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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1238087
審判番号 不服2008-31957  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-18 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2002-150448「画像ファイルの出力画像調整」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月28日出願公開、特開2003- 60935〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年8月21日(優先権主張平成13年1月17日、平成13年3月15日)に出願した特願2001-249912号の一部を平成14年5月24日に新たな特許出願としたものであって、平成20年8月5日付けの拒絶理由通知に対して同年10月10日付けで手続補正がなされた後、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成21年1月14日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
平成21年1月14日付けの手続補正(以下、本件補正という。)について次のとおり決定する。

[結論]
平成21年1月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正における補正の内容は、以下のとおりである。
[補正事項1]
請求項1ないし12における発明特定事項「前記画像の撮影時における撮影条件を示す撮影情報」を「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」とする補正
[補正事項2]
請求項5、7および11ならびにそれらを引用する請求項における発明特定事項「前記撮影情報は、少なくとも露出時間、ISO感度、絞り、シャッタースピード、焦点距離、露出補正量、ホワイトバランス、撮影モード、ターゲット色空間、レンズF値、露出制御モード、フラッシュ、開放F値、レンズ焦点距離に関連する情報のいずれか1つを含む」を「前記撮影情報は、少なくとも露出時間、露出補正量、ホワイトバランスに関連する情報のいずれか1つを含む」とする補正

2.補正の範囲の適否
上記各補正事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0034】?【0036】等に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した範囲内においてする補正である。

3.補正の目的の適否
上記請求項1ないし12の補正(補正事項1および補正事項2)は、補正前の請求項1ないし12にした発明を特定する「撮影情報」について限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4.独立特許要件についての検討
本件補正後の請求項9に係る発明(以下「補正発明」という。)が、独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定)を満たすか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、平成21年1月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、下記のとおりのものであると認められる。

記(補正発明)
画像を表す画像データを解析して、画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能と、
前記特性情報と、前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報とを用いて、前記画像データに画像処理を行う画像処理機能と、
前記画像処理が行われた前記画像データを印刷する印刷機能とをコンピュータによって実現し、
前記画像データは画像データ生成装置にて生成され、
前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる
ことを特徴とする印刷プログラム。

(2)引用例
ア.引用例1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開平11-150656号公報(以下「引用例1」という。)には、次の記載a.乃至g.(以下、「記載a.」・・・「記載g.」などという。)がある。

a.発明の属する技術分野
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、各種画像入力手段によって得られた画像データを各種画像出力手段に出力する際に、出力画像の品質を向上させるために必要な各種の画像処理を実行する技術に関する。

b.従来の技術及び発明が解決しようとする課題
【0002】
【従来の技術】スキャナやディジタルカメラなどの画像入力装置によって得られた画像データを、カラープリンタやCRTなどの画像出力装置に出力する際には、通常、ノイズ除去、色変換、階調変換、サイズ変換、鮮鋭度強調、平滑化等の画像処理を施して、出力された画像の品質を向上させる作業(画像処理)が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、目標とする画像品質を得るためには、上記各画像処理に習熟したオペレータが、自らの経験に基づいて試行錯誤を繰り返して画像処理パラメータを調整することが必要であった。また、画像品質は、入力装置や出力装置などのデバイスの種類、上質紙や再生紙などの出力媒体の種類、ポスタやチラシなどの用途等に依存するため、異なった条件毎に、画像処理パラメータを調整することが必要であった。従って、従来の画像処理は経験と時間を要する作業であった。
【0004】この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、各種画像入力手段によって得られた画像データを各種画像出力手段に出力する際に、出力画像の品質を向上させるために必要な各種の画像処理を容易に実行する技術を提供することを目的とする。

c.第1実施例
【0043】これらの各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、フレキシブルディスクやCD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。コンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータが読み取って直接実行するようにしてもよい。
【0044】この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。また、オペレーションシステムが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェア装置を動作させるような場合には、そのハードウェア装置自体がコンピュータに相当する。ハードウェア装置は、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取るための手段とを少なくとも備えている。コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各手段の機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。

