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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1239579
審判番号 不服2009-19662  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2011-07-08 
事件の表示 特願2004- 37089「部品供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月25日出願公開、特開2005-228970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
【1】手続の経緯

本願は、平成16年2月13日の出願であって、平成21年7月10日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年10月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書及び特許請求の範囲に対する手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年11月18日(起案日)付けで審尋がなされ、平成23年1月24日に審尋に対する回答書が提出されたものである。

【2】平成21年10月14日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年10月14日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に対し、以下のような補正を含むものである。なお、下線は、審判請求人が付した補正箇所である。

(1)本件補正前の請求項1(平成21年6月22日付け手続補正)
「【請求項1】
電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各モータにより間欠送りできる複数のレーンを備えた部品供給装置において、電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するモータの駆動を制御する単一のマイクロコンピュータを設けたことを特徴とする部品供給装置。」

(2)本件補正後の請求項1(平成21年10月14日付け手続補正)
「【請求項1】
電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーンを備え、電子部品装着装置本体に着脱自在に設けられた部品供給装置において、複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータと、前記電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータとを備えたことを特徴とする部品供給装置。」

2.補正の適否

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0010】、【0017】?【0020】、【0035】?【0039】、【0043】の記載に基づき、本件補正前の「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各モータにより間欠送りできる複数のレーンを備えた部品供給装置」を「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーンを備え、電子部品装着装置本体に着脱自在に設けられた部品供給装置」とさらに限定し、同じく「電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するモータの駆動を制御する単一のマイクロコンピュータを設けた」を「複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータと、前記電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータとを備えた」とさらに限定するものである。
そうすると、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとして認めることができ、かつ、補正前の各請求項に記載した発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更することのない範囲内において行われたものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、かつ、特許法第17条の2第3項の規定に反する新規事項を追加するものではない。
以上のとおり、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.本願補正発明について

3-1.本願補正発明

本願補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「【2】1.(2)」に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

3-2.引用刊行物とその記載事項

刊行物1:特開2003-198192号公報
刊行物2:特開平1-222877号公報

[刊行物1]
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物1(特開2003-198192号公報)には、「電子回路部品取出し方法,電子回路製造方法,電子回路部品取出し装置および電子回路部品装着機」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回路基板に電子回路部品を装着して電子回路を組み立てる等のために部品供給装置から電子回路部品を取り出す方法に関するものである。」

(イ)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である電子回路部品取出し方法を含む電子回路製造方法の実施に好適な装置であり、それ自身も本発明の一実施形態である電子回路部品装着機を図面に基づいて説明する。図1に本実施形態における回路部品装着機(以下「部品装着機」と略称する)を示す。部品装着機は、ベース10に設けられた配線板搬送装置14,部品装着装置16および部品供給装置18を含む。配線板搬送装置14は、回路基板たるプリント配線板20を搬送する配線板コンベヤ22と、搬送されたプリント配線板20を予め定められた位置に位置決め保持する基板保持装置たる配線板保持装置24とを備えるものである。本部品装着機は、部品装着装置16が、部品供給装置18から電子回路部品(以下「回路部品」と略称する)30(図2,図7等参照)を取り出し、配線板搬送装置14により搬送され、予め定められた位置に位置決め保持されたプリント配線板20の予め定められた装着位置に装着することにより電子回路が組み立てられる。プリント配線板20の搬送方向と平行な方向をX軸方向とし、それに対して水平面内において直交する方向をY軸方向とする。
【0018】部品供給装置18は、ベース10に位置固定のフィーダ保持台40と、フィーダ保持台40の上に各部品供給部がX軸方向に並んで着脱可能に搭載された複数の部品フィーダ42(以下「フィーダ42」と略称する)とを有し、位置を固定して設けられている。フィーダ42の構成については後に説明する。」

