• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1238716
審判番号 不服2008-27423  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-28 
確定日 2011-06-16 
事件の表示 特願2006-239216「操作パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月21日出願公開、特開2008- 65373〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成18年9月4日の出願であって,平成20年7月8日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して同年8月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年9月16日付けで拒絶査定がなされた。これに対し,平成20年10月28日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正がなされ,平成22年4月16日付けで審尋がなされ,これに対して同年5月25日付けで回答書が提出されたものである。


2.平成20年10月28日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月28日の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正について
平成20年10月28日の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲を,平成20年8月26日の手続補正書に記載されたとおりの

「 【請求項1】
所定の機能が割り当てられた固定キーを有する一方の入力装置と,表示画面に形成されたタッチキーを有する他方の入力装置とを備えた操作パネルであって,
前記固定キーの中から入力を行なえない入力不能キーを検出する検出手段と,前記入力不能キーが存在するとき,前記入力不能キーの代わりに他方の入力装置の前記タッチキーを対応させる制御手段とが設けられ,
前記検出手段は,前記一方の入力装置において,複数の固定キーを操作させるテストモードを有すると共に,前記テストモードを実行して,入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断し,
前記制御手段は,前記検出手段による判断結果を前記表示画面に表示すると共に,検出した入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てることを特徴とする操作パネル。
【請求項2】
制御手段は,代替するタッチキーを表示画面に形成することを特徴とする請求項1に記載の操作パネル。
【請求項3】
制御手段は,表示画面の表示を変更して,代替するタッチキーを形成するためのスペースを確保することを特徴とする請求項2に記載の操作パネル。
【請求項4】
制御手段は,検出した入力不能キーの数に基づいて,他方の入力装置の使用の可否を判断することを特徴とする請求項1に記載の操作パネル。
【請求項5】
代替するタッチキーを表示画面に形成したときに,前記表示画面にはじめから表示されていたタッチキーが表示できなくなった場合,制御手段は,他方の入力装置の使用を禁止することを特徴とする請求項4に記載の操作パネル。
【請求項6】
他方の入力装置の使用を禁止したとき,制御手段は,その旨を報知するために,前記他方の入力装置の使用の禁止を表示画面に表示することを特徴とする請求項5に記載の操作パネル。
【請求項7】
予備の固定キーを備え,
制御手段は,検出した入力不能キーに割り当てられた機能を代替する予備の固定キーに割り当てたことを特徴とする請求項1に記載の操作パネル。
【請求項8】
一方の入力装置の一部に窪みが設けられ,
前記窪みには,予備の固定キーが着脱自在に接続されるコネクタが備えられたことを特徴とする請求項7に記載の操作パネル。
【請求項9】
入力不能キーが検出されたとき,制御手段は,前記入力不能キーを含むトラブル履歴を作成することを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の操作パネル。
【請求項10】
請求項1?9のいずれかに記載の操作パネルを備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項11】
電気機器が,コピー,プリンタ,ファクシミリ,スキャナ,もしくは,これら2つ以上を組み合わせた複合機器であることを特徴とする請求項10に記載の電気機器。」

