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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1239648
審判番号 不服2009-17718  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-18 
確定日 2011-07-06 
事件の表示 特願2000-520589「患者を監視する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月20日国際公開、WO99/25110、平成13年11月20日国内公表、特表2001-522674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年11月12日、米国、1998年8月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後、当審において、平成22年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1?9に係る発明は、平成22年12月14日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1は次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】 リモートアクセス可能な医療装置システムであって、
患者に接続された電子的に制御可能な医療装置であり、プログラム可能なプロトコルに応じて作動し、また、関連する患者データであって前記医療装置によって収集されるデータと患者の入力から取得されるデータとを含む患者データを有し、該医療装置と前記患者とは第一の場所に位置する、医療装置と、
前記プログラム可能なプロトコルおよび患者データを記憶するためのメモリと、
前記プログラム可能なプロトコルおよび患者データを処理するためのプロセッサと、
音声記憶ユニットと、
第一の通信ポートと、を備え、
前記メモリ、前記プロセッサ、前記音声記憶ユニットおよび前記第一の通信ポートは、
前記第一の場所に位置し、
前記第一の通信ポートは、前記プロセッサがリモート電話に接続可能なように設けられ、前記プロセッサと前記リモート電話との間で接続が確立された場合に、前記プロセッサは、人間の声のサウンドをエミュレートする音声信号を前記リモート電話に送信するために前記音声記憶ユニットにアクセスし、前記音声信号は、メインメニューを有するいくつかの声による照会を含み、前記声による照会は、前記患者以外の該システムのユーザに、
前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドのキーを押下して前記声による照会のうちから選択するよう指示し、
前記電子的に制御可能な医療装置のプログラミングは、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成される遠隔プログラミング信号によって行われ、前記プロセッサは、前記遠隔プログラミング信号の受信に応じて前記メモリ中の前記プログラム可能なプロトコルを処理するように構成され、データ検索は前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成された遠隔データアクセス信号に応じた遠隔データ信号を送信するように構成された前記プロセッサによって行われ、前記遠隔データ信号は前記音声記憶ユニットからの音声信号の形式をしている、医療装置システム。」

第3 引用刊行物記載の発明 (下線は当審で付与した。)
(1) 当審で通知した拒絶の理由に引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-84934号公報(以下「刊行物1」という。)には、「医療情報システム」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「(I)産業上の利用分野
本発明は、医療情報システム、特に患者監視装置にファクシミリ装置を直結することにより患者監視装置に格納されている医療情報をファクシミリ装置に送信して表示し、又は患者監視装置に電話機を直結することにより電話機から上記医療情報についての遠隔制御を行い、更に患者監視装置に通信回線を介してコンピュータを接続することにより医療情報に関する処理を行うようにした医療情報システムに関する。」(公報第2頁右上欄5行?14行)

(1-イ) 「 〔III〕発明が解決しようとする課題
上述した医療情報システムの第1の場合、即ち所定の場所で患者の医療情報を見る場合は、次のような課題がある。
即ち、従来は、医療情報の出力装置が記録器であり、この記録器と医療情報の入力装置である患者監視装置はケーブルで接続されている。
従って、医療情報の人力装置と出力装置間の距離に限界があった。
このため、患者監視装置から遠く離れた場所、例えば病院内の患者のベッドから遠くにあるナースセンターや医師の自宅や出張先で患者の医療情報を見ることは現実には不可能であり、病気の診断と治療に支障を来す場合がある。
更に、上述した医療情報システムの第2の場合、即ち医療機器に格納されている医療情報を解析、制御する等処理をする場合は、次のような課題がある。
即ち、従来は医療機器に設けられたスイッチを直接に操作しなければ、処理はできなかった。
上述の例でいえば、例えば、制御については、心拍数の上限キーと下限キーを指で直接押さなければならなかった。
従って、医療情報システムの上記第1の場合と同様に患者監視装置から遠く離れた場所、例えばナースステーションや医師の自宅や出張先からは処理ができない。
このため、患者の病気の診断と治療の障害になる場合がある。
上記2つの課題を解決のために、新たな装置を開発して医療情報を表示したり、処理をすることも考えられる。
しかし、患者監視装置に代表される医療機器とこの新たな装置との接続手段も考えねばならず、得策とはいえない。
また、患者監視装置に接続された記録器で、一旦医療情報を出力し、それを遠く離れた場所へファクシミリ送信することも考えられる。
例えば、記録紙上に心電図を一旦記録し、その記録紙を、従来行われているように、ファクシミリ送信する。
しかし、この送信手段は、いわば間接的な送信手段であって、人手を介在させなければならないので、緊急を要する場合に間に合わないことがある。
本発明の目的は、既存のものを利用することにより、医療機器から遠く離れた場所へ医療情報を直接送ってそれを表示し又は医療機器から遠く離れた場所から該医療機器に格納されている医療情報を遠隔処理できるようにして病気の診断と治療に役立たせることにある。
(IV)課題を解決するための手段
上記課題は、・・・(第1発明)と、第1図(B)に示すように、医療機器1と電話機4とを電話回線5により接続し、制御信号Cを電話機4から医療機器lへ電話回線5を介して送信し、上記医療機器1に格納されている医療情報Sに関する制御を行うようにしたことを特徴とする医療情報システム(第2発明)と、・・・(第3発明)により、解決される。」(公報第2頁左下欄17行?第3頁左下欄3行)