(ウ)「【0021】部品供給装置18の複数のフィーダ42には、図3に示すように、同じ種類(同じ形状,寸法)の複数の回路部品30を供給する送り機構を備える2つのフィーダが、フィーダ本体を共有して一体化された一体化フィーダも含まれている。以下、一体化フィーダ42について説明する。一体化フィーダ42のフィーダ本体110には、同一種類の回路部品30を多数収容する部品収容リール112が2つ保持され、2組ずつの送り機構120,122(図5参照)およびテープ剥がし装置124,126がそれぞれ設けられている。フィーダ本体110は、製作の都合上、複数の部材が互いに組み付けられて一体化されており、概して細長い板状を成している。なお、図5には図示を省略するが、フィーダ本体110の幅方向の両側面には側板が設けられるとともに、これら側板の間に仕切板が設けられている。これら一対の側板と仕切板との間に形成される2つの空間内に、送り機構120およびテープ剥がし装置124と、送り機構122およびテープ剥がし装置126とがそれぞれ設けられている。」

(エ)「【0023】一体化フィーダ42により供給される回路部品30は、図6および図7に示すように、テープ化電子回路部品160(以下「テープ化部品160」と略称する)の形態をなしている。テープ化部品160は、キャリヤテープ162とカバーテープ164とによって回路部品30がテーピングされている。キャリヤテープ162は、長手形状を成し(図12参照)、長手方向と直交する方向である幅方向の両側において、長手方向に延びる一対の被支持部166,168と、それら両被支持部166,168間から下方へ突出した複数の収容凹部170とを含む。これら複数の収容凹部170がキャリヤテープ162の長手方向に一定ピッチで設けられるとともに、それら収容凹部170の各々に回路部品30が収容され、収容凹部170の開口がキャリヤテープ162に貼り付けられたカバーテープ164によって覆われている。複数の回路部品30はキャリヤテープ162に一定のピッチで1個ずつ一列に並んで保持されているのである。カバーテープ164の幅はキャリヤテープ162の幅より小さく、キャリヤテープ162の、カバーテープ164が貼り付けられていない被支持部166に沿って、キャリヤテープ162の表面から裏面まで貫通する送り穴172が一列に等ピッチで形成されている。
【0024】テープ化部品160は、前記部品収容リール112に巻き付けられており、2つのフィーダに対応する2つの部品収容リール112は、それぞれフィーダ本体110の後部に着脱可能に保持されている。部品収容リール112から引き出されたテープ化部品160は、それぞれ送り機構120,122により、一体化フィーダ42の並び方向であるX軸方向と直交し、フィーダ本体110の長手方向(Y軸方向)と一致した長手方向(この送り方向をテープ送り方向と称する)に送られ、複数の回路部品30が一列に並ぶ状態で各部品供給部へ送られるとともに、キャリヤテープ162からカバーテープ164が剥がされる。なお、テープ化部品160の送り方向下流側がフィーダ本体110の前側となり、上流側がフィーダ本体110の後側となる。
【0025】一体化フィーダ42の部品供給部174は、テープ送り方向において予め定められた部品供給位置に対応する部分であり、カバーテープ164が剥がされた後のキャリヤテープ162の収容凹部170が1個ずつ順次部品供給部174に停止させられる。本実施形態においては、図11および図12に示すように、一体化フィーダ42の2つの部品供給部174が、テープ送り方向と直交するフィーダ配列方向(X軸方向)に互いに一定ピッチ隔たって設けられている。1つの一体化フィーダ42における上記部品供給部174の中心間距離と、前記2つの部品保持ヘッド50の各吸着ノズル70の中心軸線のX軸方向の軸線間距離とが互いに等しくなるように、両者の相対位置関係が設定されている。」

