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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1234397
審判番号 不服2009-6730  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-30 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 特願2003-312823「携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 86252〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年9月4日の出願であって、平成21年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月30日付けて拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに
同年4月30日付けで手続補正書(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)が提出されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
平成21年4月30日にされた手続補正は、この出願の特許請求の範囲の請求項1及び3に係る発明を削除するものであって、特許法第17条の2第4項第1号でいう同法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものであるから、適法な手続補正であり、これを認める。
そうすると、本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年4月30日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「 蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段と、
前記第1の回動手段の回動軸と同じ方向を光軸とし、前記第1の回動手段の内部に固定して設けられる撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像を表示する、前記蓋部に設けられる表示手段と、
前記蓋部を、前記第1の回動手段の回動軸と垂直な軸を中心として前記本体部に対して回動自在に支持する第2の回動手段と、
前記第1の回動手段の回動角度を検出する検出手段と、
前記撮影手段により撮影された前記画像を前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を備え、
前記本体部に対して前記蓋部を前記第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、前記第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向になる状態を基準の状態とし、
前記表示制御手段は、前記基準の状態にある場合、前記撮影手段により撮影された前記画像をそのまま前記表示手段に表示させ、前記基準の状態にない場合、前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、前記撮影手段により撮影された前記画像を回転させて前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする携帯端末。」
であると認める。

2.引用例
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-169166号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載a乃至g(以下、「記載a」・・・「記載g」などという。)がある。

a.特許請求の範囲(請求項1,3,4,5,9,24)
【請求項1】 本体部と、モニター画面を備えるフリップ部とを回転自在な軸部により連結してなる携帯端末において、
前記軸部内の長手方向に、
第1撮影用レンズを収納して設け、
前記フリップ部の所定個所に、
第2撮影用レンズを設けたことを特徴とする携帯端末。

【請求項3】 前記フリップ部は、
前記モニター画面側に、前記2撮影用レンズを配置し、
前記軸部は、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とを互いに接触させて閉じる構造を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】 前記軸部の可動部分が成す角度により、前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係を検出する軸部状態センサーを備え、
携帯端末が備える使用可能な各種の機能から、前記軸部状態センサーが検出する前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係に基づいて予め指定された機能を選択し実行する手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】 前記本体部の内側にマイクを備え、
前記フリップ部の内側にスピーカを備え、
音声の通信を行う通信部を備え、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とが互いに同一方法を向いて開かれている場合に
無線通信回線による通話機能を実行可能状態にする手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末。

【請求項9】 電子データを記録する記憶手段と、
前記第1撮影用レンズ及び前記第2撮影用レンズが撮影する静止画像を電子データに変換する手段を備え、
前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向に、前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合に、
デジタルカメラとしての撮影の機能を実行可能状態にする手段を備えることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか一つに記載の携帯端末。

【請求項24】 前記軸部は、
前記フリップ部のある一辺の中央と前記本体部のある一辺の中央とを可動に連結し、
前記フリップ部と前記本体部との双方が、連結している一辺を中心として自由に開閉するように連結する開閉軸と、
前記フリップ部が、前記開閉軸に対して自由に回転するように連結する回転軸とを備えることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか一つに記載の携帯端末。

b.発明が属する技術分野
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、携帯端末に関し、特に電話機能、テレビ電話機能、デジタルカメラ機能、デジタルビデオカメラ機能、ペン入力端末等の多くの機能をコンパクトに実現する小型の携帯端末に関する。

c.従来の技術
【0002】
【従来の技術】携帯端末は、通信・画像・情報等の処理機能を備える小型の機器であり、持ち運びに便利であり携帯に優れている。
【0003】従来、一般に広く利用されている携帯端末には、例えば携帯電話やPHSや、テレビ電話や、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ペン入力による通信端末や情報端末等がある。
【0004】また最近では、これらの内の複数の機能を合わせて備える携帯端末も登場している。この方式においては、複数の機能を一台に合わせて備えるため、同時に複数の種類の携帯端末を持ち運ぶ必要が解消され、携帯端末の目的である携帯性が向上するという利点がある。
【0005】さらに、複数の携帯端末に共通して必要とする装置や機能も多いため、複数の機能を一台に合わせて備える場合においては、これら共通する装置を共用することができ、軽量で小型である携帯端末の特性を失うことなく複数の機能を合わせて備えることが可能である。
【0006】このように、複数の機能を一台に合わせて備える携帯端末は、各種の機能を備える携帯端末を個別に備える方式と比較するならば、電力の消費が少なく保守性や携帯性に優れ、共通する装置を共用できるため生産コストが低く購入価格が安くできる等のはるかに優れる多くの利点を持つ。
【0007】従来の、複数の機能を一台に合わせて備える携帯端末の例として、特開平06-292195号公報に開示された技術があり、液晶モニター・CCDカメラ・スピーカー・通信機能を備え、携帯電話と携帯テレビ電話の機能を実現する携帯端末が提案されている。
【0008】また、この特開平06-292195号公報の携帯端末を含め一般に、従来の携帯端末による携帯テレビ電話は、CCDカメラを液晶モニターの隣でかつ携帯端末の表面の液晶モニターと同一面上に設置する形態を採用している。
【0009】これにより、利用者は液晶モニターに表示される受信した画像を見ながら、液晶モニターの隣に設置されたCCDカメラにより、互いの顔画像を撮影し通話相手に送信することにより携帯テレビ電話の機能を実現するのである。
【0010】また、この特開平06-292195号公報の携帯端末を含めて、従来の携帯端末では、携帯端末の装置本体部とほぼ同面積の(又はより小さい面積の)フリップ部を設け、このフリップ部と本体部の両者が貝殻のように自在に開閉するように可動な軸部を用いて連結する形態も多く採用されている。この場合、携帯端末を装置本体部により手で支持するため、主に装置本体部に操作ボタンを備え、液晶モニターをフリップ部に備える方式が一般である。
【0011】この形態では、フリップ部と本体部の双方に、閉じた場合に外部に触れない内側の面ができ、この内側になる面に液晶モニターや各種の操作ボタン等を配置することができる。このため、使用しない時には小さく閉じることにより液晶モニターの損傷や操作ボタンの誤操作が防止でき、優れた携帯性が実現できる。

