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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1234764
審判番号 不服2010-8227  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-19 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 特願2007-133977号「板状部品」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日出願公開、特開2008-285101号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年5月21日の出願であって、平成22年1月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成22年4月19日に拒絶査定に対する不服の審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成22年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
衝撃を吸収する構造体により構成される構造箇所に、衝撃が加わる方向に対して配設される衝撃吸収構造を備えており、前記板状部品は該板状部品に対して衝撃が加わる方向とは交差する方向に分割された複数の分割部品として構成されており、該複数の分割部品は脆弱な一体化手段により一体化連結されており、衝撃が加わった際には該一体化手段は衝撃吸収作用が行われる初期段階で破断して、衝撃が加わった方向における該板状部品の剛性が失われる板状部品であって、
前記一体化手段は、溶着ピンを熱カシメした溶着部から構成されていることを特徴とする板状部品。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するための事項である「一体化手段」について、「溶着ピンを熱カシメした溶着部から構成されている」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-248405号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、カウルカバーおよびカウルトップエクステンションパネルを含む車体前部構造に関する。」(段落【0001】)

イ.「【0009】
カウルカバー(フロントパネル)1は、フロントガラス5の前方で、車幅方向に沿って横架されており、フロントガラス5とフードパネル7との隙間を塞ぐように設けられる。このカウルカバー1は、上方で多少の凹凸を持って形成される上壁部1aと、上壁部1aの後端部に設けられてフロントガラス5の下端縁を狭持するフロントガラス支持部1bと、上壁部1aの前部から略水平方向に前方に伸びる前壁部1cと、上壁部1aの前部から下方に垂下する垂下壁部1dと、垂下壁部1dの下端部から上方かつ前方に伸びる起立壁部1eとを備える。前壁部1cは、その上面に設けられたシールストリップ8を介してフードパネル7を下方から支持している。
【0010】
カウルトップエクステンションパネル(フロントバルクヘッド)2は、カウルカバー1の下方で、下方に凹む断面形状を備えて車幅方向に沿って横架されており、その前部がカウルカバー1に結合される一方、その後壁部は、ダッシュアッパパネル3の上部および下部にそれぞれ結合されて閉断面を形成している。また、その後壁部の上端部は、クッション6を介してフロントガラス5の下端部を下方から支持している。なお、ダッシュアッパパネル3の下方にはダッシュロワパネル4が連設されている。
【0011】
そして、本実施形態では、カウルカバー1の起立壁部1eを、カウルトップエクステンションパネル2の前側の縦壁部2aの後方に隣接配置して、これら縦壁部2aと起立壁部1eとをクリップ9を用いて結合している。具体的には、縦壁部2aに形成した貫通孔2bおよび起立壁部1eに形成した貫通孔1fに、前方からクリップ9を嵌挿し、クリップ9の頭部9aとクリップ9の先端側の張出爪部9bとで、これら縦壁部2aおよび起立壁部1eを狭持している。
【0012】
上記構成によれば、相互に結合される縦壁部2aおよび起立壁部1eともに、上下方向に伸びているため、当該結合部分における前方突出量をより小さくすることができる。このため、カウルカバー1をエンジンルーム側により近付けて(すなわちより車両前後方向前方に)配置できるようになり、もって、フロントガラス5をより前側に配置することが可能になる。
【0013】
また、車両前面衝突時等には、フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体から、当該結合部分に下向きの荷重が作用する場合があるが、上記構成によれば、この荷重の方向(すなわち下向き)は、これら縦壁部2aと起立壁部1eとが重なり合う方向ではなく、相互にずれる方向になるため、物体に対する反力を比較的低く抑えることができる。
【0014】
そして、上記構成では、前方に張り出したフランジ部同士で結合する場合に比べて、結合位置がより後方となることに加えて、さらに、垂下壁部1dを後方に屈曲させ、縦壁部2aと起立壁部1eとの結合位置と、カウルカバー1によるフードパネル7の支持位置(シールストリップ8の位置)との距離を前後方向に長くとっている。このため、フードパネル7の上面に衝突した物体から作用した下向きの荷重による、縦壁部2aと起立壁部1eとの結合部分に加わるモーメントが大きくなって、この部分の結合が解除されやすくなり、もって、物体に対する反力をさらに低く抑えることができる。
【0015】
さらに、上記構成では、垂下壁部1dに対して起立壁部1eを僅かに前傾させて、起立壁部1eの先端部を垂下壁部1dの後面に接触(押圧)させ、面接触の場合に比べて当該起立壁部1eと縦壁部2aとの接触面圧を高めている。よって、この部分のシール性能が高まり、エンジンルーム内の臭気が車室内側に侵入するのを抑制することができる。
【0016】
さらにまた、上記構成では、クリップ9を用いて縦壁部2aと起立壁部1eとを結合したため、クリップ9の形状や材質等によって、クリップ9の抜け荷重や剪断荷重を設定することにより、支持反力の設定自由度を増大することができるという利点もある。」(段落【0009】?【0016】)