(オ)「【0031】送り機構120,122の駆動源たる送り用モータ180,200は、回転角度の正確な制御が可能な電動モータの一種であるステッピングモータであり、スプロケット192の回転角度は、送り用モータ180,200に与えられる駆動パルスの制御によって制御可能である。したがって、送り機構120,122によるテープ化部品160の送りが確実に制御される。送り用モータ180,200に、位置検出器を構成するエンコーダを設け、エンコーダによって送り用モータ180,200の回転位置を検出し、エンコーダからの検出信号に基づいて送り用モータ180,200の回転が制御されるようにしてもよい。」

(カ)「【0033】本部品装着機は、図10に示す制御装置250により制御される。制御装置250は、PU(プロセッシングユニット)252,ROM254,RAM256およびそれらを接続するバスを有するコンピュータ260を主体とするものである。バスにはI/Oポート262が接続され、前記マークカメラ240,部品カメラ242等が接続されるとともに、駆動回路264を介して、Y軸モータ56,X軸モータ62,Z軸モータ84,θ軸モータ94,送り用モータ180,200等が接続されている。Y軸モータ56,X軸モータ62,Z軸モータ84,θ軸モータ94は、駆動源たる電動モータとしてのサーボモータであり、回転角度の精度の良い制御が可能である。ROM254には、プリント配線板20に回路部品30を装着するためのルーチンを始め、本部品装着機の一般的作動を制御するプログラムが格納されている。また、RAM256には、プリント配線板20に装着する回路部品30の種類,装着位置,装着順序等に従って部品保持ヘッド50を移動させるためのプログラム等が格納されている。
【0034】本部品装着機を使用して実施される電子回路部品取出し方法を含む電子回路製造方法について、図11および図12に基づいて説明する。相対移動工程において、XY移動装置52の作動により、2つの部品保持ヘッド50の吸着ノズル70が一斉に移動させられ、図11および図12に示すように、部品供給装置18の1つの一体化フィーダ42の2つの部品供給部174にそれぞれ正対させられる。この際、2つの部品保持ヘッド50の停止位置(部品取出位置)が、前述のフィーダ位置誤差メモリに格納された各部品フィーダ42の部品供給部174の位置誤差分補正され、2つの吸着ノズル70が正確に2つの部品供給部174に合致させられる。その状態で、図11に二点鎖線で示すように、各部品保持ヘッド50のZ軸モータ84が作動させられ、2つの吸着ノズル70が同時期に部品供給部174に接近させられる。そして、2つの吸着ノズル70が各部品供給部174に位置決めされた回路部品30の被吸着面を負圧により吸着保持した後、そのままの状態でそれら吸着ノズル70が同時期に上昇させられて部品供給部174から離間させられる。これが取出し工程である。」

(キ)「【0040】送り機構120,122およびテープ剥がし装置124,126の共通の駆動源たる送り用モータ180,200はステップモータとされていたが、これに代えてサーボモータを使用してもよい。また、テープ剥がし装置124,126を専用の駆動源で駆動するものとしてもよい。」

そうすると、上記記載事項(ア)?(キ)及び図面の記載からみて、上記刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「回路部品30を収容したテープ化部品160の収容凹部170を1個ずつ順次部品供給部174に停止させる2つのフィーダを備え、部品装着機の部品供給装置18に着脱可能に搭載された一体化フィーダ42において、一体化フィーダ42は2つのフィーダと2つの送り用モータ180,200を備え、前記部品装着機の制御装置250により送り用モータ180,200の駆動が制御される、一体化フィーダ42。」

[刊行物2]
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物2(特開平1-222877号公報)には、「産業用ロボットのブレーキ制御方式」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ク)「発明が解決しようとする課題
上述した従来のブレーキ制御方式では、プログラム実行中はブレーキは常に解除され、サーボモータは励磁されたままの状態にある。そのため、プログラム実行中におけるタイマ待ちの動作やインタロック信号待機等で長い時間移動動作指令が無い場合、即ち、1つの動作が終了し、次の動作がタイマに設定された時間の経過後に開始するときや、外部からの信号が人力されるのを待って次の動作を開始するような場合でも、ブレーキは解除されたままであり、サーボモータには電源が接続され、励磁されたままの状態にある。
このような待機時間が短い場合は問題はないが、システムの組み方によっては、周辺機器等の動作の終了を待ったり、干渉を避けるために、このような待機時間が長く続くことがあり、待機時間が長くなると、その間ブレーキは解除され、サーボモータは励磁された状態にあるので不要な電力を消費し、また、サーボモータに加わる負荷が大きい場合には、モータの過熱等の原因にもなる。」(第1ページ右下欄第6行?第2ページ左上欄第5行)