【0048】ステップS102においては、画像入力手段40(スキャナ42)から入力された入力画像(処理対象画像)の状態を解析して、後述する画像解析情報を取得する。ステップS104においては、画像出力手段(カラープリンタ54)から出力される画像に対するオペレータ(あるいはクライアント)の要望(目標画像に関する要求)を、意図情報として取得する。次に、ステップS106において、画像処理パラメータ推論決定手段74(図2)が、ステップS100?S104において取得した各画像処理制御情報に基づいて、所定の画像処理のための画像処理パラメータを推論決定する。そして、ステップS108において、画像処理手段76(図2)が、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行してそのデータを画像出力手段50(カラープリンタ54)に出力する。ステップS110において、画像出力手段50(カラープリンタ54)は、画像処理手段76から出力された画像データを画像として印刷して出力する。

d.第2実施例
【0074】B.第2実施例:
B-1.画像処理装置の構成:図13は、第2実施例としての画像処理装置の機能的構成を示すブロック図である。第2実施例としての画像処理装置20Aは、図1および図2に示す第1実施例とほぼ同様の構成を有しており、各種コンピュータプログラムの作用によりCPU24(図1)は、各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72A、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作する。
【0075】第2実施例と第1実施例の違いは、この画像処理装置20Aが後述する情報変換テーブルTBL1を備えており、使用される画像入力手段および画像出力手段に特有の入力特性情報および出力特性情報、すなわち画像処理制御情報を、この情報変換テーブルTBL1に従って取得することにある。

e.第3実施例
【0079】C.第3実施例:
C-1.画像処理装置の構成および画像処理の概要:図15は、第3実施例としての画像処理装置の機能的構成を示すブロック図である。第3実施例としての画像処理装置20Bは、図13に示す第2実施例とほぼ同様の構成を有しており、各種コンピュータプログラムの作用によりCPU24(図1)は、各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作する。また、この画像処理装置20Bは、後述する情報変換テーブルTBL2を備えている。
【0080】第3実施例と第2実施例との違いは、画像処理制御情報取得手段72Bが取得する画像処理制御情報としての情報が、画像入力手段の入力特性情報や画像出力手段の出力特性情報ではなく、画像品質特性情報であることにある。また、画像処理装置20Bが後述する情報変換テーブルTBL2を備えており、画像処理制御情報としての画像品質特性情報を、この情報変換テーブルTBL2に従って取得することにある。
【0081】図16は、第3実施例における画像処理の概要を示すフローチャートである。まず、ステップS400において、画像処理制御情報取得手段72B(図15)が、画像処理制御情報として画像品質特性情報を取得する。これらの画像品質特性情報については後述する。ステップS102?S110の内容は、図3の第1実施例と同じであるが、後述するように、ファジィルールは第1実施例と異なるものが使用されている。
【0082】C-2.画像品質特性情報の取得:図17は、画像処理制御情報取得手段72Bが画像処理制御情報として画像品質特性情報を取得する方法について示す説明図である。情報変換テーブルTBL2には、画像処理条件情報とこれに対応する画像品質特性情報との関係が記憶されている。ここで、「画像処理条件情報」は、出力画像の品質に影響を与えるような情報を意味する。例えば、スキャナやデジタルカメラなどの画像入力手段(画像入力デバイス)を示す情報(名称、型名等)や、レーザプリンタやインクジェットプリンタあるいはCRTなどの画像出力手段(画像出力デバイス)を示す情報(名称、型名等)、普通紙や再生紙あるいは専用紙などの出力媒体を示す情報、ポスタやチラシなどの用途を示す情報、あるいは、人物画像や風景画像などの画像の対象を示す情報などが画像処理条件情報に含まれる。「画像品質特性情報」は、画像処理条件情報に基づき経験則で決定される画像処理具合を表す情報であり、感覚的なキーワードによって示される。例えば、出力画像の鮮やかさの程度を表す情報や、出力画像のシャープさの程度に関する情報、出力画像の質感の具合を表す情報、あるいは出力画像の色合いの具合に関する情報等を感覚的なキーワードによって示す情報が画像品質特性情報に含まれる。
【0083】なお、これらの画像品質特性情報は、画像処理パラメータに対応づけられている。例えば、画像処理パラメータ「シャープネスゲイン」には「シャープネスの強さ」、画像処理パラメータ「マスクサイズ」には「画像の質感」、画像処理パラメータ「グレイニネス」には「画像の滑らかさ」の各画像品質特性情報がそれぞれ対応づけられている。
【0084】情報変換テーブルTBL2には、各画像処理条件情報が、複数の画像品質特性情報の好ましい情報値に関係付けられている。例えば、画像処理条件情報「画像入力デバイスA」は、画像品質特性情報「シャープさはX11」、「滑らかさはX12」、…と関係付けられている。この情報変換テーブルTBL2は、図1に示すRAM28やハードディスク34等に記憶されている。
【0085】画像処理装置20Bを使用し始めるときに、ユーザは、キーボード30等を用いて、使用される画像入力デバイスや画像出力デバイス、出力媒体、用途等の画像処理条件情報を指定する。なお、画像処理条件のうちのいくつかは、所定の初期設定値をそのまま使用するようにしてもよい。画像処理を開始すると、画像処理制御情報取得手段72Bは、これらの指定された情報を画像処理条件情報として取得する。そして、取得された画像処理条件情報に対応する品質特性情報を情報変換テーブルTBL2を参照して取得することができる。
【0086】C-4.画像処理パラメータの推論決定:ステップS106では、画像処理パラメータ推論決定手段74(図15)が、ステップS400、S102、S104において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する。
【0087】以下では、画像処理条件情報として、画像入力デバイス「デジタルカメラN1」、画像出力デバイス「昇華プリンタN2」、画像の対象「人物」が情報として指定されており、この場合の鮮鋭度強調(シャープネス)処理の画像処理パラメータであるシャープネスゲイン(アンシャープマスクの強度の調整パラメータ)と、マスクサイズ(アンシャープマスクのカットオフ周波数の調整パラメータ)と、グレイニネス(アンシャープマスクの不感帯の調整パラメータ)をファジィ推論によって決定する場合を一例に、画像処理パラメータの推論決定について説明を行う。
【0088】鮮鋭度強調処理に関する画像品質特性情報としては、「シャープネスの強さ」と、「画像の質感」と、「画像の滑らかさ」とがあり、これらの画像品質特性情報は、それぞれシャープネスゲインと、マスクサイズと、グレイニネスの制御に関係付けることができる。情報変換テーブルTBL2には、各画像処理条件情報ごとに、シャープネスの強さと、画像の質感と、画像の滑らかさのうち、各画像処理条件情報に関係する情報が示されている。
【0089】図18は、画像処理条件情報と、画像の鮮鋭度を示す画像処理制御情報としての画像品質特性情報の例を示す説明図である。情報変換テーブルTBL2には、画像処理条件情報としての画像入力デバイス「デジタルカメラN1」、画像出力デバイス「昇華プリンタN2」、画像の対象「人物」に対して、それぞれ画像の鮮鋭度を示す画像品質特性情報がそれぞれ関係づけられている。各画像品質特性情報の情報値は、各画像処理条件情報における画像品質特性情報に関する画像への影響度を考慮して、経験的に求められたスケーラブルな値で表されている。本実施例では、以下の各条件から各画像品質特性情報の情報値を0?100までの値で示している。
【0090】画像入力デバイス「デジタルカメラN1」に関する条件「デジタルカメラN1において、すでに若干の鮮鋭化処理が行われているので、鮮鋭化は抑え目でよい。ダイナミックレンジが狭いので、画像の荒れを防ぐために滑らかに仕上げたい。」より、シャープネスの強さは40、画像の滑らかさは70としている。
【0091】画像出力デバイス「昇華プリンタN2」に関する条件「解像力300dpiであり、階調表現は連続調を用いているので、繊細に仕上げたい。また、昇華転写プリンタ特有のエッジぼけがあるので鮮鋭化は強めにしたい。」より、シャープネスの強さは60、画像の質感は30としている。
【0092】画像の対象「人物」に関する条件「鮮鋭化は抑え目でよい。人物の肌をやわらかに仕上げたい。質感は標準でよい。」より、シャープネスの強さは30、画像の質感は50、画像の滑らかさは65としている。

