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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1238090
審判番号 不服2009-3147  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-12 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2006-238636「カメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 1日出願公開、特開2007- 53775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯等
(1)経緯
本件出願は、
平成9年9月10日に出願した特願平9-245330号の一部を平成18年9月4日に新たな特許出願としたものであって、 平成20年9月30日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成20年12月8日付けで手続補正がなされたが、平成21年1月6日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成21年2月12日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、平成21年3月13日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされたものである。

(2)査定
拒絶査定の理由は、概略次のようなものである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平06-105193号公報
刊行物2:特開平02-178646号公報

2.補正却下の決定
平成21年3月13日付けの手続補正について次のとおり決定する。

〈補正却下の決定の結論〉
平成21年3月13日付けの手続補正を却下する。

〈補正却下の決定の理由〉
(1)補正の内容
平成21年3月13日付けの手続補正(以下、本件補正という)は、特許請求の範囲を次のように補正する補正を含むものである。

[補正前](平成20年12月8日付けで補正された特許請求の範囲)
【請求項1】
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する記録手段とを備えたカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データと、前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録することを特徴とするカメラ。

[補正後]
【請求項1】
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する着脱可能な記録手段とを備えたカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データと、前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、
前記撮影条件は、前記第一の画像データに関連付けて前記記録手段に記録し、
前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影することを特徴とするカメラ。

上記特許請求の範囲の補正は、
「記録手段」(補正前)を「着脱可能な記録手段」(補正後)とし、
記録手段に記録する事項に、「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、」を加え、
「前記撮影条件は、前記第一の画像データに関連付けて前記記録手段に記録し、
前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影すること」を加える補正である。

(2)補正の適法性
ア.補正の範囲
上記補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

イ.補正の目的
上記補正は、補正前の「記録手段」を限定すると共に、補正前のパノラマ撮影をする際の記録の仕方の構成を限定するものであって、補正前と同様にパノラマ撮影における課題を解決するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

ウ.独立特許要件
本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的としているので、独立特許要件について検討する。
(ア)補正後発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、補正後発明という)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のところにある。

[補正後発明]
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する着脱可能な記録手段とを備えたカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データと、前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、
前記撮影条件は、前記第一の画像データに関連付けて前記記録手段に記録し、
前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影することを特徴とするカメラ。

