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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23C
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A23C
審判 全部無効 2項進歩性  A23C
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A23C
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A23C
管理番号 1236783
審判番号 無効2007-800027  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-02-14 
確定日 2011-03-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3748266号「食品類を内包した白カビチーズ製品及びその製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成21年 9月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1ないし2に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成21年(行ケ)第10353号、平成22年 9月30日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許無効審判被請求人雪印乳業株式会社は,下記1記載の特許の特許権者であり,その経緯概要は下記2のとおりである。

1.特許第3748266号「食品類を内包した白カビチーズ製品及びその製造方法」
特許出願 平成15年12月19日
出願番号 特願2003-422837
設定登録 平成17年12月 9日

2.平成19年 2月14日 無効審判請求 請求項1-4
(無効2007-800027号)
請求人:明治乳業株式会社
平成19年 5月 7日 被請求人より答弁書提出
平成19年 7月 2日 請求人より上申書提出
平成19年 8月23日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
被請求人より口頭審理陳述要領書
被請求人から口頭審理陳述要領書(2)提出
口頭審理
平成19年 9月14日 請求人より上申書提出
被請求人より上申書提出
平成19年12月14日 第一次審決(請求成立)
平成20年 3月10日 第一次審決取消請求
(平成20年(行ケ)第10039号)
平成20年 3月14日 訂正審判請求
(訂正2008-390028号)
平成20年 4月 7日 知的財産高等裁判所において,
特許法第181条第2項の規定による審決の
取消しの決定
平成20年 4月15日 訂正請求のための期間指定通知
(指定期間内に訂正請求がされなかったため,
訂正2008-390028号に添付された
訂正した明細書及び特許請求の範囲に関し,
特許法134条の3第5項の規定に基づき,
同条第3項の規定により援用した同条第1項
の訂正の請求がされたものとみなされた。)
平成20年 6月20日 請求人より弁駁書提出
平成20年 8月 8日 請求人より上申書提出
平成20年 9月 4日 請求人より上申書提出
平成20年 9月11日 審判請求書の請求の理由の補正許可の決定
平成20年10月16日 被請求人より答弁書提出
被請求人より訂正請求書提出
平成20年11月19日 訂正拒絶理由
平成20年12月17日 被請求人より意見書提出
平成21年 2月24日 第二次審決(訂正を認めない。特許無効。)
平成21年 4月 3日 第二次審決取消請求
(平成21年(行ケ)第10091号)
平成21年 5月20日 訂正審判請求
(訂正2009-390069号)
平成21年 6月 5日 知的財産高等裁判所において,
特許法第181条第2項の規定による審決の
取消しの決定
平成21年 6月10日 訂正請求のための期間指定通知
(指定期間内に訂正請求がされなかったため,
訂正2009-390069号に添付された
訂正した明細書及び特許請求の範囲に関し,
特許法134条の3第5項の規定に基づき,
同条第3項の規定により援用した同条第1項
の訂正の請求がされたものとみなされた。)
平成21年 8月28日 被請求人より上申書提出
平成21年 9月25日 第三次審決(訂正を認める。特許無効。)

上記第三次審決に対し,審決の取り消しを求め,知的財産高等裁判所に出訴され,平成21年(行ケ)第10353号事件として審理された結果,平成22年9月30日に「特許庁が無効2007-800027号事件について,平成21年9月25日にした審決を取り消す。」との判決がなされたものである。
なお,平成21年9月25日にした審決のうち,平成21年6月25日付け訂正請求において,特許請求の範囲についてする訂正のうち,訂正前の請求項2,請求項4を削除する訂正を認めた部分は,平成21年10月7日の審決の送達とともに確定したものである。

第2.訂正の可否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
請求項1に「成型されたチーズカード」とあるのを,「成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカード」と訂正する。

(2)訂正事項2
請求項1に「食品類をはさんだ」とあるのを,「香辛料を均一にはさんだ」と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項1に「一体化させることにより得られる」とあるのを,「,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することにより得られる,結着部分からのチーズの漏れがない,」と訂正する。

(4)訂正事項4
請求項1に「食品類を内包」とあるのを,「香辛料を内包」と訂正する。

(5)訂正事項5
請求項1に「白カビチーズ製品」とあるのを,「カマンベールチーズ製品」と訂正する。

(6)訂正事項6
請求項2を削除する。
この訂正事項は,第1.において既に述べたとおり,平成21年10月7日の審決の送達とともに確定した。

(7)訂正事項7
請求項3に「成型されたチーズカード」とあるのを,「成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカード」と訂正する。

(8)訂正事項8
請求項3に「食品類をはさみ」とあるのを,「香辛料を均一にはさみ」と訂正する。

(9)訂正事項9
請求項3に「一体化させることを特徴とする」とあるのを,「,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することを特徴とする,結着部分からのチーズの漏れがない,」と訂正する。

(10)訂正事項10
請求項3に「食品類を内包」とあるのを,「香辛料を内包」と訂正する。

(11)訂正事項11
請求項3に「白カビチーズ製品」とあるのを,「カマンベールチーズ製品」と訂正する。

(12)訂正事項12
請求項4を削除するとともに,請求項3の請求項番号を請求項2と訂正する。
この訂正事項は,第1.において既に述べたとおり,平成21年10月7日の審決の送達とともに確定した。

(13)訂正事項13
段落【0004】の「本発明者らは,上記の課題を解決するために白カビチーズに食品類を内包する方法を検討した結果,成型したチーズカードの間に食品類をはさみ,熟成させることにより,チーズの結着が強固で,型崩れや食品の漏れのない白カビチーズ製品が得られることを見出し,本発明を完成するに至った。また,熟成の後に加熱することにより,チーズの結着をより強固にすることができることも見出した。
すなわち,本発明は,成型されたチーズカードの間に食品類をはさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて一体化させることにより得られる食品類を内包した白カビチーズ製品である。
本発明はまた,白カビチーズが,カマンベールチーズである前記白カビチーズ製品である。
本発明はまた,成型されたチーズカードの間に食品類をはさみ,前記チーズカードを熟成させて結着させて一体化させることを特徴とする食品類を内包した白カビチーズ製品の製造方法である。
本発明はまた,熟成の後,加熱することを特徴とする前記白カビチーズ製品の製造方法である。」とあるのを,
「本発明者らは,上記の課題を解決するために白カビチーズに食品類を内包する方法を検討した結果,成型したチーズカードの間に食品類をはさみ,熟成させることにより,チーズの結着が強固で,型崩れや食品の漏れのない白カビチーズ製品が得られることを見出し,本発明を完成するに至った。また,熟成の後に加熱することにより,チーズの結着をより強固にすることができることも見出した。
すなわち,本発明は,成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することにより得られる,結着部分からのチーズの漏れがない,香辛料を内包したカマンベールチーズ製品である。
本発明はまた,成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさみ,前記チーズカードを結着するように熟成させることにより,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することを特徴とする,結着部分からのチーズの漏れがない,香辛料を内包したカマンベールチーズ製品の製造方法である。」と訂正する。

2.訂正の可否に対する判断
第1.2.において既に述べたとおり,訂正前の請求項2,請求項4を削除する訂正を認めた部分,つまり訂正事項6及び12は,平成21年10月7日の審決の送達とともに確定したものである。
上記訂正事項1-5,7-11及び13は,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は,変更するものではない。
したがって,この訂正は,特許法第134条の2ただし書き,及び,同条第5項において準用する同法第126条第3及び4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第3.当事者の主張
本件事件において,平成20年3月14日付でなされた訂正請求は,その後,取り下げられたものとみなされた。その訂正明細書の請求項2に係る発明は,上記「第2」で訂正を認めた訂正後の請求項1と比較して,「加熱する」工程及び「結着部分からのチーズの漏れがない」点についての特定がされていないものである。また,同じく平成20年3月14日付でなされた訂正請求に添付された訂正明細書の請求項4に係る発明は,上記「第2」で訂正を認めた訂正後の請求項2と比較して,「結着部分からのチーズの漏れがない」点及び白カビチーズが「カマンベール」であることについての特定がされていないものである。

1.請求人の主張
請求人は,「特許第3748266号の請求項1から4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,証拠方法として,以下の甲第1乃至11号証を提出し,特許されたときの明細書及び特許請求の範囲に記載された請求項2及び4に係る発明(以下,「本件発明2」及び「本件発明4」という。)に対して,

(1)本件発明2は,甲第1号証に実質的に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり,また,甲第1並びに2若しくは3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,さらに,甲第2及び3号証それぞれに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり,

(2)本件発明4は,甲第1-3号証それぞれに実質的に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり,また,甲第1-3号証それぞれに記載された発明,及び,甲第4-6号証それぞれに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,

特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである旨を主張している。

そして,平成20年9月4日付上申書により補正された,審判請求書の請求の理由において,平成20年3月14日付でなされた訂正請求に添付された訂正明細書の請求項2及び4に対して,

(1)請求項2に係る発明は,当業者が,本件出願前に頒布された甲第1号証に開示された発明に,公知の構成(甲第3号証や甲第10号証など)を組み合わせて容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,また,本件出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,さらに,甲第2号証に開示された発明に,公知の構成(甲第3号証や甲第10号証など)を組み合わせて容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,

(2)請求項4に係る発明は,本件出願前に頒布された甲第1,4及び6号証の記載,並びに,公知の構成(甲第3号証や甲第10号証など)を組み合わせて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,また,本件出願前に頒布された甲第2,4及び6号証の記載,並びに,公知の構成(甲第3号証や甲第10号証など)を組み合わせて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,

(3)請求項2及び4に係る発明は,発明の範囲が不明瞭であるから,
(ここで,請求人は条文を明示していないものの,「発明の範囲が不明瞭である」という主張及び下記「特許法第123条第1項第4号」との記載から,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨を主張していると認める)

特許法第123条第1項第2号及び第4号の規定により無効とすべきである旨を主張している。

甲第1号証:"LA CUISINE DE MAX" Perron社(1992年11月23日)
表紙,第180-181頁,第224頁,裏表紙
甲第1号証の1:甲第1号証の抄訳
甲第1号証の2:"LA CUISINE DE MAX" Perron社(1992年11月23日)
第181頁
甲第2号証:実願平4-26111号(実開平5-76292号)の
CD-ROM
甲第3号証:NHK出版 編「国産ナチュラルチーズ図鑑 生産地域別
ナチュラルチーズガイド」
日本放送出版協会(2000年3月30日)第28-29頁,奥付
甲第4号証:「国産ナチュラルチーズ製造技術標準化マニュアル
第3集 より優れた品質を求めて」
財団法人 蔵王酪農センター(平成5年度発行)
表紙,第1-33頁,奥付
甲第5号証:林 弘通 編監修
「実務必携 乳業技術綜典 諸図表計算(上巻)」
酪農技術普及学会(1977年8月1日)
表紙,第5-8頁,第159-160頁,第479頁(奥付)
甲第6号証:中澤 勇二 外編「新説チーズ科学」食品資材研究会
(1989年9月1日)
表紙,目次,第107-115頁,第330-334頁,奥付
甲第7号証:特許第3196161号公報
甲第8号証:平成19年8月7日付実験成績証明書
甲第9号証:Christian Teubner 著 "The Cheese Bible"
PENGUIN STUDIO社(1998年)
表紙,第72頁,奥付
甲第10号証:米国特許第4588597号明細書
甲第10号証の1:甲第10号証の抄訳
甲第11号証:特許第3370815号公報

