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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1237076
審判番号 不服2010-12444  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-09 
確定日 2011-05-13 
事件の表示 特願2000- 29924「バッグインボックス用キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月14日出願公開、特開2001-219956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年2月8日の出願であって、平成22年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年6月9日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
平成22年6月9日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲請求項1の記載につき
「【請求項1】 バッグインボックスの内袋に固着されたグロメットの開口部を弾性のある部材で常時密栓し、該部材の一部を変形させることによって内容液を注出可能とするキャップであって、前記グロメットの先端部に嵌合し、且つ側面に注出口を備える筒状体と、該筒状体の開口部内縁に連接されて該筒状体内側に凹状に形成され、且つ凹部内に摘まみを備える弾性のある隔壁と、前記筒状体の開口部外縁の前記注出口と対向する位置にヒンジを介して回動自在に連接され、且つ前記筒状体の開口部全体並びに前記注出口を覆うヒンジキャップとからなり、前記筒状体と前記ヒンジキャップとが、ヒンジとバンドを併用する構造で連接されていることを特徴とするバッグインボックス用キャップ。」
とあるのを

「【請求項1】 バッグインボックスの内袋に固着されたグロメットの開口部を弾性のある部材で常時密栓し、該部材の一部を変形させることによって内容液を注出可能とするキャップであって、前記グロメットの先端部に嵌合し、且つ側面に注出口を備える筒状体と、該筒状体の開口部内縁に連接されて該筒状体内側に凹状に形成され、且つ凹部内に摘まみを備える弾性のある隔壁と、前記筒状体の開口部外縁の前記注出口と対向する位置にヒンジを介して回動自在に連接され、且つ前記筒状体の開口部全体並びに前記注出口を覆うヒンジキャップとからなり、前記筒状体と前記ヒンジキャップとが、ちょうつがいとバンドを併用する構造のヒンジで連接され、該ヒンジが、両側がちょうつがい、中央がバンドであるセパレートタイプ、又は中央がちょうつがい、両側がバンドである一体タイプであることを特徴とするバッグインボックス用キャップ。」
と補正するものである。

2.判断
2.1 補正事項aの補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の「ヒンジとバンドを併用する構造で連接されている」構成を、「ちょうつがいとバンドを併用する構造のヒンジで連接され、該ヒンジが、両側がちょうつがい、中央がバンドであるセパレートタイプ、又は中央がちょうつがい、両側がバンドである一体タイプである」と限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合している。

2.2 独立特許要件について
上記補正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

2.2.1 本願補正発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という)は、上記補正事項aの補正後の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.2.2 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特公昭61-35064号公報(以下 「引用例1」という。)には、図面と共に次の記載がある。

(a)「このようなものは、例えば第5図ないし第7図に示すような構造である。すなわち、図中の24は液体容器に形成された環状スパウト部であり、この環状スパウト部24は円筒状をなしている。そして、この環状スパウト部2には合成樹脂製のキヤツプ部29が嵌合されている。このキヤツプ部29は、円筒状の環状側壁部21と、この環状側壁部21の前面を閉塞し上記の環状スパウト部24の先端部に向けて突出した半球状壁部22とが一体に形成されている。またこの環状側壁部21の下部には液注出口23が形成されている。そして、上記の半球状壁部22は上記の環状スパウト部24の先端開口に弾性的に密着し、この開口を閉塞して液の流出を遮断している。また、この半球状壁部22の前面の中央部には開閉用突起25が一体に突設されている。
このようなものは、常時は上記の半球壁部22が環状スパウト部24先端開口に弾性的に密着してこの開口を閉塞し、液の流出を遮断している。そして、液を流出させる場合には、この開閉用突起25を指で上方に押し上げると、第6図に示すようにこの半球状壁部22が弾性的に変形し、この半球状壁部22の下部が環状スパウト部24の先端開口から離れ、液が流出し、この流出した液はさらにキヤツプ部29の環状側壁部21に形成された液注出口23を介して流出する。そして、上記の開閉突起25を上方に押圧している指を離せば、この半球状壁部22は自身の弾性力で第5図に示すうに復帰し、環状スパウト部24の先端開口に密着して液の流出が停止する。」(第2欄第17行?第3欄第18行)

(b)「本発明は液体容器用のキヤツプ装置に関し、さらに限定すれば、本発明は合成樹脂のフイルム製の内袋を段ボール箱等の外箱で包んだ使い捨て用の液体容器のワンタツチ形のキヤツプ装置に関する。」(第2欄第5行?第9行)

