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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1237333 |
審判番号 | 不服2009-6238 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-23 |
確定日 | 2011-05-16 |
事件の表示 | 特願2001-247118「レーザーアニーリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-118076〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年8月16日の出願(パリ条約に基づく優先権主張:2000年8月31日、 米国)であって、平成20年3月7日に手続補正書が提出され、平成21年2月17日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年3月23日に審判が請求されるとともに、同年4月1日に手続補正書が提出され、その後、平成22年11月2日付けで審尋がされ、同年12月20日に回答書が提出されたものである。 第2 平成21年4月1日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定 【補正の却下の決定の結論】 本件補正を却下する。 【理由】 1 補正の内容 本件補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、次のとおりである。 ア 請求項1について、同項中に、「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置にガスフローを送って、前記ビームが向けられる前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記レーザヘッドに実装されたノズル」及び「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置に送られるガスフローを排気する排気システム」とあるのを、それぞれ、「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記ビームが向けられる前記所定の位置に不活性ガスであるガスフローを送り、前記レーザヘッドに実装されたノズル」及び「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置に送られる前記ガスフローを排気し、排気ポートが前記レーザヘッドに実装された排気システム」と限定すること。 イ 補正後の請求項2及び3は、補正後の請求項1を引用するものであり、上記アの補正に伴って、それぞれ補正されるものである。 ウ 補正前の請求項4及び7を削除すること。 エ 補正前の請求項5、6及び9を、それぞれ、補正後の請求項4、5及び7に繰り上げるとともに、補正後の請求項4、5及び7は、ぞれぞれ補正後の請求項1を引用するものであり、上記アの補正に伴って補正されるものである。 オ 補正前の請求項8を補正後の請求項6に、繰り上げるとともに、「実装された排気ポート」を「実装された前記排気ポート」とし、さらに、補正後の請求項6は補正後の請求項1を引用するものであり、上記アの補正に伴って補正されるものである。 カ 補正前の請求項10、11及び12を、それぞれ、補正後の請求項8、9及び10に繰り上げるとともに、補正後の請求項8、9及び10は、ぞれぞれ補正後の請求項7を引用するものであり、上記ア及びエの補正に伴って補正されるものである。 キ 補正前の請求項13を補正後の請求項12に繰り上げるとともに、補正後の請求項12は、補正後の請求項9を引用するものであり、上記ア、エ及びカの補正に伴って補正されるものである。 ク 補正前の請求項14を補正後の請求項13に繰り上げるとともに、補正後の請求項13は、補正後の請求項1を引用するものであり、上記アの補正に伴って補正されるものである。 2 補正の目的の適否 上記補正ア、イ、エ?クは、いずれも、補正前の請求項に規定されている技術的事項をより限定するものであり、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、上記補正ウは、同法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除に該当するから、同特許法第17条の2第4項柱書きに規定する目的要件を満たす。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、独立特許要件を満たすものであるか否かについて、更に検討する。 