ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61M |
---|---|
管理番号 | 1239009 |
審判番号 | 不服2008-21556 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-22 |
確定日 | 2011-06-20 |
事件の表示 | 特願2007-24209号「脳波誘導学習方法及びそのシステム。」拒絶査定不服審判事件〔平成19年7月19日出願公開、特開2007-181709号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I 手続の経緯 本願は、平成18年4月17日(優先権主張平成17年11月7日)に出願した特願2006-113054号の一部を平成19年2月2日に新たな特許出願としたものであって、平成19年11月9日に手続補正書が提出され、平成20年1月25日付けで拒絶理由が通知され、平成20年3月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年5月9日付けで拒絶理由が通知され、平成20年6月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年7月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。 II 原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成20年 5月 9日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものです。」であって、該査定の根拠となった平成20年5月9日付けの拒絶理由の概要はつぎのとおりである。 「理由1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)補正後の請求項1,2には、いずれも、 (a)「学習工程のa,b,c,dと対応してc>d>b>aの条件式を満たすとともに」 (b)「脳波誘導の実施時間は、学習工程a,bの連想元イメージの表示、及び、学習工程c、dの連想先イメージの表示、と、同期してa<b<c<dの時間式を満たすとともに」 と記載されています。 しかしながら、「学習工程a,b,c,d」は、一般的な技術用語でなく、また特許請求の範囲(請求項の記載)で定義されていないので、結局特許請求の範囲として不明確なものとなっています。 また、「脳波誘導の実施時間は、」「同期して」となりますが、何が「同期」するのか、不明です。 よって、(補正後の)請求項1,2に係る発明は明確ではありません。 理由2 この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 前回の拒絶理由通知でも同様のことを指摘しましたが、特許請求の範囲に直接関連すると思われる発明の詳細な説明の【0013】?【0023】段落において、脳波誘導の具体的手段については、「学習工程a-d において、イメージの表示とともに背景を光点滅することにより脳波誘導を行う」と記載されているのみです。これでは、特許請求の範囲で詳しく定義されている脳波誘導の手段が、当業者が容易に発明を実施できる程度に具体的に記載されているとは言えません。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1,2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえません。」 III 当審の判断 拒絶理由通知書に記載した理由2について検討する。 以下、平成20年8月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面を併せて「明細書等」という。 1 明細書等の記載 (1)特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 学習工程は、連想元イメージを表示する学習工程a,b、及び、連想先イメージを表示する学習工程c、d、からなり、それぞれ脳波誘導を行うステップ、 脳波誘導の周波数の作動は、学習工程のa,b,c,dと対応してc>d>b>aの条件式を満たすとともに、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくともα波中域以上とα波中域以下の脳波帯域を推移して反復し、且つ、推移経路を反復毎に相違すべく成されるステップ、 脳波誘導の実施時間の作動は、学習工程のa,b,c,dと対応してa<b<c<dの時間式を満たすとともに1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味するステップ、からなることを特徴としたサブリミナル脳波誘導学習システムの作動方法。」 (2)発明の詳細な説明の記載 本件に係る明細書には、サブリミナル脳波誘導学習システムの作動方法に関し、つぎのとおり記載されている。 (2-1)「【技術分野】 【0001】 この発明は、脳波誘導学習方法、及び、そのシステムに関する。」 (2-2)「【背景技術】 【0002】 睡眠障害、又は自律神経失調症、又は鬱病に効果があるものとして、脳波誘導装置がある。光刺激、及びリラクゼーションによる様々な誘導方法があり、生体の緊張をある程度解きほぐすことで、安眠可能な状態へ誘導するシステムであるが、直接的に脳波を矯正し、誘導することはできなかった。・・・」 (2-3)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0007】 また、サブリミナル学習システムにおいては、様々な脳波への刺激によって学習意欲や集中力を高めるような工夫が必要であった。・・・そのため、精神と神経に関わる諸々の治療装置の実用化は難しいと考えられていた。 【0008】 つまり、従来の方法では、脳波を直接的に誘導して矯正することができないので、そのため装置等に様々な工夫を施して、脳波誘導の完成度を高くしなければならなかった。 【0009】 したがって、本発明では脳波誘導のための脳波誘導方式、及びそのシステム、とを提供する。 本発明者は、意外にも、1/fゆらぎと類似の効果が得られるような・・・学習時の脳波を長時間誘導する方法を見出した。」 (2-4)「【課題を解決するための手段】 【0010】 ・・・、本発明は、学習工程は、連想元イメージを表示する学習工程a,b、及び、連想先イメージを表示する学習工程c、d、からなり、それぞれ脳波誘導を行うステップ、 脳波誘導の周波数は、学習工程のa,b,c,dと対応してc>d>b>aの条件式を満たすとともに、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくともα波中域以上とα波中域以下の脳波帯域を推移して反復し、且つ、推移経路を反復毎に相違すべく成されるステップ、 脳波誘導の実施時間は、学習工程のa,b,c,dと対応してa<b<c<dの時間式を満たすとともに1/3Hz以下の呼吸周期を用いて休止時間を加味するステップ、からなることを特徴としたサブリミナル脳波誘導学習システムの作動方法、及びそのシステムに関する。」 (2-5)「【発明の効果】 【0011】 ・・・ ・サブリミナルシステムにおいて、サブリミナル効果を増幅することができる。」 (2-6)「【実施例1】 【0013】 図1では、知覚に関係するための時間間隔を要するシステム等において用いた例である。各工程a-e と休止時間fにおいて、脳波を賦活させるために徐徐に間隔を広げていることが示されている。この方法による効果は1/f ゆらぎ理論に類似するものであるが、時間間隔のみでなく、さまざまな場面で取り入れることにより、従来の単調な刺激と比べ、ストレスを軽減させることが可能である。例えば、脳波誘導装置においてα波に応用した場合、通常10Hzのみを繰り返し用いるところを、8 から13Hzまでの帯域内で推移変化させることにより、脳波誘導の実効率は高くなると思われる。・・・ 【0014】 また、休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hz から1/3Hz 以下を用いる。映像等においては、連続したサブリミナル効果を増幅するためにも有効であると思われる。具体例としては、学習システムにおける学習工程で、休止時間fが学習工程a-e のサブリミナル効果(増幅)のために5回連続した場合でも、実効率は持続すると思われる。さらに、前述した脳波誘導を実施することで、脳波誘導、サブリミナル効果、1/f ゆらぎ効果(脳波誘導方式)の3つの相乗効果が期待できる。(実施例3参照) つまり、脳波誘導の休止間隔、及び、実施時間は、脳波と対応する呼吸周期から休止時間fとともに特定されることとなる。 すなわち、脳波誘導のための周波数に、推移変化と呼吸周期に基づく休止間隔を加味することにより人体への親和性が保たれ、反復毎時にもその推移経路が相違変化することにより脳波誘導効果を長時間持続することができる。また、使用者の脳波を賦活して誘導させるので、学習システムにおける学習工程に適用することで学習効果を促進することができる。」 (2-7)「【実施例2】 【0015】 図1に示す20秒程度の工程は、さらに90分間連続して繰り返す場合においても同様に、毎回相違する変化を有するのが望ましい。 【0016】 例えば、20%の効果を引き出すためには、最初が20秒(20秒は脳波誘導方式において最大値であるため)であれば、90分後には16秒というように、時間経過と比例して微妙に変化することで脳波を賦活するような効果が得られる。最も適切な効果の量としては、変化し過ぎず、かつ単調で飽きない程度の意識されにくいものが条件となる。(実施例7参照)また、図3と図6では、周波数帯域が反復毎に推移変化しているのが示されている。」 (2-8)「【実施例3】 【0017】 次に、脳波誘導方式をサブリミナル学習システムに用いた具体例を説明する。 例えば、英単語学習を目的とした場合、図1で示される学習工程a-e においては、a-b が翻訳文、c が英単語、d が用例であり、e はa-d までに表示した全イメージの表示を行う。