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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A61B |
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管理番号 | 1238187 |
判定請求番号 | 判定2011-600006 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2011-03-02 |
確定日 | 2011-06-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4500104号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号物件並びにその説明書に示す「Wii Fit Plus」は、特許第4500104号の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 イ号物件並びにその説明書に示す「Wii Fit Plus」は,特許第4500104号の技術的範囲に属するとの判定を求める。 第2 本件特許発明 本件特許発明は,判定請求書の2頁14?17行に「そして,本発明は特許請求の範囲に記載されている通りであり,請求項1乃至4に記載の発明は歩行時の平衡機能検定装置に関するもの,請求項5,6に記載の発明は歩行時の平衡機能検定ゲーム機に関するものである。因みに,歩行時の平衡機能検定ゲーム機に関する請求項5及び6は以下の通りである。」と記載されており,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項5,6に記載された事項により特定されたとおりのものであり,それらの構成,目的及び効果は,以下のとおりである。 1 本件特許発明の構成 本件特許発明(以下,それぞれを本件特許発明5,6という。)を分説すると次のようになる(以下,「構成要件A」などという。)。 【請求項5】 A 人が両足で乗って重心移動を行うときの移動量に対応させて場の画面上でキャラクタを移動させる手段と, B 重心移動方向を戻す動作を検知するとキャラクタの移動を中断する手段と, C 正立姿勢の重心位置にあたる中心位置の円領域である中心領域に重心が所定時間留まったことを検知すると重心の移動量に対応させて場の画面上でキャラクタの移動を再度開始させる手段と, D 場のスタート地点をキャラクタが出発した時からゴール地点に到達するまでの時間を平衡機能の指標として表示する手段と E を備えるようにした歩行時の平衡機能検定ゲーム機。 【請求項6】 F 場における障害物とキャラクタが接触したことを検知して平衡機能の評価指標を減点する機能を備えた請求項5に記載の歩行時の平衡機能検定ゲーム機。 2 本件特許発明の目的及び効果 明細書の記載によれば,本件特許発明5,6は,「日常生活の中で,どの程度安定した歩行が可能であるのかを,歩行という動作に近い形態で正確に測定する方法を提示することが求められているところである。」(【0004】)という従来技術の課題を解決することを目的とし,「【0018】 本発明は歩行時の平衡機能検定装置として開発され,特に高齢者の転び易さを検査するのに適した検定装置であるが,プログラムによってゲーム感覚で検査手法を行うことが出来るもので,お孫さんなどと共に楽しみながら検査を行うことが出来るだけでなく,障害物を避ける動作は機能回復訓練用にとしても利用できる。」という効果を奏するものである。 第3 イ号物件 請求人からの上申書による構成要件対応表,及び被請求人からの判定請求答弁書でのイ号物品(Wii)の説明より,イ号物件は,「テレビゲーム機Wii本体」及び「バランスWiiボード」と「Wii Fit Plus」中の「バランスMii+」を組み合わせたもの,「テレビゲーム機Wii本体」及び「バランスWiiボード」と「Wii Fit Plus」中の「コロコロ玉入れ+」を組み合わせたもの,及び「テレビゲーム機Wii本体」及び「バランスWiiボード」と「Wii Fit Plus」中の「セグウェイ」を組み合わせたものの3件となることが明らかとなった。 そこで,請求人への問い合わせの結果,イ号物件は,甲3号証のCDに動作状況が記録されている「テレビゲーム機Wii本体」及び「バランスWiiボード」と「Wii Fit Plus」中の「バランスMii+」を組み合わせたものとすることを確認したので,以下のとおりイ号物件を認定する。 「プレイヤが両足をボードに着けたまま,体重移動により,ディスプレイ装置の画面上のキャラクタ(シャボン玉に包まれた人形)を操作して,曲がりくねった川を,川岸にぶつからないように移動させ,できるだけ短時間でゴールに到達させることを目的とするゲーム機であって, ゲームの経過時間を表示し, プレイヤの重心位置とボードの中心(座標の原点)とを結ぶ線分の距離,方向及び該重心位置に留まる時間に応じて,キャラクタが移動するものであり,キャラクタの移動速度が上記線分の距離に比例するゲームであり, プレイヤの「重心位置」とは,ボードの四隅の荷重センサの出力値を用いて算出された,近似的・推測的な位置であるとともに,ボードに投影された二次元位置であるゲーム機。」 