d.発明が解決しようとする課題
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述したように従来の携帯端末では、以下に述べるような問題点があった。
【0013】第1に、電話機能、テレビ電話機能、デジタルカメラ機能、デジタルビデオカメラ機能、ペン入力端末等の携帯端末の複数の機能を、一台に合わせて備える方式を採用することにより実に多くの利点が実現できるにも関わらず、従来の携帯端末では、同時に兼ね備えられる機能の数はわずかに2、3の機能でしか実現できなかった。特に、上述の全ての機能を兼ね備えることの可能な携帯端末は実現できなかった。
【0014】これは、小型で軽量の携帯端末内に複数の機能を同時に備えるために、回路や装置構成が複雑化することになり、さらに操作性も悪化し、これらの障害が解消できなかったためである。
【0015】第2に、携帯テレビ電話の機能では、携帯端末の携帯性を有効利用し、外出先等において様々な風景や物体の画像を送信する利用形態が求められるのに対して、従来の携帯端末による携帯テレビ電話は、こうした自分の顔以外の画像の撮影にはきわめて不便である。
【0016】これは、従来ではCCDカメラを一つのみ、液晶モニターの隣でかつ本体装置の液晶モニターと同一の面上に設置する形態であったためであり、周りの景色等自分の顔以外の画像の撮影するためには、撮影用レンズの向きを変えることが必要になるためである。
【0017】また、この場合利用者は、液晶モニターの表示を見ることができない。上述の形態のCCDカメラは、顔画像の撮影に適するレンズからすぐ近くの位置に焦点が設定されているため、周りの景色等を撮影するためには、レンズの焦点を合わせるためにも液晶モニターの参照が必要である。
【0018】第3に、上述した従来の、装置本体部にフリップ部を可動に連結する携帯端末では、電話機能、テレビ電話機能、デジタルカメラ機能、デジタルビデオカメラ機能、ペン入力端末等の携帯端末が可能な様々な機能の実行において、各機能の実行に最適な方向に装置本体部とフリップ部とを向けることが望まれる。しかし、従来の携帯端末では、フリップ部と本体部の間で単に開閉の動作ができるのみであり、その他柔軟な方向に向きを合わせることができなかった。
【0019】本発明の第1の目的は、上記従来技術の欠点を解決し、携帯テレビ電話やデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラの機能を持ち、かつ携帯性を損なわない携帯端末を提供することである。また、ペン入力可能なタッチパネルを装備し、テレビ電話だけでなくデータ通信についても機能を充実させた携帯端末を提供することである。
【0020】本発明の第2の目的は、上記従来技術の欠点を解決し、利用者の側から見える周りの風景等の画像の通話先への送信が容易にできる携帯テレビ電話の機能を備える携帯端末を提供することである。
【0021】本発明の第3の目的は、上記従来技術の欠点を解決し、装置本体部とフリップ部との向きを、柔軟に各機能の実行に最適な方向に向けることのできる携帯端末を提供することである。