【0108】本実施例における画像処理パラメータの推論決定の説明においては、説明を容易にするために、画像処理制御情報としての画像解析情報やオペレータ等の意図情報について省略している。しかしながら、第1実施例と同様に、画像解析情報やオペレータ等の意図情報に関しても画像処理制御情報として加えて画像処理パラメータを推論決定することができる。オペレータ等の意図情報は、図21に示すような画像調整用の画面を用いて設定することができる。図21の上半分の色調整領域CAには、画像の色調整のための種々の設定用レバーが設けられている。また、図21の下半分の鮮鋭度調整領域SAには、鮮鋭度調整のための種々の設定用レバーが設けられている。ユーザは、これらのレバーの左右の位置を設定することによって、画像の色味や鮮鋭度の好みを設定することが可能である。

f.他の実施例および実施形態
【0109】D.他の実施例および実施形態:なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば次のような変形も可能である。

【0111】(2)また、上述の各実施例においては、画像処理制御情報として代表的な情報を一例として用いて説明しており、これらに限定されるものではない。実際の画像処理においては、対応する画像処理制御情報を場合に応じて取捨選択することができる。例えば、第1実施例において、入力特性情報と出力特性情報のみを利用する場合、画像解析情報を利用しない場合、意図情報を利用しない場合、入力特性情報を利用しない場合等にも本発明を適用することができる。

