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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25C |
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管理番号 | 1236315 |
審判番号 | 不服2009-23431 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-30 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 特願2004- 23117「燃焼式動力工具」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月11日出願公開、特開2005-212060〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本件発明 本件出願は、平成16年1月30日の出願であって、同21年8月27日付で拒絶査定されたものである。当該拒絶査定の取消を求める本件審判は平成21年11月30日に請求され、同日付で明細書と特許請求の範囲を補正対象書類とする手続補正がされた。その後、当審の平成22年7月22日付審尋に対して同年9月27日に回答書が提出され、同年12月15日付拒絶理由通知に対して平成23年2月14日に意見書と手続補正書が提出されている。 本件出願の請求項1に係る発明は、平成23年2月14日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおり、以下のものと認められる。 「ハウジングと、 該ハウジングの側部から延設されたハンドルと、 該ハウジングの一端近傍に設けられ、燃料通路が形成されたヘッド部と、 該ハウジング内に固定して設けられたシリンダと、 該シリンダ下端部から下方に延設されるノーズと、 該ハンドルの下方に設けられ、該ノーズに釘を供給するマガジンと、 該ノーズに沿って設けられ工作物への押圧時に移動可能なプッシュレバーと、 該シリンダの軸方向に該シリンダに対して往復摺動可能であり、該シリンダをシリンダ内ピストン下室とピストン上室とに画成するピストンと、 該ハウジング内において移動可能に案内され、該プッシュレバーの移動に連動して該ヘッド部に当接、離間し、該ヘッド部、該ピストンと共に燃焼室を画成する燃焼室枠と、 該シリンダ側面に沿って延設されて、該プッシュレバーと該燃焼室枠とを連結する連結ユニットと、を備え、該ハウジングの該シリンダ下端部付近には該燃焼室で生成される燃焼ガスを排出する排出口が形成された燃焼式動力工具において、 一端が該燃焼室枠に連結された少なくとも2個のアーム部と、該アーム部の他端を連結して該プッシュレバーに当接するコネクタ部と、により該連結ユニットを構成し、更に該シリンダと該コネクタ部との間であって該シリンダの径方向中心でない位置に付勢部材を設け、該連結ユニット全体は該ハウジングで覆われ、さらに、該ハウジングは該シリンダ下端部付近から、該排出口よりも下方に延設されて該ノーズ部の反マガジン側の一部を覆うようにし、該付勢部材全体は該ハウジングの下方に延設された部分で覆われていることを特徴とする燃焼式動力工具。」(以下、「本件発明」という。) 2.当審の拒絶理由通知の概要 当審が平成22年12月15日付で通知した拒絶理由は、概略、以下の通りである。 本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である、以下の刊行物に記載された発明に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 特開昭59-205274号公報(以下、「刊行物1」という。) 特開昭63- 28573号公報(以下、「刊行物2」という。) 3.刊行物記載の発明または事項 3.1 刊行物1 a.(第2ページ左下欄第7?15行) 「本発明は一般的にはステープル、釘及びその類いを被加工物内に打込むのに用いるタイプのフアスナ打込み工具に関するものである。特に本発明は燃料及び空気の混合物の燃焼によつて生ずる圧力を動力とするフアスナ打込み工具に関しており、携帯式乃至自立式の工具であって、これ迄大きなフアスナを打込む際必要な動力を供給してきた圧縮空気又は電気を動力源として用いない工具に関するものである。」 b.(第5ページ右下欄第12行?第6ページ左上欄第6行) 「第1図はフアスナ打込み工具10を例示しており、同工具の主要部品は全体として中空のハウジング11に取付けられるか、同ハウジングによって担持されている。