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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1238775
審判番号 不服2010-15531  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-12 
確定日 2011-06-15 
事件の表示 特願2001-280325「臨床検査装置の精度管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月19日出願公開、特開2003-83981〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年9月14日の出願であって、平成22年4月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年7月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】複数の臨床検査施設にそれぞれ臨床検査装置が設けられ、かつ、少なくとも一つの臨床検査施設には、2以上の臨床検査装置が設けられており、精度管理用物質としての濃度の異なる二つの試料を複数の臨床検査施設に備えられている前記臨床検査装置によって測定し、そのとき得られる測定データをデータ処理装置に送信し、このデータ処理装置において前記測定データを正規化した目盛りと単位系を用いてツインプロット処理を行い、前記二つの試料の相関関係をツインプロット図に表すことにより、試料測定に使われた複数の臨床検査装置における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置の調整における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置において扱う該試料の異常または該試料の取り扱いの異常を判定し、その結果を前記複数の各臨床検査施設にフィードバックするよう構成された臨床検査装置の精度管理システムであって、
判定結果が試料測定に使われた複数の臨床検査装置の全体評価および各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごとの個別評価を含むことを特徴とする臨床検査装置の精度管理システム。」(下線は、補正箇所を示す。)
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の臨床検査施設に設けられている臨床検査装置」について、「少なくとも一つの臨床検査施設には、2以上の臨床検査装置が設けられて」いるとの限定を付加し、同じく、フィードバックする臨床検査装置の異常が、「測定に使われた複数の臨床検査装置」の異常であることを限定し、同じく「複数の臨床検査装置の」「個々の評価」について、「各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごとの個別評価」であるとして限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 先願明細書とその記載事項
原査定の拒絶の理由に先願4として引用された、本願出願の日前の2000年12月22日を国際出願日とする出願であって、本願出願後に国際公開がなされた、PCT/JP00/09130号(国際公開02/052278号)(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。以下、頁と行は上記国際公開のものであり、下線は当審で付加したものである。

(a)「発明の開示
そこで本発明者は、個々の検査室内での安定した測定精度を確立するために内部精度管理(Internal Quality Conrol,IQC)が必須であり、その上に検査室間の外部精度アセスメント(External Quality Assessment.EQA)による情報の共有化を図るためのシステムを構築した。
本発明は、
(1)本発明のシステム(精度保証システム:eQAP^(*登録商標))への参加施設に内部精度管理用の管理ソフトを提供すること。
(2)施設は指定の精度管理試料を日常の検査のなかで測定し、日常の精度管理を実施すること。
(3)各施設で得られたこの測定値を上記ソフトより全国的に広域情報伝達ツール例えばインターネット(FTP)を利用して一定間隔でデータ解析部門(以下、QAP^(*登録商標)センターと呼ぶこともある)に収集すること。なお、QAPは、精度保証プログラムを意味する。
(4)これら複数施設からの測定値について、データ解析部門で全体集計及び分類別集計を行い、精度管理に関する必要な統計量を一元配置分散分析法により施設内変動と施設間変動にまとめること。
(5)本システム参加施設へインターネットを利用してeMailにて、データ解析部門から速報形式で提供すること
を含むものである。
つまり本発明は、指定の精度管理試料のデータ管理と転送、データの収集と集計、及びデータの解析と解析データの配信に関する処理システムが統合されたものである。特に特徴的には、内部精度管理と外部精度アセスメントの連携システムが確立されたことである。」(第1頁14行?第2頁19行)

