• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1236880
審判番号 不服2010-18869  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2011-05-09 
事件の表示 特願2005- 65751「電気接続ボックス及び電気接続ボックス用ボックスカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-254571〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成17年3月9日の特許出願(2005年特許願第65751号。「以下、「本件出願」という。)につき、平成22年5月12日付けで拒絶査定(発送日:同月20日)がなされたところ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年8月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成22年8月20日付けの手続補正を却下する。

2 補正却下の決定の理由
(1)平成22年8月20日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、本件出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正することを含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成21年11月2日付け手続補正書によるもの)
「【請求項1】
壁、天井又は床に形成された貫通口に開口部が望む状態で壁、天井又は床の裏側に配設される配線ボックスと、この配線ボックス側から導出されるケーブルに接続される付設接続器を備え、かつ、壁、天井又は床の表側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠とが主要構成として備えられ、前記配線ボックスと前記フレーム枠との間に、熱膨張によって前記貫通口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱樹脂製のボックスカバーが介挿されているとともに、前記ボックスカバーにおける前記配線ボックスの開口面に沿う内外方向の外方側には、前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部が形成され、前記ボックスカバーの前記内外方向の内方側には、前記フレーム枠の付設接続器が入り込み可能な凹部が形成され、
前記配線ボックスの開口部には、前記フレーム枠と締結固定するための取付け片が開口縁から内方に突設されているとともに、
前記ボックスカバーには、前記取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部が、前記内外方向及び前記配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において前記当て付け部と前記凹部との間に位置する状態で形成されている電気接続ボックス。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
壁、天井又は床に形成された貫通口に開口部が望む状態で壁、天井又は床の裏側に配設される配線ボックスと、この配線ボックス側から導出されるケーブルに接続される付設接続器を備え、かつ、壁、天井又は床の表側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠とが主要構成として備えられ、前記配線ボックスと前記フレーム枠との間に、熱膨張によって前記貫通口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱樹脂製のボックスカバーが介挿されているとともに、前記ボックスカバーにおける前記配線ボックスの開口面に沿う内外方向の外方側には、前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部が形成され、前記ボックスカバーの前記内外方向の内方側には、前記フレーム枠の付設接続器が入り込み可能な凹部が形成され、
前記配線ボックスの開口部には、前記フレーム枠と締結固定するための取付け片が開口縁から内方に突設されているとともに、
前記ボックスカバーには、前記取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部が、前記内外方向及び前記配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において前記当て付け部と前記凹部との間に位置する状態で形成され、 前記配線ボックスの周壁部には、壁、天井又は床の裏側から配線ボックスにケーブルを挿通可能な挿通口を現出する挿通口形成用脆弱部が形成されているとともに、
前記凹部の底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され、前記中間底壁部が前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置されている電気接続ボックス。」
(なお、下線部は補正箇所を示す。)

(2) 本件補正の適否について
本件補正について、本件補正前の請求項1に係る発明に、「前記配線ボックスの周壁部には、壁、天井又は床の裏側から配線ボックスにケーブルを挿通可能な挿通口を現出する挿通口形成用脆弱部が形成されているとともに、前記凹部の底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され、前記中間底壁部が前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置されている」構成を付加することは、本件補正前の請求項1に係る発明の「配線ボックスの周壁部」と「ボックスカバー」を限定して特定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本件補正は減縮する補正を含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下、単に「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)引用刊行物記載の発明
(3A)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2004-320857号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)
(3A-1)「【請求項8】
壁に形成された貫通口に臨む状態で壁裏面側に配設される配線ボックスと、配線ボックス側から導出されるケーブルに接続されるコンセントやスイッチ等の付設接続器に対する取付け部を有し、かつ、壁表面側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠とが主要構成として備えられ、更に、フレーム枠の前面の周囲を覆う状態でフレーム枠に装着される化粧枠と、この化粧枠に対して付設接続器の特定部位が外部に臨む状態で脱着自在に装着される化粧カバーとの組み合わせ、若しくは、フレーム枠に対して付設接続器の特定部位が外部に臨む状態で脱着自在に装着される化粧カバーが備えられている電気接続ボックスであって、
前記配線ボックス内の開口側に、熱膨張によって配線ボックスの開口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板部と、それの周縁に形成された壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる環状閉塞部とからなる閉塞板が脱着自在に装着されている電気接続ボックス。」

(3A-2)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気スイッチ、電気コンセント、通信コンセント、漏電ブレーカー、警報用音響装置、暖房用パネルスイッチ等の付設接続器の一つ又は複数個を建造物の壁に埋め込み方式で取付ける場合に用いられる電気接続ボックで、特に、火炎又は煙、有毒ガス等が配線ボックスの開口を通して隣室に拡がるのを防止する技術に関する。」