工具10のハウジング11は3つの主要なセクシヨンを備えている。即ち、バレルセクシヨン14と、同バレルセクシヨンのほぼ中央位置から水平方向外向きに延びる把持可能な細長いハンドルセクシヨン15と、バレルセクシヨン及びハンドルセクシヨン下方に延びているベース13とである。ベース13内にはマガジン組立体16が含まれており、これはフアスナドライバ30の通路を横切るように配置された釘の列を保持している。前記バレルセクシヨン14の下側端部はフアスナドライバを被加工物に向けてガイドしているガイド組立体52を担持している。」 c.(第6ページ左下欄第9?12行) 「ハウジング11のバレルセクシヨンの下側端部の内側には開口端シリンダ12が配置されている。このシリンダは以後「主シリンダ」と称することにする。」 d.(第6ページ右下欄第1?17行) 「前記主シリンダ内には駆動ピストン28が装着されている。前記ピストンはフアスナドライバ30の上側端部を担持している。ハウジング11のバレルセクシヨン15の上側端部は電気的に作動するフアン22と、工具及び大気間の空気の流れをコントロールする主弁機構24とを担持している。便宜上、ハウジングバレルセクシヨンの電気フアンを担持している上側端部はシリンダヘツド25と称される。前記弁機構は上側乃至第2のシリンダ37を含んでおり、該シリンダはシリンダヘツド25、主シリンダ12及びピストン28とともに大気から遮断され得るチヤンバ21を形成している。このチヤンバは空気と燃料の混合物の燃焼に適しており、以後「燃焼チヤンバ」と名付けられる。前記電気フアンは電気モータ61の出力シヤフトに結合された一連のブレード51を含んでいる。」 e.(第7ページ右上欄第16行?左下欄第4行) 「フアスナドライバ30の下側端部はハウジング11のバレルセクシヨン14の下側端部においてガイド組立体52内にフイツトしている。前記ガイド組立体52の形状輪郭は、ピストン28がその駆動ストロークを動く時、マガジン16によって放出される個々のフアスナ53の1つが被加工物W(第2図)内に打込まれるよう同フアスナを通過させ得るように選ばれている。」 f.(第7ページ右下欄第1?4行) 「第2のシリンダ37は上昇位置(第2図)と下降位置(第1図)の間を自由に移動出来るようハウジング11のバレルセクシヨン14の上側端部内に滑着されている。」 g.(第8ページ右上欄第7行?左下欄第12行) 「シリンダ37の移動は底部トリツプ機構によって行われており、該機構はフアスナが打込まれる被加工物と工具が接触させられた時に同工具が作動することを許容せしめている。本工具の場合同工具はばね負荷された鋳物部材を含んでおり、これは一群のリフトロツドとともに第2のシリンダ37を上昇、下降せしめるのに用いられている。具体的には、Y字形状の鋳物部材40(第5図参照)がバレルセクシヨン14の底部に設けられたガイド組立体52と支持鋳物部材26の下側端部との間においてキヤビテイ29内に配置されている。前記Y字形状の鋳物40は開口中央ハブ43を有しており、該ハブには3つの上向きに配設されたアーム44a,44b及び44cが取付けられている。シール56の下側端部は前記Y字形状鋳物40のハブ43の中央内の開口中を通過するような輪郭形状とされている。Y字形状鋳物の下側端部はそこから下方に懸架している円筒状マウント45を画成している。支持鋳物26の下側端部とY字形状鋳物の上側端部との間に配置されたばね46は前記Y字形状鋳物40を外向き方向へと下方に偏倚せしめている(第1図参照)。 3本のリフトロツド42a,42b及び42cが前記Y字形状鋳物40の上向きに延びるアーム44a,44b及び44cを第2のシリンダの下側端部と結合せしめている(第5図参照)。」 h.(第8ページ左下欄第15行?右下欄第4行) 「主リフトロツド48は前記Y字形状鋳物40の下側端部においてマウント45内にフイツトしている。主リフトロツド48の長さは、工具が被加工物Wと係合している時に(第6図参照)、前記第2のシリンダがその下降位置(第1図)からその上昇位置(第2図)へと動かされるように選ばれている。同様にして、工具が被加工物Wから離れた時には、偏倚ばね46が第2のシリンダを下向きに移動させ、燃焼チヤンバ21の内部を周囲の大気へと露出せしめる。」 j.(第9ページ右上欄第9?12行) 「前記シリンダへツド25は電気フアン22、スパークプラグ63を担持するとともに、燃料が燃焼チヤンバ21内に噴射される内部通路64を提供している。」 k.(第11ページ右下欄第20行?第12ページ左上欄第5行) 「前記第2のシリンダ37がその下降位置にある時燃焼チヤンバ21は前記上側開口39及び下側開口38並びにハウジング11のバレルセクシヨン14内の割溝120a,120b及び120cを経てまわりの大気と導通する。」 