3 独立特許要件(進歩性)についての検討 (1)本願補正発明 本件補正による補正後の請求項1?13に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 周囲空気環境内に配置された半導体材料を処理するレーザーアニーリング装置であって、 前記半導体材料の表面上の所定の位置にビームを向けるように前記周囲空気環境内に配置されたレーザーヘッドと、 前記半導体材料の表面上の前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記ビームが向けられる前記所定の位置に不活性ガスであるガスフローを送り、前記レーザヘッドに実装されたノズルと、 前記半導体材料の表面上の前記所定の位置に送られる前記ガスフローを排気し、排気ポートが前記レーザヘッドに実装された排気システムと を備えるレーザーアニーリング装置。」 (2)引用例の記載と引用発明 (2-1)引用例1とその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-138180号公報(以下「引用例1」という。)には、「空気周囲におけるエキシマレーザアニールによるシリコン膜の結晶化中の酸素の混入を制御する方法」(発明の名称)について、図1とともに、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。 ア 発明の属する技術分野 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は概して、フラットパネルディスプレイ製造システムに関し、さらに具体的には、フラットパネルディスプレイ基板上に多結晶シリコン膜を形成する方法に関する。」 イ 発明が解決しようとする課題 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、ELA多結晶シリコン膜に混入される酸素の量を効果的に制御し、アニール装置に係る装置生産コストを最小にしながら、酸素含有量を所定の閾値よりも低く維持することである。 【0009】大気圧で、主に空気の周囲中でエキシマレーザアニールを行うことにより、フラットパネルディスプレイ基板上のELA多結晶シリコン膜の膜質を向上し、レーザビームが通過しなければならない高価な石英ウィンドウを有する基板隔離チャンバの必要性を無くすことが有利であろう。 【0010】さらに、空気周囲中でのアニール用に設計されたELA機器に比較的簡単な変更を加えて、酸素の混入を低減することにより、ELA多結晶シリコン膜の膜質を向上することが有利であろう。 【0011】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は上記のような問題点を克服して、ELAによりアニールされる多結晶シリコン膜の酸素含有量を低減するための、単純でコスト効率のよい方法を提供することである。」 ウ 発明の実施の形態等 「【0036】 【発明の実施の形態】図1は、エキシマレーザアニール(ELA)装置10の構成要素の概略図である。フランスのSopra,S.A.、ドイツのLambda Physik、およびカリフォルニア州フレモント(Fremont)のXMR,Inc.などの幾つかの製造業者は、本発明の方法とともに使用するのに適したエキシマレーザアニールシステムを供給している。エキシマレーザおよび関連するシステムは、エキシマレーザアニールの当業者に周知であり、本発明の方法は、液晶ディスプレイ基板上に堆積されたアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜に変えるために設計された任意のELAシステムとともに使用するのに適している。」 「【0041】本発明の具体的な利点は、ELA装置10が、エキシマレーザアニール中に基板36が囲まれる環境チャンバなどを必要としないことである。そのようなチャンバは、概して、高真空または低真空に排気されるように設計されるか、または、制御された周囲雰囲気を含むように設計される。そのような環境チャンバを含むELAシステムでは、レーザ14からのビーム20は、通常石英からなる適切なウィンドウを通ってチャンバに入る。本発明の方法を実行する場合、チャンバ、ウィンドウ、ポンプ、および、基板隔離チャンバに関連する他の機器は、必要とされない。その代わりに、装置10では、レーザ14、移動式ステージ40、およびターゲット基板36が、従来のLCD処理用クリーンルーム環境に配置される。このクリーンルーム環境はまた、LCD基板をX-Yステージ40上に配置するための適切な基板ハンドラおよびコンベヤ(図示せず)を含む。 