e.第1の実施の形態
【0047】図1から図12は、本発明の第1の実施の形態による携帯端末の一実施例の、装置本体部とフリップ部とを様々な方向に向けた状態を、様々な方向から見た図である。
【0048】図1から図12を参照すると、本発明の実施の形態の携帯端末は、本体部10とフリップ部20とが軸部30を介し可動に連結されている。
【0049】軸部30は、図1に示すように開閉軸31と回転軸32を備える。開閉軸31は装置本体部とフリップ部が相対回転可能となるように、また回転軸32は開閉軸31の回転方向に対して垂直方向に回転可能となるよう連結するものである。
【0050】また開閉軸31には一方の端にデジタルカメラ用の第1撮影用レンズ33、他方には操作ダイヤル34を有している。
【0051】フリップ部20は、図1に示すように内側にタッチパネル付きモニター21、画面切り替え用の操作ボタン22、テレビ電話用の第2撮影用レンズ23、スピーカーホン24を備える。
【0052】装置の本体部10は、内側には図9に示すように電話番号を入力する操作キー17、撮影する画像の種類を切り替える動画・静止画切り替えスイッチ16、マイク18を備え、一方の側面には図2に示すようにストロボ14、撮影用ボタン13を備え、他方の側面には図1に示すようにズームボタン11、データ入出力用端子12-2、データ出力用ダミープラグ12-3、音声入出力用端子12-1を備える。
【0053】また、本体部10には、ペン入力時に使用する入力用ペン40を格納する入力用ペン格納部19を備えている。
【0054】図13は、本実施の形態の形態端末の内部構造を示すブロック図である。
【0055】図13を参照すると、本実施の形態の形態端末は、制御部51により内部の他の各装置が制御され、第1撮影用レンズ33、第2撮影用レンズ23、タッチパネル付きモニター21、スピーカー24、マイク18、利用者が各種動作を実行するための操作部52、撮影した映像等を記録するための記憶部53、無線通信回線等による通信を行う通信部54、軸部30の状態を調べ本体部10とフリップ部20の成す方向を検知する軸部状態センサー55を備える。
【0056】本実施の形態の携帯端末は、電話機能、テレビ電話機能、デジタルカメラ機能、デジタルビデオカメラ機能、ペン入力端末等の様々な機能を、本体部10とフリップ部20を各機能のそれぞれに適した方向に向けて実施する。
【0057】次に、本実施の形態の携帯端末のこれら各機能を使用する一実施例を、それぞれの機能に適した本体部10とフリップ部20の向きと共に図面を参照して詳細に説明する。
【0058】図4から図8は、本実施の形態の携帯端末の未使用時における折り畳んだ状態を示す図である。
【0059】未使用時には、図4から図8に示すように本体部10とフリップ部20は開閉軸31を中心に折り畳まれている。このようにフリップ部20のタッチパネル付きモニター21や本体部10の操作キー17が内側に閉じられるため、外部との接触が無く、タッチパネル付きモニター21の損傷や操作キー17の誤操作が防止され携帯性に優れる。
【0060】テレビ電話機として使用する場合には、図1、図2及び図3に示す様に、まず本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心にL字型となる位置まで相対回転させ、次にフリップ部20を横方向に90度回転させる。
【0061】操作方法は、通常の携帯電話と同様に操作キー17を用いて電話をかける。会話はスピーカーホン24を通して行われる、また、音声入出力用端子12-1にマイクやヘッドホンを接続して使用することも可能である。
【0062】使用中、操作ボタン22を操作し、タッチパネル付きモニター21に表示する画面を様々に切り替えることができる。
【0063】ここで、タッチパネル付きモニター21に表示する画面は、テレビ電話の通話により送信される通話相手の画像のみには限られず、利用者の側から通話先に送信する画像である第2撮影用レンズ23に撮影される自分の顔の画像や、第1撮影用レンズ33に撮影される利用者の目の前の風景や物体の画像を表示してもよく、また更に上記の画像を同時に表示する形態も可能である。
【0064】つまり、通話相手の画像と自分の顔の画像と利用者の目の前の画像の3種類の画像を様々に切り替え、又組み合わせて表示するのである。
【0065】こうした画像の表示形態としては、第1にこれらの画像のうち一つをタッチパネル付きモニター21の全面に表示するものがあり、第2にこれらの画像のうち二つをタッチパネル付きモニター21に半分ずつ表示するもの、第3にこれら三つの画像をタッチパネル付きモニター21に三分の一ずつ表示するもの、第4にこれらの画像のうち一つをタッチパネル付きモニター21の全面に表示し、更に上に重ねて残る他の画像(のうち一つ又は二つ)を小さく子画面として表示するもの等が考えられる。
【0066】この第4の表示の形態における子画面の表示位置は、予め設定された位置に表示する形態や、入力用ペン40によりタッチパネル付きモニター21に表示位置や大きさを指定し、また表示後も任意の位置と大きさに変更できる形態や、予め設定されている複数の表示位置の設定の中から操作ボタン22を操作し選択して表示する形態等が考えられる。
【0067】また、タッチパネル付きモニター21に表示する画像の選択と同様にして、通話相手に送信する画像も上記の操作ボタン22の操作等により様々に選択できるものとすることができる。
【0068】これは、通常は通話相手に第2撮影用レンズ23に撮影される自分の顔の画像を送信するが、タッチパネル付きモニター21に表示する画像の選択に連動し、又は独立に、第1撮影用レンズ33に撮影される利用者の目の前の風景や物体の画像に切り替えたり組み合わせた画像を送信するものである。
【0069】以上のように、自分の顔の画像に限らず目の前の風景等の画像を容易に切り替えて送信することができるため、外出先等での風景の送信にとても便利であり、本実施例の携帯端末のテレビ電話の機能は携帯端末の携帯性をよく生かすものである。
【0070】また、上述の形態では、利用者の目の前の風景の画像の送信を行っているが、単に自分の顔の画像のみを送信する形態も可能である。この場合には、本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心にL字型となる位置まで相対回転させて開くのみでもよく、フリップ部20を横方向に90度回転させる必要は無い。
【0071】次に、デジタルビデオカメラとして使用する場合、図1から図3に示される上述のテレビ電話と同じ本体部10とフリップ部20の向きにより使用することが好ましい。
【0072】使用者は、図9に示す動画・静止画切り替えスイッチ16を動画撮影に定めることで、第1撮影用レンズ33により撮影する画像の種類を動画像に設定する。撮影する画像の大きさは、タッチパネル付きモニター21を参照しながらズームボタン11を使用して調整する。撮影用ボタン13を押すと撮影が行われ、第1撮影用レンズ33に写る動画像が電子データに変換され記憶部53に記録される。
【0073】ここで、記憶部53は、画像の電子データを内蔵する半導体メモリに記憶し、いつでも呼び出してタッチパネル付きモニター21に再生することができる。蓄積したデータをパソコン等の外部情報処理端末に転送する場合、図1に示すデータ入出力用端子12-2からデータ入出力用端子ダミープラグ12-3を抜き、その代わりに接続ケーブルを挿入する。接続ケーブルの他方の端は情報処理端末に接続され、データの入出力が可能となる。
【0074】また三脚用固定穴15を使用することによって、三脚に固定した状態で撮影することも可能である。
【0075】同様に、デジタルスチルカメラとして使用する場合、図1から図3に示される上述のテレビ電話と同じ本体部10とフリップ部20の向きにより使用することが好ましい。
【0076】使用者は、図9に示す動画・静止画切り替えスイッチ16を静止画撮影に定めることで、第1撮影用レンズ33により撮影する画像の種類を静止画像に設定する。撮影する画像の大きさは、タッチパネル付きモニター21に表示しこれを参照しながらズームボタン11を使用して調整する。撮影用ボタン13を押すと撮影が行われ、第1撮影用レンズ33に写る静止画像が電子データに変換され記憶部53に記録される。
【0077】この場合、撮影用ボタン13はシャッターの役割をもち、本ボタンを使用して撮影を行う。このように撮影された映像は記憶部53に記録され、またいつでも呼び出し再生することができる。
【0078】また三脚用固定穴15を使用することによって、三脚に固定した状態で撮影することも可能である。
【0079】ペン入力端末として使用する場合、図11に示すように本体部10の内側の面とフリップ部20の外側の面を接触させて閉じた形態により使用する。これは、図10に示される通常の閉じた状態から、本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心に任意の位置まで開いた後、フリップ部20のみを回転軸32を中心に横方向に180度回転させて、再び本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心にあわせることによって、図11の状態にするのである。
【0080】これにより、図12に示すようにフリップ部20のタッチパネル付きモニター21に対し、入力用ペン40を用いて各種データや命令の入力を行うことができる。タッチパネル付きモニター21を外側に携帯端末は小さく閉じられているので、入力用ペン40の入力に際してタッチパネル付きモニター21がぐらつかないように、携帯端末を本体部10から手等で支えることができる。
【0081】また、本体部10の外側の面とフリップ部20の外側の面を接触させて閉じた形態により使用しても良い。これは、同じく図10に示す状態から、本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心に360度開いて本体部10とフリップ部20の外側の面同士をあわせるのである。
【0082】通常の携帯電話として使用する場合、図9に示すように本体部10とフリップ部20を開閉軸31を中心に任意の位置まで開くことにより、会話が可能となる。テレビ電話の場合と同様に操作キー17により電話番号を入力し、マイク18により音声を入力し、スピーカー24により受信した音声を再生する。
【0083】以上、本実施の形態の携帯端末により、電話機能、テレビ電話機能、デジタルカメラ機能、デジタルビデオカメラ機能、ペン入力端末等の多くの機能をコンパクトに実現することができる

