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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01K
管理番号 1236833
審判番号 不服2010-768  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-14 
確定日 2011-05-12 
事件の表示 特願2004-369697「釣用タックルケース」拒絶査定不服審判事件〔平成18年7月6日出願公開,特開2006-174739〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は,平成16年12月21日の出願であって,平成21年10月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年1月14日に審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成22年12月20日付けで拒絶の理由を通知したところ,これに対し,平成23年2月18日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年2月18日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「【請求項1】
上面に開口を有すると共に当該開口の周縁部の内側に座部が形成されたバッグ本体を備えた釣用バッグに適用され,上記座部に載置されることによって上記釣用バッグのバッグインバッグとして使用される釣用タックルケースであって,
ケース本体と,
ケース本体の対向する一対の側面にそれぞれ設けられた把手とを備え,
上記ケース本体は,
底面を有するトレイ状に形成され,当該底面が上記座部に載置されることにより上記バグ本体の開口を塞ぐコア部材及び当該コア部材の上面にスライドファスナーを介して開閉自在に設けられた蓋部材を有し,
上記コア部材の高さ寸法は,上記ケース本体が上記座部に載置された状態で上記スライドファスナーが上記バッグ本体の開口よりも上方に位置するように設定されている釣用タックルケース。」(当審注:「上記バグ本体の開口を塞ぐ」との記載の「バグ本体」は,「バッグ本体」の誤記と認められる。)(以下,「本願発明」という。)

第3.引用刊行物
刊行物1:実願昭56-150214号(実開昭58-55479号)
のマイクロフィルム
刊行物2:登録実用新案第3086109号公報

1.当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に日本国内において頒布された上記刊行物1には,次の記載事項がある。
(1a)「2.実用新案登録請求の範囲
クーラーの本体上部に収納する釣用小道具箱の大きさをクーラー上部開口面積の整数分の1に形成するとともに小道具箱の本体と蓋とヒンジ部とを一体に合成樹脂材で形成し,開いた小道具箱の蓋で前記本体1個分のクーラー上部開口空間を閉塞するようにしたことを特徴とする魚釣用クーラー。」
(1b)「魚釣用クーラーは第1図から第3図のようにクーラー本体1の上側の後側にクーラーの蓋2が開閉自在に蝶着され,上側の前側には鈎止め部19,20が設けられている。
・・・
クーラー本体1の内壁1bの上部には内周をめぐる段部1cが形成され,段部1c上には釣用小道具箱4の本体5の上側周囲に形成された鍔6が乗接収納されている。
前記釣用小道具箱4は第4図から第9図のように本体5と蓋7とヒンジ部8が合成樹脂材で一体に形成され,小道具箱4の大きさは第2図,第3図のようにクーラー上部開口面積の2分の1に形成されている。
小道具箱本体5と蓋7とのヒンジ部8とは対向する側壁中心には内側に喰い込む凹部9,10が夫々形成され,凹部9,10の開口端が夫々前記本体の鍔6と蓋の鍔11で結ばれて手掛け部12が構成されている。
蓋の鍔11は蓋7の開口側周囲に形成され,本体の鍔6と全面で当接するように構成されている。
凹部9,10の底位置の中央には本体5側に係止片13が,蓋7に第8図のように突出部14が形成されて本体5に蓋7が掛け止め係合されるように構成されている。
凹部9,10はヒンジ部8と対向する側壁以外の側壁に設け,その凹部に手掛け部と係止片と突出部を設けてもよい。」(明細書3頁8行?4頁18行)
(1c)「前記釣用小道具箱4に小道具や餌が入れられてクーラーに収納され,釣場に携行されて小道具が取り出されたり,釣針に餌づけがされるときはクーラーの蓋2が開かれ,次に小道具箱の蓋7が開かれる。」(明細書5頁10?14行)
(1d)「前記説明では釣用小道具箱4の本体5の周囲に設けた鍔6をクーラー上部の段部1cで受けて収納するように述べたが,小道具箱4の本体5の底の周囲を別に設けた段部に乗せる等他の手段で保持してもよい。
このとき,鍔6,11は省略し,手掛け部12は別に設けてもよい。」(明細書6頁13?19行)
(1e)第2図には,本体5が「底面を有するトレイ状に形成される」ことが,記載されている。
(1f)また,第1図及び第2図には,上記(1c)の記載事項からみて,「本体5の高さ寸法は,上記本体5及び蓋7が段部1cに乗接された状態で係止片13がクーラー本体1の上面開口から操作可能な位置にあるように設定されている」ことが,記載されている。
そして,上記(1b)及び(1c)の記載事項からみて,釣用小道具箱4が,クーラー本体1に収納されるケースであって,いわゆる「バッグインバッグ」であることは明らかであるから,
以上の記載事項及び当業者の技術常識からみて,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。