【0042】本発明の方法を実行するために適合されたELA装置10は、基板36上のシリコン膜38の表面に不活性ガスを向けるための不活性ガス供給システム50を含む。不活性ガス供給システム50は、適切な不活性ガス、好ましくは、アルゴン(Ar)または窒素(N_(2))の1つ以上のリザーバ56を含む。リザーバ56は、適切な気化器に適合される場合、液化されたガスを含み得る。または、リザーバ56は、ガスリザーバであってもよい。 【0043】不活性ガス供給リザーバ56は、基板36上のシリコン膜層38の表面42の領域に不活性ガスを送達する適切なマニホールドまたは導管64を介して1つ以上のノズル60に作動的に連結される。供給リザーバ56からノズル60への不活性ガスの流れを制御するために、1つ以上のバルブ70およびポンプ74が任意に設けられる。ノズル60の数、形状、サイズ、および構成は、設計の選択および最適化の事項であり、ノズルは、シャワーヘッド、多数の個々のノズル、または、1つ以上の細長い層流タイプの開口部などの、様々な形態をとり得る。 【0044】不活性ガス供給システム50の目的は、ターゲット領域43へのレーザビーム20の照射中に、シリコン膜38の表面42に、不活性ガス、好ましくは、アルゴンまたは窒素を向けることである。ガスは、ターゲット領域43をエキシマレーザエネルギーで1回以上露光している間、周囲雰囲気をターゲット領域43の周囲環境から移動させる。ノズル60の数および構成が、ターゲット表面42のサイズおよび向き、エキシマレーザビーム20のサイズおよびプロファイル、供給される不活性ガスの種類および体積、ならびにELAのために選択されたプロセス条件、などのファクタに依存する、設計の選択事項であることが、当業者に容易に理解される。 【0045】ELAの間、酸素を、シリコン膜38の表面42全体から幾分連続的に移動させるか、制限されたターゲット領域43のみから移動させるかに依存して、ノズルは、X-Yステージ40とともに移動しても(即ち、基板36に関して固定したままでも)、ステージ40が移動している間固定したままであってもよい。最初のオプションでは、ノズル60は、膜38上の選択されたまたは所定のターゲット領域がすべてアニールされるまで、各ターゲット領域のエキシマレーザアニール中にシリコン膜38の表面42全体に注ぐように構成される。二番目のオプションでは、ノズル60は、ビーム20に関して固定され、基板36の位置が連続するターゲット位置に移動されて、ターゲット領域43に不活性ガスを向ける。このように、ターゲット領域がアニールされるとき、周囲雰囲気は、不活性ガスにより、シリコン膜38の表面42の各ターゲット領域から移動される。」 「【0058】 【実施例】以下、本発明の方法によるフラットパネルディスプレイの処理の実施例を示す。 【0059】プラズマ増速化学的気相成長(PECVD)により、500Åの厚さのアモルファスシリコンを、ベースコート(即ち、2000ÅのSiO_(2)層)を有するまたは有していない透明基板上に堆積する。この膜に、低温(400?450℃)アニール工程を施し、典型的には堆積中にシリコン膜に混入される水素を追い出す。低温脱水素工程の必要性を無くすために、他の堆積技術(即ち、物理的気相成長(PVD))を使用してもよい。その後、エキシマレーザ(即ち、308nmのXeCl)を用いて、以下の態様で、膜をレーザアニールする。 【0060】堆積されたシリコン膜を有する基板を、X-Y移動ステージ上に載せる。これは、開いた構成(即ち、チャンバは不要)である。光学システムによって発生されるレーザビームは、膜の表面に向けられる。ホモジナイザは、ビームの経路内に含まれ、レーザビームプロファイルの均一性を向上する。それと同時に、不活性ガスが、膜の表面の上で、膜の表面に平行な方向に流れている。ガス流は、典型的には、0.5リットル/分よりも多い。あるいは、ガスは、レーザに固定される光学システムに取り付けられるノズルアセンブリを通して流してもよい。この実施例では、不活性ガスは、膜の表面にほぼ垂直な方向に流れる。」 (2-2)引用発明 上記ア、イ及びウによれば、引用例1には、次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。 「LCD処理用クリーンルーム環境に配置されたエキシマレーザアニール(ELA)装置10であって、シリコン膜38の表面42のターゲット領域43へレーザビーム20を照射する、前記環境に配置されたレーザ14と、窒素( N_(2))の不活性ガスにより、シリコン膜38の表面42の各ターゲット領域から、周囲雰囲気を移動させるように、ターゲット領域43へのレーザビーム20の照射中、ターゲット領域43に前記不活性ガスを向ける、ビーム20に関して固定されたノズル60と、を備えるエキシマレーザアニール(ELA)装置10。」 (2-3)引用例2とその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-102467号公報(以下「引用例2」という。)には、「レーザーアニール処理装置」(発明の名称)について、図1及び2とともに、次の記載がある。 ア 発明の属する技術分野 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レーザーアニール処理装置に関し、更に詳しくは、真空引きする必要がなく,処理のスループットを向上することができるレーザーアニール処理装置に関するものである。本発明のレーザーアニール処理装置は、特に大面積大粒径多結晶シリコン薄膜の形成に有用である。」 イ 発明が解決しようとする課題 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のレーザーアニール処理装置500では、真空チャンバ1内を真空あるいは窒素(大気圧)雰囲気とすることによって、アニール中に空気中の物質が非晶質半導体薄膜M1に作用することを防止している。しかし、真空チャンバ1内を真空あるいは窒素(大気圧)雰囲気とするために、真空チャンバ1の真空引き(および窒素ガス充填)やゲートバルブS1?S4の開閉を行っていると、処理のスループットを向上できないという問題点がある。特に、最近の150mm角前後から300mm角以上の大型の液晶ディスプレイの半導体基板を処理する場合には、真空チャンバも大型化するため、この問題点が顕著となっている。そこで、本発明の目的は、真空引きする必要がなく,処理のスループットを向上することができるレーザーアニール処理装置を提供することにある。」 ウ 発明の実施の形態等 「【0011】 【発明の実施の形態】以下、図に示す実施形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。 【0012】-第1の実施形態- 図1は、本発明の第1の実施形態にかかるレーザーアニール処理装置100の全体の平面図である。このレーザーアニール処理装置100では、真空チャンバの代りに簡易エンクロージャ11が設けられている。簡易エンクロージャ11の内部には、基台Bと、その基台B上を移動すると共にその上面に被処理体Mが載置される移動載置台2と、スイングノズル12とが設けられている。簡易エンクロージャ11の上方には、レーザー光Rを発生するエキシマレーザー発生装置(図5の6)が設けられている。 【0013】窒素ガスは、窒素ガス供給管13を通じて前記スイングノズル12に供給され、スイングノズル12の先端(図2の12n)からレーザー照射部分Pへ向けて噴出される。また、簡易エンクロージャ11内の窒素ガスは、窒素ガス回収管16を通じて回収され、ガスフィルタGFを通じてスイングノズル12に再供給される。15は、モータである。このモータ15により前記スイングノズル12を航空機のフラップのようにスイングさせて、スイングノズル12の先端(図2の12n)を上下し、移動載置台2との距離を調節する。」 上記ア?ウの記載から、引用例2には、以下の技術が開示されている。 レーザー光Rを発生するエキシマレーザー発生装置が設けられた、レーザーアニール処理装置において、窒素ガスが、レーザー照射部分Pへ向けて噴出されるスイングノズル12と、窒素ガスを回収する窒素ガス回収管16とを備える技術。 (3)対比 (3-1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、 ア 引用発明の「LCD処理用クリーンルーム環境」、「エキシマレーザアニール(ELA)装置10」及び「シリコン膜38」は、それぞれ、本願補正発明の「周囲空気環境」、「レーザーアニーリング装置」及び「半導体材料」に相当する。そして、上記(2-2)より、引用発明で、シリコン膜38を処理していることは明らかであるから、引用発明の「LCD処理用クリーンルーム環境に配置されたエキシマレーザアニール(ELA)装置10」は、本願補正発明の「周囲空気環境内に配置された半導体材料を処理するレーザーアニーリング装置」に相当する。 イ 引用発明の「シリコン膜38の表面42のターゲット領域43」、「レーザビーム20」及び「レーザ14」は、それぞれ、本願補正発明の「前記半導体材料の表面上の所定の位置」、「ビーム」及び「レーザーヘッド」に相当する。そして、引用発明の「レーザビーム20を照射する」ことは、前記ターゲット領域43に該レーザビーム20を向けることでもあるから、引用発明の「シリコン膜38の表面42のターゲット領域43へレーザビーム20を照射する、LCD処理用クリーンルーム環境に配置されたレーザ14」は、本願補正発明の「前記半導体材料の表面上の所定の位置にビームを向けるように前記周囲空気環境内に配置されたレーザーヘッド」に相当する。