f.第2の実施の形態
【0084】次に、本発明の第2の実施の形態の携帯端末を説明する。
【0085】第2の実施の形態においては、本発明の形態端末が備える各種の機能の起動を、本体部10とフリップ部20の成す向きに応じて制御するものである。
【0086】本体部10とフリップ部20の向きが、第1の実施の形態において説明した各機能に適する向きを成すことが、軸部状態センサー55により検出された場合に、その当該機能を起動させ又は起動可能な状態にするのである。
【0087】図14は本実施の形態の携帯端末の制御を説明するためのフローチャートである。
【0088】図14を参照すると、まず軸部状態センサー55は本体部10とフリップ部20の成す向きを認識するため、軸部30の開閉軸31と回転軸32のそれぞれが成す角度を検出する。(ステップ1401)
ここで、開閉軸31が閉じており(ステップ1402)、さらに回転軸32に回転が無い(つまりフリップ部20が正面方向を向く)場合には(ステップ1403)、現在本体部10とフリップ部20は内側同士が閉じられており未使用の状態であることを検出する(ステップ1404)。未使用であるため、必要ならば自動的に電源を切る等の処理を実行する。
【0089】ここで、開閉軸31が閉じており(ステップ1402)、さらに回転軸32の向きが180度回転している(つまりフリップ部が逆方向を向く)場合には(ステップ1403)、現在本体部10の内側とフリップ部20の外側が閉じられておりペン入力端末の機能を使用する状態であることを認識する(ステップ1405)。
【0090】開閉軸31が開いており(ステップ1402)、開閉軸31の角度が90度以上180度以下で、回転軸32に回転が無い場合には(ステップ1406)、電話機能を使用する場合であることを認識する(ステップ1407)。
【0091】開閉軸が開いており(ステップ1402)、開閉軸の角度が90度で、回転軸32が90度曲がり第1撮影用レンズ33と、第2撮影用レンズ23が逆方向を向く場合(ステップ1408)には、テレビ電話・デジタルビデオカメラ・デジタルスチルカメラの内いずれかの機能を使用する場合であることを認識する(ステップ1409)。ここで、さらにこの内のいずれの機能を実行するのかは、それを指定する利用者による操作や予め定めた初期設定等により決定することができる。
【0092】また、上記のいずれの場合でもない場合には(ステップ1408)、再びステップ1401に戻り、本体部10とフリップ部20の成す向きがいずれかの機能に該当する向きになるのを待つ。
【0093】ここで、ステップ1405、1407、1409等において、現在使用する機能が認識された場合に、まだ当該機能が起動していない場合等の、必要な場合には当該機能を起動、又は起動可能な状態にする。また、他の機能が現在起動中の場合には、単にここで認識された機能を起動するのみでなく、起動中の機能を終了させ新たにここで認識された機能を起動させる切り替えの処理を行うものとしても良い。
【0094】以上説明した本実施の形態の携帯端末により、第1の実施の形態の効果に加え、携帯端末が備える各種の機能の起動を本体部10とフリップ部20の向きに対応し自動に行うことができるため、容易に各種の機能を起動させあるいは切り替えることができる。

g.発明の効果
【0104】
【発明の効果】第1の効果は、テレビ電話として使用する場合、自分の顔と自分がみている風景を容易に同時に相手側に伝えることが可能になる。その理由は、撮影用レンズを2台装備し、切り替えスイッチを備えることによって簡単な操作で画像を送ることができるからである。
【0105】第2の効果は、動画、静止画、文字メール、携帯電話等多様な操作が可能となる携帯端末を提供することが可能になる。その理由は、回転軸を2つ備えそれぞれが自由な角度に設定することができるため、様々な使用形態に適する構造をとれるからである。
【0106】第3の効果は、容易に撮影した画像をパソコン等の情報処理装置に転送、またパソコンから画像を携帯端末側に転送する事が可能になる。その理由は、データ入出力用インターフェースを設けることによって、メモリーカード等の記憶媒体を介さず簡単に他の機器と接続することを可能にしているからである。

(2)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-135380号公報(以下「引用例2」という。)には、次の記載h乃至k(以下、「記載h」・・・「記載k」などという。)がある。

h.発明の属する技術分野
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話や携帯情報端末などの携帯型電子機器、特に表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、表示部もしくは操作部の表面に略垂直な軸回りに相互に回転可能にした折り畳み式携帯型電子機器に関し、表示部の向きに合わせて表示部の表示方向を切り換え、また操作性を確保するようにしたものである。

i.発明が解決しようとする課題
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、画像の送受信や録画・再生を行なう場合、縦長の表示部に横長の画像を表示する方法では、表示面積を十分に利用することができないという課題があった。
【0004】また、第1筐体を操作部に略垂直な軸の回りに回転させると、第1筐体の一部が選択キーを覆うため、選択キーの配置が制限され小形化ができないという課題があった。
【0005】本発明は、上記のような課題に鑑み、機器の表示方向や持ち方により第1筐体と第2筐体との相対角度を変えても、その角度に合わせて表示方向を切り換えることを可能にし、また第1筐体と第2筐体の位置関係に関わらず、良好な操作性を確保するようにした折り畳み式携帯型電子機器を提供することを目的とする。

j.課題を解決するための手段(請求項12に記載の発明)
【0028】また、本願の請求項12に記載の発明は、表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、折り畳み可能に連結し、さらに表示部もしくは操作部の表面に略垂直な軸の回りに回転可能に構成された折り畳み式携帯型電子機器において、軸回りに回転して第1筐体と第2筐体とのなす角に応じて、表示部の表示形態を切り換えるようにしたことを特徴とする折り畳み式携帯型電子機器としたものである。
【0029】この構成によれば、軸回りに回転して第1筐体と第2筐体とのなす角に応じて、表示部の表示形態を切り換えて、使用者に見やすい画像を提供することができる。

k.(実施例)
【0030】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について、図1?図12を用いて説明する。
【0031】図1は、本発明の実施の形態に係る折り畳み式携帯型電子機器の構成を示す斜視図である。図1において折り畳み式携帯型電子機器は、主表示部11とスピーカ12などを有する第1筐体10と、選択キー21、発信ボタン23、終話ボタン24、テンキー25などの操作部とマイク22とを有する第2筐体20と、ヒンジ1と回転軸2とで構成されている。
【0032】そして第1筐体10と第2筐体20はヒンジ1により相互に折り畳み可能(A方向の回転による)に連結し、さらに操作部21の表面に略垂直な軸の回りに回転可能(B方向の回転による)に構成されている。
【0033】図2は、図1に示した折り畳み式携帯型電子機器の持ち方や第1筐体と第2筐体との角度による主表示部の表示方向が切り換えられている状態を示す図である。
【0034】図2(a)は第1筐体10を開いた状態における主表示部11の表示方向を示すものであり、図2(b)は第1筐体10を第2筐体20に対して90°の角度に回転させた状態における表示方向を示すものであり、90°の角度は回転軸2に付加した回転検出機能(図示せず)により検出し、横長となった主表示部11に合わせて表示方向を横長に切り換えている。
【0035】図3は第1筐体10を反転させて主表示部11が表側となるように閉じた状態における表示方向を示すものであり、回転軸2に付加した回転検出機能(図示せず)により第1筐体10が180°回転していることを検出し、閉状態の検出機能(図示せず)を組み合わせることにより、第1筐体10の向きを検出し、使用者に正常に見えるように、表示が図2(a)と比較して上下方向に反転するように切り換えている。

(3)刊行物1に記載された発明
ア.概要(「携帯端末」)
刊行物1には、前掲した記載a乃至gがあり、記載bを技術分野、記載cを従来の技術、記載dを発明が解決しようとする課題とし、記載eのようにした携帯端末が記載されており、記載aを参照して、請求項9,5,4,3,1の順に引用する請求項24に係る発明として、以下の発明を認めることができる。