(3A-3)「【0031】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
図1?図3は、石膏ボードや耐火ボード等を用いた耐熱構造壁Wに、付設接続器の一例である電気スイッチ又は電気コンセント1の複数個を建造物の壁に埋め込み方式で取付ける電気接続ボックスを示し、耐熱構造壁Wに形成された貫通口Hに臨む状態で壁裏面側に固定配設される金属製又は耐熱合成樹脂製の配線ボックス2と、配線ボックス2側から導出される電気ケーブル3に接続される電気スイッチ又は電気コンセント1に対する取付け部4Aを備え、かつ、壁表面側に位置する状態で配線ボックス2に固定される金属製のフレーム枠4が主要構成として備えられ、更に、フレーム枠4の前面の周囲を覆う状態でフレーム枠4にネジ止め固定される合成樹脂製の化粧枠5と、化粧枠5に対して脱着自在に装着され、かつ、その装着時に電気スイッチ又は電気コンセント1の特定部位である前部1aが外部に臨む開口6aを形成してある合成樹脂製の化粧カバー6との組合せ、若しくは、フレーム枠4に対して脱着自在に装着され、かつ、その装着時に電気スイッチ又は電気コンセント1の特定部位である前部1aが外部に臨む開口7aを形成してある合成樹脂製の化粧カバー7が備えられている。
【0032】
前記配線ボックス2は、耐熱構造壁Wの裏面側から貫通口Hに向って開口する状態で壁裏面側の胴縁や間柱等にビス等で固定されているとともに、その開口部の周縁の複数箇所には、フレーム枠4の取付け孔4cに挿通された取付けネジ8に対するネジ孔2aを形成してある取付け片2bが折り曲げ形成されているとともに、底壁部2c及び周壁部2dには、壁裏面側に沿って配設される電気ケーブル3をボックス内側に導出したり、或いは、ビス等で固定するための貫通口2eを選択的に簡易形成可能な導出口形成用脆弱部2fが打ち出し形成されている。
【0033】
前記フレーム枠4の横幅寸法は貫通口Hの横幅寸法よりも小さく、かつ、縦幅寸法は貫通口Hの縦幅寸法よりも大に構成されているとともに、前記取付け部4Aが、電気スイッチ又は電気コンセント1の一つ又は複数個を選択的に嵌合装着可能な嵌合孔4aと、それに嵌合された電気スイッチ又は電気コンセント1を抜止め状態で係止保持するべく、電気スイッチ又は電気コンセント1に対して係合自在又は係合側に折り曲げ可能な状態で嵌合孔4aの周縁に形成された複数の係止片4bとから構成されている。
【0034】
前記フレーム枠4に対して脱着自在に係合保持される化粧枠5及び化粧カバー7の各横幅寸方及び縦幅寸法は、貫通口Hの横幅寸方及び縦幅寸法よりも共に大に構成されているとともに、化粧枠5には、フレーム枠4の取付け部4Aが嵌まり込む装着口5aと、化粧カバー6の内面側に突設された係止突起6bに対して脱着自在に係合する係合保持可能な係止孔5bが形成され、更に、化粧枠5及び化粧カバー7の各々には、フレーム枠4のネジ孔4dに取付けネジ10で螺合固定するためのネジ孔5c,7bが形成されている。
【0035】
そして、配線ボックス2の開口相当箇所には、図4?図8に示すように、それの開口全体を閉止する大きさ、換言すれば、配線ボックス2の開口側内周面の全域に接触する大きさを備え、かつ、火災時の熱膨張によって配線ボックス2の開口を実質的に閉塞する可撓性、電気絶縁性、弾性を備えた熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板部11Aと、これの外周縁において、壁裏面の貫通孔H周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる可撓性、電気絶縁性、弾性を備えた熱膨張性耐熱ゴム製の環状閉塞部11Bとからなる閉塞板11が脱着自在に装着されているとともに、閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとが一体成形され、更に、環状閉塞部11Bの横断面形状が、壁裏面の貫通孔H周縁部分に接触する先端側ほど外方に位置する外拡がりの三段の階段状に形成されている。
【0036】
そのため、配線ボックス2の取付け片2bに対してフレーム枠4を取付けネジ8で締付け固定する際、この取付けネジ8の締付け操作に連れて変形する壁裏面の貫通孔H周縁部分と配線ボックス2との相対近接移動により、配線ボックス2の取付け片2bに係止保持された熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板11のうち、閉塞板部11Aの周縁に形成された環状閉塞部11Bが壁裏面の貫通孔H周縁部分に圧接されながら弾性的に撓み変形するとともに、各段差箇所の屈曲部11bを支点としても撓み変形するから、この環状閉塞部11Bを壁裏面の貫通孔H周縁部分の全域に隙間のない状態で確実、スムースに密着させることができる。
【0037】
前記閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所のうち、上側辺及び下側辺の各幅方向中央位置には、図5、図7に示すように、配線ボックス2の開口上縁及び開口下縁の各幅方向中央位置から内側に突設された取付け片2bに対して抜き差し自在な係止孔11Cが形成されているとともに、前記閉塞板部11Aには、図7、図8に示すように、配線箇所を選択的に切り抜くための細溝状の切抜き誘導線11Dが、貫通孔Hに臨む内面側において開口する状態で格子状に形成されている。
【0038】
そのため、閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に形成された係止孔11Cを、熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板11自体の弾性を利用して変形させながら、配線ボックス2の開口周縁から内側に突設された取付け片2bに係合させることにより、閉塞板11を簡単な操作で所定位置に確実、容易に取付けることができるとともに、閉塞板部11Aに形成された細溝状の切抜き誘導線11Dに沿って所定の配線箇所をカッター等で簡単に切り抜くことができ、配線工事の能率向上を図ることができる。」
(3A-4)図2には、閉塞板11の底部が、配線ボックス2の導出口形成用脆弱部2fから選択的に形成された貫通口2eのフレーム枠側の貫通口位置よりもフレーム側に配置することが描かれている。
さらに、図2は、配線ボックス2の取付け片2bが、閉塞板11の係止孔11Cを介して閉塞板11の閉塞板部11Aの周辺部の貫通口H側の底部に接するようにしてネジ8で取り付けられることが描かれている。

