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審決分類 審判 一部無効 1項2号公然実施  H01H
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01H
管理番号 1233719
審判番号 無効2009-800054  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-03-06 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第3117169号発明「レベル・センサ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3117169号の請求項1乃至5に係る発明についての出願は、特願平 5-101428号(平成 5年 4月27日出願、パリ条約による優先権主張 平成 4年 4月28日、スウェーデン王国)であり、平成12年 8月 3日に手続補正がなされ、平成12年10月 6日に設定登録(請求項の数5)されたものである。
そして、平成21年 3月 5日付け(3月 6日受領)で新明和工業株式会社より無効審判が請求され、同年 6月26日付け(6月29日受領)で被請求人 アイティティ ウォーター アンド ウェイストウォーター アクチボラグより答弁書が提出された。
さらに、同年10月26日に口頭審理が行われ、同年10月13日付け(10月15日受領)で被請求人より、同年10月26日付けで請求人より、それぞれ口頭審理陳述要領書が提出された。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1乃至5に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項より特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて、中空本体内に配置したマイクロスイッチ(15)に接続された電気ケーブル(2)に自由懸垂状態に取付けられた中空本体を含み、前記スイッチは前期中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され、平衡重り(9)として設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され、前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチ(15)を直接的に又は間接的に作動するように配置され、前記平衡重りの重量は、前記中空本体(1)、前記マイクロスイッチ(15)、平衡重り(9)、及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段(5,6、7、8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり、前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり、かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり、液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブル(2)から自由懸垂状態にあることを特徴とするレベル・センサ。」(以下「本件特許発明」という。)
【請求項2】 請求項1記載のレベル・センサにおいて、平衡重り(9)の重量は空気に囲まれている時にレベル・センサの全重量の50から80%の間にあるレベル・センサ。
【請求項3】 請求項1記載のレベル・センサにおいて、平衡重り(9)の終端位置は中空本体(1)の固定部分と接触するその表面により決定され、その一方の終端位置にある平衡重りは弾性ヨーク(16)を作動させ、このヨークは又マイクロスイッチ(15)を作動させて電気回路を接続/切離すレベル・センサ。
【請求項4】 請求項2記載のレベル・センサにおいて、平衡重り(9)がその一方の終端位置を取ると、その底面(13)は中空本体(1)に取付けた接続円板(5)と接触し、これはマイクロスイッチ(15)を支持し、平衡重り(9)がその反対の終端位置を取ると、その側面(11,12)の一方が中空本体(1)の内面と接触するレベル・センサ。
【請求項5】 請求項1記載のレベル・センサにおいて、中空本体が主垂直位置を取ると平衡重りはその終端位置の一方を取り、中空本体が主に水平方向に向いた時その他方の終端位置を取るレベル・センサ。


第3 請求人及び被請求人の主張の概略
1.請求人の主張の概略
[請求の趣旨]
特許第3117169号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
との審決を求める。

[請求の理由]
(1)第1の無効理由(補正要件違反による出願日繰り下げに基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア.補正要件違反による出願日繰り下げ
平成12年 8月 3日付け手続補正書において追加された「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成は、原明細書等には全く記載も示唆もされていない新たな発明事項を追加したものであり、明細書の要旨を変更するものである。
したがって、平成5年法律第26号改正前の特許法第40条の規定により、本件特許出願は当該補正をした平成12年 8月 3日に出願したものとみなされる。

証拠方法
甲第6号証の14:本件特許の平成12年 8月 3日付け手続補正書

イ.新規性欠如(特許法第29条第1項第2号)
遅くとも繰り下がった出願日よりもはるか前である平成 7年 8月には、甲第23号証及び甲第36号証で示す本件特許発明の実施品である「フロート式水位制御スウィッチ(レベル・レギュレーター)ENM-10」がフリクト日本株式会社により日本国において販売されており、本件特許の請求項1に係る発明は出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、平成11年改正前特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。

証拠方法
甲第23号証:フリクト・レベル・レギュレーター ENM-10型 取扱説明書
甲第36号証:平成21年10月13日付け報告書(フリクト・レベル・レギュレーター(型番ENM-10)について)
甲第15号証:平成20年 8月22日付訴状

ウ.進歩性欠如(特許法第29条第2項)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第24号証及び甲第19号証(平衡重りの重心位置とセンサ全体の重心位置に関する構成)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
あるいは、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第24号証に記載された発明及び甲第20号証乃至甲第22号証で示される周知技術(平衡重りの重心位置とセンサ全体の重心位置に関する構成)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、平成11年改正前特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。

証拠方法
甲第24号証:特開平 7-288073号公報(本件特許の公開公報)
甲第19号証:実公昭42- 10534号公報
甲第20号証:スペイン特許第295330号公報と訳文
甲第21号証:ドイツ実用新案第6751576号公報と訳文
甲第22号証:実開昭62- 28339号公報

(2)第2の無効理由(出願日繰り下げを前提としない進歩性欠如)
ア.主位的主張(特許法第29条第2項)
本件特許の請求項1に係る発明と主位的主引例である甲第16号証との相違点について、相違点1(可動重りがマイクロスイッチを作動させる点)については、甲第18号証及び甲第19号証に記載されており適用容易である、又は甲第17号証、甲第20号証乃至甲第22号証で示されるように周知技術であり適用容易である。
相違点2(平衡重りの重量比が30%である点)については、設計的事項であって、その数値限定に臨界的意義はない。
相違点3(平衡重りの重心位置とセンサ全体の重心位置)については、甲第19号証に記載されており適用容易である、又は周知技術であり適用容易である。
また、被請求人が主張する本件特許発明の課題は、甲第28号証で示すように一般的かつ自明な課題である。
よって、本件特許は特許法第29条第2項に違反して特許されたものであって、特許法第123条第1第2号の無効事由を有するものである。

証拠方法
甲第16号証:実公昭52- 42767号公報
甲第18号証:スウェーデン特願8405668-8号明細書と訳文
甲第19号証:実公昭42- 10534号公報
甲第17号証:フィンランド特許第42382号公報と訳文
甲第20号証:スペイン特許第295330号公報と訳文
甲第21号証:ドイツ実用新案第6751576号公報と訳文
甲第22号証:実開昭62- 28339号公報
甲第28号証:特公昭30- 9491号公報
甲第15号証:平成20年 8月22日付け訴状
甲第6号証の10:平成11年 2月25日付け(2月26日受領)手続補正書
甲第5号証の2:本件特許の優先権主張の基礎出願であるスウェーデン特願9201303-6に対するスウェーデン特許登録庁による平成 4年10月16日付け指令書と訳文
甲第6号証の6:平成10年 6月25日付け拒絶査定
甲第6号証の5:平成10年 3月16日付け(3月17日受領)意見書

イ.予備的主張(特許法第29条第2項)
本件特許の請求項1に係る発明と予備的主引例である甲第18号証との相違点について、相違点4(平衡重りが回転可能な点)については、単なる設計的事項である、又は予備的副引例1の甲第16号証、予備的副引例2の甲第17号証、予備的副引例3の甲第19号証に記載されており適用容易である。
相違点5(平衡重りの重量比が30%である点)については、設計的事項であって、その数値限定に臨界的意義はない。
相違点6(平衡重りの重心位置とセンサ全体の重心位置)については、予備的副引例3の甲第19号証に記載されており適用容易であり、又は周知技術であり適用容易である。
よって、本件特許は特許法第29条第2項に違反して特許されたものであって、特許法第123条第1第2号の無効事由を有するものである。

証拠方法
甲第18号証:スウェーデン特願8405668-8号明細書と訳文
甲第16号証:実公昭52- 42767号公報
甲第17号証:フィンランド特許第42382号公報と訳文
甲第19号証:実公昭42- 10534号公報

(3)第3の無効理由(明細書のサポート要件違反:特許法第36条第5項第1号違反)
本件特許発明は、その特許請求の範囲の記載中に、「前記平衡重りの重量は、・・・該センサの全重量の少なくとも30%であり」、「センサの中空本体の外形の中心」、「平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」という本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、平成6年改正前特許法36条5項1号に反しており本件特許は、平成6年改正前特許法123条1項4号の無効事由を有するものである。

証拠方法
甲第6号証の12:平成11年10月20日付け審判請求理由補充書
甲第6号証の13:平成12年 7月31日付け拒絶理由通知書
甲第6号証の14:平成12年 8月 3日付け手続補正書

(4)第4の無効理由(構成不可欠要件違反:特許法第36条第5項第2号違反)
本件特許にかかる特許請求の範囲の記載「センサの中空本体の外形の中心」、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」は、いずれも不明確であって、記載が不明瞭または記載内容が技術的に理解できず、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が記載されていない。
よって、本件特許は、平成6年改正前特許法36条5項2号に反しており、平成6年改正前特許法123条1項4号の無効事由を有するものである。

証拠方法
甲第21号証:ドイツ実用新案第6751576号公報と訳文
甲第14号証:大日本百科事典9巻(株式会社小学館発行、昭和46年 5月20日初版第4刷発行、第176-177頁)
甲第7号証:米国特許第3183323号公報と訳文

(5)第5の無効理由(実施可能要件違反:特許法第36条第4項違反)
本件明細書の発明の詳細な説明には、「センサの中空本体の外形の中心」、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」につき、その構成を含む技術内容を明確にする記載が全くなされておらず、当業者が容易にその実施をすることができるだけの記載がなされていない。
よって、本件特許は、平成6年改正前特許法36条4項に反しており、平成6年改正前特許法123条1項4号の無効事由を有するものである。

証拠方法
甲第6号証の13:平成12年 7月31日付け拒絶理由通知書
甲第6号証の14:平成12年 8月 3日付け手続補正書
甲第6号証の12:平成11年10月20日付け審判請求理由補充書
甲第21号証:ドイツ実用新案第6751576号公報と訳文
甲第14号証:大日本百科事典9巻(株式会社小学館発行、昭和46年 5月20日初版第4刷発行、第176-177頁)
甲第7号証:米国特許第3183323号公報と訳文

その他の提出された証拠
甲第5号証の1:本件特許の優先権主張の基礎出願であるスウェーデン特願9201303-6の平成 4年 4月28日付け特許願、明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書と訳文
甲第5号証の3:本件特許の優先権主張の基礎出願であるスウェーデン特願9201303-6の平成 5年 3月 9日付け意見書と訳文
甲第5号証の4:本件特許の優先権主張の基礎出願であるスウェーデン特願9201303-6に対するスウェーデン特許登録庁による平成10年11月 1日付け出願却下と訳文
甲第13号証:本件特許(特許第3117169号)明細書の変遷表


2.被請求人の主張の概略
(1)第1の無効理由に対して
平成12年 8月 3日付け手続補正書において追加された「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成は、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書もしくは図面に記載された事項であるか、又は出願時点において当業者が明細書等に記載された技術内容に照らし記載があると認識しうる程度に自明な事項であるから、明細書の要旨を変更するものではなく平成5年改正前特許法第40条は適用されない。
よって同条の適用を前提とする請求人の新規性進歩性欠如の主張は理由がない。

(2)第2の無効理由に対して
ア.主位的主張に対して
主位的主引例は、リミットスイッチを回動させる構成が本質的な技術思想であり、発明の中核をなす技術である。
してみると、相違点1について、主位的主引例の構成を、マイクロスイッチが固定された構成に置き換えることはありえず、主位的主引例とスイッチを固定した構成の他の引例とを組み合わせる動機も示唆もないというべきである。
相違点2について、平衡重りの重量比が「少なくとも30%」との構成は技術的意義を有するものであり、当業者であれば当然に考慮すべき設計事項などではない。
相違点3について、主位的主引例と主位的副引例2は、技術的課題もその構成自体も本件特許発明と異なっており、主位的主引例と主位的副引例2を組み合わせることが無意味であるのみならず、組み合わせたところで、本件特許発明の平衡重りの重心とセンサ全体の重心の位置関係に到ることはない。また、甲第20号証乃至甲第22号証は、重りの重心位置を明記したものではないから、重りの重心がセンサ全体の重心の位置と同じ側に存することが周知の技術であるとは到底いえない。
以上から、請求人の主張はそもそもの前提に誤りがあるばかりか、相違点についての主張も、本件特許発明の進歩性を否定する内容たりえない。

