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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1233114
審判番号 不服2009-25909  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2011-03-02 
事件の表示 特願2004-529231「エッチングプロセスにおいてフォトレジストを硬化させるための方法および組成」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日国際公開、WO2004/017390、平成17年11月24日国内公表、特表2005-535936〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2003年7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年8月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月5日に国際出願翻訳文提出書により特許請求の範囲および明細書の翻訳文が提出され、平成18年10月2日付けで特許請求の範囲に係る手続補正がなされ、平成21年1月27日付けで通知された拒絶の理由に対して、同年8月3日付けで手続補正書および意見書が提出されたが、同年8月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
その後当審において審尋がなされたのに対し、回答書が平成22年7月16日に提出されている。

第2.平成21年12月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年12月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成21年12月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成21年8月3付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?24を、以下のとおりとするものである。(なお、下線は、請求人が補正の際に記載したものである。また、一部の請求項について転記を省略した。)

「 【請求項1】
フォトレジスト材料のパターンを上部に有するウエハをエッチングする方法であって、
エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程と、
前記ウエハのメインエッチングを行う工程と
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記臭素を含むプラズマは高密度プラズマであり、前記フォトレジスト材料を処理する工程では、前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされない、方法。
【請求項3】?【請求項11】(当審注;省略)
【請求項12】
ウエハ上のフォトレジスト材料のパターンを硬化させるための方法であって、
臭素を含むプラズマを準備する工程と、
フォトレジスト層の除去を抑制するために、前記臭素を含むプラズマに前記フォトレジスト材料を晒すことによって前記フォトレジスト材料を硬化し物理的に安定化し、エッチングを行なう工程で、前記ウエハの前記フォトレジスト材料の下の一層が終端までエッチングされないよう、処理を行なう工程と
を備える方法。
【請求項13】(当審注;省略)
【請求項14】
プラズマ処理装置において、ウエハ上のフォトレジスト材料の除去の抑制のために、前記フォトレジスト材料を硬化し物理的に安定化することで、前記フォトレジスト材料を処理するための高密度プラズマの混合物であって、
臭素を含む、混合物。
【請求項15】
フォトレジスト材料のパターンを上部に有するウエハをエッチングする方法であって、
前記ウエハの前記フォトレジスト材料より下の層をエッチングするための活性プラズマを生成するエッチャント混合物を準備する工程と、
前記フォトレジスト材料を硬化させるための活性臭素を含むプラズマを準備する工程と、
前記活性臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって、前記フォトレジスト層の除去を抑制しつつエッチングを行なう工程と
を備える方法。
【請求項16】
フォトレジスト材料のパターンを上部に有するウエハを、前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料の除去を抑制しつつ、エッチングするための混合物であって、
炭化フッ素と、臭素含有分子と、を備える混合物。
【請求項17】
請求項1ないし13のいずれかに記載の方法であって、更に、
前記ウエハをプラズマエッチングツール内に置く工程を備え、
前記フォトレジストを硬化させる工程では、前記ウエハが前記プラズマエッチングツール内にあるあいだに実施され、かつ前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされず、
前記臭素を含むプラズマ中の臭素種は、前記フォトレジスト材料の硬化を引き起こし、
前記メインエッチングを行う工程は、前記硬化されたフォトレジストをエッチングマスクとして用いて実施される、方法。
【請求項18】 (当審注;省略)
【請求項19】
請求項1ないし13、および17のいずれかに記載の方法であって、
前記フォトレジスト材料を硬化させる工程は、
臭素を含む硬化ガスを前記エッチングツール内に供給する工程と、
前記硬化ガスからプラズマを発生させる工程と
を含み、
前記メインエッチングを行う工程は、前記硬化ガスとは異なるエッチングガスを使用する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記硬化ガスから発生するプラズマは、10^(10)イオン/cm^(3)を超える、方法。
【請求項21】
請求項19ないし20のいずれかに記載の方法であって、
前記フォトレジスト材料を硬化する工程は、更に、0から740Wまでの間のバイアスパワーを供給する工程を含む、方法。
【請求項22】(当審注;省略)
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、更に、
前記ウエハをプラズマエッチングツール内に置く工程を備え、
前記臭素を含むプラズマを準備する工程は、
臭素を含む本質的に純粋な硬化ガスを前記エッチングツール内に供給する工程と、
前記臭素を含む本質的に純粋な硬化ガスを活性化させ、臭素種を含み且つおよそ1×10^(10)イオン/cm^(3)を超えるプラズマ密度を有するプラズマを発生させる工程と、
を含み、
前記フォトレジスト材料を晒す工程では、前記フォトレジスト材料を硬化させ、かつ前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされず、
前記臭素種は、前記フォトレジスト材料の硬化を引き起こす、方法。
【請求項24】(当審注;省略)」