「上面開口を有すると共に内壁1bの上部の内周に段部1cが形成されたクーラー本体1を備えた魚釣用クーラーに適用され,上記段部1cに乗接されることによって上記魚釣用クーラーのバッグインバッグとして使用される釣用小道具箱4であって,
本体5及び蓋7と,
本体5及び蓋7の側壁の凹部9,10の開口端に設けられた手掛け部12とを備え,
上記本体5及び蓋7は,
底面を有するトレイ状に形成され,周囲に設けた鍔6が上記段部1cに乗接されることにより上記クーラー本体1の上面開口の2分の1を塞ぐ本体5及び当該本体5の上面に係止片13を介して開閉自在に設けられた蓋7を有し,
上記本体5の高さ寸法は,上記本体5及び蓋7が上記段部1cに乗接された状態で上記係止片13が上記クーラー本体1の上面開口から操作可能な位置にあるように設定されている釣用小道具箱4。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

2.同じく,上記刊行物2には,次の記載事項がある。
(2a)「【0012】
・・・硬貨カセット搬送トランク部6は,外装ケース14の中が緩衝材13で構成された硬貨補充部15と硬貨用カセット収容部16と取り出し自在の内装ケース17で構成される。」
(2b)図3には,内装ケース17の本体の対向する一対の側面にそれぞれ設けられた把手を備えることが,記載されている。
そして,上記(2a)の記載事項からみて,内装ケース17が,いわゆる「バッグインバッグ」であることは明らかであるから,
以上の記載事項及び当業者の技術常識からみて,刊行物2には,次の技術が記載されているものと認められる。

「外装ケース14のバッグインバッグとして使用される内装ケース17において,内装ケース17の本体の対向する一対の側面にそれぞれ設けられた把手を備えること。」(以下,「刊行物2記載の技術」という。)

第4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明を対比すると,
刊行物1記載の発明の「上面開口」が本願発明の「(上面の)開口」に相当し,以下同様に,「内壁の上部の内周」が「開口の周縁部の内側」に,「段部」が「座部」に,「乗接」が「載置」に,「釣用小道具箱」が「釣用タックルケース」に,「本体及び蓋」が「ケース本体」に,「手掛け部」が「把手」に,「本体」が「コア部材」に,「蓋」が「蓋部材」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「魚釣用クーラー」と本願発明の「釣用バッグ」は,「収容体」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「(本体の)周囲に設けた鍔」と本願発明の「(コア部材の)底面」は,「(コア部材の)一部」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「係止片」と本願発明の「スライドファスナー」は,「係止具」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「クーラー本体の上面開口から操作可能な位置にある」ことと本願発明の「バッグ本体の開口よりも上方に位置する」ことは,「収容体本体の開口付近の操作可能な位置にある」ことである点で共通する。

そうすると,両者は,
「上面に開口を有すると共に当該開口の周縁部の内側に座部が形成された収容体本体を備えた収容体に適用され,上記座部に載置されることによって上記収容体のバッグインバッグとして使用される釣用タックルケースであって,
ケース本体と,
ケース本体に設けられた把手とを備え,
上記ケース本体は,
底面を有するトレイ状に形成され,一部が上記座部に載置されるコア部材及び当該コア部材の上面に係止具を介して開閉自在に設けられた蓋部材を有し,
上記コア部材の高さ寸法は,上記ケース本体が上記座部に載置された状態で上記蓋部材が上記収容体本体の開口付近の操作可能な位置にあるように設定されている釣用タックルケース。」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
釣用タックルケースが適用される収容体が,本願発明では「釣用バッグ」であるのに対して,刊行物1記載の発明では魚釣用クーラーである点。

(相違点2)
把手が設けられるケース本体の部位が,本願発明では,「対向する一対の側面のそれぞれ」であるのに対して,刊行物1記載の発明では,側壁の凹部の開口端である点。

(相違点3)
座部に載置されるコア部材の一部が,本願発明では「底面」であるのに対して,刊行物1記載の発明では,実施例として挙げられているのは周囲に設けた鍔である点。

(相違点4)
コア部材を載置することにより,本願発明では,「バッグ本体の開口を塞」いでいるのに対して,刊行物1記載の発明では,バッグ本体の開口の2分の1しか塞いでいない点。

(相違点5)
本願発明では,係止具が「スライドファスナー」であって,このスライドファスナーがバッグ本体の「開口よりも上方に位置」しているのに対して,刊行物1記載の発明では,係止具が係止片であって,この係止片が開口から操作可能ではあるものの,開口よりも上方にはない点。