(イ)刊行物
特開平02-178646号公報(以下、刊行物2という)には、図面と共に次の記載がある。

(刊行物2の記載)
3.発明の詳細な説明
〔発明の利用分野〕
本発明は、電子ビューファインダを備えたカメラ等におけるパノラマ撮影装置に関するものである。
〔従来技術〕
従来、パノラマ撮影をする場合は、撮影者は頭の中に継ぎ目の部分を覚えなければならなかった。
また三脚を使用してカメラをある程度固定させていた。
この様に、従来パノラマ撮影をする場合は、撮影者は頭の中に継ぎ目の部分を覚えなければならないので煩わしく、又、次の撮影でファインダ上の画面がこの継ぎ目の部分につながるようにしなければならないが、この時頭の中に覚えた継ぎ目の部分は、ファインダに対し覚えた時とは逆側にもって来るように想像しなければならないことや、遠景等で継ぎ目にそれほど特徴がない場合があることによって、なかなかうまくこの継ぎ目の部分を合わせることができなかった。また、一度継ぎ目の部分を忘れてしまうと、もう-度最初からやり直さなければ駄目であったし、さらにまた左右方向を覚えたとしても、なかなか上下方向まで三脚なしでは、合わせることができず、しかも、手持ちでカメラの位置が少しずれただけでも、次の撮影画面を合わせることが困難であるなどの問題点があった。
〔発明の目的〕
本発明は以上の事情に鑑み為されたもので、撮影画像を表示する為の表示手段と、過去の撮影画像を記憶する為の記憶手段と、現在の撮影画像と、上記記憶手段に記憶された過去の撮影画像とを上記表示手段に同時に表示させる為の制御手段とを備え、既に撮影した前画面とこれから撮影する現画面を同時に表示させてこれから写す写真が正しくパノラマ写真として継がるようにするパノラマ撮影装置を提供しようとするものである。
〔実施例〕
第1図は本発明の装置を備えたカメラの一例を示したものである。尚、以降の説明において図面における同一符号は同一の機能を有するものとする。第1図において、1はカメラ本体、2はレリーズボタン、3は表示手段、4は左スクロールのスイッチが連動するボタン、5は右スクロールのスイッチが連動するボタン、6はフイルム又は撮像素子上に被写体を結像するレンズである。
第2図は第1図のカメラに組み込まれた回路の一例を示している。すなわち、撮像素子401によって被写体像が画像信号として撮像アドレス発生手段404に応じて出力され、A/D変換手段402によってデジタル値に変換され、RAM403に記憶される。RAM403は、1から36まであり、それぞれはフイルムカウンタ412の情報に応じてRAMセレクション手段411によって選択される。
前記RAM403に記憶された画像信号は、撮像アドレス404に応じてデータをD/A変換手段409に送り、アナログに変換された信号は表示アドレス発生手段406で指定された表示手段410の場所に表示される。ここで、位相制御手段405が表示アドレスと撮像アドレスに位相を持たせ、表示手段410のスタートアドレスが後述の第4図に示す如く実質的に変わったような表示を表示手段410に行わせる。さらに、その前後において位相制御手段405はRAMセレクト手段411に信号を送って後述する第4図のアドレスに従い、RAM403の隣りのデータも表示手段410に表示させ、これらによって後述する第3図(a),(b)に示すような表示を行わせる。
なお第2図にみられるスイッチ407,408は、それぞれ右方向のパノラマか、左方向のパノラマかを選択するスイッチであり、後述する第3図の(a)か、第3図の(b)を選択する。
第3図(a),(b)は第1図、第2図のカメラによる表示の第1例を示している。まず、第3図の(a)は、右方向のパノラマ撮影ということで、前述のスイッチ407によってこれを設定すると、撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示される。さらに、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示されることになり、前の画面n枚目と、これから撮影するn+1枚目が正確に境界を合わせることが可能となる。この場合のパノラマ撮影は左の風景から右方向に移動するものであるが、この逆も前述のスイッチ408によって選択ができる。つまり、第3図(b)のように、n枚目の左側の斜線部分をファインダの右側に表示してn+1枚目の斜線部分をファインダの左側に表示することによって右側の風景から左方向にパノラマ撮影することも可能である。
第4図(a),(b)は上記n枚目,n+1枚目の画像がファインダ上で表示される場合のそれぞれの水平方向のアドレスを示している。
第4図の(a)は第3図の(a)に、第4図の(b)は第3図の(b)に対応している。
第4図の(a)において、1枚の画像は水平方向00HからFFHまでのデータがあると考える。n枚目の画像データの水平方向COHからFFHのデータをファインダ上のOOHから3FHに、n+1枚目の画像データのOOHからBFHまでをファインダ上の40HからFFHに表示すればよいことになる。また第4図の(b)も同様である。
以上のことから、表示の水平アドレスのスタート位置を変えれば、第3図の表示を実現できることがわかる。
第5図は本発明の表示の第2例を示している。これは完全に2枚の画像を隣り合わせに1画面に表示するものである。これは、第2図の回路に於いて、撮影アドレス発生手段404によってRAM403のデータをそれぞれ垂直水平ともに1つとびに読み出すようにし、位相制御手段405、RAMセレクト手段411によって、n枚目、n+1枚目の表示のスタートアドレスを第5図に対応するようにセットし、表示アドレス発生手段406に垂直方向の表示アドレス範囲を指定しておくことで実現できる。
第6図は本発明の表示の第3例を示している。前述の第3図では、固定値がアドレスの位相として設定されていたが、この例では、第1図のボタン4,5によって画面をスクロールさせて、前画面の残る量を制御できるようにしたものである。すなわち、同図の(a)→(b)→(C)と徐々にスクロールしていた様子を示している。つまり、ファインダ上で、右側にn+1枚目の画面がこれから撮影される像として動画表示され、左側にn枚目の既に撮影された画面が静止画表示される。