(1-ウ) 「(V)作 用
上記のとおり、第1図(A)と第1図(B)と第1図(C)に示す3つの発明が提供される。
・・・
また、第1図(B)に示す第2発明によれば、医療機器1、例えば患者監視装置11に電話機4を直結することにより(第4図)、この電話機4から上記患者監視装置11に格納されている医療情報に関する制御を行うことができる。
従って、従来より一層遠い所から、医療情報に関する制御、例えば心電図波形表示感度の設定が行えるようになった。
しかも、電話機4や電話回線5や患者監視装置11に新たに付加するモデム11C等は、すべて既存のものである。」(公報第3頁左下欄4行?右下欄10行)

(1-エ) 「〔VI〕実施例
以下、本発明を、実施例により添付図面を参照して説明する。
・・・
B、第2発明について
(1) 構成
第4図は、第2発明の構成図である。 同図において、参照符号1は医療機器、4は電話機、5は電話回線である。
第4図は、医療機器1が第1発明(第2図)と同様に患者監視装置11であり、電話機4が例えばプッシュホンの実施例を示している。 第4図において、患者監視装置11は、表示部11AとCPU11Bとモデム11Cとから構成されている。 上記表示部11Aは、患者Pの医療情報S(第3図)や制御情報T(第5図)をその画面に表示する。
上記CPU11Bは、医療情報Sに関する全ての処理及び後述する制御信号C1又は応答信号Rに関する全ての処理を行う。
上記モデム11Cは、変調器兼復調器であって、電話機4から送信されて来た被変調搬送波から制御信号Cを取り出して復調し、又はCPU11Bから入力された応答信号Rを所定の搬送波にのせて変調して電話回線5へ送出する。
患者監視装置11は、コネクタ11Dを介して電話回線5に接続され、該電話回線5には電話機4、上述したとおり、例えばプッシュホンが接続されている。 上記プッシュホン4は、そのボタンが押されることにより、所定の制御信号Cを出力し、患者監視装置11に格納されている医療情報Sに関する制御を行う。
ここにいう制御とは、心電図波形の表示感度設定等の設定動作も含む。
また、プッシュホン4は、制御信号Cを出力して患者監視装置11へ送信するだけでなく、電話機としての特徴を生かすために、例えば後述するように、この制御信号Cに対する応答信号R(第4図)を患者監視装置11側からの音声によって受信し、この制御信号Cと応答信号Rとにより、医療情報Sに関する制御を行うこともできる。
(2)動作
以下、上記構成を有する第2発明の動作を、第5図に基づいて、説明する。
第5図は、ある一人の患者の医療情報、例えば心拍数の現在値10、上限14、下限12、上限増加キー14A、上限減少キー14B、下限増加キー12A、下限減少キー12Bから成る制御情報Tであり、患者監視装置11の表示部11Aの画面に表示されているものとする。
患者監視装置11側から見れば、タッチキーである各キー14A、14B、12A、12Bを、それぞれ指でタッチすることにより、心拍数の上限閾値14Sと下限閾値12Sを設定することができる。
これと同様の動作を、第2発明では、電話機4を用いて、遠隔的に行う。
例えば、上限閾値をUの位置に設定したい場合は、上限増加を意味する信号「001」とUの値を意味する信号「XXX」、を、電話機4のボタンを押すことにより、制御信号Cとして、患者監視装置11へ送信する。 この制御信号Cを受信したCPU11Bは、それを解読し、上限増加キー14Aを押し続ける動作をする。 これにより、上限閾値14Sが、図面に向かって右方に移動し、Uの位置で停止することにより、上限閾値14Sの設定は、終了する。 また、下限閾値12Sを、Dの位置に設定したい場合には、下限減少を意味する信号「002」とDの値を意味する信号「△△△」を、電話機4のボタンを押すことにより、制御信号Cとして、患者監視装置11へ送信する。
この002-△△△なる制御信号Cを受信したCPU11Bは、それを解読し、下限減少キー12Bを押し続ける動作をすると、下限閾値12Sは図面に向かって左方に移動し、やがてDの位置で停止することにより、下限閾値12Sの設定が終了する。
若し、心拍数の現在値10の内容が不明の場合は、現在値10の内容の送信要求信号を制御信号CとしてCPU11Bに送信すると、CPU11Bはそれを受けて応答信号Rを、例えば音声で「この患者の心拍数の現在値は○○○です。」というように、電話機4に送信することもできる。
このように、制御信号Cだけでなく応答信号Rとのやりとりにより、電話機4から、医療情報に関する遠隔制御をより一層容易に行うことができる。
更に、上記のように設定した上限閾値14Sと下限閾値12Sを現在値10が越えた場合には、CPU11Bから電話機4へ、「患者である○○さんの容態は危険です。」というようなメッセージAを、音声により送信することもできる。 その他、毎日決まった時刻に、「患者である○○さんの心拍数は、××です。」というようなメッセージAを、音声により、電話機4へ送信することもできる。」(公報第4頁左上欄15行?第6頁右上欄14行