第4 対比・判断 1 本件特許発明とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件Aについて イ号物件は「プレイヤが両足をボードに着けたまま,体重移動により,ディスプレイ装置の画面上のキャラクタ(シャボン玉に包まれた人形)を操作して,曲がりくねった川を,川岸にぶつからないように移動させ,できるだけ短時間でゴールに到達させることを目的とするゲーム機であって, プレイヤの重心位置とボードの中心(座標の原点)とを結ぶ線分の距離,方向及び該重心位置に留まる時間に応じて,キャラクタが移動するものであり,キャラクタの移動速度が上記線分の距離に比例するゲーム」であるから,「ボード」が「人が両足で乗って重心移動を行う」ものに相当し,「プレイヤの重心位置とボードの中心(座標の原点)とを結ぶ線分の距離,方向及び該重心位置に留まる時間に応じて,キャラクタが移動するものであり,キャラクタの移動速度が上記線分の距離に比例する」ことが「重心移動を行うときの移動量に対応させて場の画面上でキャラクタを移動させる」ことに相当するのであるから,イ号物件は,構成要件Aを充足する。 (2)構成要件Bについて 構成要件Bは「重心移動方向を戻す動作を検知するとキャラクタの移動を中断する手段」であるが,「重心移動方向を戻す動作」については本願明細書に「【0014】 次に,重心の移動状態から戻り動作に入ったことの判定についてであるが,これは前述した位置ベクトル情報に基づいて行われる。具体的には位置ベクトルの始点位置の中心位置からの距離に比例した半径とし,中心位置を円心とする判定のための円領域を決め,位置ベクトルの直線式がこの円と交わるか否か,すなわち,位置ベクトルの式と判定用円の式との連立方程式に解が存在するか否かの判定と,ベクトルの向きが円領域方向を向いているか否かで判定される。重心位置を元に戻そうという動きは当然重心を中心領域へ向かうものであるが,その方向判別は重心位置が中心位置から遠いほど判定用円の半径を大きくして方向性の基準を緩くするのが妥当であろうという考えに基づいている。」との記載があるので,「重心移動方向を戻す動作」とは,重心の移動方向が逆になり中心領域へ向かう動作を意味するものである。 一方,「重心の移動方向が逆になり中心領域へ向かう動作」は,イ号物件においては,キャラクタの移動速度が減少に変わる動作となるので,キャラクタは減速しながら移動しており,移動を中断するものではないので,イ号物件は,「重心移動方向を戻す動作を検知するとキャラクタの移動を中断する手段」を有していない。 したがって,イ号物件は,構成要件Bを充足しない。 (3)構成要件Cについて 構成要件Cは「正立姿勢の重心位置にあたる中心位置の円領域である中心領域に重心が所定時間留まったことを検知すると重心の移動量に対応させて場の画面上でキャラクタの移動を再度開始させる手段」であるが,イ号物件には,「正立姿勢の重心位置にあたる中心位置の円領域」が存在するか否かは不明であるが,操作のための遊びを有することが技術常識であるので,仮に「正立姿勢の重心位置にあたる中心位置の円領域である中心領域」が存在するとしても,「中心領域に重心が留まった後で重心が移動を開始すると,重心の移動量に対応させて場の画面上でキャラクタの移動を開始する」ものであり,「中心領域に重心が所定時間留まったことを検知する」ことをしているものではなく,更に「中心領域に重心が所定時間留まったことを検知する」ことを条件にして「キャラクタの移動を再度開始させる」ものでもないので,イ号物件は,「正立姿勢の重心位置にあたる中心位置の円領域である中心領域に重心が所定時間留まったことを検知すると重心の移動量に対応させて場の画面上でキャラクタの移動を再度開始させる手段」を有していない。 したがって,イ号物件は,構成要件Cを充足しない。 (4)構成要件Dについて 構成要件Dは「場のスタート地点をキャラクタが出発した時からゴール地点に到達するまでの時間を平衡機能の指標として表示する手段」であるが,イ号物件は,「ゲームの経過時間を表示」するのであるから,「場のスタート地点をキャラクタが出発した時からゴール地点に到達するまでの時間を表示する」ものであるとはいえるが「平衡機能の指標として表示する」とまではいえないので,イ号物件は,「場のスタート地点をキャラクタが出発した時からゴール地点に到達するまでの時間を平衡機能の指標として表示する手段」を有していない。 したがって,イ号物件は,構成要件Dを充足しない。 (5)構成要件Eについて 構成要件Eは「歩行時の平衡機能検定ゲーム機。」であるが,イ号物件は,「ゲーム機」であり「平衡機能検定」が全く不可能とまではいえないとしても,「歩行時の平衡機能検定」をするものとはいえないので,イ号物件は,「歩行時の平衡機能検定ゲーム機。」ではない。 したがって,イ号物件は,構成要件Eを充足しない。 2 まとめ 上記(1)?(5)に示すように,イ号物件は本件特許発明5の構成要件Aは充足するものの,本件特許発明5の構成要件B?Eを充足するものとすることはできない。 また,本件特許発明6が,本件特許発明5において更に「場における障害物とキャラクタが接触したことを検知して平衡機能の評価指標を減点する機能を備えた」ことを限定したものであるから,イ号物件は,本件特許発明5と同様に本件特許発明6をも充足するものとすることはできない。 第5 むすび したがって,イ号物件は,本件特許発明の技術範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2011-06-10 |
出願番号 | 特願2004-153900(P2004-153900) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷垣 圭二 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 信田 昌男 |
登録日 | 2010-04-23 |
登録番号 | 特許第4500104号(P4500104) |
発明の名称 | 歩行時の平衡機能検定装置 |
代理人 | 佐藤 文男 |
代理人 | 田上 洋平 |
代理人 | 大城 重信 |
代理人 | 松本 司 |
代理人 | 井上 裕史 |
代理人 | 山田 益男 |