ウ 引用発明の「周囲雰囲気」は、本願補正発明の「周囲空気」に相当し、引用発明の「窒素( N_(2))の不活性ガス不活性ガスにより、シリコン膜38の表面42の各ターゲット領域から、周囲雰囲気を移動させるように、」「ターゲット領域43に前記不活性ガスを向ける」ことは、該不活性ガスにより、所定の位置から周囲空気を除去するために、ガスフローを送ることともいえることから、本願補正発明の「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記ビームが向けられる前記所定の位置に前記不活性ガスであるガスフローを送」ることに相当する。 そして、引用発明の「ビーム20に関して固定されたノズル60」は、引用例1の段落【0060】の「レーザに固定される光学システムに取り付けられるノズルアセンブリ」との記載も参酌すると、レーザヘッドに実装されたノズルともいえる。 そうすると、引用発明の「不活性ガスにより、シリコン膜38の表面42の各ターゲット領域から、周囲雰囲気は、移動されるように、ターゲット領域43へのレーザビーム20の照射中、ターゲット領域43に不活性ガスを向ける、ビーム20に関して固定されたノズル60」は、本願補正発明の「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記ビームが向けられる前記所定の位置に不活性ガスであるガスフローを送り、前記レーザヘッドに実装されたノズル」に相当することは、当業者にとって明らかである。 (3-2)したがって、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 〈一致点〉 「周囲空気環境内に配置された半導体材料を処理するレーザーアニーリング装置であって、前記半導体材料の表面上の所定の位置にビームを向けるように前記周囲空気環境内に配置されたレーザーヘッドと、前記半導体材料の表面上の前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記ビームが向けられる前記所定の位置に不活性ガスであるガスフローを送り、前記レーザヘッドに実装されたノズルと、を備えるレーザーアニーリング装置。」 〈相違点〉 本願補正発明では、「前記半導体材料の表面上の前記所定の位置に送られる前記ガスフローを排気し、排気ポートが前記レーザヘッドに実装された排気システム」を備えるのに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。 (4)相違点についての検討 ア まず、引用例1の、段落【0001】の「フラットパネルディスプレイ基板上に多結晶シリコン膜を形成する方法に関する。」、段落【0008】の「本発明が解決しようとする課題は、ELA多結晶シリコン膜に混入される酸素の量を効果的に制御し、アニール装置に係る装置生産コストを最小にしながら、酸素含有量を所定の閾値よりも低く維持することである。」、段落【0041】の「本発明の具体的な利点は、ELA装置10が、エキシマレーザアニール中に基板36が囲まれる環境チャンバなどを必要としないことである。」との記載から、引用発明は、多結晶シリコン膜を形成する際に混入される酸素の量を制御し、環境チャンバなどを必要とせず、装置生産コストを最小にする、フラットパネルディスプレイ基板上に多結晶シリコン膜を形成することを技術課題とすることは、当業者に自明である。 イ そして、引用例2の、段落【0001】の「特に大面積大粒径多結晶シリコン薄膜の形成に有用である。」、段落【0006】の「上記従来のレーザーアニール処理装置500では、真空チャンバ1内を真空あるいは窒素(大気圧)雰囲気とすることによって、アニール中に空気中の物質が非晶質半導体薄膜M1に作用することを防止している。しかし、真空チャンバ1内を真空あるいは窒素(大気圧)雰囲気とするために、真空チャンバ1の真空引き(および窒素ガス充填)やゲートバルブS1?S4の開閉を行っていると、処理のスループットを向上できないという問題点がある。特に、最近の150mm角前後から300mm角以上の大型の液晶ディスプレイの半導体基板を処理する場合には、真空チャンバも大型化するため、この問題点が顕著となっている。そこで、本発明の目的は、真空引きする必要がなく,処理のスループットを向上することができるレーザーアニール処理装置を提供することにある。」との記載から、引用例2に記載の「レーザーアニール処理装置」は、大型の液晶ディスプレイの半導体基板を処理する場合、多結晶シリコン薄膜の形成に際し、アニール中に空気中の物質が非晶質半導体薄膜M1に作用することを防止し、真空引きする必要がなく、処理のスループットを向上することを技術課題とすることは、当業者に自明である。 