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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1235448
審判番号 不服2009-8506  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2011-04-13 
事件の表示 平成11年特許願第331437号「電子写真トナー及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月29日出願公開、特開2001-147548〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年11月22日の出願であって、平成20年3月11日付で拒絶理由が通知され、同年5月15日付で手続補正書が提出されたが、拒絶査定がなされ、平成21年4月20日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、その後、審判において通知した審尋に対して平成22年3月8日付で回答書が提出されたものである。


2 平成21年4月20日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年4月20日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正事項
平成21年4月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、補正前の
「【請求項1】 光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像する画像形成方法において、
平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナーと、平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナーとを有し、
前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり、
液体トナー用の分散媒が、脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、天然油、脂肪酸エステル又は流動パラフィンを少なくとも含有する
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】 ローラー又はベルト状現像部材上に形成したトナー層で静電潜像を現像するか、または前記トナー層にコロナ放電を行った後に静電潜像を現像することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】 トナー用の樹脂がアクリル樹脂であることを特徴する請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項4】 静電潜像部にプリウェット液を付着させたあとで現像することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】 静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成した後、該トナー像を中間転写体に転写し、次いで転写部材に転写して画像を形成させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法において、画像の定着がフラッシュ定着により行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】 小粒径トナーの軟化点が-30℃以上であり、大粒径トナーの軟化点が80℃以上であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法。」
から、
「【請求項1】 光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像する画像形成方法において、
平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナーと、平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナーとを有し、混合したトナーの平均粒径を0.2?10μmにし、
液体トナー用の分散媒が、脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、天然油、脂肪酸エステル又は流動パラフィンを少なくとも含有し、
トナー用の樹脂がロジン変性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】 ローラー又はベルト状現像部材上に形成したトナー層で静電潜像を現像するか、または前記トナー層にコロナ放電を行った後に静電潜像を現像することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】 静電潜像部にプリウェット液を付着させたあとで現像することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】 静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成した後、該トナー像を中間転写体に転写し、次いで転写部材に転写して画像を形成させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】 画像の定着がフラッシュ定着により行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】 光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像する画像形成方法において、
前記液体トナーが、ロジン変性マレイン酸樹脂80重量部と着色剤20重量部を120℃で混練して得られた粉末100重量部に、シリコーンアクリル樹脂150重量部、着色剤50重量部、シリコーンオイル1000重量部及びナフテン酸マンガン10重量部を加え、分散させて製造され、平均粒子径が0.5μmで軟化点が65℃の小粒径トナーと、平均粒子径が18μmで軟化点が140℃の大粒径トナーとを、重量割合65:35で含む
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法。」
に補正しようとする事項を含むものである。

この補正事項は、請求項1において、発明特定事項である「前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり」を削除し、同じく発明特定事項である「小粒径トナー」と「大粒径トナー」の混合トナーについて、「平均粒径を0.2?10μmにし」という限定を加えるとともに、補正前は限定がなかったトナー用の樹脂について、「トナー用の樹脂がロジン変性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかである」という限定を加えるもので、
さらに、補正前の請求項3を削除し、これに伴い補正前の請求項4?7は請求項3?6に繰り上げられ、また、新しい請求項6については、大幅に記載を追加するものである。

(2)補正の目的について
(i)請求項1の補正
請求項1について、補正前の「前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり」を削除することは、両者をどのような重量割合で混合してもよいということであるから、この削除は、混合トナーの範囲を拡大するものである。
また、「混合したトナーの平均粒径を0.2?10μmにし」の規定を新たに導入することにより、混合トナーの範囲を平均粒径の観点から限定したといえるものの、この規定は、観点の異なる、補正前の上記「前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり」を限定するものとはいえない。
さらに、同じく新たに導入された「トナー用の樹脂がロジン変性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかである」という限定も、補正前の上記「前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり」を限定するものではない。
したがって、請求項1についてした補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえない。
また、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもない。

(ii)請求項6の補正
次に、補正後の請求項6について検討すると、この請求項は一応補正前の請求項7に対応しているものといえる。
補正前の請求項7は、小粒径トナー及び大粒径トナーの軟化点の範囲を規定していたところ、補正により、軟化点が特定値のものに限定され、それ以外に、製法的な記載(液体トナーの材料の混合方法の記載)が大幅に追加され、また、小粒径トナーと大粒径トナーとの重量割合が特定されたものである。
この補正は、軟化点を限定し、また、小粒径トナーと大粒径トナーとの重量割合について、補正前の請求項7が引用していた請求項1の50:50?95:5を、65:35に限定したということができるものの、補正前には、請求項7または請求項7が引用していた請求項のなかに、発明特定事項として液体トナーの材料の混合方法を規定した請求項が全くないので、補正後の請求項6は、内容的にみて、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。
また、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3 本願発明
平成21年4月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成20年5月15日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像する画像形成方法において、
平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナーと、平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナーとを有し、
前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であり、
液体トナー用の分散媒が、脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、天然油、脂肪酸エステル又は流動パラフィンを少なくとも含有することを特徴とする画像形成方法。」

