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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1237000 |
審判番号 | 不服2008-30957 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-08 |
確定日 | 2011-05-11 |
事件の表示 | 平成10年特許願第220944号「加入者のための端末と許可カード、通信ネットワーク、及び加入者に割り当てられたサービスプロファイルの変更方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月22日出願公開、特開平11-168560〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成10年8月5日(優先権主張:平成9年8月9日,独国)の出願であって, 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年4月22日付け,及び平成19年6月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 (本願発明) 「音声入力手段及び音声出力手段と,前記音声入力手段及び音声出力手段に接続され,加入者が端末から取り外して持ち運ぶことができるデータメモリ(MEM)にアクセスするプロセッサ(μP)とを有する通信ネットワーク(MRN)の加入者用の端末(MS)であって,前記データメモリが前記加入者に割り当てられたサービスプロファイルのデータを保持する消去可能メモリ(MEM)であり,前記プロセッサ(μP)が,前記音声入力手段及び音声出力手段を制御して,サービスプロファイルデータの入力のために前記加入者からの音声命令を受け取り,前記音声命令について尋ねる前記加入者の音声の質問を提供し,前記データが変更されたときに音声の確認を提供することを特徴とする端末(MS)。」 2.引用例 A.これに対して,原査定の拒絶理由に引用された特開平5-236532号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は通信網における加入者端末のプログラムの変更に関するものである。」(4頁右欄6行?8行) ロ.「【0002】 【従来の技術】従来,ISDNシステム等の通信網において,契約している加入者が,新規のサービスを実施する際には,該サービスに対応したIインタフェース端末を設置していた。この方法により加入者は,網の提供する任意のサービスを受けることができた。また,ICカードなどのプログラム記憶媒体を付加することにより呼処理プログラムの機能拡張ができる加入者端末においては,新たなICカードなどを入手することにより,網の提供するサービスを受けることができた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の方式では,加入者が新規のサービスを実施する際に,すでに所有しているIインタフェース端末では該サービスで用いられる新規信号の送出や分析が行えず,新規に該サービス対応のIインタフェース端末を設置する必要またはICカードなどを入手する必要が生じることがあった。ICカードには,修正(プログラムの全体を書替ること,一部を変更すること,一部を追加すること,または新規なサービスに対応したプログラムを追加することをいう)のためのプログラムが入っている。 【0004】例えば,通常の発信・着信のみをサポートしている加入者端末では,コールウェイティングや着信転送サービスといった付加サービスを実現することは不可能であり,新たに付加サービス用の加入者端末または付加サービス用ICカードなどが必要となる。 【0005】しかしながら,この方法においては,(新たな信号手順を伴う)新規サービスが導入されるたびに加入者端末を取り替えるかプログラム記憶媒体を入手せねばならず加入者に負担をかけるものとなっている。またサービスを提供する網の運用者の立場としては,新規サービスの導入に際しては既存の加入者端末(既存の信号方式)になるべく影響を与えないような信号手順を考慮せねばならず,柔軟なサービス追加が行いにくくなる可能性があった。 【0006】たとえば,付加サービスにおけるフィーチャ・キー番号の割当ては,いったん網が割当ててしまうと,その番号をもとに設計された加入者端末やICカードなどが大量に普及するため,別の番号になかなか変更しにくいということが考えられる。 【0007】本発明は以上に述べた新規加入者端末設置やプログラム記憶媒体入手の必要性を軽減し,サービス追加の柔軟性を加入者と網運用者に与えることを可能とするものである。」(4頁右欄9行?5頁左欄2行) ハ.「【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,加入者端末の保持するプログラムを通信回線を通して修正が可能な加入者端末と,加入者端末に提供する,複数のプログラムを管理しているセンターと,加入者端末とセンターを接続する交換機と,加入者端末ごとに異なる,提供しているサービスに関するデータを保持する管理装置とを有する加入者端末機能修正を行う通信システムにおいて,加入者端末がサービスの修正を交換機を介して,センターに要求すると,センターでは,加入者端末のサービス登録状態と提供可能なサービスとが一致するかどうかを確認し,サービスを修正するときは,管理装置に対して加入者端末に関するデータの書き換えの指示を送出し,そのサービスに対応するプログラムを交換機を介して,加入者端末に対し転送し,加入者端末は,プログラムを修正することとしたものである。 