イ.予備的主張に対して
予備的主引例のセンサが液体中に浸漬されているときになお自由懸垂状態であるとの構成を満足するものであるとの請求人の主張は誤りであり、予備的主引例と予備的副引例1乃至3とを組み合わせたはずであるという示唆等が存在しない。
相違点4について、予備的主引例において重りを回転可能とすることは予備的主引例の技術的課題に反するものであり、設計的事項とはいえない。
相違点5について、平衡重りの重量比が「少なくとも30%」との構成は技術的意義を有するものであり、当業者であれば当然に考慮すべき設計事項などではない。
相違点6について、予備的副引例3は作動重り自体が平衡重りとしての機能を果たすものではないから、センサ全体の重心の位置との位置関係を議論する根拠に欠ける。また、甲第20号証乃至甲第22号証は、重りの重心位置を明記したものではないから、重りの重心がセンサ全体の重心の位置と同じ側に存することが周知の技術であるとは到底いえない。
以上から、請求人の相違点についての主張はいずれも理由がなく、本件特許発明の進歩性を否定する根拠たりえない。

乙第17号証:日本電気制御機器工業会規格 マイクロスイッチ(社団法人日本電気制御機器工業会、平成15年10月 1日発行、第1頁)
乙第18号証:マイクロスイッチ テクニカルガイド(オムロン株式会社、平成21年 5月12日プリントアウト(公知日不明)、第1-11頁及び第145頁)
乙第19号証:リミットスイッチ テクニカルガイド(オムロン株式会社、平成21年 5月12日プリントアウト(公知日不明)、第1-12頁)

(3)第3の無効理由に対して
ア.「少なくとも30%」とすることの技術的意義は、明細書の記載によって当業者には容易に理解可能である。

イ.「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」の意義は当業者にとって明確であり、「側方」についても本件特許の明細書の図1及び図2を併せて見ることで明らかである。また、センサ全体の重心の位置も平衡重りの重心の位置も明細書及び図に明確に示されている。

以上のとおり、本件特許の請求の範囲の記載について、いずれも明細書のサポート要件に違反するところはなく、無効理由に該当するものではない。

乙第23号証:船舶復原論(海文堂出版株式会社、昭和60年 4月22日発行、第30-33頁)
乙第24号証:海洋調査技術に関する体系的レビュー(社団法人日本深海技術協会、平成19年9月刊行、3.4.2 重量と浮量のバランス)

(4)第4の無効理由に対して
本件特許の請求の範囲の記載である「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」については、いずれも明確であり、適切に記載されているから、何らの無効事由にも該当しない。

(5)第5の無効理由に対して
本件特許の請求の範囲の記載である「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」については、いずれも当業者が容易に理解して、実施をすることが可能なものであり、実施可能要件に該当するような点は存在しない。


第4 当審の判断
1.第1の無効理由について
(1)補正要件違反による出願日繰り下げについて
平成12年 8月 3日付け手続補正書において請求項1に追加された「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成について検討する。

ア.「垂直線」について
重心位置の基準となる「前記垂直線」については、それ以前の「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」なる記載からみて、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」を「前記垂直線」として引用している。
この「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」をさらに詳細にみると、「センサの中空本体の外形の中心を通る線」で、かつ「何かに対して垂直な線」であることは明らかである。

[中空本体の外形の中心を通る線について]
本件特許の出願当初の明細書では、「センサの中空本体の外形の中心を通る線」なる文言は明記されていないけれども、第1図乃至第3図をみると「-・-・-」(以下「一点鎖線」という。)で示される線があり、特に第2図をみると、一点鎖線が電気ケーブル2及び水密入口3の曲がった形状に沿って曲がっているから、当業者であれば、この一点鎖線は、電気ケーブル2や水密入口3を含むセンサ全体の「外形」に関係する線であると理解するしかない。
さらに、センサ全体の縦断面図である第1図及び第2図では、「センサの中空本体の外形」部分に注目すると、センサの中空本体の外形はほぼ線対称形状として描かれており、一点鎖線は、線対称形状の対称軸を通っている。
また、センサの中空本体の横断面図である第3図では、センサの中空本体の外形は、ほぼ円形状として描かれており、一点鎖線は、円形状の中心で直交する2つの直径をあらわしている。
してみると、第1図乃至第3図において一点鎖線は、センサの中空本体の外形部分に注目してみる限りにおいて、線対称形状の対称軸や円形状の中心といった、幾何学的形状の中心といえる線や点を通る線として用いられているものである。

ここで、請求項に記載された事項については、明細書及び図面で正確な説明が必要であるから、第1図乃至第3図の電気ケーブル2や水密入口3を含むセンサ全体の外形に関係する一点鎖線をもって「センサの中空本体の外形の中心を通る線」を説明することが最適とはいえないけれども、少なくとも、センサの中空本体の外形部分の幾何学的形状の中心といえる線や点を通る線が存在すること、すなわち「センサの中空本体の外形の中心を通る線」が存在することは説明されていることは明らかである。

[垂直について]
次に、何に対して垂直な線なのかについては、本件特許の出願当初の明細書では「(前略)・・・センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時・・・(後略)」(請求項1)、「(前略)・・・中空本体が主垂直位置を取ると・・・(後略)」(請求項5)、「スウェーデン特許第8405669-6号は、センサが常に垂直位置を取るマイクロスイッチを含む他の解決方法を示している。・・・(後略)」(第【0006】段落)、「(前略)・・・本体が反対に空気中に囲まれている時、これは主に垂直位置を取る。」(第【0011】段落)のように、「垂直」なる用語は、従来技術の説明及び本件特許発明の実施例の説明いずれにおいても、水平に対する鉛直方向を示すものとして一貫して用いられている。
また、本件特許の出願当初の明細書の記載をみると、「【従来技術】この目的のレベル・センサは従来から公知で、液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている。・・・(後略)」(第【0002】段落)、「前述したように、中空本体の重量と容積は、液体に囲まれている時に垂直線に対して本体が強く傾た位置を取るように管理される液体の密度に適合されている。・・・(後略)」(第【0011】段落)なる記載があり、「垂直線」がセンサの中空本体の外形の中心を通るかどうかは不明であるものの、センサが空気に囲まれているときはセンサが「垂直線」の方向を向き、すなわち直立し、センサが液体に囲まれているときはセンサが「垂直線」とは異なる方向を向く、すなわち横倒しとなることが、従来技術の説明及び本件特許発明の実施例の説明のいずれにおいても明記されている。
これらの記載をあわせみると、「垂直線」とは、センサが空気に囲まれているときの方向を示す線であって、水平に対する鉛直方向の線を意味していることは明らかである。

[センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線について]
「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」とは、鉛直方向の線であることが前提であり、その上で、センサが空気に囲まれているときの方向を示すものであるから、第2図や第3図の一点鎖線のような線ではないことは明らかであり、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分にかかる線分のような状態で外形の中心を通る線でなければならない。
よって、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」とは、鉛直方向の垂直線が、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分にかかる線分のような状態で外形の中心を通っているもの、換言すると、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分にかかる線分が鉛直方向を向いた状態のものであることは明らかである。
以上のように、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」は、本件特許の出願当初の明細書に明示されていたものである。

[主垂直位置について]
本件特許の出願当初の明細書では、本件特許発明の実施例として「(前略)・・・本体が反対に空気中に囲まれている時、これは主に垂直位置を取る。」(第【0011】段落)、「第1図に示す位置で、本体は完全に又は殆んど完全に空気により囲まれている。・・・(後略)」(第【0012】段落)と記載されているように、第1図は、センサが空気により囲まれている状態すなわち「主に垂直位置」となっている状態であるから、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分を通る部分は「主に垂直位置」となっている状態である。
ここで、「主に垂直位置」なる用語については、本件特許の出願当初の明細書で説明されていない。
そして、「主に」の一般的な解釈では、「主として。もっぱら。」(株式会社岩波書店 発行、広辞苑 第四版、1991年11月15日発行)を意味しているから、「主に垂直位置」は「もっぱら垂直位置だが垂直位置でないときもある」のように解釈することもできる。
しかしながら、明細書全体の記載を勘案すると、空気に囲まれたときにセンサが垂直位置を取らないことは機能上あり得ないので、「もっぱら垂直位置だが垂直位置でないときもある」と解釈できないことは明らかである。
そこで出願当初の明細書をさらにみると、「請求項1記載のレベル・センサにおいて、中空本体が主垂直位置を取ると平衡重りはその終端位置の一方を取り、中空本体が主に水平方向に向いた時その他方の終端位置を取るレベル・センサ。」(請求項5)、「(前略)・・・本体が反対に空気中に囲まれている時、これは主に垂直位置を取る。」(第【0011】段落)、「水位レベルが上昇し始めると、レベル・センサは次第に傾き始め、最後に第2回の主水平位置へ到達する。・・・(後略)」(第【0014】段落)(「第2回」とあるのは「第2図」の明らかな誤記である。)、「センサがその水平位置に近い所から開始すると、平衡重り9はその重心10をベアリング6,8の下右側へ移し、そのまわりを時計回りに回転する。・・・(後略)」(第【0015】段落)と記載され、「主に垂直位置」に対応して「主に水平方向」、「主垂直位置」に対応して「主水平位置」が用いられ、さらに水平位置に関して「センサがその水平位置に近い所から開始する」なる記載がある。
すなわち、「水平位置に近い所」が「主水平位置」を意味していることは明らかであるので、「主水平位置」に対する用語である「主垂直位置」「主に垂直位置」は「垂直位置に近い所」を意味していることも明らかであり、この「垂直位置に近い所」はよりわかりやすい言葉を使えば、「垂直に近い位置」「ほぼ垂直な位置」を意味することは明らかである。
これは、本件特許発明のセンサが空気に囲まれている時に、センサの中空本体はほぼ垂直な位置となっていること、換言すると、厳密には直立していないことを意味する。

さらに詳細にみると、本件特許の出願当初の明細書に「レベル・センサが主に空気に取囲まれている限り、下水部の水位レベルがセンサより下にある限り、センサは直立位置を保持し、マイクロスイッチはその接続又は切離し位置を保持する。」(第【0013】段落)、「水位レベルが上昇し始めると、レベル・センサは次第に傾き始め、最後に第2回の主水平位置へ到達する。・・・(後略)」(第【0014】段落)とあるように、本件特許発明のレベル・センサは、空気に囲まれているときにほぼ直立姿勢で、水位レベルの上昇にともなってマイクロスイッチが作動する方向すなわち一定方向に傾き、液体中に浸漬されているときにほぼ水平姿勢となるものである。
この水平姿勢について第2図をみると、平衡重り9が下となる水平姿勢でなければマイクロスイッチを作動させることができないから、レベル・センサは任意の方向に傾いて平衡重り9の位置も任意な水平姿勢となるものではなく、平衡重り9が下となる水平姿勢となるように一定方向に傾くものであることは明らかである。

これに対して、請求人は「液面の荒れなどに揺られるうちに平衡重りが回動し、センサ全体の重心を偏心させ最後は図2の主水平位置で平衡する構成であると理解するのが合理的である。」(口頭審理陳述要領書第4頁第24-26行)と主張しているけれども、「液面の荒れなどに揺られるうちに」ということは、レベル・センサが液面に着水した後しばらく揺られていなければならず、液面の位置検出が遅れるばかりか、液面が荒れていないときは、レベル・センサが安定状態で平衡重りが回動しない、すなわち検出不能状態となりかねないものであるから、レベル・センサとして機能しないこととなる。
このような状態は、本件特許発明の要旨に反することが明らかであって、請求人の当該主張のような動作をおこなうものとは認められない。
よって、本件特許発明がレベル・センサとして機能するためには、水位レベルの上昇にともなってすみやかに一定方向に傾くことが必然であり、本件特許の出願当初の明細書に「【従来技術】この目的のレベル・センサは従来から公知で、液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている。・・・(後略)」(第【0002】段落)と記載されていることからみて、重量配置によって一定方向に傾かせることは明らかである。
この、重量配置によって一定方向に傾かせることについて技術的にみれば、傾く物体である中空本体の内部の構成部材がどのように配置され、どのような重量を有していようとも、中空本体全体の重心が中空本体の中心(浮心)上にあっては、全体として安定し一定方向に傾くことはないから、中空本体全体の重心が中空本体の中心(浮心)からずれていることを意味するものである。
さらに、中空本体全体の重心が中空本体の中心からずれているということは、中空本体を空気に囲まれた状態で吊り下げたとき、中空本体は厳密には直立しないことは自明である。
してみると、本件特許発明のレベル・センサは、中空本体全体の重心を中空本体の中心からずらすことで、水位レベルの上昇にともなってレベル・センサをマイクロスイッチが作動する一定方向に傾けることを要旨とするものであり、中空本体を空気に囲まれた状態で吊り下げたとき、中空本体がほぼ垂直な位置、厳密には直立しないことは、本件特許発明の要旨と一致するものである。