本体部と、モニター画面を備えるフリップ部とを回転自在な軸部により連結してなる携帯端末において、
前記軸部内の長手方向に、第1撮影用レンズを収納して設け、
前記フリップ部の所定個所に、第2撮影用レンズを設けた
ことを特徴とする携帯端末であって(請求項1)、
前記軸部は、
前記フリップ部のある一辺の中央と前記本体部のある一辺の中央とを可動に連結し、
前記フリップ部と前記本体部との双方が、連結している一辺を中心として自由に開閉するように連結する開閉軸と、
前記フリップ部が、前記開閉軸に対して自由に回転するように連結する回転軸とを備え(請求項24)、
前記フリップ部は、
前記モニター画面側に、前記2撮影用レンズを配置し、
前記軸部は、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とを互いに接触させて閉じる構造を備え(請求項3)、
前記軸部の可動部分が成す角度により、前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係を検出する軸部状態センサーを備え、
携帯端末が備える使用可能な各種の機能から、前記軸部状態センサーが検出する前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係に基づいて予め指定された機能を選択し実行する手段を備え(請求項4)、
前記本体部の内側にマイクを備え、
前記フリップ部の内側にスピーカを備え、
音声の通信を行う通信部を備え、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とが互いに同一方法を向いて開かれている場合に
無線通信回線による通話機能を実行可能状態にする手段を備え(請求項5)、
電子データを記録する記憶手段と、
前記第1撮影用レンズ及び前記第2撮影用レンズが撮影する静止画像を電子データに変換する手段を備え、
前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向に、前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合に、
デジタルカメラとしての撮影の機能を実行可能状態にする手段を備える(請求項9)
ことを特徴とする携帯端末。

イ.詳細
その詳細については、以下のとおりである。
(ア)「モニター画面」(タッチパネル付きモニター21)とその表示の制御
<モニター画面>
記載eの段落【0075】乃至【0078】には「デジタルスチルカメラとして使用する場合」について記載されており、特に段落【0076】には、「・・・第1撮影用レンズ33により撮影する画像の種類を静止画像に設定する。撮影する画像の大きさは、タッチパネル付きモニター21に表示しこれを参照しながらズームボタン11を使用して調整する。」との記載があり、何が「表示」されるのかが明確に記載されていないが、撮影する画像の大きさを、参照しながらズームボタンを使用して調整する際に表示されるものは、撮影対象の画像であることは明らかである。そして、この撮影対象の画像とは、「第1撮影用レンズ」により取り込まれた画像であることも明らかである。
よって、「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像を表示することができるモニター画面(モニター21)」を認めることができる。
<表示の制御>
また、上記の表示について、記載eの段落【0055】によれば、「図13を参照すると、・・・・制御部51により内部の他の各装置が制御され」とされており、図13を参照すると、「モニター21」は「制御部51」により制御されていると認められる。
よって、「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面(モニター21)に表示させる制御部」を認めることができる。

(イ)「前記フリップ部が、前記開閉軸に対して自由に回転するように連結する回転軸」
記載eの段落【0049】の記載によれば、「回転軸32は開閉軸31の回転方向に対して垂直方向に回転可能となるよう連結するものである」。
よって、「前記フリップ部が、前記開閉軸の回転方向に対して垂直方向に自由に回転するように連結する回転軸」を認めることができる。

(ウ)「前記軸部内の長手方向に、第1撮影用レンズを収納して設け」

<第1撮影用レンズ>
記載eの段落【0072】によれば、「第1撮影レンズ33により撮影する画像」とされており、「画像」を「撮影する」「第1撮影用レンズ」が認められる。

<前記軸部内・・・に、第1撮影用レンズを収納して設け>
記載eの段落【0050】によれば、「開閉軸31には一方の端にデジタルカメラ用の第1撮影用レンズ33」「を有している」とされており、「第1撮影用レンズ」は「開閉軸」内に収納して設けられるものである。

<前記軸部内の長手方向>
図1乃至図12に示された開閉軸31を参照すれば、「第1撮影用レンズ33」は、「開閉軸31」の軸と同じ方向を光軸とするものであることは明らかである。

<まとめ>
よって、「開閉軸内に収納して設けられ、開閉軸の軸と同じ方向を光軸として画像を撮影する第1撮影用レンズ」を認めることができる。

(エ)「前記軸部の可動部分が成す角度により、前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係を検出する軸部状態センサー」
記載fの段落【0088】によれば、「軸部状態センサー55は本体部10とフリップ部20の成す向きを認識するため、軸部30の開閉軸31と回転軸32のそれぞれが成す角度を検出する。」とされている。
よって、「本体部とフリップ部の成す向きを認識するための軸部の開閉軸と回転軸のそれぞれが成す角度を検出する軸部状態センサー」を認めることができる。

(オ)「前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向に、前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合に、デジタルカメラとしての撮影の機能を実行可能状態にする手段を備える」

<「前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向」>
記載fの段落【0091】に「回転軸32が90度曲がり第1撮影用レンズ33と、第2撮影用レンズ23が逆方向を向く場合(ステップ1408)」とされているように、回転軸を90度回転させる(曲げる)ことにより「第1撮影用レンズの向きと第2撮影用レンズの向きとが逆方向」になる。

<「前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合」>
記載fの段落【0091】には、「開閉軸が開いており(ステップ1402)、開閉軸の角度が90度で、回転軸32が90度曲がり第1撮影用レンズ33と、第2撮影用レンズ23が逆方向を向く場合(ステップ1408)には、・・・デジタルスチルカメラの内いずれかの機能を使用する場合であることを認識する」とされ、「前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合」の実施例として、「開閉軸の角度が90度」の時に「デジタルスチルカメラ」の機能を使用することが記載されている。
また、記載eの段落【0075】に「同様に、デジタルスチルカメラとして使用する場合、図1から図3に示される上述のテレビ電話と同じ本体部10とフリップ部20の向きにより使用することが好ましい。」と記載されている。
これらのことから、「前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合」として、図1から図3に示される、「開閉軸の角度が90度」の状態が好ましい状態であるといえる。

<好ましい状態>
よって、デジタルスチルカメラの機能を実行する際、「回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向になり、前記本体部と前記フリップ部が90度に開かれている状態が好ましい状態」である。

<好ましい状態時における制御部の表示制御>
そして、当該好ましい状態時における、制御部の表示制御については、上述(ア)<表示の制御>のように、「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させる」制御を行うものである。

<まとめ>
したがって、「前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向に、前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合に、デジタルカメラとしての撮影の機能を実行可能状態とする手段を備え、
回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向になり、前記本体部と前記フリップ部が90度に開かれている状態が好ましい状態であり、
前記制御部は、前記好ましい状態にある場合、第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させるものである」ことを認めることができる。

