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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D |
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管理番号 | 1235714 |
審判番号 | 不服2010-2376 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-04 |
確定日 | 2011-04-21 |
事件の表示 | 特願2004-332223「機能パネルの取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年6月8日出願公開,特開2006-144268〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成16年11月16日の出願であって,平成21年10月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年2月4日に審判請求がなされたものであり,その請求項1,2に係る発明は,出願当初の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。 「縦桟と横桟とを結合して形成される架台を屋根の上に取り付け、架台に機能パネルを固定することによって屋根に機能パネルを取り付けるようにした機能パネルの取付構造において、縦桟の上面に長手方向に沿ってスライド溝を凹設すると共にスライド溝の上面開口の両縁に沿って係止片を張り出して設け、ねじ孔を穿設して形成される板ナットに位置決め突片を上方へ突出させて設け、この板ナットを係止片の下側に係止すると共に位置決め突片を係止片の間から縦桟の上方へ突出させた状態でスライド溝にスライド自在に挿着し、縦桟の上に交叉して載置された横桟の一側外面に位置決め突片を当接させた状態で板ナットを横桟の下側に配置し、横桟に設けた結合孔に上から通したボルトを板ナットのねじ孔に螺合して成ることを特徴とする機能パネルの取付構造。」 第2.引用刊行物とその記載事項 1.原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平11-13238号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「太陽電池モジュール用架台」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 (1a)「【0015】 【発明の実施の形態】…図1は、家屋の傾斜した屋根上に太陽電池モジュールを支持固定するためのモジュール用架台の一部を示す分解斜視図である。この図に示すように、モジュール用架台1は、スレートぶき屋根2の勾配方向に配設された複数の縦桟4,4と、これらの縦桟4,4上に、直交するように相互に平行に掛け渡された複数の横桟5,5とにより格子状に構成され、各縦桟4が複数の取付金具7を介して屋根2に固定されている。そして、このモジュール用架台1により、複数の太陽電池モジュール3,3が屋根2上に支持固定されている。」 (1b)「【0022】一方、モジュール用架台1の縦桟4は、図1?図3に示すように、アルミの押し出し形材などで構成され、縦桟4の上下左右の面には、長手方向に沿って溝31,32,33,33が設けられている。上面の溝(上溝)31は、上向きの断面略「C」字状に形成されており、この上溝31内に、回り止め用の座板34を介し縦桟4に横桟5を固定するためのボルト35の頭部が収容されている。このボルト35は、座板34とともに上溝31に沿って縦桟4の長手方向に移動自在に構成されている。これにより、縦桟4に対する横桟5の勾配方向の固定位置が自由に調整でき、太陽電池モジュール3の形状に合わせて、隣接する横桟5,5間の間隙を調整できるようになっている。…さらに、左右の面の溝(横溝)33,33は、それぞれ外側向きの断面略「C」字状に形成されており、これらの横溝33,33内には、縦桟4と取付金具7とを締結するための雌ねじを形成した裏板(ナット部材)37,37がそれぞれ収容されている。 【0023】各横溝33は、裏板37が収容された断面矩形状の第1溝部33aと、この第1溝部33aの側部から更に縦桟4内へ凸状に連なって形成された第2溝部33bとで構成されている。第1溝部33a内の裏板37は、第1溝部33aに沿って、縦桟4の長手方向に移動自在に構成されている。これにより、縦桟4と、屋根2上の取付金具7とを締結する場合に、取付金具7の固定位置に拘わらず、縦桟4の長手方向の任意の位置に取付金具7を締結することができるようになっている。…」 (1c)そして,上記(1b)の記載を参照して,第3図をみると,縦桟4の上面に長手方向に沿って設けられた上溝31は,断面略「C」字状に凹設されたものであって,その上面開口の両縁に沿って係止片が張り出して設けられており,ボルト35は,その頭部が回り止め用の座板34とともに上記係止片の下側に係止した状態で上溝31に移動自在に挿着され,横桟5に設けた結合孔に下から通された上記ボルト35の先端に横桟5の上からナットのねじ孔が螺合されて,縦桟4に横桟5が固定されることは明らかである。 上記(1a)?