上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-1)?(3A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「壁Wに形成された貫通口に臨む状態で壁裏面側に配設される配線ボックス2と、配線ボックス側から導出されるケーブルに接続されるコンセントやスイッチ等の付設接続器に対する取付け部4Aを有し、かつ、壁表面側に位置する状態で配線ボックス2に固定されるフレーム枠4とが主要構成として備えられ、
前記配線ボックス2内の開口側に、熱膨張によって配線ボックス2の開口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板部11Aと、それの周縁に外拡がりの三段の階段状に形成され、壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる環状閉塞部11Bとからなる閉塞板11とが装着され、
配線ボックス2の開口上縁及び開口下縁には、フレーム枠4を取付けネジ8で締付け固定する取付け片2bが内側に突設され、
閉塞板11の前記閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所には、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成され、
配線ボックス2の底壁部2c及び周壁部2dには、電気ケーブル3をボックス内側に導出するための貫通口2eを選択的に簡易形成可能な導出口形成用脆弱部2fが打ち出し形成され、
閉塞板部11Aには、配線箇所を選択的に切り抜くための細溝状の切抜き誘導線11Dが、貫通孔Hに臨む内面側において開口する状態で格子状に形成されている電気接続ボックス」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(3B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開平10-136529号公報(以下、「引用刊行物B」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3B-1)「【001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結露防止のために気密性を高めたり、塵の侵入を防止するようにした埋込配線器具用の防気・防塵カバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、壁等に埋込配置されたスイッチボックスと、埋込配線器具の前面部を露出させる開口窓を有したプレートとの間に防気・防塵の目的で介在させる防気・防塵カバーが知られている(特開昭62-10116号公報参照)。この種の防気・防塵カバーは、壁面等の造営面に設けた器具取付穴等を通して空気が移動するのを防止することにより、結露の発生や塵埃の侵入を防ぐことができるものである。」

(3B-2)「【0009】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)図1乃至図9に示す本実施形態の防気・防塵カバー20は、合成樹脂等(例えば、特殊軟化塩化ビニル樹脂)の成形品よりなり、前面箱状のカバー本体20aは、JIS規格や日本配線器具工業会で規格化された単位寸法の埋込配線器具を3個連設して収納できる寸法に形成されている。カバー本体20aの配線器具収納室23の底部には、テレビ用電線挿通用のテレビ用電線挿通筒21、IV電線挿通用のIV電線挿通筒22、電話用電線挿通筒24が突設されている。ここで、各電線挿通筒21、22、24の内径は、それぞれテレビ用電線、IV電線、電話用電線を隙間なく挿入できるような寸法に設定されている。各電線挿通筒21、22、24内にはノックアウト用の薄肉部21a、22a、24aが形成されており、施工時に、必要な電線挿通筒の薄肉部のみノックアウトするようになっている。各電線挿通筒21、22、24は、取付枠30に取付られる配線器具の電線挿通孔に対向する位置に設けてあり、各電線によって電線挿通筒21、22、24やカバー本体20aに過負荷がかかるのを防止するようになっている。
【0010】また、防気・防塵カバー20は、カバー本体20aの開口周縁に鍔体25が形成されている。鍔体25は、内部に補強板28がインサート成形されており、変形しにくいようにしてある。また、カバー本体20aの上下の鍔体25には、後述のボックスねじ38(図8参照)が挿通されるを挿入する取付孔26が形成されている。上下の取付孔26間の距離は、JIS規格等によって規格化されている埋込配線器具の施工時に用いるスイッチボックス10(図8参照)の取付片11のねじ孔12に螺合するボックスねじを挿通することができるように設定されている。なお、取付孔26は、鍔体25の前面側では長孔状に形成され、鍔体25の後面側では薄肉部26aによって略十字状の孔に形成されている。また、鍔体25には後述のプレートねじ64用のねじ孔27が形成されている。
【0011】ところで、壁面等への施工時には、各電線挿通筒21、22、24のうち先行配線された所望の電線に対する電線挿通筒の薄肉部をノックアウトして電線を配線器具収納室23へ導出する。そして、導出した電線を埋込配線器具の電線挿通孔に挿入して周知の速結端子に接続される。防気・防塵カバー20は、図8及び図9に示すようにスイッチボックス10に取り付けられる。ここで、防気・防塵カバー20は、鍔体25の後面側が壁Wに当接する。鍔体25の後面には、全周に亙って突起部25a,25aが突設されているので、突起部25a,25aの先端が壁W(造営面)に当接するから、鍔体25の後面を平坦にしてある場合に比べて鍔体25と造営面との接触部での空気の流れを少なくでき、結露の発生や塵埃の侵入をより一層防ぐことができる。
【0012】取付枠30はJIS規格や日本配線器具工業会で規格化されている大角形3個用の取付枠であって、取付窓33は単位寸法の埋込配線器具を最大3個まで取り付けることができる寸法に形成されている。取付枠30は、例えば図8に示すように、一対の側片39a,39bの両端をそれぞれ取付片32により連結した枠状に形成されており、側片39aには、配線器具40の側面に形成された取付爪が係合される保持孔37が形成されている。各取付片32には、取付枠30をパッキン20を介して埋込ボックス10に取り付けることができるように、ボックスねじ38を挿入する長孔34が穿孔され、また、プレート枠60が取り付けられるように、プレートねじ64が螺合するねじ孔35が形成されている。なお、取付枠30には、周知のはさみ金具が取り付けられるように、金属取付孔36が穿孔されている。
【0013】取付枠30には、周知のように埋込配線器具40の前面部を露出させる開口窓53を有した化粧カバー50が、係止爪52によって取り付けられ、さらに化粧カバー50の前面部を露出させる窓63を有したプレート枠60がプレートねじ64によって取り付けられる。プレート枠60には、化粧カバー50の前面部を露出させる窓73を有した化粧プレート70が取着される。ここで、化粧カバー50と、プレート枠60と、化粧プレート70とでプレートを構成している。つまり、防気・防塵カバー20の前面には、取付枠30を介してプレートが被着される。
【0014】而して、本実施形態では、鍔体25及びカバー本体20a及び各電線挿通筒21、22、24の薄肉部21a、22a、24a等によって空気の移動を防止して防気性・防塵性を確保しつつ、IV電線、電話用電線、テレビ用電線等のように互いに外径の異なる電線が挿入可能できるようになり、電話コンセントやテレビコンセント等の埋込配線器具にも適用できるようになる。また、前記カバー本体20aが、規格化された単位寸法の埋込配線器具を3個連設して収納できる寸法に形成されているので、規格化された単位寸法の埋込配線器具を最大3個まで収納することができる。
【0015】(実施形態2)図10乃至図14に示す本実施形態の防気・防塵カバー20の基本構成は実施形態1と略同じでなので、特徴となる部分についてのみ説明し、同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の防気・防塵カバー20は、配線器具収納室23が規格化された単位寸法の埋込配線器具を2列に3個づつ連設して収納できる寸法に形成されており、防気性・防塵性を確保しつつ、規格化された単位寸法の埋込配線器具を最大6個まで収納することができる。ここで、カバー本体20aの上下の鍔体25には、実施形態1で説明した取付孔26が2箇所づつ形成されており、2つの取付枠30、30が取着できるようになっている。
【0016】また、本実施形態では、カバー本体20aの開口の上方及び下方の内側面に、それぞれ一対の突出部29が突設されており、一対の突出部29の間の溝に絶縁板80を挿入することができるようになっている。このため、絶縁板80を溝に挿入してカバー本体20aの配線器具収納室23を2つの収納室に絶縁分離することにより、IV電線が接続される電源コンセント40と、例えばテレビ用電線が接続されるテレビコンセント90とをカバー本体20aに並設することが可能となる。」