【0009】 【作用】通信網において,加入者端末がサービスの修正を交換機を介して,センターに要求すると,センターでは,加入者端末のサービス登録状態と提供可能なサービスとが一致するかどうかを確認し,サービスを修正するときは,管理装置に対して加入者端末に関するデータの書き換えの指示を送出し,そのサービスに対応するプログラムを交換機を介して,加入者端末に対し転送し,加入者端末は,プログラムを修正する。」(5頁左欄3行?27行) ニ.「【0010】 【実施例】本発明の一実施例を図1に示す。図1は,本発明における基本構成要素であるISDN端末,ISDN加入者線交換機および加入者端末用プログラム管理センターの関係を示したものである。図2は,本実施例でのシーケンスを示したものである。 【0011】(略) 【0012】(略) 【0013】加入者が新たなサービスを登録しようとすると,端末1を操作して交換機2に対し,「呼設定」信号4aを送信する。この信号の着番号情報要素には,サービス登録用の特番が示されている。また,登録するサービス名とその属性が新規パラメータであるサービス登録情報要素に入れられている。 【0014】この信号を受信した交換機2では,着番号情報要素よりサービス登録手順が起動されたことを認識し,交換機2内のデータとの整合性をチェックしサービス許容判定した後,端末1に対し「呼設定受付」信号4bを返すとともに,センター3に対し,データ要求信号5aを送出する。この信号中には,「呼設定」信号4aに含まれるサービス登録情報要素の内容も入っている。また,必要があれば,加入者に関するデータをこの信号に含ませることもできる。 【0015】センター3ではこの信号を受けると,サービス名・サービス属性などのデータより対応する端末用呼処理プログラムを求める。そして,交換機2に対しデータ要求受付信号5bを送信する。交換機2ではこの信号を受け付けると通話路を接続し,端末1に対し「応答」信号4cを送信する。 【0016】その後,端末用プログラムのデータ通知5cが,インチャネルでセンター3から端末1に対して行われる。・・・(中略)・・・データの転送が終了すると,センター3は交換機2に対してデータ終了5dを送信する。交換機2ではこの信号を受信すると,センター3に対してデータ終了確認5eを送信した後,以上の手順が成功したと判断し,該加入者に関するサービス許容データを書き替える。同時にまた通話路を切断し,「解放」信号4dを端末1に送信する。以上のようにして,加入者のサービス登録ならびに端末用呼処理プログラムの転送が行われる。」(5頁左欄28行?右欄26行) ホ.「【0017】次に,本発明における端末の実施例を図3,図4により示す。・・・(中略)・・・。 【0018】図3に示されているように,端末1のディスプレイ1b上には,機能ボタン1cに対応するサービス名が表示され,端末が現在提供できるサービスを表示できる。・・・(中略)・・・。 【0019】サービス登録状態を加入者が変更した場合は,図2に示した手順が終了したあと,端末1には網に登録したサービス状態が記憶され,また機能ボタンに新しく登録したサービス名が与えられる。 【0020】また,端末1はICカードドライブ1eを備えており,ICカードを挿入できるようになっている。ICカード挿入時,あるいは加入者がICカードサービス起動を端末に要求すると,端末1はICカードのサービスメニューのなかで,加入者が網に登録していないサービスがあるかどうかをチェックする。もしある場合は,加入者に対しそれらのサービスのリストを示し,一つ一つに対して網に登録するかどうかを尋ねる。その際に,加入者の判断の参考のために,現在登録中のサービスリストとその契約料金,および今回登録するサービス候補の契約料金を網から収集して加入者に示してもよい。加入者が登録するか否かの判断を端末1に入力すると,次に端末1と網において端末用呼処理プログラムの版数チェックを行なう。このとき,版数が同一であることが確認されれば,あとはサービス登録手順と同様の方法で端末1及び網にサービスが登録される。」(5頁右欄27行?6頁左欄6行) へ.「【0049】 【発明の効果】本発明によれば,新規加入者端末設置やプログラム記憶媒体入手の必要性を軽減し,サービス追加の柔軟性を加入者と網運用者に与えることを可能とする。」(8頁左欄13行?17行) ト.図4には,送受話器1aと,ICカードドライブ1eと,前記送受話器1aに通話路スイッチ回路1mを介して接続されると共に,前記ICカードドライブ1eに接続された中央制御装置(CPU)1jが記載されている。 上記摘記事項イ.段落0002,0003等の記載によれば,ICカードには端末用呼処理プログラムが格納されることが明らかである。 また,上記段落0003における「ICカードには,修正(プログラムの全体を書替ること,一部を変更すること,一部を追加すること,または新規なサービスに対応したプログラムを追加することをいう)のためのプログラムが入っている。」との記載によれば,上記摘記事項ハ.段落0008における「修正」には,「新規なサービスに対応したプログラムを追加すること」が含まれることが明らかである。 