(1c)の記載及び図面の記載を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「縦桟4と横桟5とにより格子状に構成されるモジュール用架台1を屋根2の上に固定し,モジュール用架台1に太陽電池モジュールを固定することによって屋根2に太陽電池モジュール3を取り付けるようにした太陽電池モジュールの取付構造において,縦桟4の上面に長手方向に沿って上溝31を凹設すると共に上溝31の上面開口の両縁に沿って係止片を張り出して設け,ボルト35をその頭部が回り止め用の座板34とともに係止片の下側に係止した状態で上溝31に移動自在に挿着し,横桟5に設けた結合孔に下から通されたボルト35の先端に横桟5の上からナットのねじ孔を螺合して,縦桟4に横桟5を固定する太陽電池モジュールの取付構造。」 2.同じく,特開2000-96784号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「部材の取付構造」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】側壁に開口する開口部の内側に向けて締着片を突設した有底の溝を備えた取付バーと、前記取付バーの側壁に重合され且つ前記開口部に臨むボルト通し孔を開設した接合壁を有する被着部材と、前記取付バーの溝に摺動自在に嵌入されるナットと、前記被着部材のボルト通し孔を挿通して前記ナットに螺着される頭付きボルトとから成り、ナットとボルトにより締着片と接合壁を挟持締着する構造において、 前記ナットが、前記溝の長手方向に延びるアームを備えると共に、該アームの先端に前記接合壁の側縁に当接するストッパを備え、前記ストッパを接合壁の側縁に当接せしめた状態でナットの雌ねじ孔をボルト通し孔に合致せしめて成ることを特徴とする部材の取付構造。」 (2b)「【0003】…図1に示すように、屋根を構成する和瓦又は平板瓦等の通常瓦のうち、所定個所に位置する通常瓦を高強度の特殊瓦1に置換し、該特殊瓦1に一体成形したブラケット部2に対して第一被着部材3aを介して第一取付バー4aを屋根の勾配に沿って取付けた後、該第一取付バー4aに対して第二被着部材3bを介して第二取付バー4bを屋根の勾配に交差して取付け、第一取付バー4aと第二取付バー4bから成る格子状の組付体に太陽電池モジュール等の設備を載設することが行われている。」 (2c)「【0014】図2に示すように、第一取付バー4a及び第二取付バー4bは、何れも、アルミニウム等の軽合金による押出し材又は引抜き材から成る長尺レールを構成し、左右両側壁に開口する断面ほぼコ字形とした有底の溝13、13を形成し、該溝13の上下開口縁から内側に対向して突出するリブ状の締着片14を突設している。…」 (2d)「【0017】第1図に基づいて上述したように、第一被着部材3aは、下向き接合壁11a、11aを特殊瓦1のブラケット部2に跨設され、前述したようなボルト及びナットにより固着される。第一被着部材3aの上向き接合壁12a、12aには第一取付バー4aが嵌合され、平板壁10aに支持せしめた状態で、第一取付バー4aの両側壁に第一被着部材3aの上向き接合壁12a、12aを重合せしめ、この状態でボルト通し孔16aを溝13aの開口部に臨んで連通せしめ、後述するボルト18及びナット17により固着される。 【0018】前記第一取付バー4aには、上方から第二被着部材3bの下向き接合壁11b、11bが跨設され、平板壁19bを第一取付バー4aに支持せしめた状態で、第一取付バー4aの両側壁に第二被着部材3bの下向き接合壁11b、11bを重合せしめ、この状態でボルト通し孔16bを溝13bの開口部に臨んで連通せしめ、後述するボルト18及びナット17により固着される。 【0019】更に、前記第二被着部材3bの上向き接合壁12b、12bには第二取付バー4bが嵌合され、平板壁10bに支持せしめた状態で、第二取付バー4bの両側壁に第二被着部材3bの上向き接合壁12b、12bを重合せしめ、この状態でボルト通し孔16cを溝13の開口部に臨んで連通せしめ、後述するボルト18及びナット17により固着される。 【0020】取付バー4a、4bと被着部材3a、3bを相互に取付けるため、ナット17及び頭付きボルト18と、平ワッシャ19及びスプリングワッシャ20が使用され、両ワッシャ19、20は予めボルト18にセットされるのが好ましい。 【0021】ナット17は、取付バー4a、4bの端部から溝13(13a、13b及び13)に挿入されると共に、該溝13に沿って摺動自在であり、溝13の長手方向に延びるアーム21と、該アーム21の先端を折曲して成るストッパ22とを有する位置決め手段23を設けている。 【0022】前記位置決め手段23は、ナット17を各溝13に挿入した状態で、ストッパ22を溝13の開口部から外向きに突出せしめる構成とされており、図3及び図4に示すように、ナット17を溝13に沿って摺動せしめると、ストッパ22が接合壁11、12(12a、11b、12b)の側縁に当接され、この状態で、ナット17の雌ねじ孔17aをボルト通し孔16(16a、16b、16c)に合致せしめるように位置決めされる。…」 上記(2a)?(2d)の記載及び図面の記載を含む刊行物2全体の記載並びに当業者の技術常識によれば,刊行物2には,次の発明(以下,「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「屋根の勾配に沿って取付ける取付バー4aの長手方向に沿って断面ほぼコ字形とした有底の溝13を形成すると共に溝13の開口縁から内側に対向して突出するリブ状の締着片14を設け,雌ねじ孔17aを開設して形成されるナット17に設けたアーム21の先端にストッパ22を折曲して設け,ナット17を締着片14の溝13側に係止すると共にストッパ22を締着片14の間から突出させた状態で溝13に摺動自在に挿着し,ストッパ22を取付バー4aに被着される被着部材3a(3b)の接合壁12a(11b)の側縁に当接させた状態でナット17を被着部材3a(3b)に設けたボルト通し孔16a(16b)に合致せしめるように位置決めし,被着部材3a(3b)に設けたボルト通し孔16a(16b)に通したボルト18をナット17の雌ねじ孔17aに螺合して成るボルト18とナット17とによる,太陽電池モジュール等の設備を載設する格子状組付体の取付構造。」 