ウ.まとめ(引用発明)
上述ア及びイから、本願発明と対比する刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)として以下の発明を認めることができる。

<引用発明>
本体部と、第1撮影用レンズにより取り込まれた画像を表示することができるモニター画面を備えるフリップ部とを回転自在な軸部により連結してなる携帯端末において、
前記軸部は、
前記フリップ部のある一辺の中央と前記本体部のある一辺の中央とを可動に連結し、
前記フリップ部と前記本体部との双方が、連結している一辺を中心として自由に開閉するように連結する開閉軸と、
前記フリップ部が、前記開閉軸の回転方向に対して垂直方向に自由に回転するように連結する回転軸とを備え、
開閉軸内に収納して設けられ、開閉軸の軸と同じ方向を光軸として画像を撮影する第1撮影用レンズを設け、
前記フリップ部の所定個所に、第2撮影用レンズを設け、
第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させる制御部を備えた
ことを特徴とする携帯端末であって、
前記フリップ部は、
前記モニター画面側に、前記2撮影用レンズを配置し、
前記軸部は、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とを互いに接触させて閉じる構造を備え、
本体部とフリップ部の成す向きを認識するための軸部の開閉軸と回転軸のそれぞれが成す角度を検出する軸部状態センサーを備え、
携帯端末が備える使用可能な各種の機能から、前記軸部状態センサーが検出する前記フリップ部と前記本体部とが成す角度や位置関係に基づいて予め指定された機能を選択し実行する手段を備え、
前記本体部の内側にマイクを備え、
前記フリップ部の内側にスピーカを備え、
音声の通信を行う通信部を備え、
前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とが互いに同一方法を向いて開かれている場合に
無線通信回線による通話機能を実行可能状態にする手段を備え、
電子データを記録する記憶手段と、
前記第1撮影用レンズ及び前記第2撮影用レンズが撮影する静止画像を電子データに変換する手段を備え、
回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向になり、前記本体部と前記フリップ部が開かれている場合に、デジタルカメラとしての撮影の機能を実行可能状態とする手段を備え、
回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向になり、前記本体部と前記フリップ部が90度に開かれている状態が好ましい状態であり、
前記制御部は、前記好ましい状態にある場合、第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させるものである
ことを特徴とする携帯端末。

(4)刊行物2に記載された技術
記載jによれば、「表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、折り畳み可能に連結し、さらに表示部の表面に略垂直な軸の回りに回転可能に構成された折り畳み式携帯型電子機器において、軸回りに回転して第1筐体と第2筐体とのなす角に応じて、表示部の表示形態を切り換える」(段落【0028】)構成が記載され、そのような構成とすることにより、「使用者に見やすい画像を提供することができる」(段落【0029】)とされている。
そして、記載kの段落【0034】によれば、「第1筐体」と「第2筐体」とのなす角は、「回転軸2に付加した回転検出機能」により「検出」する。
また、記載kの段落【0034】には「図2(a)は第1筐体10を開いた状態における主表示部11の表示方向を示すものであり、図2(b)は第1筐体10を第2筐体20に対して90°の角度に回転させた状態における表示方向を示すものであり、90°の角度は回転軸2に付加した回転検出機能(図示せず)により検出し、横長となった主表示部11に合わせて表示方向を横長に切り換えている。」とされ、段落【0035】には「回転軸2に付加した回転検出機能(図示せず)により第1筐体10が180°回転していることを検出し、閉状態の検出機能(図示せず)を組み合わせることにより、第1筐体10の向きを検出し、使用者に正常に見えるように、表示が図2(a)と比較して上下方向に反転するように切り換えている。」とされている。
つまり、図2(a)の状態では、表示形態の切り換えをしておらず、そのまま表示しており、基準の状態と言い得る状態であり、
表示形態の切り換えは、基準の状態(図2(a)の状態)に対して、回転軸2に付加した回転検出機能により基準の状態から第1筐体10が回転した角度を検出し、その角度に応じて、使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示しているということができる。
したがって、刊行物2に記載された技術として、
表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、折り畳み可能に連結し、さらに表示部の表面に略垂直な軸の回りに回転可能に構成された折り畳み式携帯型電子機器において、
回転軸に付加した回転検出機能により基準の状態から第1筐体が回転した角度を検出し、
基準の状態では、そのまま表示し、
基準の状態にない場合、その角度に応じて、使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる
技術が認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。
(1)「蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段」について
引用発明における「開閉軸」は、「前記フリップ部と前記本体部との双方が、連結している一辺を中心として自由に開閉するように連結する」ものであるから、「フリップ部」と「本体部」を「回動自在に支持する回動手段」と言い得る。
また、引用発明において「前記軸部は、前記本体部の内側の面と前記フリップ部の内側の面とを互いに接触させて閉じる構造を備え」ており、「フリップ部」は「本体部」に対して蓋としての機能を有しているといるから、引用発明の「フリップ部」は「蓋部」を言い得る。
よって、引用発明における「開閉軸」は、「蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段」と言い得る。

(2)「前記第1の回動手段の回動軸と同じ方向を光軸とし、前記第1の回動手段の内部に固定して設けられる撮影手段」について
上述(1)のように引用発明の「開閉軸」は、「蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段」と言い得るものである。
そして、引用発明において「前記第1撮影用レンズ及び前記第2撮影用レンズが撮影する静止画像を電子データに変換する」とされていることから、「第1撮影用レンズ」は、
「撮影する」ものであるから、「撮影手段」と言い得る。
また、引用発明の「第1撮影用レンズ」は、「開閉軸内に収納して設けられ」るものであり、第1の回動手段(「開閉軸」)の内部に設けていると言い得る。
よって、引用発明における「第1撮影用レンズ」と本願発明における「撮影手段」は、「第1の回動手段の回動軸と同じ方向を光軸とし、前記第1の回動手段の内部に設けられる撮影手段」である点で一致する。
もっとも、本願発明が、「第1の回動手段の内部に固定して設けられる」としているのに対し、
引用発明は、「第1の回動手段の内部に設けられる」としている点
で相違する。

(3)「前記撮影手段により撮影された画像を表示する、前記蓋部に設けられる表示手段」について
上述(2)のように、引用発明における「第1撮影用レンズ」は本願発明における「撮影手段」に対応する。
また、引用発明における「モニター画面」が「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像を表示する」ことは、「撮影された画像を表示する」と言い得る。
そして、引用発明は、「モニター画面を備えるフリップ部」であるから、「モニター画面」は、「フリップ部」に設けられるものである。
よって、引用発明における「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像を表示することができるモニター画面」は、「撮影手段により撮影された画像を表示する、前記蓋部に設けられる表示手段」である点で本願発明における「表示手段」と一致する。
もっとも、「撮影手段」については上述(2)のように相違する。