第7図は第6図の表示を実現する回路の一例を示している。
被写体は撮像素子401によって画像信号に変換され、A/D変換手段402でデジタル値に変換され、RAM703?705のDI端子に出力される。RAM703?705は前述のRAM403を構成している(尚、ここでは図示を省略しているがRAM703?705の駒数に対応した数だけ設けられている)。撮像素子401の垂直方向の転送クロックφVを撮像垂直アドレスカウンタ717によってカウントアツプして垂直方向アドレスを撮像素子401とRAM703?705に送る。このカウンタは転送クロックφVが所定数出力されると垂直ブランキング信号VDによって初期リセットされる。同様に、撮像素子401の水平方向の転送クロックφHを撮像水平アドレスカウンタ718によってカウントアツプして水平方向のアドレスを撮像素子401とRAM703?705に送る。このカウンタは転送クロックφHが所定数出力されると水平ブランキング信号HDによって初期リセットされる。
一方、フイルムカウンタ412からのフイルムの駒数を表わす信号に応じてデコーダ715がRAM703?705のWE端子に信号を送り、RAM703?705の1つを選択してその選択したRAMに撮像素子401からの画像信号を取り込ませる。フイルムカウンタ412は、シャッタ制御手段729からの露光のタイミング信号によってカウンタを1つカウントアツプし、それによってデコーダ715の出力が切換わり、その時の画像データがそれまでデコーダ715によって選択されていたRAMに静止画として記録される。尚、その前までの画像データは順次RAMを介してD/A変換手段409に送られてアナログ信号に変換され、表示手段410に現在の画像として動画表示される。
またRAM703?705からのデータの読み出しとしては、デコーダ715及び後述する排他論理和ゲート726,727の出力に応じて、アンドゲート709?714、オアゲート706?708からなるセレクトゲートを介してOE端子に信号の送られたRAMからのみデータが出力される。
スイッチ723,724は、第1図のボタン4,5に連動し、それぞれ右あるいは左方向のスクロールを指示するスイッチであり、これらスイッチがオンすることにより、クロック発生手段730よりクロックをアドレス差カウンタ720のup端子あるいはdown端子に送る。送られたクロックに対してはアドレス差カウンタ720はアップカウント又はダウンカウントを行う。ここでのカウント値がスクロール量として表示のn枚目とn+1枚目の境界のオフセット値となる。またアドレス差カウンタの最初がダウンか、アップかによって、方向検出手段728はスクロール方向として表示手段410に表示される1枚目の画像が右側が左側かを選択している。
コンパレータ719は撮像水平アドレスカウンタ718の内容とアドレス差カウンタ720の内容の大小判別を行い、大(>)小(<)の出力はそれぞれ排他論理和ゲート726,727に出力される。
アドレス差カウンタ720のカウント値は、コンパレータ719によって撮像水平アドレスカウンタ718の内容と比較され、方向検出手段728の出力に応じて右方向のスクロールの場合は、撮像水平アドレスカウンタ718の内容がアドレス差カウンタ720のカウント値より大きい(>)間、排他論理和ゲート726の出力は“H”、排他論理和ゲート727の出力は“L”となって、この時、フイルムカウンタ412の内容がn+1枚目であればデコーダ715の出力によってアンドゲート712が選択され、前画面であるn枚目の画像データがRAM704から読み出されてD/A変換手段409を介し、表示手段410に入力される。表示手段410は、表示水平アドレスカウンタ721及び表示垂直アドレスカウンタ722に指定されるアドレスに従って表示を行うが、コンパレータ719が一致信号(=)を出力した時点で表示水平アドレスカウンタ721はリセットされるので、撮像水平アドレスカウンタ718の内容がアドレス差カウンタ719のカウント値より大きくなるそれ以降の撮像水平アドレスカウンタ718のアドレスに対応したRAM704の画像データ、すなわちn枚目の右側の画像が表示手段410の左側に表示される。
そして、撮像水平アドレスカウンタ718が水平ブランキング信号HDにより初期リセットされ、撮像水平アドレスカウンタ718の内容がアドレス差カウンタ719のカウント値より小さく(<)なると、コンパレータ719の出力により排他論理和ゲート726の出力は“L”、排他論理和ゲート727の出力は“H”となって、今度はアンドゲート713が選択され、現画面であるn+1枚目の画像データがRAM705から読み出されて、D/A変換手段409を介し、表示手段410に入力される。
これにより表示手段410では撮像水平アドレスカウンタ718の先頭アドレスに対応した画像データがその時点での表示水平アドレスカウンタ721の指定するアドレスに対応した位置となるような表示が行われる。従って、表示手段410では、第6図に示される様にn+1枚目の画像の左側がn枚目の画像の右側に該n枚目の画像に続けて表示される。
一方、左方向のスクロールの場合は方向検出手段728の出力が反転して、排他論理和ゲート726,727の出力の切換わりが上述の右方向のスクロールの場合とは逆になって、表示手段410では表示手段410の左側にn+1枚目の画像の右側が表示され、それに引き続いてn枚目の画像の左側が表示手段410の右側に表示される。
尚、第2図での撮影アドレス発生手段404は、本実施例の撮像垂直アドレスカウンタ717と撮像水平アドレスカウンタ718で構成することができ、第2図の位相制御手段405は本実施例のアドレス差カウンタ720のアップカウント値及びダウンカウント値を一定にしたものと、方向検出手段728,コンパレータ719、排他論理和ゲート726,727によって構成することができ、更に、第2図のRAMセレクト手段411は、本実施例のオアゲート706?708、アンドゲート709?714、デコーダ715によって構成でき、第2図の表示アドレス発生手段406は、本実施例の表示水平アドレスカウンタ721、表示垂直アドレスカウンタ722によって構成できるものである。