上記(1-ア)?(1-エ)の記載と図1、5等を参照すると、上記刊行物1には、 次の発明が記載されていると認められる。

「患者監視装置11が、コネクタ11Dを介して電話回線5に接続され、該電話回線5にはプッシュホン4が接続されており、
患者監視装置11は、表示部11AとCPU11Bとモデム11Cとから構成され、
プッシュホン4は、そのボタンが押されることにより、所定の制御信号Cを出力して患者監視装置11へ送信し、この制御信号Cに対する応答信号Rを患者監視装置11側からの音声によって受信し、患者監視装置11に格納されている患者の医療情報Sに関する制御を行う医療情報システムにおいて、
心拍数の上限閾値をUの位置に設定したい場合は、上限増加を意味する信号「001」とUの値を意味する信号「XXX」を、プッシュホン4のボタンを押すことにより、制御信号Cとして、患者監視装置11へ送信し、この制御信号Cを受信したCPU11Bは、それを解読し、上限増加キー14Aを押し続ける動作をし、これにより、上限閾値14Sの設定をし、上限閾値14Sを現在値10が越えた場合には、CPU11Bからプッシュホン4へ、「患者である○○さんの容態は危険です。」というようなメッセージAを、音声により送信する等の制御を行うこともできる医療情報システム。」(以下、「引用発明」という。)

(2) 当審で通知した拒絶の理由に引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-220961号公報(以下「刊行物2」という。)には、「電話音声応答装置」について図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア) 「(従来の技術)
近時、電話回線を通じた音声応答サービスが種々行われている。例えば銀行業務における残高照会や振り込み照会、デパート等における催し物案内等の電話音声による応答サービスシステムが種々開発されている。
この種のシステムは、最寄りの電話機から電話回線を介してプッシュホン信号を用いて所定の情報を入力したり、或いは電話音声により所定の情報を入力し、その入力情報に対する応答を電話音声にて得るものである。しかしてシステム側では、一般的に着信検出がなされたとき、最初に電話回線を介して入力される音響信号が音声であるか、或いはプッシュホン信号であるかを識別判定し、その識別結果に応じてその処理モードを切り替え設定する。・・・また入力音響信号がプッシュホン信号であるとの識別結果を得た場合には、以後のコマンド入力をプッシュホン信号で行うように指示し、入力されたプッシュホン信号を識別処理しながら、その識別結果に対応した音声応答メッセージを生成出力するものとなっている。」(公報第1頁右上欄3行?第2頁左上欄8行)

