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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24D
管理番号 1233930
審判番号 不服2009-2835  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-06 
確定日 2011-03-14 
事件の表示 特願2003-508523「研削機械に用いられる使用工具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 9日国際公開、WO03/02304、平成16年 7月15日国内公表、特表2004-520958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成14年5月25日(優先権主張、平成13年6月28日ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成20年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日に手続補正がなされたが、同年11月4日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成21年2月6日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、当審において平成22年4月28日付けで審尋がなされ、同年8月10日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前
「研削機械に用いられる使用工具であって、研削ブレード(10,12)と、支持プレート(14,16)と、ハブ(18,20)とが設けられており、該ハブ(18,20)が、少なくとも1つの切欠き(22,24,26)を有しており、該切欠き(22,24,26)を介してハブ(18,20)が、研削機械(30)の駆動軸(62)に結合された連行フランジ(28)に締付け可能であり、ハブ(18,20)が、支持プレート(14,16)とは別個の構成部材によって形成されている形式のものにおいて、ハブ(18,20)が、ばねエレメント(32)に抗して運動可能に支承された少なくとも1つの係止エレメント(34)を介して研削機械(30)の連行装置(36)に作用結合可能であり、係止エレメント(34)が、ハブ(18,20)の運転位置で係止していて、ハブ(18,20)を周方向で形状接続的に位置決めしていることを特徴とする、研削機械に用いられる使用工具。」

(2)補正後
「研削機械に用いられる使用工具であって、研削ブレード(10,12)と、支持プレート(14,16)と、ハブ(18,20)とが設けられており、該ハブ(18,20)が、少なくとも1つの切欠き(22,24,26)を有しており、該切欠き(22,24,26)を介してハブ(18,20)が、研削機械(30)の駆動軸(62)に結合された連行フランジ(28)に締付け可能であり、ハブ(18,20)が、支持プレート(14,16)とは別個の構成部材によって形成されている形式のものにおいて、ハブ(18,20)が、ばねエレメント(32)に抗して運動可能に支承された少なくとも1つの係止エレメント(34)を介して研削機械(30)の連行装置(36)に作用結合可能であり、係止エレメント(34)が、ハブ(18,20)の運転位置でばねエレメント(32)のばね力によって軸方向にハブ(18,20)の方向(42)で係止されていて、ハブ(18,20)を周方向で形状接続的に位置決めしていることを特徴とする、研削機械に用いられる使用工具。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「係止エレメント(34)」について、「係止」を「ばねエレメント(32)のばね力によって軸方向にハブ(18,20)の方向(42)で係止」とするものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特公昭41-12551号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.第1ページ右欄第11?13行
「仕上げ加工、特に研磨加工においては仕上げ工具が支持パッドよりはずれる事故が常に問題となる。高速回転により仕上げ加工を行う場合には・・・」

イ.第1ページ右欄第36行?第2ページ左欄第5行
「図示した実施例において、仕上げ工具保持器は11で示してあり支持パッド12を包含する。該パッドは可撓性周縁部13と剛性中央部14とを有する。該中央部14は支持パッド12の中を通り面15まで達している。支持パッド12の面15は凹部16を郭成し該凹部16は仕上げ工具の駆動部材の少くとも1部を受ける作用をなす。
仕上げ工具17は突出部19を有する駆動部材18を包含する。該突出部19には複数の開口部20が形成されている。開口部20は支持パッド12の中央部14に固定したタブ21に噛み合う」

ウ.第2ページ左欄第24?31行
「第2図に示す如く、保持器は可撓性周縁部13と剛性中央部14を有する支持パッド12を包含し、更に中央部14は円筒31より構成されている。パッド12の面15は前述の如く凹部18を郭成する。円筒31はパッド12の面15からパッドの中を通りその後面外方に達している 円筒31はパッド12に永久的に固定されている 円筒31の上下面はほぼ閉鎖されている。」