第8図(a),(b)は本発明の表示の第4例を示している。すなわち、画面の境界に境界線を表示することにより、識別しやすくしたものであり、同図の(b)のように一致に近い時でも、どの部分を見て継目を判断すればよいかがすぐにわかる。
これを実施する為には、前記第7図中において、コンパレータ719の一致信号(=)を第9図に示すようにインバータ1201で反転してアンドゲート1202の一方の入力端に入力し、アンドゲート1202の他方の入力端にRAM403のデータを入力して、その出力をD/A変換手段409人力させるようにすればよい。これによりコンパレータ719から一致信号が出力された際には、アンドゲート1202によってRAM403のデータのD/A変換手段409へ出力が阻止され、この部分が第8図のように、境界線として表示されることになる。
第10図は第7図のスクロール機能を発展させた表示を示したもので、第7図のアドレス差カウンタ720を第11図に示す様にデコーダ1203によってスクロールが一画面を越えて、さらにその前画面あるいは後画面にいった時に、フイルムカウンタの内容を減算あるいは加算してその内容をデコーダ715に送ることによって、多画面のスクロールを可能にしたものである。すなわち、第10図のn-2枚目、n-1枚目、n枚目と3枚のパノラマを撮影した場合、スクロールボタンを押すことによって表示範囲Aを左右に移動し、ファインダ上にその画面を表示するものである。これによって、撮影終了後にパノラマ写真の確認が電子ビューファインダ上で可能になる。
第12図(a)、(b)は本発明の表示の第6例を示している。すなわち、n枚目である前画面を一部残し、n+1枚目を重ねて表示するものである。第12図の(a)は重なり部分が一致していないことを示し、第12図の(b)は重なり部分が一致して表示がなくなった様子を示している。この方法によれば、プリント上では重なり部分ができて好ましくないような感じもするが、これはプリント外も撮像素子によって表示すればすむ。この表示では、単純に一致するか、しないかの判断ができるので、継目を合わせやすくすることができるものである。
第13図は第12図の表示を実施する回路例を示したもので、表示アドレスカウンタ1111のアドレスは、現画面であるn+1枚目の画像を取り込むRAM1102と表示手段410に送られ、RAM1102からのデータがRAM1102のアドレスと同一のアドレスに対応して表示手段410に表示される。一方、前画面であるn枚目の画像を取り込むRAM1101はアドレスオフセット値がプリセット手段1103によってパノラマアドレス発生手段1104にセットされ、RAM1101はこのオフセット値からデータを読み出すことになる。またRAM1102とRAM1101のデータは排他論理和ゲート1107に入り、一致すると、ローレベルを出力するようになる。つまり、排他論理和ゲート1107はRAM1101とRAM1102の画像データの重なり部分を出力する。一方、コンパレータ1105によって、パノラマアドレス発生手段1104のカウンタ値が比較されて、この場合、RAM1101の画像データがFFHである右端まできた時にハイレベルが出力されるようになっており、それまではインバータ1106を介してアントゲ-ト1109にハイレベルが入力されることによって、排他論理和ゲート1107の出力がアンドゲート1109、オアゲート1110を介してA/D変換手段409に送られ、表示手段410の左側に第12図に示すような表示が行われる。また上記の様にRAM1101の画像データがFFHである右端にきた場合にはコンパレータ1105の出力が反転するので、オアゲート1110にはアンドゲート11O8を介してRAM1102の出力のみが入力され、A/D変換手段409を介して表示手段410の右側に第12図に示すような表示が行われる。
第14図は上下方向にパノラマ展開をする様子を示したもので、この場合、第7図の回路において、水平アドレスカウンタを制御していたものを、垂直アドレスカウンタに変更することによって実現可能である。
第15図は第10図のスクロールを上下方向に展開したものである。この場合も第7図、第11図の回路において、水平アドレスカウンタを制御していたものを垂直アドレスカウンタに変更すればよい。
第16図は左右のスクロールおよび上下のスクロールを組合わせたものであり、同図のような構図での撮影も容易になる。また自由にスクロールをさせることも前記実施例の組合わせから可能であることは、勿論である。
第17図は第16図の実施例を文字にした場合である。すなわち、文字の場合においては、一画面で認識できる文字数は、たとえば、第2図または第7図の撮像素子401および表示手段410の画素数によって制約される。したがって、被写物を分割して記録することにより、多くの文章の記録を可能にするものである。ここで、上下左右にパノラマ風に撮影した場合、次の画面がどの辺に接するものかがわかるので、これをメモリ等に記録して、マイコンで画面メモリを制御することにより、分割された画面がスクロールによって自動で隣り合って見られるようにすることが可能である。
第18図はマイコンを使用したときの本発明の回路のもう1つの実施例を示している。すなわち、パノラマ撮影を行った時に、方向検出手段728から方向をマイコン1701が取り込んで方向RAM1702に記憶し、再生時には方向RAM1702のデータからマイコン1701がスクロールに応じてRAM403にアドレスを出力して制御するものである。
〔発明の効果〕
以上説明した様に、本発明によれば既に撮影した前画面とこれから撮影する現画面をパノラマ状に表示するようにしたものであるから、撮影者はその表示を見ながら撮影することで所望のパノラマ撮影がきわめて容易に且つ確実に行えるようになり、パノラマ撮影を行う為の装置としてその有効性は非常に高いものである。
(刊行物2の記載、以上)