[垂直線に関する被請求人の主張について]
ここで、被請求人が「この『中空本体の外形の中心を通る垂直線』については、水平面に対して直角をなす鉛直方向に延びる線(鉛直線)を意味するものでは決してない。」(答弁書第6頁第13-14行)と主張している点についてさらに検討する。
中空本体全体の重心をずらす基準となる中空本体の中心(浮心)については、中空本体を空気に囲まれた状態で吊り下げたとき、中空本体の外形の中心を通る垂直線上にあることは自明であり、垂直線が中空本体の中心を通る鉛直線であるからこそ重心のずれの基準となりうるものであるので、この垂直線が鉛直線でないとするとする被請求人の主張は、本件特許の明細書に基づかないものであるし、垂直線が鉛直線でないとするならば、本件特許の明細書にはその他の垂直線について記載はないから何に対して垂直であるのか不明なものとなってしまう上、被請求人は何に対して垂直な線であるのか主張をしていない。
よって、被請求人の「垂直線」が鉛直線ではないとする主張は、本件特許の明細書に基づかない主張であり採用できない。

[第1図に関する請求人の主張について]
請求人が「また、原明細書等の図1には?・?・?線が記載されており、被請求人は、同鎖線が『前記垂直線』に当たる旨主張しているが、同鎖線は、中空本体を吊り下げるケーブルを鉛直方向に延長した線であるから、物理学及び力学の常識に照らせば、原明細書等の図1において、センサ全体の重心は、該鎖線上にあると解するよりほかない。」(審判請求書第30頁第28行-第31頁第4行)と主張している点について検討する。
本件特許の出願当初の明細書では「第1図に示す位置で、本体は完全に又は殆んど完全に空気により囲まれている。・・・(後略)」(第【0012】段落)と記載されているから、第1図のレベル・センサは、空気中で自然に吊り下げられた状態であり、さらに「(前略)・・・本体が反対に空気中に囲まれている時、これは主に垂直位置を取る。」(第【0011】段落)と記載されているから、このとき中空本体は、「主に垂直位置」すなわち、厳密な垂直位置ではなく、ほぼ垂直な位置をとっているものと明記されている。
これに対して第1図では、一点鎖線が、電気ケーブル2や水密入口3からセンサの中空本体の外形の中心にかけて一直線に伸びている、すなわち中空本体が完全に直立しているようにみえる。
請求人は、この第1図において中空本体が完全に直立しているようにみえる記載のみをもってセンサ全体の重心が一点鎖線上にあると主張しているが、センサ全体の重心が一点鎖線上にあると本件特許発明がレベル・センサとして機能しないことが明らかなのは上述したとおりであるし、明細書に記載されているように第1図の中空本体はあくまで「ほぼ垂直な位置」であって完全に直立していないこともまた明らかであって、むしろ第1図の中空本体が完全に直立しているとするような記載は明細書のどこにもないから、第1図の中空本体が完全に直立していると判断すること自体がそもそも本件特許発明の要旨に反するものである。
ここで、一般的に、特許出願の図面は、請求項や発明の詳細な説明の記載についての理解を容易にするためのもので、図面にその技術内容が理解され得る程度に明示されていれば足りるものであって、必ずしも設計図面のような詳細かつ正確な図面は必要とされていない。
そして、本件特許の第1図の一点鎖線は、電気ケーブル2や水密入口3からセンサの中空本体の外形の中心にかけて一直線に伸びているように見えるけれども、明細書の記載と本件特許発明の要旨に照らせば、空気に囲まれている時の中空本体は、ほぼ垂直な位置を取ると明記されているのだから、実際には厳密な垂直方向でないことを前提として、第1図は、中空本体が垂直方向を向いていることを強調すべく表現したものであると理解するか、そうでないにしても、ほぼ垂直であるので、作図の都合上、便宜的に完全に直立した状態で表現したものであると理解するのが自然であるし、本件特許発明の要旨に合致するものである。
よって、請求人の当該主張は採用できない。


イ.「センサ全体の重心」「同じ側方」について
「センサ全体の重心」という文言について、本件特許の出願当初の明細書では明記されていないけれども、前述のように、本件特許発明のレベル・センサは、中空本体全体の重心を中空本体の中心からずらすことで、水位レベルの上昇にともなってレベル・センサをマイクロスイッチが作動する一定方向に傾けることを要旨とするものであって、中空本体全体の重心を「センサ全体の重心」という文言で表記していることは明らかである。
ここで請求人は、「そのため、折角、平衡重りの重心位置を定めても、その余の70パーセントの重量を占める他の部材の取付位置によっては、センサ全体の重心と平衡重りの重心とが、垂直線に対し、反対側に位置する場合もある。」(審判請求書第31頁第18-21行)と主張しているけれども、中空本体全体の重心のずれは、レベル・センサをマイクロスイッチが作動する一定方向に傾ける側でなければならないことは明らかであるし、第2図において、中空本体が平衡重りの重心ある側に傾いている状態が記載されていることからみても、中空本体全体の重心のずれは、平衡重りの重心と同じ側方にあることが明らかであるから、請求人の当該主張は採用できない。


ウ.要旨変更についてのまとめ
以上のように、平成12年 8月 3日付け手続補正書において請求項1に追加された「かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成については、本件特許発明の要旨に一致するものであって、本件特許の出願当初の明細書から明らかなものであるから、明細書の要旨を変更するものではない。
よって、請求人の「本件特許出願は当該補正をした平成12年 8月 3日に出願したものとみなされる。」なる主張は採用できない。

したがって、本件特許出願に係る平成12年 8月 3日付けの手続補正は適法なものであるから、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成 5年 4月27日(パリ条約による優先権主張 平成 4年 4月28日、スウェーデン王国)である。


(2)新規性欠如について
上述のように、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成 5年 4月27日(パリ条約による優先権主張 平成 4年 4月28日、スウェーデン王国)である。
よって、請求人は、甲第23号証及び甲第36号証で示す本件特許発明の実施品である「フロート式水位制御スウィッチ(レベル・レギュレーター)ENM-10」は、本件特許出願の出願日よりも後である平成 7年 8月には日本国において販売されていたものと主張しているけれども、これは本件特許出願前に日本国内において公然実施をしたものではないから、特許法第29条第1項第2号に掲げる公然実施をされた発明とはなり得ない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明が、甲第23号証及び甲第36号証で示す本件特許発明の実施品により、出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるとすることはできない。


(3)進歩性欠如について
上述のように、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成 5年 4月27日(パリ条約による優先権主張 平成 4年 4月28日、スウェーデン王国)である。
そして、甲第24号証は、本件特許の公開公報であり、平成12年 8月 3日付けの手続補正が適法なものである以上、特許法第29条第1項各号に掲げる発明とはなり得ない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明が、甲第24号証及び甲第19号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないし、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第24号証に記載された発明及び甲第20号証乃至甲第22号証で示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。


(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、請求人の主張する第1の無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


2.第2の無効理由について
(1)主位的主張について
ア.各号証の記載事項
(ア)請求人が主位的主引例としている甲第16号証(実公昭52- 42767号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「可撓性ケーブルを取付けたフロート内の空間に作用片と重錘を有するスイツチを揺動自在に枢着し、該空間の内面一部にはフロートが浮上してフロート内の前記スイツチが一方に回動したとき該スイツチの作用片に接触してこれを押し込む受部を設けたことを特徴とする液面検出スイツチ。」(実用新案登録請求の範囲、第1頁左欄第16-21行)
(b)「本考案はポンプの自動制御及液面制御するための液面検出スイツチに関するものである。」(第1頁左欄第23-24行)
(c)「4は普通のリミツトスイツチで、その底部に重錘5を固定し、該重錘5の取付側と反対の側の端部に作用片6を有している。このスイツチ4を該空間3内に遊嵌し、該スイツチ4の作用片6側の作用片6と反対の端部附近を軸7によりフロートAに枢着して、スイツチ4の作用片6を有する側がキヤツプ2の方へ向くようにする。」(第1頁右欄第2-8行)
(d)「前記キヤツプ2には水中ポンプの制御回路等に接続される可撓性ケーブル8が挿通され、・・・(中略)・・・該ケーブル8の内端を前記リミツトスイツチ4に接続して」(第1頁右欄第9-14行)
(e)「本考案スイツチを水中ポンプを装着した貯水タンク中に可撓性ケーブル8により浮上、沈下自在に取付ける。しかしてタンク内の液面が低くポンプの作動不可のときはフロートAが液面上にあつて本体1を下に垂れ下がつているときはスイツチ4は自重により、第1図の鎖線のように本体1の底部の方へ回動して作用片6は受部9から離れているから、ポンプは回らない。」(第1頁右欄第24-31行)
(f)「次に液面が次第に上昇してフロートAが液面下となり、その本体1が上になり、キヤツプ2が下になると、スイツチ4が自重でキヤツプ2側へ回動して作用片6が受部9に接触して押込まれるので、スイツチ4によりポンプが起動する。」(第1頁右欄第32-36行)
(g)「且つスイツチ4の作用片6の作動はスイツチ自身の回動によるもので、フロートA内にはスイツチ4以外に可動部がないので作動が確実で故障のおそれが少ない等の効果を有するものである。」(第2頁左欄第5-9行)

してみると、上記記載事項(a)乃至(g)から、主位的主引用例には、
「タンク内の液面に応じて水中ポンプを起動するようなポンプの自動制御用の液面検出スイツチにおいて、フロートA内に配置したリミツトスイツチ4に接続された可撓性ケーブル8に垂れ下がつている状態に取付けられたフロートAを含み、前記リミツトスイツチ4は前記フロートA内に配置した重錘5の助けにより接続/切離位置へ作動され、リミツトスイツチ4の底部に重錘5を固定し、リミツトスイツチ4の作用片6側の作用片6と反対の端部附近を軸7によりフロートAに枢着して、リミツトスイツチ4の作用片6の作動はスイツチ自身の回動によるものであり、液面下にあるとき液面検出スイツチは垂直位置から傾き本体1が上になり、キヤツプ2が下になる状態にある液面検出スイツチ。」
の発明(以下「主位的主引例発明」という。)が開示されていると認められる。

(イ)請求人が主位的副引例1としている甲第18号証(スウェーデン特願8405668-8号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、請求人が提出した甲第18号証の訳文で記載事項を示す。
(h)「中空体1は、導入口が防液性の電気ケーブル2に吊り下がっており、同ケーブルは、中空体1内の中間板7に取り付けられたスイッチ装置3に連結している。この装置3には、装置の電気回路開閉切り替え作動を行うプランジャー4が設けられている。
中間板7より上部のスペースには、ある程度可動なおもり5を設けているが、鉛直線に対する中空体の傾き具合に応じて、ふたつの異なる位置を取れるようにしてあり、このおもりが両位置の一方を取った際に、プランジャー4を作動させる仕組みになっている。」(第2頁第19行-24行)
(i)「前に述べたように、中空体の重量と体積は、監視される液体の濃度に合わせ、中空体が液体で囲まれたときに鉛直線に対して著しく傾くように調節する。逆に空気に囲まれると、中空体は鉛直に垂れ下がる。
図面に示した状態において、中空体は液体に沈んでいるが、これは言い換えると、鉛直線に対し、左に傾いているということである。この位置に置かれると、おもり5の上部が中空体の壁に接触し、それと同時に中間板7からわずかに離れる。この作動により、スイッチ装置が設置されているプランジャー4はその制御部分を離れて上がり、スイッチ3内の電気回路が閉じることになる。これによって、液位が液位センサーと同じ高さか、センサーより高い状態にあることを示す。
それに対し、中空体1が空気中にある場合、中空体は垂直位置を取り、おもり5の全重量が中間板7にかかることになる。これにより、おもりがプランジャー4を押し入れ、同プランジャー4はブレーカー3内の電気回路を遮断する。これによって、液位が液位センサーより下にあることが示される。」(第2頁第25-36行)
(j)「観察される液体の粘性に比例した液位センサーの重量と体積を適切に調節したり、おもり5ならびにその制御突部6を適切に形成することにより、センサーがふたつのはっきりと異なる位置を取ることが可能となり、液位を明確に示すことになる。こうして得られる信号は、例えば電動ポンプの作動・停止などに適用可能である。」(第3頁第1-4行)