第5.判断
上記各相違点について,以下に検討する。
(相違点1について)
上記相違点1について検討する。
釣用タックルケースを「釣用バッグ」に適用することは,例えば,当審の拒絶の理由に引用された特開2002-218887号公報(特に,釣用携行具1に収容された収納部30を参照。以下,「周知例1」という。),及び,特開2004-194557号公報(特に,釣り用バッグに収容されたトレー2及びカバー体4を参照。以下,「周知例2」という。)に開示されているように周知技術である。
そして,刊行物1記載の発明の適用対象を,当該周知技術の釣用バッグとすることに,なんら困難性は見出せない。
したがって,刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて,上記相違点1に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
次に,上記相違点2について検討するために,刊行物2をみると,
刊行物2記載の技術として,「バッグ(外装ケース)のバッグインバッグとして使用されるケース(内装ケース)において,ケース本体(内装ケースの本体)の対向する一対の側面にそれぞれ設けられた把手を備えること」は,本願出願時において既に公知である。
そして,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術は,いずれも,バッグインバッグとして使用されるケースに把手を備えたものであり,刊行物1記載の発明の把手として,刊行物2記載の技術の「対向する一対の側面にそれぞれ設けられた把手」を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて,上記相違点2に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
次に,上記相違点3について検討する。
収容体本体の開口の周縁部の内側に座部を形成し,当該座部にコア部材の「底面」を載置することは,例えば,刊行物2(特に,図3及び4の中皿12及び緩衝材13を参照。),及び,当審の拒絶の理由に引用された実願昭52-140579号(実開昭54-65894号)のマイクロフィルム(特に,第1図のタックルボックス2及び段部13,14を参照。)に開示されているように周知技術である。
そして,刊行物1には,上記(1d)の記載事項からみて,コア部材(本体5)の底面(底の周囲)を座部(段部)に載置する(乗せる)ことを示唆する記載があるから,刊行物1記載の発明に上記周知技術を適用して,コア部材の「底面」を座部に載置する構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて,上記相違点3に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
次に,上記相違点4について検討する。
収容体本体の開口の周縁部の内側にケースを配置するにあたり,「収容体本体の開口を塞ぐ」ことは,例えば,上記周知例1(特に,段落【0014】及び図4の記載を参照。)及び周知例2(特に,段落【0010】及び図2の記載を参照。)に開示されているように周知技術である。
そして,上記(相違点1について)で説示したとおり,刊行物1記載の発明の適用対象を周知の釣用バッグとすることは当業者が容易に想到し得たことであり,その際に,釣用タックルケースの大きさを,釣用バッグに対してどの程度にするかは,釣用タックルケースと釣用バッグの利用形態や収納物によって,当業者が適宜設定するべき程度のことであるから,上記周知技術を適用し,釣用タックルケースの載置によって「バッグ本体の開口を塞ぐ」構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
したがって,刊行物1記載の発明及び上記各周知技術に基づいて,上記相違点4に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点5について)
最後に,上記相違点5について検討する。
収容体本体の開口の周縁部の内側にケースを配置するにあたり,その係止具を「スライドファスナー」とすること,及び,係止具を収容体本体の「開口よりも上方に位置」させることは,例えば,上記周知例1(特に,段落【0015】及び図4の記載を参照。)及び周知例2(特に,段落【0017】及び図5の記載を参照。)に開示されているように周知技術である。
そして,釣用タックルケースの係止具を何にするかは,既存のものの中から当業者が適宜選択するべき程度の事項であり,また,その位置を何処にするかは,係止具の操作のし易さ等を考慮して当業者が適宜設定するべきことに過ぎないから,刊行物1記載の発明に上記周知技術を適用して,係止具を「スライドファスナー」とし,このスライドファスナーをバッグ本体の「開口よりも上方に位置」させることは,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて,上記相違点5に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明が奏する効果について検討するに,
道具類の分類が簡単になる,小物類を容易に取り出せる,実釣に合わせた整理整頓が可能になる,及び,蓋部材の開閉作業がきわめて簡単であるとの効果は,刊行物1記載の発明及び上記各周知技術から予測できるものであるし,
また,蓋部材がケース本体に固定されていない場合でもケース本体を安定的に吊り下げることができるとの効果は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用した際に,自ずと奏せられるものであって,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術から,予測できる範囲内のものであるから,
いずれの効果も,格別なものではない。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術,並びに上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶されるべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-10 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2004-369697(P2004-369697)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 山本 忠博
伊波 猛
発明の名称 釣用タックルケース  
代理人 松田 朋浩  
代理人 西木 信夫  

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