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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1238771
審判番号 不服2010-5800  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-16 
確定日 2011-06-15 
事件の表示 特願2006-306607「ケース入り卵の保護具」拒絶査定不服審判事件〔平成20年5月29日出願公開、特開2008-120422〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年11月13日の出願であって、平成22年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に特許請求の範囲と明細書を対象とする手続補正がなされた。その後、当審において、平成23年1月25日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成23年3月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成23年3月8日付けで補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から見て、本願の請求項1ないし2に係る発明は、請求項1ないし2に記載した事項によって特定されるとおりのものと認める。その請求項1の記載は、次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「卵収納部を備えた卵ケースに卵を収納した状態で購入した前記卵ケースを保護するケース入り卵の保護具であって、
直方体状に形成されて前記卵ケースの下部を支持する下保護具と、直方体状に形成されて前記卵ケースの上部を支持する上保護具と、を備え、
前記下保護具及び前記上保護具は、前記卵ケースより軟らかく、かつ弾性変形可能な軟質製のスポンジで形成され、
前記卵ケースを前記下保護具と前記上保護具とで支持した状態で、前記卵ケースより硬い硬質製の材料で形成されて前記下保護具と前記上保護具とを一体的に支持する支持部材を備え、
前記支持部材が箱体に形成されるとともに、前記卵ケースを収納する収納部と、前記収納部と着脱可能に嵌合する蓋部とを備えて構成され、
前記収納部は、前記下保護具が隙間なく収納される内形寸法に形成され、前記収納部内に前記下保護具が固着され、
前記蓋部が積み重ね可能に形成され、前記蓋部内は、前記上保護具が隙間なく収納される内形寸法に形成され、前記蓋部内に前記上保護具が固着され、
前記収納部と、前記蓋部とを嵌合することにより前記下保護具及び前記上保護具で前記卵ケースが上下方向で押圧されることを特徴とするケース入り卵の保護具。」

3.拒絶の理由
平成23年1月25日付けで通知した拒絶の理由は、次のとおりである。
「この出願の請求項1ないし2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
《引用文献一覧》
引用例1.特開2006-298393号公報
引用例2.実願昭57-93958号(実開昭59-770号)の
マイクロフィルム
引用例3.特開平1-167075号公報
引用例4.特開平2-152680号公報
引用例5.特開2000-85847号公報
引用例6.特開2002-211649号公報
引用例7.特開2002-308337号公報
引用例8.特開2006-89121号公報 」

4.引用例の記載事項
上記引用例1(特開2006-298393号公報)には、次の記載がある。
「【0002】従来、生卵…といった、外部からの衝撃や圧力により壊れやすく傷付きやすい物品である壊れ物については、壊れ物を衝撃等から保護するために、プラスチックや紙製の収納容器に収納して取り扱われている。」
「【0003】例えば、生卵の場合には、4個、6個、10個といった単位で、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明な合成樹脂シート、又は紙製モールドで形成された収納容器内に収納された状態で取り扱われている。この収納容器は、通常、下受け皿と上蓋とで構成され、1つ1つの生卵を収納可能な収納室が複数設けられている。」
「【0005】一方、近年、電話注文やインターネットを介した注文による産直が注目され、生産者から直接、消費者に生卵等の壊れ物が配送されるようになっている。この場合には、生卵等の壊れ物が収納された収容容器を、段ボールで形成された運搬箱内に収納し、この運搬箱を消費者宛に配送しているのが一般的である。」
「【0006】しかし、生卵等の壊れ物が収納された収納容器を運搬箱内に直接収納すると、運搬箱に外力が加わったときに、収納容器とともに収納容器内の生卵等の壊れ物が傷付いたり、割れてしまったりすることがあり、問題となっている。特に、生卵等の壊れ物が収納された収納容器を運搬箱内に収納して消費者に直接配送する場合には、配送業者において、他の配送商品と同様に取り扱われ、運搬箱に衝撃等が加わりやすい。」
「【0007】すなわち、上述した消費者に直接配送する場合には、店舗等に配送する場合に比べると、運搬箱が振り回されたりする可能性が高くなる。これに伴い、収納容器が運搬箱の内面に衝突し、収納容器や収納容器内の生卵等の壊れ物が壊れてしまうこともある。」
「【0009】そこで、生卵等の壊れ物が収納された収納容器を運搬箱内に収納して消費者に配送する場合において、発泡スチロール製緩衝部材を用いることが考えられる。具体的には、発泡スチロール製緩衝部材として、収納容器に当接する側の面を、収納容器の外形(複数の収納室によって形成された凹凸形状)に沿った形状とし、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とすることが考えられる。すなわち、生卵等の壊れ物が収納された収納容器及び緩衝部材を運搬箱内に収納した状態において、緩衝部材を収容容器及び運搬箱に当接させることによって、収納容器が運搬箱内で動かないように構成することができる。」
そして、合成樹脂製の卵収納容器は、通常、複数の収納室によって形成された凹凸形状の下受け皿と、同様又は類似の形状の上蓋とで構成されるものであること(例えば、引用例1の図4、5や、特開昭50-54482号公報、実公昭63-44340号公報、特開2002-114203号公報参照)、及び上記段落0009の「発泡スチロール製緩衝部材として、収納容器に当接する側の面を、収納容器の外形(複数の収納室によって形成された凹凸形状)に沿った形状とし」との記載から見て、発泡スチロール製緩衝部材は、下受け皿の外形に沿った形状を有する下側の緩衝部材と、上蓋の外形に沿った形状を有する上側の緩衝部材とを有するものと認められる。
以上の記載によれば、引用例1には、次の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)
「消費者が注文した生卵を、下受け皿と上蓋とで構成され1つ1つの生卵を収納可能な収納室が複数設けられている合成樹脂シートで形成された収納容器内に収納された状態で、段ボールで形成された運搬箱内に収納して消費者に配送する場合において、
収納容器に当接する側の面を、収納容器の下受け皿の外形に沿った形状とし、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とした下側の発泡スチロール製緩衝部材と、
収納容器に当接する側の面を、収納容器の上蓋の外形に沿った形状とし、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とした上側の発泡スチロール製緩衝部材とを用いて、
生卵が収納された収納容器及び緩衝部材を運搬箱内に収納した状態において、緩衝部材を収容容器及び運搬箱に当接させることによって、収納容器が運搬箱内で動かないように構成した、収納容器入り生卵の保護具。」