上記刊行物2の記載によると、刊行物2には、電子ビューファインダを備えたカメラ等におけるパノラマ撮影装置を備えたカメラが記載されている。
刊行物2のカメラは、カメラ本体1、レリーズボタン2、表示手段3、左スクロールのスイッチが連動するボタン4、右スクロールのスイッチが連動するボタン5、フイルム又は撮像素子上に被写体を結像するレンズ6を有する。
刊行物2のカメラは、
第3図の(a)は、右方向のパノラマ撮影ということで、スイッチ407によってこれを設定するものである。撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示され、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示されることになり、前の画面n枚目と、これから撮影するn+1枚目が正確に境界を合わせることが可能となる。この場合のパノラマ撮影は左の風景から右方向に移動するものであるが、この逆も前述のスイッチ408によって選択ができるものである。

このような刊行物2記載のカメラを次のように刊行物2に記載された発明(以下、「刊行物2発明」ともいう)とする。

[刊行物2発明]
電子ビューファインダを備えたカメラ等におけるパノラマ撮影装置を備えたカメラである。
カメラ本体1、レリーズボタン2、表示手段3、左スクロールのスイッチが連動するボタン4、右スクロールのスイッチが連動するボタン5、フイルム又は撮像素子上に被写体を結像するレンズ6を有する。
第3図の(a)は、右方向のパノラマ撮影ということで、スイッチ407によってこれを設定するものである。撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示され、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示されることになり、前の画面n枚目と、これから撮影するn+1枚目が正確に境界を合わせることが可能となる。この場合のパノラマ撮影は左の風景から右方向に移動するものであるが、この逆も前述のスイッチ408によって選択ができるものである。

(ウ)対比
補正後発明と刊行物2発明とを対比する。

a 「所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する着脱可能な記録手段とを備えたカメラ」

刊行物2発明のカメラは、「フイルム又は撮像素子上に被写体を結像するレンズ6を有する」ものであり、撮像素子を有するといえる。そして、その撮像素子は当然に所定の撮影範囲を有するといえる。
刊行物2発明のカメラは「表示手段3」を有しており、「第3図の(a)」で「撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示され、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示される」から、「表示手段3」は「撮影した前の写真の画像」「次に撮影されるであろう画像が動画として」表示される。それらの画像は撮像素子により撮像されたものであり、画像の記憶や表示には普通に所定の処理がなされて生成されるものと認められ、また、「合成されて表示される」ためにも所定の処理がなされ、「合成されて表示される」画像として生成されるといえるから、「表示手段3」は「該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部」といいうる。
刊行物2発明のカメラは、「電子ビューファインダを備えたカメラ等におけるパノラマ撮影装置を備えたカメラ」であり、「フイルム又は撮像素子上に被写体を結像するレンズ6を有する」ことから、カメラ本来の被写体の画像の記録は、レンズ6が結像する被写体の画像をフイルムで記録するものと考えられ、刊行物2発明のカメラは、レンズ6が結像する被写体の画像をカメラ本来の被写体画像の記録として記録するフイルムを有すると認められる。そして、カメラにおけるフイルムは通常着脱できるものであるから、刊行物2発明のカメラにおいても、フイルムは着脱可能であると考えるのが相当である。補正後発明における「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する着脱可能な記録手段」は、カメラ本来の被写体の画像の記録としての記録を行う記録手段であると認められるから、刊行物2発明のカメラは、補正後発明と同じく「画像を記録する着脱可能な記録手段」を有するといいうる。
もっとも、刊行物2発明のカメラは、レンズ6が結像する被写体の画像をカメラ本来の被写体の画像の記録として記録するフイルムを有すると認められ、撮像素子により撮影された画像データは表示のための記憶や表示はなされるものの、それを「画像を記録する着脱可能な記録手段」であるフイルムに記録するとはいえないから、画像を記録する着脱可能な記録手段に、補正後発明では、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録することに対し、刊行物2発明では、レンズ6が結像する被写体の画像を記録する点で相違する。
したがって、補正後発明と刊行物2発明とは、
「所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、カメラ本来の被写体の画像の記録としての画像を記録する着脱可能な記録手段」を有するカメラである点で一致し、
画像を記録する着脱可能な記録手段に、補正後発明では、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録することに対し、刊行物2発明では、レンズ6が結像する被写体の画像を記録する点で相違する。

b 「第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段」

刊行物2発明のカメラは、左スクロールのスイッチが連動するボタン4、右スクロールのスイッチが連動するボタン5を有している。そして、第3図の(a)は、右方向のパノラマ撮影ということで、スイッチ407によってこれを設定するものである。撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示され、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示されることになり、前の画面n枚目と、これから撮影するn+1枚目が正確に境界を合わせることが可能となる。この場合のパノラマ撮影は左の風景から右方向に移動するものであるが、この逆も前述のスイッチ408によって選択ができるものである。
刊行物2には、「尚、第2図での撮影アドレス発生手段404は、本実施例の撮像垂直アドレスカウンタ717と撮像水平アドレスカウンタ718で構成することができ、第2図の位相制御手段405は本実施例のアドレス差カウンタ720のアップカウント値及びダウンカウント値を一定にしたものと、方向検出手段728,コンパレータ719、排他論理和ゲート726,727によって構成することができ、更に、第2図のRAMセレクト手段411は、本実施例のオアゲート706?708、アンドゲート709?714、デコーダ715によって構成でき、第2図の表示アドレス発生手段406は、本実施例の表示水平アドレスカウンタ721、表示垂直アドレスカウンタ722によって構成できるものである。」(刊行物2、4頁左下欄12行?右下欄5行)とあり、ここで「本実施例」とされる第6図、第7図の第3例について、「スイッチ723,724は、第1図のボタン4,5に連動し、それぞれ右あるいは左方向のスクロールを指示するスイッチであり、これらスイッチがオンすることにより、クロック発生手段730よりクロックをアドレス差カウンタ720のup端子あるいはdown端子に送る。」(刊行物2、3頁右下欄5?10行)とあることから、スイッチ407、408はボタン4,5に連動すると認められる。そうであるから、ボタン4およびスイッチ407は、「撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像の斜線部分だけが現在ファインダである画像の左端に表示され、次に撮影されるであろう画像が動画としてn+1枚目の斜線部分がファインダの右残りの部分に合成されて表示されること」を設定し、ボタン5およびスイッチ408は、「この逆」を設定するといえる。そして、刊行物2発明で上記表示される「撮影した前の写真の画像であるn枚目の画像」は補正後発明の「第一の撮影範囲が画像として撮影された」における「撮影された」画像に相当し、「次に撮影されるであろう画像」である「動画」は補正後発明の「該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影する」における「撮影する」画像に相当するから、刊行物2発明のボタン4,5およびスイッチ407、408は、「第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段」といいうる。
したがって、補正後発明と刊行物2発明とは、「第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段」を有する点で一致する。