2.補正の適否の判断
2.1 新規事項追加について
上記本件補正のうち、請求項2、17および23に関して、それぞれ、請求項2には「(i)前記フォトレジスト材料を処理する工程では、前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされない」、請求項17については、「前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされず」、請求項23に関して「かつ前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされず」との要件が追加されている。
この補正の根拠について、請求人は、審判請求書にて、「本願図1、図3に示された断面に基づきます。図示されているように、本願のフォトレジスト材料を処理する工程では、ポリマー層は形成されていないことは、図1、図3および明細書にポリマー層の形成に関する記載がないことから明らか・・・」と説明している。
しかしながら、仮に、図1および図3が示す局面において、図面にポリマー層の形成されていないとしても、これらの図が示す局面は「本願のフォトレジスト材料を処理する工程」、すなわち、「臭素を含むプラズマ」による処理の前であるので、「フォトレジスト材料を処理する工程では、前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされない」ことを示すものではない。
また、明細書にポリマー層の形成に関する記載はないものの、「本願のフォトレジスト材料を処理する工程」、すなわち、「臭素を含むプラズマ」により「ポリマー層」が形成されていないことを示す根拠であるとは認められない。
この根拠に関し、さらに、請求人は、回答書において、次のように、新規事項に当たらないと主張する。

『「明細書段落0018には「硬化工程中は、材料がほとんど除去されないことが好ましい。しかしながら、メインエッチングに先立つ硬化工程中も、ARC層104およびフォトレジスト材料102からある程度の材料が除去される可能性がある。」と記載されており、段落0020には、「また、硬化工程中に除去されるフォトレジスト材料の量に基づいて、実質的でない材料の除去が発生したと判断することができる。失われるフォトレジスト材料の量は、およそ600Å以下であれば良く、好ましくはおよそ500Å以下、更に好ましくはおよそ400Å以下、最も好ましくは300Å以下である。もとから存在していたフォトレジスト材料に対する失われたフォトレジスト材料の割合は、およそ30%以下であれば良く、好ましくは12%以下、更に好ましくは5%以下である。」と記載されています。これらの記載から、硬化工程中に、フォトレジスト材料が失われること、少なくとも増加はしないことが理解できます。仮にフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされるのであれば、フォトレジスト材料の厚みは増加する筈です。段落0020の記載のように、フォトレジスト材料の厚みが低減しているということは、つまり、フォトレジスト材料によるポリマー層の形成はなされないことを意味していると解することができます。』

しかしながら、材料が除去されないことと、材料の除去を低減することが好ましいこと、と、および、フォトレジスト材料のパターンの厚みが増加することとは互いに関連するとはいえ、別の問題である。
すなわち、材料が除去されないことが好ましく、除去されるための減少量の上限を決めていることは、厚みが変化しないか低減することのみであって、増大する可能性がないということではない。
また、ポリマー層が形成されるのは、除去されるフォトレジスト材料が再蒸着することによるものであって、フォトレジスト材料由来の成分もプラズマ重合するが、除去されたフォトレジスト材料の分以上の体積を以て再蒸着するとも限らず、下記摘記1g.【図3】では厚みが増しているように見えるもいえるものの、図面の上でのことであり、必ずしも厚みが増大することを要件としているとは限らない。
反対に、厚みが減少しているからといって、ポリマー層が形成されないとは限らない。
すなわち、除去されるフォトレジスト材料の分より少ない範囲で、ポリマー層が形成されている場合が考えられる。
さらに、合理的には、フォトレジスト材料がほとんど除去されないという請求人の主張をそのまま受け容れるとしても、フォトレジスト材料のパターンは臭素を含むプラズマを用いた「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」が行われるのであるから、プラズマ処理された表面を中心に、内部とは異なる「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」された表面層が形成されると認められる。この表面層は、ポリマーを含むフォトレジスト材料が「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」したものであって、「ポリマー層」が実質的に形成されているといえる。
してみると、請求人の主張する、本願発明においては、「ポリマー層が形成されない」とする根拠は不明である。