エ.第2ページ右欄第4?36行
「プラグ34は該プラグの上部より突出するねじ付きスタツド38により中空円筒31の内部に固定されている。該スタツド38は円筒31の上面のねじ穴に固定される。該ねじ穴及び円筒31の上面は第2図には示していない。プラグ34はその下面より本体に達する開口部41を有する。本実施例においては、開口部41は本体の全長にわたりプラグ34の上面より突出したスタツド38の一部にまで達している。開口部41のかかる配置は第4図に明示してあり同図の説明の際に詳述する。
開口部41内にはピン42が移動自在に装着されており、該ピン42の下部44を囲繞して発条43の如き弾性可撓装置が装着されている。発条43はプラグ34の開口部41内に着座する。プラグ34の下面には端蓋45が着座しボルト46により固定されている。該ボルト46は蓋45の中央開口部47を通りプラグ34の下面の中央開口部48に螺着される。蓋45は開口部51を有し、作動状態において以下に詳述する殆く該開口部51をピン42の小径部44が通るが、発条43は該開口部より突出することはない。斯様に発条43は開口部41を通りピン42の肩部と蓋45との間において作動する。前述の如く、タブ21は仕上げ工具の駆動部材に対応し該工具を本発明の保持器上に保持する作用をなす。
円筒31の上面の開口部を通るプラグ34のスタツド38に中央ねじ穴53を有するナット52を螺着する。該ナット52はピン42を発条43の力に抗して突出させ而して仕上げ工具を本発明の保持器の面15上に固定する作用をなすものであるが、その作用の詳細については第5図の説明の際に記述する。」

オ.第3ページ左欄第10?30行
「第3図に示した如く、蓋45はピン34の下面上に置かれておりタブ21を有する。該タブ21は仕上げ工具17の駆動部材18の開口部20に対応して該工具をパッド12の面15上に保持する。
仕上げ作業、特に大径の仕上げ工具を使用する作業においては工具のはずれが問題となる。第4図は本発明の止めピンを示す断面図であり、同図により知り得る如くピン42がプラグ34の開口部41内に挿入されている。ピン42の上部65はプラグ34の本体及び円筒31の上面40を通過してスタッド38のねじ部に達している。スタッド38のねじ部においてピン42の上部の直径の約1/2がスタッド38のねじ部の周縁から突出する様な位置に開口部が配置されている。図示した如く、発条43はピン42の肩部50とプラグ34の下面にボルト46により固定された蓋45との間に配置されている。
図より知り得る如く、スタッド38には孔71が形成されているが、該孔71は本実施例においてはねじを有し該ねじ孔に動力工具を螺着する。」

カ.第3ページ左欄第43行?右欄第38行
「第5図は第3、4図と同様な図であるが、仕上げ工具が本発明の保持器の面15上に装着された状態を示している。同図に示す如く、仕上げ工具17の駆動部材18の上方突出部19は支持パッドの面15より下方に突出する環材33内即ち該環材の側壁37内に位置する。環材33の下縁部は駆動部材18の外フランジ部に接触している。
仕上げ工具を本発明による保持器上に装着する場合には駆動部材の上向突出部19の環材33の側壁部37の内側に挿入する。次いで仕上げ工具を上向きに押して環材33を第5図に示す位置まで上方移動させる。環材33の上方移動は突出部19の上面が蓋45の下面に接触する位置で止まる。次いで仕上げ工具をパッド12の面15に対して回転させタブ21と駆動部材の開口部20とを噛み合わせる。かかる位置においては、タブ21は仕上げ工具の駆動部材18の上向突出部19に固定されており、発条32は環材33を下方に押して仕上げ工具17の駆動部材18のフランジを加圧している。この加圧力により駆動部材18はタブ21に対し下向に押されており従って仕上げ工具17の駆動部材とタブとの噛み合いは確実になる。
・・・。
仕上げ工具を固定した後、ナツト52を回転させて下方へ移動させピン42を下向きに押しピン42の端部44をタブ21と噛み合つた突出部19の開口部20内に挿入する。斯様にピン42を仕上げ工具17の駆動部材18内に挿入することにより仕上げ工具は固定される。第5図より知り得る如く、仕上げ工具が逆回転した場合においてもピン42の下部44が開口部内に挿入されており工具を保持器より取りはずすに必要な量の回転を阻止する故に仕上げ工具は保持器よりはずれることはない。」

ここで、「駆動部材18を包含する仕上げ工具17」が、「駆動部材18」以外の「工具部」を有することは明らかである。
また、仕上げ工具17は「高速回転」するものであるから、「プラグ34」が「動力工具の駆動軸に結合」されることは明らかである。