5.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「合成樹脂シートで形成された収納容器」は、本願発明の「卵ケース」に相当し、引用発明が「消費者が注文した生卵を、合成樹脂シートで形成された収納容器内に収納された状態で、段ボールで形成された運搬箱内に収納して消費者に配送する場合において」「緩衝部材を収容容器及び運搬箱に当接させることによって、収納容器が運搬箱内で動かないように構成した、収納容器入り生卵の保護具」であることは、本願発明の「卵収納部を備えた卵ケースに卵を収納した状態で購入した前記卵ケースを保護するケース入り卵の保護具」に相当する。
引用発明の「収納容器に当接する側の面を、収納容器の下受け皿の外形に沿った形状とし、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とした下側の発泡スチロール製緩衝部材」及び「収納容器に当接する側の面を、収納容器の上蓋の外形に沿った形状とし、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とした上側の発泡スチロール製緩衝部材」は、それぞれ本願発明の「卵ケースの下部を支持する下保護具」及び「卵ケースの上部を支持する上保護具」に相当する。
引用発明の「段ボールで形成された運搬箱」は、本願発明の「下保護具と上保護具とを一体的に支持する支持部材」及び「支持部材が箱体に形成され」に相当する。
引用発明において、下側及び上側発泡スチロール製緩衝部材の運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状とすることは、本願発明の収納部及び蓋部が、下保護具又は上保護具が収納される内形寸法に形成されることに相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、本願発明の記載に倣えば以下の一致点で一致し、次の相違点1ないし3で相違する。
《一致点》
卵収納部を備えた卵ケースに卵を収納した状態で購入した前記卵ケースを保護するケース入り卵の保護具であって、
前記卵ケースの下部を支持する下保護具と、前記卵ケースの上部を支持する上保護具と、を備え、
前記卵ケースを前記下保護具と前記上保護具とで支持した状態で、前記下保護具と前記上保護具とを一体的に支持する、下保護具と前記上保護具とが収納される内形寸法に形成された支持部材を備え、
前記支持部材が箱体に形成されているケース入り卵の保護具。