(ケ)「そこで、本発明の目的は、電力消費を削減し、サーボモータの過熱を少なくしたブレーキ制御方式を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明は、ロボットの動作が停止する毎にタイマをスタートさせ、次の移動指令が発生する前に上記タイマの値が予め設定された設定時間を越えるとブレーキをかけ、サーボ電源を切断し、次の移動指令によりサーボ電源を接続してブレーキを解除するように構成することにより、上記課題を解決した。
作用
ロボットの動作が停止する毎に、上記タイマが作動し、該タイマの値が設定所定時間を越えるとブレーキをかけ、サーボモータの電源を切断するので、プログラムが終了しロボットの動作が終了したときはもちろん、プログラム中断指令が入力されたとき、周辺機器等からの入力信号待ち、又は、所定時間のタイマ待機動作によって、プログラム実行中にあってもロボットの動作の停止が所定時間を越えると、ブレーキがかけられサーボモータの励磁が解かれるので、不要な電力消費がなく、かつモータ過熱も防止できる。」(第2ページ左上欄第6行?右上欄第8行)

そうすると、上記記載事項(ク)、(ケ)及び図面(特に、第1図)の記載からみて、刊行物2には、次の技術事項を含む発明が記載されているものと認められる。

「ロボットの動作が停止する毎にタイマをスタートさせ、次の移動指令が発生する前に上記タイマの値が予め設定された設定時間を越えるとサーボモータの電源を切断して、不要な電力消費をなくすること。」

3-3.発明の対比

本願補正発明と刊行物1発明を対比する。
刊行物1発明の「回路部品30」は、その機能或いは構成からみて、本願補正発明の「電子部品」に相当し、以下同様に、「回路部品30を収容したテープ化部品160」は「電子部品を収納部に搭載した各収納テープ」に相当し、「部品供給部174」は「部品ピックアップ位置」に相当し、「2つのフィーダ」は「複数のレーン」に相当する。
刊行物1発明の「収容凹部170を1個ずつ順次部品供給部174に停止させる2つのフィーダを備え」は、その機能からみて間欠送りできるものであることは明らかであるから、実質的に、本願補正発明の「それぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーンを備え」に相当する。
刊行物1発明の「部品装着機」及び「一体化フィーダ42」は、その機能からみて、それぞれ、本願補正発明の「電子部品装着装置本体」及び「部品供給装置」に相当するから、刊行物1発明の「部品装着機の部品供給装置18に着脱可能に搭載された一体化フィーダ42において」は、実質的に、本願補正発明の「電子部品装着装置本体に着脱自在に設けられた部品供給装置において」に相当する。
刊行物1発明の「一体化フィーダ42は2つのフィーダと2つの送り用モータ180,200を備え」は、2つのモータが「サーボモータ」も含むものであり(上記記載事項(キ))、2つのフィーダに対応して設けられたものであるから、実質的に、本願補正発明の「複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータ」に相当する。

したがって、本願補正発明の用語にならってまとめると、両者は、
「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーンを備え、電子部品装着装置本体に着脱自在に設けられた部品供給装置において、複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータを備えた部品供給装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「前記電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータ」を備えたのに対し、刊行物1発明は、前記部品装着機の制御装置250により送り用モータ180,200の駆動が制御される点。

