近の外部導体53が挟み込まれ」ることは、「隣接する前記係止爪部の間の溝に前記同軸ケーブルを係入して少なくとも前記外部導体を係止」することに、「下側金属プレート12の上方から上側金属プレート13を、押さえ爪6の先端に係合するように装着」することは、「グランドバーの上方より押さえ部材を係止部材(係止爪部)に被せ」ることに、「保持固定」は「固着」にそれぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「複数本の同軸ケーブルの外被を取り除いて、外部導体、絶縁体及び中心導体を段状に所定長さで順次露出させ、両端縁部に係止爪部を有して断面コ字形状に形成されるグランドバーの隣接する前記係止爪部の間の溝に前記同軸ケーブルを係入して少なくとも前記外部導体を係止して前記グランドバーの上方より押さえ部材を前記係止部材(係止爪部)に被せて前記押さえ部材と前記外部導体と前記グランドバーとを固着する多心同軸ケーブルの製造方法。」

[相違点1]
押さえ部材に関して、本願補正発明においては「平板」であるのに対し、引用発明においては「平板」であるかどうか不明な点。

[相違点2]
押さえ部材と外部導体とグランドバーとを固着するにあたって、本願補正発明においては「半田」によるものであるのに対し、引用発明においては「下側金属プレート12(グランドバー)の上方から上側金属プレート13(押さえ部材)を押さえ爪6(係止爪部)の先端に係合するように装着」することにより行う点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明において、押さえ部材を「平板」とする程度のことは、構造を簡単にしてコストを削減する等の一般的な課題のもと、当業者が容易になし得たことである。
また、この点につき、原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、特開2005-209613号公報の記載においても、押さえ部材に相当する良導体19を平板で構成(図7?16を参照)することが開示されている。

[相違点2について]
同軸ケーブルをグランドバー等に保持、固着するための手段として半田を用いることは、周知(特開2006-49261号公報、特開2005-209613号公報(いずれも原査定の拒絶の理由において引用文献等1,2として引用されたもの)の従来例の記載を参照)であり、押さえ部材と外部導体とグランドバーとを固着する手段として、引用発明の「下側金属プレート12(グランドバー)の上方から上側金属プレート13(押さえ部材)を押さえ爪6(係止爪部)の先端に係合するように装着」することに代えて、周知の半田によるものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明により得られる効果も、引用発明に基づいて、当業者であれば 予測できた範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願の発明
本件補正は上述のように却下されたので、本願の請求項5に係る発明は、平成20年10月30日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
(以下、「本願発明」という。)

「【請求項5】
複数本の同軸ケーブルの外被を取り除いて、外部導体、絶縁体及び中心導体を段状に所定長さで順次露出させ、両端縁部に係止爪部を有して断面コ字形状に形成されるグランドバーの隣接する前記係止爪部の間の溝に前記同軸ケーブルを係入して少なくとも前記外部導体を係止して前記グランドバーの上方より押さえ部材を被せて前記押さえ部材と前記外部導体と前記グランドバーとを半田で固着することを特徴とする多心同軸ケーブルの製造方法。」

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物とその記載内容は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。

3.発明の対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、上記「第2.1.」に記載した限定を省いたものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-19 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-27 
出願番号 特願2006-288057(P2006-288057)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 稲垣 浩司
松下 聡
発明の名称 多心同軸ケーブル及びその製造方法  
代理人 山口 幹雄  
代理人 高城 政浩  
代理人 二島 英明  
代理人 中野 稔  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