c 「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データと、前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、
前記撮影条件は、前記第一の画像データに関連付けて前記記録手段に記録し、
前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」

上記したように、刊行物2発明では、画像を記録する着脱可能な記録手段に、レンズ6が結像する被写体の画像を記録しており、撮像素子により撮影された画像データは表示のための記憶や表示はなされるものの、それを「画像を記録する着脱可能な記録手段」に記録するとはいえないものである。この「レンズ6が結像する被写体の画像」はカメラ本来の被写体の画像であり、補正後発明の「前記記録手段に記録」される「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」とカメラ本来の被写体の画像であり、第一の撮影で得られる画像、第二の撮影で得られる画像であるという点で対応するといえるが、フイルムに記録されるレンズ6が結像する被写体の画像であり、補正後発明で撮像素子により撮影された「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」ということはできない。
そうであるから、補正後発明と刊行物2発明とは、「第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像と、を前記記録手段に記録し」という点で一致するといえるが、
「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」が、補正後発明では「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」であることに対し、刊行物2発明では、「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」である点で相違する。

また、刊行物2発明は、「着脱可能な記録手段」であるフイルムに「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」と「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」との位置関係を記録していない。
さらに、「第一の撮影」での撮影条件を記録しておらず、「第二の撮影」を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影」していない。

したがって、補正後発明と刊行物2発明とは、
「第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像と、を前記記録手段に記録し」という点で一致し、
「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」が、補正後発明では「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」であることに対し、刊行物2発明では、「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」である点、
補正後発明では「前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録(し、)」することに対し、刊行物2発明は、そうでない点、
補正後発明では、「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、」「前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」ことに対し、刊行物2発明はそうでない点、
で相違する。

d 一致点相違点の整理
補正後発明の各構成に関して以上のように対比される。
そうすると、補正後発明と刊行物2発明とは
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、カメラ本来の被写体画像の記録としての画像を記録する着脱可能な記録手段を有するカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像と、を前記記録手段に記録する
ことを特徴とするカメラ。
という点で一致するといえる。

上記各構成に関する相違は、
補正後発明がいわゆるデジタルカメラであって、撮像素子で撮影された画像を表示すると共に、その撮像素子で撮影された画像をカメラ本来の記録として記録するものであることに対し、刊行物2発明が撮像素子で撮影された画像は記憶して表示するに留まり、カメラ本来の記録として記録を撮像素子を介さないでフイルムに記録するものであるという技術的相違に基づいて、
画像を記録する着脱可能な記録手段に、補正後発明では、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録することに対し、刊行物2発明では、レンズ6が結像する被写体の画像を記録する点で相違し、
「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」が、補正後発明では「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」であることに対し、刊行物2発明では、「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」である点で相違するものと認められ、
また、
第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像との位置関係に関して、
補正後発明では「前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録(し、)」することに対し、刊行物2発明は、そうでない点で相違するものと認められ、
撮影条件に関して、
補正後発明では、「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、」「前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」ことに対し、刊行物2発明はそうでない点で相違するものと認められる。

(エ)一致点相違点
以上対比によると、補正後発明と刊行物2発明との一致点相違点は次のとおりである。

[一致点]
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、カメラ本来の被写体画像の記録としての画像を記録する着脱可能な記録手段を有するカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像と、を前記記録手段に記録する
ことを特徴とするカメラ。

[相違点]
(相違点1)
画像を記録する着脱可能な記録手段に、補正後発明では、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録することに対し、刊行物2発明では、レンズ6が結像する被写体の画像を記録し、
「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」が、補正後発明では「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」であることに対し、刊行物2発明では、「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」である点。

(相違点2)
補正後発明では「前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録(し、)」することに対し、刊行物2発明は、そうでない点。

(相違点3)
補正後発明では、「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、」「前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」ことに対し、刊行物2発明はそうでない点で相違するものと認められる。