(2-イ) 「(実施例)
以下、図面を参照して本発明の一実施例に係る電話音声応答装置について説明する。
第1図は実施例装置の概略構成図で、lは網制御部(NCU)である。実施例装置はこのNCUlを介して電話回線に接続される。しかして音響信号入力部2は前記NCU1にて電話回線を介する着信が検出されたとき、上記電話回線を通じて入力される音響信号を入力処理するものである。この音響信号入力部2にて入力音響信号はA/D変換され、音声・プッシュホン信号識別部3に与えられる。音声・プッシュホン信号識別部3は、・・・識別方式を採用して前記電話回線を介して入力された音響信号が音声であるか、或いはプッシュホン信号であるかを識別判定するものである。
切換部4はこの音声・プッシュホン信号識別部3による識別結果に従って音声入力に対して認識応答する第1の応答手段である音声認識応答部5、またはプッシュホン信号入力に対して識別応答する第2の応答手段であるプッシュホン信号識別応答部6を選択的に駆動する。そしてこれらの応答部5,6により入力音響信号(音声またはプッシュホン信号)の認識・識別結果に応じて生成される音声応答メッセージが音声出力部7から前記NCU1を介して応答出力されるようになっている。」(公報第3頁左上欄9行?右上欄19行)

(2-ウ) 「この第3図に示す銀行業務における音声応答サービスの処理手順を簡単に説明すると、
〈1〉(当審中〈1〉は○のなかに1を記入したものを意味する。以下同様) 最寄りの電話機から銀行が呼び出されると、センター側ではこれを検出し(着信検出)、「こちらは○○銀行テレホンサービスセンターでございます。信号音の後にサービスコードをどうぞ。」等の応答メッセージを出力する。
〈2〉このような応答メッセージを受けて、例えば電話機のダイヤルパッド操作によりプッシュホン信号を用いて所定のサービスコード情報を入力する。」(公報第3頁左下欄8?16行)

(2-エ) 「しかしてユーザはこのような音声メッセージに従って科目コードをプッシュホン信号を用いて入力し、その後、店番号と口座番号、更に暗唱番号をプッシュホン信号を用いて順に入力することになる。
センター側では、これらの入力情報を得、「そのままお待ちください。」
等の音声メッセージを出力した後、これらの入力情報を認識処理し、その認識結果に基づく所定の応答処理手続きを進める。そして
「お待たせしました。」
なる音声メッセージの出力の後、その照会に対する回答結果を音声メッセージとして応答出力し、「ありがとうございました。他に希望がございましたらサービスコードをどうぞ。」等のメッセージを出力し、サービスコードの入力がない場合にはその時点で音声応答処理を終了する。
・・・
尚、認識・識別リジェクトが検出された場合には、その情報の再入力が促されることは云うまでもない。」(公報第3頁右下欄9?第4頁左下欄16行)

第4 対比・判断
ア 引用発明と補正発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「患者監視装置11」、「プッシュホン4」、「そのボタン」、「患者の医療情報S」、「医療情報システム」、「CPU11B」、「コネクタ11D」、および「制御信号C」は、それぞれ、本願発明の「医療装置」、「リモート電話」、「プッシュボタン式のキーパッドのキー」、「関連する患者データ」、「医療装置システム」、「プロセッサ」、「第一の通信ポート」、および「遠隔プログラミング信号」に相当することが明らかである。

イ 引用発明の「心拍数の上限閾値」とは、患者監視装置11が、心拍数の監視のために必要とするプロトコルであり、プッシュホン4から遠隔設定できるのであるから、本願発明の「プログラム可能なプロトコル」に相当する。

ウ 引用発明の「心拍数の上限閾値をUの位置に設定したい場合は、上限増加を意味する信号「001」とUの値を意味する信号「XXX」を、プッシュホン4のボタンを押すことにより、制御信号Cとして、患者監視装置11へ送信し、この制御信号Cを受信したCPU11Bは、それを解読し、上限増加キー14Aを押し続ける動作をし、これにより、上限閾値14Sの設定し、」と、本願発明の「前記電子的に制御可能な医療装置のプログラミングは、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成される遠隔プログラミング信号によって行われ、前記プロセッサは、前記遠隔プログラミング信号の受信に応じて前記メモリ中の前記プログラム可能なプロトコルを処理するように構成され」は、「前記電子的に制御可能な医療装置のプログラミングは、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成される遠隔プログラミング信号によって行われ、前記プロセッサは、前記遠隔プログラミング信号の受信に応じて、前記プログラム可能なプロトコルを処理するように構成され」の点で共通する。