(ウ)請求人が主位的副引例2としている甲第19号証(実公昭42- 10534号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(k)「本案は規定の水位において、電気回路を切換え液体の移送を自動的に制御せしめることを目的としたものであり、作動レバーを有する機械式スイツチと釣合錘を浮揚体に内蔵し、該作動レバーに作動用錘を附加し、浮揚体が液中において横倒することによつて電気回路を切換える如くした事を特長とするフロート式液面制御装置に関するものであり、つぎのごとき構造よりなる。」(第1頁左欄第6-13行)
(l)「図に示すように1は機械式スイツチ、2は支点Aで該スイツチに支軸された回動可能な作動レバーでその一端部に適宜重量をもつ作動錘3を保持し、4は押釦、5は接触バネ、6,7は接点、8はスイツチ1の支持体、9は浮揚体、10はケーブルを示し、11は浮揚体9を液中において横倒せしめるべくとりつけた釣合錘を示し、a,b,cは電気回路の一例を示したものである。」(第1頁左欄第14-21行)
(m)「本案装置を制御液体槽内にケーブル10によつて垂下すると第1図に示す如く空気中においては接触バネ5は接点6と閉状態、接点7に対しては開状態にあり、電気回路a,bは接続され、a,cは接続されない状態にあるが、漸次槽内液面が上昇し、浮揚体9が液中に没すると、該浮揚体は第2図に示すごとく横倒した状態にて浮遊する。此の状態においては作動レバー2は作動錘3により図に示す矢印B方向の力を受け接触バネ5のバネ力に抗し、押釦4を押し下げる事により接触バネ5は接点6と離れ、接点7と接触して回路a,bをa,cに切換える。」(第1頁左欄第23行-右欄第7行)


イ.対比・判断
本件特許発明の「重り」は、重り自身が回転することによってスイッチを作動させるための「可動重り」としての機能と、重りの重量と浮力のバランスによって液体中に浸漬されているときにセンサを自由懸垂状態とするための「平衡重り」としての機能を併せ持つものである。

そして、本件特許発明と主位的主引例発明とを対比すると、両者は、いずれもタンク内の液面レベル検出スイッチに関するものであって、主位的主引例発明における「タンク内の液面」は本件特許発明における「ポンプ媒体のレベル」に相当し、以下同様に「水中ポンプを起動」は「電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止」に、「ポンプの自動制御」は「電気機能の接続/切離し」に、「液面検出スイツチ」は「レベル・センサ」に、「フロートA」は「中空本体」に、「可撓性ケーブル8」は「電気ケーブル」に、「垂れ下がつている状態」は「自由懸垂状態」に、「液面下にあるとき」は「液体中に浸漬されているとき」にそれぞれ相当するものである。
ここで、リミツトスイツチ4について、本件特許発明の「マイクロスイッチ」と主位的主引例発明の「リミツトスイツチ4」は、ポンプを液面レベルに応じてオンオフするために動作する「スイッチ」である限りにおいて共通するものである。
また、重錘5について、本件特許発明の「前記スイッチは前期中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され」(「前期中空本体内」は「前記中空本体内」の明らかな誤記である。)なる構成と、主位的主引例発明の「前記リミツトスイツチ4は前記フロートA内に配置した重錘5の助けにより接続/切離位置へ作動され」なる構成は、その重量の助けによりスイッチを作動させる「重り」である限りにおいて共通するものである。
さらに、上記記載事項(f)からみて、主位的主引例発明の液面検出スイツチは、液面の上昇に伴って傾き、ついには上下反転するものである。
一方で、本件特許発明における「垂直位置から傾き」については、垂直位置からの傾き角度を限定するものではない。
よって、主位的主引例においても傾く構成は有しているものの、液体中に浸漬されているときなお電気ケーブルから自由懸垂状態にあるかどうかについては、上記記載事項(e)を参酌しても「浮上、沈下自在」なる記載のみで自由懸垂状態を意味しているとまではいえず、液体中に浸漬されているときの液面検出スイツチの状態については不明であるといわざるを得ない。
してみると、本件特許発明と主位的主引例発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて、中空本体内に配置したスイッチに接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取付けられた中空本体を含み、前記スイッチは前記中空本体内に配置した重りの助けにより接続/切離位置へ作動され、液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾くレベル・センサ。」

<相違点>
A.スイッチについて、本件特許発明は「マイクロスイッチ」であるのに対して、主位的主引例発明は「リミツトスイツチ」である点。

B.重りの動作について、本件特許発明は「平衡重りとして設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され、前記平衡重りの表面の一つがマイクロスイッチを直接的に又は間接的に作動するように配置され」ているのに対して、主位的主引例発明は「リミツトスイツチ4の底部に重錘5を固定し、リミツトスイツチ4の作用片6側の作用片6と反対の端部附近を軸7によりフロートAに枢着して、リミツトスイツチ4の作用片6の作動はスイツチ自身の回動によるもの」としている点。

C.重りの重量について、本件特許発明は「前記平衡重りの重量は、前記中空本体、前記マイクロスイッチ、平衡重り、及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%」であるのに対して、主位的主引例発明はその重量について不明である点。

D.重心について、本件特許発明は「前記平衡重りは、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心があり、かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」としているのに対して、主位的主引例発明は重りの重心位置もセンサ全体の重心位置も不明である点。

E.液体中に浸漬されているときのセンサの状態について、本件特許発明は「液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブルから自由懸垂状態にある」のに対して、主位的主引例発明は「液面下にあるとき液面検出スイツチは垂直位置から傾く」ものの、「なお電気ケーブルから自由懸垂状態」かどうか不明である点。

なお、請求人は、本件特許発明と主位的主引例発明の相違点1として「本件特許発明は、可動重りをマイクロスイッチとは別個に設けており、可動重りが移動してマイクロスイッチの表面に接触することによってスイッチを作動させる構成であるのに対し、主位的主引例記載の考案は、マイクロスイッチそのものが可動重りとして、その自重により移動し、その表面が受部に接触することによってスイッチを作動させる構成であること」(審判請求書第11-17行)を挙げ、可動重りとマイクロスイッチが一体であるか別個であるかが相違点であるとしている。
一方で請求人は、主位的主引例について「一方、『重錘5』は、単なる『重り』ではなく、『重錘』として記載されており、相当の重量を備えた部材であることが明確に示されている。
したがって、主位的主引例において、『重錘5』は、装置全体に対し相当の重量を占めるものとして開示されているのであって、一見小さく軽いもののように見えたとしても、リミットスイッチ4(重錘5を含む)の装置全体に対する重量比が30パーセントを超えることは、同公報に接した当業者において、容易に理解しうるところである。」(審判請求書第57頁第10行-第58頁第2行)、「リミットスイッチ4(重錘5を含む)の重心と装置全体の重心との位置関係については、上記図面において、・・・(中略)・・・センサ全体の重心とリミットスイッチ(重錘を含む)の重心とが、いずれも、赤色中心線に対し右側に偏心する構成であることは、主位的主引例の同図面の記載から、当業者であれば誰もが容易に理解しうるところである。」(審判請求書第58頁第9-16行)、及び「主位的主引例記載の重錘5を固定したリミットスイッチ4は、本件特許発明の『平衡重り』に相当するものである。」(審判請求書第66頁第14-15行)として、リミットスイッチ4と重錘5を一体としてみることを前提として、装置全体に対する重量比と重心位置についての主張を展開している。
すなわち、主位的主引例発明においてリミットスイッチ4と重錘5を単純に分離した場合、重量比や重心位置に関する請求人の主張は、その前提が成り立たなくなってしまうし、本件特許発明は「平衡重りとして設計された可動重り」と明記されているのに対して、主位的主引例発明の重りは単体で平衡重りとして機能していないことは明らかであるのだから、本件特許発明と主位的主引例発明の相違点には、上記相違点B.のように「平衡重りとして設計された可動重り」として分離する点が不可欠である。
よって、請求人が主張する本件特許発明と主位的主引例発明の相違点1については、誤りがあり、その相違点は、上記相違点B.のように認定した。

そこで、上記各相違点について以下に検討する。
<相違点A.について>
機械式スイッチとして、マイクロスイッチもリミットスイッチも文献を示すまでもなく本件特許出願前に周知のものであり、主位的主引例発明のリミットスイッチをマイクロスイッチに変更することは、周知技術に基づく置換にすぎない。
よって、主位的主引例発明において、相違点A.に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得るものである。

<相違点B.について>

[主位的副引例1について]
主位的副引例1(甲第18号証)においては「スイッチ装置3」「スイッチ3」「装置3」「ブレーカー3」のように、同一参照符号に対して複数の名称が用いられているが、これらは明らかに同一構成を示しているので、「スイッチ装置3」という名称に統一して表記する。