英単語が「speed 」の場合、a,b は「速さ、速度、迅速」、c は「speed 」、d は「speed up 速度が増す」、であり、e はこの全部になる。 【0018】 このとき、a-b は連想元イメージを表示する第1段階であり、c-d は連想先イメージとその付加情報を表示する第2段階であり、e は復習するための表示であり、さらにこれらの各工程は、休止時間f を設けたことによりサブリミナル効果を増幅するものである。 【0019】 さらに、学習工程a-d において、イメージの表示とともに背景を光点滅することにより脳波誘導を行う。 これは表示端末を用いた光点滅刺激方法であるが、そのほかの方法としては脳波誘導装置を別に設ける必要がある。 【0020】 イメージの形式は表現可能なものであれば、文字列のほかに画像でも良いし、音声を加えることも可能であり、連想元イメージ、又は連想先イメージが1件の学習イメージについて複数の場合には、脳波誘導周波数と同調して連続表示すれば良い。 【0021】 以上による学習システムは、一般的な方法でも可能である。しかしながら、これらの学習工程を繰り返すだけでは単調なリズムにより飽きやすいため、a-f の時間と、脳波周波数に、微妙な変化を少しづつ与える必要がある。それは1/f ゆらぎ理論でも可能だが、脳波誘導方式においては特に、学習工程a-b はイメージを認識するためであり、学習工程c-d は学習するためであるから、そのときどきに応じて脳波の周波数帯域を決定すべきである。 すなわち、1件の学習イメージの工程a-e の順番に関わらず、学習工程c-d は最も波長の高いα波中域以上であり、学習工程a-b はそれよりも低い波長に推移するためのものであれば、より学習効果として適切であると思われる。この時、各工程と周波数の関係式はc>d>e>a>b になるが、特にe については復習のための工程であるので無視しても良いと思われる。 【0022】 また、脳波誘導のための周波数を決定する際においては、θ波を用いると眠くなることがある。そのため、δ波、又はα波低域を代わりに用いることも可能であるが、利用者が十分に睡眠を取っておけば、この問題を回避することもできる。また、表示端末の仕様によってはチラツキが生じる問題があるが、具体的には実施例6で解説する。 【0023】 図2は、脳波誘導方式の波形の例であり、脳波と、脳波誘導の実施時間との複合波を示している。また、サブリミナル学習システムにおいては、脳波誘導の非実施時間はサブリミナル効果の増幅を兼ねるものである。 よって、学習工程における連想元イメージと連想先イメージは、それぞれ脳波誘導の実施間隔と同期して表示することで学習効果を有する。」 (2-9)「【実施例6】 【0041】 脳波誘導は、脳波誘導方式によって決定された周波数とその実施時間を用いるが、その手段においては、電気刺激、光刺激、音波刺激、のいずれかを特定すべきではない(いずれも脳波誘導装置の慣用技術である)。 例えば、脳波治療装置において、脳波誘導媒体と人体への実施部位は、脳波誘導装置の有効範囲内で症状や疾患部位に応じて判断すべきであり、必ずしも頭部や光刺激誘導が適しているものではなく、慢性疾患や神経症状の場合を考慮して、最も適した生体の部位の周辺に実施することにより、異常状態から回復させることができるものと思われる。 【0042】 また、光刺激の効果は、それに対する生体の反応が遅いため、β波のような高域の周波数になると実効率は著しく低下するものと思われる。 【0043】 ところで、覚醒時の脳波には、α波、β波、γ波があるが、このうちα波はリラックスや集中している状態、β波は普通の生活状態や殺伐とした状態、γ波は興奮・イライラした状態であることが一般的に知られている。 【0044】 このうち、覚醒レベルが最も高いのはγ波であるから、起床時においてはγ波-α波までを万遍に刺激することで、結果的に脳波を賦活させることが可能である。図6は、脳波が約47.8Hz-7.4Hz、呼吸数のための周波数が約0.4-0.1 Hzで推移することで、脳波を賦活させるための実施間隔である。(また、反復毎に全体的な周波数は下がっており、3分後で最も高くなっているのは、周波数の推移変化を反復しているためである。) 【0045】 実際の脳波誘導装置においては、各手段の特性や使用電圧が相違するため、コンピューターから脳波誘導装置をパルス波で直接制御するような場合には波形、又はパルス幅を工夫する必要がある。 【0046】 次に、それぞれの手段を用いる場合の留意点を説明する。 【0047】 1.電気刺激を脳波誘導に用いる場合の処置部位は、首筋?背中、又は鼻骨とその周囲、に効果があると思われる。人体に導子を左右対称に取り付けたことによる効果は比較的低い。電気刺激の有効電圧は、40ボルト±20ボルトであるから、20ボルト程度のバイアス電圧を付加するか、あるいは波形の高さに最大出力時の1/3 を付加する。パルス幅は、100±50μ秒である。脳波誘導の実効率は最も高い。 【0048】 2.光刺激は、β波以上の高周波数は、点滅しているのが解らないため、効果が低い場合がある。また、低周波においては、光点灯時間が一定の場合には効果が殆ど消えてしまうため、点灯時間は休止時間との比率から決定しなければならない。