エ 引用発明は、「患者の医療情報Sに関する制御を行う」ものであり、「上限閾値14Sを現在値10が越えた場合には、CPU11Bからプッシュホン4へ、『患者である○○さんの容態は危険です。』というようなメッセージAを、音声により送信する等の制御を行う」ものであり、「現在値10」が「医療装置によって収集されるデータ」であることは明らかであり、「患者である○○さん」が、患者の名前に属するデータであるから、引用発明の「患者の医療情報S」と本願発明の「関連する患者データであって前記医療装置によって収集されるデータと患者の入力から取得されるデータとを含む患者データ」とは、「関連する患者データであって医療装置によって収集されるデータを含む患者データ」である点で共通する。

オ 引用発明の「プッシュホン4は、そのボタンが押されることにより、所定の制御信号Cを出力して患者監視装置11へ送信し、この制御信号Cに対する応答信号Rを患者監視装置11側からの音声によって受信し、」と、
本願発明の「前記プロセッサと前記リモート電話との間で接続が確立された場合に、前記プロセッサは、人間の声のサウンドをエミュレートする音声信号を前記リモート電話に送信するために前記音声記憶ユニットにアクセスし、前記音声信号は、メインメニューを有するいくつかの声による照会を含み、前記声による照会は、前記患者以外の該システムのユーザに、
前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドのキーを押下して前記声による照会のうちから選択するよう指示し、」「データ検索は前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成された遠隔データアクセス信号に応じた遠隔データ信号を送信するように構成された前記プロセッサによって行われ、前記遠隔データ信号は前記音声記憶ユニットからの音声信号の形式をしている」は、
「前記プロセッサと前記リモート電話との間で接続が確立された場合に、前記プロセッサは、音声信号を前記リモート電話に送信」の点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「リモートアクセス可能な医療装置システムであって、
患者に接続された電子的に制御可能な医療装置であり、プログラム可能なプロトコルに応じて作動し、また、関連する患者データであって前記医療装置によって収集されるデータを含む患者データを有し、該医療装置と前記患者とは第一の場所に位置する、医療装置と、
前記プログラム可能なプロトコルおよび患者データを処理するためのプロセッサと、
第一の通信ポートとを備え、
前記プロセッサおよび前記第一の通信ポートは、前記第一の場所に位置し、
前記第一の通信ポートは、前記プロセッサがリモート電話に接続可能なように設けられ、
前記プロセッサと前記リモート電話との間で接続が確立された場合に、前記プロセッサは、音声信号を前記リモート電話に送信し、
前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成された遠隔データアクセス信号に応じた音声信号を前記リモート電話に送信し、
前記電子的に制御可能な医療装置のプログラミングは、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成される遠隔プログラミング信号によって行われ、前記プロセッサは、前記遠隔プログラミング信号の受信に応じて前記プログラム可能なプロトコルを処理するように構成された医療装置システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
プロセッサが処理する「プログラム可能なプロトコルおよび患者データ」を「記憶」する部分ついて、本願発明では、「プロセッサと同じ第一の場所に位置するメモリ」が行うのに対して、引用発明では不明である点。

(相違点2)
プロセッサと前記リモート電話との間で接続が確立された場合の音声信号を用いた処理について、本願発明では音声記憶ユニットをプロセッサと同じ第一の場所に有し、「人間の声のサウンドをエミュレートする音声信号を前記リモート電話に送信するために前記音声記憶ユニットにアクセスし、前記音声信号は、メインメニューを有するいくつかの声による照会を含み、前記声による照会は、前記患者以外の該システムのユーザに、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドのキーを押下して前記声による照会のうちから選択するよう指示し、」「データ検索は前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成された遠隔データアクセス信号に応じた遠隔データ信号を送信するように構成された前記プロセッサによって行われ、前記遠隔データ信号は前記音声記憶ユニットからの音声信号の形式をしている」のに対して、引用発明では、音声作成のための構成は不明であるが、プッシュホン4からの所定の制御信号Cに対する応答信号Rを音声でプッシュホン4に送信する点。

(相違点3)
関連する患者データであって医療装置によって収集されるデータを含む患者データについて、本願発明では「患者の入力から取得されるデータとを含む」「患者データ」であるのに対して、引用発明では、その点が不明である点。