主位的副引例1には、上記記載事項(h)乃至(j)及び図面からみて、液位センサーにおいて、中空体1内に配置したスイッチ装置3に接続された電気ケーブル2に垂れ下がった状態に取付けられた中空体1を含み、前記スイッチ装置3は前記中空体1内に配置したおもり5の助けにより閉じる又は遮断する位置へ作動する点、おもり5は中空体1内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に配置される点、おもり5の表面の一つがスイッチ装置3を直接的に作動するように配置されている点が記載されており、主位的副引例1の「液位センサー」は本件特許発明の「レベル・センサ」に相当し、以下同様に「中空体1」は「中空本体」に、「電気ケーブル2」は「電気ケーブル」に、「閉じる又は遮断する位置」は「接続/切離位置」にそれぞれ相当するものである。
ここで、主位的副引例1の「垂れ下がった状態」は、中空体1が空気に囲まれた状態に限り、本件特許発明の「自由懸垂状態」に相当するものであり、本件特許発明の「マイクロスイッチ」と主位的副引例1の「スイッチ装置3」は、ポンプを液面レベルに応じてオンオフするために動作する「スイッチ」である限りにおいて共通するものである。
すると、主位的副引例1には、レベル・センサにおいて、中空本体内に配置したスイッチに接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取付けられた中空本体を含み、中空本体内に配置した可動重りの助けによりスイッチを接続/切離位置に作動する点、可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に配置される点、可動重りの表面の一つがスイッチを直接的に作動するように配置されている点が記載されているが、可動重りは支持されておらず、ましてや重りを通る軸線を中心として回転可能に支持されている点について有していないものである。
してみると、主位的副引例1は、少なくとも相違点B.のうち「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかであるし、これに対して本件特許発明は、当該構成によって可動重りの動作が安定するという効果を有するものである。
よって、主位的主引例発明に、主位的副引例1に記載された構成を適用することで、相違点B.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[主位的副引例2について]
次に、主位的副引例2(甲第19号証)には、上記記載事項(k)乃至(m)及び図面からみて、フロート式液面制御装置において、浮揚体9内に配置した機械式スイツチ1に接続されたケーブル10に垂下状態に取付けられた浮揚体9を含み、前記機械式スイツチ1は前記浮揚体9内に配置した作動錘3の助けにより電気回路a,b,cを切換える点、当該作動錘3は浮揚体9内に電気回路a,b接続位置とa,c接続位置の間で回転可能に支持される点、前記作動錘3を保持する作動レバー2が機械式スイツチ1の押釦4に作動するように配置される点が記載されており、主位的副引例2の「フロート式液面制御装置」は本件特許発明の「レベル・センサ」に相当し、以下同様に「浮揚体9」は「中空本体」に、「ケーブル10」は「電気ケーブル」に、「電気回路a,b,cを切換え」は「接続/切離位置へ作動」に、「電気回路a,b接続位置とa,c接続位置の間」は「2つの異なる終端位置の間」にそれぞれ相当するものである。
ここで、主位的副引例2の「垂下状態」は、浮揚体9が空気中にある場合に限り、本件特許発明の「自由懸垂状態」に相当し、主位的副引例2の「作動錘3」は、電気回路a,b,cを切換えるための助けとしての機能に限り、本件特許発明の「可動重り」にそれぞれ相当するものである。
また、主位的副引例2の作動錘3は、作動錘3を保持する作動レバー2を介して機械式スイツチ1の押釦4に作動するものであるから、作動錘3の表面の一つが機械式スイツチ1を間接的に作動するものである。
すると、主位的副引例2には、レベル・センサにおいて、中空本体内に配置した機械式スイツチ1に接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取付けられた中空本体を含み、前記機械式スイツチ1は前記中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動する点、当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で回転可能に支持される点、及び前記可動重りの表面の一つが機械式スイツチ1を間接的に作動するように配置される点が記載されている。
しかしながら、作動錘3が平衡重りとして機能する旨の記載はなく、仮に主位的副引例2のフロート式液面制御装置が液体中に浸漬されているときに自由懸垂状態であるとしても、平衡重りとして機能するものは、作動錘3と別体で、浮揚体9を横倒した状態とするほどに浮揚体9の挙動に関与する釣合錘11であると考えるのが自然であるから、可動重りである作動錘3は、ある程度は平衡重りとして機能しているかもしれないが、主として平衡重りとして機能するのは釣合錘11であるし、少なくとも作動錘3単体では平衡重りとして設計されていないことは明らかである。
また、作動錘3の回転軸線である支点Aは作動錘3を通っておらず、作動錘3は接触バネ5のバネ力に抗して押釦4を押し下げるために支点Aから遠く配置されなければならないから、その軸線は作動錘3を通るように変更することができないし、なおさら作動錘3と釣合錘11を一体化して平衡重りとした上でさらにその回転軸線が通るような構成に変更するようなことはできない。
してみると、主位的副引例2は、相違点B.のうち「平衡重りとして設計された当該可動重り」及び「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
よって、主位的主引例発明に、主位的副引例2に記載された構成を適用することで、相違点B.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[周知技術について]
請求人は、「可動重りをマイクロスイッチとは別に設け、可動重りが移動してマイクロスイッチの表面に接触することによってスイッチを作動させる構成(相違点1)は、主位的副引例1、主位的副引例2のほか、フィンランド特許第42382号公報(甲第17号証)、スペイン特許第295330号公報(甲第20号証)、ドイツ実用新案第6751576号公報(甲第21号証)、実開昭62- 28339号公報(甲第22号証)等多数の公知文献に開示されており、レベル・センサの技術分野において、周知技術と位置づけられるものである。」(審判請求書第70頁第12-20行)と主張している。

甲第17号証は、可動重りとして機能する「重り5」が「作動アーム4」の先端に取り付けられているから、「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
また、「フロート6は、水位がどのくらいあるかに関係なく、どのような傾斜角度でもこの重り2の周囲を自在に動くことが出来る。」(甲第17号証の訳文第2頁第10-11行)なる記載と図面をあわせみると、甲第17号証の電気式水位制御装置は、水中において自由懸垂状態ではないことが明らかであり、これはすなわち「重り5」が平衡重りとして設計されていないものである。
よって、甲第17号証は、相違点B.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

甲第20号証は、可動重りとして機能する「釣り合いおもり11」が「管状体10」の内部で転動するもの、すなわち支持されてものであるから「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
また、FIG.-3乃至FIG.-5の記載をみると、甲第20号証の水深調整用に改良されたセンサは、水中において自由懸垂状態ではないことが明らかであり、これはすなわち「釣り合いおもり11」が平衡重りとして設計されていないものである。
よって、甲第20号証は、相違点B.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

甲第21号証のフロートスイッチは、「各図面に示しているフロートスイッチは、任意の備蓄容器の中で、液体水位の高さが事前設定された上側または下側の水準に達すると、ただちに液体水位の高さを制御する。このときフロートスイッチで制御されるポンプによって、下側の水準にある場合には備蓄容器の充填が行われ、または、フロートスイッチの機能逆転の後には、上側の水準にある場合にそのつど反対の水準になるまで備蓄容器からの放出が行われる。」(第21号証の訳文第3頁第40-44行)なる記載、Figur1及びFigur2からみて、上側の水準まで水没していないから、少なくとも水中において自由懸垂状態でないことは明らかであり、これはすなわち可動重りとして機能する「ウェート15」が平衡重りとして設計されていないものである。
よって、甲第21号証は、相違点B.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

甲第22号証は、可動重りとして機能する「錘6」が「ガイドレール4」を摺動するものであって、「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」るものではない。
また、第1図及び第2図をみると、甲第22号証のフロートスイツチは、水面が上昇しても水没しておらず、水中において自由懸垂状態ではないことが明らかであり、これはすなわち「錘6」が平衡重りとして設計されていないものである。
よって、甲第22号証は、相違点B.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

してみると、請求人が周知技術の根拠として提示した甲第17号証、甲第20号証、甲第21号証、甲第22号証は、いずれもその根拠となり得ず、他に周知技術であるとの根拠もないから、上記相違点B.の構成は、周知技術と位置づけられるものではない。
よって、主位的主引例発明に周知技術を適用することで、相違点B.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

<相違点C.について>
請求人は、「『平衡重り』の重量、平衡重りとセンサ全体の重量比は、液体密度とセンサの容積・形状によって決定される浮力とその作用点である浮心の位置、センサ全体の重心位置との相関関係の中で、当業者において当然に適宜選択されるべき設計的事項である。」(審判請求書第72頁第10-14行)、「本件明細書には、数値を限定した臨界的意義が全く示されていない。また、センサ全体や平衡重りの具体的な重量(重量比ではない)、液体密度、センサの容積、センサの形状等を考慮することなく同重量比の値のみを定めることについては、臨界的意義以前に、何らの技術的意義をも見いだすことができない。」(審判請求書第74行第19-23行)と主張している。

請求人の主張は、平衡重り単体に関する重量及び重量比が設計的事項であり、技術的意義がないとする主張であるが、本件特許発明は、「平衡重りとして設計された可動重り」であるから、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための重量及び重量比について論じなければならない。
そして、本件特許の明細書には、「マイクロスイッチを確実に停止させるため、平衡重り9は相対的に重く、レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に、センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが、適切な値は50から80%の間である。加えて、センサの全重量/容積関係は、レベル・センサが液体で囲まれているとき主水平位置を取ることを確保するように、管理される液体の密度と関連して選択されるであろう。」(発明の詳細な説明第【0016】段落)と記載されており、平衡重り単体としての数値ではなく、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための数値である旨が明示されているから、30%という数値には、技術的意義があるものと認められる。
また、「適切な値は50から80%の間である。」、「管理される液体の密度と関連して選択される」と記載されているように、その他の条件によってより大きな値となり得るけれども、30%という数値は、「受入れ可能な安全性を得る最小値」であるという臨界的意義を持つものである。
一方で、主位的主引例発明の重錘5は、リミットスイッチ4と一体としてみた場合に平衡重りとして機能するものだとしても、重錘5単体で平衡重りとして機能するものではなく、さらには可動重りとして機能するものでもない。
よって、単体では平衡重りとしても可動重りとしても機能していない主位的主引例発明の重錘5の重量について、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための数値である30%という重量比に限定することが設計的事項ということはできない。
したがって、主位的主引例発明に設計的事項を適用することで、相違点C.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

<相違点D.について>
請求人は、上記相違点D.(請求人が主張する相違点3)について、「主位的主引例記載の考案に主位的副引例2(上記1エ(ウ)Dにおける副引例)記載の発明を組み合わせることによって、あるいは、主位的主引例記載の考案に周知技術を組み合わせることによって、当業者において、容易に実現しうるものである。」(審判請求書第75頁第3-7行)とし、第1の無効理由のうち進歩性欠如の無効理由の論理を引用して主張している。

[主位的副引例2について]
本件特許発明における「平衡重り」の重心位置は、可動重りとして機能する方向にセンサを傾かせるために平衡重りとしての重心位置を特定するものである。
これに対して、主位的副引例2(甲第19号証)において可動重りとして機能する作動錘3と、平衡重りとして機能する釣合錘11は別体であるから、主位的主引例2の図面等から作動錘3、釣合錘11や、センサ全体の重心位置等を読み取ったとしても、上記相違点D.における平衡重り、すなわち平衡重りとして設計された可動重りの重心位置とは異なるものである。
一方で、主位的主引例発明の重錘5は、リミットスイッチ4と一体としてみた場合に限り平衡重りとして機能するものであって、重錘5単体で平衡重りとして機能するものではなく、さらには可動重りとして機能するものでもないから、主位的副引例2の別体である作動錘3や釣合錘11の重心位置の技術を適用することもできない。
よって、主位的主引例発明に、主位的副引例2に記載された構成を適用することで、相違点D.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[周知技術について]
請求人は、「可動重りの重心及びセンサ全体の重心が、断面図上、いずれも中心線に対し同じ側方に位置する構成は、副引例のみならず、ドイツ実用新案第6751576号公報(甲第21号証)、実開昭62- 28339号公報(甲第22号証)及びスペイン特許第295330号公報(甲第20号証)(いずれも、被請求人の主張にかかる本件特許の優先日平成4年4月28日より前の公知文献である。)に代表される多数の公知文献に明確に開示されており、レベル・センサにおいて周知技術と位置づけられる」(審判請求書第46頁第9-17行)と主張している。

本件特許発明における「平衡重り」の重心位置は、可動重りとして機能する方向にセンサを傾かせるために平衡重りとしての重心位置を特定するものである。
これに対して、甲第21号証については、上記<相違点B.について>の[周知技術について]で述べたように、可動重りとして機能する「ウェート15」が平衡重りとして設計されていないものであり、そもそも平衡重りそのものを有していないものであるから、平衡重りの重心位置に関する構成も有していない。
よって、甲第21号証は、相違点D.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

同様に、甲第22号証で可動重りとして機能する「錘6」、及び甲第20号証で可動重りとして機能する「釣り合いおもり11」も平衡重りとして設計されていないものであり、甲第22号証のフロートスイツチ、及び甲第20号証の水深調整用に改良されたセンサも、そもそも平衡重りそのものを有していないものであるから、平衡重りの重心位置に関する構成も有していない。
よって、甲第22号証及び甲第20号証もまた、相違点D.の構成が周知の技術であるとする根拠となり得ない。

してみると、請求人が周知技術の根拠として提示した甲第21号証、甲第22号証、甲第20号証は、いずれもその根拠となり得ず、他に周知技術であるとの根拠もないから、上記相違点D.の構成は、周知技術と位置づけられるものではない。
よって、主位的主引例発明に周知技術を適用することで、相違点D.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

<相違点E.について>
請求人が第2の無効理由の主位的主張の証拠として提示している主位的副引例1(甲第18号証)は、上記記載事項(i)及び図面からみて「液体中に浸漬されているときセンサは電気ケーブルから自由懸垂状態にある」構成を有しているものであり、同様に主位的副引例2(甲第19号証)もまた上記記載事項(m)、第1図及び第2図からみて同構成を有しているものであると認められる。
してみると、レベル・センサにおいて、「液体中に浸漬されているときセンサは電気ケーブルから自由懸垂状態にある」状態とすることそれ自体は、センサ全体の浮力/重量と液体の密度との関係を調整することに過ぎず、本件特許出願前にレベル・センサの技術分野において周知のものであると認められる。
よって、レベル・センサである主位的主引例発明において、センサを液体中で自由懸垂状態にすることは、周知技術の適用にすぎない。
したがって、主位的主引例発明において、相違点E.に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
なお、これは主位的主引例発明において、各構成部材の調整、追加等によりセンサ全体の浮力/重量と液体の密度との関係を調整する限りにおいて容易になし得るとするものであって、主位的主引例発明において重錘5の重量のみの調整によって、重錘5を平衡重りとしセンサを自由懸垂状態にすることが容易とするものではない。