これらの記載事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「研磨機械に用いられる仕上げ工具17であって、駆動部材18と、工具部とが設けられており、該駆動部材18が、複数の開口部20を有しており、該開口部20を介して駆動部材18が、動力工具の駆動軸に結合されたプラグ34に固定された蓋45に締付け可能である形式のものにおいて、
円筒31を介してプラグ34に固定された支持パッド12を有し、
駆動部材18が、ピン42を介して動力工具のプラグ34に作用結合可能であり、ピン42が、駆動部材18の運転位置でナット52の回転によって軸方向に駆動部材18の方向で係止されていて、駆動部材18を周方向で形状接続的に位置決めしている、研磨機械に用いられる仕上げ工具。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「研磨」は、補正発明の「研削」に相当し、同様に、「仕上げ工具17」は「使用工具」に、「駆動部材18」は「ハブ」に、「工具部」は「研削ブレード」に、「開口部20」は「切欠き」に、「動力工具」は「研削機械」に、「蓋45」は「連行フランジ」に、「ピン42」は「係止エレメント」に、「プラグ34」と「蓋45」の両者は「連行装置」に、それぞれ相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「研削機械に用いられる使用工具であって、研削ブレードと、ハブとが設けられており、該ハブが、少なくとも1つの切欠きを有しており、該切欠きを介してハブが、研削機械の駆動軸に結合された連行フランジに締付け可能である形式のものにおいて、
ハブが、少なくとも1つの係止エレメントを介して研削機械の連行装置に作用結合可能であり、係止エレメントが、ハブの運転位置で軸方向にハブの方向で係止されていて、ハブを周方向で形状接続的に位置決めしている、研削機械に用いられる使用工具。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:補正発明では、研削ブレード側に、ハブとは「別個の構成部材によって形成」される「支持プレート」を有するが、刊行物1発明では、研削機械の連行装置側に、「円筒31を介してプラグ34に固定された支持パッド12」を有する点。
相違点2:連行装置について、補正発明では「連行フランジ」を有する「連行装置」であるが、刊行物1発明では「プラグ34」と「蓋45」の両者である点。
相違点3:「係止エレメント」について、補正発明では、「ばねエレメントに抗して運動可能に支承」され、ハブの運転位置において「ばね力によって」係止するものであるが、刊行物1発明では、ハブの運転位置において「ナット52の回転によって」係止するものである点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
補正発明における「支持プレート」は、発明の詳細な説明の段落0030の「トルクが金属薄板ハブ18から形状接続的に支持プレート14に伝達可能」なる記載から、研削ブレードの反力を受けるものであるところ、刊行物1発明における「支持パッド12」も、その構造上、研削ブレードの反力を受けるものである。
研削ブレードの反力は、研削時において生じるものであるから、支持プレート(支持パッド)は、研削時に研削ブレードに接すれば十分であり、研削ブレード締付前において、研削ブレード側、研削機械の連行装置側、いずれに設けるかは、適宜選択すべき設計的事項にすぎない。
よって、刊行物1発明において、支持プレートを研削ブレード側とし、相違点1に係るものとすることは、設計的事項にすぎない。

先に相違点3について検討する。
部材の締付機構において、締付けが解除される方向に、部材が回動することを防止するため、「ばね力によって」自動的に係止ピンを部材の孔に挿入する技術は、特開平11-294420号公報の固定ピン16、特開平7-333703号公報のロックピン11、実願昭58-072617号(実開昭59-177813号)のマイクロフィルムのピン32、にみられるごとく周知である。
刊行物1発明では、係止エレメントを「ナット52の回転によって」挿入するものであるが、かかる周知技術により、係止エレメントが自動的に挿入され、操作性の改善が期待されることから、周知技術を採用し、相違点3に係るものとすることに困難性は認められない。
なお、上記周知技術の例は、いずれも審尋において引用したものであるが、この点、回答書で言及がない。

相違点2について検討する。
一般に、一つの部材を、複数要素で形成するか、一体とするかは、適宜選択すべき事項である。
刊行物1発明の「プラグ34」は「蓋45」に固定されるものであり、両者は一体として機能するが、組立ての関係で、別体とされている。
相違点3で検討した周知技術を採用すると、両者を別体とする必然性はなくなることから、一体とすることに困難性は認められない。
両者を一体としたものは、補正発明の「連行フランジ」を有する「連行装置」に相当する。
よって、相違点2は格別なものではない。

さらに、これら相違点を総合しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成20年7月3日に補正された明細書、図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、付加された限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明を構成する事項のすべてを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、刊行物1発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-18 
結審通知日 2010-10-22 
審決日 2010-11-02 
出願番号 特願2003-508523(P2003-508523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24D)
P 1 8・ 575- Z (B24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 段 吉享西村 泰英  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 所村 美和
刈間 宏信
発明の名称 研削機械に用いられる使用工具  
代理人 杉本 博司  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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