イ.引用例2の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開平10-191246号公報(以下「引用例2」という。)には、次の記載g.ないしi.(以下、「記載g.」・・・「記載i.」などという。)がある。(下線は当合議体が付したものである。)

g.発明が解決しようとする課題
【0006】本発明は、上記問題に鑑みて、デジタルカメラで取得したデジタル画像データの再生において、テストプリントや、モニタの確認による画像処理条件の調整を繰り返すことなく、早くかつ簡単に最適な画像処理条件を求め、これにより高画質なプリントを迅速に顧客に提供できる画像再生方法および装置、並びにその方法に使用するデジタルカメラを提供することを目的とするものである。

h.課題を解決するための手段
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の画像再生方法は、撮影により取得したデジタル画像データに撮影条件を表す撮影情報を付与する機能を有するデジタルカメラにより前記撮影情報が付与されたデジタル画像データを得、前記撮影情報が付与されたデジタル画像データを所定の記憶媒体に記憶し、前記記憶媒体に記憶されたデジタル画像データに対し、該デジタル画像データに付与された前記撮影情報を使用して前記デジタル画像データの画質を高めるための画像処理を行い、前記画像処理されたデジタル画像データを再生することを特徴とするものである。
【0008】ここで「撮影条件を表す撮影情報」とは、例えばカメラのγ特性(入力光量対出力電圧比)やレンズ焦点距離のようなカメラ固有の情報と、フォーカス距離、EV値、照明の種類(色温度)、ストロボ使用有無のように撮影環境や撮影者の操作によって1回の撮影毎に異なる情報の両方を含むものとする。前者の(カメラ固有の)情報は無条件に撮影情報として付与されるものであり、撮影者はその情報を変更することはできない。一方、後者の情報は撮影者が何らかの操作を行うことにより意図的に決定することができるものである。
【0009】また「撮影により取得したデジタル画像データに撮影条件を表す撮影情報付与する」とは、画像データと撮影情報とからなるファイルフォーマットを定め、画像データを撮影情報とともにそのようなフォーマットのファイルとして、例えばカメラの内蔵メモリあるいはカードメモリなどに記憶することである。

i.発明の実施の形態
【0023】但し、露出が自動ではなくマニュアルで行われた場合には、マニュアルで設定された各種設定値を撮影情報として付与するのがよい。これにより、例えば明るい雰囲気の写真にしたいとか暗い雰囲気の写真にしたいとか、シャープな写真にしたいとか柔らかい感じにしたいとかいった撮影者の意図が撮影情報に反映されることとなり、プリント時に撮影者の意図を尊重した画像処理を行うことができる。
【0024】また、デジタルカメラの中には、露出などの設定値としてではなく、より曖昧な表現で撮影者の意図を指定することができるものがある。例えば夕陽を背景にして撮影する場合には夕陽モード、人物を撮影する際にはポートレートモードというようにモード設定ができ、設定されたモードに基づいて自動的に露出などが設定されるカメラなどがある。このようなカメラの場合には、このようなモード情報も撮影情報としてデジタルカメラに付与するのがよい。これにより、例えば撮影者が夕陽らしく仕上げたいと思う写真については、画像処理において夕陽仕上げを施して、撮影者のイメージ通りの夕陽のプリントを提供することができる。同様に、雪の質感を出したい写真については雪仕上げ、風景らしさを出したい写真については風景仕上げ、人物の顔色(肌の色)をきれいに出したい写真についてはポートレート仕上げ、白黒写真にしたい写真については白黒仕上げというように、それぞれ撮影情報に基づいて最適な画像処理を施すことにより、撮影者の意図通りに写真を再生することができる。

ウ.引用発明(引用例1に記載された発明)
(ア)対象とする引用発明
A.対象とする実施形態
記載f.によれば、他の実施例および実施形態として、「(2)また、上述の各実施例においては、画像処理制御情報として代表的な情報を一例として用いて説明しており、これらに限定されるものではない。実際の画像処理においては、対応する画像処理制御情報を場合に応じて取捨選択することができる。例えば、第1実施例において、入力特性情報と出力特性情報のみを利用する場合、画像解析情報を利用しない場合、意図情報を利用しない場合、入力特性情報を利用しない場合等にも本発明を適用することができる。」(段落【0111】)とされており、
「第1の実施例」において「意図情報を利用しない場合」という「他の実施例および実施形態」が開示され、
また、「第3実施例」は、「第1の実施例」に「画像処理装置20Aが後述する情報変換テーブルTBL1を備えており、使用される画像入力手段および画像出力手段に特有の入力特性情報および出力特性情報、すなわち画像処理制御情報を、この情報変換テーブルTBL1に従って取得する」(記載d.段落【0075】)といった変更をした第2実施例に対し、「画像処理制御情報取得手段72Bが取得する画像処理制御情報としての情報が、画像入力手段の入力特性情報や画像出力手段の出力特性情報ではなく、画像品質特性情報であ」り、「また、画像処理装置20Bが後述する情報変換テーブルTBL2を備えており、画像処理制御情報としての画像品質特性情報を、この情報変換テーブルTBL2に従って取得する」(記載e.段落【0080】)といった変更をしたものであることから、
「他の実施例および実施形態」として、「第3実施例」において「意図情報を利用しない場合」を認めることができる。
このことは、記載e.段落【0108】「本実施例における画像処理パラメータの推論決定の説明においては、説明を容易にするために、画像処理制御情報としての画像解析情報やオペレータ等の意図情報について省略している。しかしながら、第1実施例と同様に、画像解析情報やオペレータ等の意図情報に関しても画像処理制御情報として加えて画像処理パラメータを推論決定することができる。」からも、「意図情報」は必須ではなく、「意図情報を利用しない場合」が想定されていることが理解できる。