ウ 上記ア及びイから、引用発明と引用例2に記載の「レーザーアニール処理装置」は、フラットパネルディスプレイ基板上に多結晶シリコン膜を形成する際に、アニール中に作用する空気中の物質を制御し、環境チャンバなどを必要とせず、装置生産コストを最小にするという点で共通する技術課題を有するものと認められる。 エ ここで、レーザビームが向けられる所定の位置に、ガスを送る手段及び排気する手段を備えるレーザビームを照射する装置において、ノズル等のガスを送る手段及び排気ポート等の排気する手段を、レーザヘッド等のレーザビームを照射する手段と一体的に固定することは、例えば、以下の周知例1?3に記載されているように、本願の優先権主張日前の周知技術である。 また、前記各手段の各機能・目的を勘案すれば、各手段の作業効率を上げるために上記のとおり一体的に固定することは、当業者が自然に着想するものともいえる。 オ 上記ウによれば、引用発明において、周囲雰囲気を移動させるようにノズルから向けられる窒素( N_(2))の不活性ガスを回収するために、引用例2に記載の「窒素ガス回収管16」を備える技術を採用し、該不活性ガスの排出口としての排気ポートを含む排気システムとして適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、その際、ノズルから向けられる不活性ガスをより効率よく回収するために、前記排気ポートをノズル60が固定されているレーザ14に一体的に固定することは、上記エに照らし、当業者が適宜なし得る技術上の設計事項である。 (周知例1:特開昭62-179888号公報) 上記周知例1には、第1図及び第2図とともに、次の記載がある。 「[実施例] 以下1本発明の実施例について図面を参照して説明する。 第1図は本発明の一実施例に係るレーザ加工機の加工ノズルを示す底面図、第2図は第1図の縦断面図である。 図中1はレーザノズルで、集光照射するレーザ光3が通過するに十分な大きさとされている。 このレーザノズルlの周囲には、補助ガス吹き付け及び補助ガス吸引の両機能を兼備した複数個のガスノズル21?28が放射状に設けられている。 これらガスノズル21?28は、レーザノズルlをはさむ2つのガスノズル21及び22、23及び24、25及び26、27及び28が-組とされ、レーザ加工時、その加工方向(例えば第2図中A方向)と一致する一組のガスノズル例えば23及び24のうち加工方向側に位置するガスノズル23を補助ガス吹き付け用とし、且つ他方の加工方向と反対側に位置するガスノズル24を補助ガス吸引用となし得るようにしている。」(2頁右上欄11行?左下欄16行) (周知例2:特開平6-285668号公報) 上記周知例2には、図4とともに、次の記載がある。 「【0019】図4に示される本発明の光学系及び雰囲気を保護する装置は、保護ハウジング23を含むのが望ましい。このハウジングは、漂遊するレーザの反射に耐えることができる任意の材料で形成されることができる。一つの実施例では、このハウジングは、黒色の陽極酸化されたアルミニウムで形成される。 【0020】ハウジング23は、内側の保護室24を規定即ち形成する。この保護ハウジング23は、レーザ・ビームが光学的焦点合わせアセンブリを最初に通過した後に保護室内に入り込むための第1の開口25を有する。第1の開口は、光学的焦点合わせアセンブリの端部を密に取り囲むように形づくられており、これにより、レーザの溶融プロセスにより発生される浮遊材料が逃げる道を閉ざす。保護ハウジング23は処理される材料即ち基板22及び光学的焦点合わせアセンブリ21の間の或る容積を包囲するのが望ましく、ハウジング23は、この処理される基板22のほぼ表面から光学的焦点合わせアセンブリ及びレーザ・ビームを囲むこの容積にまで延びる。」 「【0027】ガスは、第3開口29、多孔板32及びガス流入孔33から保護室24内に導入されることができ、ガス、粒子及び他の破片を被処理面から遠ざけるだけでなく、保護室、作業面及び光学系を冷却する。これらの流体導入路に加えて、第3開口29、多孔板32及びガス流入孔33から流入するガスに窒素を導入してこれら入り口に流れ込むガスに冷却効果を与える手段が本発明の装置に追加されることができる。保護室24内及びこれを通過するガスの流れの方向は矢印36、37、38、39及び40により示されている。保護室内に流れ込むガスは、ドリル動作により発生されるガス、粒子及び他の破片を包み込み、保護室24から排出開口を介して外部に出す。 【0028】保護室24内に流入されるガスに加えて、本発明は、この保護室24の側壁に設けられている第5開口41に接続された真空源(図示せず)を含むことができる。