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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1235619
審判番号 不服2010-4560  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-02 
確定日 2011-04-18 
事件の表示 特願2006-306665「排気ガス浄化システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 85353〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年9月18日(優先日:平成12年9月19日、以下、「本件優先日」という。)を出願日として出願した特願2001-282771号の一部を、平成18年11月13日に新たに特願2006-306665号として分割した出願であって、平成21年7月28日付けで拒絶理由が通知され、平成21年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けの手続補正書によって明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において、平成22年9月6日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、平成22年10月26日付けで回答書が提出されたものである。

第2. 平成22年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成22年3月2日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1.本件補正について
(1)本件補正の内容
平成22年3月2日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年9月25日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1である(a)を、下記(b)に補正するものである。

(a)本件補正前の請求項
「【請求項1】
内燃機関の排気ガス通路の上流側に、排気ガス温度を調整することにより窒素酸化物を吸着脱離するNOx吸着触媒を配置し、上記排気ガス通路の下流側に酸化触媒を配置して成る排気ガス浄化システムであって、
上記NOx吸着触媒は、排気ガスの温度がエンジン始動時から140℃のときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、200℃以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離し、かつ上記NOx吸着触媒出口での排気ガスの窒素酸化物/一酸化炭素濃度比が、排気ガス温度がエンジン始動時から140℃のときに、0.3以下であり、
上記酸化触媒は、白金を含有することを特徴とする排気ガス浄化システム。」

(b)本件補正後の請求項
「【請求項1】
内燃機関の排気ガス通路の上流側に、排気ガス温度を調整することにより窒素酸化物を
吸着脱離するNOx吸着触媒を配置し、上記排気ガス通路の下流側に酸化触媒を配置して成る排気ガス浄化システムであって、
上記NOx吸着触媒は、白金を含有し、排気ガスの温度がエンジン始動時から140℃のときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、200℃以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離し、かつ上記NOx吸着触媒出口での排気ガスの窒素酸化物/一酸化炭素濃度比が、排気ガス温度がエンジン始動時から140℃のときに、0.3以下であり、
上記酸化触媒は、白金及びゼオライトを含有することを特徴とする排気ガス浄化システム。」(なお、下線は審判請求人が補正箇所を明確化するために付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、本件補正前の請求項1における「NOx吸着触媒」を「白金を含有し、」と補正し、同様に、「酸化触媒」を「及びゼオライト」を含有すると補正することで、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された本件優先日前に頒布された刊行物である特開2000-230414号公報(平成12年8月22日公開、以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 リーンNOx触媒又は選択性還元触媒を有する第2触媒成分の上流に窒素酸化物吸収材料を有し、ディーゼル・エンジンの排気通路に配置された、第1触媒成分を有する、ディーゼル・エンジンの排気処理システムにおいて、上記窒素酸化物吸収材料が、(a)アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、二酸化チタン、酸化ランタン及びそれらのいずれかの混合物からなる群より選択された多孔質担体材料、及び(b)白金、パラジウム及びロジウム又はそれらのいずれかの混合物から選択され、上記担体の重量に基き、少なくとも0.1 wt. %の貴金属から、本質的になり、上記第1成分材料に流れ込む上記ディーゼル排気が常時酸化性であり、低温において上記第1成分材料が、より高温において上記吸収材料より放出されて上記第2成分上で窒素又は亜酸化窒素へ変換される排気からの窒素酸化物を吸収する、排気処理システム。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

イ.「【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は、排気通路内に配置された2つの触媒で、ディーゼル・エンジン排気を処理する方法に関する。特定の多孔質担体上で貴金属から調製された第1成分材料が、低温で窒素酸化物を吸収し、そして、エンジン作動中に温度が上昇すると、それを脱離する。第1成分の下流に位置する第2成分は、脱離した窒素酸化物を還元することが可能な、リーンNOx触媒又は選択性接触還元(selective catalytic reduction略してSCR)触媒、である。」(段落【0002】)