2.被請求人の主張
一方,被請求人は,証拠方法として乙第1乃至5号証を提出し,また,特許法134条の3第5項の規定に基づき,同条第3項の規定により援用した同条第1項の訂正の請求がされたものとみなされた平成21年5月21日付の訂正審判の請求書において甲第7号証乃至9号証(本件無効審判事件において,請求人が提出した甲第7号証乃至9号証とは異なる証拠であり,以下「訂正甲第7号証」等という。)を提出し,請求人の提出した証拠方法によっては,本件特許を無効にすることができないと主張している。

乙第1号証:"LA CUISINE DE MAX" Perron社(1992年11月23日)
表紙,第180-181頁,第224頁,裏表紙の全訳
(甲第1号証の全訳)
乙第2号証:「ブリー・ドゥ・ムラン Brie de Melun (A.O.C.)
フェルミエ」
[online] moitie-moitie/388226/398472/436681/>
乙第2号証の1:「Say Cheese! ブリーチーズとカマンベールチーズ」
[online] cheeseforum/fbc.htm>
乙第2号証の2:乙第2号証及び乙第2号証の1のURLを示した書面
乙第3号証:トリュフ入りクーロミエ(Coulommiers)の写真
乙第4号証:特開2007-20536号公報
乙第5号証:「チーズができるまで」
[online][retrieved on 2007-08-29]
column/columnfile/dekirumade005.html>
訂正甲第7号証:2009年5月12日付実験成績証明書
訂正甲第8号証:Cheese Chemistry, Physics and Microbiology, Third edition (2004年)
表紙,目次,第157-160頁
訂正甲第8号証の1:訂正甲第8号証の抄訳
訂正甲第9号証:"USFDA/CFSAN-Approximate pH of Food and Food Products"
[online]

第4.本件訂正発明
本件訂正発明1及び2は,訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することにより得られる,結着部分からのチーズの漏れがない,香辛料を内包したカマンベールチーズ製品。

【請求項2】
成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさみ,前記チーズカードを結着するように熟成させることにより,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することを特徴とする,結着部分からのチーズの漏れがない,香辛料を内包したカマンベールチーズ製品の製造方法。」

第5.甲号証の記載事項
甲第1号証,甲第1号証の2,並びに,甲第2,3,4,6,8及び10号証には,以下の事項が記載されている。

甲第1号証:
(1-1)「トリュフ入りブリーチーズ
15人分以上の分量
しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ(ムラン) 1個
上質な生トリュフ 3個から4個
トリュフの絞り汁 1デシリットル」(第180頁左欄第2-6行)

(1-2)「これは簡単でおいしいが,費用がかかるレシピである。
大型のナイフを使って,チーズの厚みを半分に切る。2つに切ったものを,それぞれ外皮を下にしてテーブルに置く。よくしみ込むようにあらかじめフォークで穴を開けた中身の方に,トリュフの絞り汁をかける。
トリュフをごく薄く切り,ブリーチーズの片方にのせる。
チーズを元の形に戻し,涼しい場所に置いて熟成させる。2週間から3週間待つ。
食卓に出すときは,ブリーチーズを適当な大きさに切り,トリュフドレッシングで香りをつけたミックスサラダを添えて供する。」(第180頁右欄第1-11行)

(1-3)適当な大きさに切られたブリーチーズの写真。(第181頁)

甲第1号証の2:(甲第1号証第181頁をより鮮明に提示したもの)
(1-4)適当な大きさに縦方向に切られ,所定の厚みを有するトリュフが上下の中間層にはさまれており,該中間層におけるトリュフの存在しない部位において,上下のチーズ間に明確な空間の存在が認められないブリーチーズの写真。(第181頁)

甲第2号証:
(2-1)「一口大の球形の白カビ生育チーズをゴルフボール様の凸凹のある半球状容器に入れ,さらに同形容器で蓋を被せることにより,チーズ表面に容易に凹みを形成でき,ゴルフボール状の白カビチーズが得られる。なお,このチーズの中に芯として他の種類のチーズや,餡などを入れてもよい。」(【0008】)

(2-2)「カマンベールチーズの製造方法に準じて得られたカードを,直径3cmの半球形モールドに詰めた後,このモールド同士を合わせて球形に成形して,型からカードを抜いた。次いで常法に従って白カビの胞子を噴霧して発酵室(20℃,湿度90%RH)で発育させた。得られた球形の白カビ成育チーズを,ゴルフボールのディンプル状の凸凹処理を施した半球状のプラスティック容器に入れ,同様の形状の容器で蓋をして成形する。そうするとチーズ表面の白カビ部分に凸凹ができ,ゴルフボール様となった。2週間発酵させ適熟させた。更に,中のチーズが液状化するまで約1ケ月発酵させ,熟成を進ませた。」(【0011】)

(2-3)「〔発酵3週目のチーズの性状〕
対照として常法によって得られた円盤形125gのカマンベールチーズを楔形に8等分に切って皿に盛りつけた。一方,上述によって得られた発酵3週目のゴルフボール様白カビ生育チーズは一口大であることからそのまま皿に乗せた。
いずれも,室温24℃で30分間放置したところ,通常のカマンベールチーズは中のチーズが流れ出て,外観を著しく損ねるものとなった。更に,食べるときはチーズで手が汚れ,また,流れ出たチーズは皿に付着して無駄が出た。なおかつ,外観を著しく損ねたことによって食欲も減退した。
一方,ゴルフボール状白カビ生育チーズは一口大であることから切る手間も全く必要とせず,外観は白くきれいで,中のチーズで手を汚すこともなく,しかも食器に全く付着しないので,無駄なく食べることができた。
〔発酵1カ月目のチーズの性状〕
1ケ月発酵させて得られたゴルフボール状白カビ生育チーズを切ったところ,中のチーズは液状化していたが,一口大であることから,切る必要がなく,手を汚さず,しかも,食器に全く食器に付着することがなく,無駄なく食べることができた。」(【0011】-【0012】)

甲第3号証:
(3-1)「1.足寄カマンベールチーズ(熟成3週間)
エーデル・ケーゼが建つ以前から町でつくられていたため,『あしょろのカマン』と知る人は多い。」(第29頁第1-3行)

(3-2)「2.グリーンカマンベールチーズ(熟成3週間)
カマンベールチーズの中にグリーンペッパーを粒ごと入れたもので,ほかでは見られないオリジナル品。グリーンペッパーの歯ごたえと香りが『あしょろのカマン』とよくマッチ。」(第29頁第7-10行)

(3-3)「3.オンネトーブルー(熟成3週間)
表面に白カビ,中心に青カビを植え付けて熟成させたチーズ。町内にある湖,「オンネトー湖」の名前をとって命名。(第29頁第11-13行)

(3-4)約1/4が切り取られ,断面が露出した2.グリーンカマンベールチーズ及び3.オンネトーブルーの写真。(第29頁)

甲第4号証:
(4-1)「16 一次熟成
カビを噴霧したチーズをステンレスの網状トレイに並べ,温度12?14℃,湿度95?98%を保った室内で9?12日間,熟成させます。
カビは熟成5日目頃からチーズ表面に発生してきます。」(第31頁第8-12行)

(4-2)「17 包装
一次熟成を終えたチーズは,二次熟成に適した包材で包装します。」(第32頁第5-7行)

(4-3)「18 二次熟成
包装したチーズを,温度8?10℃,湿度90%程度の室内で,二次熟成させます。
カマンベールチーズの熟成は,カビが生成する酵素の作用で外側から内側へと進行します。熟成が進むにつれチーズのpHは高まり,内部の白く硬い芯が徐々に消えて,包装後約5週間で完熟となります。」(第32頁第14-20行)

(4-4)「(19 殺菌・冷蔵)
熟成したカマンベールチーズを殺菌することによって保存性を高めることができます。殺菌したチーズは冷蔵します。
現在日本で販売されているカマンベールチーズの大部分は加熱殺菌されたものです。適度な熟成度のチーズを金属缶または合成樹脂容器に入れて密封し,温度80-120℃で殺菌します。これにより,本来は製造後6-8週間が限度とされるカマンベールチーズの保存性が6-12カ月まで高まります。」(第33頁第1-8行)

甲第6号証:
(5-1)「熟成 チーズは18℃湿度70?80%で2日間乾燥する。それから表面にカビが発育するよう12?13℃湿度90?95%で熟成する。熟成期間21?35日。
包装 完全なチーズは耐油性紙かワックス紙に包んで紙か木の箱に入れる。チーズのカットもの(1/8,1/6,1/2)はアルミ箔かプラスチックフィルムかワックス紙で包み,紙か木の箱に入れる。包装チーズは市場に出回るまで4℃で保存する。」(第109頁第1-5行)

(5-2)「現在では熟成後容器に入れて80-120℃の加熱殺菌をして酵素や微生物を殆ど失活,死滅させて保存性を高める(数カ月)方法もとられている。日本のカマンベールは輸入品も,国産品もこのタイプが多い。」(第115頁左欄第43行-右欄第3行)
甲第8号証:
(6-1)「【実験の目的】
甲1号証および甲2号証記載のチーズの結着状態を確認する。
【甲1号証:トリュフ入りブリーチーズ】
方法 材料 ブリーチーズ(ムラン産)1個(直径約25cm×厚み約3cm)しっかりと弾力あり(まだ熟成していない)フランス国から空輸
トリュフ 3個(冷凍品)
7月24日にムラン産ブリーチーズを,大きめの包丁(刃渡り26cm)を用いて,チーズの厚みのほぼ1/2の高さで略水平に2つの円盤状に切断した。半分になった2つの円盤状チーズカードを,カビの生育した皮の方を下にして台上に置いた。チーズカードのカビの生えていない柔らかい側をフォークで刺突した。この穿孔部分にトリュフジュースをかけて,カードに染み込ませた。一方の円盤状カードの切断面の上に,薄切り(約1mm程度)にしたトリュフを配置した。トリュフを配置したカードに,もう一方のカードを,切断前のもとの形と同じになるように載せた。ステンレス製の箱(縦35cm×横52cm×高さ8cm)に入れ,涼しい場所(15℃の恒温室)にて熟成を開始した。
結果8月7日(2週間経過)の段階で,上下カードは結着しており,熟成により一体化していた(図1?3)。」(第2頁第1-18行)