から,平成20年10月28日の手続補正書に記載されたとおりの

「 【請求項1】
所定の機能が割り当てられた固定キーを有する一方の入力装置と,表示画面に形成されたタッチキーを有する他方の入力装置とを備えた操作パネルであって,
前記固定キーの中から入力を行なえない入力不能キーを検出する検出手段と,前記入力不能キーが存在するとき,前記入力不能キーの代わりに他方の入力装置の前記タッチキーを対応させる制御手段とが設けられ,
前記検出手段は,前記一方の入力装置において,複数の固定キーを操作させるテストモードを有すると共に,前記テストモードを実行して,入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断し,
前記制御手段は,前記検出手段による判断結果を前記表示画面に表示すると共に,検出した入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てるために,前記表示画面の表示を変更してスペースを確保すると共に,前記スペースに代替するタッチキーを形成することを特徴とする操作パネル。
【請求項2】
制御手段は,検出した入力不能キーの数に基づいて,他方の入力装置の使用の可否を判断することを特徴とする請求項1に記載の操作パネル。
【請求項3】
代替するタッチキーを表示画面に形成したときに,前記表示画面にはじめから表示されていたタッチキーが表示できなくなった場合,制御手段は,基本的な機能のみを代替するタッチキーを操作画面に形成することを特徴とする請求項2に記載の操作パネル。
【請求項4】
代替するタッチキーを表示画面に形成したときに,前記表示画面にはじめから表示されていたタッチキーが表示できなくなった場合,制御手段は,他方の入力装置の使用を禁止することを特徴とする請求項2に記載の操作パネル。
【請求項5】
他方の入力装置の使用を禁止したとき,制御手段は,その旨を報知するために,前記他方の入力装置の使用の禁止を表示画面に表示することを特徴とする請求項4に記載の操作パネル。
【請求項6】
入力不能キーが検出されたとき,制御手段は,前記入力不能キーを含むトラブル履歴を作成することを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の操作パネル。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の操作パネルを備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項8】
電気機器が,コピー,プリンタ,ファクシミリ,スキャナ,もしくは,これら2つ以上を組み合わせた複合機器であることを特徴とする請求項7に記載の電気機器。」

と補正するものである。


(2)補正の目的について
本件補正は上記のとおりのものであって,その補正の前後の内容を対比すると,本件補正は以下a.?e.の補正事項を含むものである。

a.本件補正前の請求項1に,実質的に本件補正前の請求項2及び3の内容である,制御手段が「前記表示画面の表示を変更してスペースを確保すると共に,前記スペースに代替するタッチキーを形成する」という構成を加える補正。
b.本件補正前の請求項2及び3の内容を,本件補正後の請求項1に包含させることに伴って本件補正前の請求項2及び3を削除する補正。
c.「代替するタッチキーを表示画面に形成したときに,前記表示画面にはじめから表示されていたタッチキーが表示できなくなった場合,制御手段は,基本的な機能のみを代替するタッチキーを操作画面に形成する」という構成を請求項3として追加する補正。
d.本件補正前の請求項7及び8を削除する補正。
e.請求項の追加や削除に伴い,引用形式で記載した請求項の項番を変更する補正。

上記各補正事項について検討する。
上記補正事項a.は,制御手段が表示画面の表示を変更してスペースを確保すると共に,前記スペースに代替するタッチキーを形成するものであるという構成の限定を加える補正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
上記補正事項b.及びd.は,請求項の削除を目的とする補正に該当する。
上記補正事項c.は,本件補正前のいずれかの請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく,また,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明や請求項の削除を目的とする補正にも該当しないことは明らかである。
上記補正事項e.は,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。

したがって,本件補正は,上記補正事項c.に関する検討から,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


(3)独立特許要件について
前記(2)において判断したように,本件補正はいわゆる目的外の補正を含むものであり,特許法の規定に違反するものであるが,仮に,上記補正事項c.が本件補正前のいずれかの請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであり,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである場合に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(3-1)本願補正発明について
本件補正後の請求項1の記載を再掲すると,次のとおりである。

「所定の機能が割り当てられた固定キーを有する一方の入力装置と,表示画面に形成されたタッチキーを有する他方の入力装置とを備えた操作パネルであって,
前記固定キーの中から入力を行なえない入力不能キーを検出する検出手段と,前記入力不能キーが存在するとき,前記入力不能キーの代わりに他方の入力装置の前記タッチキーを対応させる制御手段とが設けられ,
前記検出手段は,前記一方の入力装置において,複数の固定キーを操作させるテストモードを有すると共に,前記テストモードを実行して,入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断し,
前記制御手段は,前記検出手段による判断結果を前記表示画面に表示すると共に,検出した入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てるために,前記表示画面の表示を変更してスペースを確保すると共に,前記スペースに代替するタッチキーを形成することを特徴とする操作パネル。」