ウ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の方法は、従来のディーゼル排気浄化方法の欠陥を解消し、ディーゼル排気の比較的低温の酸化性条件中で、窒素酸化物を効率的に還元すると共に炭化水素及び一酸化炭素を酸化することが出来る触媒システムを、提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、ディーゼル・エンジンの排気用の、排気処理システムである。それは、窒素酸化物吸収材料を含みディーゼル・エンジンの排気通路内に配置される第1触媒成分を有する。システムはまた、リーンNOx触媒又は選択性還元触媒を含む第2触媒成分を有する。窒素酸化物吸収材料は、(a)アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、二酸化チタン、酸化ランタン及びそれらのいずれかの混合物からなる群より選択された多孔質担体材料、及び(b)白金、パラジウム及びロジウム又はそれらのいずれかの混合物から選択され、上記担体の重量に基き、少なくとも0.1 wt. %の貴金属を、有する。システムにおいて、上記第1成分材料に流れ込むディーゼル排気は常時酸化性である。低温において、第1成分材料が、排気から窒素酸化物を吸収する。この様な吸収された窒素酸化物は、より高温において吸収材料より放出されて第2成分上で窒素(N_(2))又は亜酸化窒素(N_(2)O)へ変換される。第2成分は、リーンNOx触媒であってもSCR触媒であっても良い。
【0009】第1成分の貴金属が白金を含み、それの担体がアルミナであるのが、好ましい。第1成分触媒のNOx吸蔵及びNOx放出の具体的な温度範囲は、その調合に応じて変ることになる。ある場合において、NOxは約230℃までの温度で吸収され、その温度より上で放出されて還元されるために第2成分へと進むことになる。
【0010】別の観点によれば、本発明は、上記のシステムを含むディーゼル排気を処理する方法であり、そこで、低温においてNOxが吸収されながら酸化性ディーゼル排気が第1成分を通り、後で昇温されると脱離されて第2成分上で還元される。
【0011】理想的な作動のために、第1成分材料が窒素酸化物吸収能力に到達する前に、温度を上昇させることにより、第1成分材料上に吸収されたNOxが脱離され得る様に、第1成分上で吸収される窒素酸化物の量を監視することがあり得る。しかしながら、好ましいことに、MVEuroサイクルにおいて例示される典型的な運転中のディーゼル排気温度は、第1成分がNOx吸蔵能力へ到達しにくい程頻繁に、NOx脱離の範囲内にある。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、2つの触媒成分を、ディーゼル・エンジンの排気通路内へ配置することを、有し、第1成分がエンジンのマニフォールドへより近く配置される。第1成分は、ディーゼル・エンジンの作動中に、常時酸化性である排気に晒される、物質である。市街地走行中に特にあり得る、エンジン始動、軽度の加速及び低速低負荷走行の様な比較的低温での作動中に、酸化性排気中に存在するNOxは第1成分材料に吸収される。その後で、市街地及び高速道路走行で負荷が増加する時の様に、第1成分がより高い温度に晒される時には、吸収されたNOxが酸化性排気が存在する中で第1成分から脱離して、リーンNOx触媒又はSCR触媒上での還元のために、ガス流の中を第2成分まで運ばれる。第1成分は、例えば排気マニフォールド又はターボチャージャー又は、パティキュレート・フィルターの様な他の排気後処理装置からエンジンからの排気が出た後ですぐに、排気に接触する様に配置することが出来る。本発明の概略が図1に示されている。
【0013】例えばアルミナ上の白金が、O_(2)リッチ条件であって、そして、例えばMVEuroの様な標準的な運転サイクルにおける、ディーゼルの軽負荷走行に典型的な排気温度の下で、NOxを吸収そして放出することが、判った。このNOx吸蔵は、リーンNOx還元にPtが活性である同じく低温で起こる。ディーゼルにおけるリーンNOx触媒の作動は、エンジンから出るHCのレベルが低すぎるので、排気に還元種が加えられることが必要であるのが一般的である。HCが存在しない場合には、Pt/アルミナがNOxを吸蔵する。成分の特定の組成により変る第1成分のNOx吸蔵温度よりも上まで温度が上昇すると、吸蔵されたNOxが放出される。」(段落【0007】ないし【0013】)