(1) 引用刊行物の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平3-2876号公報(以下「引用例1」という。)には、下記の事項が記載されている。

(a)「【特許請求の範囲】
高絶縁性、定誘電率の脂肪族炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素液体中に、平均粒径0.01?1μmの範囲の小粒径粒子群と平均粒径が1?30μmの範囲の大粒径粒子群よりなる2つの粒径分布ピークを有するトナー粒子を分散させてなる静電写真用液体現像剤において、前記大粒径粒子群を構成する粒子が、下記の一般式(I)で表わされるモノマーとフルオロアクリレートおよび/またはフルオロメタアクリレートとの共重合体を主成分として構成されていることを特徴とする静電写真用液体現像剤

ただし、式中、R_(1)はH又はCH_(3)-、nは1?4である。」(1頁左下欄)、

(b)「(目的)
・・・(略)・・・。本発明の第二の目的は、現像画像の濃度が高められ、中間調の再現性もよく、・・・(略)・・・点にある。」(2頁左上欄3?10行)、

(c)「大粒径粒子と小粒径粒子の割合は、大粒径粒子トナーが50wt%より多いとトナーの沈降性が大きく小粒径粒子トナーによる荷電制御が不十分となり画像濃度は低下する。1wt%より少いとroが小さすぎトナーの泳動速度が小さくなり画像濃度や均一性が悪くなる。さらに好ましい割合は大粒径粒子トナーが5?40wt%である。
本発明のトナーを得るには,着色剤及び結合樹脂を主成分とする小粒径粒子トナーと大粒径粒子トナーとを各々作製して混合すれば良い。」(3頁左下欄1?10行)、

(d)「溶媒としては石油系脂肪族炭化水素又はハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばケロシン、リグロイン、n-ヘキサン、n-オクタン・・・・・(略)・・・・・が挙げられる。」(5頁左上欄5?12行)、

(e)「〈実施例3〉
ブリリアントカーミン 30部
製造例3で得られた樹脂分散液 100部
製造例7で得られた樹脂分散液 70部
ケロシン 100部
をケディミルで6時間分散して粘度23cpの濃縮トナーとし、その10gをケロシン1l中に分散して静電写真用液体現像剤を作製し、平均粒径が1.0μmと14μmのトナー粒子が混在したトナーが得られた。
次にこの現像剤を用いて市販の電子写真複写機で酸化亜鉛感光紙上にコピーを行なったところ画像濃度1.51で画像定着率84.7%のコピーが得られた。また一次定着性(コピー直後の定着性)も良好であった。」(7頁右上欄15行?左下欄9行)、

(f)「〈実施例4〉
カーボンブラック 15g
(コロンビアカーボン社製ラーベン14)
製造例4で得られた樹脂分散液 70g
製造例6で得られた樹脂分散液 70g
ナフテン酸ニッケル 4g
ケロシン 100g
をケディミルで6時間分散して粘度40cpの濃縮トナーとし、その10gをケロシン1l中に分散して静電写真用液体現像剤を作製し、平均粒径が0.9μmと26μmのトナー粒子が混在したトナーが得られた。
次にこの現像剤を用いて市販の電子写真複写機で酸化亜鉛感光紙上にコピーを行なったところ画像濃度1.48で画像定着率89.2%のコピーが得られた。また一次定着性(コピー直後の定着性)も良好であった。」(7頁左下欄17行?右下欄12行)、

なお、上記摘示における下線は当審において引いたものである。

上記(a)の記載と(e)(f)の評価機に関する記載を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「静電写真用液体現像剤を用いて電子写真複写機で感光紙上にコピーを行う画像形成方法において、
静電写真用液体現像剤は、現像剤高絶縁性、定誘電率の脂肪族炭化水素液体中に、平均粒径0.01?1μmの範囲の小粒径粒子群と平均粒径が1?30μmの範囲の大粒径粒子群よりなる2つの粒径分布ピークを有するトナー粒子を分散させてなり、前記大粒径粒子群を構成する粒子が、下記の一般式(I)で表わされるモノマーとフルオロアクリレートおよび/またはフルオロメタアクリレートとの共重合体を主成分として構成されている、
画像形成方法。