B.対象とする発明のカテゴリ(コンピュータプログラム)
記載e.第3実施例の「第3実施例としての画像処理装置20Bは、図13に示す第2実施例とほぼ同様の構成を有しており、各種コンピュータプログラムの作用によりCPU24(図1)は、各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作する。」(段落【0079】)によれば、
「CPU24」を「各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作」させる「コンピュータプログラム」が認められる。

C.まとめ
以上から、
「他の実施例および実施形態」としての、意図情報を利用しない場合」の「第3実施例」における、
「CPU24」を「各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作」させる「コンピュータプログラム」
を、引用発明として認定することとする。

(イ)引用発明の概要
「CPU24」を「各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作」させるについて検討するに、
上記「各処理段階」は、対応する「段階」という記載がなく、
記載e.において、「図16は、第3実施例における画像処理の概要を示すフローチャートである。まず、ステップS400において、」(段落【0081】)といった記載となっていることから、
「ステップ」が「処理段階」を示し、
各処理段階とは、図16のフローチャートにおける各ステップであることは普通に理解されることである。
また、「意図情報を利用しない」場合は、該ステップのうち、S104の「意図情報の取得」を行わないことは明らかである。
そこで、図16のフローチャートにおける各「ステップ」について、動作主体を以下、検討する。

A.画像品質特性情報の取得(S400)
記載e.の「ステップS400において、画像処理制御情報取得手段72B(図15)が、画像処理制御情報として画像品質特性情報を取得する。」(段落【0081】)によれば、
ステップS400の動作主体は、画像処理制御情報取得手段72B(CPU24)である。

B.画像解析情報の取得(S102)
記載e.の「ステップS102?S110の内容は、図3の第1実施例と同じであるが、後述するように、ファジィルールは第1実施例と異なるものが使用されている。」(段落【0081】)によれば、ステップS102は、「図3の第1実施例と同じ」であるから、記載c.第1実施例の「画像入力手段40(スキャナ42)から画像が入力されると、画像処理制御情報取得手段72はステップS102で入力画像を解析して、その解析結果を画像解析情報として取得する。画像解析情報には、ノイズ量、階調ヒストグラム(画面全体または一部について、各階調の頻度を表す)等の入力画像の統計的情報が含まれる。」(段落【0057】)から、
ステップS102の動作主体は、第1実施例の画像処理制御情報取得手段72に対応する、第3実施例の画像処理制御情報取得手段72B(CPU24)である。

C.画像処理パラメータの推論決定(S106)
上述B.のように、ステップS106も「図3の第1実施例と同じ」であるから、記載c.第1実施例の「ステップS106では、画像処理パラメータ推論決定手段74(図2)が、ステップS100?S104において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する。」(段落【0059】)を参照すれば、
ステップS106の動作主体は、画像処理パラメータ推論決定手段74(CPU24)である。

D.画像処理(S108)
上述B.のように、ステップS108も「図3の第1実施例と同じ」であるから、記載c.第1実施例の「ステップS108において、画像処理手段76(図2)が、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行してそのデータを画像出力手段50(カラープリンタ54)に出力する。」(段落【0048】)を参照すれば、
ステップS108の動作主体は、画像処理手段76(CPU24)である。

E.画像出力(S110)
上述B.のように、ステップS110も「図3の第1実施例と同じ」であるから、記載c.第1実施例の「ステップS110において、画像出力手段50(カラープリンタ54)は、画像処理手段76から出力された画像データを画像として印刷して出力する。」(段落【0048】)を参照すれば、
ステップS110の動作主体は、(CPU24ではない)画像出力手段50である。

F.CPU(コンピュータプログラム)が動作主体となるステップ
よって、「CPU24」を「各処理段階に応じて、画像処理制御情報取得手段72B、画像処理パラメータ推論決定手段74、画像処理制御手段76として動作」させる「コンピュータプログラム」は、上述の各ステップのうち、S400,S102,S106およびS108の処理を行う。