(オ)相違点の検討
a 相違点1について
撮像素子で撮影された画像を表示すると共に、その撮像素子で撮影された画像をカメラ本来の記録として記録する、いわゆるデジタルカメラは普通に知られており、また、そのようなデジタルカメラが着脱可能な記録手段に撮像素子で撮影された画像データもしくは適宜画像処理をして生成したデータを記録し、また、再生することも普通に知られたものであり、従来のフイルムカメラをデジタルカメラにすることでフイルムカメラの技術をデジタルカメラに継承することが普通に成されてきたと認められることから、刊行物2発明をみる当業者は、刊行物2発明を、撮像素子で撮影された画像をカメラ本来の記録として記録するいわゆるデジタルカメラとしてパノラマ撮影を行うようにしようとすることは、容易に想到できることといえ、そのようにしようとする際、刊行物2発明で撮像素子により撮影された画像データを着脱可能な記録手段に記録するようにし、その再生も着脱可能な記録手段から行うようにして、画像を記録する着脱可能な記録手段に、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録するようにし、また、「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」を「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」として、相違点1に係る補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できることといえる。

b 相違点2について
刊行物2には、第18図に関して、「第18図はマイコンを使用したときの本発明の回路のもう1つの実施例を示している。すなわち、パノラマ撮影を行った時に、方向検出手段728から方向をマイコン1701が取り込んで方向RAM1702に記憶し、再生時には方向RAM1702のデータからマイコン1701がスクロールに応じてRAM403にアドレスを出力して制御するものである。」(刊行物2、6頁5?11行)とあり、パノラマ撮影を行った時の方向を記憶しておき、再生時に、その記憶した方向を用いてパノラマ撮影の再生時の再生位置を制御することが記載されているから、相違点1で述べたように刊行物2発明をデジタルカメラとして、着脱可能な記録手段に撮像素子で撮影された画像データもしくは適宜画像処理をして生成したデータを記録し、また、再生する様にする際、パノラマ再生を考慮してパノラマ撮影を行った時の方向を記録しておくことは容易に想到できることといえ、その際、「前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録」するようにして、相違点2に係る補正後発明の構成とすることは、刊行物2発明をデジタルカメラとする際、当業者が容易に想到できることといえる。

c 相違点3について
本件出願前に公開された刊行物である特開平3-145635号公報(以下、「刊行物4」ともいう)には、次の記載がある。

(刊行物4の記載)
「3.発明の詳細な説明
産業上の利用分野
この発明はパノラマ撮影に適したカメラに関する。
従来の技術
従来から、複数の写真をつなげてパノラマ写真(パノラマ組写真)を鑑賞することがよく行なわれている。このようにすると、高価なパノラマカメラを用いることなく、手軽にパノラマ写真を鑑賞することができる。
発明が解決しようとする課題
ところで、パノラマ組写真では、複数の写真をつなげるため、露出値の異なる写真が混じっていると、不自然なパノラマ写真になってしまう。
そこで、この発明は、不自然でないパノラマ写真を撮影することができるカメラを提供することを目的としている。」(刊行物4、1頁左下欄15行?右下欄11行)

「〈露出〉
パノラマ組写真において、隣り合う写真の露出値が異なっていると、不自然な写真になる。とくに、継ぎ目の部分では、同じ被写体に明るい部分と暗い部分とが混在し、非常に不自然である。また、主要被写体のみが適正に露出されていると、適正露出からかけ離れた写真が混じってしまうことがあり、パノラマ写真全体からみると非常に不自然になることもある。」(刊行物4、5頁右上欄13行?左下欄1行)

「(変形例1)
このカメラは、パノラマモードのとき、露出値をパノラマ写真の第1コマめの露出値に固定して、残りの写真を同一の露出値に基づいて撮影するものである。
具体的には、ステップ#10(第7図)で求めた露出値(レジスタEVRに記憶されている露出値)基づいて露出を制御し(#600)、メモMEMにデータを記憶させ(#605)、フィルムを1コマ分巻き上げる(井610)。そして、スイッチSMがONになったかどうか、すなわち、パノラマモードが解除されたかどうかを判定し(#615)、パノラマモードが解除された場合には、第11図に示した「SMON」ルーチンへ進む。パノラマモードが解除されていなければ、スイッチS2がONであるか否かを判定し(#620)、スイッチS2がONであればステップ#600に戻り、ステップ#10で求めた露出値(パノラマ写真の第1コマめの露出値)に基づいて露出が制御される。ステップ#620でスイッチS2がOFFであれば、ステップ#615に戻る。なお、ステップ#615において、スイッチS1がONのときは無条件で(スイッチSMの状態にかかわらずに)ステップ#620に進むようにしてもよい。また、この変形例のカメラでは、第7図のステップ#25でスイッチS1がONのとき、ステップ#10に戻るようにしてもよい。これにより、実際に初めに撮影された被写体の露出値に基づいて残りのパノラマ写真が撮影されることになる。」(刊行物4、8頁左上欄11行?右上欄19行)
(刊行物4の記載、以上)

上記記載によると刊行物4には、「パノラマ組写真では、複数の写真をつなげるため、露出値の異なる写真が混じっていると、不自然なパノラマ写真になってしまう。」との課題の下に、パノラマ撮影の一コマ目の撮影の露出値で二コマ目以下の撮影を行うことが記載されており、一コマ目の撮影の露出値はメモリMEMに記憶させている。