よって、請求項2に関して、「(i)前記フォトレジスト材料を処理する工程では、前記除去されたフォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされない」との要件を追加する補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内ではないので、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
請求項17および23に関しても同様である。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2.2 独立特許要件について
上記2.1に記載したとおり、本件補正は、新規事項を追加するものであって、適切になされたものではないが、一応、該新規事項を追加する補正を含まない、請求項1に関する補正について、以下に検討しておく。
請求項1に関する補正については、本件補正前、平成21年8月3日付けの手続補正書により補正された請求項1の「エッチングに先立って、臭素を含むプラズマによって前記フォトレジスト材料の除去を抑制しつつ硬化させる工程」を、「エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程」としたものであって、「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」を行うことを要件とした点で、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについても以下に検討しておく。

2.2.1.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の優先日前に頒布された特開2001-223207号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)
1a.「【請求項1】 半導体基板上部に、パッド酸化膜とハードマスク層の積層構造の絶縁膜を形成する工程、前記絶縁膜上部に素子分離領域を露出させるためのフォトレジストパターンを形成する工程、前記フォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて前記絶縁膜をエッチングして半導体基板を露出させて、絶縁膜パターンを形成する工程、前記フォトレジストパターン及び絶縁膜パターンの表面にポリマー層を形成する工程、前記ポリマー層をエッチングマスクとして用いて、前記露出した半導体基板をエッチングして素子分離用トレンチを形成する工程及び前記トレンチを埋め込み、素子分離膜を形成する工程を含むことを特徴とするエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法。
【請求項2】 前記ポリマー層を、高密度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)装備でプラズマ因子を調節して形成する請求項1記載のエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法。
【請求項3】 前記プラズマ因子を、圧力10?50mTorr、ソースパワー(Source Power)600?2000W、バイアスパワー(Bias Power)0?100Wに設定する請求項2記載のエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法。
【請求項4】 前記ポリマー層を、Cl_(2)、HBr、SF_(6)及びCF_(4)からなる群より選ばれた一種以上のガスを主要ガスにし、該ガスを前記HDPCVD装備内に注入して形成する請求項2又は3記載のエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法。」

1b.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この場合、トレンチエッチング工程中フォトレジストが腐蝕する現象が発生し、望むパターンを半導体基板上にありのまま具現し難い問題点がある。
【0004】そこで本発明は、例えばデザインルール0.10μm以下の技術を適用して高集積化された半導体素子を形成する工程において、フォトレジストに対する選択比を向上させて、所期のパターンを半導体基板上に正確に具現できるエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】また、本発明は、例えばデザインルール0.10μm以下に高集積化された半導体素子であって、所期のパターンが正確に具現された半導体素子を提供することを目的とする。」