(1)相違点1についての検討
プロセッサが処理に用いる情報を記憶する部分は、プロセッサ内部のメモリ、プロセッサに直結したメモリ、外部のハードディスク、遠隔地の記憶手段等各種考えられるが、処理速度の低下を抑えるために、プロセッサとの距離の近いメモリを優先して用いようとすることは技術常識である。
してみると,引用発明のプロセッサが処理に用いる情報である「プログラム可能なプロトコルおよび患者データ」を「記憶」する部分として、プロセッサとの距離の近いメモリである「プロセッサと同じ第一の場所に位置するメモリ」を採用して,相違点1における本願発明の構成とすることは,当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。

(2)相違点2についての検討
刊行物2の記載事項である上記(2-イ)には、「応答部5,6により入力音響信号(・・・プッシュホン信号)の認識・識別結果に応じて生成される音声応答メッセージが音声出力部7から前記NCU1を介して応答出力される」と記載(なお、「音声出力部7」が、「音声記憶ユニット」に相当し、「応答部5,6により入力音響信号(・・・プッシュホン信号)の認識・識別結果に応じて生成される音声応答メッセージ」が、「前記プロセッサは、人間の声のサウンドをエミュレートする音声信号を前記リモート電話に送信するために前記音声記憶ユニットにアクセスし」、「データ検索は前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドによって生成された遠隔データアクセス信号に応じた遠隔データ信号を送信するように構成された前記プロセッサによって行われ、前記遠隔データ信号は前記音声記憶ユニットからの音声信号の形式をしている」に相当する。)されている。
また、同じく刊行物2の記載事項である上記(2-ウ)には、「〈1〉最寄りの電話機から銀行が呼び出されると、センター側ではこれを検出し(着信検出)、『こちらはOO銀行テレホンサービスセンターでございます。信号音の後にサービスコードをどうぞ。』等の応答メッセージを出力する。
〈2〉このような応答メッセージを受けて、例えば電話機のダイヤルパッド操作によりプッシュホン信号を用いて所定のサービスコード情報を入力する。」と音声ガイダンス技術が記載(なお、これは、声による照会の最初であるので、「音声信号は、メインメニューを有するいくつかの声による照会を含み」「前記声による照会は、該システムのユーザに、前記リモート電話のプッシュボタン式のキーパッドのキーを押下して前記声による照会のうちから選択するよう指示」に相当する。)されている。
また、患者以外のシステムのユーザに選択を指示することは、専門的な設定や変更を含むのであるから、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項である。
さらに、「音声記憶ユニット」はプロセッサが処理に用いる情報を記憶する部分であるから、相違点1についての検討に記載したように、プロセッサと同じ第一の場所に有することは当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。
そして、引用発明も刊行物2に記載のものも、プッシュホンからの命令に、音声で答える音声回答装置に関するものである。
してみると,引用発明において,上記刊行物2に記載の構成と技術常識を適用することにより,相違点2における本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものといえる。

(3)相違点3についての検討
本願明細書中で「患者の入力から取得されるデータ」についての記載は「【0059】本発明の他の態様において装置は、気分や痛みの程度などに関して患者に質問するようプログラムされていてもよい。これらの質問への答えは、当業者に理解されるように、ケア提供者がアクセスすることができ、装置のプロトコルをプログラムするうえでケア提供者の助けとなる。・・・患者は、装置10そのものを介し、ローカル回線48A、またはコンピュータなどの他の手段を通じて、自身のデータを入力してもよい。このデータは、患者の体調が変化した時はいつでも、あるいは一定の間隔で情報を入力するよう、電話での要請または装置10の警報により促された時に、患者によって入力され得る。」だけで、「・・・自身のデータを入力してもよい。・・・患者によって入力され得る。」と、設計的事項として記載されており、また、「医療装置によって収集される患者データとして、医療装置によって収集されるデータと患者の入力から取得されるデータを用いることは周知である。例えば、特開平6-233744号公報に、「【0021】・・・患者は、液晶表示器に表示された食欲や体温等に関する質問と準備された回答項目の中からタッチパネルを操作しながら問診結果を入力する。その後、続けて液晶表示画面の指示に従って、呼吸数や血中酸素飽和度、脈拍数、心電図の測定を実施する。・・・一方、酸素濃縮器からの運転情報は、常時、通信装置に取り込まれており、患者のコンプライアンスを確認するのに有効な設定流量毎の使用時間情報が生成される。」と記載され、特開平4-15035号公報に「端末装置20は、コンピュータ21とデータ人力手段22としてキーボード221とデータ入力インターフェイス222と液晶表示装置23から構成されている。・・・キーボード221を介して、それらの質問に対する回答や測定結果を患者が入力したり、血糖測定装置10の出力信号をデータ入力インターフェイス222を介してオンラインで入力することができ、更に、それら入力された情報を、前記通信手段40を介して中央管理装置30に送信するようにプログラムされている。」と記載されている。
そうすると、引用発明の医療情報システムも上記周知のものも共に患者データを中央装置に送信する点で共通することから、引用発明に上記周知の構成を採用することにより相違点3における本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。

