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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1237068 |
審判番号 | 不服2009-22523 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-18 |
確定日 | 2011-05-13 |
事件の表示 | 特願2004-294151号「射出成形機の動作制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日出願公開、特開2006-103203号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年10月6日の出願であって、平成21年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年11月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成21年11月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成21年11月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年11月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本願補正発明について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 可動盤と固定盤間に複数の金型を配するとともに、前記可動盤と前記固定盤間に配した回転盤に各金型を構成する一方の型を取付け、前記回転盤を回転させることにより前記一方の型を順次入替えて複合成形品を成形する射出成形機の動作制御方法において、前記可動盤を前進させて型締めを行う型締工程以前に行う、前記回転盤を回転させて前記一方の型を入替える型替工程における、前記回転盤を回転させる単純動作,又は前記回転盤を軸方向に押出す押出動作とこの押出動作後に前記回転盤を回転させる回転動作とこの回転動作後に前記回転盤を軸方向に引込む引込動作からなる複合動作の少なくとも一部の動作を、予め設定した任意のタイミングにより前記型締工程の動作に並行して同時動作させることを特徴とする射出成形機の動作制御方法。」 と補正された。 上記補正は、平成20年8月29日付け手続補正書の請求項1の「又は前記複合成形品を離型する突出工程の少なくとも一部の動作」(選択肢の一つ)を削除し、発明を特定するために必要な事項である「型替工程の少なくとも一部の動作」について「型替工程における、前記回転盤を回転させる単純動作,又は前記回転盤を軸方向に押出す押出動作とこの押出動作後に前記回転盤を回転させる回転動作とこの回転動作後に前記回転盤を軸方向に引込む引込動作からなる複合動作の少なくとも一部の動作」との限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載 本願の出願前に頒布された刊行物1である特開昭61-295017号公報(以下「引用例1」という)には、次の(ア)?(ウ)の事項が示されている。 (ア)「(発明が解決しようとする問題点) 「上記回転装置の金型受台への内設は、同一位置において型開閉を行う通常の射出成形機では、構造上の問題点はないが、ターンテーブルに複数のねじコアを型受台と共に設けて、成形品の離型を異なつた位置にて行つたり、または多色成形のために成形を2度行う回転式成形機に応用することは、《以下略》」〈1頁右下欄7行ないし14行〉 (イ)「第3図は回転式2色成形機の場合の応用例を示すもので、上記型受台3,4は、可動盤51に取付けられた垂直方向に回動自在なターンテーブル1に、固定盤28側の2つのキヤビテイ型61,62に対向させて設けてある。また型受台3,4には前記実施例と同様に離型板12と回動軸15が設けてあり、型受台側部のアーム29に軸承した主歯車17と回動軸端の従歯車18は、チエーン30によつて連絡され、2色目の成形を行うキヤビテイ型62と対向位置する一方の型受台3の停止位置に、上記駆動装置19が、可動盤51の側部に取付けて配設してある。この駆動装置19は、油圧シリンダ25のピストン26に連結した摺動部材31の上に電動モータ22を取付けており、電動モータ22と共に伝動軸21が移動して、主歯車17の角穴17aとヘツド21aとの係合及び離脱を行えるようにしてなる。 この成形機における2つのキヤビテイ型61,62と型受台3,4の型開閉は可動盤51によつて同時に行われ、アクチユエータ9によるターンテーブル1の回動と、2色成形を完了した成形品11のねじコア14の離型は、型開き時に行われる。」〈3頁右上欄17行ないし左下欄17行〉 (ウ)第3図は2色回転成形機の要部縦断側面図である。〈3頁右下欄17行〉 (エ)上記(ア)?(ウ)の記載事項には、「2色回転成形機」及びその「動作制御方法」が開示されていることが明らかである。 (オ)上記(イ)の記載の「アクチユエータ9によるターンテーブル1の回動と、2色成形を完了した成形品11のねじコア14の離型は、型開き時に行われる」の「型開き時」とは、型開き状態のことと解釈されるので、型開き状態でターンテーブル1を回動し、その回動に伴なって成形品11を離型している。 そうすると、ターンテーブル1を単純に回動する、すなわちターンテーブル1を回転させる単純動作は型開き状態のときに行われており、型開き状態とは型開き工程の動作時であるから、ターンテーブル1を回転させる単純動作は型開き工程の動作時に行われることを意味する。 《引用発明》 上記引用例1の(ア)?(オ)に示された事項及び図の内容を総合すると、引用例1には、以下の発明が示されていると認められる。 「可動盤51と固定盤28間に、ターンテーブル1、型受台3,4、離型板12、ねじコア14、キヤビテイ型61,62を配するとともに、ターンテーブル1に各型受台3,4、離型板12、ねじコア14を取付け、ターンテーブル1を回転させることにより前記型受台3,4、離型板12、ねじコア14を入替えて成形品11を成形する回転式2色成形機の動作制御方法において、2つのキヤビテイ型61,62と型受台3,4の型開閉は可動盤51の移動によって同時に行われ、ターンテーブル1を回転させる単純動作は、型開き工程の動作時に行われていることを特徴とする回転式2色成形機の動作制御方法。」(以下「引用発明」という) (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「回転式2色成形機」は、本願補正発明の「射出成形機」に相当する。 