• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A42B
管理番号 1239402
審判番号 不服2010-29684  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-14 
確定日 2011-06-27 
事件の表示 特願2004-238946「禿げ頭にならない帽子」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 37318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成16年7月22日の出願であって、平成22年1月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年2月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年2月12日付けの手続補正書より補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「赤い光のみを透過する帽子。」

3.原査定の理由
(1)平成22年1月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の内容
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

「赤い光のみを透過する」材料が、具体的にどのようなものかが発明の詳細な説明に一切記載されていない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が特許請求の範囲に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
なお、平成19年8月1日付け上申書によれば、300nmから600nmの可視領域の光と1μm以上の領域の光は減衰はしているものの透過しており、当該測定に用いた帽子の材料は「赤い光のみを透過する」ものでは無いことを示している。

(2)平成22年9月15日付拒絶査定の内容
この出願については、平成22年 1月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
平成22年2月12日付け意見書において、赤い素材のフィルムで帽子を作成して波長の透過率を測定した結果、900nmの波長が透過した旨を出願人は記載している一方で、「赤い光のみを透過する」材料が具体的にいかなるものかが依然として明かとなっていない。
したがって、本願明細書の記載では、発明の詳細な説明の欄に「赤い光のみを透過する」ための具体的手段が一切記載されておらず、請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に「赤い光のみを透過する」ための手段が明確かつ十分に記載されているとは認められない。

4.当審の判断
本願発明は、上記のとおり、「赤い光のみを透過する帽子。」というものである。そして、「赤い光のみを透過する」とは、赤い光を透過し、赤い光以外を透過しないとの意味であることは、文言上明らかである。
そこで、本願発明の「赤い光のみを透過する」ための手段が、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されているかどうかを検討すると、本願の発明の詳細な説明には、「赤い光のみを透過する」材料について具体的に記載されておらず、「赤い光のみを透過する」ための具体的な手段が一切記載されていない。
発明の詳細な説明には、
「すなわち赤色光の光線のみを頭皮に到達するには、赤い色で光が透過する帽子にすれば、赤色光のみの光線が頭皮に到達するので赤色光は頭皮に浸透し毛根に刺激が与えられ活性化して頭の毛が生えることになる。」
「本発明の赤光色の光線のみが頭皮に到達するようにするには帽子を赤くして赤い光が透過する構造にすれば赤色光は頭皮に到達して浸透して毛根が活性化して毛が生えてくるというという構造の発明なのである。」
との記載がある。しかし、「赤い色で光が透過する帽子」、あるいは、「帽子を赤くして赤い光が透過する構造」との開示から、単に赤い光を透過することについては実現できるとしても、赤い光以外を透過しないことまでは実現できない。よって、上記記載は、「赤い光のみを透過する」ための手段を明らかにするものではない。
そして、帽子の材料として、赤い光のみを透過する材料が公知あるいは周知であると認めることもできない。
よって、本願発明の「赤い光のみを透過する」ための手段は、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていない。

請求人は、平成22年2月12日付けの意見書において、『本出願人が本発明出願後、プラスチックで赤い透明のヘルメットを作成して波長を測定すべきすべきと考え、ヘルメットの作成に試行錯誤したのですが、ヘルメットの作成には、先ず金型を作成しなければならないことが判明しました。しかし金型作成に膨大な費用が必要であると言うことが判明し、本出願人には無理ですので「赤い光のみを透過」する赤い素材のフイルムで帽子を作成して、再び新潟大学工学部情報工学科牧野秀を教授に波長の透過率を測定していただいた結果900nmの波長が透過していた測定記録を提示します。』と主張するが、そもそも、赤い透明のプラスチックや、赤い素材のフィルムは、帽子の素材として一般に認識されているものではない。更に付言すれば、上記赤い素材のフイルムで作成した帽子は、900nmの波長が透過していたというものであるところ、900nmの波長の光は、平成21年6月10日付け意見書に添付された、新潟大学医学部皮膚科学教室の下村裕氏作成の報告書から明らかなように、近赤外領域の光線であって、赤い光ではないから、結局、上記赤い素材のフイルムで作成した帽子も「赤い光のみを透過する」ものではない。よって、上記意見書を参酌しても、「赤い光のみを透過する」ための手段は明らかでない。
更に、請求人は、平成22年2月12日付け意見書において『600nmの波長が透過している橙色の可視光線の帽子と900nmの波長が透過している近赤外線の不可視光線の帽子を比較して上記の色と波長の関係資料を参照すれば、「赤」の波長である610?750?780nmの赤い素材の濃度選択は容易であると考えます』と述べているが、赤い素材の濃度を選択することにより、赤い光のみを透過することができるという根拠は無い。
また、審判請求書の「4 本願発明が特許される理由」において、白帽子、赤帽子、黒帽子について温度測定した結果を示して、「赤帽子の内部温度が高いことは顕著であり、このことにより頭部の血流が潤滑になる」などと述べているが、当該赤帽子については、素材などの構成が不明であるし、「赤い光のみを透過する」ものであるかも不明である。

したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、「赤い光のみを透過する」ための具体的手段を一切明らかにするものではなく、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願は、原査定の理由により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-20 
結審通知日 2011-04-26 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2004-238946(P2004-238946)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A42B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 熊倉 強
紀本 孝
発明の名称 禿げ頭にならない帽子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