(3B-3)図8には、スイッチボックス10に取り付けられる防気・防塵カバー20のカバー本体20aに、配線器具40が収納できる配線器具収納室23を形成するように凹部を形成することが描かれている。
また、図9には、防気・防塵カバー20のカバー本体20aの配線器具収納室23の底部が、壁Wの裏側より奥のスイッチボック10の底部に近づくほど深い位置に配置されていることが描かれている。

(3C)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開平7-274346号公報(以下、「引用刊行物C」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3C-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、壁内に配設されたボックス内部と室内側とを遮断するために、該ボックス内に挿入して使用されるボックス用防塵パッキンに関するものである。本発明に係る防塵パッキンは、LSI生産工場、食品工場などに設けられているクリーンルーム内に塵埃類が侵入するのを防止したり、或いは寒冷地において室内に隙間風が入り込むのを防止すること等を目的として使用される。」

(3C-2)「【0007】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る防塵パッキンP_(1)と、ボックスB_(1)と、これに収容される電気機器類の分解斜視図であり、図2は、防塵パッキンP_(1)の半断面側面図であり、図3は、防塵パッキンP_(1)の電線挿通部4の部分の拡大断面図であり、図4は、防塵パッキンP_(1)の使用状態における側面断面図であり、図5は、同じく正面図である。防塵パッキンP_(1)は、例えば、軟質PVC等の軟質合成樹脂材、或いは合成ゴム、或いは天然ゴムから成るゴム材で成形されていて、図1ないし図3に示されるように、一面が開口された箱状の本体1と、該本体1の開口の全周にその外方に向けて設けられた固定フランジ板2とから成る。防塵パッキンP_(1)の本体1を構成する底壁3には、電線が気密状態で挿通可能な複数個の筒状の電線挿通部4が一体に設けられており(図5参照)、該本体1の周壁5は、蛇腹構造に成形されて伸縮可能になっている。このため、防塵パッキンP_(1)は、その固定フランジ板2と底壁3との間の間隔(L)、即ち、その本体1の深さが可変となる。固定フランジ板2には、一対の固定ビス挿入穴6が設けられている。前記電線挿通部4は、底壁3の内側に突設されていて、その外側の部分に外部と遮断するための薄板4aが一体成形されており、該薄板4aは、使用時に破られる。
【0008】また、使用時において、壁内にボックスを配設することにより該壁面に形成された配線器具等の挿入開口の周縁に上記防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2を固定するには、押え板7が使用される。この押え板7は、金属板、或いは合成樹脂板から成って、前記防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2と同一形状に成形されて、一対の固定ビス挿入穴8を備えている。この押え板7によって、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2は、そのしわなどが無くされて、前記挿入開口の周縁に密着固定される。また、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2は、内部に薄金属板を埋設したり、この部分のみを硬質樹脂で成形すると、密着性、及び耐変形性の双方が高まって、上記押え板7の使用が不要となる。
【0009】に、本発明に係る防塵パッキンP_(1)の使用例について説明する。図1、図4及び図5に示されるボックスB_(1)は、その開口面側に塗代カバー9が一体に設けられた構造のものであって、該塗代カバー9を除く本体をコンクリートC内に埋設した後に、該コンクリートCの表面に該塗代カバー9の厚さ分だけ化粧モルタルMが塗られる。このようにして化粧モルタルMを塗った後に、ボックスB_(1)の外部において、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2と、コンセント10を取付けている器具取付け金枠11との間に前記押え板7を配置して、防塵パッキンP_(1)の電線挿通部4の外側から内側に向けて、電線管12から引き出された電線13を挿通して、該電線13の先端部をコンセント10に接続させる。その後に、電線13と接続されたコンセント10を防塵パッキンP_(1)の本体1に挿入すると、コンセント10の厚さが該本体1の深さよりも小さい場合には、該本体1はそのままの状態を維持し、コンセント10の厚さが該本体1の深さよりも大きい場合には、該本体1は必要最小長さだけ伸長される。