甲第10号証:
(7-1)「巻いたチーズ及び巻いたチーズの製造方法を記す。本チーズはハーブなどの香味物で被覆された新鮮なチーズカードの層からなり,チーズカードはらせん状に巻かれている。本新鮮チーズカードは加熱も混捏もされておらず,出来た巻きチーズはおのおのが明瞭に異なる風味を持つ2つの異なる層を持つ。」(要約)

(7-2)「「被覆」の語については,この被覆は薄くて均一であることが望ましい。とはいえ,多少とも分厚い小片に砕かれた香味物の層や床の可能性を排除するものでなく,さらに,個別の小片の床であってもよい。」(第2欄第6-10行)

(7-3)「最後に製造物を型から取りだして加塩する。同時に,細かいハーブの被覆をカード層の片面上に広げて殺菌マットをこの側に置き,製造物全体をひっくり返してもう一方の面に別の細かいハーブ層を広げる。細かいハーブ約20gを載せる。カードの乾物含量は重量で37%である。カードはマットを用いてスイスロールのように巻き上げる(図4)。5?7℃の冷蔵庫中で完全に排液する。翌日チーズをポリスチレンのシート上に置き,ポリ塩化ビニルの熱収縮フィルムに包む。」(第2欄第60行?第3欄第5行)

(7-4)「約60%の乳清が排出され,カード粒子を約30℃の薄く加塩した水で洗浄する。製造物を型入れし,前述の実施例のように巻き上げる。ただし巻き上げは排液速度に応じて型入れ3時間後に行う。巻き上げ時の固体含量は38%である。翌日製造物を,塩水中に30分間漬けて加塩する。塩水の密度は1200である。次に製造物にペニシリウム キャンディダムを噴霧する。その後チーズは前述の実施例のように包装される。このようにしてスイスロールに似た,可溶化したカードを持つチーズが得られる。」(第3欄第36-49行)

第6.甲第1号証に基づいた当審の判断
次に,甲第1号証に基づいた当審の判断を述べる。
なお,以下に述べる相違点(b)及び(e)についての判断は,平成21年(行ケ)第10353号の確定判決(平成22年9月30日言渡)の拘束力に従ったものである。

1.本件訂正発明1の進歩性について
摘記事項(1-1)及び(1-2)から,甲第1号証には,「しっかりと硬いまだ熟成していないムラン産ブリーチーズの厚みを半分に切り,その切断面にトリュフの絞り汁をかけ,かつ,トリュフをのせた後,チーズを元の形に戻し,涼しい場所に置いて2-3週間熟成させることにより得られる,トリュフ入りブリーチーズ」が記載されているといえる。
そして,摘記事項(1-1)及び(1-2)のように,完全には熟成していないブリーチーズを重ねて2-3週間熟成させれば,該ブリーチーズの中身部分は熟成の進展により徐々に軟化して最終的には溶融するものであるから,上下のチーズがある程度溶融して結びついた状態になると解するのが自然である。このことは,もし甲第1号証に記載された上下のチーズが溶融しないのであれば,所定の厚みを有するトリュフの近傍においては,チーズ間に空間が形成,維持されると考えられるところ,摘記事項(1-4)のように,その写真において,上下のチーズ間に明確な空間の存在が認められないことによっても裏付けられる。したがって,甲第1号証に記載された「トリュフ入りブリーチーズ」は,トリュフがはさまれている部分が,熟成の結果,ある程度溶融して結びついた状態にあるといえる。
また,「カマンベールチーズ」及び「ブリーチーズ」が,いずれも「白カビチーズ」であることは,本件出願前から,当業者に周知のことである。

ここで,本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明(以下,「甲号証発明1」という。)とを対比すると,甲号証発明1の「しっかりと硬いまだ熟成していないムラン産ブリーチーズ」及び「トリュフ入りブリーチーズ」は,本件訂正発明1の「成型されたチーズカード」及び「チーズ製品」にそれぞれ相当する。また,甲号証発明1の「しっかりと硬いまだ熟成していないムラン産ブリーチーズの厚みを半分に切り,その切断面に・・・トリュフをのせた後,チーズを元の形にもど」すことは,本件訂正発明1の「成型されたチーズカードの間」に食品類を「はさ」むことに相当する。してみると,両者は,「成型されたチーズカードの間に食品類をはさんだ後,前記チーズカードを熟成させて得られる白カビチーズ製品」である点で一致するものの,
(a)チーズカードが,本件訂正発明1は「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるのに対し,甲号証発明1はその旨が特定されていない点,
(b)本件訂正発明1は「チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」て得られる状態にあるものであるのに対し,甲号証発明1は,チーズカードを「涼しい場所に置いて2-3週間熟成させることにより」得られるものではあるものの,該チーズカードが結着している旨,及び,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化されたものである旨が特定されていない点,
(c)食品類を,本件訂正発明1は,「均一にはさんだ」もので,かつ,「内包」するものであるのに対し,甲号証発明1は,その旨が特定されていない点,
(d)食品類が,本件訂正発明1は「香辛料」であるのに対し,甲号証発明1は「トリュフ」である点
(e)本件訂正発明1が,一体化させた後に,「加熱する」ことにより得られるものであり,「結着部分からのチーズの漏れがない」チーズ製品であるのに対し,甲号証発明1は,その旨が特定されていない点
(f)白カビチーズが,本件訂正発明1ではカマンベールチーズであるのに対し,甲号証発明1ではブリーチーズである点
で相違する。
そこで,これらの相違点について以下で検討する。

(1)相違点(a)について
ア.当審の判断
摘記事項(1-1)-(1-4)からみて,甲第1号証は,ブリーチーズ自体の製造方法を記載したものではなく,ブリーチーズを材料の一つに用いた「トリュフ入りブリーチーズ」を製造するためのレシピを記載したものであるから,該ブリーチーズは市販のものなどを利用するといえ,そうであれば,例え,甲号証発明1で用いるブリーチーズについて「しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ(ムラン)」と記載されているとしても,それは,熟成が開始されておらず,白カビが生えていない,未だブリーチーズとしての体をなしていないものを意味するのではなく,ブリーチーズとしての体をなしている,つまり,表面にカビが生育して白カビチーズとなってはいるものの,その熟成が始まったばかりで熟成度が若いものと解するのが相当である。
そして,そうである以上,甲号証発明1のチーズカードも「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるといえ,この点は,実質的な相違点ではない。

イ.被請求人の主張
平成20年10月16日付答弁書(2)において,被請求人は,甲号証発明1のブリーチーズは「しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ(ムラン)」であり,本件訂正発明1のように熟成が開始されてカビが生育するまで発酵されたチーズカードとは相違する旨主張する(第9頁)。
しかし,上述したとおり,甲号証発明1の「しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ(ムラン)」は,表面にカビが生育して白カビチーズとなってはいるものの,その熟成が始まったばかりで熟成度が若いものと解するのが相当であり,上記主張は妥当ではない。

(2)相違点(b)について
ア.当審の判断
本件訂正発明1において,「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」ることは,本件訂正発明1が「結着部分からのチーズの漏れがない」ものであることから,結着面の外周側面及び内部において分離せずに一体となった状態にあることを指すと解される。
摘記事項(4-1)-(4-3)及び(5-1)からみて,甲第4ないし6号証には,チーズの表面全体にカビが生育するのは一次熟成の段階であり,カビが生成する酵素の作用で外側から内側へと熟成が進行するのは,二次熟成であって,チーズを包材で包装するのは,一次熟成終了より早い段階のものではあり得ないから,「ブリーチーズ」として市場に流通される製品は,一次熟成終了後のものであると認められる。他方,甲第1号証は,料理レシピであって,一般的な流通経路で入手できる材料を使用することを前提に記載されていると解するのが相当であるから,甲号証発明1において,「しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ」とは,一般に流通可能な状態となった一次熟成終了後のチーズを指し,「しっかりと硬い(まだ熟成していない)ブリーチーズ」を,「ナイフを使って,チーズの厚みを半分に切」り,「トリュフをごく薄く切り,ブリーチーズの片方にのせ」,「チーズを元の形に戻し,涼しい場所に置いて熟成させる。2週間から3週間待つ。」との記載における「熟成」とは,二次熟成を指すものと認めるのが相当である。
ところで,甲第1号証の2によれば,写真からは,結着面の外周側面をカビのマットが覆っている状態を確認することも,上下に切断され,トリュフをはさんだ後,元の形にもどされた上側のチーズと下側のチーズが,結着面の外周側面及び内部において分離せずに一体となった状態にあることも認めることはできない。また甲第1号証の記載によっては,ナイフでブリーチーズを半分に切って,元の形に戻した後,涼しい場所に置いて,2?3週間,二次熟成を行うだけで,上側のチーズと下側のチーズの結着面の外周側面をカビのマットが覆う状態となるまでカビが成長することは,到底考え難い。上側のチーズと下側のチーズの内部の結着面について,二次熟成の過程で内部の組織が軟化して溶融することは,可能性として考えられるが,熟成後,結着面の外周側面及び内部において分離せずに一体となった状態となることは,甲第1号証及び甲第1号証の2の記載及び画像から,読み取ることはできない。
のみならず,甲第1号証はレストラン又は家庭用の料理レシピであって,そこに記載されている,トリュフ入りブリーチーズは,料理した後に,市場に流通させることを念頭に置いたものではなく,適宜切り分けて,食卓に供されるものであるから,甲号証発明1において,熟成後,上側のチーズと下側のチーズが分離せずに一体となった状態にすることを想定していない。
以上によれば,甲号証発明1において,トリュフ入りブリーチーズが,熟成後,上下に切断され,トリュフをはさんだ後,元の形にもどされた上側のチーズと下側のチーズが,結着面の外周側面及び内部において分離せずに一体となった状態にある,との構成が開示されているものと認定することはできない。つまり,甲号証発明1は,「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」て得られる状態にあるとはいえない。
そして,他の甲号証の記載及び本件出願前の技術常識を考慮しても,甲号証発明1を,「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」て得られる状態とすることを,当業者が容易に想到し得るとはいえない。

イ.請求人の主張
これに対し,摘記事項(6-1)のとおり,請求人は,甲第8号証として,表面にカビが生育した熟成2週間のムラン産ブリーチーズを,厚さのほぼ1/2の高さで略水平に切断し,トリュフを挟んで,切断前の形と同じになるようにして,15℃の恒温室で2週間熟成させた,甲号証発明1の再現実験の結果を提出した。そして,平成19年8月23日付の口頭審理陳述要領書において,「甲第8号証から,甲第1号証に基づいてチーズ製品を製造した場合,『結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態』となっていることが示された。」と主張する(第5頁ウ(イ))。しかし,甲第8号証の記載を前提としても,甲号証発明1において,熟成後,「上側のチーズと下側のチーズとが分離せずに一体となった状態にある」ことが開示されていると理解する根拠ということはできない。