当業者であれば刊行物4におけるパノラマ撮影での課題意識は刊行物2のパノラマ撮影にも普通に認識できるものと認められ、刊行物2発明においても、一コマ目の撮影の露出値で二コマ目以下の撮影を行おうとすることは容易に想到されることであり、刊行物4でも露出値を記憶したように、露出値を記憶しておくことも同時に容易に想到される。この露出値は撮影条件ということもできるものである。そして、デジタルカメラにおいて、撮影した画像データと共にその撮影時の撮影条件を記録することはよく知られたことであるとともに、記録した撮影条件を読み出して同じ条件で更に撮影をしようとすることも、特開平5-153455号公報(【要約】【0008】等)、特開平7-175593号公報(【0058】-【0063】等)にあるように周知であるから、一コマ目の撮影の露出値で二コマ目以下の撮影を行おうとする際に、一コマ目に撮影した画像データと共に記録される露出値を用いて、二コマ目以下の撮影を行うようにすることは容易に想到できることと認められる。
そうすると、相違点1で述べたように刊行物2発明をデジタルカメラとすることに伴い、撮像素子により撮影された1枚目の画像データを着脱可能な記録手段に記録する際に、露出値(撮影条件)も記録し、撮像素子による2枚目以降の撮影に、その露出値(撮影条件)を用いて撮影するようにすることで、相違点3に係る補正後発明の構成「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、を前記記録手段に記録し、」「前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」とすることは、当業者が容易に想到できることといえる。

d 相違点の検討まとめ
以上のように各相違点に係る補正後発明の構成は当業者が容易に想到できることと認められ、これらを総合して容易に得られる構成から、補正後発明の奏する効果も予測できるものといえるから、補正後発明は刊行物2、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(カ)独立特許要件のまとめ
以上のとおり、補正後発明は刊行物2、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

エ 補正の適法性まとめ
以上のとおり、補正後発明は特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。

(3)補正却下の決定の理由のまとめ
以上のとおりであるから、平成21年3月13日付けの手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

3.本願発明
平成21年3月13日付けの手続補正は却下した。
したがって、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう)は、平成20年12月8日付けで手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

[本願発明]
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データを記録する記録手段とを備えたカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データと、前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データと、前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録することを特徴とするカメラ。

4.刊行物
特開平02-178646号公報(以下、刊行物2という)には、図面と共に上記2.(2)ウ.(イ)刊行物に述べた記載、及び刊行物2発明が記載されている。

5.対比
本願発明は、
補正後発明の「着脱可能な記録手段」を「記録手段」とし、
前記記録手段に記録するものから、「前記第一の撮影範囲を撮影した際の撮影条件と、」を削除し、
特徴から、
「前記撮影条件は、前記第一の画像データに関連付けて前記記録手段に記録し、
前記第二の撮影範囲を、前記記録手段に記録された撮影条件と同じ撮影条件で撮影する」
を削除するものである。
本願発明と刊行物2発明との対比は、2.(2)ウ.(ウ)対比を援用すると、その一致点相違点は次のとおりである。

[一致点]
所定の撮影範囲を撮影する撮像素子と、該撮像素子により撮影され、所定の処理により生成された画像データを表示する表示部と、カメラ本来の被写体画像の記録としての画像を記録する記録手段を有するカメラにおいて、
第一の撮影範囲が画像として撮影された後、該第一の撮影範囲と接する第二の撮影範囲を撮影するときに、前記第一の撮影範囲に対する前記第二の撮影範囲の方向を入力するための入力手段を備え、
第一の撮影で得られる画像と、第二の撮影で得られる画像と、を前記記録手段に記録する
ことを特徴とするカメラ。

[相違点]
(相違点1)
画像を記録する記録手段に、本願発明では、「前記撮像素子により撮影された画像データ、あるいは前記生成された画像データの少なくともいずれかの画像データ」を記録することに対し、刊行物2発明では、レンズ6が結像する被写体の画像を記録し、
「第一の撮影で得られる画像」「第二の撮影で得られる画像」が、本願発明では「前記第一の撮影範囲で得られる第一画像データ」「前記第二の撮影範囲で得られる第二画像データ」であることに対し、刊行物2発明では、「第一の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」「第二の撮影で得られるレンズ6が結像する被写体の画像」である点。

(相違点2)
本願発明では「前記第一画像データと前記第二画像データとの位置関係情報と、を前記記録手段に記録(し、)」することに対し、刊行物2発明は、そうでない点。

6.相違点の検討
上記相違点1、2は、補正後発明と刊行物2発明との相違点1、2と同様であって、2.(2)ウ.(オ)a及びbを援用して同様に判断され、相違点1、2に係る本願発明の構成は刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できるものと認められ、これらを総合して容易に得られる構成から、本願発明の奏する効果も予測できるものといえるから、本願発明は刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.まとめ
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-11 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2006-238636(P2006-238636)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 小池 正彦
▲徳▼田 賢二
発明の名称 カメラ  
代理人 林 恒徳  
代理人 土井 健二  

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