(c)「また、このガイドレバー6の下面には下方に向けてL字形のかぎ状部8が一体に突設されている。このかぎ状部8はこのガイドレバー6が下方に回動した場合には上記の液注出口3に弾性的に嵌合し、この液注出口3の開口を覆うとともに、この液注出口3との弾性的嵌合力によつてこのガイドレバー6を下方に回動した位置に保持するよう構成されている。」(第5欄第5行?第12行)

上記aには、ここにおける「このキヤツプ部29は、円筒状の環状側壁部21と、この環状側壁部21の前面を閉塞し上記の環状スパウト部24の先端部に向けて突出した半球状壁部22とが一体に形成されている。」、「常時は上記の半球壁部22が環状スパウト部24先端開口に弾性的に密着してこの開口を閉塞し、液の流出を遮断している。」の記載及び図面より、「半球状壁部」が「環状スパウト部の先端開口を弾性のある部材で常時密栓」する構成及び「環状スパウト部の開口部内縁に連接されて該環状スパウト部に凹状に形成する」構成であることが示されているといえる。
また、上記cには、この記載及び図面より、「凹部内に液注出口を覆うガイドレバーを備える」構成についても示されているといえる。

以上の記載及び図面によれば、引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という)は次のとおりのものと認められる。

「外箱で包んだ内袋に固着された環状スパウト部の開口部を弾性のある部材で常時密栓し、該部材の一部を変形させることによって内容液を注出可能とするキャップ部であって、前記環状スパウト部の先端部に嵌合し、且つ側面に液注出口を備える環状側壁部と、該環状側壁部の開口部内縁に連接されて該環状側壁部に凹状に形成され、且つ凹部内に開閉用突起を備える弾性のある半球状壁部とを有する液体容器用キャップ装置」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭63-171561号(実開平2-93247号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(d)「容器の口部に装着される合成樹脂製の蓋体において、容器の口部に装着される部分を構成するリング状の本体部と、薄肉のヒンジ部を介して前記本体部に回動可能に連結されているキャップと、切断誘導部がプルタブによって破断されるようになっておりかつ前記本体部の内側に組合わされる中栓とを具備し、前記中栓が前記本体部に連結された状態で2色成形によって成形されていることを特徴とする容器の蓋体。」(第1頁第5行?第13行)
(e)「中栓17を備える本体部13の外周側の一部には断面が第6図に示すようにL字状の連結部15とその両側のヒンジ部14とを介して皿状のキャップ16が連結されている。こキャップ16の内側には円形のリブ21が形成されている。またキャップ16の外周側の先端部にはつまみ22が形成されるようになっている。またつまみ22の根元側の部分には係合用リブ23が形成されている。このリブ23は本体13の外周側の凹部24と係合されるようになっており、これによってキャップ16は閉じた状態で保持されるようにしている。」(第6頁第15行?第7頁第6行)

上記d、eの記載及び図面より、「本体部(13)とキャップ(16)とが、ヒンジ部と連結部を併用する連結部位で連接され」ている構成が示されているといえる。

以上の記載及び図面によると引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」とする)が記載されている。

「本体部(筒状体)の中栓(開口部)全体を覆うキャップ(ヒンジキャップ)であって、本体部(筒状体)とキャップ(ヒンジキャップ)とが、ヒンジ部(ちょうつがい)と連結部(バンド)を併用する構造の連結部位(ヒンジ)で連接され、該連結部位(ヒンジ)が両側がヒンジ部(ちょうつがい)、中央が連結部(バンド)を有するキャップ(ヒンジキャップ)」

なお、括弧内は本願発明に倣った用語を示している。

2.2.3 対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「外箱で包んだ内袋」、「環状スパウト部」、「液注出口」、「環状側壁部」、「開閉用突起」、「半球状壁部」は、それぞれ本願補正発明の「バッグインボックスの内袋」、「グロメット」、「注出口」、「筒状体」、「摘み」、「隔壁」に相当する。

すると本願補正発明と引用発明1は

「バッグインボックスの内袋に固着されたグロメットの開口部を弾性のある部材で常時密栓し、該部材の一部を変形させることによって内容液を注出可能とするキャップであって、前記グロメットの先端部に嵌合し、且つ側面に注出口を備える筒状体と、該筒状体の開口部内縁に連接されて該筒状体内側に凹状に形成され、且つ凹部内に摘まみを備える弾性のある隔壁とからなるバッグインボックス用キャップ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願補正発明は、「筒状体の開口部外縁の注出口と対向する位置にヒンジを介して回動自在に連接され、且つ前記筒状体の開口部全体並びに前記注出口を覆うヒンジキャップとからなり、前記筒状体と前記ヒンジキャップとが、ちょうつがいとバンドを併用する構造のヒンジで連接され、該ヒンジが、両側がちょうつがい、中央がバンドであるセパレートタイプ、又は中央がちょうつがい、両側がバンドである一体タイプである」のに対して、引用発明1は、そのようになっていない点