1c.「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。 図1乃至図4は、本発明に係るエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法により素子分離用トレンチを形成する工程断面図である。
【0009】本発明方法を実施するにあたっては、先ず、図1に示すように、半導体基板(10)上部にパッド酸化膜(21)及びハードマスク層(22)をこの順に形成する。このとき、前記ハードマスク層(22)はシリコン窒化膜(Si_(3)N_(4))、シリコン酸化窒化膜(SiON)、又はシリコン酸化膜(SiO_(2))中の一つで形成する。
【0010】次いで、前記ハードマスク層(22)上部にフォトレジストパターン(30)を形成する。前記フォトレジストパターン(30)はハードマスク層(22)の表面全体の上部にフォトレジストを塗布し、これを素子分離用露光マスクを利用した露光及び現像工程で形成したものである。
【0011】次いで、図2に示すように、前記フォトレジストパターン(30)をマスクにして前記ハードマスク層(22)及びパッド酸化膜(21)の積層構造の絶縁膜(20)をエッチングし、前記半導体基板(10)表面を露出させる。
【0012】次いで、図3に示すように、前記半導体基板(10)上部の構造物表面にポリマー層(40)を形成する。
【0013】このとき、前記ポリマー層(40)は前記半導体基板(10)のエッチング工程の前にエッチング装備内に、Cl_(2)、HBr、SF_(6)及びCF_(4)等のうちの1又は2以上のガスを主要ガス(main gas)として注入し、前記エッチング装備内のプラズマ因子(plasma parameter)を調節しプラズマ重合反応を発生させて形成することができる。ここで、前記主要ガスは10?100sccm程度の流速で注入することができる。より好ましくは30?70sccm程度の流速である。さらに、前記ポリマー層(40)の形成時に補助ガスとしてO_(2)、N_(2)及びアルゴン等の不活性ガス等からなる群より選択される一種以上のガスをエッチング装備内に注入することができ、これによりポリマーの結合力を強くすることができる。
【0014】前記ポリマー層(40)の形成時、前記エッチング装備としては、高密度プラズマ化学気相成長(High Density Plasma Chemical Vapor Deposition、HDPCVD)装備を主に用いることができる。この際、エッチング前にポリマー層(40)を形成させるためのプラズマ因子は、圧力10?50mTorr程度、ソースパワー(Source Power)600?2000W程度、バイアスパワー(Bias Power)0?100W程度に設定することができる。
【0015】次いで、図4に示すように、前記ポリマー層(40)をマスクにし前記半導体基板(10)をエッチングしてトレンチ(50)を形成する。次いで、前記ポリマー層(40)とフォトレジストパターン(30)を除去し、前記トレンチ(50)を絶縁物で埋め込み素子分離膜(未図示)を形成する。さらに、常法に従い平坦化を行えばよい。
【0016】以上の方法により本発明に係る半導体素子を製造することができる。
【0017】前記本発明のエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法において、前記ポリマー層(40)を生成する原理は次の通りである。
【0018】前記エッチング装備内で低電力及び高圧の条件では、イオン衝撃(ion bombardment)効果による反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;以下“RIE”と略称する)特性が減少し、エッチング副産物の再蒸着(redeposition)が生じる。即ち、エッチング工程に先立ちエッチング装備内のプラズマ因子をポリマー形成に適するよう調節すれば、フォトレジストパターン(30)の炭素、絶縁膜(20)のシリコン、主要ガスのハロゲンのような成分等がプラズマ重合反応し、フォトレジストパターン(30)及び絶縁膜(20)の表面にポリマー層として再蒸着される。前記再蒸着されたポリマー層はプラズマにより容易にエッチングされない層であるため、効果的にフォトレジストの保護の役割を果たすことになる。このとき、前記ポリマー層(40)は主にフォトレジストの炭素(C)、絶縁膜のシリコン(Si)、主要ガスのハロゲン(X)のような成分等で構成される。ここで、前記ポリマー層(40)はハロゲン族で構成されたプラズマに化学的に容易に反応せず、ただ、プラズマにより生成した大きいエネルギーを有するイオンによってのみ物理的に腐蝕(physically erosion)するため、フォトレジスト選択比を極大化させることができる。」

1d.「【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明のエッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法及び半導体素子によると、トレンチエッチング前にエッチングマスクとして用いるフォトレジストパターンの表面にポリマーを発生させ、該ポリマーをトレンチエッチング時にフォトレジスト腐蝕(erosion)のための保護膜(protective layer)として作用させる。これにより、フォトレジストのエッチング抵抗性を向上させ、フォトレジストに対する選択比を向上させて、薄いフォトレジスト(thin PR)を適用し、深いトレンチを形成することができるようにして、フォトレジストマージンを拡張させることができる。そして、これにより、高集積化された半導体素子を製造する場合にも所期のパターンを半導体基板上に正確に具現することができる。」

1e.「【図1】



1f.「【図2】



1g.「【図3】



1h.「【図4】



これら記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

(刊行物1発明)
「半導体基板上部に、パッド酸化膜とハードマスク層の積層構造の絶縁膜を形成する工程、前記絶縁膜上部に素子分離領域を露出させるためのフォトレジストパターンを形成する工程、前記フォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて前記絶縁膜をエッチングして半導体基板を露出させて、絶縁膜パターンを形成する工程、前記フォトレジストパターン及び絶縁膜パターンの表面にポリマー層を、高密度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)装備でプラズマ因子を調節して形成する工程であって、HBrを含む一種以上のガスを主要ガスにし、該ガスを前記HDPCVD装備内に注入する工程、前記ポリマー層をエッチングマスクとして用いて、前記露出した半導体基板をエッチングして素子分離用トレンチを形成する工程及び前記トレンチを埋め込み、素子分離膜を形成する工程を含む、エッチングポリマーを利用した半導体素子の製造方法。」