そして、防塵パッキンP_(1)の本体1をボックスB_(1)内に挿入させると共に、コンセント10を該防塵パッキンP_(1)の本体1に挿入させると、防塵パッキンP_(1)の本体1がそのままの状態を維持している場合(伸縮されていない場合)には、その周壁5は、ボックスB_(1)内に収容された電線13の余長部の量、その曲がり具合などに応じて適宜圧縮される。なお、本実施例では、電線挿通部4は、本体1の内側に向かってのみ突設されていて、その外側には突設されていないために、該電線挿通部4に対する電線13の挿通作業が行い易いと共に、使用時においても、ボックスB_(1)内に収容された電線13と引っ掛かることのない利点がある。
【0010】上記のようにして、ボックスB_(1)内に防塵パッキンP_(1)の本体1を挿入すると、その周壁5は、ボックスB_(1)内における電線13の状態に応じて自身で最適な長さを選択する。図4に示される使用例は、防塵パッキンP_(1)の周壁5が殆ど変化しない場合であり、図6に示される使用例は、コンセント10が厚いために、これに応じて該周壁5が伸長されてボックスB_(1)内に収容されている。そして、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2を前記塗代カバー9の開口端面に密着させて、該固定フランジ板2を押え板7によって押え付けると共に、該押え板7の外側に器具取付け金枠11を配置した状態にして、これらの三者を、固定ビス14を介して前記塗代カバー9の開口端面に固定する。なお、器具取付け金枠11に化粧板15が固定ビス16により固定されて、コンセント10のプラグ差込み口を除く部分、及び押え板7は、該化粧板15により隠蔽される。これによって、防塵パッキンP_(1)を介して室内Rの側とボックスB_(1)の内部とが遮断されて、電線管12を通ってボックスB_(1)に侵入する塵埃類が室内Rに入り込むのが防止される。
【0011】上記の場合において、図7に示される押え板付金枠17は、コンセント10などを取付けるための器具取付け金枠11に押え板7が一体に成形されたもので、防塵パッキンを使用して配線器具類を壁面に取付けるための取付け具の部品数が減少する利点がある。なお、図7において、18は、押え板付金枠17を壁面に固定するための固定ビス14の挿通穴を示し、19は、該押え板付金枠17に化粧板を固定するための固定ビス16が螺合される雌螺子を示す。」

(3C-3)「【0012】また、図8に示される使用例は、鉄骨建築物、或いは木造建築物に使用される壁体パネルWの内側にボックスB_(2)が配設される例である。防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2は、壁体パネルWに設けられた開口21の室内Rの側の周縁部に密着される。そして、上記実施例と同様に、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2は、押え板7によって壁体パネルWに押え付けられている。そして、該固定フランジ板2と、該押え板7と、該押え板7の外側に配置された器具取付け金枠11との三者は、固定ビス22を介してボックスB_(2)に固定されている。本実施例においては、ボックスB_(2)が浅いのに加えて、該ボックスB_(2)内に収容されている電線13の余長部が長いために、纏められた電線13の余長部によって防塵パッキンP_(1)の周壁5が圧縮され、該電線13の余長部は、防塵パッキンP_(1)の底壁3とボックスB_(2)の底壁23との間に効率よく収容されている。この種の壁体においては、壁内の空間部から室内Rの側に塵埃類が入り込み易いが、防塵パッキンP_(1)によりこれが完全に防止される。」

(3C-4)図4には、モルタルMの表側に配置された金枠11に取り付けられたコンセントなどの配線器具の底部が、モルタルMの裏側よりも深い位置に配置されように、防塵パッキンP_(1)の底壁がモルタルMの裏側よりも奥のボックスB_(1)の底部に近づくほどさらに深い位置まで凹部を形成することが描かれている。
また、図5を参照すると、図1には、固定ビス14が、金枠11の楕円状の固定ビス挿入穴、押え板7の楕円状の固定ビス挿入穴8、及び、防塵パッキンP_(1)の固定フランジ板2の楕円状の固定ビス挿入穴6に挿入されて、ボックスB_(1)と一体に設けられた塗代カバー9の円形状の穴に固定されることが描かれている。 また、図8には、固定ビス22が、器具取付け金枠11の固定ビス挿入穴、押え穴7の固定ビス挿入穴、及び、防塵パッキンP_(1)の固定ビス挿入穴に挿入されて、壁体パネルWの内側に配設され、壁体パネルWの開口部に延出したボックスB_(2)の延出部の穴に固定されることが描かれている。