(3)相違点(c)について
ア.当審の判断
甲号証発明1の半分に切ったブリーチーズの一方にトリュフをのせる場合,わざわざチーズの周上でトリュフが外側にはみ出るように並べるよりも,チーズの周内に収まるようにトリュフを配置するのが当業者にとっては自然であるといえる。また,甲号証発明1において,内容物が見えないようにトリュフを白カビチーズの外皮からはみ出すことなく「内包」させることも,あるいは切らない状態で外側から内容物を視認できるように配置することも,当業者が想起し得る選択肢である。つまり,甲号証発明1が「トリュフを内包」している態様は,甲第1号証に明記されてはいないものの,当業者であれば,そのような態様が存在することが甲第1号証から読み取れるから,この点は,甲第1号証に記載されているに等しい事項である。
また,摘記事項(1-2)に「食卓に出すときは,ブリーチーズを適当な大きさに切」ることが記載されており,甲号証発明1の「トリュフ入りブリーチーズ」は適当な大きさに切って供されることが想定されている。そして,そうであれば,個々の断片で含まれるトリュフの量に偏りがないようにすることは当業者に自明のことであり,そのためにトリュフを均一にはさむことは当然のことであるから,甲号証発明1において,トリュフを均一にはさむことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ.被請求人の主張
ところで,被請求人は,平成19年8月23日付の口頭審理陳述要領書(2)において,「甲第1号証の2の写真は,チーズの円周部の結着部分からトリュフが突出した状態ではさまれているものを示している。」ことを根拠に,「食品類を内包していることは示されていない」旨を主張している(第3頁第13-17行)。
確かに,該写真からでは,円周部に位置するトリュフが白カビチーズの外皮から突出することなく,その全体がチーズ内に入っていると断定することはできないが,逆にトリュフが白カビチーズの外皮から明らかに突出しているということもできない。
また,摘記事項(1-2)で「トリュフをごく薄く切り,ブリーチーズの片方にのせる。」と示されているのみで,トリュフをチーズの円周部から突出させるように配置する旨の明示的な記載はないから,摘記事項(1-1)及び(1-2)に接した当業者であれば,該写真が例えトリュフが白カビチーズの外皮から突出した状態を示していたとしても,それはあくまで調理例を示したに過ぎないものであると理解でき,かつ,甲第1号証の記載から,該写真で示された態様のみならず,いろいろな態様の発明を把握できるといえる。そして,それらの態様の中に,上述したように,外観等を考慮してトリュフを内包させた態様があることは当業者にとって当然のことである。
したがって,被請求人が主張するように,該写真が「チーズの円周部の結着部分からトリュフが突出した状態ではさまれているものを示している。」ものであったとしても,甲第1号証に該態様のみが示されているとはいえない。つまり,被請求人の上記主張を参酌したとしても,甲号証発明1において,「トリュフを内包」つまり「食品類を内包」した態様は,甲第1号証に記載されているに等しい事項であるといえる。
一方,平成20年10月16日付答弁書(2)において,被請求人は「『トリュフ』をできるだけ均一に,すなわち一様にはさんだとすれば,ほとんどトリュフ間の隙間がなくなるので・・・トリュフがはさまれている部分が熟成の結果,ある程度結着するように熟成しているとする主張と矛盾する」と主張する(第10頁)。
しかし,均一あるいは一様にトリュフをはさむことは,トリュフを隙間なくしきつめるようにはさむことと同義ではなく,トリュフ同士を互いに均等に間隔が空くように分布させてはさむことをも意味しているから,上記主張は妥当ではない。

(4)相違点(d)について
ア.当審の判断
摘記事項(3-2)から,甲第3号証には,カマンベールチーズの中にグリーンペッパーを粒ごと入れた「グリーンカマンベールチーズ」が記載されている。また,摘記事項(3-1)及び(3-2)から,甲第3号証には,グリーンペッパーの歯ごたえと香りが「あしょろのカマン」つまり「足寄カマンベールチーズ」とよくマッチすることが記載されている。ここで,「カマンベールチーズ」は「ブリーチーズ」と同じ白カビチーズである。
また,摘記事項(7-1)?(7-4)から,甲第10号証には香味料を巻き込んだ後にペニシリウム キャンディダムを噴霧して製造した白カビチーズが記載されている。
これらの記載に接した当業者であれば,白カビチーズとグリーンペッパー又は香味料がよく合うことを理解できるといえるから,甲号証発明1の「ブリーチーズ」において,トリュフにかえてグリーンペッパーや香味料等の「香辛料」をはさむことは,当業者が容易に想到し得ることである。

イ.被請求人の主張
ここで,被請求人は,平成20年10月16日付答弁書(2)において,本件訂正発明1の「『香辛料を均一にはさんだ』は微細な香辛料をチーズカード上に一様に載せてはさんだことを意味している。」とし,「甲第3号証に示すグリーンカマンベールチーズは・・・グリーンペッパーを粒ごと入れたものであるから,本件訂正発明1・・・と明らかに相違する」こと,及び,「白カビチーズの組織の熟成は,pHが4.6?4.8から7以上に上昇することによって進展する。・・・したがって,pHが低い食品類を挟んだ場合には,食品類近傍で熟成の進展が阻害される可能性が考えられるため,白カビチーズの熟成を適切に進めようと考えた場合にはpHが高い食品類を挟むことを考えるのが自然である。ここで,トリュフのpHは5.3?6.5であるのに対し,香辛料であるペッパーは4.65?5.45であり,トリュフよりpHの香辛料が低い。したがって,トリュフに替えて香辛料を置き換えるのには技術的な困難性が予想され,置き換えることが容易に想到し得るとする・・・主張は誤っている」ことを主張する(第10-12頁)。
さらに,被請求人は,本件事件に係る平成21年5月20日付の訂正審判請求書において,「実際上ペッパーのpH4.65?5.45から,5.3?5.45のみのペッパーを選択することは非常に困難を伴う。」ことを主張する(第16頁第13?14行)。
しかし,香辛料が「微細」なものであることが,請求項1に記載されているわけではなく,かつ,明細書にその旨の定義等があるわけではないので,本件訂正発明1の「香辛料」を「微細」なものに限定的に解釈する根拠はない。したがって,「グリーンペッパー」が粒状のものであることを根拠とした被請求人の主張は失当である。
また,摘記事項(3-2)からみて,甲第3号証には「グリーンカマンベールチーズ」が具体的に記載されているのであるから,例え,トリュフよりもペッパーのpHが高くて白カビチーズの熟成にある程度の悪影響が事前に予測されたとしても,白カビチーズにペッパーをはさむことを大きく阻害することにはならない。しかも,被請求人の主張からみて,トリュフのpHの最小値は5.3であり,一方で,ペッパーのpHの最大値は5.45であるから,トリュフよりペッパーの方がpHが必ずしも低いわけではなく,トリュフをペッパーにかえることに特段の阻害要因はないといわざるを得ない。その際,当業者であれば,pH5.3?5.45のみのペッパーを選択するという非現実的な操作を行うよりは,例えば,はさむ香辛料の量や配置を調整したり,はさむ際に使用するチーズカードの熟成の程度を調整したり,熟成期間や熟成条件を調整したりというように,はさんだ後の白カビチーズの熟成に与える悪影響が小さくなるように製造方法を最適化すると考えるのが妥当であり,その最適化は,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして,被請求人は,平成20年10月16日付答弁書(2)において,「甲第10号証に記載の巻かれたチーズは,フレッシュチーズであるのでカードを結着するように熟成させないから,ハーブなどの調味料はフレッシュチーズカード間に,結着するように熟成させた状態ではなく単にはさまれた状態で巻かれているもので,得られたものは白カビで熟成する必要のないフレッシュチーズである。」(第7頁第26-30行)と主張し,その根拠として,「製造物にペニシリウム キャンディダム(カビスターター)が噴霧されているが,噴霧した後にその噴霧されたチーズが実施例のように包装されると記載されている。このことは,翌日チーズをポリスチレンのシート上に置き,ポリ塩化ビニルの熱収縮フィルムに包むことを意味している。製造物にペニシリウム キャンディダムを噴霧する場所が明記されていないが,製造物の両端以外の外表面だとすると,ポリ塩化ビニルのフィルムで包装されたペニシリウム キャンディダムは生育できないので,白カビチーズとはいえない。」(第7頁第4-11行),「製造物の両側面に噴霧したとしても,両端面の一部が熟成する可能性があるだけで,他の部位は熟成されないのであるから,全体としてみれば,この実施例2の巻かれたチーズは,ほとんど熟成させないフレッシュチーズ(fresh cheese)であるといえる。」(第7頁第14-18行)及び「本チーズはハーブなどの調味料で被覆されたフレッシュチーズカード(fresh cheese curd)であると明記されている。」(第7頁第24-25行)と述べ,さらに,「チーズの特性は,チーズカードの成分や性質によって大きく影響を受け,チーズカードの作り方によっては全く異なるチーズになるにもかかわらず,チーズカードにはさまれる食品として香辛料が用いられていることのみに着目して,甲第1号証および甲第10号証に記載されているチーズカードの成分や性質の違いを全く考慮に入れないで,トリュフに替えて香辛料を置き換えできるとする無効審判請求人の主張は誤っている。」(第11頁第14-19行)とも主張している。
確かに,甲第10号証には,ペニシリウム キャンディダムの噴霧後に熟成させることが明記されていない。また,「その後チーズは前述の実施例のように包装される。」と記載されるのみで,噴霧してから包装するまでの具体的な期間が明記されていない。しかし,ペニシリウム キャンディダムを噴霧している以上,カビを用いた熟成チーズの製造を目的としており,適切な熟成期間を設けていると解するのが相当である。このことは,摘記事項(7-4)の「可溶化したカードを持つチーズが得られる」という記載,つまり,カードが熟成して可溶化していると認められることによっても裏付けられる。
また,「本チーズはハーブなどの調味料で被覆されたフレッシュチーズカード(fresh cheese curd)であると明記されている。」旨の主張は,摘記事項(7-1)に基づくものであるが,摘記事項(7-1)には,巻いたチーズを製造する原料としてフレッシュチーズカードを用いることが記載されているのであって,その後熟成させることを排除しているとまでは解することができない。
よって,甲第10号証には,香味料を巻き込んでから熟成させた白カビチーズが開示されていると認められる。