(4)「前記蓋部を、前記第1の回動手段の回動軸と垂直な軸を中心として前記本体部に対して回動自在に支持する第2の回動手段」について
上述(1)のように「フリップ部」、「開閉軸」は、それぞれ「蓋部」、「第1の回動手段」と言い得るものである。
また、「自由に回転する」は「回動自在」と言い得、「前記フリップ部が、前記開閉軸の回転方向に対して垂直方向に自由に回転する」のは、「本体部」に対してあることは明らかである。
そして、「軸の回転方向に対して垂直方向に」「回転するように連結する回転軸」は、「軸と垂直な軸を中心として」「回動自在に支持する第2の回動手段」と言い得る。
よって、「前記フリップ部が、前記開閉軸の回転方向に対して垂直方向に自由に回転するように連結する回転軸」は、「前記蓋部を、前記第1の回動手段の回動軸と垂直な軸を中心として前記本体部に対して回動自在に支持する第2の回動手段」と言い得る。

(5)「前記第1の回動手段の回動角度を検出する検出手段」について
上述(1)のように引用発明の「開閉軸」は、「蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段」と言い得るものである。
そして、「本体部とフリップ部の成す向きを認識するため」の「開閉軸」が「成す角度」は、「第1の回動手段の回動角度」と言い得、「軸部センサー」は「検出手段」と言い得る。
よって、引用発明における「本体部とフリップ部の成す向きを認識するための軸部の開閉軸と回転軸のそれぞれが成す角度を検出する軸部状態センサー」は、「第1の回動手段の回動角度を検出する検出手段」と言い得る。

(6)「前記撮影手段により撮影された前記画像を前記表示手段に表示させる表示制御手段」について
上述(2)のように、引用発明における「第1撮影用レンズ」は本願発明における「撮影手段」に対応する。
また、上述(3)のように引用発明における「モニター画面」は本願発明における「表示手段」に対応し、「モニター画面」が「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像を表示する」ことは、「撮影された画像を表示する」と言い得る。
さらに、引用発明における「制御部」は「表示」の制御を行っているから「表示制御手段」と言い得る。
よって、引用発明における「第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させる制御部」は「撮影手段により撮影された画像を表示手段に表示させる表示制御手段」と言い得る点で本願発明と一致する。
もっとも、「撮影手段」については、上述(2)のように本願発明と引用発明は相違し、それに伴い、「表示手段」についても上述(3)のように、本願発明と引用発明は相違する。

(7)「前記本体部に対して前記蓋部を前記第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、前記第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向になる状態を基準の状態とし」について
引用発明における「本体部とフリップ部が90度に開かれている」ことは、「本体部に対して蓋部を第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させる」と言い得る。
また、上述(3)のように引用発明における「モニター画面」は、本願発明における「表示手段」に対応し、上述(4)のように、引用発明における「回転軸」は「第2の回動手段」と言い得る。
そして、引用発明において「前記モニター画面側に、前記2撮影用レンズを配置し」とされているように、「第2の撮影用レンズ」は、「モニター画面」の面の垂線方向と同じ方向の光軸を有していることから、引用発明における「回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向」になることは、「第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって表示手段の面の垂線方向と光軸の方向が同じ方向になる状態」と言い得る。
さらに、引用発明における「本体部とフリップ部が90度に開かれている状態」は、「本体部に対して蓋部を第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させる」と言い得る。
よって、引用発明における「回転軸を90度回転させることにより前記第1撮影用レンズの向きと前記第2撮影用レンズの向きとが逆方向になり、前記本体部と前記フリップ部が90度に開かれている状態」は、「本体部に対して蓋部を第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって表示手段の面の垂線方向と光軸の方向が同じ方向になる状態」と言い得るから、本願発明と引用発明は、「本体部に対して蓋部を第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって表示手段の面の垂線方向と光軸の方向が同じ方向になる状態」を有し、当該状態が「所定の状態」と言い得る点で一致する。
もっとも、上述(3)のように、本願発明と引用発明は、上述(2)の「撮影手段」の相違に伴う「表示手段」の相違があり、
また、本願発明が当該状態を「基準の状態」としているのに対し、引用発明は「好ましい状態」としている点で相違する。

(8)「前記表示制御手段は、前記基準の状態にある場合、前記撮影手段により撮影された前記画像をそのまま前記表示手段に表示させ、前記基準の状態にない場合、前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、前記撮影手段により撮影された前記画像を回転させて前記表示手段に表示させる」について
引用発明は、「前記制御部は、前記好ましい状態にある場合、第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をモニター画面に表示させる」ものであり、「好ましい状態」は、上述(7)のように本願発明における「基準の状態」に対応する。
また、単に「取り込まれた画像をモニター画面に表示させる」とした場合に、回転処理を行わずに「そのまま」再生すると解するのが相当である。
さらに、「好ましい状態」、「基準の状態」とは「所定の状態」と言い得る点で一致する。
よって、引用発明における「制御部」は、好ましい状態にある場合、第1撮影用レンズにより取り込まれた画像をそのままモニター画面に表示させるものであるから、
本願発明と引用発明は、「表示制御手段は、所定の状態にある場合、撮影手段により撮影された画像をそのまま表示手段に表示させる」点で一致する。
もっとも、「撮影手段」については上述(2)の相違があり、それに伴い、「表示手段」についても上述(3)の相違があり、
また、「所定の状態」については上述(7)の相違がある。
また、本願発明は、「所定の状態」(基準の状態)にない場合、「前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、前記撮影手段により撮影された前記画像を回転させて前記表示手段に表示させる」とするのに対し、
引用発明は、そのようにしていない点
でも相違する。

(9)「携帯端末」について
本願発明と引用発明は「携帯端末」である点で一致する。

(10)まとめ
以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。

【一致点】
蓋部と本体部を回動自在に支持する第1の回動手段と、
前記第1の回動手段の回動軸と同じ方向を光軸とし、前記第1の回動手段の内部に設けられる撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像を表示する、前記蓋部に設けられる表示手段と、
前記蓋部を、前記第1の回動手段の回動軸と垂直な軸を中心として前記本体部に対して回動自在に支持する第2の回動手段と、
前記第1の回動手段の回動角度を検出する検出手段と、
前記撮影手段により撮影された前記画像を前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を備え、
前記本体部に対して前記蓋部を前記第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、前記第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向になる状態を有し、
前記表示制御手段は、前記状態にある場合、前記撮影手段により撮影された前記画像をそのまま前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする携帯端末。