3-4.当審の判断

(1)相違点1について
上記相違点1は、要するに、本願補正発明は、電子部品装着装置本体が部品送り信号を出す何らかの制御装置を有するものであって、当該信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータを部品供給装置が備えたものであるところ、刊行物1発明では、制御装置250が、電子部品装着装置本体から部品送り信号に相当する信号を出力する機能と、当該信号に基づいて対応する送り用モータ180,200の駆動を制御する機能の双方を有するものであって、上記モータのサーボオフの機能の有無については明らかでないことに基づくものである。この点について、本願の明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及び発明の効果に関する以下の記載がある。
「【0003】
まして、電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各サーボモータにより間欠送りできる複数のレーンを備えた、例えばデュアルレーンタイプの部品供給装置にあっては、サーボモータ毎にマイクロコンピュータを搭載したプリント基板を内蔵していたために、コスト高のものであった。
【0004】
また、この場合、常に各サーボモータの位置決めループをかけてサーボオン状態(通電状態)にしておくと、駆動回路の発熱が大きく、コンパクトサイズの実現と放熱設計対策とのジレンマに陥り、プリント基板や電子部品供給装置の小型化には限界があった。
【0005】
そこで本発明は、単一のマイクロコンピュータを用いて安価な構成にして、必要なときにのみ、各サーボモータを通電させることにより、駆動回路の発熱を極力抑え、この駆動回路が搭載されるプリント基板を小さくできる部品供給装置を提供することを目的とする。・・・
【0008】
本発明は、単一のマイクロコンピュータを用いて安価な構成にすることができ、必要なときにのみ、複数のレーンに対応して設けられた各サーボモータを通電させることにより、駆動回路の発熱を極力抑え、この駆動回路が搭載されるプリント基板を小さくできる部品供給装置を提供することができる。」
そこで、上記相違点1について検討するに、刊行物1発明は、一つの制御装置250によって、複数のレーンを含む部品供給装置を制御する機能を有するものであるが、このような装置の制御を一つの制御装置で行うことにより全体を一括して管理できるようにするか、機能毎に分割した制御装置を接続して制御を行うことにより機能毎の設計変更を容易にしたりすることは、当業者が必要に応じて選択できる設計事項である。そして、部品供給装置の分野において、当該部品供給装置に単一のマイクロコンピュータを備えてモータを制御することは周知事項(例えば、特開2002-374100号公報の段落【0043】・【0049】・図4、及び特開2000-77892号公報の段落【0038】・図8、を参照)であるから、刊行物1発明の制御装置250の機能の一部を部品供給装置に分割して単一のマイクロコンピュータを備えて行うようにすることは、上記設計事項に基づき当業者が適宜選択できたことである。
さらに、上記刊行物2にはロボットの動作が停止する毎にタイマをスタートさせ、次の移動指令が発生する前に上記タイマの値が予め設定された設定時間を越えるとサーボモータの電源を切断して、不要な電力消費をなくするサーボオフに相当する技術事項を含む発明が記載されているところ、制御装置一般において、省電力や安定作動のために発熱を防止することは普遍的な課題であるから、刊行物1発明のモータの制御に上記刊行物2に記載されたサーボオフの制御を適用することは当業者が容易に推考できることである。
したがって、刊行物1発明に上記刊行物2に記載された発明及び上記周知事項を適用して上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
また、本願補正発明が奏する「単一のマイクロコンピュータを用いて安価な構成にすることができ、必要なときにのみ、複数のレーンに対応して設けられた各サーボモータを通電させることにより、駆動回路の発熱を極力抑え、この駆動回路が搭載されるプリント基板を小さくできる」といった効果は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項から当業者が予測できるものである。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の平成21年12月17日付け手続補正書において、「本願発明は、『複数のレーンを備えた部品供給装置において、複数のレーンに対応して複数のサーボモータを設け、且つ電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータを設ける点』を特徴としており、『複数のレーンを備え、複数のレーンに対応して複数のサーボモータを設けた部品供給装置においても、単一のマイクロコンピュータを用いて安価な構成にすることができ、必要なときにのみ、複数のレーンに対応して設けられた各サーボモータを通電させることにより、駆動回路の発熱を極力抑え、この駆動回路が搭載されるプリント基板を小さくできる部品供給装置を提供することができます。』という効果を奏しており、更に、本願発明の部品供給装置は、必要なときにのみ、サーボモータを通電させることにより、複数のレーンに対応して複数のサーボモータを設けた部品供給装置においても、その消費電力を極力小さくでき、また駆動回路が搭載されるプリント基板を小さくでき、プリント基板を内蔵している部品供給装置のコンパクト化を図ることもでき、これらの本願発明が奏する効果は各引用例及び周知技術からは到底期待することはできません。」(審判請求書の手続補正書の【本願発明が登録されるべき理由】(4)の項参照。)など、本願は特許されるべき旨主張している。
しかしながら、部品供給装置において、必要な機能を分割した機能を有する単一のマイクロコンピュータによってモータを制御すること、及び当該モータをサーボオフするように制御することは、上述のとおり、当業者が容易に想到できたものである。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
なお、審判請求人は、審尋に対する平成23年1月24日付けの回答書において、「平成21年10月14日付けにて提出致しました手続補正書により補正されました特許請求の範囲の欄の請求項1の記載において、『サーボモータ』が『(各収納テープを)部品ピックアップ位置まで間欠送り』するものであるとの記載を削除致しましたが、請求項1におけるこの補正は、上述しました前置報告書に記載されていますように、限定的減縮を目的としたものとはいえないものと思料いたします。」と述べている。
確かに、補正前の「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各モータにより間欠送りできる複数のレーン」を、補正後の「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーン」とした点は、「各モータにより」が削除されたことにより構成が拡張されているかのようにも見えるが、補正後の「複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータ」の機能を技術常識に照らしてみれば、上記「複数のレーン」は実質的に各モータにより間欠送りできるものと解される。そうすると、上記の点は、単に表現を整理したものといえるものであるから、上述のとおり、平成21年10月14日付け手続補正書は全体としてみると特許請求の範囲の構成を限定的に減縮するものと認められる。