《相違点1》
本願発明では、支持部材が、卵ケースを収納する収納部と、収納部と着脱可能に嵌合する蓋部とを備え、それぞれ卵ケースより硬い硬質製の材料で形成されており、蓋部が積み重ね可能に形成されているのに対し、引用発明では、支持部材が、段ボールで形成された運搬箱である点。
《相違点2》
本願発明では、下保護具及び上保護具が、卵ケースより軟らかく、かつ弾性変形可能な軟質製のスポンジで直方体状に形成されており、支持部材である収納部と蓋部とを嵌合することにより、下保護具及び上保護具で卵ケースが上下方向で押圧されるのに対し、引用発明では、下保護具及び上保護具(上下の緩衝部材)が、卵ケース(収納容器)に当接する側の面を、卵ケースの外形に沿った形状とし、支持部材(運搬箱)に当接する側の面を支持部材の内面に沿った形状とした発泡スチロール製緩衝部材で形成されており、収納容器及び緩衝部材を運搬箱内に収納した状態では、緩衝部材を収納容器及び緩衝部材に当接させることによって、収納容器が動かないようにされる点。
《相違点3》
本願発明では、支持部材である収納部及び蓋部が、それぞれ下保護具及び上保護具が隙間なく収納される内形寸法に形成され、かつ、下保護具及び上保護具を固着しているのに対し、引用発明では、下保護具又は上保護具(上下の緩衝部材)が、運搬箱に当接する側の面を運搬箱の内面に沿った形状としているが、隙間なく収納される寸法に形成されているか明確でなく、また、支持部材(運搬箱)に固着されるか不明である点。

6.相違点の検討
相違点1について検討すると、通常の卵ケースと段ボール箱では、両者を押し付けた際に、卵ケースの方が段ボール箱より先に変形するから、卵ケースと段ボール箱とでは、段ボール箱の方が、卵ケースより硬いといえる。したがって、引用発明においても、支持部材(運搬箱)は、卵ケースより硬い硬質製の材料で形成されているといえるから、この点で、本願発明と引用発明との間に実質的な相違はない。なお、仮に、「材料」という観点から見ると、段ボール箱の材料である紙の方が、卵ケースの材料より硬いとは限らないとしても、段ボール箱に代えて、周知・慣用のプラスチック材料等、卵ケースより硬い材料で形成した箱を採用することは、当業者がその必要に応じて適宜決定すべき単なる設計的事項である。
また、支持部材を、収納部と、収納部と着脱可能に嵌合する蓋部とを備え、積み重ね可能に形成しているものは、例えば、引用例4(第4図及びその説明に注意)、引用例5(図2及びその説明に注意)、引用例6(図1、図5及びそれらの説明に注意)に示されており、周知である。
したがって、引用発明に周知・慣用の技術を適用することにより、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点2について検討すると、被包装(梱包)物より軟らかく、かつ弾性変形可能な軟質製のスポンジで直方体状に形成された緩衝材で、下保護具及び上保護具を形成し、包装(梱包)した際に、下保護具及び上保護具で被包装(梱包)物が上下方向で押圧されるようにすることは、例えば、引用例2(第4図、第5図及びその説明に注意)、引用例4(第4図及びその説明に注意)、引用例5(図2及びその説明に注意)、引用例6(図1、図5及びそれらの説明に注意)、引用例8(図3及びその説明に注意)に示されており、周知である。したがって、引用発明に周知の技術を適用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。なお、発泡スチロール製緩衝部材に代えて、スポンジ製の緩衝部材を採用することは、例えば、引用例6に記載されている。
相違点3について検討すると、支持部材(箱体)の内形寸法を、下保護具及び上保護具である緩衝部材が隙間なく収納される内形寸法にすることは、例えば、引用例4(第1図、第4図及びその説明に注意)、引用例5(図2及びその説明に注意)、引用例7(図1、図2及びそれらの説明に注意)、引用例8(図3及びその説明に注意)に示されており、周知である。また、下保護具及び上保護具である緩衝部材を、支持部材(箱体)内面に固着する事は、例えば、引用例3に記載されており、当業者がその必要に応じて適宜決定すべき単なる設計的事項である。
そして、本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

7.付記
請求人は、平成23年3月8日付け意見書の「3.結論」の欄において、「特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないというには、当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、当該発明の特徴点に到達したはずであるという示唆等が存在することが必要である」と主張している。
しかしながら、当業者がその通常の創作能力の範囲内で日常的に行っている最適材料の選択等の単なる設計的事項や、周知の技術事項の単なる適用についてまで、明示的な示唆等が必要であるものではないことは当然である。仮に、単なる設計的事項や、周知の技術事項の単なる適用であっても、明示的な示唆等がない限り特許権を付与すべきであるとすると、技術を実施しようとする者は、日常的業務のほとんどすべてについて特許権の有無を確認したり、あるいは、日常的な些細な工夫についてまで特許出願をして実施の権利を確保せざるを得なくなるから、「産業の発達に寄与する」という特許法の目的に反する事態になることは明らかである。
そして、上記6で指摘したとおり、本願発明と引用発明との相違点は、単なる設計的事項、若しく周知の技術事項の単なる適用であるから、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-25 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-18 
出願番号 特願2006-306607(P2006-306607)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 美保  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 ケース入り卵の保護具  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 江間 路子  

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