第3.対比・判断 1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると, 刊行物1記載の発明の「縦桟4と横桟5とにより格子状に構成される」が本願発明の「縦桟と横桟とを結合して形成される」に相当し,以下同様に,「モジュール用架台1」が「架台」に相当し,「太陽電池モジュール」が「機能パネル」に相当し,「上溝31」が「スライド溝」に相当し,「移動自在」が「スライド自在」に相当する。 また,刊行物1記載の発明の「頭部が回り止め用の座板34とともに係止片の下側に係止した状態で上溝31に移動自在に挿着」する「ボルト35」,及び,「横桟5に設けた結合孔に下から通されたボルト35の先端に横桟5の上から」その「ねじ孔を螺合」する「ナット」と,本願発明の「係止片の下側に係止すると共に位置決め突片を係止片の間から縦桟の上方へ突出させた状態でスライド溝にスライド自在に挿着」する「板ナット」,及び,「横桟に設けた結合孔に上から通し」て「板ナットのねじ孔に螺合」する「ボルト」とが,係止片の下側に係止した状態でスライド溝にスライド自在に挿着するボルト・ナットの一方の部材,及び,横桟に設けた結合孔を介して上記一方の部材に螺合するボルト・ナットの他方の部材で共通する。 そうすると,両者は, 「縦桟と横桟とを結合して形成される架台を屋根の上に取り付け,架台に機能パネルを固定することによって屋根に機能パネルを取り付けるようにした機能パネルの取付構造において,縦桟の上面に長手方向に沿ってスライド溝を凹設すると共にスライド溝の上面開口の両縁に沿って係止片を張り出して設け,ボルト・ナットの一方の部材を係止片の下側に係止した状態でスライド溝にスライド自在に挿着し,横桟に設けた結合孔を介してボルト・ナットの他方の部材を上記一方の部材に螺合して,縦桟と横桟とを結合する機能パネルの取付構造。」の点で一致し,次の点で相違する。 <相違点> 縦桟に横桟を取り付けるボルト・ナットについて, 本願発明では,係止片の下側に係止した状態で縦桟のスライド溝にスライド自在に挿着するボルト・ナットの一方の部材が,「ねじ孔を穿設して形成され」かつ「位置決め突片を上方へ突出させて設け」てなり,「位置決め突片を係止片の間から縦桟の上方へ突出させた状態でスライド溝にスライド自在に挿着し、縦桟の上に交叉して載置された横桟の一側外面に位置決め突片を当接させた状態」で「横桟の下側に配置」する「板ナット」であり,横桟に設けた結合孔を介して上記一方の部材に螺合するボルト・ナットの他方の部材が,「横桟に設けた結合孔に上から通し」て「板ナットのねじ孔に螺合」する「ボルト」であるのに対し, 刊行物1記載の発明では,上記ボルト・ナットの一方の部材が,その頭部を回り止め用の座板34とともに係止片の下側に係止した状態でスライド溝(上溝31)にスライド自在(移動自在)に挿着する「ボルト35」であり,横桟に設けた結合孔を介して上記一方の部材に螺合するボルト・ナットの他方の部材が,横桟に設けた結合孔に下から通されたボルト35の先端に横桟の上からそのねじ孔を螺合する「ナット」である点。 2.相違点の検討・判断 上記相違点について検討する。 刊行物2には,上記「第2.2.」で説示したとおりの発明が記載されているところ,当該発明には,ストッパ22(本願発明の「位置決め突片」に相当ないし対応する。以下同様。)を,取付バー4a(縦桟)の締着片14(係止片)の間から突出させた状態で,溝13(スライド溝)にスライド自在に挿着したアーム21付きナット17(板ナット)と,当該ナット17に穿設して形成される雌ねじ孔17a(ねじ孔)に螺合するボルト18(ボルト)とを用いてなる,太陽電池モジュール等の設備を載設する格子状組付体の取付構造が開示されているから,本願発明の上記相違点に係る取付構造と,機能構造的にみて実質的に一致する,ボルト・ナットによる格子状組付体の取付構造は,当該技術分野において,従来から公知のものということができる。 そして,刊行物1には,縦桟に凹設した横溝33内に,雌ねじを穿設した裏板(ナット部材)37が収容され,当該裏板37の雌ねじに締結ボルト38を螺合してなる取付構造も記載されている(記載事項(1b)を参照。)ことから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明に開示された上記技術を適用することは,当業者であれば,容易に思い付くことである。 してみると,刊行物1記載の発明におけるボルト・ナットによる縦桟への横桟の取付構造に,刊行物2記載の発明に開示された上記ボルト・ナットによる格子状組付体の取付構造の技術を適用して,本願発明の上記相違点に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。 そして,本願発明全体の効果も,刊行物1,2記載の発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 第4.むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-15 |
結審通知日 | 2011-02-22 |
審決日 | 2011-03-08 |
出願番号 | 特願2004-332223(P2004-332223) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野 忠悦 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
草野 顕子 宮崎 恭 |
発明の名称 | 機能パネルの取付構造 |
代理人 | 西川 惠清 |