エ.「【0024】本発明の方法によれば、始動、軽加速そして一定速度の郊外走行の様なディーゼル・エンジンの作動中に経験される比較的低温において、排気中のNOxが第1触媒成分に吸収されることになる。特に、アルミナ吸収材料上で典型的な白金については、これが起こるのが、酸化性のディーゼル排気の温度が50?230℃である時となる。この実施例において、高速高負荷加速又は高速走行における様に、排気温度が230℃を越え最大で概略450℃まで上昇すると、NOxは吸収材より脱離して、排気通路内を下流へ移動する。本発明における第1成分触媒のNOx吸蔵及びNOx放出の具体的な温度範囲は、本明細書の内容より当業者には明らかであろうが、それの調合の特性に応じて変ることになろう。
【0025】脱離されたNOxはそして、それが例えばN_(2)に還元されるこの昇温状態の第2触媒成分へ晒される。この昇温状態において、第2成分触媒は、この還元を効率的に行なうことが出来る。この第2触媒成分はNOxを還元することの出来る触媒のいずれかのものであり、例えば、リーンNOx触媒であっても良い。リーンNOx触媒はこの分野で良く知られており、過剰な酸素の存在の下で、CO及びHCを浄化すると共に、NOxを還元することの出来る触媒である。NOxの還元反応のためにHCを用いるリーンNOx触媒の例として、Cu-ZSM-5, Fe-ZSM-5, Co-ZSM-5及び担持されたRhがある。代わりに、第2成分を、HCではなく尿素又はアンモニアを用いてNOxを還元するSCR触媒としても良い。SCR触媒の例には、Cu-ZSM-5又はCeモルデナイトの様な卑金属ゼオライトである。本発明の方法は、第2成分が上述の変換を行なう限り、第2成分用の特定の触媒に関するものに限られるものではない。一般的なリーンNOx触媒は、排気中のHCを用いることによりNOxを還元するので、排気のHC成分が比較的低いディーゼルに対しては、リーンNOx触媒へ付加的なHCを加えることがある。これは、本明細書の内容から当業者には明らかである様に、ディーゼル燃料、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)燃料又は他のHC物質を噴射することによりなされても良い。SCR触媒が用いられる場合のNOxの還元を促進する別の方法には、本明細書の内容から当業者には明らかである様に、尿素又はアンモニアの還元剤又は他の物質を第2成分上に導入するものである。
【0026】上述の様に、本発明のシステムの効率的な利用のために、第1触媒成分の吸収能力を越えることがない様に、低温において第1成分により吸収された窒素酸化物の量を監視するのが望ましいであろう。第2成分による効率的なNOx変換に必要な温度よりも排気温度が低い場合には、NOxを大気に排出することが出来る。この監視は、車載コンピューターによるか又は例えば窒素酸化物センサーを用いて排気通路内の窒素酸化物吸収材料前後の位置における排気中の窒素酸化物濃度を計測するなどにより、エンジンの負荷-時間情報に対して生成された窒素酸化物の量を見積もることを含むいくつかの方法で、なし得る。吸収された窒素酸化物の量を監視する更に別の方法は、本明細書の内容より当業者には明らかであろう。この監視から、吸収材である第1成分トラップが窒素酸化物のパージをされて再生されるのが理想的であると判断される場合には、第1成分の温度はNOxを脱離する昇温状態まで上昇される。これは、エンジンの制御によりなし得ることである。トラップ中の窒素酸化物の量を判断する方法若しくは吸収材をパージするのに温度を上昇させる方法は、非常に重要という程のものではない。エンジン作動に対応して選択された時期に、吸収材とエンジン・システムの理想的な作動のために選択され、吸収された窒素酸化物のある部分又は全てをパージするのに必要な期間、パージが行われるのが通常である。これらのパラメーターを変化させ、例えばパージを促進し得る吸収材温度にパラメーターを整合させるのが、望ましいであろう。吸蔵NOxはそして、吸収材料の第1成分から放出され、第2成分触媒上で触媒作用的に還元される。全般的に、放出されたNOxはN_(2)又は N_(2)Oへ効率的に変換される。」(段落【0024】ないし【0026】)