【相違点】
相違点1
本願発明が、「第1の回動手段の内部に固定して設けられる」としているのに対し、
引用発明は、「第1の回動手段の内部に設けられる」としている点

相違点2
「前記本体部に対して前記蓋部を前記第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、前記第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向になる状態」(所定の状態)を、
本願発明は「基準の状態」とするのに対し、
引用発明は「好ましい状態」とし、
本願発明は、「基準の状態」(「所定の状態」)にない場合、「前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、前記撮影手段により撮影された前記画像を回転させて前記表示手段に表示させる」とするのに対し、
引用発明は、そのようにしていない点

4.判断
以下、上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
引用発明において「第1撮影用レンズ33」は、「開閉軸31が有するものであり、開閉軸31内に収納して設けられ」ているものであり、収納の仕方は、通常、固定或いは可動が想定される。
そして、特段の事情がなければ、固定するのが普通であり、引用発明における「第1撮影用レンズ33」の「収納」を、可動とするべき特段の事情は見いだせないから、引用発明における「第1撮影用レンズ33」を、「開閉軸」(第1の回動手段)の内部に固定して設けられる構成とすることは当業者が普通に想起しえた事項である。

(2)相違点2について
上述2.(4)のように、刊行物2には、
表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、折り畳み可能に連結し、さらに表示部の表面に略垂直な軸の回りに回転可能に構成された折り畳み式携帯型電子機器において、
回転軸に付加した回転検出機能により基準の状態から第1筐体が回転した角度を検出し、
基準の状態では、そのまま表示し、
基準の状態にない場合、その角度に応じて、使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる
技術が記載されており、
引用発明は、刊行物2記載の技術と同じ「表示部を備える第1筐体と操作部を備える第2筐体とを、折り畳み可能に連結し、さらに表示部の表面に略垂直な軸の回りに回転可能に構成された折り畳み式携帯型電子機器」であるから、引用発明に当該刊行物2記載の技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明に当該刊行物2記載の技術を適用すれば、引用発明における、第1の撮影用レンズにより取り込まれた画像を(そのまま)モニター画面に表示させる「好ましい状態」を、「基準の状態」とすることは当業者が普通に想起し得ることであり、また、刊行物2記載の技術における「使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる」ことは、刊行物2の記載【0035】に「使用者に正常に見えるように、表示が図2(a)と比較して上下方向に反転するように切り換えている」と記載されているように、基準の状態(図2(a))である場合に表示される画像に対し、「上下方向」が一致するように回転して表示部に表示しているといえ、
表示の対象となる画像を、引用発明における取り込まれた画像(撮影された画像)とした場合には、画像を「使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる」ことは、「表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように」「画像を回転させて」「表示手段に表示させる」ことといえる。

念のため、携帯端末(本体部)を様々な向きにした時の、「表示される画像における被写体の上下方向」と「実際の被写体の上下方向」との関係について検討する。この際、本体部とフリップ部は所定の状態から+x(90度又は180度)度回転している状態とする。
<本体部を被写体に対して傾けない状態で撮影した場合>
引用発明に刊行物2記載の技術を適用すれば、本体部と蓋部(フリップ部)が所定の状態から+x度回転している状態の時は、「撮影された画像」(この場合、実際の被写体の上下方向が正しい画像)に対し、-x度回転させた画像を表示手段(モニター画像)に表示することになる。
そして、蓋部に備えられた表示手段は、蓋部と同様に基準の状態から本体部に対して+x度回転しており、画像は-x度回転されているから、結果として表示手段に表示される画像における被写体の上下方向は、本体部の上下方向、この場合においては、実際の被写体の上下方向と一致する。
<本体部を(+y度)傾けて撮影した場合>
「撮影された画像」は、上記「本体部を被写体に対して傾けないの状態」と比べて、被写体が-y度傾いた画像となる。
そして、「撮影された画像」は、上記「本体部を被写体に対して傾けないの状態」と同様の処理がなされる結果、表示手段には、上記「本体部を被写体に対して傾けないの状態」と比べて、被写体が-y度傾いた画像が表示される。
しかし、表示手段は、本体部に支持されている結果、上記「本体部を被写体に対して傾けないの状態」に対して+y方向に傾いているから、結果として、実際の被写体に対しては、+y度傾いた表示手段に、-y度傾いた画像を表示することになる。
よって、表示手段に表示される画像における被写体の上下方向と実際の被写体の上下方向が一致した画像が表示されることになる。
<まとめ>
よって、表示の対象となる画像を、引用発明における取り込まれた画像(撮影された画像)とした場合には、画像を「使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる」ことは、「表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように」「画像を回転させて」「表示手段に表示させる」ことといえる。
このことは、刊行物2記載の技術も本願発明も、表示手段の(基準の状態からの)回転角の逆方向に回転させた画像を表示させるという同じ回転処理を行うものであり、同じ構造の端末装置において同じ処理を行えば、同じ作用効果が奏されることは当然のことであるし、自明なことである。

また、引用発明における「デジタルカメラとしての撮影の機能を実行」する際の状態は、「前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるとき」の状態であるから、その際に「表示される画像」は、「前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像」であるといえる。
さらに、「角度に応じて」は「角度に基づいて」と言い換えることができる。
よって、引用発明に、当該刊行物2記載の技術を適用すれば、
「好ましい状態」が「基準の状態」となり、
前記「基準の状態」にない場合、「検出手段により検出される回動角度」に応じて、「撮影手段」(第1撮影用レンズ)により撮影された画像を、「使用者に見やすいように90°又は180°切り換えて表示部に表示させる」ことが、
前記基準の状態にない場合、前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、「前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像」における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、
前記撮影手段により撮影された前記画像を
回転させて前記表示手段に表示させる」ことになる。
したがって、引用発明に当該刊行物2記載の技術を適用して、
前記本体部に対して前記蓋部を前記第1の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させるとともに、前記第2の回動手段の回動軸を中心にほぼ90度回動させることによって前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向になる状態を
「基準の状態」とし、
前記表示制御手段は、前記基準の状態にある場合、前記撮影手段により撮影された前記画像をそのまま前記表示手段に表示させ、
「前記基準の状態にない場合」、「前記検出手段により検出される回動角度に基づいて、前記表示手段の面の垂線方向と前記光軸の方向が同じ方向であるときの前記表示手段に表示される画像における被写体の上下方向が実際の被写体の上下方向と一致するように、前記撮影手段により撮影された前記画像を回転させて前記表示手段に表示させる」
構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(3)まとめ
以上のように、上記相違点1及び2は、いずれも当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶をするべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-17 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-02-09 
出願番号 特願2003-312823(P2003-312823)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 敬利  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 小池 正彦
梅本 達雄
発明の名称 携帯端末  
代理人 稲本 義雄  

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