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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1235163
審判番号 不服2008-31009  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-08 
確定日 2011-04-06 
事件の表示 特願2000-512364「遠隔地のデバイスとホスト・システムの間におけるデ-タのインテリジェント・ル-ティングの装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/14958、平成13年10月 2日国内公表、特表2001-517043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1998年9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年9月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成12年5月25日付けで手続補正され、平成19年9月14日付けで拒絶理由が通知され、平成20年9月4日付けで拒絶査定され、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項38に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年5月25日付けで手続補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項38に記載された以下のとおりのものと認める。

「第1のデバイスと複数の遠隔地のデバイスとを備えるシステムにおいて動的にデータのルーティングを行う手段であって、伝送のあいだ複数の通信リンクを監視できるように前記第1のデバイスが前記複数の並列する無線通信リンクに接続され、前記伝送のあいだ前記複数の通信リンクを監視できるように前記各遠隔地のデバイスが1つの通信リンクまたは前記複数の並列する無線通信リンクに接続され、前記手段が、
前記第1のデバイスと前記遠隔地のデバイスの少なくとも1つとの間においてアクティブな通信リンクを維持し、前記通信リンクの少なくとも2つが自律的で、異なり、前記第1のデバイスと前記遠隔地のデバイスの両方に接続されており、データ伝送に使用可能であり、
前記複数の並列する異なる無線通信リンクのステータスの監視を行い、
必要に応じて使用可能な通信リンクを通じて伝送し、
必要に応じて使用可能な通信リンクを通じて受信する
ことを特徴とする手段。」

第3 引用発明
A 原審の拒絶理由に引用された特開平9-233555号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、簡易型携帯電話システム(以下、パーソナルハンディーフォーンシステム(PHS)とする)と、携帯電話(以下、パーソナルディジタルセルラー(PDC)とする)システムのように異なる複数の通信に接続可能な送受信装置を含む共用電話における電話品質劣化時の対処方法に関する。」(2頁2欄)