G.まとめ(引用発明の概要)
以上から、引用発明の概要として、
画像品質特性情報の取得(S400)と、
画像解析情報の取得(S102)と、
画像処理パラメータの推論決定(S106)と、
画像処理(S108)と
の各ステップを、CPU24に動作させるコンピュータプログラム
を認めることができる。

(ウ)引用発明の詳細
A.画像品質特性情報の取得(S400)
記載e.の「画像処理を開始すると、画像処理制御情報取得手段72Bは、これらの指定された情報を画像処理条件情報として取得する。そして、取得された画像処理条件情報に対応する品質特性情報を情報変換テーブルTBL2を参照して取得することができる。」(段落【0085】)、「ここで、「画像処理条件情報」は、出力画像の品質に影響を与えるような情報を意味する。」(段落【0082】)によれば、
「画像品質特性情報の取得(S400)」は、
「画像処理を開始すると、指定された情報を、出力画像の品質に影響を与えるような情報として取得」し、
「取得された出力画像の品質に影響を与えるような情報に対応する品質特性情報を情報変換テーブルTBL2を参照して取得する」処理を行う。

B.画像解析情報の取得(S102)
記載c.の「画像入力手段40(スキャナ42)から画像が入力されると、画像処理制御情報取得手段72はステップS102で入力画像を解析して、その解析結果を画像解析情報として取得する。画像解析情報には、ノイズ量、階調ヒストグラム(画面全体または一部について、各階調の頻度を表す)等の入力画像の統計的情報が含まれる。」(段落【0057】)、記載e.「スキャナやデジタルカメラなどの画像入力手段」(段落【0082】)によれば、
「画像解析情報の取得(S102)」は、
「デジタルカメラなどの画像入力手段40から画像が入力されると、入力画像を解析して、その解析結果を、ノイズ量、階調ヒストグラム(画面全体または一部について、各階調の頻度を表す)等の入力画像の統計的情報が含まれる画像解析情報として取得する」処理を行う。

C.画像処理パラメータの推論決定(S106)
記載e.の「ステップS106では、画像処理パラメータ推論決定手段74(図15)が、ステップS400、S102、S104において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する。」(段落【0086】)によれば、本引用発明においてステップS104は存在しないから、
「画像処理パラメータの推論決定(S106)」は、
「ステップS400、S102において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する」処理を行う。

D.「画像処理(S108)」
記載c.の「ステップS108において、画像処理手段76(図2)が、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行してそのデータを画像出力手段50(カラープリンタ54)に出力する。」(段落【0048】)によれば、
「画像処理(S108)」は、
「ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行して」、
「そのデータをカラープリンタ54に出力する」処理を行う。

E.CPU24に動作させるコンピュータプログラム
記載c.の「コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。」(段落【0043】)、「コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各手段の機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。」(段落【0044】)によると、
各手段の処理は「機能」を称され、
また、「CPU24に動作させるコンピュータプログラムは」、
各「機能を実現する時に」、「コンピュータのマイクロプロセッサによって実行され」る「コンピュータプログラム」である。

(エ)まとめ(引用発明)
以上、まとめると、下記の引用発明を認めることができる。

記(引用発明)
画像処理を開始すると、指定された情報を、出力画像の品質に影響を与えるような情報として取得し、
取得された出力画像の品質に影響を与えるような情報に対応する品質特性情報を情報変換テーブルTBL2を参照して取得する処理を行う機能(S400)、
デジタルカメラなどの画像入力手段40から画像が入力されると、入力画像を解析して、その解析結果を、ノイズ量、階調ヒストグラム(画面全体または一部について、各階調の頻度を表す)等の入力画像の統計的情報が含まれる画像解析情報として取得する処理を行う機能(S102)、
ステップS400、S102において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する処理を行う機能(S106)、
ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行して、
そのデータをカラープリンタ54に出力する処理を行う機能(S108)を有し
各機能を実現する時に、コンピュータのマイクロプロセッサによって実行されるコンピュータプログラム。

エ.引用例2に記載された技術
上記イ.の記載g.ないしi.によれば、引用例2には、
「早くかつ簡単に最適な画像処理条件を求め、これにより高画質なプリントを迅速に顧客に提供できる」ことを目的とし、
「デジタルカメラ」において、「マニュアルで設定された各種設定値」や「モード設定」された「モード情報」といった「撮影条件を表す撮影情報」を
「撮影により取得したデジタル画像データ」に「付与する機能を有するデジタルカメラにより前記撮影情報が付与されたデジタル画像データを得」、
「デジタル画像データに対し、該デジタル画像データに付与された前記撮影情報を使用して前記デジタル画像データの画質を高めるための画像処理を行い、前記画像処理されたデジタル画像データを再生する」
ことが記載されている。