(5)相違点(e)について
ア.当審の判断
甲第1号証は,甲号証発明1であるトリュフ入りブリーチーズが,2?3週間の熟成後,料理として食卓に供されることを念頭に置いた,家庭用,レストラン等の料理レシピであって,製品として市場に流通させる食品を想定したものではない。トリュフ入りブリーチーズを製品として市場に流通させる場合には,製品の輸送,保存の観点から,上側のチーズと下側のチーズの結着面の外周側面における結着の状態,程度,熟成後の加熱殺菌を考慮する必要がある。他方,甲号証発明1においては,そのような目的を考慮する必要がないことに照らすならば,上側のチーズと下側のチーズの結着面における結合の状態,程度に関する構成は,およそ開示されていると認められないことは,上記(2)で述べたとおりである。また,白カビチーズの中身は加熱により溶融する性質を有しているから,加熱によりチーズの中身が溶融しても結着部分から漏れないようにするためには,加熱しない場合に比べて,チーズの表皮をカビのマットがより強固に覆っていることが必要と考えられるところ,甲第1号証には,加熱しても結着部分からのチーズの中身の漏れがない状態のチーズを製造するための技術的事項が何ら示唆されていない。そうすると,甲号証発明1については,熟成後のチーズについて保存性を高めるための加熱殺菌処理を行うことの示唆はないというべきである。
そして,甲第1号証には,流通,販売等を目的として加熱殺菌工程を加えたとしてもなお,結着部分からのチーズの中身の漏れがない状態のチーズを製造するための解決課題及び課題解決についての技術的事項は,何ら開示されていないのであるから,甲号証発明1に基づいて,「加熱(殺菌)」してなお「結着部分からのチーズの漏れがない」との構成に至ることが容易であったとはいえない。

イ.請求人の主張
これに対し,請求人は,平成20年9月4日付の上申書において「白カビチーズにおける周知事項を適用して,熟成した白カビチーズを容器に入れて80-120℃で加熱殺菌をすることは当業者が容易に想到し得ることである。」と主張する(第30頁第3-5行)。しかし,上記ア. のとおり,甲号証発明1が,熟成後のチーズについて保存性を高めるための加熱殺菌処理を行うことを着想する示唆を欠く以上,請求人の主張を採用することはできない。

(6)相違点(f)について
ア.当審の判断
「カマンベールチーズ」が,摘記事項(1-1)及び(1-2)で示された「ブリーチーズ」と同様に「白カビチーズ」であることは,本件出願前から,当業者に周知のことであるから,甲号証発明1の「ブリーチーズ」にかえて「カマンベールチーズ」を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。

(7)被請求人のその他の主張
被請求人は,平成19年9月14日付の上申書において,乙第4号証を提示し,該乙第4号証が本件特許の公開公報の公開日の2週間後に特許出願されたものであること,及び,該乙第4号証が本件特許の公開公報を引用していることを根拠に,「白カビチーズの技術分野の当業者は,本件特許の公開公報を読むことで,風味物質をチーズカード間に挟み込み,その後の熟成によって風味物質を挟み込んだ部分が剥がれないことを認識したことは明らかで」あるから,「本件特許の出願当時には,食品類をチーズカード間に挟み込み,その後の熟成によって食品類を挟み込んだ部分が剥がれないことは,当業者に全く認識されていなかった技術事項で,それが本件特許の出願当時の技術水準で」あった旨を主張する(第2頁第3-8行)。
しかし,本件特許の公開公報が乙第4号証において先行技術として引用されているというだけで,本件特許の出願当時の技術水準が被請求人の主張するようなものであるということはできない。そして,甲第1,3,4,6及び10号証が本件出願前に頒布された刊行物であること,並びに,甲第1,3,4,6及び10号証に記載された事項が本件出願前の技術水準を形成するものであることは明らかである。

(8)まとめ
以上のとおり,上記相違点(b)及び(e)が甲第1号証の記載からは容易に想到し得ないものであるから,本件訂正発明1は,本件出願前に頒布された甲第1,3,4,6及び10号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本件訂正発明2の進歩性について
本件訂正発明2と甲第1号証に記載された発明(以下,「甲号証発明1の2」という。)とを対比すると,「1.本件訂正発明1について」で述べた甲第1号証の記載事項及び本件訂正発明の発明特定事項との対応を考慮すれば,両者は,「成型されたチーズカードの間に食品類をはさんだ後,前記チーズカードを熟成させることを特徴とする,白カビチーズ製品の製造方法」である点で一致するものの,
(a)チーズカードが,本件訂正発明2は「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるのに対し,甲号証発明1の2はその旨が特定されていない点,
(b)本件訂正発明2は「チーズカードを結着するように熟成させることにより,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」るものであるのに対し,甲号証発明1の2は,チーズカードを「涼しい場所に置いて2-3週間熟成させることにより」得られるものではあるものの,該チーズカードが結着している旨,及び,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化されたものである旨が特定されていない点,
(c)食品類を,本件訂正発明2は,「均一にはさみ」,かつ,「内包」するものであるのに対し,甲号証発明1の2は,その旨が特定されていない点,
(d)食品類が,本件訂正発明2は「香辛料」であるのに対し,甲号証発明1の2は「トリュフ」である点
(e)本件訂正発明2が,一体化させた後に,「加熱する」工程を有し,「結着部分からのチーズの漏れがない」チーズ製品の製造方法であるのに対し,甲号証発明1の2は,その旨が特定されていない点
(f)白カビチーズが,本件訂正発明2ではカマンベールチーズであるのに対して,甲号証発明1の2ではブリーチーズである点
で相違する。
これらの相違点は,前記1.に記載した,本件訂正発明1と甲号証発明1との相違点と実質的に一致している。
したがって,前記1.(1)?(7)で示したものと同様の理由により,本件訂正発明2は,本件出願前に頒布された甲第1,3,4,6及び10号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本件訂正発明1及び2の新規性について
1.及び2.で述べたとおり,本件訂正発明1及び2と,甲第1号証に記載された発明とを対比すると,相違点が見いだされるのであるから,本件訂正発明1及び2は,本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

第7.特許法第36条第6項第2号について
次に,特許法第36条第6項第2号についての当審の判断を述べる。

なお,以下に述べる「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」との記載についての判断は,平成21年(行ケ)第10353号の確定判決(平成22年9月30日言渡)の拘束力に従ったものである。

1.本件訂正発明1における「香辛料を均一にはさんだ」及び本件訂正発明2における「香辛料を均一にはさみ」について
(1)「香辛料を均一にはさんだ」と「香辛料を内包した」の関連について
請求人は,平成20年9月4日付上申書により補正された,審判請求書の請求の理由において,「被請求人は,平成19年5月7日付答弁書においてチーズの間に食品類を挟んだサンドイッチ状のものは,食品類を内包しないと主張した(答弁書6頁15行?22行)」。すなわち,被請求人の主張によれば,「香辛料を均一にはさんだ」場合,(香辛料がはみ出してしまう結果,)香辛料を内包しないとのことである。」として,本件訂正発明が「香辛料を均一にはさんだ」という発明特定事項を有しつつ,「香辛料を内包した」という発明特定事項をも有している点は矛盾している旨,主張している(上申書第7頁(4)イ及び第30-31頁6-3-7)。
しかし,請求人の指摘する平成19年5月7日付答弁書には「甲第1号証からは,チーズの間にトリュフをはさんだサンドイッチ状のものが示唆されるのみで,食品類を内包していること(構成要件(1-C))は示されていない。」と記載されている。この記載は,トリュフをはさんでいることは示されているものの,チーズがトリュフを内包しているかしていないかは示されていないということ意味しており,トリュフをはさんでいる場合は必ず,チーズはトリュフを内包してないということまでを意味しているのではないと認められる。つまり,トリュフをはさんだ上で,チーズがトリュフを内包している場合と内包してない場合があり,本件訂正発明1及び2においては,はさんだ上で内包している状態を特定していると認められるから,2つの発明特定事項が矛盾しているという請求人の主張は失当である。

(2)「香辛料を均一にはさんだ」の明りょう性について
請求人は,平成20年9月4日付上申書により補正された,審判請求書の請求の理由において,「どのような態様の場合に「香辛料を均一にはさんだ」といえるか明瞭でない。」と主張している(上申書第7頁(4)イ及び第31頁オ)。
ここで,広辞苑(第5版,1998年発行)には,「均一」は「すべてに通じて一様なこと。等しいこと。」と記載されている。このことからも,「香辛料を均一にはさんだ」という記載は,香辛料をチーズ上に一様に載せてはさんだことを意味すると解することができる。よって,「香辛料を均一にはさんだ」という記載は,明りょうである。

2.「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」について
請求項1及び請求項2における「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」との記載部分は,チーズが,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に至っていることを,ごく通常に理解されるものとして特定したというべきである。すなわち,本件訂正発明1及び本件訂正発明2のようなカマンベールチーズ製品及びその製造方法において,チーズの結着部分以外の部分であっても,仮に,一定以上の強い力を加えて引っ張れば,表皮は裂けるし,そのような強い力を加えなければ,表皮がはがれることはない。上記構成は,チーズの結着部分について,チーズの結着部分以外の部分における結着の強さと同じような状態にあることを示すために,「結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」との構成によって特定したと理解するのが合理的である。また,上記記載部分をそのように解したからといって,特許請求の範囲の記載に基づいて行動する第三者を害するおそれはないといえる。
よって,平成20年9月4日付の上申書における請求人の「結着部分を引っ張る力が規定されていないので,発明の範囲が明瞭でない。」(上申書第31頁カ)という主張は,採用できない。

3.まとめ
以上のとおりであるから,本件は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

第8.甲第2号証に基づいた当審の判断
1.本件訂正発明1の進歩性について
(1)当審の判断
摘記事項(2-1)の「・・・ゴルフボール状の白カビチーズが得られる。このチーズの中に芯として他の種類のチーズや,餡などを入れてもよい。」との記載は,ゴルフボール状の白カビチーズの中に芯として他の種類のチーズや,餡などを入れてもよいことを意味している。また,摘記事項(2-2)は,ゴルフボール状の白カビチーズの製造方法を示しているといえる。さらに,摘記事項(2-2)に示されるように,「カマンベールチーズの製造方法に準じて得られたカード」を用いて「常法に従って白カビの胞子を噴霧して発酵室(20℃,湿度90%RH)で発育させ」て得られるものであるから,ゴルフボール状の白カビチーズは,カマンベールチーズであるといえる。
ここで,甲第2号証には,摘記事項(2-2)のような白カビチーズに,摘記事項(2-1)のような他の種類のチーズ,餡等芯として入れる際の工程について特に明記はされてないが,当業者にとっては,カードが半球状であって球形に成形される前の段階で,他の種類のチーズ,餡等を入れて,その後球形に成形するのが最も自然な発想であるといえる。
してみると,摘記事項(2-1)及び(2-2)から,「『カマンベールチーズの製造方法に準じて得られたカードを,直径3cmの半球形モールドに詰めた後』にカード内に『芯として他の種類のチーズや,餡などを入れ』,その後,『このモールド同士を合わせて球形に成形して,型からカードを抜』き,『次いで常法に従って白カビの胞子を噴霧して発酵室(20℃,湿度90%RH)で発育させ』,『得られた球形の白カビ成育チーズを,ゴルフボールのディンプル状の凸凹処理を施した半球状のプラスティック容器に入れ,同様の形状の容器で蓋をして成形』し,『2週間発酵させ適熟させ』,『更に,中のチーズが液状化するまで約1ケ月発酵させ,熟成を進ませた』ゴルフボール状のカマンベールチーズ」は,甲第2号証に記載されているに等しい事項であるといえる。
また,そのように製造された「ゴルフボール状の白カビチーズ」の発酵3週目のチーズの性状が「外観は白くきれいで,中のチーズで手を汚すこともなく,しかも食器に全く付着しない」点,及び,発酵1カ月目のチーズの性状が「中のチーズは液状化していたが,一口大であることから,切る必要がなく,手を汚さず,しかも,食器に全く付着することがな」い点が摘記事項(2-3)から読み取れることを考慮すると,カードどうしは,熟成により溶融し,チーズの中身が漏れ出ない程度には,結びついた状態にあるといえる。