したがって,上記引用例の記載,及びこの分野の技術常識によれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 「送受話器1aと,前記送受話器1aに接続され,加入者が端末から取り外して持ち運ぶことができるICカードにアクセスする中央制御装置(CPU)1jとを有するISDNの加入者用のISDN端末であって,ICカードが前記加入者に割り当てられたサービスメニューのデータを保持するメモリであり,前記中央制御装置(CPU)1jは,ISDN端末が新規なサービスの追加をセンターに要求すると,センターは,そのサービスに対応するプログラムをISDN端末に対し転送し,ISDN端末は,該プログラムを追加するようにしたISDN端末1。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 イ.引用発明の「送受話器」,「ICカード」,「中央制御装置」,「ISDN端末」は,それぞれ「音声入力手段と音声出力手段」,「端末から取り外して持ち運ぶことができるデータメモリ」,「プロセッサ」,「通信ネットワークの加入者用の端末」といえる。また,前記中央制御装置は,ICカードにアクセスすることが自明である。 ロ.引用発明の「ICカード」には保持された「サービスメニュー」は,加入者に割り当てられたサービスプロファイルのデータといえる。 以上総合すると,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。 (一致点) 「音声入力手段及び音声出力手段と,前記音声入力手段及び音声出力手段に接続され,加入者が端末から取り外して持ち運ぶことができるデータメモリにアクセスするプロセッサとを有する通信ネットワークの加入者用の端末であって,前記データメモリが前記加入者に割り当てられたサービスプロファイルのデータを保持するメモリである端末。」 (相違点1) データメモリに関して,本願発明は「消去可能メモリ」であるが,引用発明は「ICカード」である。 (相違点2) 本願発明では,プロセッサが,「前記音声入力手段及び音声出力手段を制御して,サービスプロファイルデータの入力のために前記加入者からの音声命令を受け取り,前記音声命令について尋ねる前記加入者の音声の質問を提供し,前記データが変更されたときに音声の確認を提供する」のに対して,引用発明は,これらの構成がない。 4.判断 そこで,相違点について検討する。 (相違点1について) 引用発明は,前記したように,「ISDN端末が新規なサービスの追加をセンターに要求すると,センターは,そのサービスに対応するプログラムをISDN端末に対し転送し,ISDN端末は,該プログラムを追加する」という構成を含むものものであり,追加されたプログラムについては,そのサービスプロファイル(サービスメニュー)をも端末(ISDN端末)に取り込む必要があることは技術的に見て当然の事項である。そして,例えば,特開平5-327835号公報,段落0021,0022等に記載されているように,この種のカード式加入者端末において,新規のプログラムやデータをホストコンピュータ等からダウンロードして追加する際,それらを消去可能なメモリカードに格納することが周知であることを考慮すれば,本来のサービスプロファイルを保存しているデータメモリ(ICカード)自体を消去可能として,サービスプロファイルを端末に取り込めるようにすることも,当業者であれば,単なる設計的事項ということができる。 したがって,引用発明の「ICカード」を「消去可能メモリ」に変更する程度のことに格別な創意工夫を見出すことはできない。 (相違点2について) データ等の入力のために,ユーザからの命令,前記命令について尋ねる前記ユーザへの質問,及び前記データが変更されたときの確認を音声入力手段と音声出力手段を用いて行うことは,特開平8-186654号公報(段落0025等参照),特開昭61-246768号公報(10頁左上欄9行?右上欄19行等参照),あるいは,原審の拒絶査定の備考欄に例示した特開平6-152768号公報等に記載されているように周知であるから,サービスプロファイルデータを入力するために,前記周知技術を用いて,音声入力手段及び音声出力手段を制御して,加入者からの音声命令を受け取り,前記音声命令について尋ねる前記加入者の音声の質問を提供し,前記データが変更されたときに音声の確認を提供することは,当業者が容易になし得ることである。 そして,本願発明の効果は,引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測し得るものであって,格別のものではない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-25 |
結審通知日 | 2010-11-30 |
審決日 | 2010-12-20 |
出願番号 | 特願平10-220944 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 庸介、田中 秀樹 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 高野 洋 |
発明の名称 | 加入者のための端末と許可カード、通信ネットワーク、及び加入者に割り当てられたサービスプロファイルの変更方法 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 川口 義雄 |
代理人 | 大崎 勝真 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 渡邉 千尋 |
代理人 | 坪倉 道明 |