(イ)本願補正発明と引用発明との対比・判断
(イ-1)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「配線ボックス2」は、壁Wに形成された貫通口に臨む状態で壁裏面側に配設されることから、本願補正発明の「壁」「に形成された貫通口に開口部が望む状態で壁」「の裏側に配設される配線ボックス」に相当する。

(ii)引用発明の「配線ボックス側から導出されるケーブルに接続されるコンセントやスイッチ等の付設接続器」が、本願補正発明の「この配線ボックス側から導出されるケーブルに接続される付設接続器」に相当する。

(iii)引用発明の「壁表面側に位置する状態で配線ボックス2に固定されるフレーム枠4」が、本願補正発明の「壁」「の表側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠」に相当する。

(iv)引用発明の「配線ボックス2内の開口側に、熱膨張によって配線ボックス2の開口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板部11Aと、それの周縁に外拡がりの三段の階段状に形成され、壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる環状閉塞部11Bとからなる閉塞板11」が、本願補正発明の「熱膨張によって前記貫通口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱樹脂製のボックスカバー」に相当する。
そして、引用発明の配線ボックス2は壁裏面側に配設され、また、フレーム枠4は壁表面側に位置する状態でこせいされ、さらに、閉塞板11の環状閉塞部11Bが壁裏面の貫通孔周縁部分に当て付けられるとともに、閉塞板11の前記閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所には、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成されていることから、引用発明の「閉塞板11」が、本願補正発明の「ボックスカバー」と同様に、「前記配線ボックスと前記フレーム枠との間に、」「ボックスカバーが介挿されている」ことは明らかである。
また、引用発明の「閉塞板11」の「環状閉塞部11B」は、周縁に外拡がりの三段の階段状に形成され、壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられことから、本願補正発明の「前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部」に相当し、「前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部」と同様に、「前記ボックスカバーにおける前記配線ボックスの開口面に沿う内外方向の外方側には、前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部が形成され」ていることになる。

(v)引用発明の「配線ボックス2の開口上縁及び開口下縁には、フレーム枠4を取付けネジ8で締付け固定する取付け片2bが内側に突設され」ることは、その構造・機能からみて、本願補正発明の「前記配線ボックスの開口部には、前記フレーム枠と締結固定するための取付け片が開口縁から内方に突設され」ていることに相当する。

(vi)引用発明の「配線ボックス2の底壁部2c及び周壁部2dには、電気ケーブル3をボックス内側に導出するための貫通口2eを選択的に簡易形成可能な導出口形成用脆弱部2fが打ち出し形成され」ることは、その構造・機能からみて、本願補正発明の「前記配線ボックスの周壁部には、壁」「の裏側から配線ボックスにケーブルを挿通可能な挿通口を現出する挿通口形成用脆弱部が形成され」ることに相当する。

(vii)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-4)には、「閉塞板11の底部が、配線ボックス2の導出口形成用脆弱部2fから選択的に形成された貫通口2eのフレーム枠側の貫通口位置よりもフレーム側に配置する」ことが記載されていることから、引用発明の「閉塞板部11A」と、本願補正発明の「底壁部」とは、「底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され」る点で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「壁に形成された貫通口に開口部が望む状態で壁裏側に配設される配線ボックスと、
この配線ボックス側から導出されるケーブルに接続される付設接続器を備え、かつ、壁の表側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠とが主要構成として備えられ、
前記配線ボックスと前記フレーム枠との間に、熱膨張によって前記貫通口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱樹脂製のボックスカバーが介挿されているとともに、前記ボックスカバーにおける前記配線ボックスの開口面に沿う内外方向の外方側には、前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部が形成され、
前記配線ボックスの開口部には、前記フレーム枠と締結固定するための取付け片が開口縁から内方に突設され、
前記配線ボックスの周壁部には、壁、天井又は床の裏側から配線ボックスにケーブルを挿通可能な挿通口を現出する挿通口形成用脆弱部が形成されているとともに、
底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置されている電気接続ボックス。」
である点で一致し、次の相違点(あ)及び相違点(い)で相違する。

・相違点(あ)
本願補正発明では、「前記ボックスカバーの前記内外方向の内方側には、前記フレーム枠の付設接続器が入り込み可能な凹部が形成され」、「前記凹部の底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され」ているのに対して、引用発明では、閉塞板11には、コンセントやスイッチ等の付設接続器が入り込む凹部を有していないものの、閉塞板11の底部が、配線ボックス2の導出口形成用脆弱部2fから選択的に形成された貫通口2eのフレーム枠側の貫通口位置よりもフレーム側に配置されている点。

・相違点(い)
本願補正発明では、「前記ボックスカバーには、前記取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部が、前記内外方向及び前記配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において前記当て付け部と前記凹部との間に位置する状態で形成され」、「前記中間底壁部が前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置されているを含む」のに対して、引用発明では、閉塞板11には、熱膨張性耐熱ゴム製の閉塞板部11Aと、それの周縁に外拡がりの三段の階段状に形成され、壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる環状閉塞部11Bと、前記閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所には、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成されているものの、中間底壁部を有していない点。