2.2.2.対比・判断
刊行物1発明と本願補正発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「半導体基板」「フォトレジストパターン」は、それぞれ、本願補正発明の「ウエハ」「フォトレジスト材料のパターン」に相当する。
(イ)刊行物1発明における「パッド酸化膜とハードマスク層の積層構造の絶縁膜を形成する工程」「前記絶縁膜上部に素子分離領域を露出させるための」「絶縁膜をエッチングして半導体基板を露出させて、絶縁膜パターンを形成する工程」は、本願補正発明においても、ウエハには、半導体デバイス製造に係る各種の層が介在することを想定しており、相違点とはならない。
(ウ)刊行物1発明の、「高密度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)装備でプラズマ因子を調節して形成する工程」における、「HBrを含む一種以上のガス」は、本願補正発明の、「臭素を含むプラズマ」に相当する。
よって、刊行物1発明の、「前記フォトレジストパターン及び絶縁膜パターンの表面にポリマー層を、高密度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)装備でプラズマ因子を調節して形成する工程であって、HBrを含む一種以上のガスを主要ガスにし、該ガスを前記HDPCVD装備内に注入する工程」と、
本願補正発明の、「前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程」とは、
「臭素を含むプラズマを用いて前記フォトレジスト材料を処理する工程」である点で共通する。
(エ)刊行物1発明の「前記ポリマー層をエッチングマスクとして用いて、前記露出した半導体基板をエッチングして素子分離用トレンチを形成する工程及び前記トレンチを埋め込み、素子分離膜を形成する工程」は、前工程に引き続いて「エッチング」を行って目的とするトレンチを得るので、「本願補正発明の、前記ウエハのメインエッチングを行う工程」に相当する。
(オ)刊行物1発明において、前記(ウ)で記述した工程は、前記(エ)で記述した工程の前にあるので、
本願補正発明の、前記(ウ)で記述した工程が「エッチングに先立って」行われることとは、
両者の前記(ウ)で記述した工程が、「メインエッチングに先立って」行われる点で共通する。

よって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「フォトレジスト材料のパターンを上部に有するウエハをエッチングする方法であって、
メインエッチングに先立って、
臭素を含むプラズマを用いて前記フォトレジスト材料を処理する工程と、
前記ウエハのメインエッチングを行う工程と
を備える方法」
である点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点1;「メインエッチングに先立って、臭素を含むプラズマを用いて前記フォトレジスト材料を処理する工程」について、
本願補正発明では、「エッチングに先立って」行うのに対し、
刊行物1発明では、「絶縁膜」を「エッチング」した後に行われる点。

相違点2;同じく、「臭素を含むプラズマを用いて前記フォトレジスト材料を処理する工程」について、
本願補正発明では、フォトレジスト材料の除去の抑制のため、フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によってフォトレジスト材料を処理するものであるのに対し、
刊行物1発明では、フォトレジストパターン及び絶縁膜パターンの表面にポリマー層を形成するものである点。

上記一応の相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1発明では、先に、フォトレジストパターン下層の絶縁膜」をエッチングしている。しかしながら、一度エッチングが行われているにしても、いわゆるメインエッチングとされる「エッチング」に先立っている点では差異はない。
よって、この相違点1は、実質的に相違点ではない。
仮に、本願補正発明の「エッチングに先立って」が全てのエッチングに先立って、行われることを意味するにしても、引き続き行われるメインエッチングに先だって、フォトレジスト材料のパターンを、エッチングされにくくなるという点で共通する技術思想を有するものである。
その前のエッチング工程の有無は、その技術思想においては、格別の問題とはならない。