(3-2)引用例
原査定の拒絶理由で引用された特開平5-119904号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに,以下(ア)?(ウ)の事項が記載されている。

(ア)「【0005】本発明の目的は,キーボードの診断機能により故障と診断されたキーのコードを診断データ部5に格納し,故障キー代替処理部6がそのコードを基に故障キーをタッチパネル9から入力できるように入力装置をキーボード2からタッチパネル9に切り替え,タッチパネルレイアウト7がタッチパネル9上に代りに表示するキーの表示イメージを作成し,表示制御部8がタッチパネル9に入力キーとして表示する機能を有し,故障と診断されたキーを自動的にタッチパネル9からの入力キーとして代替表示してタッチパネル9から入力できるようにしたことにより,上記の欠点を解消し,緊急時やユーザ先で故障が起きてキーボード入力ができなくなった場合でもH/Wの取り替えを行わずに,故障キーから入力する予定のデータをタッチパネルから入力できる故障キーの代替機能付きポータブル端末装置を提供することにある。」

(イ)「【0010】ここで,キーボード2の診断を行うため,オペレータはキーボード2から各キーを順に押下する。押されたキーの情報は,入力制御部3を通してキーボード診断部4に送られる。キーボード診断部4は,送られたキーの情報をチェックして入力が正常に行われるかどうか診断し,診断の結果,故障だったキーのコードを診断データ部5にセットする。
【0011】キーボード2の診断が終了すると,故障キー代替処理部6が起動する。故障キー代替処理部6は,診断データ部5にセットされたコードを基に故障キーをタッチパネル9から入力できるように入力制御部3と表示制御部8に指示を送って故障キーのキーボード押下を無効とし,代りにタッチパネル表示を行うようにする。タッチパネルレイアウト7は,代替キー用のタッチパネルイメージを作成する。そして,表示制御部8が代替キーをタッチパネル9からの入力キーとしてタッチパネル9に表示する。」

(ウ)「【0013】図2において,まず,ポータブル端末装置1の診断を行う。オペレータは,キーボード2から各キーを押下して1個1個キーをテストしていく。キーボード診断制御部4は,入力制御部3を通して受け取ったキーの情報をチェックして押下されたキーが故障か否か診断し,故障の場合はキーのコードを診断データ部5に格納する。この場合,「FNC」キーの故障と診断し,「FNC」キーコードが登録される。
【0014】すべてのキーをチェックし,診断プログラムが終了すると,故障キー代替処理部6が起動する。故障キー代替処理部6は,診断データ部5を参照し,故障キー「FNC」をタッチパネル9から入力できるよう入力制御部3と表示制御部8に指示を送って「FNC」キーのキーボード押下を無効とし,代りに「FNC」のタッチパネル表示を行うようにする。タッチパネルレイアウト7はメモリ上にタッチパネル9の枠と,表示データ「FNC」のイメージを作成する。そして,表示制御部8がタッチパネルレイアウト7から送られるタッチパネルイメージを基にタッチパネル9への表示処理を行い,タッチパネル入力キーとして「FNC」を表示する。
【0015】このようにして,キーボード2のキーが故障しても故障キーをタッチパネル9に代替表示し,タッチパネル9からの入力を可能にする。」

次に,上記摘記事項(ア)?(ウ)を検討すると,

・上記摘記事項(ウ)から,「キーボード」を構成する「キー」には,「FNC」キーが存在することから,「キー」には所定の機能が割り当てられているものと考えるのが自然である。

・上記摘記事項(ア)に「・・・故障キーをタッチパネル9から入力できるように入力装置をキーボード2からタッチパネル9に切り替え,タッチパネルレイアウト7がタッチパネル9上に代りに表示するキーの表示イメージを作成し,表示制御部8がタッチパネル9に入力キーとして表示する」と記載されていることから,入力装置として「タッチパネル」を有しており,作成されタッチパネルに表示される「キーの表示イメージ」がタッチパネルの「「入力キー」となっている。