ロ.「【0025】
【発明の実施の形態】
〔1〕第1の実施形態
本発明の第1の実施形態を図1を用いて説明する。図1には、通信網N_(i )(i=1,2…I、Iは2以上)に関する送受信を行う送受信部MOD_(i) と、各送受信部MOD_(i) で受信した信号について、その通話品質の劣化などについて診断する通話品質監視手段2と、上記通話品質監視手段2の出力により送受信部MOD_(1) ?MOD_(I) のいずれかを選択する切り替え部3と、通話中の相手先電話番号を記憶する相手先電話番号記憶部4と、上記通話品質監視手段2の出力と切り替え部3の動作に連動して、相手先電話番号記憶部4内に記憶された電話番号に対して再び発呼を行う機能を持つ再発呼部5と、マイク、キーボード、等からなるユーザーとのインターフェースをつかさどるマンマシンインターフェース部6と、などを装備した共用電話1と、共用電話1と通話可能な各通信網N_(i) の基地局BASE_(i)(i=1,2…I、Iは2以上)とが示されている。なお、各BASE_(i)は通話を行う際に、その通話相手先の電話番号を共用電話1に対して通報する通報手段をそれぞれ内蔵する。
【0026】ここで、通信網N_(i) は例えばPHSシステム、PDCシステム、アナログセルラ・システムなどのように、使われているキャリアの周波数、通信プロトコル、変調/復調の方法がそれぞれ異なっている通信網を各々表す。
【0027】A.着呼の場合(相手先から共用電話1に対して通信網N_(a) (aは〔i=1,2…I〕のいずれか)を利用した通話があった場合)
この場合は、初め共用電話1では、BASE_(a) を介した着呼があると、送受信機MOD_(a) を用いて通信が行われる。基地局BASE_(a) から予め電話をかけてきた相手先の電話番号に関する情報(電話番号そのものなど)が送られ、共用電話1内の相手先電話番号記憶部4のその情報は格納される。この際、相手先電話番号記憶部4に読み書き可能な記憶媒体(例えばRAM、SRAMなど)等を使用することにより、共用電話1を使用しているユーザー自身にもその相手先の電話番号に関する情報を知ることが出来ないため、セキュリティ管理に関して十分であると考えられる。
【0028】通話の最中、共用電話1では、通話品質監視手段2にて、共用電話1と基地局BASE_(a )との通話の品質についての監視を行う。この通話品質監視の具体的方法として、受信した信号の誤り率の測定や受信した信号の振幅値、または電界強度の観測などが挙げられる。
【0029】例えば、誤り率を用いる方法では、受信した信号のシンボル誤り数や、フレーム誤り数、ビット誤り数を予め定めた時間についてカウントし、それら誤り数が予め決めた値(閾値)を超えた場合、通話品質が劣化したと通話品質監視手段2は判断する。受信した信号の振幅値、または電界強度を用いる通話品質の監視方法では、受信した信号の電力、振幅についてこれも予め閾値を設定しておき、受信した信号のそれら電力、振幅値がその閾値より低い値となった際に、通話品質監視手段2は通話品質が劣化したと判断する。
【0030】なお、これら監視方法を用いる場合、通信路のマルチパス・フェージングなどによる受信電界の変動などを考慮する必要がある。これは例えば、900MHzの周波数を用いて、時速20kmで移動した場合、その受信信号の電界強度は、約17Hzの周期で、10数dB、時には数十dBも変動するといわれる。この変動は移動している通信装置と基地局、図1では共用電話1と基地局BASE_(i)(i=1,2…I)間で使用している周波数、変調/復調方式、地理的条件などに深く依存している。
【0031】したがって、誤り率を通話品質の監視に用いる場合は、このフェージングによる受信電界の変動を十分考慮した時間について誤り率を測定する必要がある。また受信信号の振幅値、または電界強度によって通話品質の監視を行う際には、受信した瞬間についての観測ではなく、このフェージングによる受信電界の変動を考慮の上予め定めた一定時間についての平均値を用いるなどの平均化の処理が必要となる。
【0032】共用電話1の移動などにより、受信信号の誤り率が予め定めた閾値より悪くなった、若しくは、受信信号の振幅値、または電界強度が予め定めた閾値より小さくなったことにより、通話品質監視手段2にて「通話の品質が劣化した」と判断された場合、通話品質監視手段2から切り替え部5に対して他の各通信網N_(j) (j=1,2…I,a以外)の診断を行うような信号を出力する。それに伴い、それまで行っていた通話をいったん止める。
【0033】通話品質監視手段2の診断の結果、通信網N_(b) (k=1,2…I,a以外)が通話可能であるとすると、切り替え部3は通信網N_(b) と通信を開始するために、送受信部MOD_(b) を選択し、相手先電話番号記憶部4に格納していた電話番号を再発呼部5に出力し、送受信部MOD_(b) を用いて基地局BASE_(b) を経由して再度電話番号を掛けてきた相手先に対して自動的に発呼を行い、それまで通話を行っていた相手との通話を通信網N_(b) を経由して再開する。
【0034】以上の処理によって、はじめ通信網N_(a) を利用してかかってきた相手先に対して、共用電話1は、移動などの理由により、通信網N_(a) のサービスエリア範囲を超え、「サービス圏外」となり、通話不能となった場合でも、異なるサービスエリアのため、通話可能であると診断された通信網N_(b) を用いて自動的に再発呼し、それまで通話をしていた相手との通話再開が可能となる。
【0035】B.発呼の場合(共用電話1から通信網N_(a) を利用して相手先に電話を掛けた(通話した)場合)
この場合は、初め共用電話1では、送受信部MOD_(a) を用いて通信が行われる。電話を掛ける際、その相手先の電話番号に関する情報(電話番号そのものなど)は、相手先電話番号記憶部4の中に格納され、それ以降の処理は、1.着呼の場合と全く同様である。
【0036】この処理によって、共用電話1から通信網N_(a) を利用して電話を掛けた場合においても、共用電話1の移動などの理由により、通信網N_(a) のサービスエリア範囲を超え、「サービス圏外」となり、通話不能になった場合でも、異なるサービスエリアのため、通話可能であると診断された通信網N_(b) を用いて自動的に再発呼し、それまで通話をしていた相手と通話を再開することが可能となる。」(5頁7欄?6頁9欄)