ウ.主位的主張のまとめ
したがって、上記相違点A.及びE.に係る本件特許発明の構成については、当業者が容易になし得たものであるものの、上記相違点B.乃至D.に係る本件特許発明の構成については、当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明が、甲第16号証、甲第18号証、甲第19号証に記載された発明、甲第17号証、甲第20号証乃至甲第22号証で示された周知技術及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


(2)予備的主張について
ア.各号証の記載事項
(ア)請求人が予備的主引例としている甲第18号証(スウェーデン特願8405668-8号明細書)には、図面とともに上記第4 2.(1)ア.(イ)で示した記載事項(h)乃至(j)が記載されている。
なお、予備的主引例において「スイッチ装置3」「スイッチ3」「装置3」「ブレーカー3」のように、同一参照符号に対して複数の名称が用いられている点については、上記第4 2.(1)イ.<相違点B.について>[主位的副引例1について]で名称を統一したのと同様に「スイッチ装置3」という名称に統一して表記する。
また、おもり5は、その表面の一つがプランジャー4を押し入れるものであり、プランジャー4はスイッチ装置3の一部分であるから、おもり5の表面の一つがスイッチ装置3を直接的に作動するように配置されているものである。
してみると、上記記載事項(h)乃至(j)から、予備的主引例には、
「液体の液位に応じて電動ポンプを作動・停止するような電気回路を閉じる又は遮断するための液位センサーにおいて、中空体1内に配置したスイッチ装置3に接続された電気ケーブル2に垂れ下がった状態に取付けられた中空体1を含み、前記スイッチ装置3は前記中空体1内に配置したおもり5の助けにより閉じる又は遮断する位置へ作動され、おもり5は中空体1内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に配置され、前記おもり5の表面の一つがスイッチ装置3を直接的に作動するように配置され、液体中に沈んでいるとき液位センサーは鉛直線に対して著しく傾いている液位センサー。」
の発明(以下「予備的主引例発明」という。)が開示されていると認められる。

(イ)請求人が予備的副引例1としている甲第16号証(実公昭52- 42767号公報)には、図面とともに上記第4 2.(1)ア.(ア)で示した記載事項(a)乃至(g)が記載されている。

(ウ)請求人が予備的副引例2としている甲第17号証(フィンランド特許第42382号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、請求人が提出した甲第17号証の訳文で記載事項を示す。
(n)「本発明の目的は、液体保存用タンクの容量とその水位をコントロールする装置の電気式水位制御装置を提供することである。」(第1頁第1-2行)
(o)「本発明において特徴的であるのは、電気スイッチの作動アームが振子のように動くようにフロートの内側底部に蝶番で留め付けてある点で、この作動アームはフロートの傾斜角度が変化するのに合わせて一定の範囲を極限から極限へと揺れ動くようになっている。」(第1頁第19-21行)
(p)「符号1で示したのは電気ケーブルで、これに状態を決定するための重り2が取り付けられている。フロート6は、水位がどのくらいあるかに関係なく、どのような傾斜角度でもこの重り2の周囲を自在に動くことが出来る。フロート6の内部には電気スイッチ3があり、これはモーターの電気回路に直接働きかける。フロートの内側底部には電気スイッチ3の作動アーム4が一定の範囲内で振れ動くように蝶番8で取り付けられている。このアーム4には重り5が取り付けられている。フロート6が状態A、B、Cのとき、モーターが作動しており操作レバー11によりスイッチ3は閉の位置にある。」(第2頁第9-15行)
(q)「フロートが転覆しないように別途重りやフロートの状態を安定させるための手段が必要にならないよう、作動アーム4の先端にある重り5は十分な重量を持たせたほうがよい。」(第2頁第15-17行)
(r)「通常のフロートは状態Bと状態Eの間しか動くことができない。望まれる水位上限が状態Bであるとき、作動アームは電気スイッチ3を閉の位置に押す状態まで振れ、そのときモーターが動き始め液体タンクの排水を開始する。Cと記された箇所、さらに進んでEの箇所、つまり水位が下がったので作動アーム4が反対の限界状態まで振れて操作レバー11を絞るのをやめる状態では常に、電気スイッチ3はその勢いで一気に「開」の位置に動いて電気モーターが停止する。」(第2頁第21-25行)

(エ)請求人が予備的副引例3としている甲第19号証(実公昭42- 10534号公報)には、図面とともに上記第4 2.(1)ア.(ウ)で示した記載事項(k)乃至(m)が記載されている。


イ.対比・判断
本件特許発明と予備的主引例発明とを対比すると、両者は、いずれもタンク内の液面レベル検出スイッチに関するものであって、予備的主引例発明における「液体」は本件特許発明における「ポンプ媒体」に相当し、以下同様に「液位」は「レベル」に、「電動ポンプを作動・停止」は「電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止」に、「電気回路を閉じる又は遮断するため」は「電気機能の接続/切離し用」に、「液位センサー」は「レベル・センサ」に、「中空体1」は「中空本体」に、「電気ケーブル2」は「電気ケーブル(2)」に、「閉じる又は遮断する位置」は「接続/切離位置」に、「液体中に沈んでいるとき」は「液体中に浸漬されているとき」に、「鉛直線に対して著しく傾いている」は「垂直位置から傾き」にそれぞれ相当するものである。
また、予備的主引例発明の「垂れ下がった状態」は、中空体1が空気に囲まれた状態において、本件特許発明の「自由懸垂状態」に相当するものである。
さらに、予備的主引例発明の「スイッチ装置3」と本件特許発明の「マイクロスイッチ」は、ポンプを液面レベルに応じてオンオフするために動作する「スイッチ」である限りにおいて共通するものである。

ここで、請求人は、予備的主引例と同一証拠である主位的主張の主位的副引例1に関する主張の中で、「中空体は液体に沈み、液体中において上図のとおり傾斜して位置する。したがって、主位的副引例1記載の発明は、中空体が液面上に浮遊する構成ではなく、中空体が液中に浸漬し、その状態において水平位置での釣り合いを保つ構成である。
よって、主位的副引例1には、おもり5が、中空本体が液中に浸漬した状態において水平位置での釣り合いを保つよう機能する重りであること、すなわち、本件特許発明の『平衡重り』に相当する重りであることが明確に示されている。」(審判請求書第62頁第11-18行)と主張しているから、これを予備的主引例に関する主張に読み替えて検討する。
まず、予備的主引例においては、液体中に浸漬されているときにセンサが自由懸垂状態であるとは明記されていないけれども、上記記載事項(i)で示したように「中空体は液体に沈んでいる」、「液位が液位センサーと同じ高さか、センサーより高い状態にあることを示す。」と記載されていることからみて、中空体は液体中に浸漬した状態で自由懸垂状態となっていることが伺える。
そこで、どのような構成によって液体中に浸漬した状態で自由懸垂状態となるかについてみると、請求人は「おもり5は装置全体に対し相当の重量を占める部材として開示されているものである。」(審判請求書第62頁第9-10行)と主張しているけれども、たとえ図面においておもり5が中空体内の相当の部分を占める部材として図示されているとしても、おもり5及び中空体その他の構成部材に関して、それぞれの比重も、当然に重量も不明であるから、請求人が主張するように「おもり5は装置全体に対し相当の重量を占める部材として開示されているものである。」と断言はできないし、一方で、予備的主引例においては、上記記載事項(i)で「前に述べたように、中空体の重量と体積は、監視される液体の濃度に合わせ、中空体が液体で囲まれたときに鉛直線に対して著しく傾くように調節する。」とあるように、「中空体の重量と体積」を調節することによって「中空体が液体で囲まれたときに鉛直線に対して著しく傾く」ものであるから、重量に注目すると、中空体の挙動に大きく関与するのは、「中空体の重量」すなわちおもり5に限らずその他の構成部材を含む中空体全体の重量が平衡重りとして機能していると考えるのが自然であるといえる。
してみると、予備的主引例発明においては、液体中に浸漬されているときにセンサが自由懸垂状態であるとは認められるが、おもり5は、平衡重りの一部として機能していることは伺えるとしても、少なくとも、おもり5単体が平衡重りとして設計されているとまではいえない。
よって、予備的主引例発明における「おもり5」は、スイッチを作動するための助けとしての機能に限り、本件特許発明の「可動重り」に相当するものである。
してみると、本件特許発明と予備的主引例発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「ポンプ媒体のレベルに応じて電気的駆動ポンプ中のモータを始動/停止するような電気機能の接続/切離し用のレベル・センサにおいて、中空本体内に配置したスイッチに接続された電気ケーブルに自由懸垂状態に取付けられた中空本体を含み、前記スイッチは前記中空本体内に配置した可動重りの助けにより接続/切離位置へ作動され、可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に配置され、前記可動重りの表面の一つがスイッチを直接的に作動するように配置され、液体中に浸漬されているときセンサは垂直位置から傾きなお電気ケーブルから自由懸垂状態にあるレベル・センサ。」

<相違点>
F.スイッチについて、本件特許発明は「マイクロスイッチ」であるのに対して、予備的主引例発明はスイッチを具体的に特定していない点。

G.重りの動作について、本件特許発明は「平衡重りとして設計された当該可動重りは中空本体内に2つの異なる終端位置の間で該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され、」としているのに対して、予備的主引例発明は「おもり5は中空体1内に2つの異なる終端位置の間で移動可能に配置され」としている点。

H.重りの重量について、本件特許発明は「前記平衡重りの重量は、前記中空本体、前記マイクロスイッチ、平衡重り、及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%」であるのに対して、予備的主引例発明はその重量について不明である点。

I.重心について、本件特許発明は「前記平衡重りは、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心があり、かつ前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」としているのに対して、予備的主引例発明は重りの重心位置もセンサ全体の重心位置も不明である点。

そこで、上記各相違点について以下に検討する。
<相違点F.について>
機械式スイッチとして、マイクロスイッチその他各種のスイッチが文献を示すまでもなく本件特許出願前に周知のものであり、予備的主引例発明のスイッチとしてマイクロスイッチを選択することは、当業者が適宜なし得る選択的事項にすぎない。
よって、予備的主引例発明において、相違点F.に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得るものである。

<相違点G.について>
請求人は、上記相違点G.(請求人が主張する相違点4)について、「可動な重りの可動領域を限定するにあたり、可動領域をケーシングしたり、係止部を設けたり、軸支したりすることは、当業者であれば容易かつ自由に選択可能な設計的事項にすぎないことに多言を要しない。」(審判請求書第25-28行)、「予備的主引例記載の発明は、可動重りが軸支されていないものであるところ、これを、予備的副引例1、予備的副引例2及び予備的副引例3にそれぞれ開示されているように、可動重りを回転可能に軸支する構成に置き換えることは当業者において容易に想到するものであり、かかる置き換えにおいて阻害要因となる事情は全くない。」(審判請求書第85頁第22-28行)と主張している。

[設計的事項について]
予備的主引例発明のおもり5の動作をより詳細にみると、上記記載事項(i)によれば「(前略)・・・鉛直線に対し、左に傾いているということである。この位置に置かれると、おもり5の上部が中空体の壁に接触し、それと同時に中間板7からわずかに離れる。・・・(中略)・・・中空体1が空気中にある場合、中空体は垂直位置を取り、おもり5の全重量が中間板7にかかることになる。」とあるから、おもり5の上側部が中空体の壁に接触した状態と、おもり5の下面全体が中間板7に接触した状態との間で移動するものであり、これは、おもり5が小さな旋回運動をしていることを示すものであるし、図面を参酌すると、その旋回中心はおもり5の下面の左縁部であることが伺える。
そして、旋回運動をする部材を軸支することは、機械設計的に慣用的に行われているものであるから、予備的主引例発明の可動重りについて、おおよその旋回中心であるおもり5の下面の左縁部で軸支すること、すなわち可動重りを通る軸線を中心として回転可能に支持することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。
ただし、上述したように予備的主引例発明の重りは、あくまで可動重りであって平衡重りとして設計されたものではないし、中空本体全体の重量でもって平衡機能を発揮する予備的主引例発明において、可動重りを平衡重りとして設計することについてまで設計的な事項であるとはいえない。