(b)「(1)精度保証システム(eQAP^(*登録商標))契約施設に提供される内部精度管理用ソフトは例えばWindows95/98以降のOS下で動作する。データ解析部門では、データ収集および配信用のサーバ(QAP^(*登録商標)サーバー)には例えばWindowsNTを用意する。データ解析及び結果出力用には、汎用の基幹システムを配置し、サーバー間にファイアーウォールを設置し、システムの保護対策とする。施設情報と施設の管理データは、施設コードでのリンクとし、施設情報の漏洩に配慮されたものであることが好ましい。
(2)インターネットによるデータの収集と配信
リアルタイムな評価性を高めるため、週単位評価(1週間単位の評価を基本とした即時性をもつ。)、月単位評価(グラフィックな報告を主体とする。)、年単位評価(経年での成績の改善を評価)を行えるように構築した。本システムでは、原理的に日単位の集計も可能であるので通信に関わるコストの低減によっては変更可能である。
参加施設からのデータ転送には、内部精度管理用ソフト「MCP-QC」にFTPソフト(ファイル転送用のソフト)が組み込まれたインターネット環境があれば自動的にデータ解析部門に接続でき、同転送ソフトにより参加施設から日常の精度管理データを送信できる。
データ転送は、随時、データ解析部門での受け付けが可能であり、そして週単位の集計を行い、参加施設に対して、翌月曜日に各施設の個別データと全体集計からなる速報レポートを固定長のテキスト形式としてeMailにて返信する。
(3)月間集計結果
月間集計結果は、インターネット以外の参加施設も含めて行う。月間の集計値は、参加施設の要望により2種類のデータ提供方法より選択できる。2種類の提供形式とは、帳票レポート形式とCD-ROM媒体による提供である。帳票レポート形式では、例えば10種類以上の帳票があり、毎月提供される帳票と指定月に提供される帳票に分けられている。CD-ROM媒体形式では、例えば3種類のデータベース(QAP集計データ、施設データ及びQAPコードマスター)を収録した。これらは、固定長でCSVのテキスト形式である。観察を目的に閲覧ソフト「QAP-Viewer」をCD-ROMに収録した。表計算ソフト(Excel等)を用い参加施設自身での解析が可能である。QAPホームページを設け、全国の集計値はこのホームページにて掲載される。この集計値は、週単位で更新される。汎用のブラウザーソフトを利用してデータを閲覧、ダウンロードし、管理もできる。
(4)施設の観察
本システムでは、閲覧ソフト「QAP-Viewer」によって、施設の観察を可能とする。これにより、施設コード等の初回の最小限の環境設定で画面照会を行え、全国集計値に対する施設データを5種類の管理用グラフにて確認できる。全国集計値には、各種測定条件の組み合わせ集計が用意され、測定条件には、測定方法、分析機器、較正方法を用意しこれら2種類の組合せで集計を行いデータベース化しているので抽出条件を設定するなどの複雑さが必要ない。同一施設で複数台で参加もしくはグループで参加の場合、複数施設の施設コードをも登録できる。
(5)コード体系
本システムでは、諸団体実施のコントロールサーベイとコード体系の標準化を行った。検査項目コードは日本臨床病理学会の検査項目コードを採用し、分析機器コードは日本分析機械会の分析機器コードを採用し、方法コードは日本医師会精度管理調査のコードに準拠し、較正コードは学会認証の標準物質の使用可否や測定諸条件を改訂・利用し、及び施設番号は都道府県の識別と検査室の複数の分析条件に対応するため条件コードを用意した。
(6)グループ集計
本システムは、グループ集計に対応しており、全国集計以外に大規模から小規模のサーベイ解析も対応できる。各学術団体主催のサーベイに対応でき、例えば日医サーベイ、日臨技サーベイ、日衛協サーベイなどの大規模都道府県単位の地域サーベイ(各都道府県医師会、技師会、衛生局)、関連病院グループ(医師会、国立療養所、全社連、労災、臨床検査センター)、小規模グループの集計(研究班など)等である。
集計期間は毎月の継続的サーベイからワンショットサーベイまで対応でき、グループ単位の集計結果はグループのリーダー施設へEmail転送でき、毎月配布のCD-ROM媒体には全国値と共に格納される。参加施設はグループ単位での位置確認から全国値からの位置確認が容易に可能である。各メーカーのサーベイの代行も可能である、たとえば分析機器・検査薬メーカー等である。
(7)内部精度管理の充実
内部精度管理の充実を目的に精度管理用ソフトが用意された。参加施設には精度管理用ソフト「MCP-QC」を提供し、複数の精度管理手法の効率的利用を目的にオーバーチェック表を用意した。日常精度管理データを利用した「精密さ評価法」が行える。臨床化学における定量検査の精密さ・正確さ評価法指針(改訂版)(GC-JAMT-1999)。かくして、日常において、精度管理ソフト「MCP-QC」を利用して日常精度管理のみならず、日内変動・日間変動を精密さ評価法により確認できる。
(8)正確さの確認
本システムでは、定量検査の正確さの確認のため、定量検査の精密さ・正確さ評価用ソフト「MCP-STAT」を利用できる。これにより、定量の正確さ評価指針での3種類以上の標準血清試料を利用し、正確さを直線回帰分析により確認できる。
(9)一元配置分散分析法を利用した基礎統計値を提供
本システムでは、日常の精度管理データは日内と日間の変動を同分析法にて評価できる。報告される1ヶ月間の施設データにより同方法によって施設内変動と施設間変動および総変動値を提供できる。」(第3頁2行?6頁17行)