オ.「【0032】試料入口温度の関数として、NOx吸蔵及び放出の効率が図2に示されている。この実験において、Pt/アルミナが、60?230℃の温度において吸蔵を示している。吸蔵効率のピークは、160℃の近傍で得られた80%である。NOx放出は、吸蔵効率の負の値により示されて、230?450℃の温度にわたり起こっている。吸蔵されたNOxの量は、実験誤差の範囲内で、放出された量に等しい。
【0033】NOxの吸蔵量は、触媒モノリスの1 cm^(3)当たり約0.37mgである。この量は、この実験において到達しなかったNOx吸蔵能を下回るものである。しかしながら、吸蔵されたNOxの量は、MVEuroサイクルの市街地走行部分の間に触媒が晒されるレベルに匹敵している。例えばその部分において、2.5lの輸送車両が2.2gのNOxを排出し、それは2.5lの触媒を触媒1 cm^(3)あたり約2.2mgのNOxへ晒している。実験における露出時間は10?12分であり、その間NOxが吸蔵される。車両において、MVEuroの市街地走行の期間の間、同様の時間つまり13?14分、触媒が排気に晒される。市街地走行中にエンジンから出るNOxを全て吸蔵することが出来る必要は多分ないであろう。これは、排気温度が、NOx吸蔵及び放出の両方の温度範囲内をサイクル変化するからである。
【0034】例2同時のNOx吸蔵及びNOx還元
例1のPt/アルミナ・モノリス試料が、同じ温度範囲に亘っての、NOx吸蔵及びNOx放出の同時発生について、試験される。これは、供給ガス組成中にプロピレンが含まれることを除いて、例1の温度上昇実験を繰返すことによりなされる。供給ガス中の2種類のプロピレンのレベルが考慮される。それらは、185と720 ppmHC_(1)であり、その結果、HC_(1)/NOx比がそれぞれ2/1及び9/1となる。炭化水素が加えられたこれらの供給組成は両方共にまだ酸化性である。前者は、エンジンから出るディーゼル排気の平均レベルを代表し、後者は、リーンNOx触媒を作動させるためにディーゼル排気へ還元剤が加えられる時の典型的レベルを表す。
【0035】試料入口温度の関数としてのNOx吸蔵にNOx変換を加えた効率が、HC_(1)/NOx比が2/1の場合について図3に、そしてHC_(1)/NOx比が9/1の場合について図4に示されている。これらの図は、230℃より下の温度で起こるNOx吸蔵とNOx変換を示している。吸蔵されたNOxは230℃を越えると放出され、これが負の効率値で示されている。放出されたNOxの量は、230℃より下の温度では、供給流から消えるNOxの量よりも少ない。N_(2)Oの計測により、消えてしまったNOxの残りの量、つまり吸蔵されなかった量は、殆どの部分がN_(2)Oへ変換されていることが、明らかである。HC_(1)/NOx比が2/1の場合について、N_(2)OへのNOx変換のピークは120℃で約12?15%であり、HC_(1)/NOx比が9/1である場合については、140℃で約45%である。
【0036】例3NOx吸蔵及び放出されたNOxの変換
Cuゼオライト(本発明の第2触媒成分の一実施例)がPt/アルミナに続く2成分触媒システムが、NOx吸蔵及び放出されたNOxの変換について、流通反応装置において、評価される。Pt/アルミナ触媒が最初に供給ガスと接触し、そして、NOxを吸蔵するのに用いられる。これは、例1で用いられたのと同じ触媒試料である。供給ガスがPt/アルミナ触媒を通り抜けた後で、Cuゼオライト触媒が供給ガスと接触する。この第2位置の触媒は、Pt/アルミナ触媒から放出されたNOxを変換するのに用いられる。
【0037】Cuゼオライト試料は、触媒業者製のプロトタイプのリーンNOx触媒である。コーデュライト・ハニカム・モノリスが、Cuゼオライト材料を担持している。Cuゼオライト試料の寸法は直径19.05mm長さ50.08mmである。この試料が、Pt/アルミナ試料は無しで、NOx変換について試験される。例1の温度上昇過程が実行される。供給ガスの組成は、185 ppmのNOx及び1345 ppmのHC_(1)が用いられることを除き、例1におけるのものと同じである。図5は、Pt/アルミナ触媒用の入口がある位置で計測される温度の関数としての、Cuゼオライト触媒上でのNOx変換を示している。(Cu触媒の入口温度、つまりそれより12.7mm前の温度は、この実験装置におけるPt/アルミナの前の温度よりも約25℃高くなる)図5の図2との比較は、このCuゼオライト触媒上でのNOxの変換が、実験装置内のPt/アルミナ上でのNOx放出量と一致することを示している。
【0038】2成分触媒システムつまり、CuゼオライトがPt/アルミナに続くものについての、NOx変換が、図6に示されている。Pt/アルミナ触媒が、例1と同じHCを含まない供給ガスに晒されて、それはNOxの吸蔵放出を行なうが、NOx変換は行なわない。プロピレンがCu触媒の前、つまり、Pt/アルミナの後に、加えられる。Pt触媒についてNOの供給ガスレベルに基き15/1のHC_(1)/NOx比が用いられる。この高い比率は、Pt/アルミナから放出するNOxの結果としてのCuゼオライト上のNOx供給ガスレベルの増加に適応するためである。
【0039】図6の図5との比較は、Pt/アルミナ吸蔵触媒がCuゼオライト触媒の前にあると、全体の正味NOx変換率は、Cuゼオライトのみに比して向上していることを、示している。その進歩は、低温でPt/アルミナ上に吸蔵されたNOxをCuゼオライトが変換するからである。」(段落【0032】ないし【0039】)