(3)対比
ア.「画像を表す画像データを解析して、画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能」について
引用発明は「入力画像を解析して、その解析結果を、ノイズ量、階調ヒストグラム(画面全体または一部について、各階調の頻度を表す)等の入力画像の統計的情報が含まれる画像解析情報として取得する処理を行う機能(S102)」を有しており、
「入力画像を解析して」は、「画像を表す画像データを解析して」といえ、「統計的情報」は「特性情報」といえるから、
「入力画像の統計的情報が含まれる画像解析情報として取得する処理を行う機能」は、「画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能」といえる。
よって、補正発明と引用発明とは、いずれも「画像を表す画像データを解析して、画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能」を有するものといえる。

イ.「前記特性情報と、前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報とを用いて、前記画像データに画像処理を行う画像処理機能」について
引用発明の「ステップS400、S102において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する処理を行う機能(S106)、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行して」において、
ステップ102において取得された画像処理制御情報とは、上述ア.のように「特性情報」といえる。
ステップS400における画像処理制御情報とは、S400は「取得された出力画像の品質に影響を与えるような情報に対応する品質特性情報を情報変換テーブルTBL2を参照して取得する処理を行う機能」であるから「出力画像の品質に影響を与えるような情報」を用いて取得された情報であるといえる。
そして、「取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する処理を行う機能(S106)、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行して」は、
「取得した各画像処理制御情報」を用いて、画像処理を行う画像処理機能といえる。
よって、引用発明における「ステップS400、S102において取得した各画像処理制御情報に基づいて画像処理パラメータを推論決定する処理を行う機能(S106)、ステップS106において求められた画像処理パラメータに応じて画像処理を実行して」は、
「特性情報と、出力画像の品質に影響を与えるような情報を用いて取得された情報とを用いて、画像処理を行う画像処理機能」といえる。
また、補正発明における「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」は、「出力画像の品質に影響を与えるような情報」といえる。
よって、補正発明と引用発明とは、いずれも「前記特性情報と、出力画像の品質に影響を与えるような情報とを用いて、前記画像データに画像処理を行う画像処理機能」を有するものといえる。
もっとも、「出力画像の品質に影響を与えるような情報」が、
補正発明が「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」であるのに対し、
引用発明は、「出力画像の品質に影響を与えるような情報」である点で相違する。

ウ.「前記画像処理が行われた前記画像データを印刷する印刷機能」について
引用発明は「画像処理を実行して、そのデータをカラープリンタ54に出力する処理を行う機能」を有しており、該「そのデータ」とは、「画像処理が行われた画像データ」といえ、「カラープリンタ54に出力する処理を行う機能」は、「印刷する印刷機能」といえる。
よって、補正発明と引用発明とは、いずれも「前記画像処理が行われた前記画像データを印刷する印刷機能」を有するものといえる。

エ.「コンピュータによって実現し、」、「印刷プログラム」について
補正発明は、「コンピュータによって実現」する、「印刷プログラム」に係るものであるところ、
引用発明は、「各機能を実現する時に、コンピュータのマイクロプロセッサによって実行されるコンピュータプログラム」であるから、(各機能を)「コンピュータによって実現」する「プログラム」に係るものであり、
引用発明の「プログラム」は、「カラープリンタ54に出力する処理を行う」から、「印刷プログラム」と称しても差し支えのないものであるから、
補正発明と引用発明とは、いずれも「コンピュータによって実現」する「印刷プログラム」に係るものであるといえる。

オ.「前記画像データは画像データ生成装置にて生成され」について
引用発明における「入力画像」は、「デジタルカメラなどの画像入力手段40から」の画像であり、「入力画像」は「画像データ」といえ、「デジタルカメラ」は、「画像データ生成装置」といえるから、
補正発明と引用発明とは、いずれも「前記画像データは画像データ生成装置にて生成され」るものといえる。

カ.「前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる」について
上述イ.のように、引用発明は、「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」を有していないため、
補正発明は「前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる」のに対し、
引用発明は、そのようにしない点で相違する。

キ.まとめ(一致点・相違点)
以上の対比結果によれば、補正発明と引用発明との一致点、相違点は下記のとおりである。

記(一致点)
画像を表す画像データを解析して、画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能
前記特性情報と、出力画像の品質に影響を与えるような情報とを用いて、前記画像データに画像処理を行う画像処理機能
前記画像処理が行われた前記画像データを印刷する印刷機能
とをコンピュータによって実現し、
前記画像データは画像データ生成装置にて生成され
る印刷プログラム