ハ.「【0045】〔3〕第3の発明の実施形態
本発明の第3の実施形態を図3を用いて説明する。
【0046】図3に示す共用電話10は、図1に示した共用電話1に、ユーザーが有利な通信網を自動的に選択するような通信網自動選択手段11を追加装備したものである。なお、基地局に関しては、図1に示す基地局BASE_(i )(i=1,2…I)、もしくは図2中の基地局BASE′_(i )(i=1,2…I)を使用し、その機能は変わらない。
【0047】本発明では、サービスの形態などが異なる複数の通信網の送受信が可能な移動通信装置(共用電話)において、通話エリアの狭い通信網を使用してた通話がそのエリアを超えてしまうことにより途絶えてしまったような場合に、通話エリアの異なる他の通信網を用いてそれまで通話を行ってきた相手に対して再度呼を発することを目的としているが、本発明の目的を達成するための各装置構成に上記の通信網自動選択手段11を追加した共用電話10を提供することによって、ユーザーの有利な(つまり、サービス料金が安いなどユーザーにとって有利な)通信網の選択を自動的に行うような移動通信装置が可能となる。
【0048】共用電話10から呼を発する場合、マンマシンインターフェース6のうちプッシュボタンなどを用いて手段を用いて、通話相手先の電話番号を入力し、通話(通信)を開始するのであるが、それら電話番号の入力処理を行う前に、通話品質監視手段2によって通信網N_(i) (i=1,2…I、Iは2以上)に関する送受信を行う送受信部MOD_(i )についてそれぞれ通信網の通話品質に関してそれぞれ診断を行う。その結果をマンマシンインターフェース部6のディスプレィ等の表示手段を用いてユーザーに対して診断の結果を伝える。これにより、ユーザーは自分に有利な通信網を選択し、電話を掛けることが可能となる。
【0049】または、通信網自動選択手段11を用いて、自動的に一番有利な通信路を選択し、電話を掛けることも可能となる。これは、前もってユーザーが使用する通信網の優先度に関する情報を入力しておき、通話品質監視手段2の診断結果、通信が可能な通信網についてその優先度が高いものに対して通話を自動的に行うものである。優先度に関する情報としては、例えば、サービス料金、高速移動に耐える、特殊な施設(例えば地下街などの地下施設)の中で使用、のような情報を用いてユーザーは使用する通信網の優先度を設定することが出来る。
【0050】これらの処理により、ユーザーの有利な(つまり、サービス料金が安いなどユーザーにとって有利な)通信網の選択を自動的に行うことが可能となる。」(6頁10欄?7頁11欄)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ハ.の【0046】、【0047】の記載、及び図3によれば、移動通信装置は、相手の電話と共用電話(10)とを備えるシステムにおいて、通信網を自動的に選択しているから、動的に通話信号のルーティングを行っているということができる。
また、上記摘記事項ロ.の【0028】、【0032】、【0033】の記載、及び図1によれば、移動通信装置は、通話のあいだ複数の通信網を監視できるように相手の電話が複数の並列する無線通信網に接続され、通話のあいだ複数の通信網を監視できるように共用電話(10)が1つの通信網に接続されていることが読み取れる。
また、移動通信装置は、相手の電話と共用電話(10)との間においてアクティブな通信網を維持し、通信網の少なくとも2つが自律的で、異なり、相手の電話と共用電話(10)の両方に接続されており、通話に使用可能である。
また、移動通信装置は、複数の並列する異なる無線通信網の通話品質の監視を行い、必要に応じて使用可能な通信網を通じて通話し、必要に応じて使用可能な通信網を通じて受信している。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「相手の電話と共用電話(10)とを備えるシステムにおいて動的に通話信号のルーティングを行う移動通信装置であって、通話のあいだ複数の通信網を監視できるように前記相手の電話が複数の並列する無線通信網に接続され、前記通話のあいだ前記複数の通信網を監視できるように前記共用電話(10)が1つの通信網に接続され、前記移動通信装置が、
前記相手の電話と前記共用電話(10)との間においてアクティブな通信網を維持し、前記通信網の少なくとも2つが自律的で、異なり、前記相手の電話と前記共用電話(10)の両方に接続されており、通話に使用可能であり、
前記複数の並列する異なる無線通信網の通話品質の監視を行い、
必要に応じて使用可能な通信網を通じて通話し、
必要に応じて使用可能な通信網を通じて受信する
移動通信装置。」

B 原審の拒絶理由に引用された特開平9-130405号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ニ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線データ伝送通信網に関し、特に、無線ローカルエリアネットワークの、より大きな、世界的規模での通信の可能性を与えるデータ伝送通信網への統合に関する。」(4頁6欄?5頁7欄)