上記ア.ないしオ.及び図面の記載を参酌すると、以下のことがわかる。
カ.第1触媒成分は、白金を含有しており、始動、軽加速そして一定速度の郊外走行の様なディーゼル・エンジンの作動中に経験される比較的低温において、すなわち、排気温度が50℃?230℃のときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、230℃以上を越えて最大で概略450℃まで上昇すると、吸着した上記窒素酸化物を脱離する。

キ.上記エ.及びオ.の記載からすれば、第2触媒成分は、白金及びゼオライトを含有している。

ク.上記エ.の記載からすれば、排気温度を調整することにより窒素酸化物の吸着脱離する第1触媒成分があり、第1触媒成分出口で排気ガスのNOxを含む排ガス成分の量あるいは濃度を検出している。

上記ア.ないしク及び図面を参酌すると、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「エンジンの排気通路の上流側に、排気温度を調整することにより窒素酸化物を吸着脱離する第1触媒成分を配置し、上記排気通路の下流側に第2触媒成分を配置して成る排気処理システムであって、
上記第1触媒成分は、白金を含有し、排気温度が50℃?230℃のときに、排気中の窒素酸化物を吸着し、230℃以上を越えて最大で概略450℃まで上昇すると、吸着した上記窒素酸化物を脱離し、上記第2触媒成分は、白金及びゼオライトを含有する排気処理システム。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

2.-2 対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「エンジン」は、その機能及び作用からみて、本願補正発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「排気通路」は「排気ガス通路」に、「第1触媒成分」は「NOx吸着触媒」に、「排気温度」は「排気ガスの温度」または「排気ガス温度」に、「第2触媒成分」は「酸化触媒」に、「排気」は「排気ガス」に、「排気処理システム」は「排気ガス浄化システム」に各々相当する。そして、引用文献記載の発明における
「排気温度が50℃?230℃のときに、排気中の窒素酸化物を吸着し、230℃以上を越えて最大で概略450℃まで上昇すると、吸着した上記窒素酸化物を脱離し」は、本願補正発明における「排気ガスの温度がエンジン始動時から140℃のときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、200℃以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離し」と、「排気ガス温度が所定温度範囲Aのときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、所定温度B以上で、吸着した上記窒素酸化物を脱離し」の限りで一致することから、本願補正発明と引用文献記載の発明とは、
「内燃機関の排気ガス通路の上流側に、排気ガス温度を調整することにより窒素酸化物を吸着脱離するNOx吸着触媒を配置し、上記排気ガス通路の下流側に酸化触媒を配置して成る排気ガス浄化システムであって、
上記NOx吸着触媒は、白金を含有し、排気ガスの温度が所定温度範囲Aのときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、所定温度B以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離し、上記酸化触媒は、白金及びゼオライトを含有する排気ガス浄化システム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
(1)相違点1
「排気ガスの温度が所定温度範囲Aのときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、所定温度B以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離し、」に関して、本願補正発明においては、「排気ガスの温度がエンジン始動時から140℃のときに、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、200℃以上のときに、吸着した上記窒素酸化物を脱離」するのに対して、引用文献記載の発明においては、排気温度が50℃?230℃のときに、排気中の窒素酸化物を吸着し、230℃以上を越えて最大で概略450℃まで上昇すると、吸着した上記窒素酸化物を脱離」する点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
本願補正発明においては、NOx吸着触媒出口での排気ガスの窒素酸化物/一酸化炭素濃度比が、排気ガス温度がエンジン始動時から140℃のときに、0.3以下であるのに対して、引用文献記載の発明においては、その点が明確ではない点(以下、「相違点2」という。)。