(相違点2について)
まず、臭素を含むプラズマを用いてフォトレジスト材料を処理する工程という点では工程の動作の点で差異はない。
そして、本願明細書(例えば、段落【0006】、【0030】)の記載からみて、「臭素を含むプラズマ」による処理がフォトレジスト材料の硬化をもたらしているので、当該処理により、同様の作用効果が得られると認められ、「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって」との作用効果を記載した点についても差異はないといえる。
次に、「フォトレジスト材料の除去の抑制のため」との修飾は、結果的には、刊行物1発明においても、当該処理によりフォトレジストを含むエッチング副産物が再蒸着し、「フォトレジストの保護の役割」を果たす(上記摘記1c.【0018】、1d.)ので、結果として、フォトレジストの硬化および物理的な安定化がなされていることは明らかである。
途中段階で、僅かなエッチングがなされているか否かは、本願補正発明の構成上の差異とはならない。
すなわち、本願補正発明が、実際には、エッチング副産物の再蒸着によらないとしても、刊行物1発明を包含する概念であるといえる。

してみると、両者に相違点はなく、本願補正発明と刊行物1発明は、一致する。
仮に、相違したとしても、臭素を含むプラズマを用いてフォトレジストを処理する工程において、メインエッチング工程中のフォトレジスト材料のエッチングを抑制するという共通の課題に基づき、プラズマの出力を調整することによって、当業者が容易になし得ることである。

したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条1項第3号に該当するか、あるいは、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.2.3. 独立特許要件のまとめ
したがって、本件補正発明は、特許法第29条1項第3号に該当し、同項の規定により、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.請求人の主張の検討
請求書〈主張1〉、回答書〈主張2〉で請求人は、特に、新規性進歩性について次のように主張する。

〈主張1〉刊行物1には、「エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程」は記載されていない。
刊行物1が開示しているのは、ポリマー層の形成であって、フォトレジスト材料の硬化ではない。
拒絶査定によれば、審査官の、「メカニズムが同一であるか否かは、当該判断を左右しない(特許法29条1項3号に係る判断においては、本願発明は請求項の記載から把握されるものであることに注意されたい。)」との判断は、刊行物1は、段落0018に記載されているように、エッチング副産物の再蒸着を引き起こすようにプラズマ因子を調整するものであり、当然にこのようなメカニズムを引き起こすための構成を備えている。つまり、「エッチング工程に先立ちエッチング装備内のプラズマ因子をポリマー形成に適するように調整」(段落0018)する工程を備えたものであり、しかも、この工程の内実を明確にはしていない。
本願請求項1記載の発明は、これはと異なり、「エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程」という工程を要件とし、図1、図3の断面図に見られるように、ポリマー層の形成を伴わない工程を要件としており、本願請求項1記載の発明と刊行物1の技術とは、その構成において明確に異なる。
半導体の製造プロセスにおいて生じるメカニズムの相違は、かかるメカニズムの相違を引き起こす工程、プラズマ混合物の違いなどとして把握することができ、構成上の相違と言うべきである。
しかも、臭素を含むプラズマを用いたフォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によってフォトレジスト材料を処理する工程というものは、本願出願以前に知られていたものではない。

〈主張2〉
引用文献1の段落0018の記載は、「低電力および高圧の条件では、イオン衝撃効果による反応性イオンエッチング特性が減少し、エッチング副産物の再蒸着が生じる」としているのであって、どのような条件でもポリマー層が形成されるとしているわけではない。むしろ逆に「エッチング工程に先立ちエッチング装備内のプラズマ因子をポリマー形成に適するように調整すれば(中略)ポリマー層として再蒸着される。」としており(段落0018)、何らかの調整を行なって、ポリマー層を形成していることを示唆している。
即ち、刊行物1発明では、臭素を含むプラズマを用いてフォトレジストを処理するとはいうものの、この処理によってポリマー層を生成(再蒸着)させており、この処理はフォトレジスト材料を硬化及び物理的に安定化する処理ではなく、フォトレジスト材料を硬化させず、むしろ不安定にしている。
本願で行なわれているプラズマを用いたフォトレジスト材料の硬化は、明細書段落0016に例示されているように、「高密度プラズマ」により行なわれており、これは低電力・高圧というよりは、高電力・低圧と言うべき条件であり、本願発明は、段落0018、0020に記載したように、臭素を用いたプラズマ処理において、フォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされないという現象を見い出したものであり、エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程を備えたものである。かかる構成は、刊行物1に、何ら記載されていない。
刊行物1が開示しているのは、ポリマー層の形成であって、フォトレジスト材料の硬化ではない。
刊行物1は、段落0018に記載されているように、エッチング副産物の再蒸着を引き起こすようにプラズマ因子を調整するものであり、当然にこのようなメカニズムを引き起こすための構成のみを備えている。
半導体の製造プロセスにおいて生じるメカニズムの相違は、かかるメカニズムの相違を引き起こす工程、プラズマ混合物の違いなどとして把握することができ、構成上の相違と言うべきである。
また、本願発明では、上記特徴を備えた結果、「フォトレジスト材料がプラズマに晒され、プラズマの中の臭素種が活性化されて、フォトレジスト材料102を硬化させるので、フォトレジスト材料102の硬さおよび物理的強度は増大する。高密度プラズマは、フォトレジストを硬化させる工程すなわちメインエッチング前工程216において、プラズマ処理装置が低圧力および高出力で運転された状態で使用される。この硬化工程において、HBrは、ウエハの有効なエッチングを行うのではなく、フォトレジスト材料102を強化させる。」(段落0016)という独自の作用効果を奏する。