2.2.4 相違点の検討
相違点について
引用発明1における「液体容器用キャップ装置(バッグインボックス用キャップ)」の技術分野において、内容物の液体が開口部及び液注出口(注出口)から漏れないようにすることは、引用例1が液注出口(注出口)を覆うガイドレバーを有する発明を示していることからも容易に着想する課題であり、その課題を解決するために、液体容器用キャップ装置の技術分野において周知技術(特開平8-156957号公報、特開平9-315449号公報を参照のこと)である「ヒンジを介して回動自在に連接され、環状側壁部(筒状体)の開口部全体並びに液注出口(注出口)を覆うヒンジキャップ」を引用発明1に用いて、内容物である液体が漏れないようにすることは当業者にとり格別な困難性もないものである。その際に、引用発明1と容器用キャップ装置という同一の技術分野に属する引用発明2の「本体部(筒状体)の中栓(開口部)全体を覆うキャップ(ヒンジキャップ)であって、本体部(筒状体)とキャップ(ヒンジキャップ)とが、ヒンジ部(ちょうつがい)と連結部(バンド)を併用する構造の連結部位(ヒンジ)で連接され、該連結部位(ヒンジ)が両側がヒンジ部(ちょうつがい)、中央が連結部(バンド)を有するキャップ(ヒンジキャップ)」を用いることは当業者が容易になし得たものであり、引用発明1に引用発明2の前記構成を適用する際に、ヒンジの取付位置を「環状側壁部(筒状体)の開口部外縁の液注出口(注出口)と対向する」位置にして、環状側壁部(筒状体)とヒンジキャップとが連接する箇所を、液注出口(注出口)から液体を出す際にじゃまにならないようにすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

しかも本願補正発明が奏する効果も引用発明1と引用発明2から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。


以上のことから、本願補正発明は、原査定時に引用した引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明

以上のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明は、本件補正a.の補正前の【請求項1】に記載した事項により特定されるものと認められる。
以下補正事項aの補正前の【請求項1】に係る発明を「本願発明」という。

2.引用例及びその記載事項

引用例及びその記載事項は、上記「第2.補正の却下の決定」の項中の「2.2.2引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、本願発明と引用発明1は
「バッグインボックスの内袋に固着されたグロメットの開口部を弾性のある部材で常時密栓し、該部材の一部を変形させることによって内容液を注出可能とするキャップであって、前記グロメットの先端部に嵌合し、且つ側面に注出口を備える筒状体と、該筒状体の開口部内縁に連接されて該筒状体内側に凹状に形成され、且つ凹部内に摘まみを備える弾性のある隔壁とからなるバッグインボックス用キャップ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願発明が、「筒状体の開口部外縁の注出口と対向する位置にヒンジを介して回動自在に連接され、且つ筒状体の開口部全体並びに注出口を覆うヒンジキャップとからなり、筒状体とヒンジキャップとが、ヒンジとバンドを併用する構造で連接されている」構成を有しているのに対して、引用発明1はそのようになっていない点で相違している。

4.相違点の検討
上記相違点について
引用発明1における「液体容器用キャップ装置(バッグインボックス用キャップ)」の技術分野において、内容物の液体が開口部及び液注出口(注出口)から漏れないようにすることは、引用例1が液注出口(注出口)を覆うガイドレバーを有する発明を示していることからも容易に着想する課題であり、その課題を解決するために、液体容器用キャップ装置の技術分野において周知技術(特開平8-156957号公報、特開平9-315449号公報を参照のこと)である「ヒンジを介して回動自在に連接され、環状側壁部(筒状体)の開口部全体並びに液注出口(注出口)を覆うヒンジキャップ」を引用発明1に用いて、内容物である液体が漏れないようにすることは当業者にとり格別な困難性もないものである。その際に、容器用キャップ装置という技術分野において周知技術(実願昭63-171561号(実開平2-93247号)のマイクロフィルム、実願平5-70735号(実開平7-40503号)のCD-ROM、特開平9-315449号公報を参照のことを参照のこと)である「筒状体とヒンジキャップとが、ヒンジとバンドを併用する構造で連接されている」構成を用いることは当業者にとり格別な困難性もないものである。またその際に、前記筒状体とヒンジキャップとが連接する箇所を、注出口から液体を出す際にじゃまにならないように筒状体の開口部外縁の注出口と対向する位置とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

しかも本願発明が奏する効果も引用発明1から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。

本願発明も引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

5.まとめ
そうすると、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
 
審理終結日 2011-03-08 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-31 
出願番号 特願2000-29924(P2000-29924)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 幸雄  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 バッグインボックス用キャップ  
代理人 金山 聡  

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