ホ.「【0023】
【発明の実施の形態】図1は特にオフィス環境向けのデータ転送システムを示しており、その場合、それは第1カテゴリーのアプリケーションである。オフィス環境の部分である構成要素は図において一点鎖線より下に描かれている。このシステムの動作を説明するために、オフィス環境の一部分ではなくて標準化されたセルラー無線システムの構成要素として知られている構成要素について始めに解説する。
【0024】セルラー無線システムの動作の中心は移動交換センター(Mobile Switching Center 、MSCと略記)により構成されており、これにデータ端末装置の場所及び状況に関する情報を保存し使用するためのデータベースSDB(Subscriber Database ( 加入者データベース))及びVDB(Visitor DataBase (訪問者データベース))が付随している。1つの移動交換センターの下には多くの基地局コントローラ(BSCと略記)があり、その各々は1つ以上の基地局(BSと略記)を制御する。GSMシステムでは、MSCとBSCとの間の標準化されたインターフェースをA-インターフェースと呼ぶ。
【0025】セルラー無線システムのデータ端末装置即ち移動局(MSと略記)は基地局(BS)への無線接続をし、基地局はそのデータ端末装置がその区域の加入者であるのかそれともその区域に訪問者として存在しているのかに応じてそのデータ端末装置の場所及び状況のデータをデータベース媒体SDB又はVDBに送る。移動交換センターは、或るデータ端末装置に到達しようとする試みがなされたときにページングメッセージを案内するためにデータベースに保存されている情報を使用する。基地局は、1データ端末装置の位置を定義する精度を表すロケーションエリア(Location Areas、LAと略記、図示せず)を構成する。移動局が1つのロケーションエリアから他のロケーションエリアに移動するとき、その位置データが更新され、MSから交換センターMSCへの接続はハンドオーバー動作により新しいロケーションエリアの基地局に渡される。
【0026】次に、オフィス環境に位置していて本発明の実体を構成している部分を説明する。オフィスの中では、データ転送は全て無線ローカルエリアネットワークにおいて行われる。そのノードはステーション3a、3b、3c、3d、3e、3fである。図示されているゲートウェイ・コンピュータ1も無線ローカルエリアネットワークのノードの1つであって、この無線ローカルエリアネットワークと移動交換センターとの間の接続リンクとして動作する。ゲートウェイ・コンピュータ1とMSCとの間のインターフェース2は、基地局コントローラBSCと移動交換センターMSCとの間の通信を定義する同じA-インターフェース規格に準拠するものであるので、ゲートウェイ・コンピュータ1は交換センターからはBSCの様に見える。或いは、DSS.1+インターフェースという新しいインターフェースが完成したならば、ゲートウェイ・コンピュータ1と移動交換センターMSCとの間のインターフェース2をこの新しいインターフェースで構成してもよい。この新インターフェースの仕様では、或るプロトコル変換タスクが移動電話交換センターMSCからゲートウェイ・コンピュータ1へ移される。ゲートウェイ・コンピュータ1のもとで行われる全ての遠隔通信動作は、交換センターからは、当該オフィスに対応する或るロケーションエリアにおいて行われているように見える。交換センターの観点からは、ゲートウェイ・コンピュータのもとで動作するシステムは基地局サブシステムを構成していると言うこともできる。」(8頁14欄?9頁15欄)

ヘ.「【0051】次に、ハンドオーバー操作、即ち使用中にユーザーがデータ端末装置を持って大幅に移動したために元の経路が接続品質に関して最早最善ではなくなったときに電話接続の経路を変更すること、について説明をする。本発明のシステムでは、目的は、現在定義されている操作によってこれらの機能を最大限に実行し得ることである。ハンドオーバー操作には3種類即ち同じ基地局コントローラの元でのハンドオーバー(BSC内ハンドオーバー)、基地局サブシステム間(BSS間)ハンドオーバー、及び交換センター間(MSC間)ハンドオーバー、がある。
【0052】本発明のシステムにおけるゲートウェイ・コンピュータ1は通常のセルラー無線システムの基地局コントローラBSCに相当するので、オフィス内で、即ちそれ自身の基地局サブシステム(それ自身の無線ローカルエリアネットワーク)内で行われる全てのハンドオーバー操作を処理する。オフィス内での経路指定の変更に関する決定は測定に基づいて行われるのであるが、この測定は、移動局の動作を規制する従来公知の規格に従って移動局が行う測定であって、それから情報が普通のセルラー無線システムの基地局コントローラに送られるのと同様にゲートウェイ・コンピュータ1に送られる。
【0053】本発明に関しては、基地局サブシステム間のハンドオーバー操作と交換センター間のハンドオーバー操作とは、この両方の場合にデータ端末装置が本発明のオフィス通信システムと一般セルラー無線システムとの間の管理上の境界を横切って移動するので、類似している。この場合、移動交換センターMSCは従来公知の方法でハンドオーバー操作を実行する。本発明のシステムが一般セルラー無線システムの通達範囲内にあるならば、データ端末装置は移動しないけれども干渉状態の故に接続の質が一般セルラー無線ネットワークを通して伝送を行う方が良好であるという事態が起こり得る。しかし、オフィスにより構成されるロケーションエリアがデータ端末装置のホームロケーションエリアとして使用される本発明の好ましい実施例では、接続の質が満足できる程度である限りは本発明のシステムを通して接続を伝送するのが好ましい。また、もし接続が一般セルラー無線ネットワークに渡されているならば、接続の質が満足できる程度の質になり次第本発明のシステムに復帰するのが好ましい。」(13頁24欄?14頁25欄)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ホ.の【0023】、【0026】の記載、及び図1によれば、データ転送システムは、複数のステーション(3a?3f)を備えている。また、データ転送システムは、前述の複数のステーション(3a?3f)の通信相手として、データ端末装置を備えていることは自明である。
また、上記摘記事項ヘ.の【0051】?【0053】の記載、及び図1によれば、データ転送システムは、動的にデータの経路変更を行っており、これをルーティングを行う手段ということができる。