(c)「実施例1 本システム(eQAP)の流れ
・・・
(4)データの動き
施設側は、データチェックとして日常精度管理を実施し管理値は「MCP-QC」に保管する。データ発送は、日、週単位のインターネット送信、1ヶ月単位で専用の報告用紙による郵送、FAX等で行う。
データ解析部門側は、データチェックとして、施設・測定・報告値のエラーチェックを行う。施設の過去累積平均値±t×標準偏差(t=4)にて極端値は除外し、全体集計より測定方法別集計の下位-t×標準偏差と上位+t×標準偏差(t=3)より極端値の除外処理を行う。集計処理は、測定方法、分析機器を分類して、施設内と施設間変動値を集計する。そして参加施設毎の集計結果と全体集計結果を作成する。月間集計結果は、帳票形式とテキストデータを用意する。
得られた結果の返送は、eMail(週単位の集計結果をeMail登録の参加施設に返送する。但し通信コスト等の低減により日毎集計にも対応できる)、CD-ROM(集計データは閲覧ソフト「QAP Viewer」同函する)、帳票形式(仕分け発送)、QAPホームページ(参加施設QAPサーバー)により行われる。
次いで、施設側は、レポートの検討を行う。例えば、E-Mailでの週単位の集計結果にて直ちに精度を全国値と比較でき、月単位の集計結果では帳票レポートにて参加施設の位置を確認でき、配布データと閲覧ソフト「QAP Viewer」を利用し全国値と施設値を5種類の管理図により視覚的に確認でき、帳票では用意されない詳細な集計結果より多方面から解析できる。」(第6頁19行?第8頁7行)

(d)「実施例3
QAP-Viewerソフト
システムの動作環境は、NEC PC-9821シリーズ、または PC/AT互換機で下記OSが動作する機種。CPU:Intel Pentium100以上必須、メモリー:32MB必須、64MB以上を推奨、ハードディスク:20MB以上の空き容量が必要、ディスプレイ:Windows対応ディスプレイ、画面は600×800ドット、256色以上必要。OS:WINDOWS95/98、その他:CD-ROMドライブ必須等である。
特徴はデータ解析部門配布のCD-ROMに収録のQAP集計データと施設データより簡単にグラフを作成できること、全体とグループの位置より該当施設の位置を確認できること、報告をペーパーでされた施設でMCP-QCを用いなくとも全体より自施設の位置を把握できること等である。
プログラム内容は、SDA/SDP TWIN PLOT(SDAとSDPをプロットしすべての項目の位置を確認できる)、QAP管理図(全体、グループと各施設の・位置を観察できる)、TWIN PLOT(グループを±2SDの枠で囲み、自施設を表す)、技術・要因チャート(各施設の良好・要注意・不良、系統誤差、ランダム誤差の区分)、QAP MATRIX(該当検査項目を一覧表示し自施設の位置を全体で観察できる)、オプション(ロット変更、測定条件、複数施設の要録)等の機能を備える。」(第9頁15行?第10頁11行)

(e)「実施例5 eQAPに組み込まれた基本プログラム(QAP)の詳細
・・・
B.検査室(施設)内精度(INTRA-LAB)(内部精度)および検査室(施設)間精度(INTER-LAB)(外部精度)の計算方法
各検査室のデータは下表1のようにまとめることができ、次の計算法によりデータ処理する。
・・・
E.eQAP210(INDIVIDUAL MONTHLY HIATORY)
・・・
1)SDIは各月のMEANが累計のMEANに比べてどのくらい離れているかを、累計のSDを基準にして表したもので、計算式は(当月のMEAN?累計のMEAN)/(累計のSD)である。
2)SDPは自施設のSDと項目別INTRA-LABの累計のSDを比較したもので、1より小さければ平均値より小さいことを示す。計算式は(自施設のSD)/(項目別INTRA-LABの累計のSD)である。
3)SDAは自施設のMEANが項目別累計のMEANからどのくらい離れているかを項目別INTER-LABの累計のSDを基準にして表したものである。計算式は(自施設のMEAN-項目別累計のMEAN)/(項目別INTER-LABの累計のSD)である。
・・・
F.eQAP215(INDIVIDUAL MONTHLY summary)
このレポート(表5)では 自施設の当月と累計のMEAN、SD、CVと全施設の累計のMEAN、SD、施設数及び自施設のSDI、SDA、SDP、SCOREおよびJUDGEがそれぞれ項目別、LEVEL別に出力される。SCOREはSDAが±1.00未満の場合は5点、±1.00以上±2.00未満の場合は3点、±2.00以上±3.00未満の場合は1点、±3.00を超える場合は0点となる。また、JUDGEはレベル1とレベル2のSDAを散布図に描いたとき、下表のようにプロットされる場所により右下のように判定される。なお、このレポートは毎週金曜日夕方までにインターネットで送信された施設に対し、翌週月曜日までにeメールで返信される。
【表5】」(第10頁18行?第17頁9行)