[予備的副引例1について]
予備的副引例1である甲第16号証は、主位的主張における主位的主引例と同一証拠であるので、上記第4 2.(1)イ.で示したように、予備的副引例1の重錘5は、平衡重りとして設計されていないし、リミツトスイツチ4に対して固定されるものであって可動重りではないし、重りを通る軸線を中心として回転可能に支持されるものでもない。
してみると、予備的副引例1は、相違点G.のうち「平衡重りとして設計された当該可動重り」及び「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
よって、予備的主引例発明に、予備的副引例1に記載された構成を適用することで、相違点G.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[予備的副引例2について]
予備的副引例2(甲第17号証)は、可動重りとして機能する「重り5」が「作動アーム4」の先端に取り付けられているから、「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
また、上記記載事項(p)における「フロート6は、水位がどのくらいあるかに関係なく、どのような傾斜角度でもこの重り2の周囲を自在に動くことが出来る。」なる記載と図面をあわせみると、予備的副引例2の電気式水位制御装置は、水中において自由懸垂状態ではないことが明らかであり、これはすなわち「重り5」が平衡重りとして設計されていないものである。
してみると、予備的副引例2は、相違点G.のうち「平衡重りとして設計された当該可動重り」及び「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
よって、予備的主引例発明に、予備的副引例2に記載された構成を適用することで、相違点G.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[予備的副引例3について]
予備的副引例3である甲第19号証は、主位的主張における主位的副引例2と同一証拠であるので、上記第4 2.(1)イ.<相違点B.について>[主位的副引例2について]で示したように、予備的副引例3の作動錘3は、平衡重りとして設計されていないし、重りを通る軸線を中心として回転可能に支持されるものでもない。
してみると、予備的副引例3は、相違点G.のうち「平衡重りとして設計された当該可動重り」及び「該平衡重りを通る軸線を中心として回転可能に支持され」に関する構成を有していないことは明らかである。
よって、予備的主引例発明に、予備的副引例3に記載された構成を適用することで、相違点G.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

<相違点H.について>
請求人は、上記相違点H.(請求人が主張する相違点5)について、「相違点5は、進歩性欠如の主位的主張における相違点2と同内容であって、上記ウ(カ)において詳論したのと同様、相違点5にかかる平衡重りとセンサ全体の重量比は、当業者において適宜選択しうる設計的事項にすぎず、また、本件特許発明において、平衡重りとセンサ全体の重量比にかかる数値限定につき、臨界的意義は全くない。」(審判請求書第86頁第5-10行)とし、第2の無効理由のうち主位的主張の論理を引用して主張している。

しかしながら、本件特許発明の30%という数値は、主位的主張に関する上記第4 2.(1)イ.<相違点C.について>で示したように、技術的意義も臨界的意義もあるものと認められるし、単体では平衡重りとして機能していない予備的主引例発明のおもり5の重量について、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための数値である30%という重量比に限定することが設計的な事項であるとはいえない。
したがって、予備的主引例発明に設計的事項を適用することで、相違点H.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

<相違点I.について>
請求人は、上記相違点I.(請求人が主張する相違点6)について、「予備的主引例記載の発明に相違点6にかかる構成を設けることについては、上記1エ(ウ)A、Bにおいて詳論したのと同様、予備的主引例記載の発明に予備的副引例3(上記1エ(ウ)Aにおける副引例)記載の発明を組み合わせることによって、あるいは、予備的主引例記載の発明に周知技術を組み合わせることによって、当業者において、容易に実現しうるものである。」(審判請求書第86頁第15-20行)とし、第2の無効理由のうち主位的主張の論理を引用して主張している。

[予備的副引例3について]
予備的副引例3である甲第19号証は、主位的主張における主位的副引例2と同一証拠であるので、上記第4 2.(1)イ.<相違点D.について>[主位的副引例2について]で示したように、予備的副引例3における作動錘3、釣合錘11の重心位置と、上記相違点I.における平衡重り、すなわち平衡重りとして設計された可動重りの重心位置とは異なるものである。
一方で、予備的主引例発明のおもり5は、単体で平衡重りとして設計されているものでもないから、予備的副引例3の別体である作動錘3や釣合錘11の重心位置の技術を適用することもできない。
よって、予備的主引例発明に、予備的副引例3に記載された構成を適用することで、相違点I.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

[周知技術について]
予備的主張において請求人は、周知技術であることの根拠について示していないが、請求人が主張する相違点6と同内容である主位的主張の相違点3を勘案すると、第1の無効理由のうち進歩性欠如の無効理由の論理を引用して甲第20号証乃至甲第22号証を周知技術の根拠としているものと推察される。
しかしながら、上記第4 2.(1)イ.<相違点D.について>[周知技術について]で示したように、請求人が周知技術の根拠として提示した甲第20号証乃至甲第22号証は、いずれもその根拠となり得ず、他に周知技術であるとの根拠もないから、上記相違点I.の構成は、周知技術と位置づけられるものではない。
よって、予備的主引例発明に周知技術を適用することで、相違点I.に係る本件特許発明の構成とすることはできない。

ウ.予備的主張のまとめ
したがって、上記相違点F.に係る本件特許発明の構成については、当業者が容易になし得たものであるものの、上記相違点G.乃至I.に係る本件特許発明の構成については、当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明が,甲第18号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第19号証に記載された発明、甲第20号証乃至甲第22号証で示された周知技術及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、請求人の主張する第2の無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


3.第3の無効理由について
(1)重量比について
ア.請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1における「前記平衡重りの重量は、前記中空本体(1)、前記マイクロスイッチ(15)、平衡重り(9)、及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段(5,6、7、8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり」なる構成について、発明の詳細な説明には、平衡重りとセンサ全体の重量比を少なくとも30%とすることの理論的あるいは実験的な裏付けが全く記載されていないとし、さらに「マイクロスイッチの作動を確実にするためには、a)中空本体の主水平位置における具体的な傾斜角度、b)液面レベルの上昇・下降時それぞれにおいて、中空本体が何度傾斜した時点で、平衡重りが一端から他端へ移動するのか、c)平衡重りの移動に伴うセンサの重心位置の移動、それによる中空本体の傾斜の変化、等々の具体的構成の決定が不可欠である。また、d)本件特許発明は、・・・(中略)・・・浮力とその作用点である浮心の位置、センサ全体の重量とセンサ全体の重心の位置、およびそれらの相関関係を最適に定めることが不可欠である。」(審判請求書第93頁第27行-第94頁第13行)、「また、平衡重りとセンサ全体の重量比が、装置のこれら具体的構成と関わりなく作動の確実性の決定要素となること自体がそもそも技術常識に反しているのである。」(審判請求書第94頁第20-23行)と主張している。

イ.判断
請求人が指摘する本件特許の請求項1における構成のうち「前記平衡重りの重量」については、請求項におけるそれ以前の記載により、「平衡重りとして設計された可動重りの重量」を示していることは明らかであるから、請求人が指摘する本件特許の請求項1における構成は、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための重量を規定するものである。
そして、本件特許の明細書には、「マイクロスイッチを確実に停止させるため、平衡重り9は相対的に重く、レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に、センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが、適切な値は50から80%の間である。加えて、センサの全重量/容積関係は、レベル・センサが液体で囲まれているとき主水平位置を取ることを確保するように、管理される液体の密度と関連して選択されるであろう。」(発明の詳細な説明第【0016】段落)と記載されており、30%であるがという値は、平衡重りとしての機能のみを発揮するための数値ではなく、平衡重りとして機能し、かつ可動重りとしても機能するための最小値である旨が明示されている。
また、「適切な値は50から80%の間である。」、「管理される液体の密度と関連して選択される」と記載されているように、その他の条件によってより大きな値となり得るけれども、30%という数値は、「受入れ可能な安全性を得る最小値」であるということが明示されている。
換言すると、本件特許発明における重量比の限定に関して、本件特許の明細書においては、平衡重りとしての機能と可動重りとしての機能を両立するために必要な最小値を30%と規定するものであり、重量比以外の各種の要素、条件によっては、重量比が30%を越えるように設定するものであると明示されているのである。
すなわち、本件特許の明細書における重量比の最小値を30%と規定することに関する記載は、請求人が主張するような、重量比以外の各種の要素、条件と関わりなく重量比単独で作動の確実性の決定要素になると記載されているものではなく、重量比以外の各種の要素、条件との相関関係の中で最適な値とすることを前提として、重量比の最小値を規定すると記載されているものである。

そして、重量比以外の各種の要素、条件については、よほど極端、異例なもので平衡重りとしての機能と可動重りとしての機能が両立できないようなものを論外として、レベル・センサとして常識的なものであれば許容できるから、その記載が省略されていることは明らかであるし、重量比を30%にするということそれ自体について技術的に不明なところはなく、当業者にとって、さらなる理論的な説明や実験的な裏付けが必要なほどに新規、難解なものではないし、重量比以外の各種の要素、条件の全てが詳細に記載されていなければならないということもない。

ウ.重量比についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1に記載された構成のうち、「前記平衡重りの重量は、前記中空本体(1)、前記マイクロスイッチ(15)、平衡重り(9)、及び平衡重りを中空本体内に回転可能に支持する手段(5,6、7、8)から成るセンサが空気によって囲まれている時該センサの全重量の少なくとも30%であり」なる構成は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されているものである。


(2)重心位置について
ア.請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1における「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成について、「センサの中空本体の外形の中心」、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」の意義を説明・示唆する記載が全く存在しないばかりか、同垂直線の「側方」の意義を説明・示唆する記載も全く存在せず、さらに「同じ側方」が如何なる側であるのかについても、本件明細書の詳細な説明には、何ら記載も示唆もされていない、と主張している。

イ.判断
[センサの中空本体の外形の中心について]
本件特許の発明の詳細な説明では、「センサの中空本体の外形の中心」なる文言は明記されていないけれども、第1図乃至第3図をみると「-・-・-」(以下「一点鎖線」という。)で示される線があり、特に第2図をみると、一点鎖線が電気ケーブル2及び水密入口3の曲がった形状に沿って曲がっているから、当業者であれば、この一点鎖線は、電気ケーブル2や水密入口3を含むセンサ全体の「外形」に関係する線であると理解するしかない。
さらに、第1図乃至第3図を詳細にみると、センサ全体の縦断面図である第1図及び第2図では、センサの中空本体の外形部分に注目すると、センサの中空本体の外形はほぼ線対称形状として描かれており、一点鎖線が線対称形状の対称軸を通っていることは明らかである。
また、センサの中空本体の横断面図である第3図では、センサの中空本体の外形は、ほぼ円形状として描かれており、一点鎖線は、円形状の中心で直交する2つの直径をあらわしている。
してみると、第1図乃至第3図において一点鎖線は、センサの中空本体の外形部分に注目してみる限りにおいて、線対称形状の対称軸や円形状の中心といった、幾何学的形状の中心といえる線や点を通る線として用いられているものであり、換言すると、一点鎖線によって、センサの中空本体の外形の中心が明示されているものである。

[センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線について]
まず、何に対して垂直な線なのかについては、本件特許の発明の詳細な説明では「スウェーデン特許第8405669-6号は、センサが常に垂直位置を取るマイクロスイッチを含む他の解決方法を示している。・・・(後略)」(第【0006】段落)、「(前略)・・・他方、中空本体は空気に囲まれているとき主として垂直位置をとる。」(第【0011】段落)のように、「垂直」なる用語は、従来技術の説明及び本件特許発明の実施例の説明いずれにおいても、水平に対する鉛直方向を示すものとして一貫して用いられている。
また、本件特許の発明の詳細な説明では「【従来技術】この目的のレベル・センサは従来から公知で、液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている。・・・(後略)」(第【0002】段落)、「前述したように、中空本体の重量と容積は、中空本体が液体に囲まれているとき垂直線に対して強く傾斜した位置をとるように、管理される液体の密度に適合される。・・・(後略)」(第【0011】段落)なる記載があり、「垂直線」がセンサの中空本体の外形の中心を通るかどうかは不明であるとしても、センサが空気に囲まれているときはセンサが「垂直線」の方向を向き、すなわち直立し、センサが液体に囲まれているときはセンサが「垂直線」とは異なる方向を向く、すなわち横倒しとなることが、従来技術の説明及び本件特許発明の実施例の説明いずれにおいても明記されている。
これらの記載をあわせみると、「垂直線」とは、センサが空気に囲まれているときの中空本体の方向を示す線であって、水平に対する鉛直方向の線を意味していることが明示されている。