したがって、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「データ端末装置と複数のステーション(3a?3f)を備えるデータ転送システムにおいて動的にデータのルーティングを行う手段。」

第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
a.引用発明1の「相手の電話」、「共用電話(10)」、「通信網」、及び「通信品質」は、その機能において、本願発明の「第1のデバイス」、「遠隔地のデバイス」、「通信リンク」、及び「ステータス」にそれぞれ相当する。
b.引用発明1の「通話信号」と、本願発明の「データ」とは、いずれも、「情報」という点で一致する。
c.引用発明1の「通話」は、伝送ということができる。
d.引用発明1の「通話」と、本願発明の「データ伝送」とは、上記b.及びc.の対比を考慮すれば、「情報伝送」という点で一致する。
e.引用発明1の「移動通信装置」は、手段ということができる。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>
「第1のデバイスと遠隔地のデバイスとを備えるシステムにおいて動的に情報のルーティングを行う手段であって、伝送のあいだ複数の通信リンクを監視できるように前記第1のデバイスが前記複数の並列する無線通信リンクに接続され、前記伝送のあいだ前記複数の通信リンクを監視できるように前記遠隔地のデバイスが1つの通信リンクまたは前記複数の並列する無線通信リンクに接続され、前記手段が、
前記第1のデバイスと前記遠隔地のデバイスの少なくとも1つとの間においてアクティブな通信リンクを維持し、前記通信リンクの少なくとも2つが自律的で、異なり、前記第1のデバイスと前記遠隔地のデバイスの両方に接続されており、情報伝送に使用可能であり、
前記複数の並列する異なる無線通信リンクのステータスの監視を行い、
必要に応じて使用可能な通信リンクを通じて伝送し、
必要に応じて使用可能な通信リンクを通じて受信する
手段。」

<相違点1>
「遠隔地のデバイス」に関し、
本願発明は、「複数の」ものであり、「各」の接頭語が付されているのに対し、
引用発明1は、「複数の」ものであるか不明であり、「各」の接頭語がない点。

<相違点2>
「情報」に関し、
本願発明は、「データ」であるのに対し、
引用発明1は、「通話信号」である点。

<相違点3>
「情報伝送」に関し、
本願発明は、「データ伝送」であるのに対し、
引用発明1は、「通話」である点。

第5 判断
そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用発明2の「データ端末装置」及び「複数のステーション(3a?3f)」は、本願発明の「第1のデバイス」及び「複数の遠隔地のデバイス」に相当し、引用発明1の「共用電話(10)」に換えて、引用発明2の「複数のステーション(3a?3f)」を採用することに格別の困難性はないから、本願発明のように「複数の遠隔地のデバイス」とすることは当業者が容易に成し得ることである。また、その際、接頭語「各」を付し、「『各』遠隔地のデバイス」と称することができることは当然のことである。

次に、上記相違点2及び3について検討する。
上記相違点1についての検討で述べたように、引用発明1に引用発明2を採用することに格別の困難性はないから、引用発明1の「通話信号」を、本願発明のように「データ」とすることは当業者が容易に成し得ることである。また、その際、引用発明1の「通話」を、本願発明のように「データ伝送」と称することができることは当然のことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び2から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-05 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2000-512364(P2000-512364)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 隆之  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 萩原 義則
猪瀬 隆広
発明の名称 遠隔地のデバイスとホスト・システムの間におけるデ-タのインテリジェント・ル-ティングの装置および方法  
代理人 野中 剛  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 松浦 孝  
代理人 坪内 伸  

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