(f)第17頁の【表5】には、横軸を「レベル1」、縦軸を「レベル2」とした分散図が示され、「JUDGE」として、「A GOOD」、「B SYSTEM-ERROR」、「C ONE-SIDE ERROR」、「D RONDOM ERROR」と示されている。

(g)「実施例6 QAP-Viewer(閲覧ソフト)の詳細
下記表13はQAP-Viewerのメインメニューである。各作業のダイアログボタンをクリックすることで作業可能である。
【表13】
・・・
1)SDA/SDP TWIN PLOT 横軸をQAPトロール1X、縦軸をQAPトロール2Xとし、全体の平均値を基準としてSD単位で区切られた2種類の管理図のなかにデータを項目名でプロット表示した(表14)。SDA管理図は、施設の当月平均値と全体の平均値の差を全施設の平均値のばらつきINTER-LAB SDで割った値をプロットしたもので、正確性(Accuracy)を見るための管理図である。±1SD以内は青○、1SD?2SDは紫△、2SD以上は赤×で表示した。SDP管理図は、施設の当月のSD値を全施設内の平均的なばらつきの指標であるINTRA-LAB SDで割った値をプロットしたもので、精密性(Precision)を見るための管理図である。±1倍以内は○で、1倍?2倍は△、2倍以上は×で表示した。
【表14】
・・・
3) TWIN PLOT 横軸をQAPトロール^(*)1X、縦軸をQAPトロール2Xとした散布図のなかで、施設のデータを●でプロットする。全体平均値を中心にして±3SDを外枠に描いた。キーコードで分類した各要素の平均値±2SDの枠をカラー線(図中複数の枠は各色が異なる)で描く。*は、精度管理試料の名称。
【表16】
・・・
4) 技術・要因チャート
全体の平均値を中心として1SD単位で区切られた基盤のなかに施設のデータを項目名でプロット表示する(表17)。技術評価チャートでは、プロットされた位置より良好、要検討、不良・原因追求の区分を行う。因分析チャートでは更に異常が発生した場合の位置によってその項目が系統的誤差(Systematic Error:SEと略す)または、ランダム誤差(Random Error:REと略す)または、片側誤差(One-sideError:OEと略す)かを判断し、誤差要因の原因を追求し易くした。
【表17】
・・・
5) QAP MATRIX
全体の平均値を中心にして±3SDを外枠にし、±1SDを点線で区切った基盤の中に、キーコードで分類した自施設と同じグループの平均値±2SD枠を太黒線で描いた(表18)。自施設のデータは、全体の平均値から2試料ともに±1SD以内の場合は青●でプロットし、1試料でも±1SDを超えた場合は赤●でプロットされる。図中ZTT、CK、AMYの場合が赤●で他は青●である。
【表18】
・・・
6)オプション設定
管理試料のロット番号を指定または変更がおこなえ、集計の分類キーコードの選択を行える。キーコードを一覧より選択する。同一施設複数台で利用もしくはグループ施設で利用の場合は、「他施設プロット」を「する」にマークし、他施設コードリストで他施設の施設コードを入力し、追加・更新する。複数の施設コードの登録が行える。QAP管理図、TWIN PLOT、QAP MATRIXに複数台または複数施設データを同時にプロットしたい場合に使用する。ここで登録した施設コードは(○)でプロットされる。
7)グループ集計閲覧
全国平均値とは別に、グループ施設の集計値を基に各種の管理図を閲覧する場合は、以下の手順となる。なお、グループ集計を希望する場合は、予め申し込みおこなう。(1)「施設データファイル」の選択は通常と同じ手順で行う。(2)「集計データファイル」の選択は、「変更」ボタンを押して、CD-ROM内の「QAPView」フォルダーをダブルクリックし、次にその中にある「datafile」フォルダーをダブルクリックし、さらにその中にある「グループファイル」フォルダーをダブルクリックして、****230X.eqc(グループ施設データファイル)を選択し、「開く」をクリックして行う。****はグループ毎にファイル名が異なる。(3)「他施設プロット」を「する」にマークし、他施設コードリストで他施設の施設コードを入力し、追加・更新する。QAP管理図、TWIN PLOT、QAP MATRIXに複数施設データを同時にプロットできる。ここで登録した施設コードは(○)でプロットされる。」(第27/1頁1行?第34頁1行)