4.むすび

以上のとおり、本願補正発明、すなわち本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本願補正発明、すなわち本件補正後の請求項1に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
したがって、本件補正は、他の補正事項を検討するまでもなく、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について

1.本願発明

平成21年10月14日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年6月22日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各モータにより間欠送りできる複数のレーンを備えた部品供給装置において、電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するモータの駆動を制御する単一のマイクロコンピュータを設けたことを特徴とする部品供給装置。」

2.引用刊行物とその記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は次のとおりであり、その記載事項は、上記【2】3-2.のとおりである。

刊行物1:特開2003-198192号公報
刊行物2:特開平1-222877号公報

3.対比・判断

本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明の「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで間欠送りできる複数のレーンを備え、電子部品装着装置本体に着脱自在に設けられた部品供給装置」を「電子部品を収納部に搭載した各収納テープをそれぞれ部品ピックアップ位置まで各モータにより間欠送りできる複数のレーンを備えた部品供給装置」と拡張し、「複数のレーンに対応して設けられた複数のサーボモータと、前記電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するサーボモータの駆動及びサーボオフを制御する単一のマイクロコンピュータとを備えた」を「電子部品装着装置本体からの部品送り信号に基づいて対応するモータの駆動を制御する単一のマイクロコンピュータを設けた」と拡張するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定した本願補正発明が、上記「【2】3-3.発明の対比」、及び「【2】3-4.当審の判断」に示したとおり、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記のとおり構成を拡張した本願発明も実質的に同様の理由により、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2011-05-06 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-23 
出願番号 特願2004-37089(P2004-37089)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 川上 溢喜
特許庁審判官 倉田 和博
山岸 利治
発明の名称 部品供給装置  
代理人 相澤 清隆  

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