すなわち、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」とは、まず鉛直方向の線であることが前提であって、その上で、センサが空気に囲まれているときの中空本体の方向を示すものであると記載されているのだから、第2図や第3図の一点鎖線のような線ではないことは明らかであって、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分にかかる線分が鉛直方向を向いた状態のごとく、水平に対する鉛直方向の線が、センサの中空本体の外形の中心を通る状態の垂直線であることが明示されているのである。

ここで、請求人は「図1に記載された図面は、中空本体が、空気に囲まれた状態において、鉛直に垂れ下がっている点において既に誤っている。センサ全体の重心が偏心しているレベルセンサの中空本体が、空気に囲まれている状態において、図1のように鉛直に垂れ下がるはずがない。
したがって、誤った図面に記載された鎖線を以て、同「垂直線」の意義が示されているということはできない。」(審判請求書第100頁第8-14行)と主張している。

上記請求人の主張について検討すると、まず、本件特許の発明の詳細な説明では「1図に示す位置において、本体は完全に又は殆んど完全に空気により囲まれている。・・・(後略)」(第【0012】段落)と記載されているから、第1図のレベル・センサは、空気中で自然に吊り下げられた状態であり、さらに「(前略)・・・他方、中空本体は空気に囲まれているとき主として垂直位置をとる。」(第【0011】段落)と記載されているから、このとき中空本体は、「主として垂直位置」をとっていることは明らかである。

ここで、「主として垂直位置」なる用語については、発明の詳細な説明には詳しく説明されておらず、一般的な解釈では、「主に」とは「主として。もっぱら。」(株式会社岩波書店 発行、広辞苑 第四版、1991年11月15日発行)を意味しているから、「主に垂直位置」は「もっぱら垂直位置だが垂直位置でないときもある」のように解釈することもできる。
しかしながら、発明の詳細な説明全体の記載を勘案すると、空気に囲まれたときにセンサが垂直位置を取らないことは機能上あり得ないので、「もっぱら垂直位置だが垂直位置でないときもある」と解釈できないことは明らかである。
そこで発明の詳細な説明をさらにみると、「水位レベルが上昇し始めると、レベル・センサは遂には傾き始め、最後に図2に示す主水平位置に到達する。・・・(後略)」(第【0014】段落)、「センサがその水平位置近くからスタートすると・・・(後略)」(第【0015】段落)と記載され、「主として垂直位置」に対して「主水平位置」が用いられ、さらに水平位置に関して「センサがその水平位置近くからスタートする」なる記載がある。
すなわち、「水平位置近く」が「主水平位置」を意味していることは明らかであるので、「主水平位置」に対する用語である「主として垂直位置」は「垂直位置近く」を意味していることも明らかであり、この「垂直位置近く」はよりわかりやすい言葉を使えば、「垂直に近い位置」「ほぼ垂直な位置」を意味することは明らかである。

これに対して第1図では、一点鎖線が、電気ケーブル2や水密入口3からセンサの中空本体の外形の中心にかけて一直線に伸びている、すなわち中空本体が完全に直立しているようにもみえる。
請求人は、この第1図において中空本体が完全に直立しているようにみえる記載のみをもって「誤った図面に記載された鎖線を以て、同「垂直線」の意義が示されているということはできない。」と主張している。

しかしながら、第1図の中空本体は、あくまで「ほぼ垂直な位置」であって完全に直立していないことが発明の詳細な説明に明記されているのに対して、第1図の中空本体が完全に直立しているとするような記載は発明の詳細な説明のどこにもないのであるから、そのようにみえるからといって、第1図の中空本体が完全に直立していると判断すること自体がそもそも本件特許発明の要旨に反するものである。

ここで、一般的に、特許出願の図面は、請求項や発明の詳細な説明の記載についての理解を容易にするためのもので、図面にその技術内容が理解され得る程度に明示されていれば足りるものであって、必ずしも設計図面のような詳細かつ正確な図面は必要とされていない。
そして、本件特許の第1図の一点鎖線は、電気ケーブル2や水密入口3からセンサの中空本体の外形の中心にかけて一直線に伸びているように見えるけれども、明細書の記載と本件特許発明の要旨に照らせば、空気に囲まれている時の中空本体は、ほぼ垂直な位置を取ると明記されているのだから、実際には厳密な垂直方向でないことを前提として、第1図は、中空本体が垂直方向を向いていることを強調すべく表現したものであると理解するか、そうでないにしても、ほぼ垂直であるので、作図の都合上、便宜的に完全に直立した状態で表現したものであると理解するのが自然であるし、本件特許発明の要旨に合致するものである。
よって、請求人の当該主張は採用できない。

[センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心がある点について]
発明の詳細な説明には「図1に示す位置において、本体は完全に又は殆んど完全に空気により囲まれている。そのとき平衡重り9の重心10はベアリング6,8の左側に位置し、かくして平衡重り9はそのベアリングのまわりに反時計方向に回転しようとする。」(第【0012】段落)なる記載があり、第1図とあわせみると、平衡重り9の重心10は一点鎖線から左側にずれた位置に明示されている。
ここで、上述したように、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」は、第1図の一点鎖線のうちセンサの中空本体の外形部分にかかる線分が鉛直方向を向いた状態のごとく、水平に対する鉛直方向の線が、センサの中空本体の外形の中心を通る状態が上記垂直線なのだから、第1図の一点鎖線から左側方にずれた位置に平衡重り9の重心10が示されているということは、本件特許の請求項1に記載の「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」なる構成については、発明の詳細な説明に明示されていることに他ならない。

[センサ全体の重心が垂直線に対し平衡重りの重心と同じ側方にある点について]
「センサ全体の重心」という文言について、本件特許の発明の詳細な説明では明記されていない。
そこで発明の詳細な説明をさらにみると、「レベル・センサが主に空気に取囲まれている限り、下水部の水位レベルがセンサより下にある限り、センサは直立位置を保持し、マイクロスイッチはその接続又は切離し位置を保持する。」(第【0013】段落)、「水位レベルが上昇し始めると、レベル・センサは遂には傾き始め、最後に図2に示す主水平位置に到達する。・・・(後略)」(第【0014】段落)とあるように、レベル・センサは、空気に囲まれているときにほぼ直立姿勢で、水位レベルの上昇にともなってマイクロスイッチが作動する方向に傾き、液体中に浸漬されているときにほぼ水平姿勢となるものである。
この水平姿勢について第2図をみると、平衡重り9が下となる水平姿勢でなければマイクロスイッチを作動させることができないから、レベル・センサは任意の方向に傾いて平衡重り9の位置も任意な水平姿勢となるものではなく、平衡重り9が下となる水平姿勢となるように一定方向に傾くものであることは明らかである。

このように、発明の詳細な説明には、レベル・センサとして機能するために、水位レベルの上昇にともなってすみやかに一定方向に傾くことが明示されており、さらに、発明の詳細な説明には「【従来技術】この目的のレベル・センサは従来から公知で、液体又は空気のどちらに囲まれているかに応じて垂直線に対して異なる角度を本体がとるような重量配置を有する自由懸垂型の中空水密体として設計されている。・・・(後略)」(第【0002】段落)なる記載も参酌すると、重量配置によって一定方向に傾かせることも明らかである。
この、重量配置によって一定方向に傾かせることについて技術的にみれば、傾く物体である中空本体の内部の構成部材がどのように配置され、どのような重量を有していようとも、中空本体全体の重心が中空本体の中心(浮心)上にあっては、全体として安定し一定方向に傾くことはないから、中空本体全体の重心が中空本体の中心(浮心)からずれていることを意味するものである。
さらに、上記[センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線について]で述べたように、中空本体を空気に囲まれた状態で吊り下げたとき、中空本体はほぼ垂直な位置であって厳密には直立しないことが発明の詳細な説明に明示されていることからみても、中空本体全体の重心が中空本体の中心からずれているということは、整合している。
してみると、発明の詳細な説明には、中空本体全体の重心を中空本体の中心(浮心)からずらすことで、水位レベルの上昇にともなってレベル・センサをマイクロスイッチが作動する一定方向に傾けるものであることが明示されているのである。
このように、発明の詳細な説明においては、中空本体全体の重心を中空本体の中心(浮心)からずらすことで、水位レベルの上昇にともなってレベル・センサをマイクロスイッチが作動する一定方向に傾けることが明示されているとともに、請求項1においては、中空本体全体の重心を「センサ全体の重心」という文言で表記していることは明らかである。

そして、センサ全体の重心をずらす基準となる中空本体の中心(浮心)については、中空本体を空気に囲まれた状態で吊り下げたとき、中空本体の外形の中心を通る垂直線上にあることは自明である。
次に、いずれの側にずらすかについては、上述したようにセンサが一定方向に傾く、すなわち平衡重りが下となる水平姿勢となるように傾く側にずらさなければならないから、当然に平衡重りのある側にずらさなければならないものであり、このことは、平衡重りの重心と同じ側にずらすことに他ならない。
また、どの程度同じ側にするかについては、厳密な同一側を含むことはもちろん、当然に、マイクロスイッチが作動するように傾く範囲内であればよいことは自明である。


ウ.重心位置についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1に記載された構成のうち、「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されているものである。


(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、請求人の主張する第3の無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


4.第4の無効理由について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1の発明特定事項のうち「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」について、いずれも不明確であって、かかる請求項の記載が不明瞭または記載内容が技術的に理解できず、発明の詳細な説明を参酌しても「センサの中空本体の外形の中心」について全く記載がなく、「垂直線」の記載もなく、「側方」の意義を説明・示唆する記載も全く存在しないから、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていない、と主張している。

(2)判断
本件特許の請求項1における「センサの中空本体の外形の中心」、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」、「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成については、上記第4 3.(2)イ.で示したように明りょうであって、かつ発明の詳細な説明に記載されているものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、請求人の主張する第4の無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


5.第5の無効理由について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1の発明特定事項のうち「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」について、発明の詳細な説明には「センサの中空本体の外形の中心」について全く記載がなく、「垂直線」の記載もなく、「側方」の意義を説明・示唆する記載も全く存在しないから、前記発明特定事項の技術内容を明確にする記載が全くなされておらず、当業者が容易にその実施をするだけの記載がなされていない、と主張している。

(2)判断
本件特許の請求項1における「センサの中空本体の外形の中心」、「センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線」、「前記平衡重り(9)は、前記センサが空気に囲まれて主垂直位置を取っている時に該センサの中空本体の外形の中心を通る垂直線の側方に重心(10)があり」及び「前記センサ全体の重心は前記垂直線に対し前記平衡重りの重心と同じ側方にあり」なる構成については、上記第4 3.(2)イ.で示したように、発明の詳細な説明に当業者が容易にその実施をすることができる程度の記載がなされているものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、請求人の主張する第5の無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る特許を無効とすることはできない。
また、他に本件特許を無効とする理由は発見できない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-12-11 
出願番号 特願平5-101428
審決分類 P 1 123・ 112- Y (H01H)
P 1 123・ 536- Y (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 小関 峰夫
横溝 顕範
登録日 2000-10-06 
登録番号 特許第3117169号(P3117169)
発明の名称 レベル・センサ  
代理人 鈴木 修  
代理人 嶋田 英樹  
代理人 山崎 道雄  
復代理人 鐘ヶ江 幸男  
代理人 井口 喜久治  
代理人 辻 淳子  
代理人 井崎 康孝  
代理人 中村 理紗  
代理人 星野 修  
代理人 藤野 睦子  
代理人 伊藤 孝美  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宇田 浩康  
代理人 福田 あやこ  
代理人 森本 純  
代理人 辻村 和彦  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 小野 智博  
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