(h)【表16】(第31頁)には、「TWIN PLOT」と表示された表が示され、各測定方法ごとの平均値±2SDの枠が記載されている。
また、【表17】(第32頁)には、要因分析チャートとして、系統誤差SEが原点を通る45°の線上付近、ランダム誤差RE、片側誤差OEが、この線から離れた場所であることが示されている。

(i)「請求の範囲
1.システム(精度保証システム)への参加施設に内部精度管理用の管理ソフトを提供すること、施設は指定の精度管理試料を日常の検査のなかで測定し日常の精度管理を実施すること、各施設で得られたこの測定値を上記ソフトより全国的に広域情報伝達ツールを利用して一定間隔でデータ解析部門に収集すること、これら複数施設からの測定値について、データ解析部門で全体集計及び分類別の集計を行い、精度保証に関する必要な統計量を施設内変動と施設間変動にまとめること、及びシステム(精度保証システム)参加施設へ広域情報伝達ツールを利用してデータ解析部門からデータを提供することを含む、臨床検査用精度管理試料を用いた日常測定値の正確度(精度)の保証システム。」(第35頁1?12行)

3 対比・判断
上記先願明細書の記載事項(特に上記(i)、(b)の「(4)施設の観察」、「(5)コード体系」、(g)の「3)TWIN PLOT」、「6)オプション設定」、「7)グループ集計閲覧」)から、先願明細書には、
「精度保証システムへの参加施設に内部精度管理用の管理ソフトを提供すること、施設は指定の精度管理試料を日常の検査のなかで、分析機器で測定し日常の精度管理を実施すること、各施設で得られたこの測定値を上記ソフトより全国的に広域情報伝達ツールを利用して一定間隔でデータ解析部門に収集すること、これら複数施設からの測定値について、データ解析部門で全体集計及び分類別の集計を行い、精度保証に関する必要な統計量を施設内変動と施設間変動にまとめること、及び精度保証システム参加施設へ広域情報伝達ツールを利用してデータ解析部門からデータを提供することを含む、臨床検査用精度管理試料を用いた分析機器の日常測定値の精度の保証システムであり、同一参加施設で複数台の分析機器でもしくはグループで参加することができ、検査項目コード、分析機器コード、方法コード、較正コード、施設コードを用意したものであって、
横軸を精度管理試料QAPトロール1×、縦軸を精度管理試料QAPトロール2×とし、全体の平均値を基準としてSD単位で区切られた管理図のなかに、自施設のデータを●でプロットし、全体平均値を中心にして±3SDを外枠に描き、キーコードで分類した各要素の平均値±2SDの枠をカラー線で描いたツインプロット図であって、複数台の分析機器が登録されていれば複数台のデータを同時にプロットでき、グループ集計の登録がなされていればグループの複数施設を同時に○でプロットできるツインプロット図を、QAP-Viewer(閲覧ソフト)で提供することを含む、精度の保証システム」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と先願発明とを比較する。
(1)先願発明の「参加施設」、「分析機器」、「精度管理試料QAPトロール」、「測定値」、「データ解析部門」、「精度の保証システム」は、その機能からみて、本願補正発明の「臨床検査施設」、「臨床検査装置」、「精度管理用物質」、「測定データ」、「データ処理装置」、「精度管理システム」にそれぞれ相当する。

(2)先願発明の「精度管理試料QAPトロール1X」及び「精度管理試料QAPトロール2X」は、「1X」及び「2X」が1倍及び2倍を意味することは技術常識から明らかであるから、2つの精度管理試料QAPトロールは濃度の異なるものであるといえる。