真空源が本発明の装置に装着される場合、この真空源は保護室24内及びこれを通過する空気流を増大する。この空気流の増大により、破片が光学的焦点合わせアセンブリ21に当たることが更に防止され、このアセンブリの冷却を更に増大し、そしてレーザ処理により発生される煙、粒子及び他の破片を除去する効果が更に増大される。これらの煙、粒子及び破片は、レーザ・ビームが材料22に当たる地点でこれらが生成されると直ちにこの場所から吸引除去され、そして保護室を通り開口41を介してこのハウジング23から外部の集塵手段(図示せず)に引き込まれる。」 (周知例3:特開昭55-123469号公報) 上記周知例3には、図2とともに、次の記載がある。 「次に第2図において、刻版ヘッドは管状部材50で終端し、該部材中にレンズ52を収付けたレンズ・ハウジング51が装備されている。レーザ・ビームは管状部材50およびレンズを軸方向に通過し、該レンズは該ビームをシリンダ54の表面上あるいは表面近くのスポット53に集束させる。レンズ・ハウジング51とシリンダとの間に、レンズ・ハウジング51と同軸の中央くり抜き穴60を有する部材55が設けられている。部材55には圧縮空気源に結合するための空気取入口56が形成され、該空気吸入口はくり抜き穴60と平行に形成された6個の等間隔の通路57に通じている。該通路57は環状の空気室58に通じており、該空気室から空気が点線矢印により指示された斜めの経路に沿って通路59を通りくり抜き穴60に逃げる。環状空気室58を形成する部材64の終端に、終端開放形の吸引室を構成するカバー61がねじ止めされている。吸引パイプ62は真空源(図示せず)に接続されている。斜め方向に向けられた空気流および吸引手段の効果により、空気がシリンダ表面を必要以上に冷却することなしにシリンダ表面領域からプラズマおよび破片を抽出せしめることができる。」(3頁右上欄10行?左下欄12行) (5)小括 以上検討したとおり、上記相違点は、周知技術を勘案することにより、引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (6)独立特許要件についてのまとめと補正却下の結び 以上のとおり、本願補正発明は、周知技術を勘案することにより、引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年3月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の次のとおりのものである。 「【請求項1】 周囲空気環境内に配置された半導体材料を処理するレーザーアニーリング装置であって、 前記半導体材料の表面上の所定の位置にビームを向けるように前記周囲空気環境内に配置されたレーザーヘッドと、 前記半導体材料の表面上の前記所定の位置にガスフローを送って、前記ビームが向けられる前記所定の位置から周囲空気を除去するように、前記レーザヘッドに実装されたノズルと、 前記半導体材料の表面上の前記所定の位置に送られるガスフローを排気する排気システムと を備えるレーザーアニーリング装置。」 2 引用例の記載と引用発明 引用例の記載と引用発明については、前記第2の3(2)で認定したとおりである。 3 対比・判断 前記第2の1及び2で検討したように、本願補正発明は、補正前の請求項1の規定をより技術的に限定するものである。したがって、逆に言えば、本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、本願補正発明から、このような限定をなくしたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これより限定したものである本願補正発明が、前記第2の3で検討したとおり、周知技術を勘案することにより、引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明することができたということができる。 第4 結言 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-04 |
結審通知日 | 2011-03-07 |
審決日 | 2011-04-05 |
出願番号 | 特願2001-247118(P2001-247118) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩一、河口 雅英 |
特許庁審判長 |
相田 義明 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 松田 成正 |
発明の名称 | レーザーアニーリング装置 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 大塩 竹志 |
代理人 | 山本 秀策 |