m.(第12ページ右下欄第9?12行) 「いったんピストン28が主シリンダ12の側壁上のポート54を通過したならば、燃焼ガスは排気弁装置68を経て自由に主シリンダ12から外へ流出することが出来る(矢印205)。」 n.(FIG.1及びFIG.2) 駆動ピストン28が主シリンダ12をピストン上下の2室に画成すること、 排気弁装置68から矢印205に沿って流れるガスが,主シリンダ下端部付近で割溝120bを通って外部に排出されること, 偏倚ばね46が主シリンダ12の径方向中心位置に設けられ、かつ、その全体がハウジング11で覆われること、 Y字形状鋳物40と3本のリフトロツド42a,42b及び42cからなる底部トリツプ機構全体がハウジング11で覆われること、及び ハウジング11が主シリンダ12下端部付近から、割溝120bよりも下方に存在してガイド組立体52全体を覆うこと、が理解される。 そこで、上記摘記事項を、技術常識を勘案しつつ、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。 「ハウジング11と、 該ハウジング11の側部から延設されたハンドルセクシヨン15と、 該ハウジング11の一端近傍に設けられ、燃料のための内部通路64が形成されたシリンダヘッド25と、 該ハウジング11内に固定して設けられた主シリンダ12と、 該主シリンダ12下端部から下方に延設されるガイド組立体52と、 該ハンドルセクシヨン15の下方に設けられ、該ガイド組立体52に釘を供給するマガジン組立体16と、 該ガイド組立体52に沿って設けられ工作物への押圧時に移動可能な主リフトロツド48と、 該主シリンダ12の軸方向に該主シリンダ12に対して往復摺動可能であり、該主シリンダ12をピストン下の室とピストン上の室とに画成する駆動ピストン28と、 該ハウジング11内において移動可能に案内され、該主リフトロツド48の移動に連動して該シリンダヘッド25に当接、離間し、該シリンダヘッド25、該駆動ピストン28と共に燃焼チヤンバ21を画成する第2シリンダ37と、 該主シリンダ12側面に沿って延設されて、該主リフトロツド48と該第2シリンダ37とを連結する底部トリツプ機構と、を備え、該ハウジング11の該主シリンダ12下端部付近には該燃焼チヤンバ21で生成される燃焼ガスを排出する割溝120bが形成された携帯式フアスナ打込み工具において、 一端が該第2シリンダ37に連結された3本のリフトロツド42a,42b及び42cと、該リフトロツドの他端を連結して該主リフトロツド48に当接するY字形状の鋳物部材40と、により該底部トリツプ機構を構成し、更に該主シリンダ12と該Y字形状の鋳物部材40との間であって該主シリンダ12の径方向中心位置に偏倚ばね46を設け、該底部トリツプ機構全体は該ハウジング11で覆われ、さらに、該ハウジング11は該主シリンダ12下端部付近から、該排出口よりも下方に存在して該ガイド組立体52を覆うようにし、該偏倚ばね46全体は該ハウジング11で覆われている携帯式フアスナ打込み工具。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 3.2 刊行物2 a.(第2ページ右上欄第6行?左下欄第15行) 「第1図に本発明になる一実施例を示すガス燃焼式打込機の掃気構造を示す。本機は、ガス燃焼による駆動部と駆動部を制御するための制御部と、釘を供給し発射する射出部から構成されている。具体的には、本機を保持するハウジング1から後部へ伸びたハンドル2と、ハンドル2には図示していないガスボンベからガスをガス供給口4から燃焼室6へ供給することを制御し、且つ燃焼室6内のガス混合気に着火するための点火栓5を制御するスイッチ3を備えている。釘18を打込むドライバ10と結合されたピストン9の上部には燃焼室6があり、燃焼室6の側壁は上下動により大気と開閉するスリーブ7により形成されている。スリーブ7は射出口16の先端から通常は突出しているプッシュレバ19と一体に動作するよう結合してある。また、ピストン9の上下動を案内するシリンダ11が燃焼室6の下部に設けてあり、該シリンダ11の下部には空気通路12が逆止弁13と共に配設され、更にピストン9の下死点には、ピストン9の余剰エネルギーを吸収するための弾性体でできたダンパ14が配設されている。また、シリンダ11の外側とハウジング1の内側の間には、ピストン9の下部室と空気通路12を介して連通し、ピストン9の下降により圧縮された空気を蓄積するアキュームレータ15が設けられている。本機の下部には、釘を収納、供給するマガジン17と釘18を案内し射出する射出口16が備えてある。