(3)先願発明は、「同一参加施設で複数台の分析機器で参加することができ」るものであるから、本願補正発明の「複数の臨床検査施設にそれぞれ臨床検査装置が設けられ、かつ、少なくとも一つの臨床検査施設には、2以上の臨床検査装置が設けられて」いる構成を有しているといえる。

(4)先願発明の「各施設で得られたこの測定値を上記ソフトより全国的に広域情報伝達ツールを利用して一定間隔でデータ解析部門に収集する」ことは、施設からのデータ発送は、インターネット送信等で行うことが記載されているから(上記(c))、本願補正発明の「そのとき得られる測定データをデータ処理装置に送信」することに相当する。
さらに、先願発明の、集計を行い統計量を施設内変動と施設間変動にまとめ「精度保証システム参加施設へ広域情報伝達ツールを利用してデータ解析部門からデータを提供すること」、具体的には「QAP-Viewer(閲覧ソフト)で提供すること」は、本願補正発明の「その結果を前記複数の各臨床検査施設にフィードバックする」ことに相当する。

(5)先願発明の「全体の平均値を基準としてSD単位で区切られた管理図のなかに、自施設のデータを●でプロットし、全体平均値を中心にして±3SDを外枠に描き、キーコードで分類した各要素の平均値±2SDの枠をカラー線で描いたツインプロット図」とすることは、先願明細書の「3)TWIN PLOT」の欄の前に「1)SDA/SDP TWIN PLOT」として、「 横軸をQAPトロール1X、縦軸をQAPトロール2Xとし、全体の平均値を基準としてSD単位で区切られた2種類の管理図のなかにデータを項目名でプロット表示した(表14)。SDA管理図は、施設の当月平均値と全体の平均値の差を全施設の平均値のばらつきINTER-LAB SDで割った値をプロットしたもので、正確性(Accuracy)を見るための管理図である。」(上記(g))と記載されていることを参照すれば、プロットするデータは処理されてSDA値とされたものといえるから、本願補正発明の「正規化した目盛りと単位系を用いてツインプロット処理を行」うことに相当する。
さらに、先願発明の「横軸を精度管理試料QAPトロール1×、縦軸を精度管理試料QAPトロール2×とし」た「ツインプロット図を、QAP-Viewer(閲覧ソフト)で提供する」ことは、、2つの試料のデータを横軸と縦軸にしていることから、両者の相関関係を示しているから、本願補正発明の「二つの試料の相関関係をツインプロット図に表す」ことに相当する。

(6)先願発明の「ツインプロット図」は、先願明細書の【表5】(上記(f))及び【表17】(上記(h))を参照すると、45°の線上又は付近にあるが原点から離れた位置は「系統誤差(SYSTEN-ERROR)」、45°の線から大きく離れた位置は「片側誤差(ONE-SIDE ERROE)」及び「ランダム誤差(RANDOM-ERROE)」とされており、「系統誤差」は、分析機器の異常または機器の調整異常を意味し、「片側誤差」及び「ランダム誤差」は、精度管理試料の異常または試料の取り扱いの異常を意味することは、SDA管理図の構造からみて明らかである。
そうすると、先願発明の「ツインプロット図」による「精度の保証システム」は、本願補正発明の「複数の臨床検査装置における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置の調整における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置において扱う該試料の異常または該試料の取り扱いの異常を判定」することに相当する精度保証を行うものであるといえる。

(7)先願発明は「キーコードで分類した各要素の平均値±2SDの枠をカラー線で描いたツインプロット図」を提供するものであるが、「キーコードで分類した各要素」は、「検査項目コード、分析機器コード、方法コード、較正コード、施設コード」であり、具体例として、先願明細書の【表16】(上記(h))には、ツインプロット図の右側に複数種類の「測定方法」がデータ数とともに記載されているから、この場合、方法コードで分類し、各方法コードについて複数施設からのデータの平均値±2SDを枠で描いているといえる。
そして、先願発明は「複数台の分析機器が登録されていれば複数台のデータを同時にプロットでき」るものであるから、登録された複数の参加施設の複数台の分析機器の全体評価がこの枠により示され、このツインプロット図中に、個別評価である自施設の複数台の分析機器のデータが●でプロットされるといえる。
そうすると、先願発明は、本願補正発明の「判定結果が試料測定に使われた複数の臨床検査装置の全体評価および各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごとの個別評価を含む」構成に相当する構成を有しているといえる。
また、全体評価については、先願発明は「グループ集計の登録がなされていればグループの複数施設を同時に○でプロットでき」るものであるから、グループの複数施設が複数台の分析機器を登録していれば、複数の施設の複数台の分析機器が同時に○でプロットされることで、複数施設の複数台の分析機器の全体評価を示すことができるものでもある。