上記請求人の主張について検討する。
〈主張1について〉
刊行物1では、フォトレジスト材料が結果的には、プラズマ重合され、その表面にポリマー層ができて、保護の役割を果たしているので、「臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」は行われていると上記で判断したとおりであて、「ポリマー層の形成」が有っても、「フォトレジスト材料」が結果として硬化・安定化していることには変わりない。本願補正発明はポリマー層の形成の有無は要件ではないし、本願補正発明の下位の請求項のように要件としても、実際のところ、ポリマー層が形成されていないともいえない。
次に、「刊行物1」のポリマー層の形成のため、要件とする工程がある点については、その工程の内実を明確にはしていないと主張するが、本願補正発明は、刊行物1の要件を排除したものとは認められないのは上述判断のとおり。
そして、当該分野で、プラズマエッチングで側壁等に保護膜を形成するのは、知られたことであり、その内実が明確でないことは、周知技術で補えるものといえる。
(例えば、本願優先日前に頒布された、特表2001-527287号公報に記載の発明は、塩素ベースのプラズマでパッシベーションポリマを堆積させるものであるが、このプラズマには、Cl_(2)/HBrを含む群から選択されることが記載されており、本願補正発明の「臭素を含むプラズマ」による処理である。)
むしろ、刊行物1発明が特殊な条件下のものであって、本願補正発明の硬化の条件を初めて見いだしたとの主張に従えば、本願補正発明の硬化に対し、内実を明確にしていないのは、本願補正発明の方といえる。すなわち、運転条件の一例は示されているものの、具体的に、どのような条件のフォトレジスト材料に対して適用するか等は記載されていないし、何らのポリマー層も形成しないで硬化させる状態がどのようなものであるのか不明であるので、このような主張は、本願補正発明の記載やそれを支持するべき明細書の記載からは窺えない。
なお、図1、3の断面図がポリマー層の形成を伴わない工程を要件とすることを示さないのは、上記「2.1」で検討したとおりである。
原査定の審査官のいうところの、上記「メカニズムの相違」は、請求項の記載によらないものであって、刊行物1において、本願補正発明の「臭素を含むプラズマを用いたフォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によってフォトレジスト材料を処理する工程」記載から把握できる工程は、実質的に記載されていると認められ、請求人の主張は採用できない。

〈主張2について〉
主張1に加えて、刊行物1発明は、「安定化」せず、「むしろ不安定にしている」と主張しているが、一次的には、エッチングされることは明記されていても、再蒸着後は「不安定」になっているとは到底認められない。
加えて、本願補正発明では、フォトレジスト材料がエッチングされないことを要件としているわけではない。
本願では「高密度プラズマ」であるとの主張も、刊行物1では、「高密度プラズマ化学気相成長装備」を要件としており、その流速の範囲を10?100sccmとしていることから採用できない。
「低電力・高圧というよりは、高電力・低圧と言うべき条件」との主張については、本願の圧力は、5mT、出力1200Wの条件は、刊行物1発明では、10?50mTorrであるので、より低圧でなされているといえるが、本願補正発明は、このような条件を付帯した範囲に限定されているとは到底認められない。
さらに、「本願発明は、段落0018、0020に記載したように、臭素を用いたプラズマ処理において、フォトレジスト材料によるポリマー層の形成がなされないという現象を見い出した」との主張は、「ポリマー層の形成されない」範囲を明らかにしていないので、本願の明細書の範囲内の主張とは認められない。