また、本機の先端を木材等に押し当てていない時は、プッシュレバ19を下方に位置させるようなスプリング27が配設されている。」 b.(第1図) スプリング27が、シリンダ11の下部とプッシュレバ17の水平部との間であって、シリンダ11の径方向中心でない位置に設けられていることが理解される。 そこで、上記摘記事項を、技術常識を勘案しつつ、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物2には次の事項が記載されていると認められる。 「ガス燃焼式打込機において、スリーブ7に連結したプッシュレバ19の水平部とシリンダ11の下端部との間であって、該シリンダ11の径方向中心でない位置に、本機の先端を木材等に押し当てていない時は、プッシュレバ19を下方に位置させるようなスプリング27を設けること。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。) 4.対比 本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、次の通りである。 刊行物1記載の発明の「ハウジング11」が本件発明の「ハウジング」に相当することは明白であり、以下同様に、「ハンドルセクシヨン15」が「ハンドル」に、「内部通路64」が「燃料通路」に、「シリンダヘッド25」が「ヘッド部」に、「主シリンダ12」が「シリンダ」に、「ガイド組立体52」が「ノーズ」に、「マガジン組立体16」が「マガジン」に、「主リフトロツド48」が「プッシュロッド」に、「駆動ピストン28」が「ピストン」に、「燃焼チヤンバ21」が「燃焼室」に、「第2シリンダ37」が「燃焼室枠」に、「底部トリツプ機構」が「連結ユニット」に、「割溝120b」が「排出口」に、「偏倚ばね46」が「付勢部材」に、それぞれ相当することは明白であるから、刊行物1記載の発明の「ピストン下の室」と「ピストン上の室」は本件発明の「シリンダ内ピストン下室」と「シリンダ内ピストン上室」に、同様に「3本のリフトロツド42a,42b及び42c」は「少なくとも2個のアーム部」に、「Y字形状鋳物40」は「コネクタ部」に、それぞれ相当するということができる。 後者の「携帯式フアスナ打込み工具」は、摘記事項aに示されるように、燃料及び空気の混合物の燃焼によって生ずる圧力を動力とするフアスナ打込み工具であるから、前者同様、「燃焼式動力工具」と呼ぶことが出来るものである。 また、刊行物1記載の発明の「偏倚ばね46」と本件発明の「付勢部材」とは、ともに「シリンダ」と「コネクタ部」との間に設けられるものであり、刊行物1記載の発明の「ハウジング11」と本件発明の「ハウジング」とは、ともに「排出口」の下方まで延びて「ノーズ部」の反マガジン側を含む少なくとも一部と「付勢部材全体」を覆うものである。 したがって、刊行物1記載の発明と本件発明とは、以下の諸点で一致及び相違すると認める。 <一致点> 「ハウジングと、 該ハウジングの側部から延設されたハンドルと、 該ハウジングの一端近傍に設けられ、燃料通路が形成されたヘッド部と、 該ハウジング内に固定して設けられたシリンダと、 該シリンダ下端部から下方に延設されるノーズと、 該ハンドルの下方に設けられ、該ノーズに釘を供給するマガジンと、 該ノーズに沿って設けられ工作物への押圧時に移動可能なプッシュレバーと、 該シリンダの軸方向に該シリンダに対して往復摺動可能であり、該シリンダをシリンダ内ピストン下室とピストン上室とに画成するピストンと、 該ハウジング内において移動可能に案内され、該プッシュレバーの移動に連動して該ヘッド部に当接、離間し、該ヘッド部、該ピストンと共に燃焼室を画成する燃焼室枠と、 該シリンダ側面に沿って延設されて、該プッシュレバーと該燃焼室枠とを連結する連結ユニットと、を備え、該ハウジングの該シリンダ下端部付近には該燃焼室で生成される燃焼ガスを排出する排出口が形成された燃焼式動力工具において、 一端が該燃焼室枠に連結された少なくとも2個のアーム部と、該アーム部の他端を連結して該プッシュレバーに当接するコネクタ部と、により該連結ユニットを構成し、更に該シリンダと該コネクタ部との間に付勢部材を設け、該連結ユニット全体は該ハウジングで覆われ、さらに、該ハウジングは該シリンダ下端部付近から、該排出口よりも下方まで延びて該ノーズ部の反マガジン側を含む少なくとも一部と付勢部材全体とを覆うようにしている燃焼式動力工具。」である点。 <相違点1> 付勢部材が、前者ではシリンダとコネクタ部との間であって該シリンダの径方向中心でない位置に設けられるのに対し、後者では該シリンダの径方向中心位置に設けられる点。 <相違点2> ハウジングが、前者ではシリンダ下端部付近から排出口よりも下方に延設されてノーズ部の反マガジン側の一部を覆うようにし、付勢部材全体がハウジングの下方に延設された部分で覆われているのに対し、後者ではハウジングの下方がノーズ部と付勢部材全体を覆う点。 5.当審の判断 以下、上記各相違点について検討する。 5.1 <相違点1>について 刊行物2記載の事項における「ガス燃焼式打込機」が本件発明と同様な燃焼式動力工具であり、刊行物2記載の事項の「スリーブ7」、「プッシュレバ19」、「シリンダ11」が、本件発明の「燃焼室枠」、「連結ユニット」、「シリンダ」にそれぞれ相当することは明白であるから、刊行物2記載の事項の「プッシュレバ19の水平部」及び「スプリング27」は本件発明の「コネクタ部」及び「付勢部材」にそれぞれ相当する。 したがって、刊行物2には「付勢部材を、シリンダとコネクタ部との間であって該シリンダの径方向中心でない位置に設けること。」が記載されているということができる。 刊行物2記載の事項は刊行物1記載の発明と同様、燃焼式動力工具に関するものであるから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して、付勢部材をシリンダとコネクタ部との間であって該シリンダの径方向中心でない位置に設け、<相違点1>に係る発明特定事項を本件発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るものであり、また、そのような構成とすることを妨げる要因は存在しない。 5.2 <相違点2>について 刊行物1記載の発明のように、ハウジングを排出口よりも下方に存在する長さとしてノーズ部全体と付勢部材全体を覆うようにする代わりに、本件発明のように、ハウジングをシリンダ下端部付近から排出口よりも下方に延設して、延設部でノーズ部の反マガジン側の一部と付勢部材全体を覆うようにすることは、全体を覆う構成に代えて必要な部分のみを覆うように変更することであって、例示するまでもなく従来より周知かつ慣用の事項であるから、当業者が容易になし得る設計の変更にすぎない。 なお、上記<相違点2>に関して、請求人は平成23年2月14日付意見書において、以下のような主張をしている。 「本発明では、上記の場所に付勢部材を配置することによって作業者が付勢部材等に接触することがあり、これを防止するために、ハウジングを下方のノーズ部位置まで延設しています。これに対して刊行物1では、偏倚ばね46が主シリンダ12とガイド組立体52との間であって主シリンダ12の径方向中心に位置することにより、ハウジングで偏倚ばね46を覆わなくても作業者が偏倚ばね46に接触することは防がれています。従いまして、刊行物1に付勢部材をハウジングで覆うという技術思想は存在せず、これを刊行物2に組合わせることは、当業者が容易に想到できることではないと思料します。 従いまして、排気によって熱くなる付勢部材を覆うために、ハウジングの下部を下方に延設した構成は、これら刊行物1及び2から、容易に想到できるものでありません。」 しかしながら、刊行物1記載の発明では当初から付勢部材全体がハウジングで覆われており、付勢部材をシリンダの半径方向中心位置から中心でない位置に移設するにあたって、ハウジングによる覆いを除くべき理由は何ら見当たらないから、上記主張は理由がなく、採用することはできない。 5.3 本件発明の作用効果について 本件発明の作用効果について検討しても、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項それぞれの作用効果に基づいて普通に予測される域を超える、格別のものを見出すことはできない。 したがって、本件発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない ものであるから、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2011-03-07 |
結審通知日 | 2011-03-10 |
審決日 | 2011-03-23 |
出願番号 | 特願2004-23117(P2004-23117) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B25C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 卓行 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
豊原 邦雄 所村 美和 |
発明の名称 | 燃焼式動力工具 |
代理人 | 市川 朗子 |
代理人 | 小泉 伸 |
代理人 | 北澤 一浩 |