以下同様に、「可動盤51」は「可動盤」に、「固定盤28」は「固定盤」に、「型受台3,4、離型板12、ねじコア14、キヤビテイ型61,62」は「複数の金型」に、「ターンテーブル1」は「回転盤」に、「型受台3,4、離型板12、ねじコア14」は「金型を構成する一方の型」に、「成形品11」は「複合成形品」にそれぞれ該当する。 また、引用発明の「2つのキヤビテイ型61,62と型受台3,4の型開閉は可動盤51の移動によって同時に行われ、ターンテーブル1を回転させる単純動作は、型開き工程の動作時に行われている」については、それが2色成形の2色目の場合であるとき、該「ターンテーブル1を回転させる単純動作」は当然2色目の可動盤51の移動による型閉じが行われる(型締工程)前で、1色目の成形後の型開き動作時にターンテーブル1を回転させて一方のキヤビテイ型を入替える(型替工程)ものであるから、本願補正発明の「可動盤を前進させて型締めを行う型締工程以前に行う、前記回転盤を回転させて前記一方の型を入替える型替工程」に相当し、引用発明の「ターンテーブル1を回転させる単純動作」は本願補正発明の「回転盤を回転させる単純動作,又は前記回転盤を軸方向に押出す押出動作とこの押出動作後に前記回転盤を回転させる回転動作とこの回転動作後に前記回転盤を軸方向に引込む引込動作からなる複合動作の少なくとも一部の動作」に相当していることになる。 そして、引用発明の「型開き工程の動作時に行われている」とは型開き工程の動作に並行して同時動作させることを意味しているから、本願補正発明の「型締工程の動作」とは、ともに「型開閉工程の動作に並行して同時動作させること」で、概念上、共通している。 以上の事項を考慮すると、両者は次の点で一致し、 「可動盤と固定盤間に複数の金型を配するとともに、前記可動盤と前記固定盤間に配した回転盤に各金型を構成する一方の型を取付け、前記回転盤を回転させることにより前記一方の型を入替えて複合成形品を成形する射出成形機の動作制御方法において、前記可動盤を前進させて型締めを行う型締工程以前に行う、前記回転盤を回転させて前記一方の型を入替える型替工程における、前記回転盤を回転させる単純動作,又は前記回転盤を軸方向に押出す押出動作とこの押出動作後に前記回転盤を回転させる回転動作とこの回転動作後に前記回転盤を軸方向に引込む引込動作からなる複合動作の少なくとも一部の動作を、型開閉工程の動作に並行して同時動作させることを特徴とする射出成形機の動作制御方法。」 以下の点で相違する。 相違点a:「型開閉工程の動作」について、本願補正発明では「型締工程の動作に並行して同時動作させる」のに対し、引用発明では「型開き工程の動作時に行われている」点。 相違点b:本願補正発明では「一方の型を順次入替えて」複合成形品を成形するが、引用発明では「一方の型を順次入替え」ることに言及していない点。 相違点c:本願補正発明の「予め設定した任意のタイミングにより」同時動作させるのに対し、引用発明にはそのようなタイミングについて不明な点。 (4)当審の判断 相違点aに関して、 型開閉工程とは、型開き工程と型閉じ工程(型締工程)からなり、「型開き工程」と「型閉じ工程(型締工程)」は連続してそれぞれの工程を交互に繰り返し行われるものでる。「回転盤を回転させる単純動作」を連続する型開閉工程動作で、型開き工程」と「型閉じ工程(型締工程)」のどちらの動作に併せるかは当業者であれば適宜なし得る程度の事項に過ぎない。 そうすると、引用発明の「型開き工程の動作時に行われている」が型開き工程の動作に並行して同時動作させることを考慮すると、それに連続する型閉じ工程(型締工程)に並行して同時動作させることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 相違点bに関しては、「一方の型を順次入替え」ることは、一般に、射出成形機で複合成形品を成形する際の常套手段である。 そうすると、引用発明に上記の常套手段を適用して、上記相違点bの構成とすることは当業者が容易に成し得たことといえる。 相違点cに関しては、「予め設定した任意のタイミングにより」動作させることは制御では当然の行われていることであり、引用発明においても当然配慮されていることと認められる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び当該分野の常套手段から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成21年11月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年8月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】 可動盤と固定盤間に複数の金型を配するとともに、前記可動盤と前記固定盤間に配した回転盤に各金型を構成する一方の型を取付け、前記回転盤を回転させることにより前記一方の型を順次入替えて複合成形品を成形する射出成形機の動作制御方法において、前記可動盤を前進させて型締めを行う型締工程以前に行う、前記回転盤を回転させて前記一方の型を入替える型替工程の少なくとも一部の動作又は前記複合成形品を離型する突出工程の少なくとも一部の動作を、予め設定した任意のタイミングにより前記型締工程の動作に並行して同時動作させることを特徴とする射出成形機の動作制御方法。」 (2)刊行物等 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明に、単なる選択肢「又は前記複合成形品を離型する突出工程の少なくとも一部の動作」が加入され、「型替工程の少なくとも一部の動作」に関する限定事項である「型替工程における、前記回転盤を回転させる単純動作,又は前記回転盤を軸方向に押出す押出動作とこの押出動作後に前記回転盤を回転させる回転動作とこの回転動作後に前記回転盤を軸方向に引込む引込動作からなる複合動作の少なくとも一部の動作」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-11 |
結審通知日 | 2011-03-16 |
審決日 | 2011-03-29 |
出願番号 | 特願2004-294151(P2004-294151) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 富永 久子、田口 昌浩 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
田口 傑 小関 峰夫 |
発明の名称 | 射出成形機の動作制御方法 |
代理人 | 下田 茂 |