そして、「半導体の製造プロセスにおいて生じるメカニズムの相違は、かかるメカニズムの相違を引き起こす工程、プラズマ混合物の違いなどとして把握することができ」ると主張している点については、メカニズムの相違を引き起こす工程、プラズマ混合物の違いを、明らかにしていない本願補正発明からはいえることではない。
また、本願補正発明がなんらの「ポリマー層」も形成することなく、フォトレジスト材料を硬化する手段も明らかではない。
請求人が主張する、本願「独自の作用効果」も、フォトレジストが硬化、物理的に安定化されることにより、エッチングに際し、エッチングされにくくなるものであるから、刊行物1発明の作用効果と共通するものである。

したがって、エッチングに先立って、フォトレジスト材料のパターンを硬化、物理的に安定化する、臭素を含むプラズマ処理の点で、本願補正発明と刊行物1発明は、同じであって、請求人の主張は採用できない。
本願では、ポリマー層が形成されないとする主張も採用できない。

なお、「請求項17ないし24については一度も示されていない拒絶理由により拒絶査定がなされており、かかる点で、拒絶査定には違法性がある」との主張も、審判請求の理由、回答書に記載しているが、この点については、次のとおり。
これらの請求項17ないし24に関して新規性進歩性等の拒絶理由が通知されておらず、これらの理由により拒絶査定できない点については、請求人の主張の趣旨のとおりといえる。
しかしながら、原査定において、拒絶査定の対象とされたのは、請求項1ないし16であり、これらの請求項については、拒絶査定の対象としておらず、請求項17ないし24に関しては、「なお書き」として、予備的に進歩性を否定しているにすぎない。
そして、審判請求と同時にされた手続補正で、請求項17ないし24に限定する補正がなされたわけでもなく、補正後の請求項1に係る発明、すなわち、本願補正発明は、依然として、拒絶の理由を有する。
このように、請求項17ないし24に関しては、拒絶査定がなされていないので、「請求項17ないし24については一度も示されていない拒絶理由により拒絶査定がなされており、かかる点で、拒絶査定には違法性がある」という主張に根拠はない。

(なお、予備的に検討しておくと、上記「なお書き」に指摘されているように、請求項17に係る発明は、プラズマによる工程前にプラズマエッチングツール内にウエハを置くという工程、そのツール内で硬化を行う点を加えた内容となっているが、この工程を加えることに進歩性は認められない。請求人もこの点自体については、特段主張はなく、単に、請求項17ないし24に係る発明は従属項であって、従属先請求項が特許性を有するから、特許性を有すると主張しているにすぎない。)

4.補正の適否の判断のむすび
以上、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
または、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年12月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成21年8月3付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?24に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
フォトレジスト材料のパターンを上部に有するウエハをエッチングする方法であって、
エッチングに先立って、臭素を含むプラズマによって前記フォトレジスト材料の除去を抑制しつつ硬化させる工程と、
前記ウエハのメインエッチングを行う工程と
を備える方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2001-223207号公報(「刊行物1」)には、上記「第2. 2.2.1.」に示したとおりの事項が記載されている。

3.対比、判断
本願の請求項1に係る発明は、上記「第2. 1.」欄に示した本件補正発明における、「エッチングに先立って、前記フォトレジスト材料の除去の抑制のため、臭素を含むプラズマを用いた前記フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化によって前記フォトレジスト材料を処理する工程」を、「エッチングに先立って、臭素を含むプラズマによって前記フォトレジスト材料の除去を抑制しつつ硬化させる工程」としたものであって、「フォトレジスト材料の硬化および物理的な安定化」を行うことを要件とする点の限定をを含まないものである。

そうすると、本願の請求項1に係る発明の特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2. 2.2.2.」欄に記載したとおり、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し同項の規定により特許を受けることができないものであり、あるいは、特許法第29条第2号の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-30 
結審通知日 2010-10-05 
審決日 2010-10-18 
出願番号 特願2004-529231(P2004-529231)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 561- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 外川 敬之  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伊藤 裕美
柏崎 康司
発明の名称 エッチングプロセスにおいてフォトレジストを硬化させるための方法および組成  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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