記(相違点)
「出力画像の品質に影響を与えるような情報」について、
補正発明は「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」であり、
引用発明は、そのような情報ではなく、
また、
補正発明は「前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる」とするのに対し、
引用発明は、そのようにしない点

(4)判断
そこで、以下、上記相違点について検討する。
ア.引用例2記載技術
引用例2には、上述(2)エ.のとおりのことが記載されているところ、
「デジタルカメラ」において「撮影により取得したデジタル画像データに付与」される
「マニュアルで設定された各種設定値」や「モード設定」された「モード情報」といった「撮影条件を表す撮影情報」は、
「画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」といえ、
「デジタル画像データ」と、「撮影情報」を、「デジタルカメラ」にて関連付けているといえる。
また、「デジタルカメラ」は「画像データ生成装置」といえ、「デジタル画像データ」は「画像データ」といえる。
よって、引用例2には、
画像データと、画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報を、画像データ生成装置にて関連付け、
画像データに対し、前記撮影情報を使用して前記画像データの画質を高めるための画像処理を行い、前記画像処理された画像データを再生することが記載されているといえる。

イ.引用例2記載技術の引用発明への適用の容易性
引用発明と引用例2記載技術は、印刷する画像の画質を高めるための画像処理を容易に行うものである。
そして、引用発明における「出力画像の品質に影響を与えるような情報」は、記載e.によれば、具体的には、「人物画像や風景画像などの画像の対象を示す情報」(段落【0082】)などであり、「画像の対象」が「人物」である場合は、「画像の対象「人物」に関する条件「鮮鋭化は抑え目でよい。人物の肌をやわらかに仕上げたい。質感は標準でよい。」より、シャープネスの強さは30、画像の質感は50、画像の滑らかさは65とし」(段落【0092】)た画像品質性情報の情報値が与えられ、これに基づいて画像処理が行われる。
一方、引用例2における「撮影情報」は、記載i.によれば、「例えば夕陽を背景にして撮影する場合には夕陽モード、人物を撮影する際にはポートレートモード」といった「モード情報」を「撮影情報」とすれば、「風景らしさを出したい写真については風景仕上げ、人物の顔色(肌の色)をきれいに出したい写真についてはポートレート仕上げ、・・・というように、それぞれ撮影情報に基づいて最適な画像処理を施すことにより、撮影者の意図通りに写真を再生することができる」(段落【0024】)とするものである。
つまり、引用発明と引用例2記載技術の両者とも、画像の対象(例えば「人物」)に応じた画像処理(対象が「人物」であれば人物の肌の色をきれいにする処理)を行うために、画像の対象が分かるための情報(引用発明の「出力画像の品質に影響を与えるような情報」、引用例2の「撮影情報」)を用いることにより、印刷する画像の画質を高めるための画像処理を容易に行うものである。
よって、画像の対象に応じた画像処理を行うために用いる引用発明における「出力画像の品質に影響を与えるような情報」として、
同様に画像の対象に応じた画像処理を行うために用いる引用例2における「撮影情報」、つまり「画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

ウ.相違点の容易想到性
引用発明に、引用例2記載技術を適用すれば、
「前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付け」る構成となることは明らかである。
よって、引用発明に、引用例2記載技術を適用し、
引用発明の「出力画像の品質に影響を与えるような情報」を、
「前記画像の撮影時における撮影条件であって前記画像の撮影時に設定可能な撮影条件を示す撮影情報」とし、
「前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる」構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

エ.まとめ
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、また、補正発明を全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1乃至12に係る発明は、本願明細書および図面(平成20年10月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載したとおりのものであるところ、そのうち、請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりである。

記(本願発明)
画像を表す画像データを解析して、画像データの特性情報を取得する特性情報取得機能と、
前記特性情報と、前記画像の撮影時における撮影条件を示す撮影情報とを用いて、前記画像データに画像処理を行う画像処理機能と、
前記画像処理が行われた前記画像データを印刷する印刷機能とをコンピュータによって実現し、
前記画像データは画像データ生成装置にて生成され、
前記画像データと前記撮影情報とは、前記画像データ生成装置にて関連付けられる
ことを特徴とする印刷プログラム。

2.引用発明
原査定の拒絶理由に引用された引用例1、2およびそれらの記載事項は、前記第2 4.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記補正発明から、前記第2 3.で認定したとおりの前記手続補正による限定を省いたものであるところ、上記限定を有する補正発明が、前記引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記第2 4.(3)、(4)で認定、判断したとおりであり、また、本願発明を全体としてみても格別なものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

したがって、本願発明も、前記引用例1、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上、本願の請求項9に係る発明は、引用例1、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をするべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-06 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2002-150448(P2002-150448)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 直樹  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 小池 正彦
梅本 達雄
発明の名称 画像ファイルの出力画像調整  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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