・上記摘記事項(イ)及び(ウ)によれば,キーボード診断部はキーボードのキーの入力が正常に行われるかどうかを診断し,診断の結果,故障だったキーのコードを診断データ部にセットするものであるから,入力が正常に行われないキーボードの故障キーを検出しているものということができる。そして,この診断を行うために,オペレータにキーボードの各キーを1個1個順に押下していくという操作をさせ,押下されたキーが故障か否かを診断しているから,引用例記載のものは,キーボード診断部はキーボードの複数のキーを操作させ,キーが故障キーか否かを診断しているということができる。

・上記摘記事項(イ)及び(ウ)によれば,故障キー代替処理部は,タッチパネルレイアウトが作成した代替キー用のタッチパネルイメージを,入力キーとしてタッチパネルに代替表示し,タッチパネルから入力を可能にしているから,故障キーの代わりにタッチパネルの入力キーを対応させ,故障キーに割り当てられた機能を入力キーに割り当てていると言うことができる。

したがって,上記摘記事項(ア)?(ウ)の内容を総合すると,引用例には,

「所定の機能が割り当てられたキーを有するキーボードと,タッチパネルの表示画面に作成された入力キーを表示するタッチパネルとを備えたポータブル端末装置であって,
キーボードのキーの中から入力が正常に行えない故障キーを検出するキーボード診断部と,前記故障キーが存在するとき,前記故障キーの代わりにタッチパネルの代替キーを対応させる故障キー代替処理部が設けられ,
前記キーボード診断部は,キーボードの複数のキーを操作させ,キーが故障キーか否かを診断し,
前記故障キー代替処理部は,故障キーに割り当てられた機能を代替キーに割り当てることを特徴とするポータブル端末装置」

との発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


(3-3)対比
本願補正発明を引用発明と対比すると,

・引用発明における「キー」「キーボード」「入力キー」「タッチパネル」「故障キー」が,本願補正発明における「固定キー」「一方の入力装置」「タッチキー」「他方の入力装置」「入力不能キー」にそれぞれ相当する。

・引用発明の「キーボード診断部」は,後述する点で相違はするものの,キーボードの複数のキーを操作させることによって故障キーを検出する構成であるから,本願補正発明における「検出手段」に対応する。

・引用発明の「故障キー代替処理部」は,後述する点で相違はするものの,故障キーの代わりにタッチパネルの入力キーを対応させ,故障キーに割り当てられた機能を入力キーに割り当てている点で本願補正発明の「制御手段」に対応する。

・引用発明は「ポータブル端末装置」であるのに対して,本願補正発明は「操作パネル」の発明であるという点で相違するものの,ともに「装置」の発明であるという点では共通する。

そうすると,両者は,

[一致点]
「所定の機能が割り当てられた固定キーを有する一方の入力装置と,表示画面に形成されたタッチキーを有する他方の入力装置とを備えた装置であって,
前記固定キーの中から入力を行なえない入力不能キーを検出する検出手段と,前記入力不能キーが存在するとき,前記入力不能キーの代わりに他方の入力装置の前記タッチキーを対応させる制御手段とが設けられ,
前記検出手段は,前記一方の入力装置において,複数の固定キーを操作させ,入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断し,
前記制御手段は,検出した入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てることを特徴とする装置。」

である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明においては,検出手段が入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断する「テストモード」を有しているのに対して,引用発明はそのようなものではない点。

[相違点2]
本願補正発明では,制御手段が,検出手段による判断結果を前記表示画面に表示する構成となっているが,引用発明はそのようなものではない点。

[相違点3]
本願補正発明は,入力不能キーの機能をタッチキーに割り当てるために,表示画面の表示を変更してスペースを確保し,前記スペースに代替するタッチキーを形成する構成となっているが,引用発明はそのようなものではない点。

