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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1236188
審判番号 不服2008-30738  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-04 
確定日 2011-05-02 
事件の表示 平成10年特許願第198141号「エアー入れ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 15690号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年6月30日の出願であって、平成20年10月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成20年12月4日に拒絶査定に対する不服の審判請求がされるとともに、平成20年12月26日付けで手続補正がされたものである。

2.平成20年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 ブロー成型と同時に容器の口元端部の外形状を刃の付いたスリーブにより面取り状に成型するブロー成型機において、 刃角θが、30?45゜であり、パリソンの口元を押し切る力は空気圧(200?250kg)であることを特徴とする装置。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するための事項である「刃の付いたスリーブにより面取り状に成型する」ことについて、「パリソンの口元を押し切る力は空気圧(200?250kg)である」という限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である実願昭54-93881号(実開昭56-11915号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の技術的事項が記載されている。

ア.「1.カツテイングスリーブをそなえた吹込成形用のブローピンにおいて、前記カツテイングスリーブの位置を外側下端から下方に突出させて成形容器口部の上面外周縁部から下側の位置で樹脂バリを切離せるようにカツテイングスリーブの位置を下げてなるブローピン。」(明細書第1ページ第5?10行)

イ.「この考案は、プラスチツク容器の吹込成型時の容器口部の切断工程に使用するブローピンの改良に係るもので、ブローピンのカツテイングスリーブの位置を下端に移設したものである。
以下これを添付の図面について説明する。
第1図は本案ブローピンの1例を示したもので、図において、1はスチール製のブローピンで、ブローピン1は、先端に形成された容器口部の内径を決めるための円柱部1aと、これに続いて形成された下部にカツテイングスリーブ1bを有する円柱部1cとからなり、カツテイングスリーブ1bはブローピンのテーパ部分1dの外側下端から下方に突出させて設けられている。テーパ部分1dは、成形容器口部の上面外周縁部を斜めに成形できるようになつており、カツテイングスリーブ1bでバリとびん本体を分離するようになつている。」(明細書第2ページ第3?19行)

ウ.「吹込成形における容器口部の成形工程でブローピン1を切断された口部Mに打込み、ブローピン1を回転させて口部Mを形成することにより、口部上面が平らに仕上げられるとともに、口部の上面外周縁部の樹脂温度が下がらないときにブローピンの1d部分で斜めに成形され、カツテイングスリーブ1bでバリとびん本体が分離される。」(明細書第3ページ第1?8行)

上記の各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「吹込成形における容器口部の成形工程でブローピン1を切断された口部Mに打込み、ブローピン1を回転させて口部Mを形成することにより、口部の上面外周縁部の樹脂温度が下がらないときにブローピンの1d部分で斜めに成形され、カツテイングスリーブ1bでバリとびん本体が分離する、吹込成型用のブローピン。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「吹込成形」は、本願補正発明の「ブロー成形」に相当する。
引用発明の「吹込成形における容器口部の成形工程で」形成することは、本願補正発明の「ブロー成型と同時」であることに相当する。
引用発明の「口部Mを形成すること」は、本願補正発明の「口元端部の外形状」を成形することに相当する。
引用発明の「カツテイングスリーブ1b」及び「ブローピンの1d部分」は、本願補正発明の「刃」に相当する。
引用発明の「ブローピンの1d部分で斜めに成形」することは、本願補正発明の「刃の付いたスリーブにより面取り状に成型する」ことに相当する。

すると、両者は次の点で一致する。
[一致点]
「ブロー成型と同時に容器の口元端部の外形状を刃の付いたスリーブにより面取り状に成型すること。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明では「ブロー成型機」の「装置」であるのに対して、引用発明では「ブローピン」である点。

[相違点2]
本願補正発明では「刃角θが、30?45゜」であるのに対して、引用発明の刃角は明らかではない点。

[相違点3]
本願補正発明では「パリソンの口元を押し切る力は空気圧(200?250kg)である」のに対して、引用発明ではブローピンを回転させており、また、パリソンの口元を押し切る力の大きさは明らかではない点。

(4)相違点についての判断
[相違点1]について
引用発明のブローピンは、吹込成型用のものであるから、ブロー成形機の装置に用いられるものであることは明らかである。
したがって、引用発明のブローピンをブロー成型機に用いることにより本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2]について
例えば、刃角が小さければ容易に切断することが可能であるものの、刃の強度が弱くなり、反対に刃角が大きければ切断に大きな力が必要であるものの、刃の強度は大きくなるということは、一般の刃についていえる技術常識である。
すると、引用発明において、刃角θは、切断のしやすさ、耐久性、切断面の仕上がり等を考慮して当業者が適宜定める設計事項にすぎず、したがって、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点3]について
ブローピンを空気圧を用いて打ち込むことによりパリソンのバリを切断除去することは、例えば本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-72521号公報(第3ページ左上欄第15行?左下欄第4行、第1図及び第2図を参照。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
ここで、打ち込むのに必要な力は、成形及びバリの切断除去に必要な力があればよく、また、例えばパリソンの径、パリソンの厚み及び刃角が大きければ、その打ち込むのに必要な力は大きくなり、反対に、パリソンの径、パリソンの厚み及び刃角が小さければ、その打ち込むのに必要な力は小さくなることは、当業者であれば明らかな事項である。
すると、引用発明において、ブローピンを空気圧を用いて打ち込む際の空気圧、すなわちパリソンの口元を押し切るための空気圧の大きさは、パリソンの径、パリソンの厚み及び刃角等に応じて当業者が適宜定める設計事項にすぎず、したがって、本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年8月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ブロー成型と同時に容器の口元端部の外形状を刃の付いたスリーブにより面取り状に成型するブロー成型機において、 刃角θが、30?45゜であることを特徴とする装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その相互に対応する関係は、前記2.(3)に記載したとおりであり、両者は次の点で一致する。
[一致点]
「ブロー成型と同時に容器の口元端部の外形状を刃の付いたスリーブにより面取り状に成型すること。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明では「ブロー成型機」の「装置」であるのに対して、引用発明では「ブローピン」である点。

[相違点2]
本願発明では「刃角θが、30?45゜」であるのに対して、引用発明の刃角は明らかではない点。

(4)相違点についての判断
[相違点1]及び[相違点2]についての判断は、前記2.(4)に記載したとおりであって、本願発明の相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明により得られる作用効果も、引用発明から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-22 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願平10-198141
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深谷 良範富永 久子川端 康之  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
発明の名称 エアー入れ装置  
代理人 熊田 和生  

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