ここで,本件訂正発明1と,甲第2号証に記載された発明(以下,「甲号証発明2」という。)とを対比すると,甲号証発明2の「カマンベールチーズの製造方法に準じて得られたカードを,直径3cmの半球形モールドに詰めた後」のカードは,モールドにより半球形に成型されていることになるから,本件訂正発明1の「成型され」「たチーズカード」に相当する。また,甲号証発明2の「他の種類のチーズや,餡など」は,半球状のモールド中のカード内に「芯として」入れられるものであり,ゴルフボール状の白カビチーズ製品を得るという甲号証発明2の目的からみれば,該モールドどうしを合わせて球形に成形した際には,該「他の種類のチーズや,餡など」は,カードどうしに覆われた状態,つまり,内包された状態にあるといえる。さらに,甲号証発明2は,カードどうしが熟成により溶融し,チーズの中身が漏れ出ない程度には,結びついた状態にあるから,甲号証発明2のカードは,「第6.1.(2)相違点(b)について」で述べたように,本件訂正発明1でいう「結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」した状態にあり,「結着部分からのチーズの漏れがない」といえる。
してみると,両者は,「成型されたチーズカードの間に食品類をはさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させることにより得られる,結着部分からのチーズの漏れがない,食品類を内包したカマンベールチーズ製品。」である点で一致するものの,
(a)チーズカードが,本件訂正発明1は「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるのに対し,甲号証発明2は白カビの胞子を噴霧する前の状態のものである点,
(b)食品類を,本件訂正発明1は,「均一にはさんだ」ものであるのに対し,甲号証発明2は,その旨が特定されていない点,
(c)食品類が,本件訂正発明1は「香辛料」であるのに対し,甲号証発明2は「他の種類のチーズや,餡など」である点
(d)本件訂正発明1が,一体化させた後に,「加熱する」ことにより得られるものであるのに対し,甲号証発明2は,その旨の規定がない点
で相違する。
そこで,これらの相違点について以下で検討する。

ア.相違点(a)について
食品類をはさむ段階でのチーズカードについてみれば,本件訂正発明1は「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるのに対し,甲号証発明2は白カビの胞子を噴霧する前の状態のものである。しかし,いずれも,その後に熟成させており,その熟成の程度は,上述したとおり,「結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ」るものであって,両者で共通している。よって,食品類をはさむ段階でのチーズカードの状態が異なっていても,最終的な「カマンベールチーズ製品」の状態としては区別することができないから,この点は,実質的な相違点ではない。

イ.相違点(b)について
摘記事項(2-1)の「チーズの中に芯として他の種類のチーズや,餡などを入れてもよい」との記載から,甲第2号証には,一口大の球状の白カビチーズ製品の中心部にひとかたまりのチーズや餡などを配置することが示されている。これに対して,本件訂正発明1は,「チーズカードの間に」食品類を「均一にはさ」むものである。
甲号証発明2は,一口大の球状の白カビチーズ製品であり,摘記事項(2-3)には切る必要がないことが記載されているから,一口で食することを前提としたものである。切り分けずに一口で食することから,「芯として」入れる「他の種類のチーズや,餡」を,半球状のチーズカードの切断面に,均等に分散させてはさむようにする動機付けが存在するとはいえない。一口大の球状ということから,その切断面積は大きなものではないから,むしろ,分散させることに対しては阻害要因があるといえる。
よって,甲号証発明2において,他の種類のチーズや餡を芯として入れることにかえて,食品類を均一にはさむようにすることは,当業者といえども容易に想到し得ないものである。

ウ.相違点(c)について
「第6.1.(4)相違点(d)について」で述べたとおり,当業者であれば,白カビチーズとグリーンペッパー又は香味料がよく合うことを理解できるといえるから,甲号証発明2のカマンベールチーズ製品において,「他の種類のチーズや,餡など」にかえて「香辛料」をはさむことは,当業者が容易に想到し得ることである。

エ.相違点(d)について
甲第4号証及び甲第6号証には,それぞれの摘記事項(4-4)及び(5-2)からみて,カマンベールチーズの保存性を高めることを目的に,熟成後のカマンベールチーズを容器に入れて80-120℃で加熱殺菌を行うことが示されているといえる。
よって,甲号証発明2のカマンベールチーズ製品において,製品として流通,販売すること等を目的として,白カビチーズにおける周知事項を適用し,熟成した白カビチーズを容器に入れて80-120℃で加熱殺菌をする工程を付加することは,当業者が容易に想到し得ることである。

(2)被請求人の主張
ところで,被請求人は,平成19年9月14日付の上申書において,甲第2号証の【0011】段落の記載からみて,「仮に2つのチーズカードが一体化しているとしても,加えた圧力に起因するものなのか熟成によるものであるのかは明らかでは」ない旨を主張している(第3頁第17-23行)。
ここで,例え,甲号証発明2において,2つのカードが,加えられた圧力によってある程度圧着したとしても,摘記事項(2-2)及び(2-3)に示されるように,その後,「中のチーズが液状化する」程度まで熟成されることにより,2つのカードはさらに結びついて一体化するものであるといえる。そして,そのような熟成工程を経た2つのカードは,本件訂正発明1でいう「結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化」した状態にあるといえる。また,熟成工程の前に2つのカードどうしがある程度圧着していた場合とそうでない場合とで,熟成工程後の白カビチーズ製品の性質・性状等が異なってくるともいえないし,かつ,該性質・性状等で相違点が生じてくる具体的事例を被請求人が示したわけでもない。さらに,本件訂正発明1において,チーズカードどうしがある程度圧着したものが排除されているわけでもない。
また,被請求人は,平成20年10月16日付答弁書(2)において,「熟成が開始されてカビが表面に生育するまで発酵したチーズカードに香辛料をはさむようにすれば,香辛料をはさんだ後にカビの胞子を噴霧した場合のように香辛料をはさんだチーズカードの隙間にカビの胞子が入り込むようなことがない」と主張している(第5頁第4-7行)。
しかし,甲第2号証には,得られたチーズ製品を切った場合に,中のチーズが液状化していたことが記載されているのみで,特に二つのチーズカードの隙間にカビの胞子が入り込んでいることは指摘されていない。これは,被請求人も平成19年9月14日付の上申書において「半球形状の2つのカードを球形にするために,2つの半球状のカードに圧力を加えて互いに押し付けていることが示唆されます。」と述べており(第3頁第19-21行),カビの胞子が入り込むほどの隙間は存在していないと解されることからも裏付けられる。
さらに,被請求人は,平成21年5月20日付審判請求書において,「甲第2号証の記載はカードを球形に成形して型からカードを抜き,次いで常法に従って白カビの胞子を噴霧して発育させるという,本件訂正発明1とは,その前提とする技術思想が異なる」と主張している(第18頁第1-3行)。
しかし,製造方法が異なっていても,最終的な「カマンベールチーズ製品」の状態としては区別することができないと認められ,かつ,製造方法が異なることにより,最終的な「カマンベールチーズ製品」の状態に相違点が生じてくる具体的事例を被請求人が示したわけでもない。
そして,平成19年9月14日付の上申書における,本件特許の出願当時の技術水準に関する主張については,「第6.1.(7)被請求人のその他の主張」で述べたとおりであり,甲第2-4,6及び10号証が本件出願前に頒布された刊行物であること,並びに,甲第2-4,6及び10号証に記載された事項が本件出願前の技術水準を形成するものであることは明らかである。

(3)請求人の主張
一方,請求人は,平成20年9月4日付上申書により補正された,審判請求書の請求の理由において,「「芯」は,通常,均一な状態となっている。」と主張している(上申書第6頁キ及び第27頁ウ)。確かに,「芯」自体を,「他の種類のチーズや,餡」が均一な状態で構成しているとも解釈できるが,それは,あくまでも「芯」そのものの状態を示すものであり,球状の白カビチーズにおける芯の配置状態を示すものではない。また,球状の白カビチーズ製品の中心部にひとかたまりのチーズや餡などを配置することは,偏りなく配置されているとはいえるものの,「均一にはさ」んでいる,つまり,全体にわたって一様な状態ではさんでいることには当たらない。