ただし、式中、R_(1)はH又はCH_(3)-、nは1?4である。」

(2)対比、判断
本願発明1と引用例1記載の発明とを比較すると、
引用例1記載の発明のトナー粒子分散用としての「高絶縁性、定誘電率の脂肪族炭化水素」、「平均粒径」、「小粒径粒子」、「大粒径粒子」、「静電写真用液体現像剤」、「コピー」は、
それぞれ、本願発明1の、分散媒としての「脂肪族炭化水素」、「平均粒子径」、「小粒径トナー」、「大粒径トナー」、「液体トナー」、「画像形成」に相当する、
から両者の間には、以下の一致点および相違点がある。

[一致点]
「液体トナーによって現像する画像形成方法において、小粒径トナーと、大粒径トナーとを有し、液体トナー用の分散媒が、脂肪族炭化水素を少なくとも含有する、画像形成方法。」

[相違点]
(i)本願発明1は、平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナーと平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナーとを有し、前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5であるのに対して、
引用例1記載の発明は、平均粒径0.01?1μmの範囲の小粒径粒子群と平均粒径が1?30μmの範囲の大粒径粒子群よりなる2つの粒径分布ピークを有するトナー粒子であって、重量割合を限定していない点(以下「相違点1」という。)。

(ii)本願発明1は、画像形成方法が、光導電体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像するものであるのに対して、
引用例1記載の発明は、液体トナーを用いて電子写真複写機でコピーするものであるが、本願発明1の上記事項は明記がない点(以下「相違点2」という。)。

そこで、これら相違点について検討する。

(相違点1について)
引用例1記載の発明は、平均粒子径でみた小粒径トナーと大粒径トナーの境界が1μmであり、本願発明1の境界である10μmとは異なる。
しかし、引用例1の実施例をみると、実施例3では、小粒径トナー1.0μm、大粒径トナー14μmのもの、実施例4では、小粒径トナー0.9μm、大粒径トナー26μmのものが用いられて、引用例1の効果を達成している。したがって、引用例1の実施例3,4のものは、本願発明1の「平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナー」と「平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナー」の組み合わせに含まれるものである。

また、引用例1には、大粒径粒子と小粒径粒子の割合について、大粒径粒子トナーの割合が50wt%より多くても、1wt%より少なくても良くない旨、また5?40wt%が好ましい範囲である旨が記載されている(摘示c)。これは、小粒径トナーと大粒径トナーとの重量割合が「60:40?95:5」の範囲が好ましいことを示しており、この範囲は、本願発明1の「50:50?95:5」に含まれるものである。
そして、引用例1の当該記載に接した当業者であれば、引用例1記載の発明において、好ましい小粒径トナーと大粒径トナーとの重量割合として「60:40?95:5」の範囲とすることを、当然に考えるものである。

次に、本願発明1の数値範囲の臨界的意義について検討する。
本願の明細書では、小粒径トナー・大粒径トナーそれぞれの平均粒子径と、両者の重量割合の意義について、次のように記載されている。

「【0023】
光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上のトナーによって現像するプロセスにおいて平均粒径が0.01?10μmの範囲と10?100μmの範囲に平均粒子径分布を有する画像形成方法に関する従来技術はない。本発明者らは、平均粒径0.01?10μmの比較的小さな粒径のトナーで現像、中間転写、転写部材への転写をすると、地肌汚れがしやすく画像濃度、解像度、ドット再現性、シャープネス、ベタ均一性が悪く、感光体や中間転写部材へのフィルミングが発生し、地肌汚れが悪いものであった。また平均粒径10?100μmと比較的大きなトナーで現像、中間転写、転写部材への転写をすると画像濃度が低く、ベタ均一性、色特性も不良で定着性も悪いものであった。
【0024】
平均粒径が0.01?10μmと小さいトナーでは現像、中間転写、転写部材への転写時にトナー層のつぶれが生じるためと考えられ、解像度、シャープネス、ドット再現性が劣化するものと思われる。一方、平均粒径が10?100μmと比較的大きなトナー又は粗大粒子ではトナーの転写率が悪く、中間転写体や転写部材への転写率が低いため、画像濃度が低く、ベタ均一性、色特性、定着性も悪くなるものと考えられた。
【0025】
本発明では平均粒子径が0.01?10μmと10?100μmの粒径分布を有するトナーで光導電体又は絶縁体上に形成された静電潜像を現像部材上のトナーで現像し、又は中間転写体に転写後転写部材に画像を形成させるものである。本発明の粒径分布を持つ乾式トナー、液体トナーいずれの場合もドット再現性、階調性が良く、画像濃度、解像度も高く、定着性、半光沢性に優れた画像を作成することが出来た。また本発明のトナーではフラッシュ定着、熱ローラー定着にも有利で特にフラッシュ定着では画像ベタ部のボイド画像を発生させにくいことが判明した。これは乾式トナー、湿式トナーにおいても定着前のトナー層が不均一になっているためと考えられ加熱によりトナー中の空気の逃げ場になるものと考えられる。本発明のトナーの平均粒子径0.01?10μm(小粒径トナー)と10?100μm(大粒径トナー)又は粗大粒子の割合は50?95/5?50重量%、好ましくは70?90/30?10重量%である。小粒径トナーが50重量%未満では画像濃度、ベタ均一性、階調、解像度が劣り、95重量%を超えるとドット再現性、フィルミングにより地肌汚れ、半光沢性、フラッシュ定着におけるボイドが発生し易い。」