したがって、両者は以下の一致点し、相違点はない。
(一致点)
複数の臨床検査施設にそれぞれ臨床検査装置が設けられ、かつ、少なくとも一つの臨床検査施設には、2以上の臨床検査装置が設けられており、精度管理用物質としての濃度の異なる二つの試料を複数の臨床検査施設に備えられている前記臨床検査装置によって測定し、そのとき得られる測定データをデータ処理装置に送信し、このデータ処理装置において前記測定データを正規化した目盛りと単位系を用いてツインプロット処理を行い、前記二つの試料の相関関係をツインプロット図に表すことにより、試料測定に使われた複数の臨床検査装置における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置の調整における異常、試料測定に使われた複数の臨床検査装置において扱う該試料の異常または該試料の取り扱いの異常を判定し、その結果を前記複数の各臨床検査施設にフィードバックするよう構成された臨床検査装置の精度管理システムであって、
判定結果が試料測定に使われた複数の臨床検査装置の全体評価および各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごとの個別評価を含む、臨床検査装置の精度管理システムである点。

したがって、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は,特許法第184条の13で読み替えて適用される特許法29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は前置審査に関する審尋の回答書で、「判定結果が試料測定に使われた複数の臨床検査装置の全体評価および各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごとの個別評価を含むとともに、個々の臨床検査施設と全ての臨床検査施設のデータとの関係が判別できないようにしたツインプロットを用いた施設分布図に関する施設全体の評価データと、各施設のみのマークが付された、施設ごとの個別評価データとを含む」ことを限定する補正を行いたい旨記載しているが、先願明細書には、「施設情報と施設の管理データは、施設コードでのリンクとし、施設情報の漏洩に配慮されたものであることが好ましい。」(上記(b))ことが記載され、上記(7)にも記載したが、「グループ集計閲覧」として、「TWIN PLOT・・・に複数施設データを同時にプロットできる。ここで登録した施設コードは(○)でプロットされる。」(上記(g))と記載されており、このようなツインプロット図は「個々の臨床検査施設と全ての臨床検査施設のデータとの関係が判別できないようにしたツインプロットを用いた施設分布図に関する施設全体の評価データ」といえ、また、先願明細書には「施設のデータを●でプロットする。全体平均値を中心にして±3SDを外枠に描いた。キーコードで分類した各要素の平均値±2SDの枠をカラー線(図中複数の枠は各色が異なる)で描く」と記載されており、このようなツインプロット図は「各施設のみのマークが付された、施設ごとの個別評価データ」といえることから、上記補正案によっても本願発明に特許性があるとすることはできない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発22年7月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年1月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 精度管理用物質としての濃度の異なる二つの試料を複数の臨床検査施設に備えられている臨床検査装置によって測定し、そのとき得られる測定データをデータ処理装置に送信し、このデータ処理装置において前記測定データを正規化した目盛りと単位系を用いてツインプロット処理を行い、前記二つの試料の相関関係をツインプロット図に表すことにより、前記複数の臨床検査装置における異常や装置調整の異常、あるいは装置において扱う試料の異常または試料の取り扱いの異常を判定し、その結果を前記臨床検査施設にフィードバックするよう構成された臨床検査装置の精度管理システムであって、
判定結果が複数の臨床検査装置の全体評価および個々の評価を含むことを特徴とする臨床検査装置の精度管理システム」

2 先願明細書とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書、および、その記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「複数の臨床検査施設に設けられている臨床検査装置」の限定事項である「少なくとも一つの臨床検査施設には、2以上の臨床検査装置が設けられて」いるとの構成を省き、フィードバックする臨床検査装置の異常について「測定に使われた複数の臨床検査装置」の異常であるとの構成を省き、「複数の臨床検査装置の」「個々の評価」について、「各臨床検査施設において試料測定に使われた臨床検査装置ごと」のものである構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、同様の理由により、本願発明は、特許法第184条の13で読み替えて適用される特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第184条の13で読み替えて適用される特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-23 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-15 
出願番号 特願2001-280325(P2001-280325)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 161- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼見 重雄  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 岡田 孝博
横井 亜矢子
発明の名称 臨床検査装置の精度管理システム  
代理人 藤本 英夫  

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