(4)まとめ
以上のとおり,本件訂正発明1は,上記相違点(b)が甲第2号証の記載からは容易に想到し得ないものであるから,本件訂正発明1は,本件出願前に頒布された甲第2-4,6及び10号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本件訂正発明2の進歩性について
本件訂正発明2と甲第2号証に記載された発明(以下,「甲号証発明2の2」という。)とを対比すると,「1.本件訂正発明1の進歩性について」で述べた甲第2号証の記載事項及び本件訂正発明の発明特定事項との対応を考慮すれば,両者は,「成型されたチーズカードの間に食品類をはさみ,前記チーズカードを結着するように熟成させることにより,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させることを特徴とする,結着部分からのチーズの漏れがない,食品類を内包したカマンベールチーズ製品の製造方法。」である点で一致するものの,
(a)チーズカードが,本件訂正発明2は「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものであるのに対し,甲号証発明2の2は白カビの胞子を噴霧する前の状態のものである点,
(b)食品類を,本件訂正発明2は,「均一にはさ」むのに対し,甲号証発明2の2は,その旨が特定されていない点,
(c)食品類が,本件訂正発明2は「香辛料」であるのに対し,甲号証発明2の2は「他の種類のチーズや,餡など」である点
(d)本件訂正発明2が,一体化させた後に,「加熱する」工程を有するものであるのに対し,甲号証発明2は,その旨の規定がない点
で相違する。
そこで,これらの相違点について以下で検討する。
相違点(a)に関し,甲号証発明2の2における白カビの胞子を噴霧する前の状態のチーズカードにかえて,「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものを採用する積極的な動機付けは見いだせない。また,白カビの胞子を噴霧する前の状態のチーズカードと「表面にカビが生育するまで発酵させた」チーズカードは,異なる製造段階に対応するものであり,適宜変更するような関係にあるとも認められない。
ここで,請求人は,平成20年9月4日付上申書により補正された,審判請求書の請求の理由において,「甲第2号証のチーズカードは,白カビチーズ用のものである。よって,チーズカードとして,表面にカビが育成するまで発酵させたものを用いることは,当業者が適宜選択する事項である。」(上申書第5頁イ)と主張している。しかし,甲号証発明2の2における白カビの胞子を噴霧する前の状態のチーズカードにかえて,「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものを採用することが,適宜選択できる事項であるとする根拠は示されていない。甲第2号証のチーズカードが白カビチーズ用のものであることのみによって,その後の工程で行う白カビ胞子の噴霧を,食品類をはさむ前に行うようにすることの根拠が示されているとはいえない。
さらに,請求人は,「本訂正による訂正後の明細書では段落[0007]において,「「成型したチーズカード」とは,カードからホエーが排出され,ある程度固まった状態のものであればよい。」とされている。すなわち,「成型したチーズカード」は,訂正事項1により特定される「表面にカビが育成するまで発酵させた成型されたチーズカード」ではなく,「カードからホエーが排出され,ある程度固まった状態のもの」であっても,本発明の効果を奏することができるのである。このことからも,訂正事項1による発明特定事項が,格別な技術的効果を有するものではないことは明らかである。」(上申書第5頁ウ)とも主張している。
しかし,甲号証発明2の2における白カビの胞子を噴霧する前の状態のチーズカードにかえて,「表面にカビが生育するまで発酵させた」ものを採用することを,当業者であっても容易に想到し得ない以上,それにより奏される効果については,検討するまでもない。
相違点(b)?(d)は,前記1.に記載した,本件訂正発明1と甲号証発明2との相違点(b)?(d)と実質的に一致している。
したがって,本件訂正発明2は,本件出願前に頒布された甲第2-4及び6号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本件訂正発明1及び2の新規性について
1.(1)及び2.で述べたとおり,本件訂正発明1及び2と,甲第2号証に記載された発明とを対比すると,相違点が見いだされるのであるから,本件訂正発明1及び2は,本件出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。

第9.甲第3号証に基づいた当審の判断
1.本件訂正発明1の進歩性について
(1)当審の判断
摘記事項(3-3)より,表面に白カビが植え付けられていることから,甲第3号証に記載されたオンネトーブルーなるチーズは,白カビチーズ製品であると認められる。よって,甲第3号証には,青カビを内包した白カビチーズ製品が記載されているといえる。
ここで,本件訂正発明1と,甲第3号証に記載された発明(以下,「甲号証発明3」という。)とを対比すると,摘記事項(3-3)における「青カビ」は食品類に該当するから,両者は,「食品類を内包した白カビチーズ製品」である点で一致するものの,
(a)本件訂正発明1が,成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に食品類を均一にはさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱することにより得られるものであり,結着部分からのチーズの漏れがないのに対して,甲号証発明3にはそのような特定がない点
(b)本件訂正発明1においては,食品類が香辛料であるのに対して,甲号証発明3においては食品類が青カビである点
(c)本件訂正発明1がカマンベールチーズ製品であるのに対して,甲号証発明3はその旨が特定されていない点
で相違する。
これらの相違点について,以下で検討する。
ア.相違点(a)について
甲第3号証には,摘記事項(3-3)のとおり,「中心に青カビを植え付けて熟成させた」ことが記載されており,摘記事項(3-4)の写真から,該青カビが水平方向に広がっているようにみえる。しかし,甲号証発明3の白カビチーズ製品の製造方法に関するその他の記載がなく,青カビを植え付ける時期及び具体的な方法,その後の熟成条件や加熱の有無について,なんら明らかにされていない。
甲号証発明3は販売を目的とした製品であると認められるから,その保存性向上のために加熱することは,当業者が容易に想到し得るといえる。しかし,青カビを植え付ける際に,「成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカード」の間に青カビを均一にはさむこと,及び「はさんだ後,前記チーズカードを結着するように熟成させて,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱すること」は甲第3号証に示唆されておらず,また,本件出願前の技術常識であったともいえないから,この点は当業者といえども容易に想到し得ないものである。そして,「結着部分」が生じるようにはさむことも,加熱することも甲第3号証には記載されていないのであるから,甲号証発明3において「結着部分からのチーズの漏れがない」ようにすることは,当然想定されておらず,当業者といえども容易に想到し得ないものである。

イ.相違点(b)について
「第6.1.(4)相違点(d)について」で述べたとおり,当業者であれば,白カビチーズとグリーンペッパー又は香味料がよく合うことを理解できるといえるから,甲号証発明3の白カビチーズ製品において,「青カビ」にかえて「香辛料」をはさむことは,当業者が容易に想到し得ることである。

ウ.相違点(c)について
カマンベールチーズは広く知られた白カビチーズの一種であり,また,甲第3号証に甲号証発明3とともに記載されている2種のチーズもカマンベールチーズであることから(摘記事項(3-1)及び(3-2)),甲号証発明3の青カビを内包した白カビチーズとして,カマンベールチーズを選択することは,当業者が容易に想到し得ることである。

(2)請求人の主張
請求人は,平成19年2月14日付の審判請求書において,「一方,甲第3号証には,以下の写真が掲載されており,『円筒状に成型されたチーズカードを2枚用意し,そのチーズカードのうち一枚の中央上部に青カビを植えつけ,その青カビを2枚のチーズカードではさむようにした後,チーズカードの外層には白カビを植えつける』発明が実質的に開示されている。」(第46頁7-11行),「甲第3号証には,以下の写真が開示されており,『2枚のチーズカードを,外層に植えつけられた白カビが2枚のチーズカードの隙間を一部埋めるほど繁殖し,外見上は中の青カビが見えなくなり,2枚のチーズカードの接合面が結着するように熟成させることにより,2枚のチーズカードを一体化させること』が実質的に開示されている。」(第47頁5-9行),「製品の外層は2枚のチーズカードのつなぎ目を含めて白カビで覆われている」(第48頁5-6行)と,摘記事項(3-4)に示す写真に基づいて主張する。
しかし,(1)ア.において既に述べたとおり,甲第3号証には,摘記事項(3-3)のとおり,「中心に青カビを植え付けて熟成させた」ことが記載されており,摘記事項(3-4)の写真から,該青カビが水平方向に広がっているようにみえるものの,甲号証発明3の白カビチーズ製品の製造方法に関するその他の記載がなく,青カビを植え付ける時期及び具体的な方法,その後の熟成条件についてはなんら明らかにされていない。特に,青カビを植えつける時期と,チーズ表面に白カビを植えつける時期の関係を示唆する記載はない。よって,「実質的に開示されている」と主張する根拠が不充分であり,請求人の主張は採用できない。
また,請求人は,平成19年9月14日付の上申書において,「被請求人は,口頭審理期日において,通常のブルーチーズの製造方法において,青カビを生育させるために穴を開けた場合,その穴の跡に沿って青カビが生育する点を認諾しました。これは,カビの生育には空気が必要であり,青カビを生育させるために穴をあけた場合,その穴の跡に沿って空気が充填されるため,その穴の部分には,当然青カビが発生するからです。(甲第9号証拠)。」(第13頁(4)ウ)及び「上記の主張と,平成19年5月7日付け被請求人答弁書に基づく(同10頁11行目?15行目)主張とは明らかに矛盾しています。すなわち,被請求人は,甲第3号証の三角形状の窪みが青カビを生育させるために開けた穴の跡であると主張していますが,その窪みの部分には青カビが全く発生していません。甲第3号証の青カビの状態は,被請求人の主張するような方法で得られるものでないことは明らかです。」(第14頁(4)エ)と主張する。ここで引用されている,平成19年5月7日付の答弁書における被請求人の主張とは,「なお,前記写真の縦に切断された左端部を注視すると,青カビの高さとほぼ同じ高さに中心に向かった三角状の窪みがあり,そして,右端部の同じ高さにはそのような窪みがないことが分かる。そのことは,前記中心に向かった三角状の窪みは,通常のブルーチーズの製法と同様,青カビを生育させるために開けた穴の跡を示すものと推測される。」(第10頁11-15行)というものである。
例え,請求人の主張するとおり,「甲第3号証の三角形状の窪み」が青カビを生育させるために開けた穴の跡でないとしても,その点をもって,甲号証発明3が「円筒状に成型されたチーズカードを2枚用意し,そのチーズカードのうち一枚の中央上部に青カビを植えつけ,その青カビを2枚のチーズカードではさむようにした後,チーズカードの外層には白カビを植えつける」という方法により得られたものであることの根拠とすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件訂正発明1は,上記相違点(a)が甲第3号証の記載からは容易に想到し得ないものであるから,本件訂正発明1は,本件出願前に頒布された甲第3号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本件訂正発明2の進歩性について
本件訂正発明2と甲第3号証に記載された発明(以下,「甲号証発明3の2」という。)とを対比すると,両者は,「食品類を内包した白カビチーズ製品の製造方法」である点で一致するものの,
(a)本件訂正発明2が,成型され,表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に食品類を均一にはさみ,前記チーズカードを結着するように熟成させることにより,結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ,その後,加熱するこものであり,結着部分からのチーズの漏れがない製品が得られるのに対して,甲号証発明3の2にはそのような特定がない点
(b)本件訂正発明2においては,食品類が香辛料であるのに対して,甲号証発明3の2においては食品類が青カビである点
(c)本件訂正発明2がカマンベールチーズ製品であるのに対して,甲号証発明3の2はその旨が特定されていない点
で相違する。
上記相違点(a)?(c)は,前記1.に記載した,本件訂正発明1と甲号証発明3との相違点(a)?(c)と実質的に一致している。
したがって,本件訂正発明2は,本件出願前に頒布された甲第3号証の記載,並びに,本件出願前の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本件訂正発明1及び2の新規性について
1.(1)及び2.で述べたとおり,本件訂正発明1及び2と,甲第3号証に記載された発明とを対比すると,相違点が見いだされるのであるから,本件訂正発明1及び2は,本件出願前に頒布された甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