(イ-2)当審の判断
そこで、上記相違点(あ)及び相違点(い)について判断する。
・相違点(あ)について
(あ-1)上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)には、「スイッチボックス10に取り付けられる防気・防塵カバー20のカバー本体20aに、配線器具40が収納できる配線器具収納室23を形成するように凹部を形成する」こと、及び「防気・防塵カバー20のカバー本体20aの配線器具収納室23の底部が、壁Wの裏側より奥のスイッチボックス10の底部に近づくほど深い位置に配置されている」ことが記載されていることから、上記引用刊行物Bの配線器具40は、壁Wの裏側より奥のスイッチボックス10の底部に近づくほども深い位置にまで入り込んだ状態で取り付けられていることになる。また、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-2)及び(3C-3)にはそれぞれ「【0010】防塵パッキンP_(1)の周壁5が殆ど変化しない場合であり・・・図6に示される使用例は、コンセント10が厚いために、これに応じて該周壁5が伸長されてボックスB_(1)内に収容されている。」こと、及び「図4には、モルタルMの表側に配置された金枠11に取り付けられたコンセントなどの配線器具の底部が、モルタルMの裏側よりもさらに深い位置に配置される」ことが記載されていることから、上記引用刊行物Cの配線器具は、モルタルMの裏側よりもかなり深い位置まで入り込んだ状態で取り付けられていることになる。
そうすると、引用発明の電気接続ボックスにおいても、上記引用刊行物Bのスイッチボックスや上記引用刊行物Cのボックスと同様に、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付ける必要性のある場合が存在することから、上記引用刊行物Bのスイッチボックスや上記引用刊行物Cのボックスと同様に、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付ける課題があることは明らかである。
ところで、引用発明の閉塞板11は、閉塞板部11Aと、それの周縁に外拡がりの三段の階段状に形成され、壁裏面の貫通孔周縁部分に弾性変形可能な状態で当て付けられる環状閉塞部11Bを有することから、閉塞板部11Aの貫通口Hの面側と壁Wとの距離は壁Wの裏面と弾性変形した環状閉塞部11Bの厚み程度の幅しかなく、さらに、引用発明では、閉塞板と11と、配線ボックスR2とは、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成をとっているから、上記引用刊行物Bのスイッチボックスや上記引用刊行物Cのボックスと同様に、引用発明において、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付ける課題を解決するために、上記引用刊行物Bや上記引用刊行物Cに記載されているように、防塵カバーの凹部が、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるために、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまで形成されているようにすること、すなわち、上記引用刊行物Bや上記引用刊行物Cに記載されている防塵カバーと同様に、閉塞機能を有する閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成することより、本願補正発明のごとく「前記ボックスカバーの前記内外方向の内方側には、前記フレーム枠の付設接続器が入り込み可能な凹部が形成され」るように構成することは当業者が容易になしうるものである。
(あ-2)そして、電気ケーブル3をボックス内側に導出するための貫通口2eの中心にはケーブルが配線され、このケーブルは配線ボックス2の底壁部2Cと閉塞板11の配線ボックス2の底壁部側のとの間で形成される空間、及び閉塞板11の切抜き誘導線11Dを介してコンセントやスイッチ等の付設接続器に接続されることから、上記(あ-1)で検討したように、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成した場合においても、引用発明のごとく、閉塞板11の閉塞板11の閉塞板部11Aの底部が、配線ボックス2の導出口形成用脆弱部2fから選択的に形成された貫通口2eのフレーム枠側の貫通口位置よりもフレーム側に配置されていた方が、電気的接続が容易に行えることは明らかであって、本願補正発明のごとく、「前記凹部の底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され」るように構成することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(い)について
(い-1)引用発明において、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付ける課外を解決するために、上記引用刊行物Bや上記引用刊行物Cに記載されている防塵カバーと同様に、閉塞機能を有する閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成することは、上記「相違点(あ)について」の(あ-1)で検討したとおりである。そして、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-4)には、「図2は、配線ボックス2の取付け片2bが、閉塞板11の係止孔11Cを介して閉塞板11の閉塞板部11Aの周辺部の貫通口H側の底部に接するようにしてネジ8で取り付けられている」ことが記載されていることから、引用発明において、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、閉塞板11の閉塞板部11Aに、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成すれば、配線ボックス2の取付け片2bが閉塞板11の閉塞板部11Aの貫通口H側の底部に接するようにしてネジ8で取り付けるために、閉塞板部11Aの周辺部を残した状態で、閉塞板11の閉塞板部11Aの中央部に凹部が形成されるから、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるために閉塞板部11Aの周辺部を残した部分、すなわち、中間底壁部は、閉塞板11の環状閉塞部11Bと付設接続器を取付けるように形成された閉塞板11の閉塞板部11Aの凹部との中間の位置に形成され、また、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるための閉塞板部11Aの周辺部を残した部分の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所には、配線ボックス2の取付け片2bと係合する係止孔11Cが側壁部に形成されるから、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるために閉塞板部11Aの周辺部を残した部分は、閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に形成された配線ボックス2の取付け片2bと係合する係止孔11Cと当接もしくは近接した配置となるといえる。
そうすると、上記「相違点(あ)について」の(あ-1)で検討したとおり、引用発明において、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成すれば、本願補正発明のごとく「前記ボックスカバーには、前記取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部が、前記内外方向及び前記配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において前記当て付け部と前記凹部との間に位置する状態で形成され」ることは明らかである。