(4)そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(5)したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の発明および周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,請求人は,平成22年12月14日付け意見書において,「刊行物1は、患者の状態を測定し、状態が所定の閾値を越えた場合にメッセージを送信する単純なシステムを開示するものであります。そして、刊行物1の『発明が解決しようとする課題』にも記載のあるとおり、刊行物1に記載の発明は、患者データの送信に人手が介在することを排除しようとするものであり、患者データに患者によって入力された情報が含まれる本願発明1から当業者を遠ざける示唆を与えるものであります。」と主張している。
そこで、刊行物1を検討すると、刊行物1は上記記載事項(1-イ)に記載したように「〔III〕発明が解決しようとする課題」として、「医療情報の人力装置と出力装置間の距離に限界があった。」と「従来は医療機器に設けられたスイッチを直接に操作しなければ、処理はできなかった。」という2つの制約により、医師の自宅等患者監視装置から遠く離れた場所で処理できなかったので患者の病気の診断と治療の障害になる場合があるという課題を解決するために、まず2つの仮の簡単な解決策を挙げ、その問題点を指摘することにより、本願発明の良さを際だたせている。
そして、この「仮の簡単な解決策とその問題点」の、一つめが「新たな装置を開発して医療情報を表示したり、処理をすることも考えられる。しかし、患者監視装置に代表される医療機器とこの新たな装置との接続手段も考えねばならず、得策とはいえない。」であり、
二つめが「患者監視装置に接続された記録器で、一旦医療情報を出力し、それを遠く離れた場所へファクシミリ送信することも考えられる。例えば、記録紙上に心電図を一旦記録し、その記録紙を、従来行われているように、ファクシミリ送信する。しかし、この送信手段は、いわば間接的な送信手段であって、人手を介在させなければならないので、緊急を要する場合に間に合わないことがある。」である。
そうすると、出願人が主張する「人手が介在することを排除」する記載は、この「仮の簡単な解決策とその問題点」の二つめに記載されているものである。
しかしながら、ここでの問題点は、「患者監視装置に接続された記録器で、一旦医療情報を出力し、それを遠く離れた場所へファクシミリ送信する」という仮の簡単な解決策の問題点であるから、「人手」とは、記録器と医師の自宅等患者監視装置から遠く離れた場所との間に、介在させなければならないものであり、しかも医療従事者等のものである。
それに対して、本願発明の患者入力から取得されるデータのための「人手」とは、記録器と医師の自宅等患者監視装置から遠く離れた場所と間に、介在させなければならないものではなく、患者が緊急を要する場合に行う入力も含むもので、患者自身のものであるので、刊行物1が排除しようとする「人手」ではない。
しかも、一般に「人手」が必要なものを自動化する場合、自動化できるものは目的に応じて自動化し、自動化できないものは「人手」で行うものであり、「人手」は排他的なものではないので、仮に、本願発明と引用発明に同じ意味の「人手」が含まれていたとしても、刊行物1に記載された「人手が介在することを排除」する記載は「患者監視装置に接続された記録器で、一旦医療情報を出力し、それを遠く離れた場所へファクシミリ送信する」といった人手を介在させなければならない、いわば間接的な送信手段を用いている場合についての記載というべきであり、それと異なる構成の引用発明にはあてはまらない。

したがって,前記請求人の主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2000-520589(P2000-520589)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
発明の名称 患者を監視する方法および装置  
代理人 今堀 克彦  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  
代理人 川口 嘉之  
代理人 和久田 純一  
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