第10.むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件訂正発明1及び2の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品類を内包した白カビチーズ製品及びその製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品類を内包し、熟成によりチーズが結着成型されてなる白カビチーズ製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チーズ製品に食品類を混合した成型品として、チーズ全体に香辛料やワインなどを混合した、種々の形状及び風味を有するナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフード(以下「チーズ類」という)がある。
チーズ全体に食品類を混合したナチュラルチーズは、原料となる乳に食品類を混合し、通常の製造方法と同じように乳を凝固させた後、ホエーを排除して得られた食品類含有カードを成型するか、あるいは乳から調製したカードに食品類を混合した後、そのカードを成型することにより得られる。また、熟成タイプのナチュラルチーズの場合は、前記カード成型後にさらに、所定の条件での熟成を決められた期間行うことにより製品が得られる。例えば、特許文献1には、カードをサイコロ状に細断し、それに食品粉砕物を添加した後型詰めを実施することを特徴とする食品添加ゴーダチーズの製造方法が開示されている。
また、チーズ全体に食品類を混合したプロセスチーズやチーズフードは、カードあるいは1?数種類のナチュラルチーズを加熱・溶融して混合する際に、食品類を添加し、均一に分散させた後、その加熱・溶融チーズを型に流し込み、冷却して成型することにより製品が得られる。
さらに、特許文献2には、チーズ類を粉砕または細切し、他の食品を混合して圧着・成型して得られる圧着成型チーズ製品が開示されている。
また、製品の表面に他の食品を付着させたチーズ類として、香辛料などを圧着または結着させて得られた種々の風味を有するチーズ類がある。このようなチーズは、通常の方法で成型したチーズ類を大量の液状或いは粉末状の食品類中に入れて表面に食品類を付着させるか、またはチーズ類の表面に食品類を圧着又は塗布することにより付着させることにより調製される。
上記したチーズ製品は、何れもチーズ表面に添加した食品が点在した、見た目も通常のチーズ製品とは異なったものであった。
一方、見た目は通常のチーズ製品であるが、チーズ中に食品類が包含されているチーズ製品として、例えば、特許文献3に、2種類の異なるチーズ類を用いて、芯部および芯部を包み込む外層部からなる2層構造とした鶏卵状チーズが開示されている。
【特許文献1】特開平7-31372号公報
【特許文献2】特開平9-299026号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように、従来は、チーズ製品に食品類を混合した成型品として、チーズ全体に食品類を混合させたチーズ製品、チーズ表面に食品類を付着させたチーズ製品や、外層部がナチュラルチーズではない鶏卵状チーズ製品及びそれらの製造方法が知られていたが、これらの方法では食品類を内包した白カビチーズ製品を製造することは不可能であった。
本発明は、チーズの間に種々の食品類を内包する白カビチーズ製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決するために白カビチーズに食品類を内包する方法を検討した結果、成型したチーズカードの間に食品類をはさみ、熟成させることにより、チーズの結着が強固で、型崩れや食品の漏れのない白カビチーズ製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。また、熟成の後に加熱することにより、チーズの結着をより強固にすることができることも見出した。
すなわち、本発明は、成型され、表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさんだ後、前記チーズカードを結着するように熟成させて、結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ、その後、加熱することにより得られる、結着部分からのチーズの漏れがない、香辛料を内包したカマンベールチーズ製品である。
本発明はまた、成型され、表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさみ、前記チーズカードを結着するように熟成させることにより、結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ、その後、加熱することを特徴とする、結着部分からのチーズの漏れがない、香辛料を内包したカマンベールチーズ製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、成型したチーズカードの間に様々な食品類をはさんだ後、前記チーズカードを結着するように熟成させて一体化させることにより、食品類を内包した白カビチーズ製品を得ることができる。
本発明の食品類を内包した白カビチーズは、通常の白カビチーズと比べて、外観上全く見分けがつかないものである。本発明の製造方法以外で製造した場合には、加熱時に流動化したチーズが切断面から流れ出たり、食品類が流出したり漏れたりすることが予想されるが、本発明によれば、そのような流出や漏れのない非常に良好な白カビチーズ製品が得られる。
なお、内包する食品類の種類を変更することにより、種々の形状や風味を有する白カビチーズ製品を容易に得ることができる。さらに、大量生産を目的とした白カビチーズ製品生産ラインにおいて、食品類を内包した小ロットの白カビチーズ製品の製造を可能にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において使用されるチーズは、白カビチーズである。白カビチーズとしては、特に限定されないが、カマンベール、ブリー、ブルソー、カプリス・デ・デュー、シュプレム等が挙げられ、カマンベールが好ましく用いられる。
本発明において混合させる「食品類」としては、例えば、チーズ以外の他の食品または食品添加物が挙げられる。他の食品としては、例えば、畜肉、魚肉、海草、野菜、果物またはこれらの加工品のような一般食品のみならず、ごま等の乾燥食品、餡や練りわさび等のペースト状食品、しょうゆやドレッシング等の液状食品、食物繊維やアミノ酸等の健康訴求食品等が挙げられ、食品添加物としては、フレーバー、調味料等が挙げられる。
【0007】
本発明における白カビチーズ製品の製造方法は、成型したチーズカードの間に食品類をはさみ、熟成させることにより、チーズを結着成型させて一体化することからなる。また、結着の後に加熱を行うことにより、より強固に結着させることができる。
成型したチーズカードは、その間に食品類をはさむために複数あればよく、2以上であれば特に限定されない。例えば、1つの成型したチーズカードを2以上に切断したものでもよく、2以上の成型したチーズカードを別々に準備して、それらの間に食品類をはさんでもよい。また、1つの成型したチーズカードを完全には切断せずに、中心部に食品類をはさんでもよい。
本発明において、「成型したチーズカード」とは、カードからホエーが排出され、ある程度固まった状態のものであればよい。
このような成型したチーズカードの中央部に、上記のような食品類を載せるが、食品類は1種類であっても、複数種類であってもよい。
本発明の製造方法は、加圧や減圧の手段を用いず、結着剤も使用することなく、熟成によって結着・成型することができる。また、熟成後に加熱することにより結着をより強固にすることもできる。本発明の方法によれば、このような手段を用いることにより、結着部からのチーズの漏れが防止される。また、はさまれた食品類は、白カビチーズ内部に完全に内包されるため、食品類自体またはその香味成分が他のチーズ類へ移行することや、食品の流出が防止される。
【実施例1】
【0008】
一般的な製造工程に従ってカードメーキング及び表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカード(100g)を、輪切り状に2つに切断し、その切断面に香辛料(ヱスビー食品社製:クリーンスパイス)をチーズカード重量に対して0.05%添加した。香辛料は、表面に均一に載せ、切断した一方のチーズカードを元に戻した。
このチーズカードを再び数日発酵させ、ポリプロピレンフィルムで包装した後、さらに熟成が完了するまで発酵を継続した。切断面がカビの生育により見えなくなり、熟成によって上下2枚のチーズが結着していることを確認した後、チーズをポリプロピレンのカップに入れ、ナイロンフィルムの蓋をシールした。カップ内に密封したチーズを加熱殺菌することにより、上下のチーズが完全に密着し、外見上は通常のカマンベールチーズと見分けのつかない良好な白カビチーズが得られた。
また、香辛料の代わりに、ゴマ(浜乙女社製)または赤しそ粉末(亀田製菓社製)を用いて、同様のチーズを製造した。
さらに、対照として、切断および食品類の添加をしていない以外は実施例1と同様の方法で製造したカマンベールチーズを評価した。
これらのチーズについて、結着部分からのチーズの洩れ及び結着状態の評価を行った。結着状態としては、結着部分から引っ張った時に、結着部分がはがれない状態を良好とし、結着部分から簡単にはがれてしまう状態を不良とした。評価結果を表1に示す。なお、評価は経験の十分なパネラー5名で行った。
【0009】


表1に示されるように、本発明の方法により香辛料、ゴマ、赤しそ粉末をはさんだ本発明の白カビチーズは、何もはさまれていないカマンベールチーズ(対照)と同様に、チーズの漏れもなく、結着状態も良好であった。
なお、切断面が見える程度にしかカビが生育していないチーズについても同様に評価を行ったが、切断面からのチーズの漏れがあり、好ましいものではなかった。
【実施例2】
【0010】
一般的な製造工程に従ってカードメーキング及び表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカード(100g)を輪切り状に2つに切断し、その切断面にアーモンドナッツ(真誠社製)をチーズカード重量に対して0.05%添加した。アーモンドナッツは、切断面に均一に載せ、切断した一方のチーズカードを元に戻した。
このチーズカードを再び数日発酵させ、ポリプロピレンフィルムで包装した後、さらに熟成が完了するまで発酵を継続した。切断面がカビの生育により見えなくなり、熟成によって上下2枚のチーズが結着し、外見上は通常のカマンベールチーズと見分けのつかない良好な白カビチーズが得られた。
対照として、切断およびアーモンドナッツの添加をしていないこと以外は実施例2と同様の方法で製造したカマンベールチーズを評価した。
これらのチーズについて、結着部分からのチーズの洩れ及び結着状態の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、評価は、経験の十分なパネラー5名で行った。
【0011】

表2に示されるように、本発明の方法によりアーモンドナッツをはさんだ白カビチーズは、何もはさまれていないカマンベールチーズ(対照)と同様に、チーズの漏れもなく、結着状態も良好であった。
なお、切断面が見える程度にしかカビが生育していないチーズについても同様の評価を行ったが、切断面からのチーズの漏れはないものの、結着状態が不良となり、好ましいものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明により得られる白カビチーズ製品は、白カビチーズの内部に、種々の食品類をはさむことができるので、白カビチーズと食品類の組み合わせを楽しむことができる。本発明の白カビチーズ製品は、チーズが結着部分から流れ出たり、食品類が流出したり漏れたりすることのない非常に良好な白カビチーズ製品である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型され、表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさんだ後、前記チーズカードを結着するように熟成させて、結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ、その後、加熱することにより得られる、結着部分からのチーズの漏れがない、香辛料を内包したカマンベールチーズ製品。
【請求項2】
成型され、表面にカビが生育するまで発酵させたチーズカードの間に香辛料を均一にはさみ、前記チーズカードを結着するように熟成させることにより、結着部分から引っ張っても結着部分がはがれない状態に一体化させ、その後、加熱することを特徴とする、結着部分からのチーズの漏れがない、香辛料を内包したカマンベールチーズ製品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-02-10 
結審通知日 2007-12-03 
審決日 2009-02-24 
出願番号 特願2003-422837(P2003-422837)
審決分類 P 1 113・ 537- YA (A23C)
P 1 113・ 853- YA (A23C)
P 1 113・ 851- YA (A23C)
P 1 113・ 121- YA (A23C)
P 1 113・ 113- YA (A23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼ 美葉子  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 平田 和男
深草 亜子
登録日 2005-12-09 
登録番号 特許第3748266号(P3748266)
発明の名称 食品類を内包した白カビチーズ製品及びその製造方法  
代理人 石井 良夫  
代理人 城所 宏  
代理人 後藤 さなえ  
代理人 石井 良夫  
代理人 後藤 さなえ  
代理人 城所 宏  
代理人 廣瀬 隆行  

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