(い-2)そして、引用発明において、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成すれば、上記(い-1)で検討したように、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるために閉塞板部11Aの周辺部を残した部分が形成され、また、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるための閉塞板部11Aの周辺部を残した部分の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所には、配線ボックス2の取付け片2bと係合する係止孔11Cが側壁部に形成されるから、配線ボックス2の取付け片2bは、配線ボックス2の底壁部2c及び周壁部2dに形成された導出口形成用脆弱部2fよりも、フレーム枠4側、すなわち、配線ボックス2の取付け片2bをネジ8で取り付けるために閉塞板部11Aの周辺部を残した部分の方が、配線ボックス2の底壁部2c及び周壁部2dに形成された導出口形成用脆弱部2fよりも、フレーム枠4側に配置され、本願補正発明と同様に、「前記中間底壁部が前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置されているを含む」ことになるのは明らかである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、請求人は当審の審尋に対する回答書において、
「引用文献1以外の他の引用文献2、3に、配線ボックス内に入り込む部分の一部分のみに凹部を設けることを示唆する記載はなく、勿論、閉塞部を貫通口に近い側に配置することを示唆する記載も、配線ボックス内の周壁部側の空間を中央側よりも広く確保することを示唆する記載もない以上は、仮に、引用文献1の閉塞板部に引用文献2、3の技術を適用するにしても、閉塞板部の位置を裏側(貫通口から離れる側)に移動させることまでが限度であり、本願発明のように、取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部を内外方向及び配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において当て付け部と凹部との間に位置する状態でボックスカバーに形成し、さらに、凹部の底壁部を挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置し、中間底壁部を前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置することまでは、如何に当業者であったとしても容易に想到し得るものではないと思料致します。」旨の主張をしている。
しかしながら、上記「相違点(あ)について」の(あ-1)で検討したように、引用発明の電気接続ボックスにおいても、上記引用刊行物Bのスイッチボックスや上記引用刊行物Cのボックスと同様に、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付ける課題があり、さらに、引用発明では、閉塞板と11と、配線ボックスR2とは、閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成をとっているから、上記引用刊行物Bや上記引用刊行物Cに記載されている防塵カバーと同様に、閉塞機能を有する閉塞板11の閉塞板部11Aと環状閉塞部11Bとの境界相当箇所に、配線ボックス2の取付け片2bと係合する抜き差し自在な係止孔11Cが形成される構成を保った状態で、壁Wの裏面側よりもかなり深い位置にまでコンセントやスイッチ等の付設接続器を取付けるように、閉塞板11の閉塞板部11Aに凹部を形成することが必要なことは当業者であれば容易になし得るものであり、さらに、「本願発明のように、取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部を内外方向及び配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において当て付け部と凹部との間に位置する状態でボックスカバーに形成し、さらに、凹部の底壁部を挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置し、中間底壁部を前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置する」点についても、上記「相違点(あ)について」の(あ-2)、上記「相違点(い)について」の(い-1)及び(い-2)で検討したとおりであるので、請求人の主張は採用できないものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年8月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成21年11月2日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 2 (1)」の「ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載したように、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
壁、天井又は床に形成された貫通口に開口部が望む状態で壁、天井又は床の裏側に配設される配線ボックスと、この配線ボックス側から導出されるケーブルに接続される付設接続器を備え、かつ、壁、天井又は床の表側に位置する状態で配線ボックスに固定されるフレーム枠とが主要構成として備えられ、前記配線ボックスと前記フレーム枠との間に、熱膨張によって前記貫通口を実質的に閉塞する熱膨張性耐熱樹脂製のボックスカバーが介挿されているとともに、前記ボックスカバーにおける前記配線ボックスの開口面に沿う内外方向の外方側には、前記貫通口周縁に接当可能な環状の当て付け部が形成され、前記ボックスカバーの前記内外方向の内方側には、前記フレーム枠の付設接続器が入り込み可能な凹部が形成され、
前記配線ボックスの開口部には、前記フレーム枠と締結固定するための取付け片が開口縁から内方に突設されているとともに、
前記ボックスカバーには、前記取付け片の裏面に当接又は近接する中間底壁部が、前記内外方向及び前記配線ボックスの開口面に直交する表裏方向の夫々において前記当て付け部と前記凹部との間に位置する状態で形成されている電気接続ボックス。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は上記「第2 2 (3)」の(ア)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (3)」の(イ)で検討した本願補正発明は、上記本願発明に「前記配線ボックスの周壁部には、壁、天井又は床の裏側から配線ボックスにケーブルを挿通可能な挿通口を現出する挿通口形成用脆弱部が形成されているとともに、前記凹部の底壁部が、前記挿通口形成用脆弱部の中心位置よりも前記フレーム枠側に配置され、前記中間底壁部が前記挿通口形成用脆弱部のフレーム枠側端よりもフレーム枠側に配置されている」構成を付加して、本願発明の「配線ボックスの周壁部」及び「ボックスカバー」を限定して特定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに減縮したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (3)」の(イ)において検討したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件出願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-10 
審決日 2011-03-23 
出願番号 特願2005-65751(P2005-65751)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
P 1 8・ 575- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 良平  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 秋月 美紀子
竹中 靖典
発明の名称 電気接続ボックス及び電気接続ボックス用ボックスカバー  
復代理人 宮地 正浩  
代理人 北村 修一郎  
復代理人 東 邦彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