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体に対する反力を比較的低く抑えるようにしたカウルカバー1およびカウルトップエクステンションパネル2を含む車体前部構造であって、
カウルトップエクステンションパネル2は、カウルカバー1の下方で、下方に凹む断面形状を備えて車幅方向に沿って横架されており、
カウルカバー1の起立壁部1eを、カウルトップエクステンションパネル2の前側の縦壁部2aの後方に隣接配置して、これら縦壁部2aと起立壁部1eとをクリップ9を用いて結合しており、
フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体から、当該結合部分に下向きの荷重が作用し、この荷重の方向(すなわち下向き)は、縦壁部2aと起立壁部1eとが、相互にずれる方向になるため、物体に対する反力を比較的低く抑えることができる、カウルカバーおよびカウルトップエクステンションパネル。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「カウルカバー1」及び「カウルトップエクステンションパネル2」は、いずれも本願補正発明でいうところの「板状部品」である。
引用発明の「車体前部構造」は、フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体に対する反力を比較的低く抑えるものであるから、本願補正発明の「衝撃を吸収する構造体により構成される構造箇所」に相当する。
引用発明では、フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体から、縦壁部2aと起立壁部1eとの結合部分に下向きの荷重が作用するものであるから、引用発明の「カウルカバー1およびカウルトップエクステンションパネル2を含む車体前部構造」は本願補正発明の「衝撃が加わる方向に対して配設される衝撃吸収構造」に相当する。
引用発明では、カウルトップエクステンションパネル2は、カウルカバー1の下方で、車幅方向に沿って横架されているから、「カウルトップエクステンションパネル2」と「カウルカバー1」とは、本願補正発明の「板状部品に対して衝撃が加わる方向とは交差する方向に分割された複数の分割部品」に相当する。
引用発明の「クリップ9」は、抜けや剪断されるものであるから、本願補正発明の「脆弱な一体化手段」に相当し、引用発明の「カウルカバー1の起立壁部1eを、カウルトップエクステンションパネル2の前側の縦壁部2aの後方に隣接配置して、これら縦壁部2aと起立壁部1eとをクリップ9を用いて結合」した構成は、本願補正発明の「複数の分割部品は脆弱な一体化手段により一体化連結」した構成に相当する。
引用発明の「フードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体から、当該結合部分に下向きの荷重が作用し、この荷重の方向(すなわち下向き)は、相互にずれる方向になるため、物体に対する反力を比較的低く抑えることができる」ことは、本願補正発明の「衝撃が加わった際には」、「衝撃が加わった方向における該板状部品の剛性が失われる」ことに相当する。

すると、両者は次の点で一致する。
[一致点]
「衝撃を吸収する構造体により構成される構造箇所に、衝撃が加わる方向に対して配設される衝撃吸収構造を備えており、前記板状部品は該板状部品に対して衝撃が加わる方向とは交差する方向に分割された複数の分割部品として構成されており、該複数の分割部品は脆弱な一体化手段により一体化連結されており、衝撃が加わった際には、衝撃が加わった方向における該板状部品の剛性が失われる板状部品。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
一体化手段に関し、本願補正発明では「衝撃が加わった際には該一体化手段は衝撃吸収作用が行われる初期段階で破断」するのに対して、引用発明では、一体化手段であるクリップが初期段階で破断するかどうか明確に記載されていない点。

[相違点2]
一体化手段に関し、本願補正発明では「一体化手段は、溶着ピンを熱カシメした溶着部から構成されている」のに対して、引用発明ではクリップである点。

(4)判断
[相違点1]について
引用発明では、クリップ9は抜けや剪断されるもので、これによってフードパネル7やカウルカバー1の上面に衝突した物体に対する反力を比較的低く抑えるようにしたものであるから、該クリップは、衝撃が加わった際に衝撃吸収作用が行われる初期段階で破断するものといえる。
したがって、本願補正発明の相違点1に係る構成は、相違点として挙げたものの、引用発明も実質的に備えている構成である。

[相違点2]について
溶着ピンを熱カシメした溶着部を設けることは、本願出願前に周知の技術である。例えば、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭61-201987号(実開昭63-101522号)のマイクロフィルム(第5?6図を参照。)、実願昭63-53340号(実開平1-159277号)のマイクロフィルム(第1図を参照。)、特開2000-228591号公報(図16を参照。)及び特開平7-304181号公報(段落【0003】?【0004】を参照。)などには、そのような溶着部についての技術が記載されている。
そうすると、引用発明において、クリップに代えて上記周知の技術を適用することにより、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年4月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
衝撃を吸収する構造体により構成される構造箇所に、衝撃が加わる方向に対して配設される衝撃吸収構造を備えた板状部品であって、
前記板状部品は該板状部品に対して衝撃が加わる方向とは交差する方向に分割された複数の分割部品として構成されており、該複数の分割部品は脆弱な一体化手段により一体化連結されており、衝撃が加わった際には該一体化手段は衝撃吸収作用が行われる初期段階で破断して、衝撃が加わった方向における該板状部品の剛性が失われることを特徴とする衝撃吸収構造を備えた板状部品。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.(3)」で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明および周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-27 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-16 
出願番号 特願2007-133977(P2007-133977)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B62D)
P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 板状部品  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  

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