また、本願の実施例における、小粒径トナー・大粒径トナーそれぞれの平均粒子径と、両者の重量割合は、以下のとおりである。
平均粒子径 重量割合
実施例1?5、9:0.35μm、10.5μm、 不明
実施例6?9 :0.5μm、 18μm、 65:35
実施例10 :4.5μm、 18.5μm、 80:20
ここで、実施例10は、乾式複写機によるものであるから、本願発明1の液体現像とは異なるものである。なお、実施例9は、実施例1?8のトナーを用いている。

そこで検討すると、上記した本願明細書【0023】?【0025】の説明は、非常に一般的な説明であり、そのまま首肯できるものでない。例えば、本願発明1における小粒径トナー、大粒径トナーそれぞれの平均粒子径の上限は、10μm、100μmであり、このような上限の組み合わせについてまで、明細書に記載された「ドット再現性、階調性が良く、画像濃度、解像度も高く、定着性、半光沢性に優れた画像を作成することが出来た」(【0025】)という効果を到底認めることができない。
そうすると、実際に効果を確認している実施例を参考にするほかないところ、実施例では、上記のとおり、実施例10は乾式現像であるから除くとして、他の実施例については、非常に狭い範囲で効果が確認できているに過ぎない。例えば、液体現像の実施例は、小粒径トナーが、平均粒子径で0.35μm、0.5μmのものが用いられているに過ぎないから、少なくとも「1?10μm」の範囲については、効果が確認されておらず、また、大粒径トナーについても、平均粒子径が「20?100μm」のときの効果は確認されていない。

したがって、本願発明1の「平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナー」と「平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナー」の組み合わせについては、効果がある組み合わせと、効果が期待できそうになく、あるいは効果が全く確認されていない組み合わせが、玉石混交に含まれているから、その数値範囲の臨界的意義を認めることは、到底できないものである。

また、本願の実施例のものは、引用例1記載の発明の「平均粒子径が0.01?1μmの範囲の小粒径トナー」と「平均粒子径が1?30μmの範囲の大粒径トナー」との組み合わせに含まれるものであり、
しかも、引用例1の実施例3の小粒径トナー1.0μm、大粒径トナー14μmのもの、実施例4の小粒径トナー0.9μm、大粒径トナー26μmのものと、本願の実施例のものとは、概略、一致するといってよいものである。

以上のことを勘案すると、刊行物1記載の発明において、小粒径トナー・大粒径トナーそれぞれの平均粒子径と、両者の重量割合を、本願発明1のごとく、「平均粒子径が0.01?10μmの範囲の小粒径トナーと平均粒子径が10μmを超え100μm以下の範囲の大粒径トナーとを有し、前記小粒径トナーと前記大粒径トナーとの重量割合が50:50?95:5である」ようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
引用例1には、画像形成(コピー)において市販の電子写真複写機を用いたとしか記載されていないが(摘示e、f)、電子写真方式で液体トナー(液体現像剤)を用い現像する場合に、光導電体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーによって現像することは、文献を示すまでもなく、周知のことである。
したがって、引用例1記載の発明において、本願発明1のごとく、光導電体上に形成された静電潜像を現像部材上の液体トナーで現像するようになすことは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

(まとめ)
よって、本願発明1は、引用例1記載の発明、引用例1記載の技術事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、平成21年4月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたが、この補正での請求項1についての限定事項(混合したトナーの平均粒径が0.2?10μm)について付言しておくと、一般に、液体トナーで現像する場合、その液体トナーの平均粒径を「0.2?10μm」程度にすることは、通常のことであるので、「混合したトナーの平均粒径を0.2?10μmに」することは、当業者であれば普通になし得ることである。


4 むすび
以上のとおりであり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-10 
結審通知日 2010-11-16 
審決日 2010-11-30 
出願番号 特願平11-331437
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 572- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿久津 弘江口 州志  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
唐木 以知良
発明の名称 電子写真トナー及び画像形成方法  
代理人 奥山 雄毅  

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