[相違点4]
引用発明は「ポータブル端末装置」の発明であるのに対して,本願補正発明は「操作パネル」の発明である点。


(3-4)判断
[相違点1]について
引用発明にはテストモードについて記載されていない。しかしながら,例えば拒絶査定に引用した周知文献(特開昭63-066624号公報)に記載されているように,キーボードの診断を行う一連の動作を,選択できるようにし,このような一連の動作を行わせることは周知の技術である。そうしてみると,引用発明においてもキーボードの診断を行う一連の動作を選択可能に構成し,これをテストモードと呼ぶことに格別の困難性を要したものとは言えない。

[相違点2]について
拒絶査定に引用した周知文献(特開昭63-066624号公報)にも記載されているように,判断した結果を表示画面に表示することは周知の技術事項にすぎないものである。したがって,引用発明において,このように結果を画面表示する構成とすることは必要に応じて当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎないものである。

[相違点3]について
タッチパネルの画面表示において,表示する項目に応じて表示スペースを調整して表示するようにする技術は,例えば特開2006-209011号公報(特に図3,図4,及びそれに関連する記載を参照。)に記載されているように表示を行う上での周知の技術事項にすぎないものである。そうしてみると,当該周知技術を勘案すれば,引用発明においても,入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てる際に,タッチパネルに他の表示が存在すれば,この表示を変更してスペースを確保し,表示を行うようにすることは,必要に応じて当業者が容易に想到し得た程度の事項にすぎない。

[相違点4]について
引用発明は「ポータブル端末装置」の発明ではあるが,キーボードと,タッチパネルを備えており,キーボードの故障キーを診断して,タッチパネルの入力キーに割り当てる発明であるから,その内容は,実質的にキーボードと,タッチパネルを有する操作パネルの発明である。したがって,[相違点4]とした本願補正発明の構成は格別のものではなく,引用発明を操作パネルの発明とすることは当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎない。


以上検討したとおり,本願補正発明は,当業者が引用発明,及び周知技術から容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。


(4)まとめ
以上のとおり,本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,仮に本件補正が発明を特定するために必要な事項を限定するものであるとしても,本件補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本件補正前の請求項1に記載された発明(本願発明)について
(1)本願発明について
平成20年10月28日の手続補正は,上記「2.」に記載したとおり却下されたので,本件補正前の平成20年8月26日付け手続補正書に記載された請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「所定の機能が割り当てられた固定キーを有する一方の入力装置と,表示画面に形成されたタッチキーを有する他方の入力装置とを備えた操作パネルであって,
前記固定キーの中から入力を行なえない入力不能キーを検出する検出手段と,前記入力不能キーが存在するとき,前記入力不能キーの代わりに他方の入力装置の前記タッチキーを対応させる制御手段とが設けられ,
前記検出手段は,前記一方の入力装置において,複数の固定キーを操作させるテストモードを有すると共に,前記テストモードを実行して,入力が有効な入力可能キーか入力不能キーかを判断し,
前記制御手段は,前記検出手段による判断結果を前記表示画面に表示すると共に,検出した入力不能キーに割り当てられた機能をタッチキーに割り当てることを特徴とする操作パネル。」


(2)引用例について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例に記載された事項は,上記「2.(3-2)」に記載したとおりである。


(3)対比,判断
本願発明は,本願補正発明から,制御手段が「表示画面の表示を変更してスペースを確保すると共に,前記スペースに代替するタッチキーを形成する」構成の限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,上記「2.(3-4)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることから,本願発明は,本願補正発明と同様の理由(ただし,[相違点3]に係る理由は除く。)により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


4.むすび
上記「3.」で述べたとおり,本願請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-06 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-26 
出願番号 特願2006-239216(P2006-239216)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 文雄篠塚 隆  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 木方 庸輔
山本 章裕
発明の名称 操作パネル  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 後藤 誠司  
代理人 大島 泰甫  
代理人 小原 順子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