LEDを使用する場合は、有効電圧が4±2ボルト程度であるため、2ボルト程度のバイアス電圧を付加するか、あるいは波形の高さに最大出力時の1/3 を付加する。脳波誘導の実効率は、β波以下であれば2番目に高い。 【0049】 3.音波刺激を脳波誘導に用いる場合は、1回のパルス波は2回分の音波波形に相当するため、1/2 のパルス波か、あるいはノコゴリ波を用いる。それ以外では、2つの相違する比較的高い周波数を干渉させることにより、脳波誘導有効範囲内の干渉周波数を発生させる方法がある。この方法は、汎用コンピューターのプログラムソフトウェアでも実現可能である。また、音量は環境音程度にするのが適切である。 【0050】 4.表示端末を用いた光点滅刺激は、一般的に表示更新のための周波数は60Hz前後が仕様であるので、背景で点滅するための周波数によっては、チラツキが生じる不具合がある。この問題を解決するためには、更新周波数から割り切れる周波数リスト(60Hzの場合30,20,15,12,10..)の中から、もっとも必要な脳波誘導のための周波数と近いものを選択する方法がある。そのほかの方法としては、実施例9のように表示端末の更新周波数そのものを脳波誘導の光点滅刺激手段として同調するか、あるいは脳波誘導装置を別に設ける必要がある。」 (2-10)「【実施例7】 【0051】 (・・・) 【0052】 図4は、脳波誘導における生体に必要な優勢脳波の変化から、実際に有効な脳波誘導を算出する方法であって、人工知能システムに学習させる際に、実際に分かりやすく脳波と時間軸の関係で各工程を示したものである。 【0053】 まず、時間経過における優勢脳波の変化a を一般的知識から分かる範囲で入力し、不明瞭な部分は、前後の優勢脳波同士を曲線で滑らかに結んで補い、脳波誘導パターンのプロトタイプb を作成する。 【0054】 次に、脳波誘導装置を睡眠中に試行し、このとき不快感や中途覚醒があった時は、失敗情報d として時刻d1を記録するとともに、その時刻における波長を変更して一旦終了する。さらに、次回の試行による失敗情報d2が発生した時は、失敗情報d1より以前であればd1を、以降であればd2に対して、波長を適切に変更する。この方法を繰り返すことで、生体に最低必要となる優勢脳波の変化を長時間導くことができる。 【0055】 また、起床直後の脳波は、まだ眠っている状態であり、適切な覚醒状態を促すために、α波より高い波長レベルによる最終的な誘導段階を設けるべきである。最終的な誘導段階では、γ波、β波、α波が満遍に刺激されるのが望ましい。 【0056】 また、脳波誘導装置による脳波への連続的な刺激は、神経的な負担となり不快感を与えるため、あまりストレスにならないように呼吸動作の間隔と同調して休止時間を設けることにより、この問題を回避する必要がある。さらに厳密には、呼吸動作が予測できない状況であれば呼吸数以下の間隔を用いる。図6は、起床時において脳波誘導を万遍に行うことにより、脳波を賦活させるための実施間隔である。睡眠時においては、レム睡眠時とノンレム睡眠時には呼吸、心拍数ともに大きく変化することも考慮しなければならない。図7は実際にこの方法を用いて導いた脳波と休止間隔の推移である。 【0057】 以上の方法を用いて人工知能システムを利用する場合においては、初期段階では被験者から睡眠時の優勢脳波とその時刻を学習し、その次の段階では実際に脳波誘導装置を使って誘導を行いながら、被験者が不快に感じたり中途覚醒した場合には、(脳波観測と脳波誘導における作用誤差であると考えられる)誘導失敗情報として押しボタン等のスイッチ入力を用いて脳波誘導の推移経路を補正しなければならない。また、予測に十分な学習が完了することによって、長時間の理想的な脳波誘導パターンとして1通り以上をシミュレーションすることが可能であり、人工知能システムを簡略化した小型コンピューターへ移行することができる。 【0058】 また、より誘導精度を高めるためには、例えば年齢別、平均睡眠時間、使用頻度などの被験者ごとの属性情報を学習要素に付加することで、予め個人差による実効率の格差を調整する方法がある。」 (2-11)「【実施例8】 【0059】 脳波誘導の適切な休止間隔は、本来は人体のバイオリズムと同期するのが最も適切であるから、呼吸周波数と脳波推移をシミュレートするのではなく、呼吸周期(又は呼吸動作)を検知する手段を用いて最も適切な脳波を予測することがより望ましい。・・・。」 (3)図面の記載 図5の記載から、つぎの事項が窺える。 (3-1)横書きで上から順に、「サブリミナル学習システム」、「辞書データベース」、「脳波誘導」及び「サブリミナル」、「1/f ゆらぎ効果」、「イメージ学習」と記載されていること。 (3-2)上記した「辞書データベース」は番号11が付された矩形の枠内に記載されていること。 (3-3)上記した「脳波誘導」、「サブリミナル」及び「1/f ゆらぎ効果」はそれぞれ番号12,13及び14が付された楕円形の枠内に記載され、また、これら3つの楕円形は下に凸の三角形により結ばれていること。 (3-4)番号11が付された矩形から三角形に向かって矢印が記載されていること。 (3-5)上記した「サブリミナル学習システム」、番号11?14が付された各図形及び三角形は、番号10が付された矩形の枠内に記載されていること。 (3-6)上記した「イメージ学習」は番号20が付された楕円形の枠内に記載されていること。 (3-7)番号10が付された矩形から番号20が付された楕円形に向かって矢印が記載されていること。 2 明細書等に記載されたサブリミナル脳波誘導学習システム 以上の明細書及び図面の記載からみて、発明の詳細な説明にはサブリミナル脳波誘導学習システムの作動方法に関するものとして、サブリミナル学習システムが記載されている。 そして、当該サブリミナル学習システムに関してつぎの事項が記載されている。 (1)図1のa?eの各工程が学習工程a?eであること。 (2)サブリミナル学習システムが英単語学習である場合、学習工程a及びbは第1段階として連想元イメージを表示し、学習工程c及びdは第2段階として連想先イメージとその付加情報を表示し、学習工程eは復習するためのイメージを表示すること。これらの各工程の間に休止時間fを設けること。 (3)学習工程a?学習工程dにおいて、イメージの表示とともに光点滅を行ったり、別に脳波誘導装置を設けるといった手法により脳波誘導を行うこと。 (4)学習工程a?fの時間と脳波周波数に微妙な変化を少しづつ与える必要があること。 (5)学習工程c?dは最も波長の高いα波中域以上であり、一方、学習工程a?bはそれよりも低い波長に推移するためのものであればより学習効果として適切であること。 この時、学習工程a、b、c、d及びeと脳波誘導に係る周波数との関係はc>d>e>a>bであること。 (6)サブリミナル学習システムにおいては、脳波誘導の非実施時間はサブリミナル効果の増幅を兼ねるものであるから、学習工程における連想元イメージと連想先イメージは、それぞれ脳波誘導の実施間隔と同期して表示することで学習効果を有すること。 また、直接サブリミナル学習システムについて記載するものではないが、休止時間fについてはつぎの事項が記載されている。 (7)休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hzから1/3Hz以下を用いること。 (8)各工程a?eと休止時間fにおいて、脳波を賦活させるために徐徐に間隔を広げること。 以上の(1)?(8)の技術事項を総合してみて、発明の詳細な説明に記載されたサブリミナル学習システムは、「学習工程は、連想元イメージを表示する学習工程a,b、及び、連想先イメージを表示する学習工程c、d、からなり、それぞれ脳波誘導を行うステップ」(【請求項1】の記載を参照。)に関し、学習工程a?b及び学習工程c?dのイメージの表示の際に光点滅或いは別に脳波誘導装置を作動させることにより脳波誘導を行うものであると考えられる。 しかしながら、上記した脳波誘導が、光点滅を作動させることによるものである場合、当該光点滅は上記(4)?(8)に記載されたように作動されると考えられるが、その光点滅によりどのように脳波誘導するか、換言すれば、その光点滅を行うことによってどのように所望の脳波に誘導するのかについての記載は認められない。 また、上記した脳波誘導が、脳波誘導装置が設けられることによるものである場合、当該脳波誘導装置自体についての記載は見あたらないから、その当該脳波誘導装置をどのよう作動させ、その結果どのように所望の脳波に誘導するのかについての記載があるとすることはできない。 したがって、発明の詳細な説明には、サブリミナル学習システムにおいて所望の脳波にどのように誘導するのかについて記載されているとはいえない。 よって、発明の詳細な説明には、サブリミナル脳波誘導学習システムとしてのサブリミナル学習システムにおいて、所望の脳波にどのように誘導するのかについての記載があるとすることはできない。また、明細書等のその余の記載をみても所望の脳波にどのように誘導するのかについての記載も示唆も見あたらない。 一方、サブリミナル脳波誘導学習システムにおいて、所望の脳波に誘導することが周知の技術であるともいえない。 しかも、仮に、サブリミナル脳波誘導学習システムにおいて所望の脳波に誘導することが可能であるとしても、その誘導された脳波を用いてどのように学習意欲や集中力を高めるようにするのかについても記載が見あたらず不明である。 3 小括 以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、サブリミナル脳波誘導学習システムの作動方法に関し、当業者が容易に発明を実施できる程度に具体的に記載されているとはいえない。 IV むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-03 |
結審通知日 | 2011-03-29 |
審決日 | 2011-04-11 |
出願番号 | 特願2007-24209(P2007-24209) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(A61M)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
黒石 孝志 関谷 一夫 |
発明の名称 | 脳波誘導学習方法及びそのシステム。 |