2.-3 判断
(1)相違点1について
相違点1について検討する。
引用文献の段落【0024】の「本発明の方法によれば、始動、軽加速そして一定速度の郊外走行の様なディーゼル・エンジンの作動中に経験される比較的低温において、排気中のNOxが第1触媒成分に吸収されることになる。特に、アルミナ吸収材料上で典型的な白金については、これが起こるのが、酸化性のディーゼル排気の温度が50?230℃である時となる。この実施例において、高速高負荷加速又は高速走行における様に、排気温度が230℃を越え最大で概略450℃まで上昇すると、NOxは吸収材より脱離して、排気通路内を下流へ移動する。本発明における第1成分触媒のNOx吸蔵及びNOx放出の具体的な温度範囲は、本明細書の内容より当業者には明らかであろうが、それの調合の特性に応じて変ることになろう。」と記載されるように、「窒素酸化物を吸着脱離の温度が始動、軽加速そして一定速度比較的低温において」及び「これが起こるのは50℃から230℃である時」と記載されていることから、「始動時から140℃」を包含しており、また、窒素酸化物の脱離の温度が「230℃?450℃」は、本願補正発明における「200℃以上」であることから、本願補正発明は引用文献記載の発明における窒素酸化物の吸着及び脱離の温度に相当する範囲を包含していることになる。そして、引用文献の上記記載にもあるように、「NOx吸蔵及びNOx放出の具体的な温度範囲は触媒の調合の特定に応じて変える」旨の記載からも、窒素酸化物の吸着・脱離温度は当業者が設計にあたって適宜なし得るものであることから、相違点1に係る本願補正発明のように特定することは当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
相違点2について検討する。
引用文献記載の発明もエンジン始動時からの低温時には第1触媒成分において窒素酸化物が吸収されることから、第1触媒成分出口では、窒素酸化物は他の排気ガス成分であるHC及びCOに比べて相対的に少なくなることは当然であって、その際に窒素酸化物/一酸化炭素濃度比をどの程度以下に抑えるかは、当業者が両触媒能を考慮して適宜なし得る設計上の問題にすぎないことから、相違点2に係る本願補正発明のように特定することは当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献記載の発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

以上のように、本願補正発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成22年3月2日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、平成21年9月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.の〔理由〕1.(1)の(a)に記載したとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開2000-230414号公報)の記載は、前記第2.の〔理由〕2.-1のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の〔理由〕1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の〔理由〕2.-1ないし2.-3に記載したとおり、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その本件優先日前日本国内において頒布された引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

なお、審判請求人は平成22年10月26日付け回答書で、特許請求の範囲を補正する補正案(以下、「本件補正案」という。)を提示しているので、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下、「本件補正案発明」という。)に対して付言する。
本件補正案は、平成22年3月2日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「酸化触媒」に対して、「ロジウムを含有しない」とすることで「酸化触媒」を限定することを含むものである。
ところで、酸化触媒として、白金及びゼオライトを含み、ロジウムを含有しないものは周知(以下、「周知の技術」という。)であることからすれば、本件補正案発明も当業者が引用文献記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に推考し得るものといえる。
 
審理終結日 2011-02-18 
結審通知日 2011-02-21 
審決日 2011-03-08 
出願番号 特願2006-306665(P2006-306665)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 西山 真二
柳田 利夫
発明の名称 排気ガス浄化システム  
代理人 的場 基憲  

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